JP3638257B2 - 回転翼航空機の揺動制御装置および方法 - Google Patents

回転翼航空機の揺動制御装置および方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ヘリコプタなどの回転翼航空機の機体の揺動を抑制する揺動制御装置および揺動制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
大気擾乱中をヘリコプタが飛行したり、ヘリコプタが突風を受けたりすると、メイン・ロータの姿勢が乱されて、0.2Hz〜2Hz程度の速い機体運動が生じ、搭乗員に不快感(乗物酔い)を与える。
【0003】
揺動の原因は、突風によるメイン・ロータ1の姿勢の変化である。図9および図10を参照してロータ姿勢について示す。
【0004】
図9に示すように、ロータ1は、複数のブレード2を有し、ロータ1が回転するとき、各ブレード2はフラッピング運動を行う。ロータ姿勢は、コーニング角α、機体に対するロータ面傾斜角(前後および左右)θで定義する。ブレード2は、回転角速度と等しい周波数(以下、1/rev周波数と称する)でフラッピング角βを変動させながら回転することから、その先端軌跡はロータ面3と呼ばれる円を描く。ロータ面3とハブ中心Oとから作られる円錐形の鋭度を表すのがコーニング角α(図10)であり、ロータ面の機体軸に対する傾斜を表すのがロータ面傾斜角θである。ロータ面傾斜角は、左右傾斜角θ1と前後傾斜角θ2で表す。コーニングは推力を発生し、ロータ面傾斜は機体に回転力を与える。ロータ姿勢は、各ブレード2の回転位置とそのときのフラッピング角βから算出することができる。
【0005】
ブレード2のフラッピング角βは、スワッシュプレートを介して制御される。たとえば、パイロット操縦において、コレクティブ・レバーによってスワッシュプレートを昇降させることで、各ブレード2のピッチ角を同時に変化させ、これによってフラッピング角が増減し、コーニング角αを変化させることができる。また、サイクリック・スティックによりスワッシュプレートの傾きを変えることで、各ブレード2のピッチ角を周期的に変化させ、これによってロータ面傾斜角θを変化させることができる。このようにして、ロータ姿勢を変化させて、ヘリコプタの運動を制御することができる。
【0006】
したがって、ロータ姿勢を計測し、このロータ姿勢が所定の定常姿勢となるように、パイロット操縦と同様にスワッシュ・プレートを介して操縦することにより、揺動を制御することが可能である。
【0007】
図11は、ヘリコプタ20の揺動制御を示すブロック図である。
ヘリコプタ20の機体10はロータ1を有し、突風を受けたときの機体10の揺動が、揺動制御装置5によって抑制される。
【0008】
揺動制御装置5は、ブレード・フラッピング・センサ6、ロータ姿勢解析器7、揺動制御器8およびアクチュエータ9で構成される。ブレード・フラッピング・センサ6で検出したフラッピング角に基づき、ロータ姿勢解析器7でロータ姿勢を算出し、所定のロータ姿勢となるように、揺動制御器8で制御する。ロータ姿勢は、スワッシュプレートによって制御できるので、揺動制御器8は、スワッシュ・プレートを制御するアクチュエータ9を調整して揺動制御を行う。このようにフィードバック制御することによって、突風を受けたときのヘリコプタ20の揺動を抑制することができる。このような揺動制御に関しては、たとえば特開平10―173855号公報に開示される。
【0009】
揺動制御は、ブレード・フラッピング運動の安定性を損なうことなく、ロータ姿勢変化を抑制しなければならない。
【0010】
各ブレード2には、図12に示すように、遠心力と空気力とが作用する。ブレード・フラッピング運動は、遠心力のブレードに垂直な成分を復元力とし、空気力を減衰力とするバネ/ダンパー系であり、その固有振動数はロータ回転角速度である1/rev周波数にほぼ等しい。また、フラップ角をβ(<<1)とすると、空気力=減衰力∝dβ/dtとなり、また復元力=遠心力×βとなる。
【0011】
実用化されているヘリコプタの1/rev周波数は、大型ヘリコプタでは4Hz程度、中型では6Hz程度、小型では8Hz程度である。
