JP3637939B2 - 塗膜保護用シート - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車のボティや部品、塗装鋼板等の塗装物の表面保護のために使用される塗膜保護用シートに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来、自動車のボティや部品などの表面を保護する塗膜保護用シートとしては、支持基材にゴム系粘着剤を主体とし、これにシリコーンオイル、アクリル系重合体、脂肪酸グリセリンエステルなどを配合した粘着剤層を形成したものが提案され、ゴム系粘着剤としては、天然ゴム、ポリイソブチレン、ポリスチレンブロック−エチレン・ブチレン共重合体ブロック−ポリスチレンブロックからなるA−B−A型ブロックポリマーなどを用いることが知られている(特開平6−73352号、6−128538号、7−138543号、7−242862号公報等)。
【0003】
しかしながら、このような塗膜保護用シートは、優れた耐候性など各種耐久性が要求されると共に、塗膜に対して良好な接着性を有しつつ、剥離したときに“ノリ残り”がないものであることが要求されるが、上記の塗膜保護用シートの提案にも拘らず、更に耐候性等に優れた自動車用等の塗膜保護用シートが望まれる。
【0004】
本発明は上記要望に応えたもので、耐候性など各種耐久性に優れ、かつ自動車のボティや部品、塗装鋼板等の塗装物表面に良好に接着すると共に、剥離した際に“ノリ残り”のない塗膜保護用シートを提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明は、上記目的を達成するため、基材にエチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体を主成分とする熱硬化性接着剤からなる粘着層を形成した塗膜保護用シートを提供することを目的とする。
【0006】
上記エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体を主成分とする熱硬化性の粘着層は、硬化膜が耐候性に優れ、また耐熱、耐湿熱、耐冷熱サイクル等の各種耐久性に優れ、しかも硬化膜が柔軟で、かつ弾性に富むため、外部からの衝撃や変形に対し抵抗力を有する特性を備えている上、自動車のボティや部品等の車輛塗装物、塗装鋼板など、種々の塗装物表面に良好に接着し、このためこれらの塗装物を効果的に保護する。また、これを剥離した際に、粘着層が部分的に塗装物に残る(いわゆる“ノリ残り”)不都合がなく、塗膜保護用シートで保護された塗装物から該シートがきれいに剥離されるものである。
【0007】
以下、本発明につき更に詳述する。
本発明の塗膜保護用シートは、自動車その他の車輛用、或いは塗装鋼板などの表面を保護するために用いられるもので、図面に示すように、支持基材1の一面に粘着層2を形成してなるものである。
【0008】
ここで、支持基材としては、種々選定され、特に制限されるものではないが、有機樹脂を主成分とする有機フィルムが好適に用いられる。有機樹脂としては、ガラス転移温度が50℃以上のものが好ましく、このような有機樹脂として、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、メチロセン系ポリマー等のポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリシクロヘキシレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂、ナイロン46、変性ナイロン6T、ナイロンMXD6、ポリフタルアミド等のポリアミド系樹脂、ポリフェニレンスルフィド、ポリチオエーテルサルフォン等のケトン系樹脂、ポリサルフォン、ポリエーテルサルフォン等のサルフォン系樹脂の他に、ポリエーテルニトリル、ポリアクリレート、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、トリアセチルセルロース、ポリスチレン、ポリビニルクロライドなどを用いることができる。
【0009】
なお、上記基材には、紫外線吸収剤、帯電防止剤などが配合されていてもよく、また、基材の他面を帯電防止処理したものを使用することもできる。更に、基材の厚さは適宜選定することができる。
【0010】
上記基材上に形成される粘着層は、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体を主成分とする熱硬化性接着剤である。
【0011】
この熱硬化性接着剤の主成分となるエチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体としては、その酢酸ビニル含有率が10〜50重量%であるものが好ましく、更に好ましくは14〜45重量%である。酢酸ビニル含有率が10重量%より低いと、表面のべたつき、粘着性が低下し、支持基材表面との貼り合わせ性が低下してしまう。一方、50重量%を超えると、粘着層の強度や耐久性が著しく低下してしまう傾向となる。
【0012】
また、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステル等が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルのほか、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが例示される。これらはその1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、アクリレート系、メタクリレート系単位の上記共重合体中での含有率は0.01〜20重量%、特に0.05〜5重量%であることが好ましい。この含有率が20重量%を超えると加工性が低下する場合がある。
【0013】
本発明による接着剤には、その硬化のために有機過酸化物が添加される。添加される有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを生ずるものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものがより好ましく、成膜加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選択使用することができる。
【0014】
使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;ジ−t−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス−(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシアセテート;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;t−ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド;オクタノイルパーオキサイド;デカノイルパーオキサイド;ラウロイルパーオキサイド;クミルパーオキシオクトエート;サクシニックアジットパーオキサイド;アセチルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート);m−トルオイルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシイソブチレート;2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0015】
有機過酸化物としては、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができ、その添加量は、上記共重合体100重量部に対し0.1〜10重量部で十分である。
【0016】
また、本発明の接着剤には、接着促進剤としてシランカップリング剤を添加することができる。このシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらシランカップリング剤の添加量は、上記共重合体100重量部に対し通常0.01〜5重量部で十分である。
【0017】
