JP3695479B2 - 液晶表示装置用偏光板 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、オプトエレクトロニクス分野において、液晶分子の電場による応答性を利用した表示を目的とする液晶表示装置に使用される液晶表示装置用偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
従来より、一面に透明電極及び配向層を形成した2枚の基板の前記配向層を対向配置させ、その間に液晶層を介在させると共に、一方の基板の他面に偏光板を接着した液晶表示装置(LCD)が広く使用されている。この場合、偏光板は、図3に示したように、偏光フィルム1の両面に保護フィルム2,2を接着剤3,3により接着した構成を有するものが多く用いられているが、従来、偏光フィルムとその保護フィルムとを貼り合わせる接着剤に感圧型接着剤を用いる技術(特開昭57−195208号公報、特開平3−12471号公報)とビニルモノマー又はオリゴマーを主成分とする液状物を用いる技術(特開昭58−171007号公報、日東電工(株))が知られている。
【0003】
しかし、感圧型接着剤(粘着剤)を用いた場合、偏光板の耐熱、耐湿熱等の耐久性が著しく低く、かつ接着力も低いという問題がある。
【0004】
一方、ビニルモノマー又はオリゴマーを主成分とする液状物を用いた場合、
▲1▼偏光板の構成要素である偏光フィルム層やその保護フィルムをビニルモノマーやオリゴマーが膨潤させ、光学的に歪みを生じさせる、
▲2▼ビニルモノマーがアクリル系であるため硬化後の膜(接着剤層)が硬く、もろく、割れやすい。携帯端末に使用される液晶表示装置には耐衝撃性(落下時の)が要求されており、この用途には不向きであり、用途が極めて限定される、
▲3▼偏光フィルムや保護フィルムとの密着性が低い、
▲4▼接着剤が液状であるため、偏光フィルムの偏光度を向上させる機能を全く有していない
という問題がある。
【0005】
また、従来の偏光板は、いずれも偏光フィルムの両面にそれぞれ保護フィルムを接着させるものであるため、積層数が多く、その製造が繁雑で生産性が低く、コストも要するものであった。
【0006】
本発明は上記従来の欠点を解消すべくなされたもので、接着及び各種耐久性に富み、高信頼性を有する上、構造がシンプルで、コスト的に安価にかつ生産性よく制作し得る液晶表示装置用偏光板を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段及び発明の実施の形態】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を行った結果、偏光フィルムの液晶セル表面基板と接着する側の一面に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体を主成分とする熱硬化性接着剤層を形成した場合、この接着剤は、ガラス、ポリカーボネート板、アクリル樹脂板、ポリエステルフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレンフィルムなど、上記液晶セル表面基板として汎用される基板材料との接着性に優れ、このため上記基板に直接強固に接着する上、耐熱、耐湿熱、耐冷熱サイクル等の各種耐久性に優れ、また偏光フィルムの光学的機能に何ら影響も与えることがなく、むしろ偏光フィルムの偏光度を向上させる機能を有し、しかも硬化膜が柔軟で、かつ弾性に富むため、外部からの衝撃や変形に対し抵抗力を有し、従って、従来のように偏光フィルムを保護フィルムを介して液晶セル表面基板に貼り合わせることなく、保護フィルムを省略して偏光フィルムを直接上記接着剤層により上記基板に貼り合わせることができると共に、これによって偏光板全体としてのみならず、液晶表示素子としての強度や信頼性を顕著に向上させることができることを知見した。
【0008】
また、上記接着剤層は、上記のように優れた性能を有し、その硬化層を従来汎用されているアセチルセルロース系の偏光フィルム用保護層(保護フィルム)と比較した場合、これと同等以上の保護機能を有し、特にアセチルセルロース系の保護フィルムは親水性であるため、防湿性が殆んどないのに対し、上記接着剤層は疎水性であるので、偏光フィルムの耐久性を大幅に向上でき、従って上記のように偏光フィルムの一面に積層されて液晶セル表面基板と接着される保護フィルムを省略できるだけでなく、偏光フィルムの他面側の保護フィルムを省略し、偏光フィルムの他面にも上記熱硬化性接着剤からなる保護層を形成することが有効であることを知見したものである。
【0009】
そして、このように保護フィルムの配設を省略できるため、偏光板の構成がシンプルなものとなり、偏光板をより効率的に、しかもコスト的に安価に制作し得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0010】
