JPWO2007007921A1 - 分節ゲノム型組換えモノネガウイルスベクター - Google Patents

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Abstract

本発明は、ウイルス本来の良好な増殖能を保持しつつ外来遺伝子を高発現させることができ、しかも、外来遺伝子の長さ及び種類による発現効率への影響が小さく、複数個の外来遺伝子を挿入することができる組換えモノネガウイルスベクターを提供する。本発明の組換えモノネガウイルスベクターは、複数に分節されたゲノムを保持し、少なくとも1つの分節ゲノムが宿主内で発現可能な外来遺伝子を含むことを特徴とする。

Description

本発明は、組換えモノネガウイルスベクターに関する。詳しくは、分節ゲノム型の組換えモノネガウイルスベクターに関する。
モノネガウイルス目に分類されるウイルス(モノネガウイルス)は、すべて、非分節型の(−)鎖RNAのゲノムを有するRNAウイルスである。このウイルスは、遺伝子の並びや機能に共通性があり、類似の遺伝子発現機構を備えている(図1参照)。1994年に狂犬病ウイルスを用いて初めて同目のウイルスの遺伝子操作の道が開かれた。以後、同様の方法を用いてモノネガウイルスの代表的なウイルスでは、全てにおいて遺伝子操作システムが開発されている(図2参照)。例えば、麻疹ウイルスに関しては、麻疹ウイルスの受容体SLAM(signaling lymphocyte activation molecule)を発現するCHO細胞(CHO/hSLAM細胞)とT7RNAポリメラーゼを発現するワクシニアウイルスとを応用した高効率の再構成(リバースジェネティクス)系が構築されている(Takeda,M.et.al.,Efficient rescue of measles virus from cloned cDNA using SLAM−expressing Chinese hamster ovary cells.,Virus Res.,2005 Mar;108(1−2):161−5)。
モノネガウイルスのポリメラーゼは、RNA依存性RNAポリメラーゼであり、ゲノムの3’末端側に存在する単一のプロモーターからのみ転写を開始し、遺伝子間の転写終結配列及び開始配列を認識しながら5’末端側に向かって各遺伝子の転写量を減衰させながら転写を行う。そのため、モノネガウイルスゲノムにおいては、より上流側にある遺伝子ほど発現効率が高いという特性がある。従って、ウイルスベクターとして用いるためウイルスゲノムに外来遺伝子を挿入する場合は、ゲノムの上流側へ挿入するほど発現効率を高くすることができる(図3参照)。しかしながら、外来遺伝子をゲノムの上流側に挿入した場合、ウイルス遺伝子の発現に対する悪影響、すなわち発現効率の低下がより強く現れる傾向にあるため、ウイルスそのものの複製能の低下を招くことが知られている(Tokusumi T,et.al.,Recombinant Sendai viruses expressing different levels of a foreign reporter gene.,Virus Res.,2002 Jun;86(1−2):33−8.)。
また、ウイルスゲノム中に外来遺伝子を複数個挿入した場合、ウイルス複製能がさらに低下することや(図4参照;Skiadopoulos MH,et.al.,Evaluation of the replication and immunogenicity of recombinant human parainfluenza virus type 3 vectors expressing up to three foreign glycoproteins.,Virology.,2002 May 25:297(1):136−52.)、挿入する外来遺伝子の長さが長いほどウイルス複製能が低下することも知られている(Sakai Y et.al.,Accommodation of foreign genes into the Sendai virus genome:sizes of inserted genes and viralreplication.,FEBS Lett.,1999 Aug 6;456(2):221−6.)。
さらに、外来遺伝子の種類によっては、ウイルス複製能が強く抑制される場合があることも分かっている。例えば、図5に示すように、野生型(wt)ウイルス、EGFP遺伝子を挿入したウイルス、DsRed遺伝子を挿入したウイルス、及びLacZ遺伝子を挿入したウイルスの4種のウイルスの複製能を比較した場合、特に、LacZ遺伝子を挿入したウイルスにおいて複製能が顕著に低下することが認められている(図6参照:Sakai Y.et.al.,Accommodation of foreign genesinto the Sendai virus genome:sizes of inserted genes and viral replication.,FEBS Lett.,1999 Aug 6;456(2):221−6.;Takeda M,et.al.,Generation of measles virus with a segmented RNA genome.,J.Virol.,2006 May;80(9):4242−8.)。
本発明が解決しようとする課題は、モノネガウイルス本来の良好な増殖能を保持しつつ外来遺伝子を高発現させることができ、しかも、外来遺伝子の長さ及び種類による発現効率への悪影響が小さく、複数個の外来遺伝子を挿入することができる組換えモノネガウイルスベクターを提供することにある。また、このような組換えモノネガウイルスベクターの製造方法を提供することにある。
本発明者は、上記課題を解決するべく鋭意検討を行った。その結果、ゲノムを複数に分節した状態で有するモノネガウイルスベクターであって、その分節したゲノム中に外来遺伝子を挿入した組換えモノネガウイルスベクターであれば、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)複数に分節されたゲノムを保持し、少なくとも1つの分節ゲノムが宿主内で発現可能な外来遺伝子を含むことを特徴とする、組換えモノネガウイルスベクター。
本発明のベクターは、例えば、外来遺伝子を、モノネガウイルスを構成する機能性タンパク質遺伝子より上流側に挿入することができる。また、本発明のベクターは、例えば、少なくとも2つの分節ゲノムが外来遺伝子を含むことができる。さらに、本発明のベクターは、例えば、外来遺伝子を含む分節ゲノムのうちの少なくとも1つにおいて複数の外来遺伝子を含むことができる。
本発明のベクターとしては、例えば、2つに分節されたゲノムを保持し、一方の分節ゲノムがH遺伝子及びL遺伝子を含み、他方の分節ゲノムがN遺伝子、P遺伝子、M遺伝子及びF遺伝子を含むもの、並びに、3つに分節されたゲノムを保持し、第1の分節ゲノムがH遺伝子及びL遺伝子を含み、第2の分節ゲノムがM遺伝子及びF遺伝子を含み、第3の分節ゲノムがN遺伝子及びP遺伝子を含むものが挙げられる。
本発明のベクターは、例えば、麻疹ウイルス又はセンダイウイルスの組換えウイルスベクターである。
(2)上記(1)記載のベクターに含まれる分節ゲノムRNA又はそのcRNA。
(3)上記(2)記載のRNA又はそのcRNAを転写し得る鋳型cDNAを含むDNA。
本発明のDNAは、例えば、プラスミドDNAである。
(4)宿主内に、上記(3)記載のDNAと、モノネガウイルスのN遺伝子を含むDNA、P遺伝子を含むDNA及びL遺伝子を含むDNAと、当該DNAの転写ユニットとを導入することを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造方法。
(5)モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主内に、上記(3)記載のDNAと、当該DNAの転写ユニットとを導入することを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造方法。
本発明の方法(上記(4)及び(5)記載の方法)は、転写ユニットの導入として、例えば、所定のRNAポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルスを宿主に感染させること、又は、所定のRNAポリメラーゼ遺伝子を含むDNAを宿主内に導入すること若しくは宿主ゲノムに組込むことができる。ここで、RNAポリメラーゼは、例えばT7 RNAポリメラーゼであり、また、組換えワクシニアウイルスは、例えばLister株を親株として得られたものである。さらに、本発明の方法では、宿主として、例えばCHO細胞を用いることができる。
(6)モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主内に、上記(2)記載のRNA又はそのcRNAを導入することを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造方法。
本発明の方法では、宿主として、例えばCHO細胞を用いることができる。
(7)上記(3)記載のDNA、及び当該DNAの転写ユニットを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造用キット。
本発明のキットは、例えば、モノネガウイルスのN遺伝子を含むDNA、P遺伝子を含むDNA及びL遺伝子を含むDNAをさらに含むことができる。また、本発明のキットは、転写ユニットが、例えば、所定のRNAポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルス、又は、所定のRNAポリメラーゼ遺伝子を含むDNAである。ここで、RNAポリメラーゼは、例えばT7RNAポリメラーゼであり、また、組換えワクシニアウイルスは、例えばLister株を親株として得られたものである。
(8)上記(2)記載のRNA又はそのcRNAを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造用キット
本発明のキットは、例えば、モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主をさらに含むことができる。ここで、宿主は、例えばCHO細胞である。
(9)上記(1)記載のベクターを感染させた宿主に外来性タンパク質を発現させ、発現した外来性タンパク質を回収することを含む、外来性タンパク質の製造方法。
(10)上記(1)記載のベクターを感染させた動物から採取された、組織、細胞又は体液。
本発明の組織、細胞又は体液は、例えば外来性タンパク質を含むことができる。
(11)上記(1)記載のベクターを感染させた動物から回収された、抗血清又は抗体。
図1は、モノネガウイルス粒子及びそのゲノム構造を示す概略図である。
図2は、モノネガウイルス粒子の再構成系の概略を示す図である。
図3は、モノネガウイルスゲノムへの外来遺伝子の挿入位置による発現効率への影響を示す概略図である。
図4は、モノネガウイルスゲノムへの外来遺伝子の挿入個数による発現効率への影響を示す概略図である。
図5は、野生型(wt)のモノネガウイルス(IC323)、EGFP遺伝子を挿入したモノネガウイルス(IC323−EGFP)、DsRed遺伝子を挿入したモノネガウイルス(IC323−DsRed)、及びLacZ遺伝子を挿入したモノネガウイルス(IC323−lacZ)のゲノム構造を示す概略図である。
図6は、図5に示す4種のモノネガウイルスそれぞれの複製能を示すグラフである。
図7は、分節ゲノム型モノネガウイルスベクターの作製方法を示す概略図である。
図8は、2分節ゲノム型モノネガウイルスベクター(2 seg−MeV)のゲノム構造を示す概略図である。
図9は、3分節ゲノム型モノネガウイルスベクター(3 seg−MeV)のゲノム構造を示す概略図である。
図10は、IC323−lacZ、IC323−DsRe、IC323−EGFP、2 seg−MeV及び3 seg−MeVのゲノム構造を示す概略図である。
図11は、2 seg−MeV感染B95a細胞における外来遺伝子(EGFP(緑色);DsRed(赤色))の発現を示す写真である。
図12は、3 seg−MeV感染B95a細胞における外来遺伝子(EGFP(緑色);DsRed(赤色))の発現を示す写真である。
図13は、3 seg−MeV感染B95a細胞における外来遺伝子(βガラクトシダーゼ遺伝子)の発現を示す写真である。
図14は、IC323、IC323−lacZ、IC323−DsRed、IC323−EGFP、2 seg−MeV及び3 seg−MeVそれぞれのウイルス複製能(増殖能)を示すグラフである。
図15は、IC323、IC323−lacZ、IC323−DsRed、IC323−EGFP、2 seg−MeV及び3 seg−MeVそれぞれのプラーク形成の有無を示す写真である。
図16は、IC323、2 seg−MeV及び3 seg−MeVそれぞれのプラークにおける、βガラクトシダーゼの発現の有無を示す写真である。
図17は、2 seg−MeV及び3 seg−MeVそれぞれのプラークにおける蛍光、及び、βガラクトシダーゼの発現の有無を示す写真である。
図18は、2 seg−MeV等が有するゲノム構造の概略図、及び、2 seg−MeV等の感染細胞におけるウイルス粒子の複製の有無と外来遺伝子の発現とを示す模式図である。
図19は、3 seg−MeV等が有するゲノム構造の概略図、及び、3 seg−MeV等の感染細胞におけるウイルス粒子の複製の有無と外来遺伝子の発現とを示す模式図である。
図20は、IC323、IC323−lacZ、IC323−DsRed、IC323−EGFP、2 seg−MeV及び3 seg−MeVそれぞれの感染細胞における、ウイルスタンパク質及び外来性タンパク質の発現量について、免疫沈降法を用いて解析した結果を示す電気泳動写真である。
