JP3639174B2 - ホースリール用散水ホース - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ホースリールに巻いて使用するのに適したホースリール用散水ホースに関する。
【0002】
【従来の技術】
水やり、洗浄等に使用される散水ホースは、作業時のホースの長さ調整、収納等の利便性を図るために、ホースリールに巻いて使用することが多い。ホースリールの給水口に散水ホースの一端を接続し、他端には散水ノズルを取り付ける。散水時には、必要な長さのホースをホースリールから引き出し、散水ノズルから放水する。
散水ホースのホース壁には、耐圧性を高めるために、樹脂層の間に耐圧ネットが巻き付けられる。各樹脂層は、軟質樹脂材料を押出成形することで、柔軟性、デザイン性等が高められている。
従来、この種のホースの表面は、埃等の汚れの付着を少なくし、かつ、ホースの高級感を高めるため、透明感のある滑らかな性状にしている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の散水ホースは、ホースリールに巻いて使用する場合、ホース表面の粘着性から、ホース表面の摩擦抵抗が大きく、巻き取りおよび引き出し操作が行いにくい場合がある。例えば、ホース同士が重なると、重なった部分がくっついてホースの巻きムラを生じ、リールの回転が邪魔されることもある。このため、ユーザがホースに手を添えて巻き取りを補助しているのが現状である。
【0004】
ホースの表面の摩擦抵抗を小さくする対策としては、ホース表面に潤滑剤等を塗布することも考えられるが、このような方法では、ホースがベタ付いて作業がしづらくなり、また、ホースの体裁が悪くなる。
【0005】
そこで、本発明は、このような現状に鑑みなされたもので、ホース表面の粘着性および摩擦抵抗を低減させることで、ホースリールの巻き取りおよび引き出しを快適に行えるようにし、しかも、耐圧性およびデザイン性の良好な高級感ある散水ホースを提供することを目的する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明の第1は、
(1)ホースリールに巻いて使用するホースであって、該ホースの壁は、
通水路を形成するインナー層と、インナー層の外側に設けられる耐圧ネットと、耐圧ネットを被覆するアウター層とを備え、アウター層には、部分架橋樹脂を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を押出し成型してなる低摩擦性面が形成されること及びインナー層は、ポリ塩化ビニル等の軟質樹脂であることを特徴とするホースリール用散水ホースであり、
本発明の第2は、
(2)ホースリールに巻いて使用するホースであって、該ホースの壁は、
通水路を形成するインナー層と、インナー層の外側に設けられる耐圧ネットと、耐圧ネットを被覆するアウター層とを備え、アウター層には、部分架橋樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物を押出し成型してなる低摩擦性面が形成されること及びインナー層は、ポリ塩化ビニル等の軟質樹脂であることを特徴とするホースリール用散水ホースである。
(3)上記(1)または(2)において、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物または前記ポリオレフィン系樹脂組成物に、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニル)ホスファイトから選ばれる少なくとも一種からなる表面改質剤を添加したことを特徴とする請求項1または2記載のホースリール用散水ホース
であるとよい。
【0007】
本発明のホースリール散水ホースによれば、ホース表面に低摩擦性面が形成されるため、ホース同士が触れたときに互いに滑り合う。このため、ホースリールに散水ホースを巻き取るとき、リール上にホースが均等に分散し、巻き取りおよび引き出し作業の操作性が大幅に向上する。
【0008】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物に含まれる部分架橋樹脂は、通常生産される懸濁重合法による重合過程で「弱い架橋反応」を行うことによって生じる、部分的な架橋粒を含んだ部分架橋特殊レジンを意味する。架橋粒は、ゲル分17wt%程度であるのが望ましい。