【0012】
ロータ姿勢のうち、コーニング角αにはブレード・フラッピング運動が直接現れるので、コーニング運動の固有振動数は1/rev周波数である。また、ロータ面傾斜角には、ブレード・フラッピング運動がロータ回転(1/rev)により変調されて現れるので、その固有振動数は2/rev周波数である。
【0013】
揺動の周波数は0.2Hz〜2Hz程度であり、この周波数帯でロータ姿勢(特にコーニング角α)を制御しようとすると、ブレード・フラッピング運動の固有振動に大きく影響を与えて、その安定性を損なう可能性がある。
【0014】
図13は、揺動制御装置5の揺動制御器8の制御方法を示す図である。従来の揺動制御器8では、ロータ姿勢の比例値と、ロータ姿勢の微分値とを足しあわせてフィードバック信号を生成する、いわゆる比例/微分制御である。
【0015】
この方法は、ロータ姿勢の比例値のフィードバックにより揺動を制御し、これにより減少した減衰効果を補うために、微分値を合わせてフィードバックするものである。
【0016】
揺動制御の本来の目的は、0.2Hz〜2Hz程度のロータ姿勢変化を抑制することであるが、従来技術は、ロータ姿勢の安定化を図るために、揺動よりも高い周波数である1/rev周波数も積極的に制御するものである。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】
上述した従来技術には、次のような問題点がある。
【0018】
(1)ブレード・フラッピング運動の固有振動数の増加
ロータ姿勢変化を抑制するために比例値のフィードバックを行うと、ブレード・フラッピング運動の固有振動数が増加する。そのため、揺動制御装置全体を高応答化して、制御可能な周波数帯を拡大する必要が生じる。特に応答性が低いアクチュエータの高応答化が必須である。
【0019】
(2)揺動制御器の高周波ゲインの増加
ロータ姿勢の微分値を生成するためには微分器が必要である。微分とは、入力信号の位相を90度進める作用であり、微分器のゲインは周波数とともに増加する。現実的な微分器の例として、周波数が1rad/sにおいてゲインが0dB(1倍)となるハイパス・フィルタの特性を図14に示す。6Hz(中型ヘリコプタの1/rev周波数)において十分な微分効果を得るためには、折点周波数を40Hz以上に設定する必要がある。
【0020】
図14のハイパス・フィルタ(微分器)を使い、比例ゲインKp=1、微分ゲインKd=0.04とした従来技術の特性は図15のようになり、高周波ゲインは約20dB(約10倍)とかなり大きくなる。実際のシステムでは、高周波ノイズが増幅されたり、ブレードの高次振動モードを刺激して不安定現象が励起されるなどの弊害が起こる。
【0021】
(3)ロータ姿勢の1/revノイズによるアクチュエータの加振
1/revノイズはロータのトラッキング誤差に起因する。実際のロータは、各ブレードの軌跡が全く同一でないためトラッキング誤差があり、ブレード先端で10mm程度の誤差は許容されている。トラッキング誤差はロータの回転とともに移動するので、ロータ姿勢の計測結果に1/rev周波数として現れる。
【0022】
ブレード・フラッピングの固有振動を制御しようとすると、ロータ姿勢の1/revノイズもフィードバックされ、アクチュエータは1/rev周波数で常に作動する。アクチュエータを高い周波数で作動させることは、エネルギの浪費でしかなく、耐久性を低下させる原因にもなる。
【0023】
本発明の目的は、揺動制御において、ブレード・フラッピング運動の安定性を損なわずに揺動を制御する揺動制御装置および方法を提供する。
【0024】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、ロータ姿勢を計測するロータ姿勢計測手段と、ロータ姿勢を制御するアクチュエータと、ロータ姿勢が所定の姿勢となるように、計測したロータ姿勢に基づいて、前記アクチュエータを介してロータ姿勢をフィードバック制御し、機体の揺動を抑制する制御手段とを有する回転翼航空機の揺動制御装置において、