更に、本発明の熱硬化性接着剤の物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性、架橋速度)などの改良や調節のために、本発明においては、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はアリル基含有化合物を添加することができる。
【0018】
この目的に供せられる化合物としては、アクリル酸あるいはメタアクリル酸誘導体、例えばそのエステルやアミドが最も一般的である。この場合、エステル残基としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基の他に、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、アクリル酸又はメタクリル酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、アクリルアミドが代表的である。また、アリル基含有化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物が、上記共重合体100重量部に対し0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部添加して用いられる。0.1重量部未満であると前記機械的強度向上という改良効果を低下させることがあり、50重量部を超えると接着剤の調製時の作業性や製膜性を低下させることがある。
【0019】
なおまた、本発明の接着剤には、加工性や貼り合わせ等の加工性向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差支えない。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差支えない。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0020】
上記炭化水素樹脂の添加量は適宜選択されるが、上記共重合体100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、より好ましくは5〜150重量部である。
【0021】
以上の添加剤の他、本発明の熱硬化性接着剤は紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤等を少量含んでいても良い。また、場合によってはシリカゲル、炭酸カルシウム、シリコン共重合体の微粒子等の添加剤を少量含んでも良い。
【0022】
本発明において、支持基材の一面に上記接着剤からなる粘着層を形成する方法は特に制限されないが、上記共重合体と上述の添加剤とをロールミルやニーダー等で混練した後、これをカレンダー、ロール、Tダイ押出機、インフレーション等の製膜装置により所望の幅、膜厚に製膜し、次いでこのフィルムを例えば熱プレスによる貼り合わせ法、押出機、カレンダーによる直接ラミネート法、フィルムラミネーターによる加熱圧着法等の手法を用いて偏光フィルムの一面に積層することができる。
【0023】
なお、製膜に際しては、ブロッキング防止、支持基材との圧着時の脱気を容易にするため、エンボス加工してもよい。また、粘着層の厚さは適宜選定されるが、膜厚は5〜1000μm、特に10〜800μmが好ましい。
【0024】
また、粘着層の構成成分を適当な溶媒に均一に混合溶解し、この溶液を直接支持基材の一面に塗工し、溶媒を乾燥して支持基材の一面に接着層を形成したり、上記溶液を離型紙等の上に塗工し、溶媒を乾燥後、得られた膜を支持基材の一面に転写積層する方法を採用することもできる。
【0025】
本発明の熱硬化性接着剤の硬化条件としては、用いる有機過酸化物の種類に依存するが、70〜170℃、特に70〜150℃で2〜60分、特に5〜30分とすることが好ましい。この場合、硬化は好ましくは0.01〜50kgf/mm2、特に0.1〜20kgf/mm2の加圧下で行うことが推奨される。
【0026】
【発明の効果】
本発明の塗膜保護用シートは、その硬化粘着層が耐候性に優れ、耐熱、耐湿熱、耐冷熱サイクル等の耐久性に富み、水分や湿気、各種ガスの侵入を防止し得る上、柔軟性、弾性、耐衝撃性に富み、かつ塗装物との接着性に優れ、このため塗装物を良好に保護する。また、剥離時に塗装物表面からきれいに剥離することができ、いわゆる“ノリ残り”がないものである。
【0027】
【実施例】
以下、実施例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0028】
〔実施例〕
支持基材の上に表1に示す熱硬化性接着剤を約50μmの厚みで塗布し、これと塗装鋼板とを積層し、80〜100℃の熱ローターにかけ、分速1mで加熱加圧プレスを行い、サンプルを得た。
【0029】
なお、支持基材としては、25μm厚の高密度ポリエチレン、25μm厚の延伸ポリプロピレン、25μm厚のエチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有率5重量%)、25μm厚のポリエチレンテレフタレートを使用した。
【0030】
得られたサンプルにつき、湿熱試験(50℃,95%RH)、耐熱試験(80℃)、熱サイクル試験(6時間かけて60℃に昇温し、60℃に6時間保持し、6時間かけて−20℃に降温し、−20℃に6時間保持するサイクル)をそれぞれ実施した。
【0031】
その結果、いずれのサンプルにおいても剥離はなく、粘着層の変質も認められなかった。また、上記試験後、粘着層を塗装鋼板から剥離した結果、いずれのサンプルも“ノリ残り”は認められなかった。
【0032】
【表1】
*1:エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業社製:酢酸ビニル含量8%,グリシジルメタクリレート含量3%)
*2:エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業社製:酢酸ビニル含量5%,グリシジルメタクリレート含量12%)
*3:エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業社製:酢酸ビニル含量5%,グリシジルメタクリレート含量12%)
*4:脂環族系炭化水素樹脂(荒川化学工業社製)
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 支持基材
2 粘着層
Claims (7)
- 支持基材に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体100重量部に対して有機過酸化物を0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、及びアリル基含有化合物から選ばれる1種又は2種以上を0.1〜50重量部配合してなる熱硬化性接着剤からなる粘着層を形成したことを特徴とする塗膜から再剥離可能な塗膜保護用シート。
- 前記熱硬化性接着剤が、更にシランカップリング剤を前記共重合体100重量部に対して0.01〜5重量部配合されてなる請求項1記載の塗膜保護用シート。
- 前記熱硬化性接着剤が、更に炭化水素樹脂を前記共重合体100重量部に対して1〜200重量部配合されてなる請求項1又は2記載の塗膜保護用シート。
- 前記共重合体における酢酸ビニル単位の含有率が4〜50重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系単位の含有率が0.01〜20重量%である請求項1,2又は3記載の塗膜保護用シート。
- 前記熱硬化性接着剤が、更にシリカゲル微粒子、炭酸カルシウム微粒子、又はシリコン共重合体微粒子を配合されてなる請求項1乃至4のいずれか1項に記載の塗膜保護用シート。
- 前記支持基材が、ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ケトン系樹脂、又はサルフォン系樹脂を主成分とする有機フィルムである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の塗膜保護用シート。
- 前記塗膜が、自動車ボディ表面に形成された塗膜である請求項1乃至6のいずれか1項に記載の塗膜保護用シート。
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