JP3622804B2 - 液晶表示装置用接着剤組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オプトエレクトロニクス分野において、液晶分子の電場による応答性を利用した表示を目的とする液晶表示装置の液晶セルと偏光板との貼り合わせに用いられる接着剤組成物に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、一面に透明電極及び配向層を形成した2枚の基板の前記配向層を対向配置させ、その間に液晶層を介在させると共に、一方の基板の他面に偏光板を接着した液晶表示装置(LCD)が広く使用されている。この場合、前記基板と偏光板との貼り合わせにアクリル系感圧性接着剤を用いる技術が知られている(特開昭57−195208号公報、特開平3−12471号公報)。
【0003】
ここで、液晶表示装置用偏光板は、偏向フィルムの両面を保護フィルムで被覆保護してなるものであるが、その保護フィルムは、セルロース系フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルサルフォン等が用いられており、一方液晶セルの表面基板もガラス、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂等、多種多様になってきており、また、両者の貼り合わせ後には各種処理や実使用上の耐久性が要求される。しかし、現行のアクリル系感圧性接着剤は、接着力が貼り合わせの圧力に依存し、貼り合わせ後の耐熱、耐温湿熱促進試験による接着力低下は否めず、接着界面の剥れ、浮き、発泡が発生する。即ち、偏光板と液晶セルの表面基板を接着一体化させた積層体の基板表面に透明電極の形成及び配向処理等、熱を伴う処理を施す場合、従来のアクリル系感圧性接着剤では耐熱性が低いために、接着界面の剥れ等が生じるという問題がある。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、初期接着力に優れ、また耐熱性に優れているので熱を伴う処理に十分耐え、耐久性に優れた、液晶セルの基板と偏光板との接着に用いられる液晶表示装置用接着剤組成物を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、上記液晶セルの基板と偏光板との接着に、エチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体;エチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体;エチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを主成分とした熱硬化性接着剤を用いた場合、この接着剤は透明性、耐候性に優れるポリマーを主成分とした熱硬化性接着剤であるため、初期接着力が高く、耐久性に優れる基板と偏光板の接着が可能となること、また、この接着剤は耐熱性に優れているので、熱を伴う処理に耐えることができて、液晶セルの表面基板をも一体化した偏光板を提供することができることを知見し、本発明をなすに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の液晶表示装置用接着剤組成物を提供する。
請求項1:
基板の一面に透明電極及び配向層を介して液晶層を設けた液晶セルと前記基板の他面に接着された偏光板とを具備する液晶表示装置を製造する際に前記基板と偏光板との接着に用いる熱硬化性の接着剤組成物であって、この接着剤組成物がエチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体;エチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体;エチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマー100重量部に対し、有機過酸化物を0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物,メタクリロキシ基含有化合物,及びアリル基含有化合物よりなる群から選択された少なくとも1つを0.1〜50重量部添加してなることを特徴とする液晶表示装置用接着剤組成物。
請求項2:
前記ポリマー100重量部に対し、シランカップリング剤を0.01〜5重量部添加してなることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
請求項3:
前記ポリマー100重量部に対し、炭化水素樹脂を1〜200重量部添加してなることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
請求項4:
前記ポリマーがエチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体であり、その酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの含有率が0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
請求項5:
前記ポリマーがエチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体であり、その酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率が0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
請求項6:
前記ポリマーがエチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体であり、そのアクリレート系化合物の含有率が10〜50重量%、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率が0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
請求項7:
前記基板がガラス基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル樹脂基板、ポリアリレート樹脂基板、又はポリエーテルサルフォン樹脂基板であり、また、前記偏光板が偏向フィルムの両面を保護フィルムで被覆してなるものであって、当該保護フィルムがセルロース系フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、又はポリエーテルサルフォンフィルムであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
【0007】
以下、本発明につき更に詳述すると、本発明による接着剤組成物は主成分としてエチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体;エチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体;エチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマーを用いた熱硬化性接着剤であることを特徴とする。