前記制御手段は、ロータ姿勢計測手段で計測したロータ姿勢の変化のうち、ロータの回転速度と等しい周波数およびその整数倍の周波数である特定の周波数を除去または減衰させるフィルタを有し、該フィルタを通過したロータ姿勢の変化に基づいて、ロータ姿勢をフィードバック制御することを特徴とする回転翼航空機の揺動制御装置である。
【0026】
本発明に従えば、ロータ姿勢測定手段は、たとえばロータのブレードのフラッピング角を検出し、これに基づいてロータ姿勢を算出する。制御手段は、所定のロータ姿勢となるように、測定したロータ姿勢の変化に基づいてフィードバック制御する。ロータ姿勢の変化には、前述したように、ロータの回転速度に等しい周波数である1/rev周波数およびその整数倍の周波数が含まれ、このままフィードバック制御すると、ブレードフラッピング運動の安定性が損なわれるが、本発明では、フィルタによって、特定の周波数である前記1/rev周波数およびその整数倍の周波数を除去または減衰することによって、フラッピングの固有振動成分を除去することが可能となり、ブレード・フラッピング運動の安定性を損なわずに、機体の揺動を制御することができる。
【0027】
請求項記載の本発明の前記制御手段は、前記フィルタを通過してロータ姿勢の変化に基づき、比例・積分・微分制御を行うことを特徴とする。
【0028】
本発明に従えば、1/rev周波数を除去したロータ姿勢の変化に基づいて、PID(比例・積分・微分)制御を行うことで、制御成績をさらに向上させることができる。
【0029】
請求項記載の本発明は、ロータの回転速度を検出する回転速度検出器を有し、
前記制御手段は、フィルタが除去または減衰させる特定の周波数と、前記回転速度検出器で検出したロータの回転速度とが一致するように制御することを特徴とする。
【0030】
ロータの回転速度(1/rev周波数)の変化に伴ってフラッピング固有振動数も変化するが、フィルタの除去する特定の周波数を、ロータの回転速度に連動して変更することで、常にフラッピングの固有振動成分を除去することが可能となる。
【0031】
請求項記載の本発明の前記回転速度検出器は、ロータの一回転あたり、所定個のロータ回転信号を出力し、
前記制御手段は、ロータ姿勢測定およびフィルタ演算を含む一連の制御演算をデジタル計算機で行い、この一連の制御演算を、前記ロータ回転信号に同期して動作させることを特徴とする。
【0032】
本発明に従えば、ロータ回転信号は、ロータの一回転あたり、たとえばN個のパルス信号を出力する。したがって、このロータ回転信号に基づいて1/rev周波数の信号を得ることができる。また、ロータ姿勢の測定およびフィルタ演算などの一連の制御演算は、デジタル計算機で実行されるので、前記ロータ回転信号をトリガーとして一連の処理を動作させることで、フィルタが除去または減衰する特定の周波数の設定を固定したままで、常に前記特定周波数を1/rev周波数に一致させることができる。
【0033】
請求項記載の本発明は、ロータ姿勢が所定の姿勢となるように、測定したロータ姿勢に基づいてロータ姿勢をフィードバック制御し、機体の揺動を抑制する回転翼航空機の揺動制御方法において、
検出したロータ姿勢の変化から、ロータの回転速度と等しい周波数およびその整数倍の周波数である特定の周波数を除去または減衰させ、これに基づいて、ロータ姿勢をフィードバック制御することを特徴とする回転翼航空機の揺動制御方法である。
【0034】
本発明に従えば、フィルタによって、前記1 /rev周波数を減衰または除去することによって、フラッピングの固有振動成分を除去することが可能となり、ブレード・フラッピング運動の安定性を損なわずに、機体の揺動を制御することができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
つぎに、本発明の実施の一形態である揺動制御装置について説明する。ヘリコプタおよび揺動制御の全体は、図9〜図11で説明した従来技術と同様であるので、対応する構成には同一の参照符号を付して適宜説明を省略する。
【0036】
揺動制御の構成は、図11のブロック図を参照して補足して説明する。なお、本発明の特徴は、揺動制御装置5の揺動制御器8であるので、この揺動制御器8の制御方法について後に詳細に説明する。