図21は、IC323、IC323−lacZ、IC323−DsRed、IC323−EGFP、2 seg−MeV及び3 seg−MeVそれぞれの感染細胞における、外来性タンパク質(βガラクトシダーゼ)の発現量について、ルミノメーターを用いて解析した結果を示すグラフである。
図22は、IC323−EGFP感染細胞での遺伝子発現量(mRNA量)に対する3 seg−MeV感染細胞での遺伝子発現量(mRNA量)の割合について、RT−定量PCR法を用いて解析した結果を示すグラフである。
図23は、使用したワクシニアウイルス株の違いによるT7プロモーターに依存したGFPの有無を示す写真である。
図24は、使用したワクシニアウイルス株の違いによるミニゲノムウイルス転写・複製実験系におけるルシフェラーゼ発現量(ルシフェリン添加後の蛍光量)の比較を示すグラフ(A)、及び、使用したワクシニアウイルス株の違いによる麻疹ウイルス粒子の合成開始に成功した細胞数の比較を示すグラフ(B)である。
図25は、ワクシニアウイルス感染細胞のアポトーシスに対するカスパーゼ阻害剤の添加効果を示す写真(A)、及び、ワクシニアウイルス感染細胞の染色体DNAの断片化に対するカスパーゼ阻害剤の添加効果を示す電気泳動写真(B)である。
図26は、ワクシニアウイルス感染細胞へのカスパーゼ阻害剤の添加の有無によるミニゲノムウイルス転写・複製実験系におけるルシフェラーゼ発現量(ルシフェリン添加後の蛍光量)の比較を示すグラフ(A)、及び、ワクシニアウイルス感染細胞へのカスパーゼ阻害剤の添加量の違いによる麻疹ウイルス粒子の合成開始に成功した細胞数の比較を示すグラフ(B)である。
図27は、2分節及び3分節ゲノム型のF遺伝子欠損型センダイウイルス(SeV)ベクター等のゲノム構造を示す概略図である。
図28は、pMiniSeV/LacZ−NP−P−Mの構築スキームを表す図である。
図29は、pMiniSeV/GFP−HN−Lの構築の構築スキームを表す図である。
図30は、pMiniSeV/Luci−NP−Pの構築スキームを表す図である。
図31は、pMiniSeV/LacZ−Mの構築スキームを表す図である。
図32は、2分節ゲノム型SeVベクター(MiniSeV/GFP−HN−LとMiniSeV/Lac Z−NP−P−M)の再構成と増幅を示すGFP蛍光写真である。
図33は、3分節ゲノム型SeVベクター(MiniSeV/GFP−HN−L、MiniSeV/Lac Z−MとMiniSeV/Luci−NP−P)の再構成と増幅を示すGFP蛍光写真である。
図34は、2分節ゲノム型SeVベクター(MiniSeV/GFP−HN−LとMiniseV/Lac Z−NP−P−M)によるin vitro発現の結果を示す図である(LLC−MK2,Day 2)。
図35は、3分節ゲノム型SeVベクター(MiniSeV/GFP−HN−L、MiniSeV/Lac Z−MとMiniSeV/Luci−NP−P)によるin vitro発現の結果を示す図である(LLC−MK2、Day 3)。
図36は、p(+)MV−DsRed−NPMFの構築スキームを表す図である。
図37は、p(+)MV−EGFP−HLの構築スキームを表す図である。
図38は、p(+)MV−LacZ−NPの構築スキームを表す図である。
図39は、p(+)MV−DsRed−MFの構築スキームを表す図である。
図40は、p(+)MV−DsRed−CAT−MFの構築スキームを表す図である。
図41は、p(+)MV−DsRed−CAT−MF−SEAPの構築スキームを表す図である。
図42は、3分節ゲノム型モノネガウイルスベクター(3 seg−MeV−CAT)の感染Vero/hSLAM細胞における外来遺伝子((A)EGFP(緑色);(B)DsRed(赤色))の発現を示す写真、及び、当該感染細胞のCAT活性を示す写真(D)である。
図43は、3分節ゲノム型モノネガウイルスベクター(3 Seg−MeV−CAT−SEAP)の感染Vero/hSLAM細胞のCAT活性を示す写真(A)及びSEAP活性を示すグラフ(B)である。
符号の説明
1:分節ゲノムをコードするプラスミドDNA
2:Nタンパク質をコードするプラスミドDNA
3:Pタンパク質をコードするプラスミドDNA
4:Lタンパク質をコードするプラスミドDNA
5:分節ゲノム
6:Nタンパク質
7:Pタンパク質
8:Lタンパク質
9:RNP複合体
10:Mタンパク質
11:Fタンパク質
12:Hタンパク質
13:ワクシニアウイルス
14:T7RNAポリメラーゼ
15:CHO/hSLAM細胞(麻疹ウイルスの受容体SLAMを恒常的に発現するように遺伝子導入されたCHO細胞)
以下、本発明について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更し実施し得る。
なお、本明細書は、本願優先権主張の基礎となる米国特許仮出願60/699,101号明細書の全体を包含する。また、本明細書において引用された全ての先行技術文献、並びに公開公報、特許公報及びその他の特許文献は、参照として本明細書に組み入れられる。
1.組換えモノネガウイルスベクター
(1)ウイルスベクター
本発明の組換えモノネガウイルスベクターは、複数に分節されたゲノムを保持し、少なくとも1つの分節ゲノムが宿主内で発現可能な外来遺伝子を含むことを特徴とする。
「分節」とは、複数本の塩基鎖からなる一組の塩基鎖群によって一つのウイルスゲノムとして機能するように、複数本の塩基鎖になっていることを意味する。また、「分節ゲノム」とは、通常は、一組の塩基鎖群を構成する個々の塩基鎖を意味するが、一組の塩基鎖群そのものを意味することもある。
モノネガウイルス((−)鎖RNAウイルス)のゲノムは、ウイルスの複製に関与するリーダー配列(3’−Le)とトレーラー配列(Tr−5’)とを両端に有し、これらの配列の間に、ウイルスを構成する機能性タンパク質をコードする各種遺伝子を有する。上記機能性タンパク質をコードする遺伝子としては、Nタンパク質をコードする遺伝子(以下、「N遺伝子」という。他の機能性タンパク質をコードする遺伝子もこれに準じて表記する。)、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、H遺伝子、及びL遺伝子が挙げられる。N遺伝子から発現するNタンパク質(ヌクレオキャプシド)は、ウイルスRNAに対して5’末端から順に整然と並んで結合し包装する。P遺伝子からはPタンパク質、Vタンパク質及びCタンパク質の3種類のタンパク質が発現する。そのうちPタンパク質は、RNA依存性RNAポリメラーゼの小サブユニットとして機能し、ウイルスゲノムの転写複製に関与する。L遺伝子から発現するLタンパク質は、RNA依存性RNAポリメラーゼの大サブユニットとして機能し、Pタンパク質と共にウイルスゲノムの転写複製に関与する。M遺伝子から発現するMタンパク質は、ウイルス粒子構造を内側から支える機能を有する。F遺伝子から発現するFタンパク質、及びH遺伝子から発現するHタンパク質は、ともに宿主細胞へのウイルスの侵入に関与する。
本発明のウイルスベクターが保持する分節ゲノムは、モノネガウイルスゲノムと同様に、両端にリーダー配列とトレーラー配列とを有し、これらの配列の間に、前述した機能性タンパク質をコードする遺伝子のいずれかを有する。そして、すべての分節ゲノムを合わせると、ウイルス粒子の複製等に必要なN遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、H遺伝子、及びL遺伝子をすべて有する状態となる。なお、これら遺伝子群は、元のモノネガウイルスゲノムにおける配置(並び順)とは無関係に、分節ゲノム中に挿入されていてもよい。また、これら遺伝子群は、モノネガウイルスゲノムに含まれる各遺伝子の塩基配列と完全に同一でなくとも、転写及び複製における活性が天然型の活性と同等かそれ以上であれば、変異が導入されたものであってもよいし、あるいは他のウイルス由来の相当遺伝子で代用されたものであってもよい。本発明においては、ゲノムの分節数は、限定はされないが、最大で6であることが好ましく、特に好ましくは2又は3である。
本発明のウイルスベクターが、2つの分節ゲノムを保持する場合の好ましい形態としては、例えば、第1の分節ゲノムがH遺伝子及びL遺伝子を含み、第2の分節ゲノムがN遺伝子、P遺伝子、M遺伝子及びF遺伝子を含むものが挙げられる。また、3つの分節ゲノムを保持する場合の好ましい形態としては、例えば、第1の分節ゲノムがH遺伝子及びL遺伝子を含み、第2の分節ゲノムがM遺伝子及びF遺伝子を含み、第3の分節ゲノムがN遺伝子及びP遺伝子を含むものが挙げられる。
本発明のウイルスベクターの分節ゲノムには、宿主内で発現可能な外来遺伝子が含まれる。外来遺伝子としては、限定はされず、本発明のウイルスベクターの用途に応じて適宜選択すればよいが、例えば、ウイルス、細菌及び寄生虫等の病原性を惹起する各種タンパク質をコードする遺伝子や、各種サイトカインをコードする遺伝子、並びに各種ペプチドホルモンをコードする遺伝子等が挙げられる。外来遺伝子が含まれる分節ゲノムは、ウイルスベクターが有する複数の分節ゲノムのうちの1つであってもよいし、2つ以上であってもよく限定はされない。複数個の外来遺伝子をゲノムに挿入する場合は、複数の分節ゲノムのうちの1つの分節ゲノムに、複数個の外来遺伝子をすべて挿入してもよいし、あるいは、2つ以上の分節ゲノムのそれぞれにおいて、1個以上の外来遺伝子を挿入することで、全体として複数個の外来遺伝子を挿入することもできる。1つの分節ゲノム中に複数個の外来遺伝子が挿入される場合、その個数は、ウイルスの構成タンパク質遺伝子の発現効率が著しく低下しない範囲内であれば限定はされない。
分節ゲノムに挿入される外来遺伝子の位置は、限定はされないが、モノネガウイルスを構成する機能性タンパク質遺伝子より上流側であることが好ましい。これにより、宿主内において外来遺伝子をより高発現させることができる。またこの知見を利用して、外来遺伝子の発現量を、遺伝子挿入の位置あるいは遺伝子の前後のRNA塩基配列により調節することも可能である。
ここで、「上流側」とは、ゲノムの3’末端に存在するリーダー配列(3’−Le)側であることを意味する(以下、同様である。)。
本発明のウイルスベクターの分節ゲノムは、通常は、モノネガウイルスが本来有するゲノムと同様に(−)鎖RNAで構築されたものであればよいが、必要に応じ、(+)鎖RNAで構築されたものであってもよい。(+)鎖RNAゲノムのウイルスベクターの場合、ウイルス粒子の再構成(リバースジェネティクス)が効率よく行われ、ウイルスの遺伝子操作(すなわちゲノムの分節化や外来遺伝子の挿入)を容易に行うことができる。ここで、「ウイルス粒子の再構成」とは、ウイルスゲノムの核酸を人工的に作製し、試験管内又は細胞内において、もとのウイルス又は組換えウイルスを作製することを意味する。
本発明のウイルスベクターの構築材料となるモノネガウイルスとしては、限定はされないが、例えば、以下のウイルスが挙げられる。
パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)に属する、麻疹ウイルス(Measles virus)、センダイウイルス(Sendai virus)、ニューカッスル病ウイルス(Nevcastle disease virus)、おたふくかぜウイルス(Mumps virus)、1型パラインフルエンザウイルス(Parainfluenza virus 1)、2型パラインフルエンザウイルス(Parainfluenza virus 2)、3型パラインフルエンザウイルス(Parainfluenza virus 3)、5型パラインフルエンザウイルス(Parainfluenza virus 5,Simian virus 5)、メタニューモウイルス(Metapneumovirus)、RSウイルス(Respiratory syncytial virus)、牛疫ウイルス(Rinderpest virus)、及びジステンパーウイルス(Distemper virus)。
ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)に属する、水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stamatitis virus)、狂犬病ウイルス(Rabies virus)、及びウシ流行熱ウイルス(Bovine ephemeral fever virus)。
フィロウイルス科(Filoviridae)に属する、マールブルグウイルス(Marburg virus)、及びエボラウイルス(Ebola virus)。
本発明においては、上記モノネガウイルスのなかでも、麻疹ウイルス、センダイウイルス及びニューカッスル病ウイルスが好ましい。また、合成オリゴヌクレオチドや、DI粒子(J.Virol.,68,8413−8417(1994))等の不完全ウイルス等も、必要に応じ、構築材料として使用することができる。さらに、構築材料となるモノネガウイルスとしては、上記列挙したウイルスに由来する組換えモノネガウイルスを用いてもよい。組換えモノネガウイルスとしては、例えば、免疫原性に関与する遺伝子を不活性化したものでもよいし、RNAの転写効率や複製効率を高めるために一部の遺伝子を改変したものでもよい。
本発明のウイルスベクターは、通常、細胞感染能及び伝播力を有している。「細胞感染能」とは、宿主となる細胞への接着能及び膜融合能等を保持していることにより、細胞内にウイルス内部の核酸等を導入し得る能力を意味する。また、「伝播力」とは、細胞内に導入された核酸を複製し、感染性粒子(又はそれに準ずる複合体)を形成して、当該核酸を別の細胞に伝播し得る能力を意味する。換言すれば、「伝播力」とは、細胞内に導入された核酸情報に基づき、細胞外に放出され自由に運動し得る(他の細胞へ感染し得る)ウイルス粒子を形成することと言うこともできる。
