JP3732204B2 - 自律複製能を有する(−)鎖rnaウイルスベクター - Google Patents

自律複製能を有する(−)鎖rnaウイルスベクター Download PDF

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本発明は、遺伝子治療等に用いられるウイルスベクターに関する。詳しくは、本発明は(−)鎖RNAウイルスベクターに関する。
技術背景
ヒトや動物に対する遺伝子治療において、治療効果と安全性は極めて重要な課題である。特に、ウイルスの遺伝子を組換えることにより得られる「ウイルスベクター」を用いて行われる治療は、たとえ治療効果が認められる場合でも、遺伝子が染色体DNAの不特定な位置に挿入されたり、組換え体ウイルスや病原性ウイルスが自然界に放出されたり、細胞内に導入された遺伝子発現の制御ができない等の可能性を否定できない場合には、治療行為を極めて慎重に行う必要がある。
現在、組換え体ウイルスを用いた遺伝子治療がすでに多数行われている。遺伝子治療臨床プロトコールも数多く提出されている。これらの組換え型ウイルスベクターの性質は、該ベクターが由来するウイルスの性質に多くを依存している。
ウイルスベクターの基本原理は、ウイルスの感染能を利用して目的遺伝子を標的細胞内に導入する方法である。なお、「感染能」とは、本明細書においては「細胞への接着能および膜融合能等を保持していることにより、細胞内にウイルス内部の核酸等を導入することのできる能力」のことを言う。ウイルス遺伝子に目的遺伝子を挿入する等の遺伝子操作を施した組換え型ウイルスベクターの表面には、ウイルス由来のヌクレオキャプシドやエンベロープ蛋白質等が存在しており、それが由来するウイルスの感染能を保有しているので、その内部の組換え遺伝子を細胞内に導入することが可能となる。このような組換え型ウイルスベクターは、遺伝子治療の目的のみならず、目的遺伝子発現細胞の作製、トランスジェニック動物作製等の目的に使用することが可能である。
ウイルスベクターは、レトロウイルスベクター、DNAウイルスベクター、RNAウイルスベクターの3者に分類される。
遺伝子治療において現在もっとも頻度高く用いられているベクターは、レトロウイルスに由来するレトロウイルスベクターである。レトロウイルスは、以下の過程を経て複製する。まず、感染成立後、自己のRNAを鋳型とし自己由来の逆転写酵素を触媒の少なくとも一部とすることにより相補鎖DNA(cDNA)を生成し、いくつかの過程を経た後、宿主染色体DNAに挿入され、プロウイルスとなる。プロウイルスは宿種由来のDNA依存性RNA転写酵素により転写され、ウイルスRNAが生成される。ウイルスRNAは、自己のコードする遺伝子産物群によりパッケージされ、ウイルス粒子となる。
一般に遺伝子治療等に利用されているレトロウイルスベクターとは、プロウイルス生成の過程までの能力を保持するが、パッケージに必要な遺伝子を除去している欠損型ウイルスであるために、プロウイルスからウイルス粒子が形成されることがないように構築されている。レトロウイルスとしては、例えばマウス白血病ウイルス、ネコ白血病ウイルス、ヒヒC型オンコウイルス、ヒト免疫不全ウイルス、成人T細胞白血病ウイルス等を例示することができる。さらには、組換え型レトロウイルスベクターとして報告されているものには、マウス白血病ウイルスを基本としたもの[Virology,65,1202(1991)、Biotechniques,9,980(1989)、Nucleic Acids Research,18,3587(1990)、Molecular and Cellular Biology,7,887(1987)、Proceedings of National Academy of Sciences of United States of America,90,3539(1993)、Proceedings of National Academy of Sciences of United States of America,86,3519(1989)等]、また、ヒト免疫不全ウイルスを基本としたもの[Journal of Clinical Investigation,88,1043(1991)]等が挙げられる。
レトロウイルスベクターはこのように、特定のDNAを効率よく染色体DNAに組込むことを目的に作出されたベクターであるが、目的遺伝子の挿入位置が予想できないため、挿入失活により正常遺伝子が損傷を受けたり、癌遺伝子を活性化したり、目的遺伝子が過剰発現したり発現が抑制されたりする可能性を否定できない。この問題点を克服するために、染色体外遺伝子として利用できるDNAウイルスベクターを利用した一時的(transient)な発現系の開発が進められた。
DNAウイルスベクターは、DNAウイルスに由来するベクターである。DNAウイルスは、ウイルス粒子内にDNAを遺伝情報として保持するものであり、そのDNAの複製は、自己のDNAを鋳型とし、宿主由来のDNA依存性DNA複製酵素を触媒の少なくとも一部とすることにより、相補鎖を生成するという過程の繰り返しによりなされる。染色体外遺伝子として利用できるDNAウイルスベクターとして、例えばアデノウイルスベクター(Adenovirus vector)では、実際の遺伝子治療例として「Nature Genetics,3,1-2(1993)」を例示することができる。しかしながら、DNAウイルスベクターの場合も、核内で染色体DNAとの望ましくない組換えが生じる可能性が高く、遺伝子治療用ベクターとして用いる場合には、十分に注意を払う必要がある。
近年、上述のウイルスベクターに比べて安全性の高いと考えられる、RNAウイルスを基本としたRNAウイルスベクターが開発されつつある。RNAウイルスの複製は、自己のRNAを鋳型とし、自己由来のRNA依存性RNA複製酵素を触媒とすることにより、相補鎖を生成するという過程の繰り返しによりなされる。
(+)鎖RNAウイルスが有するゲノムRNAは、同時にメッセンジャーRNA(以下単に「mRNA」と称する)としても機能し、複製や粒子形成に必要な蛋白質を宿主細胞の翻訳機能に依存して生産することができる。言い換えれば、(+)鎖RNAウイルスが有するゲノムRNA自体が伝播力を有する。なお、本明細書において「伝播力」とは、「感染や人工的な手法で核酸が細胞内に導入された後、細胞内に存在する該核酸が複製後、感染性粒子またはそれに準ずる複合体を形成し、別の細胞に伝播することのできる能力」を意味する。(+)鎖RNAウイルスに分類されるシンドビスウイルスや(−)鎖RNAウイルスに分類されるセンダイウイルスは、感染能と伝播力とを有する。パルボウイルス科に分類されるアデノ随伴ウイルスは、感染能を有するが、伝播力を有しない(ウイルス粒子が形成されるためには、アデノウイルスの同時感染が必要である)。また、試験管内で人工的に転写されたシンドビスウイルス由来の(+)鎖RNAは伝播力を有する(細胞内に導 入されるとウイルス粒子を形成する)が、試験管内で人工的に転写されたセンダイウイルスRNAは(+)鎖、(−)鎖ともに伝播力を有しない(細胞内に導入さ れてもウイルス粒子を形成しない)。