【0009】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物の部分架橋樹脂の含有量は、主ポリ塩化ビニル樹脂に対し、10〜90wt%であるとよい。表面摩擦抵抗が十分に低下し、かつ、柔軟性およびデザイン性に優れたホースが得られるためである。
前記部分架橋樹脂を10wt%以上としたのは、部分架橋樹脂が少なすぎると、ホース表面の形状変更による滑性効果が発現せず、表面摩擦抵抗が大きくなるためである。また、90wt%以下としたのは、部分架橋樹脂が多すぎると、ホース強度が不十分になるからである。望ましくは、主ポリ塩化ビニル樹脂に対し、部分架橋樹脂の配合比を40〜70wt%とする。
【0010】
前記ポリオレフィン系樹脂としては、ポリエチレン系、ポリプロピレン系、ポリアクリル系、ポリスチレン系等の樹脂が含まれる。特に、ポリプロピレンランダムポリマーを用いると、デザイン性に優れた良質の低摩擦性面を得ることができる。
また、前記ポリオレフィン系樹脂に含まれる部分架橋樹脂は、例えば、スチレン系樹脂を主鎖とした部分架橋アクリル樹脂グラフトポリマーまたは水素添加スチレン−イソプレン−スチレン共重合樹脂を用いることができる。
【0011】
前記ポリオレフィン系樹脂組成物の部分架橋樹脂の含有量は、主ポリオレフィン系樹脂に対し、10〜50wt%であるとよい。表面摩擦抵抗が十分に低下し、柔軟性およびデザイン性に優れたホースが得られるためである。
前記部分架橋樹脂を10wt%以上としたのは、部分架橋樹脂が少なすぎると、ホース表面の形状変更による滑性効果が発現せず、表面摩擦抵抗が大きくなるためである。また、50wt%以下としたのは、部分架橋樹脂が多すぎると、ホース強度が不十分になるからである。望ましくは、主ポリオレフィン樹脂に対し、部分架橋樹脂の配合比を20〜50wt%とする。
【0012】
前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物または前記ポリオレフィン系樹脂組成物には、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニル)ホスファイトから選ばれる少なくとも一種からなる表面改質剤を添加するのが望ましい。前記部分架橋樹脂にこれらの表面改質剤を組み合わせることで、ホースの表面性状がきわめて良好になり、ホースリールの巻き取りおよび引き出し性能が格段に向上するためである。
【0013】
なお、上記表面改質剤として挙げた化学物質については、従来、リン酸系酸化防止剤として使用されるもので、樹脂の表面改質効果は知られていない。本発明者らの各種実験の結果、上記部分架橋樹脂と組み合わせて使用することで、ポリ塩化ビニル系樹脂またはポリオレフィン系樹脂に対し、優れた改質効果を有することを見出したものである。
【0014】
前記表面改質剤の添加量は、主ポリ塩化ビニル樹脂または主ポリオレフィン樹脂に対し、0.1〜1.0wt%であるとよい。0.1wt%以上としたのは、添加量が少なすぎると、十分な表面改質効果を得ることができないためで、また、1.0wt%以下としたのは、この程度の添加量で表面改質効果の発現は飽和になり、また、表面改質剤の添加量が多すぎると、樹脂の着色性を促進するからである。
【0015】
また、前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物または前記ポリオレフィン系樹脂組成物には、必要に応じて、安定剤、酸化防止剤、可塑剤、充填剤、着色剤、紫外線吸収剤等を配合するとよい。
【0016】
安定剤としては、例えば、ジオクチル錫マレエート、ジメチル錫メルカプト、ジブチル錫マレエートポリマー等の有機錫系安定剤、二塩基性ステアリン酸鉛、三塩基性硫酸鉛、ステアリン酸鉛等の鉛系安定剤、バリウム─亜鉛、カルシウム─亜鉛等の複合安定剤、無機安定剤等を用いることができる。
【0017】
酸化防止剤としては、ビスフェノールA、ブチルヒドロキシトルエン等を用いることができる。
可塑剤としては、例えば、リン酸トリクレジル、トリメリット酸−2−エチルヘキシル、フタル酸ジ−2−エチルヘキシル、アジピン酸ジ−2−エチルヘキシル、セバシン酸ジオクチル、アジピン酸系ポリエステル可塑剤等を用いることができる。
前記充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、タルク、クレー、ケイ酸カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸マグネシウム等を用いることができる。