従って、本発明は、以下の液晶表示装置用偏光板及びその製造方法を提供する。
請求項1:
液晶表示装置の液晶セル表面基板に接着される偏光板において、偏光フィルムの一面に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体100重量部に対して有機過酸化物が0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、及びアリル基含有化合物から選ばれる1種又は2種以上が0.1〜50重量部配合された熱硬化性接着剤であって、前記共重合体における酢酸ビニル単位の含有率が4〜14重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系単位の含有率が0.01〜20重量%である熱硬化性接着剤からなる上記基板との接着層を形成してなることを特徴とする液晶表示装置用偏光板。
請求項2:
上記偏光フィルムの他面に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体100重量部に対して有機過酸化物が0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、及びアリル基含有化合物から選ばれる1種又は2種以上が0.1〜50重量部配合された熱硬化性接着剤であって、前記共重合体における酢酸ビニル単位の含有率が4〜14重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系単位の含有率が0.01〜20重量%である熱硬化性接着剤からなる保護層を形成した請求項1記載の液晶表示装置用偏光板。
請求項3:
上記熱硬化性接着剤が、上記共重合体100重量部に対してシランカップリング剤が0.01〜5重量部配合されたものである請求項1又は2記載の液晶表示装置用偏光板。
請求項4:
上記熱硬化性接着剤が、上記共重合体100重量部に対して炭化水素樹脂が1〜200重量部配合されたものである請求項1,2又は3記載の液晶表示装置用偏光板。
請求項5:
上記偏光フィルムが、ヒドロキシ基を含有する親水性ポリマーにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着し、これを延伸配向させたものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置用偏光板。
請求項6:
上記液晶セル表面基板が、ガラス板、ポリカーボネート板、アクリル樹脂板、ポリエステルフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、又はポリアリレンフィルムのいずれかを基板材料として形成されたものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液晶表示装置用偏光板。
請求項7:
請求項1乃至6のいずれかに記載の液晶表示装置用偏光板の製造方法であって、液晶表示装置の液晶セル表面基板に接着される偏光板において、偏光フィルムの一面に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体100重量部に対して有機過酸化物が0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、及びアリル基含有化合物から選ばれる1種又は2種以上が0.1〜50重量部配合された熱硬化性接着剤であって、前記共重合体における酢酸ビニル単位の含有率が4〜14重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系単位の含有率が0.01〜20重量%である熱硬化性接着剤よりなる層を形成した後、上記基板と重ね合わせ、脱気しながら70〜170℃で2〜60分間、0.01〜50kgf/m 2 の加圧下で前記熱硬化性接着剤よりなる層を硬化させることを特徴とする液晶表示装置用偏光板の製造方法。
【0011】
以下、本発明につき更に詳述すると、本発明の偏光板は図1,2に示すように、偏光フィルム1の一面(液晶セル表面基板と接着される側の面)に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体を主成分とする熱硬化性接着剤からなり、液晶セル表面基板と直接接着される接着層4を形成してなるものである。この場合、図2に示すように、偏光フィルム1の他面にも同様の熱硬化性接着剤からなる保護層5を形成し、図3に示すような保護フィルム2の積層を省略することが好ましいが、場合によっては、図2に示したように、偏光フィルム1の他面に接着剤3を介して保護フィルム2を貼り合わせた構成とすることもできる。なお、図2の態様の場合、その保護フィルム2及び接着剤3は公知の構成としてもよいが、接着剤3は上記と同様の熱硬化性接着剤にて形成することが好ましい。