ゲノムRNAが同時にmRNAであるという利点により、(+)鎖RNAウイルスにおけるRNAウイルスベクターの開発が先行した[Bio/Technology,11,916-920(1993)、Nucleic Acids Research,23,1495-1501(1995)、Human Gene Therapy,6,1161-1167(1995)、Methods in Cell Biology,43,43-53(1994)、Methods in Cell Biology,43,55-78,1994]。例えば、セムリキ森林ウイルス(Semliki forest virus; SFV)やシンドビスウイルス(Sindbis virus)に由来するRNAウイルスベクターは、ゲノムRNAのうち、ウイルス構造体に関わる構造遺伝子領域を欠失させ、ウイルスの転写複製蛋白質遺伝子群を残したものと、転写プロモーター下流に所望の外来性遺伝子を接続したRNAを基本的な構造としている。このようなRNAまたは該RNAを転写せしめうるcDNA[Nucleic Acids Research,23,1495-1501(1995)、Human Gene Therapy,6,1161-1167(1995)]を直接注射等で細胞内に導入すると、外来性 遺伝子を含むRNAベクターの自律複製と転写プロモーター下流の外来性遺伝子の 転写とが起こり、目的とする外来性遺伝子産物が細胞内に発現する。さらに、構造遺伝子を発現するcDNAユニット(ヘルパー)と、上記のRNAベクターを発現す るcDNAユニットとをパッケージング細胞内で共存させることにより、感染能を有するが、伝播力を有しない複合体を作製することに成功した。しかし、パッケージングの途中でヘルパー由来のRNAとベクターRNAとの間で組換えが起こり、感染粒子が出現するという現象が現れた。そして、(+)鎖RNAウイルスに特徴的な 正二十面体構造のカプシド内に存在するスパイク蛋白質がこの組換えを触媒することが判明した。そこで、スパイク蛋白質に変異を導入することによりこの問題を解決することが試みられている[Bio/Technology,11,916-920(1993)]。
このようにRNA自律複製能を有するベクターとして、(+)鎖RNAウイルスベクターは期待されるが、遺伝子治療用ベクターとして利用するには、以下のような問題点が存在する。
(1) 正二十面体構造のカプシドを有するため、外来性遺伝子として挿入できるサイズが、最大約3700ヌクレオチドと限られている。
(2) パッケージされた複合体から核酸が細胞に放出され複製されるまでに、細胞接着、エンドサイトーシス、膜融合、脱殻、複製酵素の翻訳という5段階もの過程が必要である。
(3) パッケージングのときに伝播力のあるウイルス粒子がごく微量形成されるという可能性が否定できない。とくに、感染力が弱まったウイルス粒子でも、内部のRNA自体は伝播力を持つので、遅発的に増幅する可能性があり、チェックすることが困難である。
(4) 蚊等の昆虫により媒介されるウイルスに由来するため、ベクター遺伝子を導入された動物やヒトに野生型のウイルスが混合感染した場合、伝播力を有する組換え体ができる可能性があり、さらにその組換え体が昆虫により自然界に飛散する危険性がある。
以上の問題点は、もし(−)鎖RNAウイルスに由来するRNAウイルスベクターが構築されれば基本的に解決されると考えられる。すなわち、(−)鎖RNAウイルスは正二十面体構造のカプシドを保持せず、しかも粒子のエンベロープの大きさはその内部に含まれるRNAの含量によって変化することが知られており、RNAウイルスベクターとして使用する場合に、外来性遺伝子の大きさの制限は受けにくいことが推定される。また、粒子内に転写複製蛋白質群がパッケージされているため、パッケージされた複合体から核酸が細胞に放出され複製されるまでに、細胞接着、膜融合の2段階しか要しない。さらには、ウイルスRNA単独では伝播力を有せず、かつ伝播力を有する粒子は容易に膜融合を起こして細胞内で増幅することが確認できるため、伝播力を有する粒子が存在するかどうかの検査が容易である。また、(−)鎖RNAウイルスは昆虫によって媒介されることはない。
このように(−)鎖RNAウイルスには産業的に有用なウイルスベクターの材料として利用しうる長所を多数有しているにもかかわらず、現在まで有用な遺伝子治療用(−)鎖RNAウイルスベクターは存在していない。それは、ウイルスcDNAを経由したウイルス粒子の再構成を行うことが極めて困難だったことに起因すると考えられる。即ち、外来性遺伝子をベクターに導入するためには、DNAレベル での遺伝子操作が必要であるので、外来性遺伝子を組込んだウイルスcDNAからウイルス粒子が再構成されない限りは、(−)鎖RNAウイルスをベクターとして利 用することは困難であるのである。なお、「ウイルス粒子の再構成」とは、ウイルスゲノムの核酸を人工的に作製し、試験管内または細胞内において、もとのウイルスまたは組換え体ウイルスを作製することである。
前述したように(−)鎖RNAウイルスのRNA(vRNA; viral RNA)またはその相補鎖RNA(cRNA;complementary RNA)を単独で細胞内に導入しても(−)鎖RNAウイルスは生成されないことが明らかにされている。このことは、(+)鎖RNAウイルスの場合と決定的に違う点である。なお、特開平4-211377号公報には、「負鎖RNAウイルスのゲノムに対応するcDNAおよび感染性の負鎖RNAウイルスの製造方法」について記載があるが、該公報の実験内容がそのまま記載されている「EMBO.J.,9,379-384(1990)」は、実験の再現性がないことが明らかとなり、筆者みずから 論文内容を全面的に取り下げている(EMBO.J,10,3558(1991)参照)ことからして、特開平4-211377号公報に記載の技術が本発明の先行技術に該当しないのは明らかである。
(−)鎖RNAウイルスの再構成系について、インフルエンザウイルスに関しては報告がある(Annu.Rev. Microbiol.,47, 765-790(1993)、Curr. Opin. Genet. DEV.,2,77-81(1992))。インフルエンザウイルスは、8分節ゲノムより構成される(−)鎖RNAウイルスである。これらの報告によれば、あらかじめそのうちの1つのcDNAに外来性遺伝子を挿入し、また外来性遺伝子を含む8本すべてのcDNAから転写されたRNAをあらかじめウイルス由来のNP蛋白質と会合させてRNPとした。これらのRNPと、RNA依存性RNAポリメラーゼとを細胞内に供給することによ り、再構成が成立した。また、(−)鎖一本鎖RNAウイルスについては、ラブド ウイルス科に属する狂犬病ウイルスでcDNAからのウイルス再構成についての報告がある(J. Virol. 68, 713-719(1994))。
しかし、これらの再構成技術を遺伝子治療用のベクター構築技術としてそのまま用いることは、以下の問題から困難であった。
(1) 再構成されたウイルスは、マーカー遺伝子の発現やRT-PCR等で確認を行なっているだけであり、生産量の面からベクターウイルスとして十分利用できる再構成系が確立されていない。
(2) 遺伝子治療用のベクターとして、感染能を有するが伝播力を欠如した複合体を作製するためには、(+)鎖RNAウイルスの場合とは異なり、複合体内部に初期転写、複製に必要な因子を包含させる必要があり、このような複合体を大量に増幅させる技術は知られていない。
(3) 再構成に必要な因子を細胞内で供給する目的で、天然型のウイルスや組換え型のワクチニアウイルス等のウイルスをcDNAが導入される細胞に同時に感染させており、それら天然型ウイルスの分離が容易でない。
さらには、RNAウイルスベクター全般に関する事項として、大量に複製、転写したRNAが治療を施したヒトや動物に対して望ましくない効果をもたらした場合に、宿主の複製や転写には影響しない、RNAウイルスベクターの複製阻害剤をあらかじめ用意しておく必要があると考えられるが、該阻害剤の開発は行われていなかった。
本発明が解決しようとする課題は、実用に耐えうる(−)鎖RNAウイルスベクターを開発することである。また、該ベクターを効率よく製造する方法を開発することである。更に、該ベクターの増殖の阻害剤を開発することである。
