JP3638019B2 - 組換え体センダイウイルス - Google Patents

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Description

本発明は、組換え体センダイウイルスとその製造方法に関する。
センダイウイルス(Sendai virus)は、HVJ(Hemagglutinating virus of Japan)とも呼ばれ、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、パラミクソウイルス属(Paramyxovirus)に属するパラインフルエンザウイルス1型に分類される。
センダイウイルス粒子は多形性であり、直径150〜200nmのエンベロープを有し、中に翻訳の鋳型とはならないゲノムRNA(以下「(−)鎖RNA」と称する。)を有する。センダイウイルスは、歴史的に見ても産業上有用なウイルスとして知られており、とくに細胞のヘテロカリオンや雑種細胞の作製、すなわち細胞融合に広く利用されている。また、膜融合性リポソームの材料として、遺伝子治療用のベクターとしても開発が進められている。さらには、各種インターフェロンの誘導剤としてもセンダイウイルスは利用されている。
ゲノム核酸の形態による分類では、センダイウイルスは、RNAウイルスの、(−)鎖RNAウイルスの、(−)1本鎖RNAウイルスグループに属する。RNAウイル スは、dsRNAウイルス(double stranded RNA virus)、(+)鎖RNAウイルスお よび(−)鎖RNAウイルスの3者に分類される。dsRNAウイルスグループには、レオウイルス、ロタウイルス、植物レオウイルス等があり、分節型の複数の線状dsRNAゲノムを有している。(+)鎖RNAウイルスには、ポリオウイルス、シンドビスウイルス、セムリキ森林ウイルス、日本脳炎ウイルス等があり、1本の(+)鎖RNAをゲノムとして有しており、このRNAゲノムは同時にmRNAとしても機能し、複製や粒子形成に必要な蛋白質を宿主細胞の翻訳機能に依存して生産することができる。言い換えれば、(+)鎖RNAウイルスが有するゲノムRNA自体が伝播力を有する。なお、本明細書において「伝播力」とは、「感染や人工的な手法で核酸が細胞内に導入された後、細胞内に存在する該核酸が複製後、感染性粒子またはそれに準ずる複合体を形成し、別の細胞に次々と伝播することのできる能力」を言う。(+)鎖RNAウイルスに分類されるシンドビスウイルスや(−)鎖RNAウイルスに分類されるセンダイウイルスは、感染能と伝播力とを有するが、パルボウイルス科に分類されるアデノ随伴ウイルス(Adeno-associated virus)は、感染能を有するが、伝播力を有しない(ウイルス粒子が形成されるためには、アデノウイルスの同時感染が必要である)。また、試験管内で人工的に転写されたシンドビスウイルス由来の(+)鎖RNAは伝播力を有する(細胞内に導入されるとウ イルス粒子を形成する)が、試験管内で人工的に転写されたセンダイウイルスRNAは(+)鎖、(−)鎖ともに伝播力を有しない(細胞内に導入されてもウイルス粒子を形成しない)。
近年では遺伝子治療用のベクターとしてウイルス由来のものが用いられている。ウイルスをベクターとして利用するためには、ウイルス粒子の再構成のための手法が確立している必要がある。(「ウイルス粒子の再構成」とは、ウイルスゲノムの核酸を人工的に作製し、試験管内または細胞内において、もとのウイルスまたは組換え体ウイルスを作製することである。)外来性遺伝子をウイルスベクターに導入するためには、遺伝子操作によって外来性遺伝子を組み込んだウイルスゲノムからウイルス粒子が再構成されなくてはならないからである。ウイルスの再構成技術が確立されれば、ウイルスに所望の外来性遺伝子を導入したり、ウイルスの所望の遺伝子を欠失させたり、不活化させたりしたウイルスを作製することが可能となる。
また、ウイルスの再構成系が構築され、ウイルスの遺伝子操作が可能となれば、ウイルスの機能を遺伝学的に解析する大きなツールとなることは明白である。ウイルス機能の遺伝学的解析は、疾病の予防、治療等の医学的見地からきわめて重要である。例えば、ウイルス核酸の複製メカニズムが解明されれば、その宿主細胞内の核酸の複製機構との差を利用して、宿主細胞にダメージの少ない、核酸の複製を作用点とした抗ウイルス剤を開発することが可能である。また、ウイルス遺伝子のコードする蛋白質がどのような機能を有するかを解明することにより、ウイルス粒子感染能や、ウイルス粒子形成能に関わる蛋白質をターゲットとした抗ウイルス剤を開発することもできよう。また、膜融合能に関わる遺伝子を改良することにより、より優れた膜融合性リポソームを作製し、遺伝子治療用のベクターとして使用することが可能となることが期待できる。また、インターフェロンに代表されるように、ウイルスに感染することにより宿主遺伝子のウイルス抵抗性に関わる遺伝子が活性化され、ウイルス抵抗性を示す場合もある。このような宿主遺伝子の活性化に関しても、ウイルス機能の遺伝学的解析により重要な知見が得られるであろう。
DNAをゲノム核酸とするDNAウイルスの再構成は比較的早くから行なわれており、例えば、SV40(J. Exp. Cell Res.,43,415-425(1983))のように、精製したゲノムDNAそのものをサルの細胞に導入することにより行なうことが可能である。