【0018】
前記着色剤としては、フタロシアニソブルー、縮合アゾイエロー、ジスアゾイエロー、酸化チタン、カーボンブラック、フタロシアニングリーン、クロムイエロー等の顔料を用いることができる。
また、前記紫外線吸収剤としては、サルシレートエステル、ベンゾエートエステル、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系等を用いることができる。
【0019】
また、本発明のホースリール用散水ホースのホース壁には、
通水路を形成するインナー層と、前記インナー層の外側に設けられる耐圧ネットと、前記耐圧ネットを被覆するアウター層とを設けるられている。
【0020】
前記ホース壁の構成によれば、給水時の散水ホースの過大な膨張を耐圧ネットによって抑えることができ、ホースリール上でホース同士が押し合って巻き取りおよび引き出し作業を邪魔するのを防止することができる。すなわち、ホースリールの巻き取りおよび引き出し性能をより向上させることができる。
また、アウター層を透明性の樹脂で形成し、耐圧ネットを透かして見せると、散水ホースがさらに高級感のある仕上がりになる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1に示すように、散水ホース1は、ポリ塩化ビニル等の軟質の樹脂からなるインナー層2とアウター層3を備える。これらの層の間に耐圧ネット4が埋め込まれる。
インナー層2およびアウター層3は、長さ方向に一定の厚さをもつように、樹脂材料を押出形成してなる。インナー層2の内側に散水ホース1の通水路が形成される。
耐圧ネット4は、ポリエステル系の繊維をチューブ状に編んで形成される。押出成形の際に、耐圧ネット4が長さ方向に送られてインナー層の外側に巻かれ、次いで、耐圧ネット4上にアウター層3が積層される。
【0022】
アウター層3の表面には低摩擦性面Hが形成される。低摩擦性面Hは、所定の部分架橋樹脂を含むポリ塩化ビニル組成物またはポリオレフィン系樹脂組成物の表面改質効果により生じるものである。
散水ホース1は、低摩擦性面Hによって、表面摩擦抵抗が小さくなり、また、高級感のある外観に仕上がる。
【0023】
図2に示すように、散水ホース1は、ホースリール10に巻いて用いられる。ホースリール10は、フレーム13にドラム12が回転自在に支持される。ドラム12に5〜30m程度の散水ホース1が巻かれる。給水栓から補助ホース14に水が送られると、ドラムの給水パイプを通して散水ホース1に水が流れる。散水時には、必要な長さの散水ホース1をドラム12から引き出し、ホース先端の散水ノズルから放水する。
【0024】
散水ホース1をドラム12に巻き取る場合、ホース同士が接触しても、低摩擦性面Hによって互いに滑り合う。このため、ホース束が縦方向(ドラムの径方向)に重なりにくく、横方向(ドラムの軸方向)に分散する。これにより、散水ホース1を整列させやすく、均等に巻き取ることができる。また、散水時には、散水ホース1をドラム12からスムーズに引き出せる。
【0025】
次に、本発明による散水ホースの製造例について説明する。
[ポリ塩化ビニル系ホース]
表1に示す配合比の可塑化ポリ塩化ビニル樹脂組成物をリボンブレンダーに仕込み100℃で1.5時間均一混合した後、樹脂組成物を2軸混練造粒機でペレットとし、複合押出成形機で内径7mm、外径11mmのホースを製造した。
【表1】
【0026】
主ポリ塩化ビニル樹脂60kgに対し部分架橋樹脂40kgを加えたものを実施例1とし、また、ポリ塩化ビニル樹脂60kgに部分架橋樹脂40kgおよび表面改質剤:サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト0.5kgを加えたものを実施例2とした。なお、比較例として、部分架橋樹脂および表面改質剤を配合しないホースについても同様な方法で製造した(比較例1)。
【0027】
前記実施例1、実施例2および比較例1について、ホース表面の静摩擦係数および動摩擦係数を測定した結果を表2に示す。
【表2】
試験条件:摩擦係数試験 JIS K 7125準拠
試験片 :ホース表面をシート状にしたもの
測定機 :HEIDEN−14(新東科学社)
垂直荷重:200g
【0028】