本発明者らはまず、(−)鎖RNAウイルスの代表格であり、安全性や利便性の点からベクターとして産業上最も有用であると考えられるセンダイウイルスをセンダイウイルスの核酸から再構成することを試みた。まず、再構成試験に適用するため、センダイウイルスDI粒子(defective interfering particle/EMBO J.,10,3079-3085(1991)参照)由来のcDNAまたはセンダイウイルスミニゲノムのcDNAを実験材料として用いることにより、種々の検討を行なった。その結果、細胞内に導入する、cDNA、転写複製に関するcDNA群、およびT7RNAポリメラーゼ発現ユニットである組換え体ワクチニアウイルスの量比について、効率の良い条件を見いだした。本発明者らは更に、センダイウイルス全長のcDNAを(+)鎖と(−)鎖の両者とも取得し、細胞内で(+)鎖または(−)鎖のセンダイウイルスRNA が生合成されるようなプラスミドを構築し、転写複製に関するcDNA群を発現している細胞内に導入した。その結果センダイウイルスcDNAよりセンダイウイルス粒子を再構成することに初めて成功した。
さらに、本発明者らは、T7RNAポリメラーゼ発現ユニットである組換え体ワクチニアウイルスを用いない場合でもセンダイウイルスの再構成を行いうることを見い出した。すなわち、試験管内で転写したセンダイウイルス全長RNAを細胞内に導入し、初期転写複製酵素群のcDNAをT7プロモーター支配下で転写させた場合、ウイルス粒子が再構成された。このことは、初期転写複製酵素群をすべて発現する細胞を構築すれば、ワクチニアウイルスのようなヘルパーウイルスを全く使用せずに組換え体センダイウイルス、ひいては上述の複合体を作出することが可能であることを示している。なお、初期転写複製酵素群をすべて発現する細胞は、「J.Virology, 68 8413-8417(1994)」に記載されており、該記載を参照して当業者が作出することが可能である。なお、該文献記載の細胞は、センダイウイルス遺伝子のうち、NP、P/C、L の3者を染色体上に有している293細胞由来の細胞であり、このものは、NP、P/C、Lの3者の蛋白質を発現している。
多くのウイルスベクターの例から、核酸からウイルス粒子の再構成が効率よくできるならば、所望のウイルス遺伝子を組換えたり、外来性遺伝子を挿入したり、または所望のウイルス遺伝子を不活化させたり、欠失させることは、当業者にとって容易になしうることであることは明らかである。たとえば、センダイウイルス構造体遺伝子の少なくとも一部を欠如させ、複製酵素群の遺伝子は正常であるようなRNAを細胞内に導入した場合、初期転写および初期複製に必要な酵素群を細胞内に供給すれば、その後の自律複製が可能であることは、DI粒子を用いた報告(J. Virol. 68, 8413-8417(1994))から明らかである。従って、例えば「構造体遺伝子の少なくとも一部を欠如させ、複製酵素群の遺伝子は正常であるような特定のウイルスcDNA」から転写された外来性遺伝子を含むRNAを、初期転写複製酵素を含むウイルス構造体に包み込むことができれば、細胞感染能とRNA自律複製能とを有するが伝播力を欠如する外来性遺伝子のベクターとして機能する複合体を作出することができる。このような複合体は、遺伝子治療用のベクターとしては極めて有効なものである。即ち、本発明によって、(−)鎖RNAウイル スにおいて、細胞感染能とRNA自律複製能とを有するが伝播力を欠如する複合体 の製造、例えば初期転写複製酵素を含む複合体の製造が可能となった。
本発明者らは更に、複合体中のRNAの欠失または不活化した遺伝子に相当する構造蛋白質を発現する細胞に該複合体を感染させて、同一の複合体を増幅する複合体の増幅方法を開発した。また、上記の複合体を増幅させるために、センダイウイルスの増殖にもっとも適する場の一つである鳥類の卵に着目し、センダイウイルスのM、F、HN 遺伝子のうち少なくとも1種類以上の遺伝子を染色体上に保持するトランスジェニック鳥類およびその卵およびその細胞が複合体の増幅に適していることを見い出した。トランスジェニック鳥類の作出法は公知であり[Poltry Sci.,65,1445-1458(1986)、Bio/Technology,12,60-63(1994)]、M、F、HN 遺伝子のうち少なくとも1種類以上の遺伝子を染色体上に保持するトランスジェニック鳥類を作出することは、当業者が適宜なしうることである。M、F、HN 遺伝子のうち、複合体に含まれるRNAの伝播力の欠如に関わる遺伝子のコードする蛋白質がトランスジェニック鳥類内に生産されることが好適である。
本発明者は更に、以上に記載した複合体を製造する方法を開発した。以下、センダイウイルスに関する場合を例示する。センダイウイルスZ株(Viology,108,318-324(1981))のゲノムは15384ヌクレオチドよりなる一本鎖RNAである。その全塩基配列は逆転写酵素を用いたcDNAのクローンから決定されている(Nucleic Acids Research,11 ,7317-7330(1983)、Nucleic Acids Research,12,7965-7972(1984)、Nucleic Acids Research,14,1545-1563(1986))。ゲノムRNAは(−)鎖であるから、ウイルス粒子内に存在する転写複製酵素群はゲノムRNAを鋳型とした転写と複製とを行なう。ゲノムRNAがコードする蛋白質としては少なくとも、NP、P/C、M、F、HN、L の6種類が知られているが、このうちNPとP/CとLの3者が複製に必要十分な因子であることが知られており(Journal of Virology,68,8413-8417(1994))、M、F、HNは、ウイルス構造体を構成するために必要な成分であることが判明している。以上のことから、RNAの由来する特定のRNAウイルスがセンダイウイルスである場合は、自律複製に関わる遺伝子群であるNP、P/C、L 全てと、M、F、HN遺伝子のうちRNAの伝播力の欠如に関わる遺伝子群を共に発現している細胞中に、(i) DNAに転写されるcDNA、(ii) 該cDNAを細胞内で転写する際に必要なRNAポリメラーゼをコードする遺伝子または試験管内でcDNAより転写したRNAそのものを共に導入し感染性のある複合体を再構成することができる。この場合自律複製に関わる遺伝子群、NP、P/C、L をすべてと、M、F、HN遺伝子のうちRNAの伝播力の欠如に関わる遺伝子群はたとえばこれらの遺伝子をコードしてい るプラスミドの細胞内導入などの一過性の発現でもかまわないが、すくなくともRNAの伝播力の欠如に関わる遺伝子群は染色体に組込まれて安定に発現する方が好適である。
本発明者らは更に、こうして再構成した該複合体を大量に生産する方法を開発した。具体的には、該複合体を、自律複製に関わる遺伝子群は持たず、M、F、HN遺伝子のうちRNAの伝播力の欠如に関わる遺伝子群を発現している細胞に感染させ、該複合体を生産する方法である。この場合、自律複製に関わる遺伝子群は持たず、M、F、HN遺伝子のうちRNAの伝播力の欠如に関わる遺伝子群を発現している細胞は、大量生産のためには該遺伝子群を発現しているトランスジェニック鳥類の卵が好適である。