【0012】
ここで、上記熱硬化性接着剤は、上記のように、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体を主成分とするものであるが、この共重合体の酢酸ビニル単位の含有率は4〜50重量%であることが好ましく、更に好ましくは14〜45重量%である。酢酸ビニル単位の含有率が4重量%より低いと、加熱硬化させた接着層の透明度や光学的均一性が充分とならず、一方50重量%を超えると透明度や光学的均一性は良好となるが、接着層の強度や耐久性が著しく低下してしまう傾向となる。
【0013】
また、アクリレート系モノマー、メタクリレート系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、これらのエステル等が挙げられ、具体的には、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸低級アルキルエステルのほか、(メタ)アクリル酸グリシジルなどが例示される。これらはその1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよいが、アクリレート系、メタクリレート系単位の上記共重合体中での含有率は0.01〜20重量%、特に0.05〜5重量%であることが好ましい。この含有率が20重量%を超えると加工性が低下する場合がある。
【0014】
本発明による接着剤には、その硬化のために有機過酸化物が添加される。添加される有機過酸化物としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを生ずるものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものがより好ましく、成膜加工温度、架橋温度、貯蔵安定性等を考慮して選択使用することができる。
【0015】
使用可能な過酸化物としては、例えば2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3;ジ−t−ブチルパーオキサイド;t−ブチルクミルパーオキサイド;2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン;ジクミルパーオキサイド;α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン;n−ブチル−4,4−ビス−(t−ブチルパーオキシ)バレレート;2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;t−ブチルパーオキシベンゾエート;ベンゾイルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシアセテート;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン;メチルエチルケトンパーオキサイド;t−ブチルハイドロパーオキサイド;p−メンタンハイドロパーオキサイド;ヒドロキシヘプチルパーオキサイド;クロルヘキサノンパーオキサイド;オクタノイルパーオキサイド;デカノイルパーオキサイド;ラウロイルパーオキサイド;クミルパーオキシオクトエート;サクシニックアジットパーオキサイド;アセチルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシ(2−エチルヘキサノエート);m−トルオイルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシイソブチレート;2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0016】
有機過酸化物としては、これらのうちの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができ、その添加量は、上記共重合体100重量部に対し0.1〜10重量部で十分である。
【0017】
また、本発明の接着剤には、接着促進剤としてシランカップリング剤を添加することができる。このシランカップリング剤としてはビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどがあり、これらの1種を単独で又は2種以上を混合して用いることができる。これらシランカップリング剤の添加量は、上記共重合体100重量部に対し通常0.01〜5重量部で充分である。
【0018】
更に、本発明の熱硬化性接着剤の物性(機械的強度、光学的特性、接着性、耐熱性、耐湿熱性、耐候性、架橋速度)などの改良や調節のために、本発明においては、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はアリル基含有化合物を添加することができる。
【0019】