RNAをゲノム核酸とするRNAウイルスの再構成は、(+)鎖RNAウイルスにおいて開発が先行した。この理由は、ゲノムRNAが、同時にmRNAとして機能するから である。例えば、ポリオウイルスでは、精製したRNA自体が伝播力を有すること が、すでに1959年に報告されている(Journal of Experimental Medicine,110,65-89(1959))。また、セムリキ森林ウイルス(Semliki forest virus; SFV)で は、宿主細胞のDNA依存性RNA転写活性を利用することにより、cDNAを細胞内に導入することによってウイルスの再構成が可能であることが報告されている(Journal of Virology,65,4107-4113(1991))。
さらにはこれらの再構成技術を利用して、遺伝子治療用ベクターの開発も進められている[Bio/Technology,11,916-920(1993)、Nucleic Acids Research,23, 1495-1501(1995)、Human Gene Therapy,6,1161-1167(1995)、Methods in Cell Biology,43,43-53(1994)、Methods in Cell Biology,43,55-78(1994)]。
ところが、前述したとおり、センダイウイルスは産業的に有用なウイルスとして利用しうる長所を多数有しているにもかかわらず、(−)鎖RNAウイルスであ るため、再構成系が確立していなかった。そのことは、ウイルスcDNAを経由したウイルス粒子再構成系がきわめて困難だったことに起因する。
前述したように(−)鎖RNAウイルスのRNA(vRNA; viral RNA)またはその相補 鎖RNA(cRNA;complementary RNA)を単独で細胞内に導入しても(−)鎖RNAウイルスは生成されないことが明らかにされている。このことは、(+)鎖RNAウイル スの場合と決定的に違う点である。なお、特開平4-211377号公報には、「負鎖RNAウイルスのゲノムに対応するcDNAおよび感染性の負鎖RNAウイルスの製造方法」について記載があるが、該公報の実験内容がそのまま記載されている「EMBO.J.,9,379-384(1990)」は、実験の再現性がないことが明らかとなり、筆者みずから 論文内容を全面的に取り下げている(EMBO.J.,10,3558(1991)参照)ことからし て、特開平4-211377号公報に記載の技術が本発明の先行技術に該当しないのは明らかである。
(−)鎖RNAウイルスの再構成系について、インフルエンザウイルスに関して は報告がある(Annu.Rev. Microbiol.,47, 765-790(1993)、Curr. Opin. Genet. DEV.,2,77-81(1992))。インフルエンザウイルスは、8分節ゲノムより構成さ れる(−)鎖RNAウイルスである。これらの報告によれば、あらかじめそのうち の1つのcDNAに外来性遺伝子を挿入し、また外来性遺伝子を含む8本すべてのcDNAから転写されたRNAをあらかじめウイルス由来のNP蛋白質と会合させてRNPとした。これらのRNPと、RNA依存性RNAポリメラーゼとを細胞内に供給することによ り、再構成が成立した。また、(−)鎖一本鎖RNAウイルスについては、ラブド ウイルス科に属する狂犬病ウイルスでcDNAからのウイルス再構成についての報告がある(J. Virol.,68, 713-719(1994))。
従って、(−)鎖RNAウイルスの再構成系技術は基本的には公知のものとなったが、センダイウイルスの場合は、この手法をそのまま適用しても、ウイルスを再構成することができなかった。また、ラブドウイルスにおいてウイルス粒子が再構成されたという報告については、マーカー遺伝子の発現やRT-PCR等で確認を行なっているだけであり、生産量の面から十分とはいえなかった。さらには、従来は、再構成に必要な因子を細胞内で供給する目的で、天然型のウイルスや組換え型のワクチニアウイルス等のウイルスを、再構成するべきウイルスの核酸と同時に細胞に供給しており、再構成された所望のウイルスとそれらの有害なウイルスの分離が容易でないという問題があった。
本発明は、製造効率の良いセンダイウイルス再構成系を確立し、センダイウイルスの遺伝子操作を可能とし、遺伝子治療等の分野で十分実用に耐えうるセンダイウイルスベクターを供給することを課題とする。
本発明者らはまず、センダイウイルスの再構成試験に適用するため、センダイウイルスDI粒子(defective interfering particle/EMBO.J.,10,3079-3085(1991)参照)由来のcDNAまたはセンダイウイルスミニゲノムのcDNAを用いて、種々の検討を行なった。その結果、細胞内に導入する、cDNA、転写複製に関するcDNA群、およびT7RNAポリメラーゼ発現ユニットである組換え体ワクチニアウイルスの 量比について、効率の良い条件を見いだした。本発明者らは更に、センダイウイルス全長のcDNAを(+)鎖と(−)鎖の両者とも取得し、細胞内で(+)鎖または(−)鎖のセンダイウイルスRNAが生合成されるようなプラスミドを構築し、転写複製に関するcDNA群を発現している細胞内に導入した。その結果センダイウイルスcDNAよりセンダイウイルス粒子を再構成することに初めて成功した。なお、本発明者らによって、効率良い粒子再構成のためには、細胞内に導入するcDNAの形態が線状よりも環状のほうが適当であり、また(−)鎖RNAが細胞内で転写されるよりも、(+)鎖RNAが細胞内で転写されるほうが粒子形成効率が高いことが新たに見い出された。