本発明者らは更に、前記のRNAと蛋白質とを含む複合体を増殖させるための細胞を作出した。具体的には、該細胞は、該複合体の保持するRNAの伝播力の欠如に関わる遺伝子群に相当する遺伝子を保持する細胞で、かつ該遺伝子のコードする蛋白質群を細胞内に生産することができる細胞である。RNAの由来する特定のRNAウイルスがセンダイウイルスである場合は、センダイウイルスのM、F、HN遺伝子のうち少なくとも1種類以上の遺伝子を染色体上に保持する細胞およびその細胞を有する動物が用いられる。なお、M、F、HN遺伝子は、野生型のものである必要はなく、野生型と同等の機能を有するものであればよい。即ち、遺伝子が細胞に機能的に導入された際、欠損ウイルスに対して、野生型と同等の相補能を有するものであればよい。細胞は、センダイウイルスの宿主とする細胞が好適である。M、F、HN遺伝子のうちベクターウイルスのRNAにおいて伝播力の欠如に関わる遺伝子群に相当する遺伝子のコードする蛋白質群が細胞内に生産されることが好ましい。
また、本発明者らは既存のRNAウイルスベクターにおいて、発現効率を高めることだけが重視されており、過剰発現により不本意な結果を招いたときに、RNAの複製を抑制する化合物の開発が行われていない点に鑑み、細胞由来のRNAの転写や翻訳には影響せず、RNA依存性RNA複製や、RNA依存性RNA転写を特異的に阻害することにより、結果としてRNA依存性RNA複製のみを抑制するような薬剤を、(−)鎖RNAウイルスベクターの阻害剤として開発した。
すなわち本発明は以下のものを含む。
(1)伝播力を有する特定の(−)鎖RNAウイルスに由来するRNAと、核酸を含まないウイルス構造体とを含む複合体で、細胞感染能とRNA自律複製能とを有するが伝播力を欠如する複合体、
(2)特定のRNAウイルスが非分節型(−)鎖RNAウイルスであることを特徴とする(2)記載の複合体、
(3)特定のRNAウイルスがセンダイウイルスであることを特徴とする(3)記載の複合体、
(4)センダイウイルスRNAまたはセンダイウイルスcRNAを含むRNAで、M,F,HN 蛋白質に相当する遺伝子のうち少なくとも1つ以上の遺伝子が欠失または不活化しているRNA、
(5)(4)記載のRNAと、センダイウイルス由来の核酸を含まないウイルス構造体とを含む複合体で、細胞感染能とRNA自律複製能とを有するが伝播力を欠如する複合体、
(6)(4)記載のRNAを試験管内または細胞内で転写することのできる鋳型DNAを含むDNA、
(7) 複合体内に含まれるRNAが外来性遺伝子を含むことを特徴とする(1)〜(3)または(5)のいずれかに記載の複合体、
(8) 複合体内に含まれるRNAが外来性遺伝子を含むことを特徴とする(3)または(5)に記載の複合体、
(9) 外来性遺伝子を含むことを特徴とする(4)に記載のRNA、
(10) 外来性遺伝子を含むことを特徴とする(6)に記載のDNA、
(11) RNA依存性RNA複製を阻害する薬剤を含む、(1)〜(3)、(5)、(7)または(8)のいずれかに記載の複合体に含まれるRNAの複製阻害剤、
(12) (1)〜(3)、(5)、(7)または(8)のいずれかに記載の複合体が伝播しうる宿主、
(13) (1)〜(3)、(5)、(7)または(8)のいずれかに記載の複合体の、感染能に関わる遺伝子群を染色体上に有し、該複合体を感染せしめたとき、該複合体と同一のものを複製しうることを特徴とする(12)に記載の宿主、
(14) 宿主が動物、動物に由来する細胞、動物の組織または動物の卵であることを特徴とする(12)または(13)に記載の宿主、
(15) 動物が哺乳類であることを特徴とする(14)に記載の宿主、
(16) 動物が鳥類であることを特徴とする(14)に記載の宿主、
(17) (3)、(5)または(8)のいずれかに記載の複合体の、感染能に関わる遺伝子群を染色体上に有し、該複合体を感染せしめたとき、該複合体と同一のものを複製しうることを特徴とする宿主、
(18) センダイウイルスのM遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子またはそれらと同等の機能を有する遺伝子のうち少なくとも1つ以上の遺伝子を染色体上に有する宿主、
(19) センダイウイルスのM遺伝子または同等の機能を有する遺伝子を染色体上に有する宿主、
(20) センダイウイルスのM遺伝子, NP遺伝子, P/C遺伝子および L遺伝子(各遺伝子は同等の機能を有する遺伝子で置換されていてもよい)を染色体上に有する宿主、
(21) センダイウイルスのM遺伝子, F遺伝子およびHN遺伝子(各遺伝子は同等の機能を有する遺伝子で置換されていてもよい)を染色体上に有する宿主、
(22) センダイウイルスのM遺伝子, F遺伝子, HN遺伝子, NP遺伝子, P/C遺伝子およびL遺伝子(各遺伝子は同等の機能を有する遺伝子で置換されていてもよい)を染色体上に有する宿主、
(23) 宿主が動物、動物に由来する細胞、動物の組織または動物の卵であることを特徴とする(17)〜(22)のいずれかに記載の宿主、
(24) 動物が哺乳類であることを特徴とする(23)に記載の宿主、
(25) 動物が鳥類であることを特徴とする(23)に記載の宿主、
(26) a)(1)〜(3)、(5)、(7)または(8)のいずれかに記載の複合体に含まれるRNAもしくは該RNAのcRNA、または該RNAもしくは該cRNAを生合成しうるユニット
b)該RNAもしくは該cRNAの複製に必要な酵素群、または該酵素群を生合成しうるユニット
c)該複合体の、感染能に関わる蛋白質群、または該蛋白質群を生合成しうるユニット
の3者を含むキット、
(27) a)(1)〜(3)、(5)、(7)または(8)のいずれかに記載の複合体に含まれるRNAもしくは該RNAのcRNA、または該RNAもしくは該cRNAを生合成しうるユニット
b)該RNAもしくは該cRNAの複製に必要な酵素群、または該酵素群を生合成しうるユニット
c)(12)〜(25)のいずれかに記載の宿主
の3者を含むキット、
(28) a)(1)〜(3)、(5)、(7)または(8)のいずれかに記載の複合体
b)(12)〜(25)のいずれかに記載の宿主
の2者を含むキット、
(29) a)(3)、(5)または(8)のいずれかに記載の複合体に含まれるRNAもしくは該RNAのcRNA、または該RNAもしくは該cRNAを生合成しうるユニット
b)センダイウイルスのNP,P/C, L蛋白質のすべて、または該蛋白質群を生合成しうるユニット
c)該複合体の感染能に関わる蛋白質群、または該蛋白質群を生合成しうるユニット
の3者を含むキット、
(30) a)(3)、(5)または(8)のいずれかに記載の複合体に含まれるRNAもしくは該RNAのcRNA、または該RNAもしくは該cRNAを生合成しうるユニット
b)センダイウイルスのNP, P/C, L蛋白質のすべて、または該蛋白質群を生合成しうるユニット
c)(17)〜(25)のいずれかに記載の宿主
の3者を含むキット、
(31) a)(3)、(5)または(8)のいずれかに記載の複合体
b)(17)〜(25)のいずれかに記載の宿主
の2者を含むキット、
(32) 宿主内に、(26)a),b)およびc)に記載の3者を導入することにより、(1)〜(3)、(5)、(7)または(8)のいずれかに記載の複合体を製造する方法、
(33) (27)c)に記載の宿主内に、(27)a)およびb)に記載の両者を導入することにより、(1)〜(3)、(5)、(7)または(8)のいずれかに記載の複合体を製造する方法、
(34) (28)a)に記載の複合体を、(28)b)に記載の宿主に感染させることにより、該複合体を増幅し製造する方法、
(35) 宿主内に、(29)a),b)およびc)に記載の3者を導入することにより、(3)、(5)または(8)のいずれかに記載の複合体を製造する方法、
(36) (30)c)に記載の宿主に、(30)a)およびb)に記載の両者を導入することにより、(3)、(5)または(8)のいずれかに記載の複合体を製造する方法、
(37) (31)a)に記載の複合体を、(31)b)に記載の宿主に感染させることにより、該複合体を増幅し製造する方法、