本発明のウイルスベクターは、ベクターとしての安定性に優れるものである。すなわち、本発明のウイルスベクターは、安定的に継代でき、かつ、安定した外来遺伝子の発現能が保持され得るものである。具体的には、ウイルスベクターを適当な培養細胞に低いMOI(例えば0.05〜0.01(ウイルス数/細胞数))で感染させ、その後ウイルス感染による細胞変性効果(CPE)が顕著になった段階で培養上清を回収し、再び同様のMOIで別の培養細胞に感染させるという継代操作を8〜10回繰り返しても外来遺伝子の良好な発現が認められるときは、そのウイルスベクターは安定性に優れるということができる。この場合、継代数は、より好ましくは10〜20回であり、さらに好ましくは20回である。
また本発明は、上述した本発明のウイルスベクターに含まれる分節ゲノムRNA又はそのcRNA(相補RNA)を包含するものである。さらに、本発明は、当該RNA又はそのcRNAを転写し得る鋳型cDNAを含むDNA(好ましくはプラスミドDNA)も包含するものである。本発明のRNA又はそのcRNAは、例えば、先に列挙したモノネガウイルス又はその組換えウイルスのcDNAを公知の遺伝子組換え技術により改変し(分節化、外来遺伝子の挿入等)、これを鋳型cDNAとして試験管内又は細胞内で転写することにより得ることができる。転写において、鋳型cDNAは所望のプロモーターの下流に挿入され、その挿入の向きによって本発明のRNA及びそのcRNAのいずれか一方、すなわち(−)鎖RNA及び(+)鎖RNAのいずれか一方が得られる。また、本発明のRNA又はそのcRNAは、ウイルスゲノムの両端構造を持つcDNA(例えばDI分子など)にウイルスの構成タンパク質遺伝子や外来遺伝子等のcDNAを人工的に挿入し、挿入後のDNAを試験管内又は細胞内で転写することによって得ることも可能である。なお、公知の遺伝子組換え技術としては、例えば、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載の技術を適宜用いることができる(以下、同様)。
(2)ウイルスベクターの製法
分節型のRNAゲノムを有する本発明のウイルスベクターは、各分節ゲノムに対応するcDNAを用いて、あるいは、各分節ゲノムに相当するRNAを用いて、ウイルス粒子の再構成を行うことにより、作製することができる。いずれの方法においても、通常は、まず所望のモノネガウイルスからゲノムRNAを単離し、逆転写反応等によりこのRNAのcDNAを作製する。次いで、公知の遺伝子組換え技術及び核酸増幅法等により、当該cDNAの分節化、及び外来遺伝子の挿入等の操作を施す。
ここで、ゲノムRNAに基づいて作製された連続した1本のcDNAを「元のcDNA」とすると、「分節化」とは、元のcDNAを複数のcDNAに断片化することを意味する。この断片化の方法は、元のcDNAの塩基配列情報等に基づいて結果的に複数のcDNA断片が調製される方法であればよく、限定はされない。元のcDNAの塩基配列情報に基づく調製方法としては、例えば、元のcDNA中の所望の領域を複数設定し、それぞれの領域を鋳型として別々にPCR法等を行って増幅断片を得る方法が好ましく挙げられる。所望の領域の設定は、再構成において発現させる分節ゲノムの構造を考慮して適宜設定することができ、限定はされない。例えば、ウイルスの機能性タンパク質をコードする各遺伝子断片をそれぞれ個別に増幅できるように設定することが好ましい。このように領域設定した場合は、得られた各遺伝子の増幅断片を、所望の種類、個数、並び順(位置)で結合させることで、複数のcDNA断片を調製することができる。
また「外来遺伝子の挿入」は、別途調製した外来遺伝子を含むDNA断片を、上述の分節化したcDNA中に、公知の遺伝子組換え技術を用いて挿入すればよく、限定はされない。
その後、分節化した各cDNAを含むDNA(好ましくはプラスミドDNA)を構築するか、又は、分節化した各cDNAを予めin vitroでRNAに転写しておき、これらをウイルス粒子の再構成に用いる。
一般に、(−)鎖RNAウイルスのゲノム又はそのアンチゲノムを裸のRNAのまま宿主細胞内に導入してもRNA依存性RNAポリメラーゼの鋳型とはならない。鋳型となるには、当該RNAポリメラーゼによるRNA合成反応の初期段階において、Nタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質が存在し、これらタンパク質とゲノムRNAとの複合体(RNP複合体)の形成が必要であることが知られている。そのため、本発明のウイルスベクターを再構成するにあたっては、これらNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を併せて発現させるか、あるいは、発現し得る宿主を用いることが望ましい。
すなわち、本発明のウイルスベクターの製造方法としては、具体的には、下記(i)〜(iii)の方法が挙げられる。
(i)宿主内に、下記(b)〜(e)のDNAと当該DNAの転写ユニットとを導入することを含む方法。
(ii)モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主内に、下記(b)のDNAと当該DNAの転写ユニットとを導入することを含む方法。
(iii)モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主内に、下記(a)のRNA又はそのcRNAを導入することを含む方法。
(a)前述した本発明のウイルスベクターに含まれる各々の分節ゲノム
RNA又はそのcRNA
(b)上記(a)のRNA又はcRNAを転写し得る鋳型cDNAを含むDNA
(c)モノネガウイルスのNタンパク質遺伝子を含むDNA
(d)モノネガウイルスのPタンパク質遺伝子を含むDNA
(e)モノネガウイルスのLタンパク質遺伝子を含むDNA
上記(i)の製法において使用する(c)〜(e)のDNAは、公知の遺伝子組換え技術を用いて所定のタンパク質を発現し得るように構築されたものであればよいが、例えば、プラスミドDNAであることが好ましい。また、(c)〜(e)のDNAに含まれる各タンパク質遺伝子は、モノネガウイルスゲノムに含まれる各タンパク質遺伝子の塩基配列と完全に同一でなくてもよく、例えば、転写及び複製における活性が天然型の各タンパク質と同等又はそれ以上であれば、1若しくは数個(例えば1〜15個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸からなるタンパク質(変異型タンパク質)をコードする塩基配列であってもよいし、あるいは、他のウイルス由来の相当遺伝子で代用されたものであってもよい。当該変異型のタンパク質と天然型のタンパク質とのアミノ酸配列の相同性は、例えば、90〜100%であることが好ましいが、転写及び複製における活性が、保持されていれば、アミノ酸の相同性は、例えば、40〜90%であってもよい。なお、変異タンパク質をコードする塩基配列(DNA)は、Molecular Cloning,A Laboratory Manual 2nd ed.,Cold Spring Harbor Laboratory Press(1989)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987−1997)等に記載の部位特異的変位誘発法に従って調製することができる。DNAに変異を導入するには、Kunkel法やGapped duplex法等の公知手法により、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット、例えばQuickChangeTM Site−Directed Mutagenesis Kit(ストラタジーン社製)、GeneTailorTM Site−Directed Mutagenesis System(インビトロジェン社製)、TaKaRa Site−Directed Mutagenesis System(Mutan−K、Mutan−Super Express Km等:タカラバイオ社製)等を用いて行うことができる。
上記(i1)及び(iii)の方法におけるモノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質としては、これらの天然型のタンパク質の活性と同等又はそれ以上であれば、完全に同一のものでなくてもよく、例えば、1若しくは数個(例えば1〜15個、好ましくは1〜8個、より好ましくは1〜5個)のアミノ酸が欠失、置換又は付加されたアミノ酸からなるタンパク質(変異型タンパク質)であってもよいし、あるいは、他のウイルス由来又はアミノ酸配列が大きく異なる全く別のタンパク質であってもよい。当該変異型のタンパク質と天然型のタンパク質とのアミノ酸配列の相同性は、例えば、90〜100%であることが好ましいが、転写及び複製における活性が、保持されていれば、アミノ酸の相同性は、例えば、40〜90%であってもよい。
上記(i)〜(iii)の製法において使用する宿主(形質転換体も含む)は、各種ウイルスRNAが発現し得る細胞であれば、特に限定はされず、例えば、培養された哺乳動物又は鳥類の細胞や鶏卵などが挙げられる。具体的に、培養細胞としては、例えば、CHO、293細胞、B95a、サル細胞COS−7、Vero、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞、LLCMK2、MDCK、MDBK、CV−1、HeLa、HepG2、P19、F9、PClZ、BAF3、Jurkat、ヒトPBMCN、MT−4、Molt−4、NIH3T3、L929、Vero/hSLAM、CHO/hSLAM、A549/hSLAM、HeLa/hSLAM、293T、BHK及びニワトリ胚繊維芽細胞等を用いることができる。また、Sf9細胞、Sf21細胞等の昆虫細胞を用いることもできる。
特に、上記(ii)及び(iii)の製法で使用する宿主は、所定の形質転換体、すなわち、宿主ゲノムにN遺伝子、P遺伝子及びL遺伝子が挿入されたもの、又は、これら遺伝子が宿主ゲノムとは独立したDNA(プラスミドDNA等)として導入されたものである。これら形質転換体は、例えば、電気穿孔法、リポフェクション法、ヒートショック法、PEG法、リン酸カルシウム法、DEAEデキストラン法、並びに、DNAウイルスやRNAウイルス等の各種ウイルスを感染させる方法等により得ることができる。また、当該宿主(形質転換体)においては、N遺伝子、P遺伝子及びL遺伝子によりコードされる各タンパク質が、宿主自体の転写・翻訳系により発現されることが好ましい。
上記(i)及び(ii)の製法において、転写ユニットとしては、例えば、所定のDNA依存性RNAポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルス、又は、所定のDNA依存性RNAポリメラーゼ遺伝子を含むDNAなどが好ましい。上記組換えワクシニアウイルスしては、臨床的に既に使用され安全性が認められているLister株を親株として得られたものが特に好ましく用いられる。宿主内への転写ユニットの導入は、上記ワクシニアウイルスを用いる場合は当該ウイルスを宿主に感染させればよく、また、上記DNAを用いる場合は当該DNAを宿主内に導入するか若しくは宿主ゲノムに組込むようにすればよい。組換えワクシニアウイルスを用いる場合は、ウイルス感染による宿主細胞のアポトーシス誘導を効果的に抑制して作業効率を高めるため、カスパーゼ阻害剤を使用することができる。以上の転写ユニットの導入により、所定のDNA依存性RNAポリメラーゼが宿主内に供給され、(b)〜(e)のDNAが転写され得る。っまり、(b)〜(e)のDNAにおける鋳型cDNAや各タンパク質遺伝子は、上記所定のDNA依存性RNAポリメラーゼにより特異的に認識されるプロモーターの下流に挿入され、発現制御されていることが好ましい。上記DNA依存性RNAポリメラーゼとしては、例えば、T7 RNAポリメラーゼ、T3 RNAポリメラーゼ、RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼII、及びRNAポリメラーゼIII等が好ましく用いられる。
本発明の製造方法としては、上記(i)〜(iii)の方法の中でも(i)の方法がより好ましい。特に、麻疹ウイルス又はセンダイウイルスを材料とする組換えウイルスベクターの作製において上記(i)の方法を用いた場合は、再構成の効率を一層高めることができる。
また、本発明の製造方法で得られるウイルスベクターは、他の細胞との共培養等により選択的かつ効率的に増殖させることができる。例えば、麻疹ウイルスを用いたウイルスベクターの場合、本発明の製造方法で得られる培養細胞(再構成したウイルスベクターを含む細胞)を、予め培養しておいたB95a細胞上に播き共培養することにより、ウイルスベクターが感染及び増殖したB95a細胞の巨細胞を得ることができる、
2.組換えモノネガウイルスベクターの製造用キット
本発明の組換えモノネガウイルスベクターの製造用キットは、前述したウイルスベクターに含まれる分節ゲノムRNA又はそのcRNAを転写し得る鋳型cDNAを含むDNA(好ましくはプラスミドDNA)、及び、DNAの転写ユニットを含むものである。当該DNA及び転写ユニットの詳細については、前記1.における説明が同様に適用できる。また、以下に記載する他の各構成要素についても同様である。
本発明のキットは、モノネガウイルスのNタンパク質遺伝子を含むDNA、Pタンパク質遺伝子を含むDNA及びLタンパク質遺伝子を含むDNAをさらに含むものであることが好ましい。
本発明のキットは、モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主をさらに含むものであってもよい。この場合、上記のNタンパク質遺伝子を含むDNA、Pタンパク質遺伝子を含むDNA及びLタンパク質遺伝子を含むDNAの使用に代えることができる。
また本発明においては、前述したウイルスベクターに含まれる分節ゲノムRNA又はそのcRNAを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造用キットも包含される。当該キットは、モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主をさらに含むものであってもよい。
3.外来性タンパク質の製造方法等