【0037】
各ブレード2のフラッピング角βは、機体10に取り付けられたフラッピングセンサ6によって検出する。フラッピングセンサ6は、たとえば各ブレード2の下面に取り付けられる反射鏡と、機体10に取り付けられ、レーザ素子などの投光手段および反射光を受ける受光手段とを有するセンサ本体とを有する。センサ本体は、ロータのハブを中心として等間隔に機体10に取り付けられる。そして、センサの投光手段から出てブレード2の反射鏡で反射した光を受光手段で受けることで、ブレード2の高さ方向の位置を検出する。この検出した高さ位置と、そのときのブレードの回転位置に基づいてブレードのフラップ角βが出力される。このようにして、フラッピングセンサ6から出力されたブレードのフラップ角βロータ姿勢解析器7に入力され、ここでロータ姿勢、つまりコーニング角α、ロータ面左右傾斜角θ1、およびロータ面前後傾斜角θ2が算出される。
【0038】
フラッピングセンサ7の他の形態として、機体10に、ロータのハブを中心とする複数箇所に受光素子を設け、この受光素子で受光する太陽光の受光量に基づいてブレードの高さ位置を検出するものであっても良い。受光素子で受光する太陽光は、ブレード2によって遮られることで、受光量が変化する。つまり、ブレードの高さ位置によって、遮られる光量が変化するので、受光素子で受光する光量に基づいて各ブレード2の高さ位置を検出する。そして、検出した高さ位置と、そのときのブレードの回転位置とからブレードのフラップ角βを算出する。
【0039】
揺動制御器8は、ロータ姿勢解析器7から出力されたロータ姿勢が、所定のロータ姿勢となるように制御する。つまり、検出したロータ姿勢と、所定のロータ姿勢との差が小さくなるように、フィードバック制御する。所定のロータ姿勢とは、たとえば揺動前の定常状態でのロータ姿勢である。揺動制御器8からはアクチュエータ9へ指令値が出力され、アクチュエータ7は、スワッシュプレートを調整してロータ姿勢を変化させる。このようにして、揺動制御器8では、ロータ姿勢の比例値のフィードバックにより揺動を抑制する。
【0040】
ブレード2は、ロータ1の回転速度に等しい1/rev周波数の固有振動でフラッピング運動をしているため、ロータ姿勢解析器7からの出力信号には、この1/rev周波数が含まれる。したがって、ロータ姿勢解析器7からの信号をそのまま用いてフィードバック制御した場合には、フラッピング運動の固有振動成分がフィードバックして、揺動制御がフラッピング運動に干渉してしまう。
【0041】
そこで、本発明の揺動制御器8は、図1のブロック図に示すように、比例ゲイン22の前にノッチ・フィルタ21を有する。ノッチ・フィルタ21は、図2に示すように、特定の周波数(ノッチ周波数)の成分を除去する性質がある。本発明では、ノッチ周波数を、1/rev周波数と一致させる。これによって、フラッピング運動の固有振動成分がフィードバックしないので、揺動制御はフラッピング運動に干渉しない。
【0042】
したがって、揺動制御はブレード・フラッピング運動の安定性を損なうことがなく、その固有振動数を増加させることもない。また、ノッチ・フィルタを使用しても、高周波ゲインの増加は起こらない。
【0043】
図1に示す揺動制御器8では、比例制御のみとしたが、揺動制御器8の他の形態として、図3に示すように、ノッチフィルタ21とPID(比例・積分・微分)制御器23とを組合せイするように構成してもよい。この場合もノッチ・フィルタ21により安定性を確保し、さらにPID制御器により制御成績を向上することができる。
【0044】
飛行中は、ロータ回転速度(1/rev周波数)の変化に伴ってフラッピング固有周波数も変化するが、ノッチ周波数をロータ回転速度と連動させて変更することで、常にフラッピングの固有振動成分を除去することが可能となる。
【0045】
図4は、ノッチ周波数をロータ回転周波数に一致させる第1の方法を示す図である。
【0046】