(38) Mに相当する遺伝子が欠失または不活化していることを特徴とする(9に記載のRNA、
(39) M,F,HN に相当する遺伝子がすべて欠失または不活化していることを特徴とする(9)に記載のRNA、
(40) a)(38)に記載のRNA
b)(20)に記載の宿主
c)(19)に記載の宿主
の3者を含むキット、
(41) (40)a)に記載のRNAを、(40)b)に記載の宿主に導入することにより得られる複合体を、(40)c)に記載の宿主に感染させて該複合体を増幅し製造する方法、
(42) (41)の方法により製造された複合体、
(43) a)(39)に記載のRNA
b)(22)に記載の宿主
c)(21)に記載の宿主
の3者を含むキット、
(44) (43)a)に記載のRNAを、(43)b)に記載の宿主に導入することにより得られる複合体を、(43)c)に記載の宿主に感染させて該複合体を増幅し製造する方法、
(45) (44)の方法により製造された複合体、および
(46) RNA依存性RNA複製を阻害する薬剤を含む、(42)、(45)のいずれかに記載の複合体に含まれるRNAの複製阻害剤、
(47) (7)記載の複合体を宿主に導入し、発現した外来性タンパク質を回収する工程を含む、外来性タンパク質の製造方法、
(48)宿主が、伝播力に関する遺伝子のうち、(7)記載の複合体に含まれるRNAにおいて欠如している遺伝子群を発現している細胞である、(47)記載の外来性タンパク質の製造方法。
(49)(7)記載の複合体を宿主に導入し、培養液または漿尿液を回収することによって取得しうる、発現した外来性タンパク質を含む培養液または漿尿液。
材料となる(−)鎖RNAウイルスとしては伝播力を保持するものであればいかなるものでも用いられる。DI粒子等の不完全ウイルスや、合成したオリゴヌクレオチド等も、材料の一部として当然使用することはできるが、全体として、伝播力を有するウイルスと同等の配列を保持していなければならない。本発明の(−)鎖RNAウイルスに含まれるウイルスとしては、例えばパラミクソウイルス科の(Paramyxoviridae)のセンダイウイルス(Sendai virus)、ニューカッスル病ウイルス(Newcastle disease virus)、おたふくかぜウイルス(Mumps virus)、麻疹ウイルス(Measles virus)、RSウイルス(Respiratory syncytial virus)、牛疫ウイルス(rinderpest virus)、ジステンパーウイルス(distemper virus)、オルトミク ソウイルス科(Orthomyxoviridae)のインフルエンザウイルス(Influenza virus) 、ラブドウイルス科(rhabdoviridae)の水疱性口内炎ウイルス(Vesicular S)、狂犬病ウイルス(Rabies virus)等が挙げられる。
材料となる(−)鎖RNAウイルスとしては、上記のいずれかのウイルスに由来 する伝播力を保持する組換え体(−)鎖RNAウイルスを用いてもよい。組換え体(−)鎖RNAウイルスは、たとえば免疫原性に関与する遺伝子を不活性化したり、RNAの転写効率や複製効率を高めるために、一部の遺伝子を改変したものでもよい。
本発明のRNAと蛋白質との複合体含まれるRNAは、前記のいずれかのウイルスまたは組換え体ウイルスのcDNAを改変したものを試験管内または細胞内で転写せしめることにより得ることができる。このとき得られるRNAは、由来するウイルスの伝播力に関わる少なくとも1つの遺伝子が欠失または不活化していることが必要であるが、自律複製に関わる遺伝子が欠失または不活化していてはならない。また、DI分子など、ウイルスゲノムの両端構造を持つcDNAに、人工的に自律複製に関わる遺伝子群を挿入したDNAを試験管内または細胞内で転写せしめることにより得られる人工的な配列を持つRNA分子も、同様に用いることが可能である。
前述のように、センダイウイルスの場合は、「自律複製に関わる遺伝子」とは、NP、P/C、Lのいずれかの遺伝子であり、「伝播力に関わる遺伝子」とは、M、F、HNのいずれかの遺伝子である。したがって、例えばM遺伝子のみを欠失させたセンダイウイルスZ株のRNAは、本発明の「複合体」に含まれる成分として適当で ある。また、M、F、HNすべての遺伝子が欠失や不活化させたものも、本発明の「複合体」に含まれる成分として適当である。一方、NP、P/C、Lをコードする遺伝子群がRNAから発現されることが必要である。ただし、これらの遺伝子群はウイル ス由来の配列そのままでなくとも、転写、複製における活性が天然型のそれと同等かそれ以上ならば、変異を導入したり、あるいはほかのウイルスの相当遺伝子で代用してもよい。
本発明の「核酸を含まないウイルス構造体」とは、例えばウイルスからRNAだけを除去したものが含まれる。この構造体としては、感染能と初期の自律複製能を相補するが、伝播力は相補しないものが用いられる。センダイウイルスを例に挙げれば、M遺伝子のみを欠失させたセンダイウイルスのRNAと、センダイウイルスからRNAだけを除去したものとからなる複合体は、感染能と自律複製能を有するが伝播力は有しない複合体である。複合体は、伝播力を付与しないものであれば、これら以外のものを含んでいても構わない。例えば、エンベロープ表面に特定の細胞に接着しうるような接着因子、リガンド、受容体等が含まれていても構わない。
複合体に含まれるRNAは、適当な部位に外来性遺伝子が挿入されたものでもよい。所望のタンパク質を発現させるためには、所望のタンパク質をコードする外来性遺伝子を挿入する。センダイウイルスRNAにおいては、R1配列(5'-AGGGTCAAAGT-3')とR2配列(5'-GTAAGAAAAA-3')との間に、6の倍数の塩基数を有する配列を挿入することが望ましい(Journal of Virology,Vol.67,No.8,(1993)p.4822-4830)。発現効率挿入した外来性遺伝子の発現量は、遺伝子挿入の位置、また遺伝子の前後のRNA塩基配列により調節しうる。例えば、センダイウイルスRNAにおいては、挿入位置がNP遺伝子に近いほど、挿入された遺伝子の発現量が多いことが知られている。なお、複合体を導入し、タンパク質を発現させるために用いる宿主としては、伝播力に関する遺伝子のうち、複合体に含まれるRNAにおいて欠如している遺伝子群を発現している細胞が好適に用いられる。この場合、大量生産のためには該遺伝子群を発現しているトランスジェニック鳥類の卵が特に好適である。発現されたタンパク質は、例えば、培養細胞を宿主とする場合には培養液から、鶏卵を宿主とする場合には尿漿液から、常法によって回収しうる。なお、実施例5および6においては、本出願の複合体の代わりに、伝播力のある複合体が用いられているが、本出願の複合体においても、前記の「伝播力に関する遺伝子のうち、複合体に含まれるRNAにおいて欠如している遺伝子群を発現している細胞」を宿主として用いれば、実施例における伝播力のある複合体と同様の結果が得られることは、当業者に明らかである。
なお、センダイウイルスの効率良い粒子再構成のためには、細胞内に導入するcDNAの形態が線状よりも環状のほうが良く、また(−)鎖RNAが細胞内で転写されるよりも、(+)鎖RNAが細胞内で転写されるほうが粒子形成効率が高いことが、本発明者によって確認された。これらの条件が他のすべての(−)鎖RNAウイルス再構成に適用できるとは限らないが、他の(−)鎖RNAウイルス再構成に際しても、本明細書の記載内容および技術常識に基づいて適宜条件を検索することは可能であり、そのことにより、目的とする(−)鎖RNAウイルスベクターの 基本材料を作出する技術を確立すること、すなわちウイルスの再構成系を確立することが可能であることは明らかである。