この目的に供せられる化合物としては、アクリル酸あるいはメタアクリル酸誘導体、例えばそのエステルやアミドが最も一般的である。この場合、エステル残基としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリルのようなアルキル基の他に、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、アクリル酸又はメタクリル酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、アクリルアミドが代表的である。また、アリル基含有化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が挙げられ、これらの1種又は2種以上の混合物が、上記共重合体100重量部に対し0.1〜50重量部、好ましくは0.5〜30重量部添加して用いられる。
0.1重量部未満であると前記機械的強度向上という改良効果を低下させることがあり、50重量部を超えると接着剤の調製時の作業性や製膜性を低下させることがある。
【0020】
なおまた、本発明の接着剤には、加工性や貼り合わせ等の加工性向上の目的で炭化水素樹脂を添加することができる。この場合、添加される炭化水素樹脂は天然樹脂系、合成樹脂系のいずれでも差支えない。天然樹脂系ではロジン、ロジン誘導体、テルペン系樹脂が好適に用いられる。ロジンではガム系樹脂、トール油系樹脂、ウッド系樹脂を用いることができる。ロジン誘導体としてはロジンをそれぞれ水素化、不均一化、重合、エステル化、金属塩化したものを用いることができる。テルペン系樹脂ではα−ピネン、β−ピネンなどのテルペン系樹脂のほか、テルペンフェノール樹脂を用いることができる。また、その他の天然樹脂としてダンマル、コーバル、シェラックを用いても差支えない。一方、合成樹脂系では石油系樹脂、フェノール系樹脂、キシレン系樹脂が好適に用いられる。石油系樹脂では脂肪族系石油樹脂、芳香族系石油樹脂、脂環族系石油樹脂、共重合系石油樹脂、水素化石油樹脂、純モノマー系石油樹脂、クマロンインデン樹脂を用いることができる。フェノール系樹脂ではアルキルフェノール樹脂、変性フェノール樹脂を用いることができる。キシレン系樹脂ではキシレン樹脂、変性キシレン樹脂を用いることができる。
【0021】
上記炭化水素樹脂の添加量は適宜選択されるが、上記共重合体100重量部に対して1〜200重量部が好ましく、より好ましくは5〜150重量部である。
【0022】
以上の添加剤の他、本発明の熱硬化性接着剤は紫外線吸収剤、老化防止剤、染料、加工助剤等を少量含んでいても良い。また、場合によってはシリカゲル、炭酸カルシウム、シリコン共重合体の微粒子等の添加剤を少量含んでも良い。
【0023】
本発明において、偏光フィルムの一面に上記接着剤からなる接着層を形成する方法は特に制限されないが、上記共重合体と上述の添加剤とをロールミルやニーダー等で混練した後、これをカレンダー、ロール、Tダイ押出機、インフレーション等の製膜装置により所望の幅、膜厚に製膜し、次いでこのフィルムを例えば熱プレスによる貼り合わせ法、押出機、カレンダーによる直接ラミネート法、フィルムラミネーターによる加熱圧着法等の手法を用いて偏光フィルムの一面に積層することができる。
【0024】
なお、製膜に際しては、ブロッキング防止、偏光フィルムや液晶セル表面基板との圧着時の脱気を容易にするため、エンボス加工してもよい。また、製膜フィルムの幅は偏光フィルムの幅に応じて選定されるが、膜厚は5〜1000μm、特に10〜800μmが好ましい。膜厚が5μm未満であると透湿性に劣る場合があり、逆に1000μmを超えると光透過率が低下する場合がある。
【0025】
また、接着層の構成成分を適当な溶媒に均一に混合溶解し、この溶液を直接偏光フィルムの一面に塗工し、溶媒を乾燥して偏光フィルムの一面に接着層を形成したり、上記溶液を離型紙等の上に塗工し、溶媒を乾燥後、得られた膜を偏光フィルムの一面に転写積層する方法を採用することもできる。
【0026】
なお、偏光フィルムの他面に上記接着剤からなる保護層を形成する場合も同様の方法を採用することができる。
【0027】
本発明の偏光板に用いられる偏光フィルムには、何ら制限はなく、ポリビニルアルコール、ケン化EVA等のヒドロキシ基を含有する親水性ポリマーにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着、配向、延伸させた一般の偏光フィルムが用いられる。また、その保護フィルムにも何ら制限はなく、市販のセルロース系やポリエステル系、ポリカーボネート系フィルム等が好適に用いられる。
【0028】
本発明の熱硬化性接着剤の硬化条件としては、用いる有機過酸化物の種類に依存するが、70〜170℃、特に70〜150℃で2〜60分、特に5〜30分とすることが好ましい。この場合、硬化は好ましくは0.01〜50kgf/mm2、特に0.1〜20kgf/mm2の加圧下で行うことが推奨される。
