JP3639573B2 - 巻取用ボビン - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、光ファイバや電線等の線状体を巻き取るボビン、特に胴部の表面に巻き取る線状体によりフランジ部が外側に倒れるのを防止できるとともに、肉厚化による強度アップに伴う胴部のヒケ(成形の際、樹脂の固化が遅い個所に、成形収縮による歪みが発生する現象で、肉厚部によく見られる)による変形、軸穴部の変形を防止することができるボビンに関するものである。このようなボビンは線状体を巻き取った状態で保管や運搬に使用される。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の巻取用ボビンとして、図6,7に示すようなものが知られている。このボビン51は、合成樹脂からなり、ボビン本体52を具えている。ボビン本体52は中空円筒状の胴部55と、該胴部の両端から外向きにほぼ直角に張り出した環状フランジ部56,56′とを有し、胴部55内の中心部に軸穴部となる中空円筒状の管部57を同心状に配置し、該管部と胴部を円周方向に複数個、等間隔で放射状に配置したアーム58を介して連結して構成されている。フランジ部56,56′の外向き面には浅い環状凹所60が形成され、該凹所には放射方向のリブ61が形成されている。63は図示しない巻き取り装置による回転駆動を伝達するための係合孔、65は胴部55内をそのセンター位置で区切る壁である。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、前記従来のボビン51は、胴部55と一体構成のフランジ部56,56′がリブ61を有するとは云え、それ自体だけからなっいて、支えるものがないので、両フランジ部56,56′間の胴部55の表面に光ファイバや電線等の線状体を巻き取るときに該線状体により負荷がフランジ部の内向き面に作用すると、フランジ部56,56′が外側に倒れて変形してしまうという問題があった。また、胴部55内に同心状に配置されている管部57が胴部の全長と等しい長さで形成され、該管部と胴部間がその全長にわたりアーム58を介して連結されているため、アーム58の成形収縮により、胴部55が引っ張られることによって胴部55の表面が歪み、これが胴部だけでなく、軸穴部となる管部57にも及んで、これらが変形し易いという問題もあった。
【0004】
そこでこの発明は、前記のような従来のものが有する問題点を解決し、フランジ部が外側に倒れるのを効果的に抑止し、かつ胴部及び軸穴部となる管部の変形が少ない巻取用ボビンを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、中空胴部と、該胴部の両端から外向きに張り出した環状フランジ部とを有し、前記胴部内の中心部に軸穴部となる中空管部を同心状に配置し、該管部と胴部を円周方向に複数個、所定間隔で放射状に配置したアームを介して連結したボビン本体を具え、前記両フランジ部間の胴部表面に光ファイバや電線等の線状体を巻き取るためのボビンにおいて、前記管部は胴部の長さより短い長さで胴部の長さ方向中間部に配置され、前記ボビン本体の胴部の両端面及び両フランジ部の内周側一部を被覆可能な外径を有する蓋部と、該蓋部の中心部に前記管部とほぼ同径で、該管部とともに軸穴部を形成する中空管部とを有する1対の蓋部材を具え、これら蓋部材は管部がボビン本体の胴部のアームの先端間に形成される空隙に、胴部の管部に向けて挿入され、かつ蓋部がフランジ部に当接した状態で固着されていることを特徴とする。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、蓋部材の管部の先端縁が、ボビン本体の管部の端縁に当接するか又はその近くに位置している。請求項3に記載の発明は、請求項1又は2において、蓋部材の蓋部の内向き面に胴部に嵌入する小筒部が設けられ、該筒部には円周方向にアームの端縁に嵌入して係合し、蓋部材の回動を防止する切込溝が複数個形成されている。請求項4に記載の発明は、請求項3において、小筒部の切込溝間の内周面と管部の外周面間に補強リブが放射方向に設けられている。
【0007】
請求項5に記載の発明は、請求項1ないし4のいずれかにおいて、フランジ部の外向き面に浅い環状凹所が形成され、該凹所に環状リブが複数個、径方向に所定間隔で形成されているとともに、放射方向のリブが該環状リブと交叉して複数個形成され、前記両リブで囲まれた部分は小区画の凹所となっている。請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかにおいて、蓋部材の蓋部は最内径側の環状リブを被覆する外径に形成され、該蓋部の外周縁の内向き面に環状リブに係合する環状段部が設けられている。