本発明のウイルスベクターを感染させた宿主に外来性タンパク質を発現させ、発現したタンパク質を回収することにより、外来性タンパク質を製造することができる。「外来性タンパク質」とは、ウイルスゲノム中に導入された遺伝子によりコードされるタンパク質であって発現の目的となるタンパク質を意味する。宿主として培養細胞を用いた場合、常法により、その培養液から外来性タンパク質を回収することができる。また、本発明のウイルスベクターを感染させた動物にタンパク質を発現させ、発現した外来性タンパク質を含む体液を回収することもできる。体液の回収方法としては、感染動物及び体液の種類に応じて、公知の回収方法を用いればよく、限定はされないが、例えば、全血を採取して、遠心により血球成分を取り除く方法などが挙げられる。
さらに、本発明のウイルスベクターを動物に感染させ、この動物から組織、細胞もしくは体液を採取することにより、例えば、抗血清を作製し又は抗体タンパク質を回収して、治療や診断に応用することができる。具体的には、ウイルスや細菌の病原性に関与するタンパク質遺伝子を挿入したウイルスベクターを、宿主となる動物に感染させて、当該遺伝子がコードするタンパク質を発現させ、その後この動物から血清を得ることで、上記タンパク質に対する抗体を含有する抗血清を製造することができる。得られた抗体(抗血清)は、ELISAや中和試験に使用することができる。
本発明のウイルスベクターを感染させる動物としては、マウス、ラット、モルモット、ウサギ、ブタ、イヌ、フェレット、ネコ、サル、ヒツジ、ウシ及びウマ等のヒトを除く哺乳類動物が好ましく挙げられ、中でも、マウス、ラット及びモルモット等の齧歯類(ネズミ目)動物がより好ましく、特に好ましくはマウスである。採取する組織又は細胞としては脾臓又はリンパ節など、採取する体液としては血液、リンパ液及び髄液等が挙げられる。
以下に、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
ウイルスベクターの作製
1.分節ゲノム型組換え麻疹ウイルスベクターの作製
1.1 作製方法の概要(図7参照)
まず、分節ゲノムの各々をコードするプラスミドDNA1、並びに麻疹ウイルスウイルスのNタンパク質6(ヌクレオキャプシド)を発現し得るプラスミドDNA2、Pタンパク質7(RNA依存性RNAポリメラーゼの小サブユニット)を発現し得るプラスミドDNA3、及びLタンパク質8(RNA依存性RNAポリメラーゼの大サブユニット)を発現し得るプラスミドDNA4をそれぞれ構築し、これらをCHO/hSLAM細胞15へ導入した(DNAの発現は、T7プロモーターで制御されている)。併せて、T7 RNAポリメラーゼ(DNA依存性RNAポリメラーゼ)14を発現するワクシニアウイルス13(vTF7−3株)を感染させ、T7 RNAポリメラーゼ14をCHO/hSLAM細胞内に供給した。これにより、分節ゲノム5にヌクレオキャプシド(N)及びポリメーラーゼ(P,L)が結合して、RNP複合体9が形成された。その後、RNP複合体9に含まれる分節ゲノム中のM遺伝子、F遺伝子及びH遺伝子からMタンパク質10、Fタンパク質11及びHタンパク質12が発現され、Mタンパク質10は、CHO/hSLAM細胞膜の一部を利用してウイルス粒子の膜構造を形成し、Fタンパク質11及びHタンパク質12は、ウイルス粒子の膜構造の外側表面に提示された。これとともに、RNP複合体9が上記膜構造に内包されてウイルス粒子となり細胞外へ放出された。
なお、CHO/hSLAM細胞のワクシニアウイルスによる細胞死(apoptosis)を阻止してウイルスベクターの作製効率を向上させるため、カスパーゼ阻害剤を添加した。ワクシニアウイルスは、CHO/hSLAM細胞内でabortive infectionを起こし増殖できないため、容易にウイルスベクターだけを得ることができた。
1.2 麻疹ウイルスゲノム由来cDNAの作製
ベクターの分節化を麻疹ウイルスの系で実施するにあたって、すでに構築が完了した公知のプラスミドp(+)MV323(Takeda M,et.al.,Recovery of pathogenic measles virus from cloned cDNA.,J.Virol.,2000 Jul;74(14):6643−7.)を基礎に用いた。p(+)MV323は、麻疹ウイルスの野生型株(IC−B株)のゲノム((−)鎖RNA)の完全な長さ(15,894塩基)のcDNAをコードしているプラスミドであり、その麻疹ウイルスゲノムcDNA(15,894塩基)の上流末端には、T7プロモーター配列が、下流末端にはリボザイム配列を配置してある。そのため、T7 RNAポリメラーゼが、T7プロモーターに結合して、RNA合成を開始し、麻疹ウイルスのcDNA領域(15,894塩基)から完全長の麻疹ウイルスRNAゲノム(15,894塩基)を合成することができる。下流末端に配置されたリボザイム配列によって、合成された麻疹ウイルスRNAゲノムの下流末端が、正確に15,894塩基で切断される。p(+)MV323の構造や、この合成されたRNAゲノムから、感染性を持った麻疹ウイルス粒子が合成できることは、既に知られている(Takeda M,et.al.,Recovery of pathogenic measles virus from cloned cDNA.,J.Virol.,2000 Jul,74(14):6643−7.)。麻疹ウイルス(IC−B株)のゲノム塩基配列情報(配列番号1)は、例えば、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に「アクセッション番号:NC_001498」として公表されている。
1.3 2分節ゲノム型麻疹ウイルスベクターの再構成
2分節ゲノム型ベクターとして、N遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子及びマーカー遺伝子としてのDsRed遺伝子を搭載したMV−DsRed−NPMF、並びにH遺伝子、L遺伝子及びマーカー遺伝子としてのEGFP遺伝子を搭載したMV−EGFP−HLの2分節化を試みた(図8)。2分節ゲノム型ベクターの再構成用のcDNAをそれぞれp(+)MV−DsRed−NPMF及びp(+)MV−EGFP−HLと呼び、使用する。
1.3.1 p(+)MV−DsRed−NPMFの構築
構築スキームを(図36)に示す。対照ウイルスベクター用完全長ゲノムプラスミドp(+)MV323−DsRed(下記1.5を参照)を基礎に用いて構築した。
p(+)MV323−DsRedを制限酵素PacIとClaIで切断して、Hタンパク質のコード領域のすべて、及びLタンパク質のコード領域の大半を切り出した。
一方、下記の2本の合成一本鎖DNA:
5’−taaaacttagggtgcaagatcatccacaatgtgataat−3’(配列番号2)
5’−cgattatcacattgtggatgatcttgcaccctaagttttaat−3’(配列番号3)
をそれぞれ0.3μgずつ、dHO内で混合し、95℃で10分加熱後、50℃で10分間アニール反応を行うことによってPacIとClaIに対応する突出末端を持つ二重鎖DNAを合成し、それを上記の切り出し部に、公知の遺伝子組換え技術で組み込むことによって構築した。短い合成二重鎖DNAが挿入された部位は、新たな遺伝子挿入部位として機能するように合成二重鎖の配列を調整してある(図10のEmp−1に相当する)。
1.3.2 p(+)MV−EGFP−HLの構築
構築スキームを(図37)に示す。対照ウイルスベクター用完全長ゲノムプラスミドp(+)MV323−EGFP(下記1.5を参照)を基礎に用いて構築した。p(+)MV323−EGFPを制限酵素BstBIとPacIで切断して、Nタンパク質、Pタンパク質、Mタンパク質及びFタンパク質のコード領域のすべてを切り出した。
一方、下記の2本の合成一本鎖DNA:
5’−cgaacgagatggccaacgatatcggtagttaat−3’(配列番号4)
5’−taactaccgatatcgttggccatctcgtt−3’(配列番号5)
をそれぞれ0.3μgずつ、dHO内で混合し、95℃で10分加熱後、50℃で10分間アニール反応を行うことによってBstBIとPacIに対応する突出末端を持った二重鎖DNAを合成し、それを上記の切り出し部に、公知の遺伝子組換え技術で組み込むことによって構築した。短い合成二重鎖DNAが挿入された部位は、新たな遺伝子挿入部位として機能するように合成二重鎖の配列を調整してある(図10のEmp−2に相当する)。
1.3.3 pCAG−T7−IC−N、pCAG−T7−IC−PΔC及びpGEMCR−9301B−Lの構築
上記プラスミドから感染性をもつウイルス(ウイルスベクター)を再構成するためには、Nタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質をそれぞれ発現する3種のプラスミドが必要である。これらのプラスミドは、公知のpCAG−T7−IC−N、pCAG−T7−IC−PΔC及びpGEMCR−9301B−Lを利用した(Takeda M,et.al.,Efficient rescue of measles virus from cloned cDNA using SLAM−expressing Chinese hamster ovary cells.,Virus Res.,2005 Mar;108(1−2):161−5.)。
pCAG−T7−IC−N及びpCAG−T7−IC−PΔCは、その骨格にpCAGGSプラスミド(Niwa,H.et.al.,1991,Efficient selection for high−expression transfectants with a novel eukaryotic vector.,Gene,108,193−199.)を持ち、公知の遺伝子組換え技術で、T7プロモーター配列とその下流に、pCAG−T7−IC−NではNタンパク質のコード塩基配列が挿入され、pCAG−T7−IC−PΔCではPタンパク質のコード塩基配列が挿入されている。
pGEMCR−9301B−Lは、pGEM−3Z(プロメガ社)プラスミドを骨格に持ち、pGEM−3Z内部のT7プロモーターの下流に、Lタンパク質のコード塩基配列が挿入されている。
1.3.4 ワクシニアウイルスvTF7−3株
上記1.3.1〜1.3.3に記載の5種のプラスミドから、麻疹ウイルスベクターの2つの分節ゲノム(RNAゲノム)、並びにNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質をコードするmRNAを合成するために、組換えワクシニアウイルスvTF7−3株を用いた。vTF7−3株は、T7 RNAポリメラーゼを発現する公知の組換えワクシニアウイルスであり(Fuerst TR,et.al.,Eukaryotic transient−expression system based on recombinant vaccinia virus that synthesizes bacteriophage T7 RNA polymerase.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,1986 Nov;83(21):8122−6.)、様々な研究用途に応用されているものである。
1.3.5 宿主細胞の準備
(1)常法により、直径10cm培養皿に適度に密に生育させたCHO/hSLAM細胞を用意した。
(2)上記生育後のCHO/hSLAM細胞を、複数枚の6穴培養プレートに播種した。培養液としては、7.5%の胎児牛血清入RPMI培養液を用いた。
(3)37℃で6時間、CHO/hSLAM細胞の培養を行った。
1.3.6 ワクシニアウイルスの感染
(1)2.5×10PFU/mlに感染価を調整したvTF7−3株のウイルス液を用意した。
(2)6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の培養液を取り除き、ウイルス液を240μl/wellずつ加えた。
(3)37℃で1時間培養し、感染させた。
1.3.7 プラスミドDNAの導入
(1)p(+)MV−DsRed−NPMF(2.5μg)及びp(+)MV−EGFP−HL(2.5μg)、並びにpCAG−T7−IC−N(1μg)、pCAG−T7−IC−PΔC(1.5μg)及びpGEMCR−9301B−Lの各プラスミドをポリスチレンチューブに入れ混和して用いた。
(2)上記チューブに、200μlのOpti−MEM培養液(インビトロジェン社)を加えて混和した。
(3)別のポリスチレンチューブに、7μlのLipofectamine2000試薬(インビトロジェン社)及び200μlのOpti−MEM培養液を入れて混和した。
(4)上記(2)により得た混和液と上記(3)により得た混和液とを混和し、室温で20分放置した。
(5)6穴培養プレートのウイルス液をCHO/hSLAM細胞から取り除いた(前記1.3.6(3)の培養終了後)。
(6)次いで、カスパーゼ阻害剤(z−Asp−CH−DCB、ペプチド研究所)を50μg/mlの濃度で添加したOpti−MEM培養液2mlを、6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の各穴に添加した。
(7)6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の各穴に、上記(4)により得た混和液を滴下した。
(8)37℃で18時間培養し、宿主への各プラスミドの導入、及び麻疹ウイルス粒子(麻疹ウイルスベクター)の再構成を行った。
1.3.8 B95a細胞との共培養
(1)直径10cmの培養皿に約60%程度の密度に均一に培養されたB95a細胞を用意した。
(2)前記1.3.7(8)の培養後のCHO/hSLAM細胞をトリプシン液で剥がして上記(1)のB95a細胞上に播種し、37℃で共培養を行った。
(3)共培養後、約30時間以内に、再構成及び増殖された麻疹ウイルスが感染した巨細胞が多数観察された。