【0029】
【発明の効果】
本発明による液晶表示装置用偏光板は、硬化性接着層が柔軟性、弾性、耐衝撃性に富み、かつ偏光フィルムとの接着性に優れるばかりでなく、液晶セルの基板としてよく用いられるガラス、ポリカーボネート板、アクリル樹脂板、ポリエステルフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、ポリアリレンフィルム等への接着性にも優れるので、偏光板全体としてのみならず、液晶表示素子としての強度や信頼性が極めて向上したものである。
【0030】
また、加工が低温で行えるので、耐熱限界の低い偏光フィルム層に何ら悪影響を及ぼすことなく、偏光フィルムや液晶セル表面基板と貼り合わせ加工を行うことができる。しかも、アクリル系モノマーを多量に含有する従来の液状接着剤のように、偏光フィルムの表面を膨潤させたり、これをあらしたりすることもないため、偏光板としての機能を何ら低減させることなく、貼り合わせを行うことができる。更に、耐熱、耐湿熱、耐冷熱サイクルといった耐久性の面においては、熱によって架橋した接着層が上記耐久性に富み、特に水分や湿気、各種ガスの侵入を防止し得るので、耐久性の低い偏光フィルムや液晶層の劣化が十分に防げる。このことは従来のアクリル系モノマー又はオリゴマーを主成分とする液状接着剤には認められず、特に好ましい点である。
【0031】
しかも、従来の偏光板のように保護層/接着層/偏光フィルム/接着層/保護層の5層構造ではなく、本発明の偏光板における硬化性接着層が接着及び保護の機能を兼ねるため、構成部材が大幅に削減でき、貼り合わせの手間も大幅に軽減できるので、偏光板を安価に提供できるものである。また、偏光フィルムの他面に硬化性接着層と同様の接着剤からなる保護層を形成すれば、上記効果がより有効に発揮される。
【0032】
【実施例】
以下、実施例と比較例とを示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
【0033】
[実施例1]
表1に示した配合No.Aの混合物を70℃に設定したロールミルにて均一に混練した後、加熱加圧プレス機を用い、0.5kg/cm2の圧力で70℃、10分間の条件において約50μmの厚みの接着剤フィルムを2枚作製した。
【0034】
一方、予め作製したポリビニルアルコールにヨウ素を吸着、延伸配向させた偏光フィルムを上記2枚の接着剤フィルムで挟み、積層し、この積層体を1.0kg/cm2の圧力で100℃、5分間加熱加圧プレスを行い、図1に示す偏光板Aを得た。
【0035】
次に、この偏光板について、90℃で1000時間の耐熱性試験及び80℃、95%RHで1000時間の耐湿熱試験を実施し、黄変、剥離、ずれ、発泡等の外観異常の有無を調べ、異常が認められた場合を不合格、そうでない場合を合格と判定した。その結果を表2に示す。
【0036】
また、上記積層体の片面にポリエステルフィルム、ポリカーボネート板、ガラス板をそれぞれ被着体として重ね合わせ、上記と同様に加熱加圧プレスを行い、硬化を完了させた後、被着体と上記接着剤フィルム(接着層)との間の接着力を測定した。その結果を表3に示す。
【0037】
[実施例2]
実施例1において、配合No.Aの代わりに配合No.Bの混合物を用いた以外は実施例1と同様にして偏光板Bを製造し、実施例1と同様の評価を行った。
【0038】
[実施例3]
表1に示した配合No.Cの混合物20gをトルエン80gに70℃で溶解させ、得られた均一溶液を実施例1と同様の偏光フィルムの一面に塗布し、バーコート法により均一に展延し、これを50℃オーブン中に1時間入れて溶媒を乾燥し、ドライ厚みで30μmの乾燥接着層を形成した。また、偏光フィルムの他面についても、同様の方法で同厚みの乾燥保護層を形成して得た積層体につき、120℃のオーブン中で30分間加熱硬化を行い、偏光板Cを得た。
【0039】
この偏光板Cについて、上記と同様にして耐熱性試験及び耐湿熱試験を行った。
【0040】
また、上記積層体の一面にポリエステルフィルム、ポリカーボネート板及びガラス板をそれぞれ重ね合わせ、これをゴム袋に入れ、内部の空気を真空ポンプにて脱気しながら120℃のオーブン中で30分間加熱硬化を行った。ゴム袋から取り出した後、上記と同様にして接着力の測定を行った。
【0041】
[比較例]
2枚のトリアセチルセルロース保護フィルムの片面にそれぞれメタクリル酸メチル100重量部、メタクリル酸グリシジル20重量部、アゾビスイソブチリロニトリル3重量部からなる混合液状物を塗布し、偏光フィルムの両面に貼り合わせて圧着し、100℃に保持したオーブン中に30分間放置して偏光板Dを得た。この偏光板Dにつき実施例1と同様にして評価試験を行った。
【0042】
【表1】