【0008】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施の形態を、添付図面を参照して説明する。図1はその縦断正面図、図2は側面図、図3は図1から蓋部材を取り外したボビン本体の側面図である。1は合成樹脂製の巻取用ボビンで、ボビン本体2と1対の蓋部材3,3′とが一体に組み付け固着されて構成されている。ボビン本体2は両端が開口した中空円筒状の胴部5と、該胴部の両端から外向きにほぼ直角に張り出した環状フランジ部6,6′とを有している。
【0009】
胴部5内の中心部には該胴部の長さの1/4程度と長さの短い中空円筒状の管部7が胴部の長さ方向中間部に同心状に配置され、該管部は円周方向に複数個、等間隔で放射状に配置したアーム8を介して胴部5と一体に連結されている。アーム8は、この例では胴部5の長さとほぼ等しい長さを有し、円周方向に60°の角度で6個設けられている。フランジ部6,6′は所定の厚みを有し、その外向き面には浅い環状凹所10が形成され、該凹所には環状リブ11,12が複数個、径方向に等間隔で形成されているとともに、放射方向のリブ13が該環状リブと交叉して複数個形成されている。前記リブ11,12,13で囲まれた部分は断面コ字状の小凹所15となっている。
【0010】
蓋部材3,3′は同じ構造となっているので、以下にはその一方の蓋部材3について説明し、蓋部材3′については同一符号にダッシュを付して説明を簡略することとする。すなわち、蓋部材3は図4,5に示すようにボビン本体2の胴部5の端面及びフランジ部6,6′の環状リブ11まで被覆可能な外径を有する円板状の蓋部21と、該蓋部の中心部に管部7と同径の中空円筒状の管部22とが一体となって構成されている。管部22は蓋部材3側の端部及びこれと反対側の端部とも開口し、胴部5のアーム8の先端間に形成される空隙に向けて挿入され、図1のように蓋部21が胴部5の端面に当接したとき、その先端縁が管部22の端縁に近接して位置可能な長さに形成されている。
【0011】
蓋部21の外周縁の内向き面には胴部5の端面への当接時に環状リブ11に係合する環状段部23が肉薄に形成されて設けられている。また、蓋部21の内向き面には当接時に胴部5に嵌入する小筒部25が設けられ、該小筒部には円周方向にアーム8の端縁に嵌入して係合し、蓋部材3の回動を防止する切込溝26が複数個形成されている。小筒部25の切込溝26間の内周面と管部22の外周面間には補強リブ27が放射方向に設けられている。
【0012】
前記のような巻取用ボビン1を製作するには、それぞれ射出成形等により成形したボビン本体2と1対の蓋部材3,3′を用意し、まずそのうちの一方、例えば蓋部材3の管部22を、ボビン本体2の胴部5のアーム8の先端間に形成される空隙に、胴部5の管部7に向けて挿入する。この挿入により、蓋部材3の小筒部25が胴部5に嵌入し、その後にアーム8に当接する。このアーム8への当接状態では蓋部21は少し浮いた状態となっているので、当接したら蓋部材3を少し回動する。この回動により切込溝26がアーム8の端縁に嵌入して係合し、これにより蓋部材3は切込溝26とアーム8の端縁の係合により回動が防止されて、蓋部21が胴部5の端面及びフランジ部6に当接するに至る。蓋部21が胴部5の端面及びフランジ部6に当接した状態で、蓋部材3の管部22の先端縁がボビン本体2の管部7の端縁の近くに位置するが、これは当接するような設計にしてもよい。
【0013】
このとき環状段部23がフランジ部6の環状リブ11に係合し、フランジ部6を環状リブ11のある位置まで被覆する。これにより蓋部材3のボビン本体2の一方のフランジ部6側への装着が終了し、蓋部材3′も同様にして他方のフランジ部6′側への装着を行う。そして、両蓋部材3,3′の装着が終わった後に、該両蓋部材とボビン本体2を超音波溶着接合により固着すると、製作が完了する。このようにして製作されたボビン1は、管部22,7,22′が図示しない巻き取り装置の軸部に装着されて、回転されることにより、胴部5の表面に線状体を巻き取ることになる。
【0014】
ボビン1は、前記のように1対の蓋部材3,3′の蓋部21,21′がボビン本体2の胴部5の両端面だけでなく、フランジ部6,6′の環状リブ11,11′まで被覆し、この被覆によりフランジ部6,6′の付け根付近である環状リブ11,11′と放射方向のリブ13,13′で囲まれた小凹所15,15′が断面コ字状から断面ロ字状の断面形状になり、該部分が実質的に厚みが増して、フランジ部6,6′の倒れに対して強度を持てる構造となる。
【0015】