さらに、本発明者らは、T7RNAポリメラーゼ発現ユニットである組換え体ワクチニアウイルスを用いない場合でもセンダイウイルスの再構成を行いうることを見い出した。すなわち、試験管内で転写したセンダイウイルス全長RNAを細胞内に導入し、初期転写複製酵素群のcDNAをT7プロモーター支配下で転写させた場合、ウイルス粒子が再構成された。このことは、初期転写複製酵素群をすべて発現する細胞を構築すれば、ワクチニアウイルスのようなヘルパーウイルスを全く使用せずに組換え体センダイウイルスを作出することが可能であることを示している。なお、初期転写複製酵素群をすべて発現する細胞は、「J.Virology, 68,8413-8417(1994)」に記載されており、該記載を参照して当業者が作出することが可能である。なお、該文献記載の細胞は、センダイウイルス遺伝子のうち、NP、P/C、Lの3者を染色体上に有している293細胞由来の細胞であり、このものは、NP、P/C、Lの3者の蛋白質を発現している。
多くのウイルスベクターの例から、核酸からウイルス粒子の再構成が効率よくできるならば、所望のウイルス遺伝子を組み換えたり、外来性遺伝子を挿入したり、または所望のウイルス遺伝子を不活化させたり、欠失させることは、当業者にとって容易になしうることであることは明らかである。即ち、本発明において初めてセンダイウイルス粒子の再構成に成功したことは、本発明によってセンダイウイルスの遺伝子操作が可能となったことを意味することは、当業者には自明のことである。
すなわち本発明は以下のものを含む。
(1) 所望の外来性遺伝子を含むかまたは所望の遺伝子が欠失もしくは不活化したゲノムを保持し、伝播力を有する組換え体センダイウイルス、
(2) 1つ以上の機能蛋白質遺伝子が改変されていることを特徴とする(1)に記載の組換え体センダイウイルス、
(3) 宿主内で発現可能な外来性遺伝子を有することを特徴とする、(1)または(2)に記載の組換え体センダイウイルス、
(4) (1)〜(3)のいずれかに記載の組換え体センダイウイルスに含まれるRNAを含むRNA、
(5) (1)〜(3)のいずれかに記載の組換え体センダイウイルスに含まれるRNAのcRNAを含むRNA、
(6) (a)(4)または(5)に記載のRNAを転写しうる鋳型cDNAを含むDNAと、(b)該DNAを鋳型として試験管内または細胞内で(4)または(5)に記載のRNAを転写しうるユニットとを含むキット、
(7) (a)センダイウイルスのNP蛋白質、P/C蛋白質およびL蛋白質(各蛋白質 は同等の活性を有する蛋白質でもよい)を発現する宿主と、(b)(4)または(5)に記載のRNAとを含むキット、
(8) センダイウイルスのNP蛋白質、P/C蛋白質およびL蛋白質(各蛋白質は同等の活性を有する蛋白質でもよい)を発現する宿主に、(4)または(5)に記載のRNAを導入することを含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の組換え体センダイウイルスの製造方法、
(9) (a)センダイウイルスのNP蛋白質、P/C蛋白質およびL蛋白質を発現する宿主、(b)(4)または(5)のいずれかに記載のRNAまたはcRNAを転写しうる鋳型cDNAを含むDNA、(c)該DNAを鋳型として試験管内または細胞内で(4)または(5)に記載のRNAを転写しうるユニットの3者を含むキット、および
(10) センダイウイルスのNP蛋白質、P/C蛋白質およびL蛋白質を発現する宿主に、(4)または(5)に記載のRNAを転写しうる鋳型cDNAを含むDNAと、該DNAを鋳型として試験管内または細胞内で(4)または(5)に記載のRNAを転写しうるユニットとを導入することを含む、(1)〜(3)のいずれかに記載の組換え体センダイウイルスの製造方法、
(11) 宿主に(3)記載の組換え体センダイウイルスを感染させ、発現した外来性タンパク質を回収する工程を含む、外来性タンパク質の製造方法、
(12) (3)記載の組換え体センダイウイルスを宿主に導入し、培養液または漿尿液を回収することによって取得しうる、発現した外来性タンパク質を含む培養液または漿尿液、および
(13) コードするタンパク質のアンチセンスRNAが転写される向きでプロモーター下流に配置された外来性遺伝子と該プロモーターとを含む、センダイウイルスベクター中に組み込まれた該外来性遺伝子がコードするタンパク質を発現させるためのDNA。
本発明の組換え体センダイウイルスベクターは、例えば、遺伝子工学的に製造した組換え体センダイウイルスベクターゲノムをコードする組換えcDNAを試験管内で転写し、組換え体センダイウイルスゲノムRNAを製造し、該RNAをセンダイウイルスのNP蛋白質、P/C蛋白質およびL蛋白質(各蛋白質は同等の活性を有する蛋白質でもよい)を同時に発現する宿主に導入することによって得ることができる。また、別法として、本発明のセンダイウイルスベクターは、(i)遺伝子工学的に製造した組換え体センダイウイルスベクターゲノムをコードする組換えcDNA、(ii)該DNAを鋳型として細胞内でRNAを転写しうるユニットを、センダイウイルスのNP蛋白質、P/C蛋白質およびL蛋白質(各蛋白質は同等の活性を有する蛋白質でもよい)を同時に発現する宿主に導入することによって得ることができる。この場合、例えば、(i)は特定のプロモーター下流に接続されおり、(ii)は該特定のプロモーターに作用するDNA依存性RNAポリメラーゼを発現するDNAでありうる。