フラッピングセンサ6は、ブレード変位を検出するブレード変位センサ25と、このブレード変位にセンサ25からデータを取り込むデータ取得部26とからなる。このブレード変位センサからのデータの取込み、ロータ姿勢解析器7、およびノッチ・フィルタ21を含む揺動制御装置5の一連の制御演算は、デジタル計算機で実行される。また、ロータ1には、ロータ回転速度検出器であり、ロータの一回転当りN個のパルス信号を出力するロータ回転信号出力器が設けられる。このロータ回転信号出力器からのロータ回転信号をトリガーとして、前記一連のデジタル計算を動作させる。ロータ回転信号の周波数はロータ回転速度とともに変化するので、ノッチ・フィルタの設定を固定したままで、常にノッチ周波数を1/rev周波数に一致させることができる。
【0047】
図5は、ノッチ周波数を1/rev周波数に一致させる第2の方法を示す図である。
【0048】
この方法では、前記ロータ回転信号出力器からの信号周波数を、直流電圧値に変換するF/V変換器30を有する。そして、このF/V変換器30からの信号の電位に従ってノッチ・フィルタ21のノッチ周波数の設定を変更する。これによって、ロータの回転速度が変動しても、常にノッチ周波数を1/rev周波数に一致させることができる。
【0049】
つぎに、コーニング角からコレクティブ操縦への揺動制御の効果を、1/rev周波数が6Hzのヘリコプタの運動モデルを使った計算例により示す。突風入力は、上下方向のステップ状とする。また、1/revノイズに対する応答も示す。
【0050】
計算は図6に示す構成で行った。揺動制御の形態は、次の3種類である。
制御形態:
・制御なし
・従来技術−比例/微分制御(比例ゲインKp=1、微分ゲインKd=0.04)
・本発明−ノッチ・フィルタ21による揺動制御(比例ゲインKp=1)
【0051】
また、現実的な制御装置を模擬するために、揺動制御器8の入出力に1次のローパス・フィルタ35(折点周波数=25Hz)を付加し、また、アクチュエータ9の動特性は1次ローパス・フィルタ(折点周波数=10Hz)とした。
【0052】
(1)ステップ状の上向突風に対する応答
図7に、上向突風に対する応答を示す。
【0053】
従来技術は、コーニング角変位の初動を抑制できている反面、操縦入力に振動成分が現れて発散傾向を示しており、安定性の限界が低いことがわかる。また、操縦入力波形から、コーニング(ブレード・フラッピング)の固有振動数は約9Hz(約1.5倍)に増加している。
【0054】
本発明は、ノッチ・フィルタ21により1/rev成分(6Hz)を除去しているので、初動を抑制することはできないが、振動成分の減衰が良く、安定に動作していることから、さらにフィードバック・ゲインを大きくして、制御成績の向上を図ることが可能である。
【0055】
(2)1/revノイズに対する応答
図8に、1/revノイズに対する応答を示す。ただし、従来技術のフィードバック・ゲインは、これが安定に動作するように小さく設定してある。
【0056】
従来技術では、1/revノイズに応答して操縦入力が発生している(アクチュエータが作動する)のに対して、本発明では、1/revノイズによる操縦入力が全く発生しない。
【0057】
1/revノイズは揺動の範疇にないので、これを制御することは無意味である。また、アクチュエータを1/rev周波数で常に作動させることは、エネルギーの浪費でしかなく、耐久性を低下させる原因にもなる。
【0058】
上述した実施形態では、1/rev周波数を除去するものとしてノッチ・フィルタとしたが、本発明はこれに限らず、特定の周波数を減衰させるフィルタであれば可能である。
【0059】
【発明の効果】
以上のように本発明によれば、ロータの回転速度と等しい周波数およびその整数倍の周波数である特定の周波数を除去または減衰させるフィルタを用いることで、
(1)ブレード・フラッピング運動の固有振動数が増加しない。
(2)高周波ゲインが増加しない。
(3)トラッキング誤差による1/revノイズを除去できる。
といった効果が得られ、ブレード・フラッピング運動の安定性を損なわずに従来技術と同等な制御成績が得られる。
【0060】
また本発明によれば、PID(比例・積分・微分)制御を行うことで、制御成績をさらに向上させることができる。
【0061】