【0009】
上記エチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとからなる共重合体としては、好ましくは酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、更に好ましくは14〜45重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有率が10重量%より低いと、加熱硬化させた接着剤の透明度や光学的均一性が充分とならず、一方50重量%を超えると透明度や光学的均一性は良好となるが、接着層の強度や耐久性が著しく低下してしまう傾向となる。更に、上記アクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの含有率は0.01〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜5重量%のものが使用される。モノマーの含有率が0.01重量%より低いと接着力の改善効果が低下し、一方10重量%を超えると加工性が低下してしまう場合がある。
【0010】
使用可能なアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとしては、アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステル系モノマーの中から選ばれるモノマーであり、アクリル酸又はメタクリル酸と炭素数1〜20、特に1〜18の非置換又はエポキシ基等の置換基を有する置換脂肪族アルコールとのエステルが好ましく、例えばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸グリシジル等が挙げられる。
【0011】
更に、上記エチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸とからなる共重合体としては、好ましくは酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、更に好ましくは14〜45重量%のものが使用される。酢酸ビニル含有率が10重量%より低いと、加熱硬化させた接着剤の透明度や光学的均一性が充分とならず、一方50重量%を超えると透明度や光学的均一性は良好となるが、接着層の強度や耐久性が著しく低下してしまう傾向となる。また、上記マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率は0.01〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜5重量%のものが使用される。この含有率が0.01重量%より低いと接着力の改善効果が低下し、一方10重量%を超えると加工性が低下してしまう場合がある。
【0012】
上記エチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸とからなる共重合体としては、好ましくはアクリレート系化合物の含有率が10〜50重量%、更に好ましくは14〜45重量%のものが使用される。アクリレート系化合物の含有率が10重量%より低いと、加熱硬化させた接着剤の透明度や光学的均一性が充分とならず、一方50重量%を超えると透明度や光学的均一性は良好となるが、接着層の強度や耐久性が著しく低下してしまう傾向となる。更に、上記マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率は0.01〜10重量%であることが好ましく、更に好ましくは0.05〜5重量%のものが使用される。この含有率が0.01重量%より低いと接着力の改善効果が低下し、一方10重量%を超えると加工性が低下してしまう場合がある。
【0013】
なお、アクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとしては、上述したものと同様のものが挙げられる。
【0016】
本発明の接着剤組成物には、その硬化のために、有機過酸化物が添加される。添加される有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを生ずるものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものがより好ましく、成膜加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選択することができる。
【0017】
使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;ジ−t−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシアセテート;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;t−ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド;オクタノイルパーオキサイド;デカノイルパーオキサイド;ラウロイルパーオキサイド;クミルパーオキシオクトエート;サクシニックアシッドパーオキサイド;アセチルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート);m−トルオイルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシイソブチレート;2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0018】
有機過酸化物としては、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができ、その添加量は通常ポリマー100重量部に対し0.1〜10重量部で充分である。
【0019】
また、本発明の接着剤組成物には、接着促進剤としてシランカップリング剤を添加することができる。このシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらシランカップリング剤の添加量は、ポリマー100重量部に対し通常0.01〜5重量部で充分である。
【0020】
更に、本発明の接着剤組成物の物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性、架橋速度)などの改良や調節のために、本発明においては、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はアリル基含有化合物を添加することができる。
【0021】