本発明の組換え体センダイウイルスにおいて、所望の外来性遺伝子を挿入するかまたは所望の遺伝子を欠失もしくは不活化させる前の材料となるセンダイウイルスとしては、パラインフルエンザ1型に分類される株であれば良く、例えばZ株(Sendai virus Z strain)、フシミ株(Sendai virus Fushimi strain)等が挙げられる。また、DI粒子等の不完全ウイルスや、合成したオリゴヌクレオチド等も、材料の一部として使用することができる。
また、本発明の組換え体センダイウイルスは、伝播力を保持する限り、該組換え体に含まれるRNAのいかなる部位にいかなる外来性遺伝子が挿入されていても、またいかなるゲノム遺伝子が欠失または改変されていてもよい。挿入される外来性遺伝子としては、宿主内で発現可能な、各種サイトカインをコードする遺伝子や各種ペプチドホルモンをコードする遺伝子が挙げられる。所望のタンパク質を発現させるためには、所望のタンパク質をコードする外来性遺伝子を挿入する。センダイウイルスRNAにおいては、R1配列(5'-AGGGTCAAAGT-3')とR2配列(5'-GTAAGAAAAA-3')との間に、6の倍数の塩基数を有する配列を挿入することが望ましい(Journal of Virology,Vol.67,No.8,(1993)p.4822-4830)。発現効率挿入した外来性遺伝子の発現量は、遺伝子挿入の位置、また遺伝子の前後のRNA塩基配列により調節しうる。例えば、センダイウイルスRNAにおいては、挿入位置がNP遺伝子に近いほど、挿入された遺伝子の発現量が多いことが知られている。なお、所望のタンパク質を発現させるための宿主としては、組換え体センダイウイルスが感染する細胞であればいかなるものでもよいが、例えば、培養された哺乳動物細胞や鶏卵などがあげられる。これらの宿主に、発現可能な外来性遺伝子を組み込んだ組換え体センダイウイルス感染させ、発現された外来性遺伝子産物を回収することによって、外来性遺伝子産物を効率よく製造することができる。発現されたタンパク質は例えば、培養細胞を宿主とする場合には培養液から、鶏卵を宿主とする場合には尿漿液から、常法によって回収しうる。
なお、外来性遺伝子を(−)鎖のセンダイウイルスRNAが生合成されるようなプラスミドに組み込む際は、外来性遺伝子がコードするタンパク質のアンチセンスRNAが転写される向きで、外来性遺伝子をプロモーター下流に挿入する必要がある。このような「コードするタンパク質のアンチセンスRNAが転写される向きでプロモーター下流に配置された外来性遺伝子と該プロモーターとを含む、センダイウイルスベクター中に組み込まれた該外来性遺伝子がコードするタンパク質を発現させるためのDNA」は、本発明によって初めて利用可能になったものであり、本発明の一部である。
また、例えば、免疫原性に関与する遺伝子を不活性化したり、RNAの転写効率や複製効率を高めるために、一部のセンダイウイルスのRNA複製に関与する遺伝子を改変したものでも良い。具体的には、例えば複製因子であるNP蛋白質、C/P蛋白質、L蛋白質の少なくとも一つを改変し、転写、複製機能を高めたり弱めたりすることもできる。また、構造体蛋白質の1つであるHN蛋白質は、赤血球凝集素であるヘマグルチニン(hemagglutinin)活性とノイラミニダーゼ(neuraminidase)活性との両者の活性を有するが、例えば前者の活性を弱めることができれば、血液中でのウイルスの安定性を向上させることが可能であろうし、例えば後者の活性を改変することにより、感染能を調節することも可能である。また、膜融合に関わるF蛋白質を改変することにより、再構成されたセンダイウイルスと所望の薬剤や遺伝子等を封入した人工的なリポソームとを融合させた膜融合リポソームの改良に用いることも可能である。
本発明によって、ゲノムRNAの任意の位置に点変異や挿入を導入することが可能となったが、このことによりウイルスの機能の遺伝学的知見が加速度的に蓄積されることが大いに期待される。例えば、ウイルスRNAの複製メカニズムが解明 されれば、その宿主細胞由来の核酸の複製機構との差を利用して、宿主細胞にダメージの少ない、核酸の複製を作用点とした抗ウイルス剤を開発することが可能である。また、ウイルス遺伝子のコードする蛋白質がどのような機能を有するかを解明することにより、ウイルス粒子感染能や、ウイルス粒子形成能に関わる蛋白質をターゲットとした抗ウイルス剤を開発することもできよう。具体的には、例えば、細胞表面の抗原分子となりうるF蛋白質やHN蛋白質の抗原提示エピトー プの解析等に利用できる。また、ウイルスに感染することにより宿主遺伝子のウイルス抵抗性に関わる遺伝子が活性化され、ウイルス抵抗性を示す場合、このような宿主遺伝子の活性化に関しても、ウイルス機能の遺伝学的解析により重要な知見が得られるであろう。センダイウイルスは、インターフェロンの誘導効果を持つため、種々の基礎的実験に用いられている。この誘導に必要な領域を解析することにより、非ウイルス性のインターフェロンの誘導剤を作製することも考えられる。また、本発明の技術はワクチンの開発にも利用できる。生ワクチンは、人工的に遺伝子を改変した組換え体センダイウイルスを発育鶏卵に接種して製造することも可能であるし、このようにして得られた知見を他の(−)鎖RNAウイルス例えば、麻疹ウイルス、おたふく風邪ウイルスのようなワクチ ンの必要性の高いウイルスに応用することもできよう。さらに、本発明によって、遺伝子治療用のベクターとして組換え体センダイウイルスを用いることも可能となった。本発明のウイルスベクターはセンダイウイルスに由来しているので安全性が高く、しかも本ウイルスベクターは伝播力を保持しているので、少量の投与でも大きな治療効果を上げられることが期待される。なお、治療が完了しウイルスベクターの増殖を抑止する必要が生じた際または治療中に、RNA依存性RNAポリメラーゼ阻害剤を投与すれば、宿主にダメージを与えずに、ウイルスベクターの増殖だけを特異的に抑止することができる。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] センダイウイルス転写ユニットpUC18/T7(-)HVJRz.DNAおよびpUC18/T7(+)HVJRz.DNAの作製