通常、vTF7−3株の排除は、再構成されたウイルス粒子(ウイルスベクター)をB95a細胞で増殖させた後に、プラークアイソレーションすることや、ウイルス液の限界希釈によって容易に行うことができるが、ワクシニアウイルスの中和抗体を用いることで、さらに容易に行うことができる。
1.3.9 再構成したウイルスベクター
再構成した2分節ゲノム型麻疹ウイルスベクターの各分節ゲノムの構造模式図を図8及び図10に示す。1分節目(図8(A))には、ウイルス遺伝子のH遺伝子及びL遺伝子に加え、外来遺伝子のEGFP遺伝子が挿入されている。2分節目(図8(B))には、ウイルス遺伝子のN遺伝子、P遺伝子、M遺伝子及びF遺伝子に加え、外来遺伝子のDsRed遺伝子が挿入されている。外来遺伝子を高発現させるために、挿入部位は各々の分節ゲノムの最上流に設置した。また、空の遺伝子ユニットが、各々の分節ゲノムにもう1箇所ずつ用意されており(矢印部分参照)、この遺伝子ユニットに、さらに外来遺伝子を挿入することが可能である。すなわち、合計4つの外来遺伝子の挿入が可能である2分節ゲノム型麻疹ウイルスベクターを作製することができた。
1.4 3分節ゲノム型麻疹ウイルスベクターの再構成
3分節ゲノム型ベクターとして、N遺伝子及びP遺伝子とマーカー遺伝子としてのLacZ遺伝子とを搭載したMV−LacZ−NP、M遺伝子及びF遺伝子とマーカー遺伝子としてのDsRed遺伝子とを搭載したMV−DsRed−MF、並びにH遺伝子及びL遺伝子とマーカー遺伝子としてのEGFP遺伝子とを搭載したMV−EGFP−HLの3分節化を試みた(図9)。3分節ゲノム型ベクターの再構成用のcDNAをそれぞれp(+)MV−LacZ−NP、p(+)MV−DsRed−MF及びp(+)MV−EGFP−HLと呼び、使用した。そのうちp(+)MV−EGFP−HLは、2分節ゲノム型及び3分節ゲノム型ベクターの両者の再構成に共通に使用する。
1.4.1 p(+)MV−LacZ−NPの構築
構築スキームを(図38)に示す。対照ウイルスベクター用完全長ゲノムプラスミドp(+)MV323−lacZ(下記1.5を参照)を基礎に用いて構築した。p(+)MV323−lacZを制限酵素SalIとPmlIで切断して、Mタンパク質、Fタンパク質及びHタンパク質のコード領域のすべて、及びLタンパク質のコード領域の大半を切り出した。
一方、下記の2本の合成一本鎖DNA:
5’−tcgacctaattagtggcccgaagtcac−3’(配列番号6)
5’−gtgacttcgggccactaattagg−3’(配列番号7)
をそれぞれ0.3μgずつ、dHO内で混合し、95℃で10分加熱後、50℃で10分間アニール反応を行うことによってSalIとPmlIに対応する突出末端を持った二重鎖DNAを合成し、それを上記の切り出し部に、公知の遺伝子組換え技術で組み込むことによって構築した。
1.4.2 p(+)MV−DsRed−MFの構築
構築スキームを(図39)に示す。上記の分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター用p(+)MV−DsRed−NPMFH(上記1.3を参照)を基礎に用いて構築した。p(+)MV−DsRed−NPMFHを制限酵素BlpIで切断して、Nタンパク質及びPタンパク質のコード領域のほとんどすべてを切り出した。
一方、下記の2本の合成一本鎖DNA:
5’−ttagcatagttctaatgaaacaagc−3’(配列番号8)
5’−tgagcttgtttcattagaactatgc−3’(配列番号9)
をそれぞれ0.3μgずつ、dHO内で混合し、95℃で10分加熱後、50℃で10分間アニール反応を行うことによってBlpIに相当する突出末端を持った二重鎖DNAを合成し、それを上記の切り出し部に、公知の遺伝子組換え技術で組み込むことによって構築した。短い合成二重鎖DNAが挿入された部位は、新たな遺伝子挿入部位として機能するように合成二重鎖の配列を調整してある(図10のEmp−3に相当する)。
1.4.3 再構成方法
3分節ゲノム型ウイルスベクターの再構成方法は、前述した2分節ゲノム型ウイルスベクターの再構成方法において、p(+)MV−DsRed−NPMF及びp(+)MV−EGFP−HLの代わりにp(+)MV−lacZ−NP、p(+)MV−DsRed−MF及びp(+)MV−EGFP−HLを使用したこと以外は、同様に行った。なお、p(+)MV−lacZ−NP、p(+)MV−DsRed−MF及びp(+)MV−EGFP−HLの使用量は、それぞれ2μgとした。
1.4.4 再構成したウイルスベクター
再構成した3分節ゲノム型麻疹ウイルスベクターの各分節ゲノムの構造模式図を図9及び図10に示す。1分節目(図9(A))には、ウイルス遺伝子のH遺伝子とL遺伝子に加え、外来遺伝子のEGFP遺伝子が挿入されている。2分節目(図9(B))には、ウイルス遺伝子のM遺伝子とF遺伝子に加え、外来遺伝子のDsRed遺伝子が挿入されている。3分節目(図9(C))には、ウイルス遺伝子のNとPに加えて外来遺伝子のLacZ遺伝子が挿入されている。外来遺伝子を高発現させるために、挿入部位は各々の分節ゲノムの最上流に設置した。また、空の遺伝子ユニットが、1分節目には1箇所、2分節目に2箇所用意されており(矢印部分参照)、さらに外来遺伝子の挿入が可能である。すなわち、3分節ゲノム型麻疹ウイルスベクターには、合計6つの外来遺伝子の挿入が可能である。
1.5 対照ウイルスベクターの再構成
比較対照として、外来遺伝子を挿入した3種の非分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター(IC323−lacZ、IC323−DsRed、IC323−EGFP)を作製した(図5,図10参照)。具体的には、野生型の麻疹ウイルス(IC323株)のゲノムにLacZ遺伝子、DsRed遺伝子、又はEGFP遺伝子が挿入された組換えゲノムを有するウイルスベクターである。外来遺伝子を高発現させるため、挿入部位はいずれもゲノムの最上流に設置した。
1.5.1 IC323−EGFPを再構成するためのプラスミドDNA
IC323−EGFPを再構成するためのプラスミドDNAとして、p(+)MV323−EGFPを利用した(Hashimoto K,et.al.,SLAM(CD150)−independent measles virus entry as revealed by recombinant virus expressing green fluorescent protein.,J.Virol.,2002 Jul;76(13):6743−9.)。p(+)MV323−EGFPは、p(+)MV323の麻疹ウイルスのゲノムcDNA領域内のT7プロモーター側の最上流側に麻疹ウイルスの遺伝子の転写開始配列と転写終結配列、そしてAscI及びAatIIの2つの制限酵素認識配列を公知の遺伝子組換え技術にて挿入し、さらにその制限酵素認識配列を利用して、その間に、EGFPタンパク質のコード配列を挿入したプラスミドである(図10を参照)。このp(+)MV323−EGFPから得られる麻疹ウイルスをIC323−EGFPとよび、そのウイルスは、IC−B株と同じ遺伝子構造をもつp(+)MV323から得られるIC323と、EGFPを発現すること以外は、同じ表現型を有している(Hashimoto K,et.al.,SLAM(CD150)−independent measles virus entry as revealed by recombinant virus expressing green fluorescent protein.,J.Virol.,2002 Jul;76(13):6743−9.)。
1.5.2 IC323−lacZを再構成するためのプラスミドDNA
IC323−lacZを再構成するためのプラスミドDNAとして、p(+)MV323−LacZを利用した(Takeda M,et.al.,Efficient rescue of measles virus from cloned cDNA using SLAM−expressing Chinese hamster ovary cells.,Virus Res.,2005 Mar;108(1−2):161−5.)。p(+)MV323−LacZは、p(+)MV323−EGFPのEGFP遺伝子のコード領域(Open reading frame[ORF])の開始コドン、終止コドンの内部配列のみをEGFP翻訳配列からLacZ(βガラクトシダーゼ)翻訳配列に公知
の遺伝子組換え技術で置換えたプラスミドである。このp(+)MV323−LacZから得られる麻疹ウイルスをIC323−LacZとよび、そのウイルスは、IC−B株と同じ遺伝子構造をもつp(+)MV323から得られるIC323と、βガラクトシダーゼを発現すること、増殖能力が低下していること以外は、同じ表現型を有している。
1.5.3 IC323−DsRedを再構成するためのプラスミドDNA
IC323−DsRedを再構成するためのプラスミドDNAとして、p(+)MV323−DsRedを用いた。p(+)MV323−DsRedは、上記p(+)MV323−LacZと同様の方法で構築することができ、p(+)MV323−EGFPのEGFP遺伝子のコード領域(ORF)の開始コドン、終止コドンの内部配列のみをEGFP翻訳配列からDsRed翻訳配列に公知の遺伝子組換え技術で置換えたプラスミドである。このp(+)MV323−DsRedから得られる麻疹ウイルスをIC323−DsRedとよび、そのウイルスは、IC−B株と同じ遺伝子構造をもつp(+)MV323から得られるIC323と、DsRedを発現すること、増殖能力が低下していること以外は、同じ表現型を有している。
p(+)MV323−EGFP、p(+)MV323−DsRed、p(+)MV323−lacZからのIC323−EGFP、IC323−DsRed、IC323−lacZの再構成方法は、前述した2分節ゲノム型ウイルスベクターの再構成方法において、p(+)MV−DsRed−NPMF及びp(+)MV−EGFP−HLの代わりにp(+)MV323−EGFP、p(+)MV323−DsRed及びp(+)MV323−lacZを使用したこと以外は、同様に行った。なお、p(+)MV323−EGFP、p(+)MV323−DsRed及びp(+)MV323−lacZの使用量は、それぞれ5μgとした。
1.6 外来性遺伝子の追加挿入
3分節ゲノム型ウイルスベクターの分節、MV−DsRed−MFへの外来性遺伝子の追加挿入を行った。
1.6.1 p(+)MV−DsRed−CAT MFの構築:Emp−3へのChloramphenicol acetyl transferase(CAT)遺伝子の挿入
下記の合成一本鎖DNA:
5’−agttcgaagctaaaatggagaaaaaaatc−3’(配列番号10)
5’−cggctgagcttacgccccgccctgccact−3’(配列番号11)
をプライマーとして使用し、p107MV(−):CATプラスミド(Sidhu MS,et.al.,Rescue of synthetic measles virus minireplicons:measles genomic terminidirect efficient expression and propagation of a reporter gene.,Virology,1995 Apr 20;208(2):800−7.)を鋳型にして公知の核酸増幅技術(PCR)に従って、CAT遺伝子のコード配列とその両末端にBstBIとBlpI制限酵素認識配列をもつDNA断片を得た。このDNA断片を公知の遺伝子組換え技術によってp(+)MV−DsRed−MFプラスミドのEmp−3内部のBstBIとBlpI制限酵素認識配列部へ挿入することにより、p(+)MV−DsRed−CAT−MFプラスミドを得た(図40)。
上記PCRの反応液組成及び反応条件は、次の通りである。
<反応液組成>
鋳型DNA(1.0μg/μL): 1μL
KOD plus polymerase: 1unit
Fプライマー(100μM): 0.5μL
Rプライマー(100μM): 0.5μL
dNTP(2.5mM each): 10μL
10×Buffer: 10μL
25mM MgSO4 4μL
滅菌水: 73μL
合計: 100μL
<反応条件>
「94℃で15秒間の熱変性・解離→55℃で30秒間のアニーリング→68℃で2分間の合成・伸長」を1サイクルとするサイクル条件で、計20サイクル。
1.6.2 p(+)MV−DsRed−CAT−MF−SEAPの構築:Emp−1へのSecreted alkaline phosphatase(SEAP)遺伝子の挿入
下記の合成一本鎖DNA:
5’−gattaattaaaacttagggtgcaagatcacgcgaattcgcccaccatgc−3’(配列番号12)
5’−atagcgcttcatgtctgctcgaagcggc−3’(配列番号13)
をプライマーとして使用し、pSEAP−controlプラスミド(クローンテック社)を鋳型にして公知の核酸増幅技術(PCR)に従って、SEAP遺伝子のコード配列とその両末端にPacIとEco47III制限酵素認識配列をもつDNA断片を得た。このDNA断片を公知の遺伝子組換え技術によってp(+)MV−DsRed−CAT−MFプラスミドのEmp−1内部のPacIとEco47III制限酵素認識配列部へ挿入することにより、p(+)MV−DsRed−CAT−MF−SEAPプラスミドを得た(図41)。
なお、上記PCRの反応液組成及び反応条件は、1.6.1と同様にして行った。
1.6.3 再構成方法
これらp(+)MV−DsRed−CAT−MF又はp(+)MV−DsRed−CAT−MF−SEAP)を用いての3分節ゲノム型ウイルスベクターの再構成方法は、前述した3分節ゲノム型ウイルスベクターの再構成方法において、p(+)MV−DsRed−MFの代わりにp(+)MV−DsRed−CAT−MP又はp(+)MV−DsRed−CAT−MF−SEAPを使用したこと以外は、同様に行った。なお、p(+)MV−DsRed−CAT−MF及びp(+)MV−DsRed−CAT−MF−SEAPの使用量は、いずれも2μgとした。
2.外来遺伝子の発現