本発明における「RNAの複製阻害剤」としては、RNA依存性RNA複製を阻害する薬剤であれば、いかなるものでも適用可能であるが、例えば、リバビリン(Ribavirin)、TJ13025等が好適に用いられる。かかる複製阻害剤は、例えば、細胞内での組換え体RNAの増幅に伴う健康状態悪化が観察されたとき、または細胞内での組換え体RNA由来の外来性遺伝子等の発現を制御したい場合等に有効である。
なお、本発明の一態様としての、M遺伝子が欠損したセンダイウイルスcDNAから本発明に含まれる複合体を製造し(A→Bの過程)、更に該複合体を増幅する(B→Cの過程)工程を、図1として例示する。
以下実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
[実施例1] センダイウイルス転写ユニットpUC18/T7(-)HVJRz.DNAおよびpUC18/T7(+)HVJRz.DNAの作製
T7 プロモーター、(-)鎖RNAが転写されるように設計されたセンダイウイルスcDNA、リボザイム遺伝子をこの順に保持するDNAを、pUC18プラスミドに挿入したプラスミドpUC18/T7(-)HVJRz.DNAを作製した。また、T7 プロモーター、(+)鎖RNAが転写されるように設計されたセンダイウイルスcDNA、リボザイム遺伝子をこの順に保持するDNAを、pUC18プラスミドに挿入したプラスミドpUC18/T7(+)HVJRz.DNAを作製した。pUC18/T7(-)HVJRz.DNAおよびpUC18/T7(+)HVJRz.DNAの構成を図2および図3に示した。
[実施例2] cDNAからのセンダイウイルス再構成実験
直径6cmのプラスチックシャーレに通常のトリプシン処理を施したLLC-MK2細胞を2,000,000個とMEM培地(MEM +FBS 10%) 2mlとを添加し、CO2 5%, 37℃の条件下で24時間培養した。培養液を取り除き、1mlのPBSを用いて洗浄した後、多重感染度(moi/multiplicity of infection)が2となるように調製した、T7ポリメラーゼを発現する組換えワクチニアウイルスvTF7-3を0.1mlのPBSに懸濁したものを添加した。15分毎にウイルス液が全体にいきわたるようにシャーレを揺らし、1時間の感染を行った。ウイルス溶液を除去し、1mlのPBSを用いて洗浄した。このシャーレに、cDNA溶液を含む培地を添加した。cDNA溶液を含む培地の作製は、以下のように行なった。
表に記した核酸(センダイウイルスの複製に必要な因子を発現するプラスミド、pGEM-L, pGEM-P/C, pGEM-NP を含む)を1.5mlのサンプリングチューブにとり、HBS(Hepes buffered saline; 20mM Hepes pH7.4, 150mM NaCl)を加えて総量を0.1mlにした。表中の (-)または(+)cDNAは、プラスミドpUC18/T7(-)HVJRz.DNAまたはpUC18/T7(+)HVJRz.DNAそのものを示し、/Cは環状のまま、/Lは制限酵素MluIにより直鎖化した後に細胞に導入していることを示す。
他方、ポリスチレンチューブの中で、HBS 0.07ml, DOTAP(ベーリンガーマンハイム社製)0.03mlを調合し、核酸溶液をこのポリスチレンチューブに移した。この状態で、10分静置した。これに、細胞培養液(2ml MEM +FBS 10%)を添加した。さらにこの中にワクチニアウイルスの阻害剤であるリファンピシン(Rifampicin)とシトシンアラビノシドC(Cytosin arabinoside C/Ara C)を最終濃度がそれぞれ0.1mg/ml, 0.04mg/mlとなるように添加した。これにより、cDNA溶液を含む培地が作製された。
前記のシャーレを40時間CO 5%, 37℃の条件下で培養した。ラバーポリスマンを用いてシャーレ内の細胞をかき取り、エッペンドルフチューブに移し6000rpm、5分間の遠心を行って細胞成分だけを沈殿し、再度1mlのPBSに懸濁した。この細胞液の一部をそのままの状態、あるいは希釈して10日齢の発育鶏卵に接種した。この細胞液を第1表に示した細胞数となるようにPBSで希釈し、0.5ml 接種した卵を35℃72時間培養後4℃に移して一晩置いた。この卵の漿尿液をウイルス液として注射器と注射針を用いて回収した。
回収したウイルス液のHAU (hemmaglutinin unit)と、PFU(plaque forming unit)の測定を以下に示す方法で行った。
HAUの測定は以下のように行なった。鶏の血液を、400x g,10分間遠心し、上清を捨てた。残る沈殿を、沈殿の100倍量のPBS(-)で懸濁し、これをさらに400x g, 10分間遠心し、上清を捨てた。この操作をさらに2回、繰り返し、0.1%血球溶 液を作製した。ウイルス溶液を段階希釈法により2倍ずつに希釈し、その0.05ml ずつを、96穴のタイタープレートに分注した。このタイタープレートに、さらに0.05mlずつの血球溶液を分注し、軽く振動させてよく混ぜた後、4℃で40分静置した。その後、赤血球の凝集を肉眼で観察し、凝集したもののうち、もっともウイルス溶液の希釈率の高いものの希釈率を、HAUとして示した。
PFUの測定は以下のように行なった。CV-1細胞を、6穴のカルチャープレート上に単層になるように生育させた。カルチャープレートの培地を捨て、段階希釈法により10倍づつに希釈したウイルス溶液0.1mlずつをそれぞれのカルチャープレート内ウエルに分注し、37℃、1時間感染させた。感染中に血清の含まれていない2×MEMと2%寒天を55℃で混ぜ合わせ、さらに最終濃度0.0075mg/mlとなるようにトリプシンを加えた。1時間の感染後、ウイルス溶液を取り除き、寒天と混合した培地3mlずつをそれぞれのカルチャープレート内ウエルに加え、5%CO条件下で37℃3日間保温した。0.2mlの0.1%フェノールレッドを加え、37℃ 3時間保 温した後、取り除いた。色の付いていないプラークの数を数え、ウイルスの力価をPFU/mlとして評価した。
表1には、LLC-MK2細胞に導入した鋳型となるセンダイウイルスcDNA、RNA複製に必要な因子のcDNAであるpGEM-L、pGEM-P/CおよびpGEM-NPの量、インキュベーション時間、鶏卵に接種した細胞数、HAU、PFU をそれぞれ示した。
Figure 0003732204
HAU、PFUをともに示したサンプルを超遠心で沈渣とした後、再浮遊して20%〜60%のショ糖密度勾配遠心で精製し、12.5%SDS-PAGEで蛋白質を分離したところ、ここに含まれる蛋白質は、センダイウイルスの蛋白質と同じ大きさのものであった。
この結果から、cDNAを細胞に導入してセンダイウイルスを再構成できることが示された。また、(+)鎖を転写するcDNAを細胞内に導入したときには、(-)鎖を転写するcDNAを導入したときに比べてウイルス粒子が効率よく再構成されることが示された。さらに、cDNAを環状のままで導入したときには、直鎖状にして導入したときに比べてウイルス粒子が効率よく再構成されることが示された。
[実施例3] センダイウイルス再構成に必要なRNA複製因子の検討
L, P/C, NPを発現するプラスミドが三者ともに必要かどうかを調べる実験を行った。方法は実施例2と同様であるが、実施例2ではcDNAとともに、pGEM-L, pGEM-P/C, pGEM-NPの3者を細胞内に導入したのに対し、本実験では、pGEM-L, pGEM-P/C, pGEM-NPのうちの任意の2者または一者のみをcDNAとともに細胞内に導入した。