また、管部7が胴部5の長さ方向中間部にのみ配置され、該管部と1本のパイプ状の軸穴部を形成する管部22,22′が蓋部材3,3′に別成形で形成した構成とし、両管部7と22,22′がセパレートになった構造となっている。すなわち、胴部5内のアーム8と管部22,22′が直接的には連結されていないため、アーム8の成形収縮は胴部5等の精度に影響せず、成形に際して従来のような該部のヒケの発生を抑止できる。したがって、胴部5及び管部7のヒケを原因とする変形もなく、これらを真円で形成したときの真円度を良好に保つことが可能となる。また、軸穴部を形成する管部7,22,22′を1本のパイプ状にすることにより、該管部の圧縮荷重に対して耐久性を向上させることができる。また、蓋部材3,3′をボビン本体2へ組み付ける際に、アーム8の先端縁間に形成される空隙と管部7がガイドの役目をするため、組み付け時に管部7,22,22′の芯ずれが発生することがなくなった。また、アーム8を肉厚化しても従来のように胴部5を引っ張らないので、胴部5の表面の真円度が向上する。
【0016】
前記実施の形態は好ましい一例を示したにすぎず、これに限定されるものではない。例えば胴部5の外周面にフランジ部6,6′と同径程度のセパレータを設けてもよく、この場合には該セパレータにスリットを設けて巻き取る線状体をセパレータの両側の胴部の表面に巻き取るようにしてもよく、さらに胴部5と管部7の中間に中胴を設け、アーム8を該中胴を介して設けてもよい、など実際の実施に際して請求項に記載した技術的事項の範囲内で種々に変更や修正ができる。
【0017】
【発明の効果】
請求項1ないし6に記載の発明は、前記のような構成からなり、蓋部材の蓋部を胴部の端面だけでなく、フランジ部の内周側一部へも張り出すようにしたので、フランジ部の胴部近くの強度が増し、フランジ部が外側に倒れるのを効果的に抑止することができる。また、軸穴部を形成するボビン本体側の管部と蓋部材側の管部を切り離したので、アームの成形収縮が管部や胴部の精度に影響せず、成形に際して従来のようなヒケの発生を抑止できる。したがって、ヒケを原因とする胴部の表面の歪みや、胴部、管部の変形も防止できるというすぐれた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施の形態を示す縦断正面図である。
【図2】同上の側面図である。
【図3】図1から蓋部材を取り外したボビン本体の側面図である。
【図4】蓋部材の縦断正面図である。
【図5】蓋部材の側面図である。
【図6】従来例を示す縦断正面図である。
【図7】従来例の側面図である。
【符号の説明】
1 巻取用ボビン
2 ボビン本体
3,3′ 蓋部材
5 胴部
6,6′ 環状フランジ部
7 管部
8 アーム
10 環状凹所
11,11′,12,12′ 環状リブ
13,13′ 放射方向リブ
15,15′ 小凹所
21,21′ 蓋部
22,22′ 管部
23 環状段部
25,25′ 小筒部
26 切込溝
27,27′ 補強リブ
Claims (6)
- 中空胴部と、該胴部の両端から外向きに張り出した環状フランジ部とを有し、前記胴部内の中心部に軸穴部となる中空管部を同心状に配置し、該管部と胴部を円周方向に複数個、所定間隔で放射状に配置したアームを介して連結したボビン本体を具え、前記両フランジ部間の胴部表面に光ファイバや電線等の線状体を巻き取るためのボビンにおいて、
前記管部は胴部の長さより短い長さで胴部の長さ方向中間部に配置され、
前記ボビン本体の胴部の両端面及び両フランジ部の内周側一部を被覆可能な外径を有する蓋部と、該蓋部の中心部に前記管部とほぼ同径で、該管部とともに軸穴部を形成する中空管部とを有する1対の蓋部材を具え、
これら蓋部材は管部がボビン本体の胴部のアームの先端間に形成される空隙に、胴部の管部に向けて挿入され、かつ蓋部がフランジ部に当接した状態で固着されていることを特徴とする巻取用ボビン。 - 蓋部材の管部の先端縁が、ボビン本体の管部の端縁に当接するか又はその近くに位置している請求項1記載の巻取用ボビン。
- 蓋部材の蓋部の内向き面に胴部に嵌入する小筒部が設けられ、該筒部には円周方向にアームの端縁に嵌入して係合し、蓋部材の回動を防止する切込溝が複数個形成されている請求項1又は2記載の巻取用ボビン。
- 小筒部の切込溝間の内周面と管部の外周面間に補強リブが放射方向に設けられている請求項3記載の巻取用ボビン。
- フランジ部の外向き面に浅い環状凹所が形成され、該凹所に環状リブが複数個、径方向に所定間隔で形成されているとともに、放射方向のリブが該環状リブと交叉して複数個形成され、前記両リブで囲まれた部分は小区画の凹所となっている請求項1ないし4のいずれかに記載の巻取用ボビン。
- 蓋部材の蓋部は最内径側の環状リブを被覆する外径に形成され、該蓋部の外周縁の内向き面に環状リブに係合する環状段部が設けられている請求項1ないし5のいずれかに記載の巻取用ボビン。
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