2.1 2分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター(図11参照)
再構成された2分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター(以下、「2 seg−MeV」という)は、宿主CHO細胞において、EGFP(緑色、図11Aのパネル)及びDsRed(赤色、図11Bのパネル)の蛍光を発する巨細胞を形成しながら増殖していることが、蛍光顕微鏡下で認められた。なお、図11Cのパネルは、図11Aのパネルと図11Bのパネルを重ね合わせて表示したものであり、図11Dのパネルはウイルス細胞そのもの(励起光未照射)の写真である。
2.2 3分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター(図12、13参照)
2.2.1 p(+)MV−LacZ−NP、p(+)MV−DsRed−MF及びp(+)MV−EGFP−HLで再構成された3分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター
当該ウイルスベクター(以下、「3 seg−MeV」という)は、宿主B95a細胞において、EGFP(緑色、図12Aのパネル)及びDsRed(赤色、図12Bのパネル)の蛍光を発する巨細胞を形成しながら増殖していることが、蛍光顕微鏡下で認められた。なお、図12Cのパネルは、図12Aのパネルと図12Bのパネルを重ね合わせて表示したものであり、図12Dのパネルはウイルス細胞そのもの(励起光未照射)の写真である。また、上記蛍光に加えて、lacZ遺伝子にコードされているβガラクトシダーゼが発現していることも認められた(図13Bのパネル、図13Aのパネル(拡大))。
2.2.2 p(+)MV−LacZ−NP、p(+)MV−DsRed−CAT−MF及びp(+)MV−EGFP−HLで再構成された3分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター
当該ウイルスベクター(以下、「3 seg−MeV−CAT」という)は、宿主Vero/hSLAM細胞において、EGFP(緑色、図42Aのパネル)及びDsRed(赤色、図42Bのパネル)の蛍光を発する巨細胞を形成しながら増殖していることが、蛍光顕微鏡下で認められた。なお、図42Cのパネルは、図42Aのパネルと図42Bのパネルを重ね合わせて表示したものであり、ウイルス細胞そのもの(励起光未照射)の写真である。また、上記蛍光に加えて、lacZ遺伝子にコードされているβガラクトシダーゼが発現していることも認められた。それらに加えて、3 seg−MeV−CATを感染させた宿主Vero/hSLAM細胞を経時的に採取してCAT活性を解析したところ、CAT活性の経時的な増加が確認できた(図42C)。
2.2.3 p(+)MV−LacZ−NP、p(+)MV−DsRed−CAT−MF−SEAP及びp(+)MV−EGFP−HLで再構成された3分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター
当該ウイルスベクター(以下、「3 seg−MeV−CAT−SEAP)」という)は、宿主Vero/hSLAM細胞において、EGFP及びDsRedの蛍光を発する巨細胞を形成しながら増殖していることが、蛍光顕微鏡下で認められた。また、上記蛍光に加えて、lacZ遺伝子にコードされているβガラクトシダーゼが発現していることも認められた。それらに加えて、3 seg−MeV−CAT−SEAPを感染させた宿主Vero/hSLAM細胞を経時的に採取してCAT活性及びSEAP活性を解析したところ、CAT活性(図43A)及びSEAP活性(図43B)の経時的な増加が確認できた。
3.ウイルス複製能
2 seg−MeVが、野生型麻疹ウイルス(IC323株)と同程度の増殖能を維持していることが認められた(図14参照)。
3 seg−MeVは、感染後24時間までは、野生型麻疹ウイルス(IC323株)と同程度に増殖することが認められた。また、LacZ遺伝子を有する非分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター(IC323−lacZ)と比較すると、感染後24時間の時点で約50倍量のウイルスを生産していることが認められた(図14参照)。
これらの結果から、2 seg−MeV及び3 seg−MeVは高い増殖性を維持した麻疹ウイルスベクターであることが確認された。
4.プラーク形成能
4.1 プラーク形成能(図15参照)
2 seg−MeV及び3 seg−MeVは、いずれも、野生型麻疹ウイルス(IC323株)と同様にプラーク形成能を保持していることが認められた。なお、各プラークが1つの粒子に由来するであろうことは、希釈系列とプラークの数とのlinealityにより確認されている。
4.2 プラークにおけるβガラクトシダーゼの発現(図16参照)
3 seg−MeVのプラークが、βガラクトシダーゼを高発現していることが認められた。
野生型麻疹ウイルス(IC323株)及び2 seg−MeVのプラークでは、βガラクトシダーゼの発現は認められなかった。
4.3 プラークにおける蛍光の発現(図17参照)
2 seg−MeV及び3 seg−MeVは、いずれも、2色(赤色、緑色)の蛍光を発するプラークを形成していることが認められた(図17A〜D)。さらに、3 seg−MeVは、βガラクトシダーゼを発現していることが認められた(図17G)。
また、3 seg−MeVのプラークの周辺には、緑色の蛍光とβガラクトシダーゼの発現は認められるが、赤色の蛍光発現は認められない細胞が観察された。これについて後述する(詳しくは、4.3.2を参照)。
4.3.1 2 seg−MeVについて(図18参照)
通常、ウイルスゲノムの転写、すなわち遺伝子発現に必須のウイルスタンパク質は、ヌクレオキャプシド(N)とポリメラーゼ(P,L)である。2 seg−MeVでは、遺伝子発現に両分節が必ず必要なため(図18(C)のパネル)、全ての巨細胞(HとFによる)が、2色の蛍光を発する。
4.3.2 3 seg−MeVについて(図19参照)
一方、3 seg−MeVでは、前述したように、lacZとEGFPをもつ2分節のみでも遺伝子発現が可能であることを示唆する結果が得られた。これは、3分節のゲノムを全て有していなくても、図19(B)のパネルに示すように2分節のゲノムを有していれば、少なくともヌクレオキャプシド(N)とポリメラーゼ(P,L)については発現することができるためである。このような、3分節ゲノム型のウイルスベクターの複製時に生じ得る非増殖型のウイルス粒子、すなわちM遺伝子やF遺伝子を持たないことにより伝播性や感染性を有しないウイルス粒子は、安全性の高いウイルスベクターの開発や、タンパク質持続発現型ベクターの開発に応用が可能である。
5.外来性タンパク質の発現解析
5.1 免疫沈降法を用いた解析(図20参照)
2 seg−MeVを感染させたVero/hSLAM細胞及び3 seg−MeVを感染させたVero/hSLAM細胞における、ウイルスタンパク質及び外来性タンパク質の発現を、免疫沈降法を用いて解析した。
2 seg−MeV感染細胞では、EGFPとDsDedを発現していることがことが認められ(図20左から5レーン目「2 seg−MeV」)、3 seg−MeV感染細胞では、EGFP、DsDedに加えてβガラクトシダーゼも発現していることが認められた(図20左から6レーン目「3 seg−MeV」)。しかも、これら分節ゲノム型ウイルス感染細胞におけるタンパク質(外来性タンパク質及びウイルスタンパク質)発現効率は、非分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター(IC323−EGFP,IC323−DsRed,IC323−lacZ)の感染細胞よりも優れていることが確認された(図20右から1レーン目「3 seg−MeV」、2レーン目「2 seg−MeV」)。
5.2 ルミノメーターを用いた解析(図21参照)
3 seg−MeV等を感染させたVero/hSLAM細胞におけるβガラクトシダーゼの発現量を、ルミノメーターを用いて定量した。非分節ゲノム型麻疹ウイルスベクターIC323−lacZよりも、3 seg−MeVの方が、6倍以上発現効率が高いことが確認された。
6.遺伝子発現量(mRNA量)の解析(図22参照)
3 seg−MeVを感染させたVero/hSLAM細胞における各遺伝子の発現量(mRNA量)を、RT−定量PCR法により定量し、非分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター(IC323−EGFP)の感染細胞におけるmRNA量と比較した。
その結果、3 seg−MeV感染細胞でのEGFP mRNA量は、IC323−EGFP感染細胞でのEGFP mRNA量に対して約50%程度であった。しかしながら、3 seg−MeV感染細胞でのウイルスタンパク質のmRNA量は、3種の外来遺伝子の挿入にも関わらず、いずれも、IC323−EGFP感染細胞でのウイルスタンパク質のmRNA量に対して100%以上であることが確認された。
以上の結果、及び前記2,4,5での結果から、2 seg−MeV及び3 seg−MeVにより2種及び3種の外来性タンパクを高発現させ得ることが確認できた。
また、3 seg−MeVの分節ゲノムには、さらに3つの外来遺伝子の追加挿入にも対応し得る空の遺伝子ユニット(遺伝子挿入部位)が残されており、3 seg−MeVは、合計6つもの外来遺伝子を挿入できる極めて有用なウイルスベクターである。このうちの2つの挿入部位には、それぞれCATとSEAP遺伝子を挿入し、発現されることを、前記1.6の外来性遺伝子の追加挿入の項目で示した。
分節ゲノム型組換え麻疹ウイルスベクターの安定性
本実施例では、分節ゲノム型組換え麻疹ウイルスベクターが、外来遺伝子の発現を維持しつつ、安定的に継代できるものであるかどうかを確認した。
実施例1において作製した3分節ゲノム型麻疹ウイルスベクター(3 seg−MeV)を、約0.01程度の低いMOIで、Vero/hSLAM細胞へ感染させた。
その後、感染後の細胞変性効果(CPE)を、位相差顕微鏡又は蛍光顕微鏡で毎日観察し、CPEが顕著になった段階(すなわちすでに十分量、ウイルスが生産され、ウイルス合成量がピークに達し、以後、宿主細胞の死滅のためにウイルス合成が減衰すると予想される段階)で、細胞培養上清(ウイルス液)を回収し、再び低いMOIで、別のVero/hSLAM細胞へ感染させた。
このような継代操作を20回繰り返したときの細胞培養上清を新たなVero/hSLAM細胞に感染させて、外来遺伝子(レポーター遺伝子)の発現を観察した。すなわち、感染細胞におけるEGFP及びDsRedの蛍光を蛍光顕微鏡で観察し、併せて、X−gal染色法により感染細胞を染色してβ−ガラクトシダーゼの発現を観察した。
観察の結果、ウイルス感染により形成された多核巨細胞の全細胞数の90%以上において、EGFP及びDsRedの両蛍光が検出され、かつβ−ガラクトシダーゼを発現していることが確認された。
以上の結果から、3 seg−MeVが、外来遺伝子の発現を維持しつつ、安定的に継代できるものであることが示された。
ワクシニアウイルスLO−T7−1株を利用した麻疹ウイルスの再構成
1.T7 RNAポリメラーゼ発現ワクシニアウイルスLO−T7−1株の利用
Lister株を親株とする、T7 RNAポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルスLO−T7−1株は、公知のものを使用した(Yasui K,et.al.,The native form and maturation process of hepatitis C virus core protein.,J.Virol.,1998 Jul;72(7):6048−55.;Kashiwakuma T,et.al.,Detection of hepatitis C virus specific core protein in serum of patients by a sensitive fluorescence enzyme immunoassay(FEIA).,J.Immunol.Methods,1996 Mar 28;190(1):79−89.)。
2.麻疹ウイルスゲノムcDNAを含むプラスミドDNAp(+)MV323の構築
野生型麻疹ウイルス(IC−B株)から、常法により、ゲノムRNAを抽出し、下記に示す条件で逆転写反応を行い、全長ゲノムのcDNAを持つプラスミドp(+)MV323を作製した。
逆転写反応の反応液組成及び反応条件は、次の通りである。
<反応液組成>
鋳型RNA(1.0μg/μL): 5μL
逆転写酵素SuperscriptII: 1unit
プライマー(10μM): 0.5μL
dNTP(2.5mM each): 4μL
RNase Inhibitor: 1unit
5X First strand buffer:4μL
0.1M DTT 2μL
滅菌水: 適量(約2.5μL)
合計: 20μL
<反応条件>
「42℃で60分間(cDNA合成)→65℃で15分間(酵素失活)
→4℃で保存(冷却)」