表2は、LLC-MK2細胞に導入した鋳型となるセンダイウイルスcDNA、RNA複製に必要な因子のcDNAであるpGEM-L、pGEM-P/CおよびpGEM-NPの量、インキュベーション時間、鶏卵に接種した細胞数、HAU、PFU をそれぞれ示した。
Figure 0003732204
表2から、どの組合わせの2者を導入した場合もウイルスの生産が認められなかった。この結果、この3種の蛋白質すべてが、再構成には必須であることが確認された。
[実施例4] in vitro転写RNAからのセンダイウイルス再構成実験
実施例2で、cDNAからセンダイウイルスが再構成されることを示したが、さらにcDNAをin vitroで転写した産物、すなわちvRNA および cRNAでも同様のことができうるかどうかを検討した。
センダイウイルス転写ユニットpUC18/T7(-)HVJRz.DNAおよびpUC18/T7(+)HVJRz.DNAを制限酵素MluIで直鎖状にした後、これを鋳型として用い、精製T7ポリメラーゼ(EPICENTRE TECHNOLOGIES: Ampliscribe T7 Transcription Kit)によるin vitro RNA合成を行った。in vitro RNA合成の方法はキットのプロトコルに従った。ここで得られたRNA産物を、実施例2のcDNAの代わりに用い、同様の実験を行い、ウイルス生産の評価はHA試験により行った。
結果を表3に示す。
Figure 0003732204
この結果より、どちらのセンスのRNAを細胞内に導入しても、ウイルスを再構成することができた。
[実施例5]センダイウイルスベクター内に挿入した外来遺伝子の宿主内での発現の検討
(1) 外来遺伝子(HIV-1 gp120遺伝子)が挿入されたセンダイウイルスベクター「pSeVgp120」の調製
プライマーa(5'-TGCGGCCGCCGTACGGTGGCAATGAGTGAAGGAGAAGT-3')(配列番号:1)及びプライマーd(5'-TTGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTVTTACTACGGCGTACGTCATCTTTTTTCTCTCTGC-3')(配列番号:2)を用い、「pNI432」上のHIV-1 gp120遺伝子を標準的なPCR法により増幅した。TAクローニングを行い、NotIで消化し、これをNotIで消化した「pSeV18」に挿入した。次いで、これをE.Coliに形質転換し、E.Coliの各コロニーのDNAを「Miniprep」法で抽出し、DraIII消化後電気泳動を行い、泳動されたDNAのうち挿入により期待される大きさのDNA断片を含んでいることが確認されたクローンを選抜することで、陽性クローンを得た(以下、この陽性クローンを「クローン9」と称する)。目的の塩基配列であることを確認後、塩化セシウム密度勾配遠心により、DNAを精製した。なお、これにより得られた、gp120の挿入されたpSeV18を「pSeVgp120」と称する。
(2) pSeVgp120を保持するセンダイウイルス(SeVgp120)の再構成及びgp120の発現の解析
LLCMK2細胞にpGEM NP, P,Lの他に、さらにpSeVgp120を導入した以外は、実施例2と同様の方法で、発育鶏卵のしょう尿液を回収し、HAUの測定及びgp120発現の検討(ELISA)を行った。HAUの測定は、実施例2と同様の方法で行った。
また、ELISAは以下のように行った。HIV-1に対するモノクロナール抗体で覆った96ウェルプレートに100μlの試料を添加し、37℃で60分反応させた。PBSで洗浄後、100μlのHRP結合抗HIV-1抗体を添加し、37℃で60分反応させた。これをPBSで洗浄後、テトラメチルベンチジンを添加し、HRP活性で転換される反応生成物の量を酸性条件下、450nmの吸光度で検出することによりgp120の発現量を測定した。この結果を表4左に示す。
また、得られたウイルス液は、CV-1細胞に感染させ、同様の検討を行った。CV-1細胞を1プレート当たり5x105細胞となるようにまいて生育させ、培地を捨て、PBS(-)で洗浄し、感染多重度10でウイルス液を添加し、室温で1時間感染させた。ウイルス液を捨てPBS(-)で洗浄し、plainMEM培地(MEM培地に抗生物質AraC、Rif及びトリプシンを添加したもの)を添加して、37℃で48時間反応させた。反応後、培地を回収し、HAUの測定(実施例2と同様の方法)及びgp120発現の検討(ELISA)を行った。この結果を表4中央に示す。なお、CV-1細胞の培養上清を再度発育鶏卵に接種し、これにより得たウイルス液のHAUの測定結果及びgp120発現の検討(ELISA)結果を表4右に示す。
Figure 0003732204
表4から明らかなように、CV-1細胞で特に高濃度のgp120が生産され(表中央)、また再度発育鶏卵に接種した尿しょう液からも高濃度のgp120が検出された(表右)。なお、表4左と表4中央には3クローンの結果を示してある。
さらに、gp120の発現をウエスタンブロティング法により解析した。SeVgp120を感染させたCV-1細胞の培地を20,000rpmで1時間遠心し、ウイルスを沈殿させ、その上清をTCA(10%(v/v)、氷上で15分)またはで70%エタノール(-20℃)で処理し、15,000rpmで15分遠心し、沈降した蛋白質を「SDS-PAGE Sample buffer」(第一化学)と混合し90℃で3分反応させ、10%アクリルアミドゲル上でSDS-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)を行った。泳動後、蛋白質をPVDF膜(第一化学)に転写し、モノクロナール抗体902を室温で1時間反応させた。次いで、T-TBSで洗浄し、抗mIgG(アマシャム社)を室温で1時間反応させ、T-TBSで洗浄した。さらに、HRP結合プロテインA(アマシャム社)を室温で1時間反応させ、T-TBSで洗浄した。これに4-クロロ-1-ナフトール(4CNPlus)(第一化学)を添加し、gp120を検出した。この結果、予想されるgp120の分子量の位置にバンドが検出された。
さらに、CV-1細胞へのSeVgp120の感染後の時間とHAUの値及びgp120の発現量との関係を解析した。10cmプレートに5x10細胞となるようにCV-1細胞をまき、感染多重度10でSeVgp120を感染させ、その後30,43,53,70時間目に1mlの培地を回収し、等量の新鮮培地と混合して、HAUの測定、gp120発現の検討(ELISA)およびウエスタンブロティングを行った。この結果を図4に示す。図4から明らかなように、センダイウイルスのHAタイターの増加に伴ってgp120生産量も増加する傾向を示した。
[実施例6]種々の型の細胞におけるSeVgp120の増殖及びgp120の発現の解析
種々の型の細胞を用いた以外は実施例5と同様の方法で、HAUの測及びgp120発現の検討(ELISA)を行った。この結果を表5に示す。
Figure 0003732204
なお、表左は種々の型の細胞へのSeVgp120の感染後の時間を示す。この結果、検討を行ったすべての細胞でSeVgp120の増殖及びgp120の発現が検出された。
[実施例7]センダイウイルスベクター内に挿入したルシフェラーゼ遺伝子の宿主内での発現の検討