T7 プロモーター、(-)鎖RNAが転写されるように設計されたセンダイウイルスcDNA、リボザイム遺伝子をこの順に保持するDNAを、pUC18プラスミドに挿入した プラスミドpUC18/T7(-)HVJRz.DNAを作製した。また、T7 プロモーター、(+)鎖RNAが転写されるように設計されたセンダイウイルスcDNA、リボザイム遺伝子をこの順に保持するDNAを、pUC18プラスミドに挿入したプラスミドpUC18/T7(+)HVJRz.DNAを作製した。pUC18/T7(-)HVJRz.DNAおよびpUC18/T7(+)HVJRz.DNAの構成を図1および図2に示した。
[実施例2] cDNAからのセンダイウイルス再構成実験
直径6cmのプラスチックシャーレに通常のトリプシン処理を施したLLC-MK2細胞を2,000,000個とMEM培地(MEM +FBS 10%) 2mlとを添加し、CO5%, 37℃の条件下で24時間培養した。培養液を取り除き、1mlのPBSを用いて洗浄した後、多重感染度(moi/multiplicity of infection)が2となるように調製した、T7ポリメラーゼを発現する組換え体ワクチニアウイルスvTF7-3を0.1mlのPBSに懸濁したものを添加した。15分毎にウイルス液が全体にいきわたるようにシャーレを揺らし、1時間の感染を行った。ウイルス溶液を除去し、1mlのPBSを用いて洗浄した。 このシャーレに、cDNA溶液を含む培地を添加した。cDNA溶液を含む培地の作製は、以下のように行なった。
表に記した核酸(センダイウイルスの複製に必要な因子を発現するプラスミド、pGEM-L, pGEM-P/C, pGEM-NP を含む)を1.5mlのサンプリングチューブにとり、HBS(Hepes buffered saline; 20mM Hepes pH7.4, 150mM NaCl)を加えて総量を0.1mlにした。表中の (-)または(+)cDNAは、プラスミドpUC18/T7(-)HVJRz.DNAまたはpUC18/T7(+)HVJRz.DNAそのものを示し、/Cは環状のまま、/Lは制限酵素MluIにより直鎖化した後に細胞に導入していることを示す。
他方、ポリスチレンチューブの中で、HBS 0.07ml, DOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)0.03mlを調合し、核酸溶液をこのポリスチレンチューブに移した。この状態で、10分静置した。これに、細胞培養液(2ml MEM +FBS 10%)を添加した。さらにこの中にワクチニアウイルスの阻害剤であるリファンピシン(Rifampicin)とシトシンアラビノシドC(Cytosin arabinoside C/Ara C)を最終濃度がそれぞれ0.1mg/ml, 0.04mg/mlとなるように添加した。これにより、cDNA溶液を含む培地が作製された。
前記のシャーレを40時間 5%CO 37℃の条件下で培養した。ラバーポリスマンを用いてシャーレ内の細胞をかき取り、エッペンドルフチューブに移し6,000rpm、5分間の遠心を行って細胞成分だけを沈殿し、再度1mlのPBSに懸濁した。この細胞液の一部をそのままの状態、あるいは希釈して10日齢の発育鶏卵に接種した。この細胞液を第1表に示した細胞数となるようにPBSで希釈し、0.5ml 接種 した卵を35℃72時間培養後4℃に移して一晩置いた。この卵の漿尿液をウイルス液として注射器と注射針を用いて回収した。
回収したウイルス液のHAU (hemmaglutinin unit)と、PFU(plaque forming unit)の測定を以下に示す方法で行った。
HAUの測定は以下のように行なった。鶏の血液を、400x g,10分間遠心し、上清を捨てた。残る沈殿を、沈殿の100倍量のPBSで懸濁し、これをさらに400x g, 10分間遠心し、上清を捨てた。この操作をさらに2回、繰り返し、0.1%血球溶液を作製した。ウイルス溶液を段階希釈法により2倍ずつに希釈し、その0.05mlずつ を、96穴のタイタープレートに分注した。このタイタープレートに、さらに0.05mlずつの血球溶液を分注し、軽く振動させてよく混ぜた後、4℃で40分静置した。その後、赤血球の凝集を肉眼で観察し、凝集したもののうち、もっともウイルス溶液の希釈率の高いものの希釈率を、HAUとして示した。
PFUの測定は以下のように行なった。CV-1細胞を、6穴のカルチャープレート上に単層になるように生育させた。カルチャープレートの培地を捨て、段階希釈法により10倍づつに希釈したウイルス溶液0.1mlずつをそれぞれのカルチャープレート内ウエルに分注し、37℃、1時間感染させた。感染中に血清の含まれていな い2×MEMと2%寒天を55℃で混ぜ合わせ、さらに最終濃度0.0075mg/mlとなるようにトリプシンを加えた。1時間の感染後、ウイルス溶液を取り除き、寒天と混合 した培地3mlずつをそれぞれのカルチャープレート内ウエルに加え、5%CO条件下で37℃3日間保温した。0.2mlの0.1%フェノールレッドを加え、37℃ 3時間保温した後、取り除いた。色の付いていないプラークの数を数え、ウイルスの力価をPFU/mlとして評価した。