この目的に供せられる化合物としては、アクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体、例えばそのエステルやアミドが最も一般的である。この場合、エステル残基としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基の他に、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、アクリル酸又はメタクリル酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、アクリルアミドが代表的である。また、アリル基含有化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物が、ポリマー100重量部に対し0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部添加して用いられる。50重量部を超えると接着剤の調製時の作業性や製膜性を低下させることがあり、0.1重量部未満であると前記機械的強度向上改良効果が低下する場合がある。
【0022】
なおまた、本発明の接着剤組成物には、加工性や貼り合わせ等の加工性向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差支えない。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差支えない。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0023】
上記炭化水素樹脂の添加量は適宜選択されるが、ポリマー100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、より好ましくは5〜150重量部である。
【0024】
以上の添加剤の他、本発明の接着剤組成物は、紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤等を少量含んでいても良い。また、場合によってはシリカゲル、炭酸カルシウム、シリコン共重合体の微粒子等の添加剤を少量含んでも良い。
【0025】
本発明の接着剤組成物は、上記ポリマーと上述の添加剤とを均一に混合し、押出機、ロール等で混練した後、カレンダー、ロール、Tダイ押出、インフレーション等の製膜法により所定の形状に製膜して用いることができる。なお、製膜に際してはブロッキング防止、偏光板保護フィルムあるいは液晶セルとの圧着時の脱気を容易にするため、エンボス加工を施しても良い。また、上記ポリマーと上述の添加剤とを保護フィルムや液晶セル表面基板に何ら影響を及ぼさない溶媒に均一に溶解させ、フィルムの表面に均一に塗布し、仮圧着した後、加熱して接着硬化させることができる。
【0026】
本発明の接着剤組成物は、例えば図1に示したような液晶表示装置、即ち一面に透明電極3,3’及び配向層4,4’を有する2枚の基板2,2’を配向層4,4’が対向するように配置し、それらの間に液晶層5を介在させた液晶セル1と、その一方の基板2の他面に積層された偏光板6と、他方の基板2’の他面に積層された検光板7とを具備する液晶表示装置の製造において、基板2,2’と偏光板6とを接着するために使用するものである。この場合、偏光板6は、通常図2に示したように偏光フィルム6’の両面をそれぞれ保護フィルム6’’,6’’で被覆保護してなるものであり、従って上記接着は、保護フィルム6’’と基板2,2’との接着である。なお、このような接着後、上記基板一面に透明電極を形成し、更に配向処理を行うなどの常法に従って液晶表示装置を製造することができる。
【0027】
なお、上記基板の種類は適宜選定でき、例えば、ガラス、ポリカーボネート、ポリエステル樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂などを挙げることができ、また、この基板と接着される偏光板の保護フィルムとしては、セルロース系フィルム、ポリエステル樹脂、ポリアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、ポリエーテルサルフォン等を例示することができる。
【0028】
本発明の熱硬化性接着剤の硬化条件としては、用いる有機過酸化物の種類に依存するが、70〜170℃、特に70〜150℃で2〜60分、特に5〜30分とすることが好ましい。この場合、硬化は、好ましくは0.01〜50kgf/cm2、特に0.1〜20kgf/cm2の加圧下で行うことが推奨される。
【0029】
【発明の効果】
本発明による接着剤組成物は、上記ポリマーを主成分とする熱硬化性接着剤であるため、透明性、耐候性に優れる。また、有機過酸化物、及び更に必要により添加されたアクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、アリル基含有化合物による架橋構造を有するため、耐熱性、耐湿熱性、透明性が向上する。また、シランカップリング剤の添加により熱硬化に伴う接着性が向上し、初期接着力、熱的安定性に優れる接着力が得られる。これらの作用により、従来のアクリル系感圧性接着剤と比較して耐熱性をはじめとする信頼性が飛躍的に向上し、これに伴い偏光板と液晶セル表面基板を接着一体化させた積層体の基板表面に透明電極の形成及び配向処理等、熱を伴う処理を施す場合、従来のアクリル系接着剤では耐熱性が低いために接着界面の剥れ等が発生したが、本発明の接着剤組成物を用いることにより、熱を伴う処理に耐え得る液晶セル表面基板をも一体化した偏光板を提供することが可能となる。
【0030】
【実施例】
以下、実施例と比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0034】
[比較例]
アクリル酸エチル95重量部とアクリル酸5重量部の配合物をトルエン中で重合させ、これにポリイソシアネート1重量部を添加してアクリル系感圧性接着剤を得た。これをトリアセテートフィルム上にロールコーターを用いて塗布、乾燥し、ポリカーボネートフィルムに脱気しながら0.5kgf/cm2の圧力で圧着し、積層体Dを得た。
【0037】
[実施例1]
エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業社製、ボンドファースト2A、酢酸ビニル含量8%、グリシジルメタクリレート含量3%)100重量部に対し、ベンゾイルパーオキサイド(日本油脂社製、ナイパーB)2.0重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製、KBM503)0.5重量部、トリアリルイソシアヌレート(日本化成社製、TAIC)2.0重量部を混合し、樹脂濃度が20重量%になるようにトルエンに均一に溶解した溶液を調製した。次いで、トリアセテートフィルム上にロールコーターを用いてこの溶液を均一に塗布、乾燥したフィルムをポリカーボネートフィルムに脱気しながら0.5kgf/cm2の圧力で圧着し、これを100℃オーブン中で30分間加熱して積層体Aを得た。
【0038】
[実施例2]
実施例1において、ポリカーボネートフィルムの代わりにガラスを用いた積層体Bを同様の手法によって得た。
【0039】
[実施例3]
実施例1において、トリアセテートフィルムの代わりにポリエステルフィルムを、ポリカーボネートフィルムの代わりにガラスを用いた積層体Cを同様の手法によって得た。
【0040】
次に、各実施例1〜3及び比較例の積層体について180゜剥離試験を温度条件を変えて行った。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】
[実施例4]