ベクター挿入用のルシフェラーゼ遺伝子を単離するため、プライマー(5'-AAGCGGCCGCCAAAGTTCACGATGGAAGAC-3'(30mer))(配列番号:3)及びプライマー(5'-TGCGGCCGCGATGAACTTTCACCCTAAGTTTTTCTTACTACGGATTATTACAATTTGGACTTTCCGCCC-3'(69mer))(配列番号:4)を用い、鋳型として「pHvluciRT4」を用いて、標準的なPCR法により両端にNotI部位の付加したルシフェラーゼ遺伝子を単離した。次いで、これをNotIで消化したpSeV18に挿入し、ルシフェラーゼ遺伝子が挿入されたセンダイウイルスベクターを得た。次いで、LLCMK2細胞に導入し、発育鶏卵に接種した。発育卵のしょう尿膜を切り取り、冷PBS(-)で2回洗浄し、「lysis buffer」(Picagene WACO)25μlを添加し、よく攪拌してから15000rpmで2分間遠心した。その上清を5μlを採取し、基質(IATRON)50μlを添加し、96ウェルプレートに入れ、ルミノメーター(Luminous CT-9000D,DIA-IATRON)で蛍光強度を測定した。活性は、cps(counts per second)で表した。この結果、感染後24時間目のCV-1細胞で、特に高いルシフェラーゼ活性が検出された(表6)。なお、ルシフェラーゼ遺伝子の導入されていないセンダイウイルスを対照として用いた(表中の「SeV」で示してある)。また、表には2クローンの検出結果を示した。
Figure 0003732204
(−)鎖RNAウイルスcDNAより効率よくウイルス粒子を再構成する系を確立し、「伝播力を有する特定の(−)鎖RNAウイルスに由来するRNAと、核酸を含まないウイルス構造体とを含む複合体で、細胞感染能とRNA自律複製能とを有するが伝播力を欠如するもの」を製造し増幅する方法等を開発した。該複合体は、細胞に感染したのち細胞内でのみ増殖するので、遺伝子治療等安全性の要求される分野で、特に有用である。
図1は、M遺伝子が欠損したセンダイウイルスcDNAから本発明に含まれる複合体を製造し(A→Bの過程)、更に該複合体を増幅する(B→Cの過程)工程を説明する図である。 図2はpUC18/T7(+)HVJRz.DNAの構成を示す図である。 図3はpUC18/T7(-)HVJRz.DNAの構成を示す図である。 図4はCV-1細胞へのSeVgp120の感染後の時間とHAUの値及びgp120の発現量との関係を示す図である。

Claims (14)

  1. 試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造する方法であって、
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNA、および
    (b) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質、およびLタンパク質またはこれらのタンパク質を発現するDNA、
    を、宿主に導入する工程を含む方法。
  2. 試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造する方法であって、
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを転写しうるDNA、
    (b) DNA依存性RNAポリメラーゼを発現するワクシニアウイルス、ならびに
    (c) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質、およびLタンパク質またはこれらのタンパク質を発現するDNA、
    を、宿主に導入する工程を含む方法。
  3. 試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造する方法であって、
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを転写しうるDNA、
    (b) DNA依存性RNAポリメラーゼを発現するDNA、ならびに
    (c) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質、およびLタンパク質またはこれらのタンパク質を発現するDNA、
    を、宿主に導入する工程を含む方法。
  4. 該組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAが外来性遺伝子を含むことを特徴とする、請求の範囲1〜3のいずれかに記載の方法。
  5. 該組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAをコードするDNAにおいて、該外来性遺伝子が5'-AGGGTCAAAGT-3'および5'-GTAAGAAAAA-3'の間に位置する、請求の範囲4に記載の方法。
  6. 該組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAが、センダイウイルスゲノムRNA((−)鎖RNA)を含むRNAである、請求の範囲1〜3のいずれかに記載の方法。
  7. 該組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAが、センダイウイルスゲノムRNAのcRNA((+)鎖RNA)を含むRNAである、請求の範囲1〜3のいずれかに記載の方法。
  8. 該宿主をシトシンアラビノシドC存在下で培養する工程をさらに含む、請求の範囲3に記載の方法。
  9. 該宿主をトリプシン存在下で培養する工程をさらに含む、請求の範囲1〜3のいずれかに記載の方法。
  10. 該宿主が、鶏卵もしくは発育鶏卵である、、請求の範囲1〜3のいずれかに記載の方法。
  11. 該宿主が、LLC-MK2細胞、CV-1細胞、CHO細胞、NIH3T3細胞、MT4細胞、MOLT4細胞から成る群より選択される、請求の範囲1〜3のいずれかに記載の方法。
  12. 以下の(a)〜(c)を含む、試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造するためのキット:
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNA、
    (b) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質、およびLタンパク質またはこれらのタンパク質を発現するDNA、ならびに
    (c) (a)および(b)を導入しうる宿主。
  13. 以下の(a)〜(d)を含む、試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造するためのキット:
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを転写しうるDNA、
    (b) DNA依存性RNAポリメラーゼを発現するワクシニアウイルス、
    (c) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質、およびLタンパク質またはこれらのタンパク質を発現するDNA、ならびに
    (d) (a)〜(c)を導入しうる宿主。
  14. 以下の(a)〜(d)を含む、試験管内または細胞内において人工的に作製されたウイルスゲノムの核酸より組換え体センダイウイルスを製造するためのキット:
    (a) 組換え体センダイウイルスゲノムRNAまたはそのcRNAを含むRNAを転写しうるDNA、
    (b) DNA依存性RNAポリメラーゼを発現するDNA、
    (c) センダイウイルスのNPタンパク質、P/Cタンパク質、およびLタンパク質またはこれらのタンパク質を発現するDNA、ならびに
    (d) (a)〜(c)を導入しうる宿主。
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