表1には、LLC-MK2細胞に導入した鋳型となるセンダイウイルスcDNA、RNA複製に必要な因子のcDNAであるpGEM-L、pGEM-P/CおよびpGEM-NPの量、インキュベーション時間、鶏卵に接種した細胞数、HAU、PFU をそれぞれ示した。
Figure 0003638019
HAU、PFUをともに示したサンプルを超遠心で沈渣とした後、再浮遊して20%〜60%のショ糖密度勾配遠心で精製し、12.5%SDS-PAGEで蛋白質を分離したところ、ここに含まれる蛋白質は、センダイウイルスの蛋白質と同じ大きさのものであった。
この結果から、cDNAを細胞に導入してセンダイウイルスを再構成できることが示された。また、(+)鎖を転写するcDNAを細胞内に導入したときには、(-)鎖を転写するcDNAを導入したときに比べてウイルス粒子が効率よく再構成されることが示された。さらに、cDNAを環状のままで導入したときには、直鎖状にして導入したときに比べてウイルス粒子が効率よく再構成されることが示された。
[実施例3] センダイウイルス再構成に必要なRNA複製因子の検討
L, P/C, NPを発現するプラスミドが三者ともに必要かどうかを調べる実験を行った。方法は実施例2と同様であるが、実施例2ではcDNAとともに、pGEM-L, pGEM-P/C, pGEM-NPの3者を細胞内に導入したのに対し、本実験では、pGEM-L, pGEM-P/C, pGEM-NPのうちの任意の2者または一者のみをcDNAとともに細胞内に導入した。
表2は、LLC-MK2細胞に導入した鋳型となるセンダイウイルスcDNA、RNA複製に必要な因子のcDNAであるpGEM-L、pGEM-P/CおよびpGEM-NPの量、インキュベーション時間、鶏卵に接種した細胞数、HAU、PFU をそれぞれ示した。
Figure 0003638019
表2から、どの組合わせの2者を導入した場合もウイルスの生産が認められなかった。この結果、この3種の蛋白質すべてが、再構成には必須であることが確認された。
[実施例4] in vitro転写RNAからのセンダイウイルス再構成実験
実施例2で、cDNAからセンダイウイルスが再構成されることを示したが、さらにcDNAをin vitroで転写した産物、すなわちvRNA および cRNAでも同様のことができうるかどうかを検討した。
センダイウイルス転写ユニットpUC18/T7(-)HVJRz.DNAおよびpUC18/T7(+)HVJRz.DNAを制限酵素MluIで直鎖状にした後、これを鋳型として用い、精製T7ポリメラーゼ(EPICENTRE TECHNOLOGIES: Ampliscribe T7 Transcription Kit)によるin vitro RNA合成を行った。in vitro RNA合成の方法はキットのプロトコルに従った。ここで得られたRNA産物を、実施例2のcDNAの代わりに用い、同様の実験を行 い、ウイルス生産の評価はHA試験により行った。
結果を表3に示す。
Figure 0003638019
この結果より、どちらのセンスのRNAを細胞内に導入しても、ウイルスを再構 成することができた。
[実施例5]センダイウイルスベクター内に挿入した外来遺伝子の宿主内での発現の検討
(1) 外来遺伝子(HIV-1 gp120遺伝子)が挿入されたセンダイウイルスベクター「pSeVgp120」の調製
プライマーa(5'-TGCGGCCGCCGTACGGTGGCAATGAGTGAAGGAGAAGT-3')(配列番号:1)及びプライマーd(5'-TTGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTVTTACTACGGCGTACGTCATCTTTTTTCTCTCTGC-3')(配列番号:2)を用い、「pNI432」上のHIV-1 gp120遺伝子を標準的なPCR法により増幅した。TAクローニングを行い、NotIで消化し、これをNotIで消化した「pSeV18」に挿入した。次いで、これをE.Coliに形質転換し、E.Coliの各コロニーのDNAを「Miniprep」法で抽出し、DraIII消化後電気泳動を行い、泳動されたDNAのうち挿入により期待される大きさのDNA断片を含んでいることが確認されたクローンを選抜することで、陽性クローンを得た(以下、この陽性クローンを「クローン9」と称する)。目的の塩基配列であることを確認後、塩化セシウム密度勾配遠心により、DNAを精製した。なお、これにより得られた、gp120の挿入されたpSeV18を「pSeVgp120」と称する。
(2) pSeVgp120を保持するセンダイウイルス(SeVgp120)の再構成及びgp120の発現の解析
LLCMK2細胞にpGEM NP, P,Lの他に、さらにpSeVgp120を導入した以外は、実施例2と同様の方法で、発育鶏卵のしょう尿液を回収し、HAUの測定及びgp120発現の検討(ELISA)を行った。HAUの測定は、実施例2と同様の方法で行った。