p(+)MV323から再構成されたウイルス(13個の同義置換「アミノ酸置換を伴わない塩基置換」を除き親株のIC−B株と同じゲノム構造と有している)をIC323と呼ぶ。p(+)MV323の構築は、すでに完了している(Takeda M,et.al.,Recovery of pathogenic measles virus from cloned cDNA.,J.Virol.,2000 Jul;74(14):6643−7.)。p(+)MV323は、麻疹ウイルスの野生型株(IC−B株)のゲノム((−)鎖RNA)の完全な長さ(15,894塩基)のcDNAをコードしているプラスミドであり、その麻疹ウイルスゲノムcDNA(15,894塩基)の上流末端には、T7プロモーター配列が、下流末端にはリボザイム配列が配置されている。そのため、T7RNAポリメラーゼが、T7プロモーターに結合して、RNA合成を開始し、麻疹ウイルスのcDNA領域(15,894塩基)から完全長の麻疹ウイルスRNAゲノム(15,894塩基)を合成することができる。下流末端に配置されたリボザイム配列によって、合成された麻疹ウイルスRNAゲノムの下流末端が、正確に15,894塩基で切断される。p(+)MV323の構造や、この合成されたRNAゲノムから、感染性を持った麻疹ウイルス粒子が合成できることは公知である(Takeda M,et.al.,Recovery of pathogenic measles virus from cloned cDNA.,J.Virol.,2000 Jul;74(14):6643−7.)。麻疹ウイルス(IC−B株)のゲノム塩基配列情報(配列番号1)は、例えば、GenBank(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/)に「アクセッション番号:NC_001498」として公表されている。
3.麻疹ウイルスの再構成
3.1 宿主細胞の準備
(1)常法により、直径10cm培養皿に適度に密に生育させたCHO/hSLAM細胞を用意した。
(2)上記生育後のCHO/hSLAM細胞を、6穴培養プレート一枚に播種した。培養液としては、7.5%の胎児牛血清入RPMI培養液を用いた。
(3)37℃で6時間、CHO/hSLAM細胞の培養を行った。
3.2 ワクシニアウイルスの感染
(1)2.5×10PFU/mlに感染価を調整したLO−T7−1株ウイルス液を用意した。
(2)6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の培養液を取り除き、各穴に上記ウイルス液を240μl加えた。
(3)37℃で1時間培養し、LO−T7−1株を感染させた。
3.3 各種プラスミドDNAの導入、及びウイルス粒子の再構成
(1)p(+)MV323(5μg)、並びに実施例1で構築したpCAG−T7−IC−N(1μg)、pCAG−T7−IC−PΔC(1.5μg)及びpGEMCR−9301B−L(1μg)の各プラスミド溶液を、それぞれ所定のDNA量となるようにポリスチレンチューブに入れて混和した。
(2)上記チューブに、200μlのOpti−MEM培養液(インビトロジェン社)を加えて混和した。
(3)別のポリスチレンチューブに、7μlのLipofectamine2000試薬(インビトロジェン社)及び200μlのOpti−MEM培養液を入れて混和した。
(4)上記(2)により得た混和液と上記(3)により得た混和液とを混和し、室温で20分放置した。
(5)6穴培養プレートのLO−T7−1ウイルス液をCHO/hSLAM細胞から取り除いた(前記3.2(3)の培養終了後)。
(6)次いで、カスパーゼ阻害剤(z−Asp−CH−DCB、ペプチド研究所、50μl/ml)を添加したOpti−MEM培養液2mlを、6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の各穴に添加した。
(7)6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の各穴に、上記(4)により得た混和液を滴下した。
(8)37℃で18時間培養し、宿主への各プラスミドの導入、及び麻疹ウイルス粒子の再構成を行った。
3.4 B95a細胞との共培養
(1)直径10cmの培養皿に約40%程度の密度に均一に培養されたB95a細胞を用意した。
(2)前記3.3(8)の培養後のCHO/hSLAM細胞をトリプシン液で剥がして上記(1)のB95a細胞上に播種し、37℃で共培養を行った。
(3)共培養後、約30時間以内に、再構成及び増殖された麻疹ウイルスが感染した巨細胞が多数観察された。
LO−T7−1株を用いた外来遺伝子の転写・発現効果
1.GFPを指標にしたT7プロモーターの駆動性(T7 RNAポリメラーゼの発現性)の検証実験
1.1 宿主細胞の準備
(1)常法により、直径6穴培養プレートに適度に密に生育させたCHO/hSLAM細胞を用意した。
(2)培養液としては、7.5%の胎児牛血清入RPMI培養液を用いた。
1.2 ワクシニアウイルスの感染
(1)2.5×10PFU/mlに感染価を調整したvTF7−3株(実施例1参照)、LO−T7−1株(実施例3参照)及びMVA−T7株(Wyatt LS,et.al.,Replication−deficient vaccinia virus encoding bacteriophage T7 RNA polymerase for transient gene expression in mammalian cells.,Virology,1995 Jun 20;210(1):202−5.)のウイルス液をそれぞれ用意した。
(2)6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の培養液を取り除き、プレートごとに異なるウイルス液を感染価がMOI=5になるように加えた。
(3)37℃で1時間培養し、各ウイルス株を感染させた。
1.3 プラスミドDNAの導入、及び外来遺伝子の転写・発現
(1)pBS−GFP(pBluescriptプラスミド(ストラタジーン社)にGFP遺伝子を組み込んだもの)のプラスミド溶液を、1.0μgのDNA量となるようにポリスチレンチューブに入れた。
(2)上記チューブに、200μlのOpti−MEM培養液(インビトロジェン社)を加えて混和した。
(3)別のポリスチレンチューブに、7μlのLipofectamine 2000試薬(インビトロジェン社)及び200μlのOpti−MEM培養液を入れて混和した。
(4)上記(2)により得た混和液と上記(3)により得た混和液とを混和し、室温で20分放置した。
(5)6穴培養プレートのウイルス液をCHO/hSLAM細胞から取り除いた(前記1.2(3)の培養終了後)。
(6)次いで、Opti−MEM培養液2mlを、6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の各穴に添加した。
(7)6穴培養プレートのCHO/hSLAM細胞の各穴に、上記(4)により得た混和液を滴下した。
(8)37℃で24時間培養し、宿主への各プラスミドの導入、及び外来遺伝子の転写・発現を行った。
(9)上記(1)〜(8)の操作を各プレートについて行った。
1.4 外来遺伝子の発現確認
各CHO細胞についてEGFPの発現を蛍光顕微鏡による蛍光の検出により確認した。その結果、ワクシニアウイルスvTF7−3株及びLO−T7−1株を感染させた細胞において、EGFPの蛍光が確認された(図23参照)。
2.ルシフェラーゼの発現を指標にしたミニゲノムウイルス転写・複製実験系によるRNP複合体形成誘導能の検証実験
上記、実施例3(麻疹ウイルスの再構成)において、p(+)MV323の代わりにp18MGFLuc01(Komase K,et.al.,The phosphoprotein of attenuated measles AIK−C vaccine strain contributes to its temperature−sensitive phenotype.,Vaccine.,2006 Feb 6;24(6):826−34.Epub 2005 Aug 15.)を用いたこと以外は同様にして、ルシフェラーゼの発現(すなわちルシフェリン添加後の蛍光量)を確認した。
その結果、ワクシニアウイルスvTF7−3株及びLO−T7−1株を感染させた細胞において蛍光が確認された。なお、LO−T7−1株を感染させた細胞の方が若干蛍光量は少なかった(図24(A)参照)。
3.麻疹ウイルス(EGFPを発現するもの:1.5対照ウイルスベクターの再構成を参照)粒子の再構成
上記1.のGFPの発現において、pBS−GFP(pBluescriptプラスミド(ストラタジーン社)にGFP遺伝子を組み込んだもの)の代わりに、p(+)MV323−EGFP(5μg)(1.5対照ウイルスベクターの再構成を参照)、並びにpCAG−T7−IC−N(1μg)、pCAG−T7−IC−PΔC(1.5μg)及びpGEMCR−9301B−L(1μg)(実施例1参照)の各プラスミドを混和して用い、また、ワクシニアウイルスMVA−T7株を使用しなかったこと以外は上記1と同様にして、麻疹ウイルス粒子の合成開始に成功した細胞数を測定した。
その結果、ワクシニアウイルスvTF7−3株及びLO−T7−1株を感染させた細胞において、いずれも麻疹ウイルス粒子の複製が確認された。なお、LO−T7−1株を感染させた方では、vTF7−3株を感染させた方に比べ、約55〜60%程度の細胞数であった(図24(B)参照)。
LO−T7−1株感染細胞におけるカスパーゼ阻害剤の効果
1.ワクシニアウイルスの感染によるアポトーシス抑制効果
実施例4中の1.の1.1及び1.2と同様にして、CHO/hSLAM細胞を用意した。2.5×10PFU/mlに感染価を調整したLO−T7−1株(実施例3参照)のウイルス液を用意し、CHO/hSLAM細胞に添加して(240μl/well)、37℃で1時間培養し、LO−T7−1株を感染させた。
培養後、ウイルス液をCHO/hSLAM細胞から取り除いた。その後、一部のウェルにはカスパーゼ阻害剤(z−Asp−CH−DCB、ペプチド研究所、50μl/ml)を添加したOpti−MEM培養液2mlを添加した。その後、37℃で18時間培養した。
その結果、カスパーゼ阻害剤を添加しなかったウェルにおいてはアポトーシスによる細胞死が多く確認されたが、カスパーゼ阻害剤を添加したウェルにおいてはアポトーシスによる細胞死がほとんど確認されなかった(図25(a))。
また、カスパーゼ阻害剤を添加しなかったウェルの細胞では染色体DNAの断片化が生じたが、カスパーゼ阻害剤を添加したウェルの細胞では染色体DNAの断片化はほとんど生じなかった(図25(b))。
2.ルシフェラーゼの発現を指標にしたミニゲノムウイルス転写・複製実験系によるRNP複合体形成誘導能の亢進
実施例4中の2.と同様にして、ワクシニアウイルスLO−T7−1株を感染させた細胞におけるルシフェラーゼの発現(すなわちルシフェリン添加後の蛍光量)を確認した。一方、対照として、カスパーゼ阻害剤を使用せずに同様の操作を行った。
その結果、カスパーゼ阻害剤を添加しなかった場合は、添加した場合に比べ、蛍光量が約1/10程度に低下した(図26(a))。カスパーゼ阻害剤を添加することによる(ルシフェラーゼの発現を指標にした)ミニゲノムウイルス転写・複製実験系によるRNP複合体形成誘導能の亢進が認められた。
3.ウイルス粒子合成開始に成功した細胞数の増加
実施例4中の3.と同様にして、ワクシニアウイルスLO−T7−1株を感染させた細胞における麻疹ウイルス粒子の合成開始に成功した細胞数えを測定した。対照として、カスパーゼ阻害剤の濃度を25μl/mlとした場合、及び、カスパーゼ阻害剤を使用しなかった場合(0μl/ml)についても同様の操作を行った。
その結果、カスパーゼ阻害剤の濃度依存的に麻疹ウイルス粒子の合成開始に成功した細胞数の増加が確認された(図26(b))。
SeVベクターによる分節ゲノム型ベクターcDNAの構築
ベクターの分節化をセンダイウイルス(SeV)ベクター系で実施するにあたって、遺伝子治療及び遺伝子ワクチンへの臨床応用可能なベクター化に成功している「非伝播性F遺伝子欠失型SeVベクター」(Li,H.−O.et al.,J.Virology,74;6564−6569(2000),WO00/70070)をベースにした分節化を検討した。
2分節ゲノム型ベクターとして、NP遺伝子、P遺伝子及びM遺伝子とマーカー遺伝子としてのLacZ遺伝子とを搭載したMiniSeV/LacZ−NP−P−M、並びにHN遺伝子及びL遺伝子とマーカー遺伝子としてのGFP遺伝子とを搭載したMiniSeV/GFP−HN−Lの2分節化を試み、3分節ゲノム型ベクターとして、NP遺伝子及びP遺伝子とマーカー遺伝子としてのluciferase遺伝子とを搭載したMiniSeV/Luci−NP−P、M遺伝子とマーカー遺伝子としてのLacZ遺伝子とを搭載したMiniSeV/LacZ−M、並びにHN遺伝子及びL遺伝子とマーカー遺伝子としてのGFP遺伝子とを搭載したMiniSeV/GFP−HN−Lの3分節化を試みた(図27)。2分節ゲノム型ベクターの再構成用のcDNAをそれぞれpMiniSeV/LacZ−NP−P−M及びpMiniSeV/GFP−HN−Lと呼び、3分節ゲノム型ベクターの再構成用のcDNAをそれぞれpMiniSeV/Luci−NP−P、pMiniSeV/LacZ−M及びpMiniSeV/GFP−HN−Lと呼び、使用した。そのうちpMiniSeV/GFP−HN−Lは、2分節ゲノム型及び3分節ゲノム型ベクターの両者の再構成に共通に使用する。
(1)pMiniSeV/LacZ−NP−P−Mの構築
構築スキームを(図28)に示す。SeVベクターゲノムcDNA(pSeV(+18):Hasan,M.K.et al.,1997,J.General Virology,78:2813−2820)をtemplateとして、次の2種のプライマー、NotI−NP−F及びSac II−M−Rを用いてPCRを行い、両端にそれぞれNotI認識配列及びSacII認識配列を有するNP遺伝子、P遺伝子及びM遺伝子を含むfragment(Not I−NP/P/M−Sac II fragment:配列番号16)を得た。
Not I−NP−F:
5’−ttcacgcggccgcagatcttcacg−3’(24mer,配列番号14)
Sac II−M−R:
5’−tccatccgcggagcttatttaagacaaggagtgac−3’(35mer,配列番号15)
このfragmentをNotI及びSacIIで消化し精製後、pSeV(+18)を同様にNotI とSac IIで消化し、NP遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子及びL遺伝子の全遺伝子配列断片を取り除いたcDNAに挿入し、pMiniSeV/NP−P−Mを得た。pMiniSeV/NP−P−Mを再度NotI消化し、EIS配列を含むLacZ遺伝子のNotI fragment(配列番号17)をpMiniSeV/NP−P−Mに挿入したpMiniSeV/LacZ−NP−P−Mを構築した。