表2に示すように、比較例1に対し、実施例1および実施例2は、ともに静摩擦係数および動摩擦係数が低い値になった。これにより、実施例1および実施例2は、表面状態が優れた低摩擦性能を有していることが判る。特に、実施例2については、比較例1に比べ、静摩擦係数および動摩擦係数ともに大幅に低下した。
【0029】
[ポリオレフィン系ホース]
表3に示す配合比のポリオレフィン樹脂組成物をタンブラン混合機に仕込み、2分間均一混合した後、樹脂組成物を2軸混練造粒機でペレットとし、複合押出成形機で内径7mm、外径11mmの透明ホースを製造した。
【表3】
【0030】
主ポリオレフィン系樹脂80kg(水添スチレンブタジエンラバー樹脂60kgとポリプロピレンランダムポリマー20kgの総和)に対し、部分架橋樹脂20kgおよび表面改質剤:サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト0.5kgを加えたものを実施例3とした。なお、比較例として、部分架橋樹脂および表面改質剤を配合しないホースについても同様な方法で製造した(比較例2)。
【0031】
次に、前記実施例1〜3、および比較例1、2の各ホースについて、ホースリールの引き出し性能および巻き取り性能を比較するための試験を行った。
引き出し試験は、小型収納ドラム(内径76mm)に各ホース(10m)を巻き取り、23℃または50℃で24時間放置した後、ハンディスケールで全長(10m)を引き出すまでに要する最大荷重を読み取った。
また、巻き取り試験は、小型収納ドラム(内径76mm)を回転トルクメータ試験機(NIDEC-SHINPO CORPORATION)に取り付け、各ホース(10m)をドラムより引き出しておき、10m全長を巻き取るのに要する最大荷重を読み取った。結果を表4に示す。
【0032】
【表4】
表4に示すように、実施例1〜3の引き出し最大荷重は、比較例1および2よりも低い値を示した。特に、実施例2および実施例3は、引き出し荷重が2kgf以下に抑えられ、優れた引き出し性能を示した。
また、実施例1および実施例2の巻き取り最大荷重は、比較例1よりも低くなり、巻き取り性能が向上した。特に、実施例2については、巻き取り最大荷重が比較例1に比べ大幅に低下するものとなった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のホースリール用散水ホースによれば、次のような優れた効果を奏する。
(a) ホースの表面摩擦抵抗を低減することができ、ホースリールの巻き取りおよび引き出し操作が容易になる。
(b) 耐圧性およびデザイン性の高い高級感のあるホースに仕上げることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態による散水ホースを示す部分拡大図である。
【図2】本発明の実施の形態による散水ホースの使用状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
1 散水ホース
2 インナー層
3 アウター層
4 耐圧ネット
H 低摩擦性面
10 ホースリール
12 ドラム
13 フレーム
14 補助ホース
Claims (3)
- ホースリールに巻いて使用するホースであって、該ホースの壁は、通水路を形成するインナー層と、インナー層の外側に設けられる耐圧ネットと、耐圧ネットを被覆するアウター層とを備え、アウター層には、部分架橋樹脂を含むポリ塩化ビニル系樹脂組成物を押出し成型してなる低摩擦性面が形成されること及びインナー層は、ポリ塩化ビニル等の軟質樹脂であることを特徴とするホースリール用散水ホース。
- ホースリールに巻いて使用するホースであって、該ホースの壁は、通水路を形成するインナー層と、インナー層の外側に設けられる耐圧ネットと、耐圧ネットを被覆するアウター層とを備え、アウター層には、部分架橋樹脂を含むポリオレフィン系樹脂組成物を押出し成型してなる低摩擦性面が形成されること及びインナー層は、ポリ塩化ビニル等の軟質樹脂であることを特徴とするホースリール用散水ホース。
- 前記ポリ塩化ビニル樹脂組成物または前記ポリオレフィン系樹脂組成物に、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(ノニルフェニル)ホスファイトから選ばれる少なくとも一種からなる表面改質剤を添加したことを特徴とする請求項1または2記載のホースリール用散水ホース。
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