また、ELISAは以下のように行った。HIV-1に対するモノクロナール抗体で覆った96ウェルプレートに100μlの試料を添加し、37℃で60分反応させた。PBSで洗浄後、100μlのHRP結合抗HIV-1抗体を添加し、37℃で60分反応させた。これをPBSで洗浄後、テトラメチルベンチジンを添加し、HRP活性で転換される反応生成物の量を酸性条件下、450nmの吸光度で検出することによりgp120の発現量を測定した。この結果を表4左に示す。
また、得られたウイルス液は、CV-1細胞に感染させ、同様の検討を行った。CV-1細胞を1プレート当たり5x105細胞となるようにまいて生育させ、培地を捨て、PBS(-)で洗浄し、感染多重度10でウイルス液を添加し、室温で1時間感染させた。ウイルス液を捨てPBS(-)で洗浄し、plainMEM培地(MEM培地に抗生物質AraC、Rif及びトリプシンを添加したもの)を添加して、37℃で48時間反応させた。反応後、培地を回収し、HAUの測定(実施例2と同様の方法)及びgp120発現の検討(ELISA)を行った。この結果を表4中央に示す。なお、CV-1細胞の培養上清を再度発育鶏卵に接種し、これにより得たウイルス液のHAUの測定結果及びgp120発現の検討(ELISA)結果を表4右に示す。
Figure 0003638019
表4から明らかなように、CV-1細胞で特に高濃度のgp120が生産され(表中央)、また再度発育鶏卵に接種した尿しょう液からも高濃度のgp120が検出された(表右)。なお、表4左と表4中央には3クローンの結果を示してある。
さらに、gp120の発現をウエスタンブロティング法により解析した。SeVgp120を感染させたCV-1細胞の培地を20,000rpmで1時間遠心し、ウイルスを沈殿させ、その上清をTCA(10%(v/v)、氷上で15分)またはで70%エタノール(-20℃)で処理し、15,000rpmで15分遠心し、沈降した蛋白質を「SDS-PAGE Sample buffer」(第一化学)と混合し90℃で3分反応させ、10%アクリルアミドゲル上でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った。泳動後、蛋白質をPVDF膜(第一化学)に転写し、モノクロナール抗体902を室温で1時間反応させた。次いで、T-TBSで洗浄し、抗mIgG(アマシャム社)を室温で1時間反応させ、T-TBSで洗浄した。さらに、HRP結合プロテインA(アマシャム社)を室温で1時間反応させ、T-TBSで洗浄した。これに4-クロロ-1-ナフトール(4CNPlus)(第一化学)を添加し、gp120を検出した。この結果、予想されるgp120の分子量の位置にバンドが検出された。
さらに、CV-1細胞へのSeVgp120の感染後の時間とHAUの値及びgp120の発現量との関係を解析した。10cmプレートに5x10細胞となるようにCV-1細胞をまき、感染多重度10でSeVgp120を感染させ、その後30,43,53,70時間目に1mlの培地を回収し、等量の新鮮培地と混合して、HAUの測定、gp120発現の検討(ELISA)およびウエスタンブロティングを行った。この結果を図3に示す。図3から明らかなように、センダイウイルスのHAtiterの増加に伴ってgp120生産量も増加する傾向を示した。
[実施例6]種々の型の細胞におけるSeVgp120の増殖及びgp120の発現の解析
種々の型の細胞を用いた以外は実施例5と同様の方法で、HAUの測及びgp120発現の検討(ELISA)を行った。この結果を表5に示す。
Figure 0003638019
なお、表左は種々の型の細胞へのSeVgp120の感染後の時間を示す。この結果、検討を行ったすべての細胞でSeVgp120の増殖及びgp120の発現が検出された。
[実施例7]センダイウイルスベクター内に挿入したルシフェラーゼ遺伝子の宿主内での発現の検討
ベクター挿入用のルシフェラーゼ遺伝子を単離するため、プライマー(5'-AAGCGGCCGCCAAAGTTCACGATGGAAGAC-3'(30mer))(配列番号:3)及びプライマー(5'-TGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTCTTACTACGGATTATTACAATTTGGACTTTCCGCCC-3'(69mer))(配列番号:4)を用い、鋳型として「pHvluciRT4」を用いて、標準的なPCR法により両端にNotI部位の付加したルシフェラーゼ遺伝子を単離した。次いで、これをNotIで消化したpSeV18に挿入し、ルシフェラーゼ遺伝子が挿入されたセンダイウイルスベクターを得た。次いで、LLCMK2細胞に導入し、発育鶏卵に接種した。発育卵のしょう尿膜を切り取り、冷PBS(-)で2回洗浄し、「lysis buffer」(Picagene WACO)25μlを添加し、よく攪拌してから15000rpmで2分間遠心した。その上清を5μlを採取し、基質(IATRON)50μlを添加し、96ウェルプレートに入れ、ルミノメーター(Luminous CT-9000D,DIA-IATRON)で蛍光強度を測定した。活性は、cps(counts per second)で表した。この結果、感染後24時間目のCV-1細胞で、特に高いルシフェラーゼ活性が検出された(表6)。なお、ルシフェラーゼ遺伝子の導入されていないセンダイウイルスを対照として用いた(表中の「SeV」で示してある)。また、表には2クローンの検出結果を示した。
Figure 0003638019