(2)pMiniSeV/GFP−HN−Lの構築
構築スキームを図29に示す。SeVベクターゲノムcDNA(pSeV(+18))をtemplateとして、下記の2種のプライマー、Not I−HN−F及びSac II−Rを用いてPCRを行い、両端にそれぞれNotI認識配列及びSacII認識配列を有するHN遺伝子及びL遺伝子を含むfragment(Not I−HN/L−Sac II fragment:配列番号20)を得た。
Not I−HN−F:
5’−aagtggcggccgccacagatcatggatggtgatag−3’(35mer,配列番号18)
Sac II−R:
5’−ttccaggtaccgcggagcttcgatc−3’(25mer,配列番号19)
このfragmentをNotI及びSacIIで消化し精製後、pSeV(+18)を同様にNot IとSac IIで消化し、NP遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子及びL遺伝子の全遺伝子配列断片を取り除いたcDNAに挿入し、
pMiniSeV/HN−Lを得た。pMiniSeV/HN−Lを再度NotI消化し、EIS配列を含むGFP遺伝子のNotI fragmentを(配列番号21)をpMiniSeV/HN−Lに挿入したpMiniSeV/GFP−HN−Lを構築した。
(3)pMiniSeV/Luci−NP−Pの構築
構築スキームを図30に示す。SeVベクターゲノムcDNA(pSeV(+18))をtemplateとして、下記の2種のプライマーを用いてPCRを行い、両端にそれぞれNotI認識配列及びSacII認識配列を有するNP遺伝子及びP遺伝子を含むfragment(Not I−NP/P−Sac II fragment:配列番号23)を得た。
Not I−NP−F:
5’−ttcacgcggccgcagatcttcacg−3’(24mer,配列番号14)
Sac II−P−R:
5’−tccatccgcggagctagttggtcagtgactctatg−3’(35mer,配列番号22)
このfragmentをNotI及びSacIIで消化し精製後、pSeV(+18)を同様にNot IとSac IIで消化し、NP遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子及びL遺伝子の全遺伝子配列断片を取り除いたcDNAに挿入し、
pMiniSeV/NP−Pを得た。pMiniSeV/NP−Pを再度NotI消化し、EIS配列を含むluciferase遺伝子のNotI fragmentを(配列番号24)をpMiniSeV/NP−Pに挿入したpMiniSeV/Luci−NP−Pを構築した。
(4)pMiniSeV/LacZ−Mの構築
構築スキームを図31に示す。SeVベクターゲノムcDNA(pSeV(+18))をtemplateとして、下記の2種のプライマー、並びにNot I−M−F及びSac II−M−Rを用いてPCRを行い、両端にそれぞれNotI認識配列及びSacII認識配列を有するM遺伝子を含むfragment(Not I−M−Sac II fragment:配列番号26)を得た。
Not I−M−F
5’−aagtggcggccgcacggcgcaatggcagatatc−3’(33mer,配列番号25)
Sac II−M−R:
5’−tccatccgcggagcttatttaagacaaggagtgac−3’(35mer,配列番号15)
このfragmentをNotI及びSacIIで消化し精製後、pSeV(+18)を同様にNot IとSac IIで消化し、NP遺伝子、P遺伝子、M遺伝子、F遺伝子、HN遺伝子及びL遺伝子の全遺伝子配列断片を取り除いたcDNAに挿入し、pMiniSeV/Mを得た。pMiniSeV/Mを再度NotI消化し、EIS配列を含むLacZ遺伝子のNotI fragment(配列番号17)をpMiniSeV/Mに挿入したpMiniSeV/LacZ−Mを構築した。
分節ゲノム型SeVベクターの再構成と増幅
分節ゲノム型SeVベクターの再構成は、非分節F遺伝子欠失型SeVの再構成法であるLiらの方法(Li,H,−O,et al.,J.Virology,74:6564−6569(2000);WO00/70070)及びその改良法(WO 2005/071092)に従って行った。また、本分節型ベクターはF遺伝子欠失型SeVベクターをベースにした分節型であるので、その増幅のためにはFタンパク質を高発現するパッケージング細胞(LLC−MK2/F7/A:Li,H.−O.et al.,J.Virology,74:6564−6569(2000),WO00/70070)を利用した。2分節ゲノム型ベクターの増幅の過程におけるGFP蛍光写真を図32に示すが、パッケージング細胞(LLC−MK2/F7/A)を用いた培養を行うことで、2分節ゲノム型ベクターの増幅が可能であった。また、3分節ゲノム型ベクターについてもパッケージング細胞(LLC−MK2/F7/A)を用いることで、ベクターを増幅することが可能であった(図33)。
分節ゲノム型SeVベクター由来搭載遺伝子発現確認
1. 2分節ゲノム型SeVベクターによる発現確認
コンフルエントになったLLC−MK2(12−well plate)細胞へ、MiniSeV/GFP−HN−LとMiniSeV/Lac Z−NP−P−Mの2分節SeVベクター溶液(増幅後培養上清)或は10倍希釈液を1ml/wellで添加し、遺伝子導入した。2日後にGFP蛍光観察を行い、写真を撮影した(GFP発現の確認)。また、Invitrogenのβ−Gal Staining Kit(Cat.No.K1465−01)を用いて染色し、明視野写真を撮影した(Lac Z発現の確認)。図34に示したように、MiniSeV/GFP−HN−LとMiniSeV/Lac Z−NP−P−Mの2分節SeVベクターによって感染した細胞ではGFPとLac Zの両者の発現が確認された。
2. 3分節ゲノム型SeVベクターによる発現確認
コンフルエントになったLLC−MK(12−well plate)細胞(24−well plate)へ、MiniSeV/GFP−HN−L、MiniSeV/Lac Z−MとMiniSeV/Luci−NP−Pの3分節SeVベクター溶液(増幅後培養上清)を0.5ml/wellで感染した。3日後GFP蛍光観察を行い、写真を撮影した(GFP発現の確認、図35A)。また、Invitrogen社のβ−Gal Staining Kit(Cat.No.K1465−01)を用いて染色し、明視野写真を撮影した(Lac Z発現の確認、図35B)。また、Goat Anti−Luciferase抗体を一次抗体とし、AlexaFluor 488 Rabbit Anti−Goat IgG抗体を二次抗体として蛍光免疫染色を行い、染色した細胞の蛍光写真を撮影した(Luciferase発現の確認、図35C)。さらに、Promega社のBright−Glo Luciferase Assay System(Cat.No.E2610)を用いて感染細胞のLuciferase活性を測定した(図35D)。図35に示したように、MiniSeV/GFP−HN−L、MiniSeV/Lac Z−MとMiniSeV/Luci−NP−Pの3分節SeVベクターによって感染した細胞ではGFP、Lac Z及びLuciferaseの3種の発現が確認された。
本発明によれば、ウイルス本来の良好な増殖能を保持しつつ外来遺伝子を高発現させることができ、しかも、外来遺伝子の長さ及び種類による発現効率への影響が小さく、複数個の外来遺伝子を挿入することができる組換えモノネガウイルスベクター、その製造方法、及びその製造用キットを提供することができる。本発明のベクターの開発により、モノネガウイルスがゲノムの分節化という大胆な改変が可能なウイルスであることが証明されるとともに、モノネガウイルスのゲノム操作が大きく簡便化された。さらに、当該ウイルスベクターを用いた外来性タンパク質の製造方法、並びに、当該ウイルスベクターを用いて得られる動物組織、細胞又は体液、及び抗血清又は抗体を提供することができる。
本発明のウイルスベクターは、安定性に優れ、複数の外来遺伝子をそれぞれ高発現させることができる実用性の高いベクターとして、極めて有用である。
配列番号2:合成DNA
配列番号3:合成DNA
配列番号4:合成DNA
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA
配列番号9:合成DNA
配列番号10:合成DNA
配列番号11:合成DNA
配列番号12:合成DNA
配列番号13:合成DNA
配列番号14:合成DNA
配列番号15:合成DNA
配列番号16:合成DNA
配列番号17:合成DNA
配列番号18:合成DNA
配列番号19:合成DNA
配列番号20:合成DNA
配列番号21:合成DNA
配列番号22:合成DNA
配列番号23:合成DNA
配列番号24:合成DNA
配列番号25:合成DNA
配列番号26:合成DNA
[配列表]

Claims (29)

  1. 複数に分節されたゲノムを保持し、少なくとも1つの分節ゲノムが宿主内で発現可能な外来遺伝子を含むことを特徴とする、組換えモノネガウイルスベクター。
  2. 外来遺伝子がモノネガウイルスを構成する機能性タンパク質遺伝子より上流側に挿入されたものである、請求項1記載のベクター。
  3. 少なくとも2つの分節ゲノムが外来遺伝子を含むものである、請求項1記載のベクター。
  4. 外来遺伝子を含む分節ゲノムのうちの少なくとも1つが複数の外来遺伝子を含むものである、請求項1記載のベクター。
  5. 2つに分節されたゲノムを保持し、一方の分節ゲノムがH遺伝子及びL遺伝子を含み、他方の分節ゲノムがN遺伝子、P遺伝子、M遺伝子及びF遺伝子を含むものである、請求項1記載のベクター。
  6. 3つに分節されたゲノムを保持し、第1の分節ゲノムがH遺伝子及びL遺伝子を含み、第2の分節ゲノムがM遺伝子及びF遺伝子を含み、第3の分節ゲノムがN遺伝子及びP遺伝子を含むものである、請求項1記載のベクター。
  7. モノネガウイルスが麻疹ウイルス又はセンダイウイルスである、請求項1記載のベクター。
  8. 請求項1記載のベクターに含まれる分節ゲノムRNA又はそのcRNA。
  9. 請求項8記載のRNA又はそのcRNAを転写し得る鋳型cDNAを含むDNA。
  10. プラスミドDNAである、請求項9記載のDNA。
  11. 宿主内に、請求項9記載のDNAと、モノネガウイルスのN遺伝子を含むDNA、P遺伝子を含むDNA及びL遺伝子を含むDNAと、当該DNAの転写ユニットとを導入することを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造方法。
  12. モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主内に、請求項9記載のDNAと、当該DNAの転写ユニットとを導入することを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造方法。
  13. 転写ユニットの導入が、所定のRNAポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルスを宿主に感染させること、又は、所定のRNAポリメラーゼ遺伝子を含むDNAを宿主内に導入すること若しくは宿主ゲノムに組込むことである、請求項11又は12記載の方法。
  14. RNAポリメラーゼがT7 RNAポリメラーゼである、請求項13記載の方法。
  15. 組換えワクシニアウイルスがLister株を親株として得られたものである、請求項13記載の方法。
  16. モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主内に、請求項8記載のRNA又はそのcRNAを導入することを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造方法。
  17. 宿主がCHO細胞である、請求項11、12又は16記載の方法。
  18. 請求項9記載のDNA、及び当該DNAの転写ユニットを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造用キット。
  19. モノネガウイルスのN遺伝子を含むDNA、P遺伝子を含むDNA及びL遺伝子を含むDNAをさらに含む、請求項18記載のキット
  20. 転写ユニットが、所定のRNAポリメラーゼを発現する組換えワクシニアウイルス、又は、所定のRNAポリメラーゼ遺伝子を含むDNAである、請求項18記載のキット
  21. RNAポリメラーゼがT7 RNAポリメラーゼである、請求項20記載のキット。
  22. 組換えワクシニアウイルスがLister株を親株として得られたものである、請求項20記載のキット。
  23. 請求項8記載のRNA又はそのcRNAを含む、組換えモノネガウイルスベクターの製造用キット
  24. モノネガウイルスのNタンパク質、Pタンパク質及びLタンパク質を発現する宿主をさらに含む、請求項18記載のキット。
  25. 宿主がCHO細胞である、請求項24記載のキット。
  26. 請求項1記載のベクターを感染させた宿主に外来性タンパク質を発現させ、発現した外来性タンパク質を回収することを含む、外来性タンパク質の製造方法。
  27. 請求項1記載のベクターを感染させた動物から採取された、組織、細胞又は体液。
  28. 外来性タンパク質を含む、請求項27記載の組織、細胞又は体液。
  29. 請求項1記載のベクターを感染させた動物から回収された、抗血清又は抗体。
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