また本発明によれば、フィルタの除去する特定の周波数を、ロータの回転速度に連動して変更することで、常にフラッピングの固有振動成分を除去することが可能となる。
【0062】
また本発明によれば、ロータ姿勢の測定およびフィルタ演算などの一連のデジタル計算を、ロータ回転信号をトリガーとして動作させることで、フィルタが除去または減衰する特定の周波数の設定を固定したままで、常に前記特定周波数を1/rev周波数に一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の揺動制御装置5の揺動制御器8の制御方法の実施の一形態を示すブロック図である。
【図2】ノッチ・フィルタ21の特性を示すグラフである。
【図3】揺動制御器8の他の形態を示すブロック図である。
【図4】ノッチ周波数をロータ回転周波数に一致させる第1の方法を示す図である
【図5】ノッチ周波数を1/rev周波数に一致させる第2の方法を示す図である。
【図6】ヘリコプタの運動モデルを示すブロック図である。
【図7】上向突風に対する応答を、制御なし、従来技術、本発明とで対比させて示すグラフである。
【図8】 1/revノイズに対する応答を、制御なし、従来技術、本発明とで対比させて示すグラフである。
【図9】ブレード2のフラッピング角βを示す図である。
【図10】ロータ1のコーニング角αおよびロータ面傾斜角θを示す図である。
【図11】図11は、ヘリコプタ20の揺動制御を示すブロック図である。
【図12】ブレード・フラッピング運動を説明する図である。
【図13】従来の揺動制御装置5の揺動制御器8の制御方法を示す図である。
【図14】図13の揺動制御器8のハイパス・フィルタ(微分器)の特性を示すグラフである。
【図15】図14のハイパス・フィルタ(微分器)を使った従来技術の特性を示すグラフである。
【符号の説明】
1 ロータ
2 ブレード
3 ロータ面
5 揺動制御装置
6 フラッピング・センサ
7 ロータ姿勢解析器
8 揺動制御器
9 アクチュエータ
21 ノッチ・フィルタ

Claims (5)

  1. ロータ姿勢を計測するロータ姿勢計測手段と、ロータ姿勢を制御するアクチュエータと、ロータ姿勢が所定の姿勢となるように、計測したロータ姿勢に基づいて、前記アクチュエータを介してロータ姿勢をフィードバック制御し、機体の揺動を抑制する制御手段とを有する回転翼航空機の揺動制御装置において、
    前記制御手段は、ロータ姿勢計測手段で計測したロータ姿勢の変化のうち、ロータの回転速度と等しい周波数およびその整数倍の周波数である特定の周波数を除去または減衰させるフィルタを有し、該フィルタを通過したロータ姿勢の変化に基づいて、ロータ姿勢をフィードバック制御することを特徴とする回転翼航空機の揺動制御装置。
  2. 前記制御手段は、前記フィルタを通過してロータ姿勢の変化に基づき、比例・積分・微分制御を行うことを特徴とする請求項1記載の回転翼航空機の揺動制御装置。
  3. ロータの回転速度を検出する回転速度検出器を有し、
    前記制御手段は、フィルタが除去または減衰させる特定の周波数と、前記回転速度検出器で検出したロータの回転速度とが一致するように制御することを特徴とする請求項2記載の回転翼航空機の揺動制御装置。
  4. 前記回転速度検出器は、ロータの一回転あたり、所定個のロータ回転信号を出力し、
    前記制御手段は、ロータ姿勢測定およびフィルタ演算を含む一連の制御演算をデジタル計算機で行い、この一連の制御演算を、前記ロータ回転信号に同期して動作させることを特徴とする請求項記載の回転翼航空機の揺動制御装置。
  5. ロータ姿勢が所定の姿勢となるように、測定したロータ姿勢に基づいてロータ姿勢をフィードバック制御し、機体の揺動を抑制する回転翼航空機の揺動制御方法において、
    検出したロータ姿勢の変化から、ロータの回転速度と等しい周波数およびその整数倍の周波数である特定の周波数を除去または減衰させ、これに基づいて、ロータ姿勢をフィードバック制御することを特徴とする回転翼航空機の揺動制御方法。
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