本発明によって、センダイウイルスcDNAより効率よくウイルス粒子を再構成する系が確立され、センダイウイルスにおける遺伝子操作が可能となり、所望の外来性遺伝子を含むかまたは所望の遺伝子が欠失もしくは不活化したゲノムを保持し、伝播力を有する組換え体センダイウイルスを得ることが可能となった。
図1はpUC18/T7(+)HVJRz.DNAの構成を示す図である。 図2はpUC18/T7(-)HVJRz.DNAの構成を示す図である。 図3はCV-1細胞へのSeVgp120の感染後の時間とHAUの値及びgp120の発現量との関係を示す図である。

Claims (13)

  1. 試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造する方法であって、組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを、センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質およびLタンパク質を発現する宿主導入する工程を含む方法。
  2. 試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造する方法であって、組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを転写しうるDNAを、センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質およびLタンパク質を発現する宿主に導入し、組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAに転写する工程を含む方法。
  3. T7 RNAポリメラーゼを発現するワクチニアウイルスを該宿主に導入する工程をさらに含む、請求の範囲1または2に記載の方法。
  4. 該組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAが外来性遺伝子を含むことを特徴とする、請求の範囲1または2に記載の方法。
  5. 該組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAをコードするDNAにおいて、該外来性遺伝子が5'-AGGGTCAAAGT-3'および5'-GTAAGAAAAA-3'の間に位置する、請求の範囲4に記載の方法。
  6. 該組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAが、センダイウイルスゲノムRNA((−)鎖RNA)を含むRNAである、請求の範囲1または2に記載の方法。
  7. 該組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAが、センダイウイルスゲノムRNAのcRNA((+)鎖RNA)を含むRNAである、請求の範囲1または2に記載の方法。
  8. 該宿主をシトシンアラビノシドC存在下で培養する工程をさらに含む、請求の範囲3に記載の方法。
  9. 該宿主をトリプシン存在下で培養する工程をさらに含む、請求の範囲1または2に記載の方法。
  10. 以下の(a)〜(b)を含む、試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造するためのキット:
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNA、
    (b) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質およびLタンパク質を発現する宿主。
  11. 以下の(a)〜(c)を含む、試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造するためのキット:
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを転写しうるDNA、
    (b) DNA依存性RNAポリメラーゼを発現するDNA、
    (c) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質およびLタンパク質を発現する宿主。
  12. 以下の(a)〜(c)を含む、試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造するためのキット:
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを転写しうるDNA、
    (b) DNA依存性RNAポリメラーゼを発現するワクシニアウイルス、
    (c) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質およびLタンパク質を発現する宿主。
  13. 以下の(a)〜(b)を含む、試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造するためのキット:
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを転写しうるDNA、
    (b) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質およびLタンパク質、ならびにDNA依存性RNAポリメラーゼを発現する宿主。
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