エチレン−酢酸ビニル−無水マレイン酸共重合体(三菱化学工業社製、MODIC E−100H、酢酸ビニル含量約20%、無水マレイン酸含量約0.5%)100重量部に対し、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製、パーヘキサ3M)2.0重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5重量部、トリアリルイソシアヌレート1.0重量部を混合し、80℃のロールで混練した後、カレンダーで膜厚100μmに製膜した。この膜をトリアセテートフィルム(1)及びポリカーボネートフィルム(2)間に挟み、真空袋で脱気しながら130℃オーブン中で10分間加熱して積層体Aを得た。
【0043】
[実施例5]
実施例4において、ポリカーボネートフィルムの代わりにガラスを用いた積層体Bを同様の手法によって得た。
【0044】
[実施例6]
実施例4において、トリアセテートフィルムの代わりにポリエステルフィルムを、ポリカーボネートフィルムの代わりにガラスを用いた積層体Cを同様の手法によって得た。
【0045】
次に、各実施例4〜6及び比較例の積層体について180゜剥離試験を温度条件を変えて行った。結果を表2に示す。
【0046】
【表2】
【0047】
[実施例7]
エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体(住友化学工業社製、LX4110、エチレン含量91%、エチルアクリレート含量8%、無水マレイン酸含量1%)100重量部に対し、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン(日本油脂社製、パーヘキサ3M)2.0重量部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5重量部、トリアリルイソシアヌレート1.0重量部を混合し、80℃のロールで混練した後、カレンダーで膜厚100μmに製膜した。この膜をトリアセテートフィルム(1)及びポリカーボネートフィルム(2)間に挟み、真空袋で脱気しながら130℃オーブン中で10分間加熱して積層体Aを得た。
【0048】
[実施例8]
実施例7において、ポリカーボネートフィルムの代わりにガラスを用いた積層体Bを同様の手法によって得た。
【0049】
[実施例9]
実施例7において、トリアセテートフィルムの代わりにポリエステルフィルムを、ポリカーボネートフィルムの代わりにガラスを用いた積層体Cを同様の手法によって得た。
【0050】
次に、各実施例7〜9及び比較例の積層体について180゜剥離試験を温度条件を変えて行った。結果を表3に示す。
【0051】
【表3】
【0057】
上記の結果から明らかなように、アクリル系感圧性接着剤を用いた積層体Dは、温度が高くなると著しくその接着力が低下する。従って、各種積層体の表面に液晶を配向させるための処理を行う際、その熱に耐えることができず、接着界面の浮き、剥離を起こす可能性がある。それに対し、本発明の接着剤組成物を使用した各種積層体は、70℃という高温下においても、その一体化構造を崩すことなく処理することができる。
【0058】
また、耐湿熱試験(50℃×95%RH×500hr)後における各種積層体の外観を目視で検査したところ、アクリル系感圧性接着剤を用いた積層体Dには接着界面での発泡による浮きが見られた。
【図面の簡単な説明】
【図1】液晶表示装置の一例を示す断面図である。
【図2】偏光板の一例を示す断面図である。
【符号の説明】
1 液晶セル
2,2’ 基板
3,3’ 透明電極
4,4’ 配向層
5 液晶層
6 偏光板
6’ 偏光フィルム
6’’ 保護フィルム
7 検光板
Claims (7)
- 基板の一面に透明電極及び配向層を介して液晶層を設けた液晶セルと前記基板の他面に接着された偏光板とを具備する液晶表示装置を製造する際に前記基板と偏光板との接着に用いる熱硬化性の接着剤組成物であって、この接着剤組成物がエチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体;エチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体;エチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体からなる群より選ばれる少なくとも1種のポリマー100重量部に対し、有機過酸化物を0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物,メタクリロキシ基含有化合物,及びアリル基含有化合物よりなる群から選択された少なくとも1つを0.1〜50重量部添加してなることを特徴とする液晶表示装置用接着剤組成物。
- 前記ポリマー100重量部に対し、シランカップリング剤を0.01〜5重量部添加してなることを特徴とする請求項1記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
- 前記ポリマー100重量部に対し、炭化水素樹脂を1〜200重量部添加してなることを特徴とする請求項1又は2記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
- 前記ポリマーがエチレンと酢酸ビニルとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとの共重合体であり、その酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの含有率が0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
- 前記ポリマーがエチレンと酢酸ビニルとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体であり、その酢酸ビニル含有率が10〜50重量%、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率が0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
- 前記ポリマーがエチレンとアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーとマレイン酸及び/又は無水マレイン酸との共重合体であり、そのアクリレート系化合物の含有率が10〜50重量%、マレイン酸及び/又は無水マレイン酸の含有率が0.01〜10重量%であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
- 前記基板がガラス基板、ポリカーボネート基板、ポリエステル樹脂基板、ポリアリレート樹脂基板、又はポリエーテルサルフォン樹脂基板であり、また、前記偏光板が偏向フィルムの両面を保護フィルムで被覆してなるものであって、当該保護フィルムがセルロース系フィルム、ポリエステル樹脂フィルム、ポリアクリル樹脂フィルム、ポリカーボネートフィルム、又はポリエーテルサルフォンフィルムであることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項記載の液晶表示装置用接着剤組成物。
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