*1:エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業社製:酢酸ビニル含量8%,グリシジルメタクリレート含量3%)
*2:エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業社製:酢酸ビニル含量5%,グリシジルメタクリレート含量12%)
*3:エチレン−酢酸ビニル−グリシジルメタクリレート共重合体(住友化学工業社製:酢酸ビニル含量5%,グリシジルメタクリレート含量12%)
*4:脂環族系炭化水素樹脂(荒川化学工業社製)
【0043】
【表2】
【0044】
実施例A〜Cの偏光板は、作製後の目視検査により、いずれも歪みや凹凸の全くない平滑な偏光板であった。これに対し、比較例の偏光板Dでは、アクリルモノマーによる被着体表面への溶解や膨潤により接合面の境界層に光学的ゆらぎが生じ、このため透過像が歪んで見えるという現象が観察された。
【0045】
また、表2の結果から明らかなように、実施例の偏光板は、いずれも硬化接着層及び保護層と偏光フィルムとの間の高い接着力、硬化接着層及び保護層内に形成された架橋構造による高い耐久性により、耐熱、耐湿熱の両試験で全く異常は認められず、高い信頼性を有していることが確認された。一方、比較例の偏光板Dでは、耐熱試験による黄変現象が認められ、耐湿熱試験では周辺部から2mm程度の部分に接着剥離が観察された。
【0046】
【表3】
【0047】
表3の結果から、実施例の偏光板の接着力については、現在液晶セルの基板として汎用性の高い3種の被着体に対しいずれも2.0kgf/cm以上の高い接着力を示すことが確認された。
【0048】
以上のことから、実施例の偏光板は、偏光フィルムの両側に設けた硬化性接着層及び保護層が、偏光フィルムの保護フィルムの機能を受け持ちつつかつ液晶セルやその他の液晶周辺部材とのアセンブリーのための接着機能を兼備する信頼性の高い偏光板であることが確認された。また、従来の偏光板のように接着層2層、保護層2層を加えた5層構造の偏光板とは異なり、わずか3層で5層分の機能を発現するため、安価でかつ生産性に優れた偏光板を提供することが可能であることが認められた。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す断面図である。
【図2】本発明の他の実施例を示す断面図である。
【図3】従来の偏光フィルムを示す断面図である。
【符号の説明】
1 偏光フィルム
2 保護フィルム
3 接着剤
4 接着層
5 保護層
Claims (7)
- 液晶表示装置の液晶セル表面基板に接着される偏光板において、偏光フィルムの一面に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体100重量部に対して有機過酸化物が0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、及びアリル基含有化合物から選ばれる1種又は2種以上が0.1〜50重量部配合された熱硬化性接着剤であって、前記共重合体における酢酸ビニル単位の含有率が4〜14重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系単位の含有率が0.01〜20重量%である熱硬化性接着剤からなる上記基板との接着層を形成してなることを特徴とする液晶表示装置用偏光板。
- 上記偏光フィルムの他面に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体100重量部に対して有機過酸化物が0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、及びアリル基含有化合物から選ばれる1種又は2種以上が0.1〜50重量部配合された熱硬化性接着剤であって、前記共重合体における酢酸ビニル単位の含有率が4〜14重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系単位の含有率が0.01〜20重量%である熱硬化性接着剤からなる保護層を形成した請求項1記載の液晶表示装置用偏光板。
- 上記熱硬化性接着剤が、上記共重合体100重量部に対してシランカップリング剤が0.01〜5重量部配合されたものである請求項1又は2記載の液晶表示装置用偏光板。
- 上記熱硬化性接着剤が、上記共重合体100重量部に対して炭化水素樹脂が1〜200重量部配合されたものである請求項1,2又は3記載の液晶表示装置用偏光板。
- 上記偏光フィルムが、ヒドロキシ基を含有する親水性ポリマーにヨウ素及び/又は二色性染料を吸着し、これを延伸配向させたものである請求項1乃至4のいずれか1項に記載の液晶表示装置用偏光板。
- 上記液晶セル表面基板が、ガラス板、ポリカーボネート板、アクリル樹脂板、ポリエステルフィルム、ポリエーテルサルフォンフィルム、又はポリアリレンフィルムのいずれかを基板材料として形成されたものである請求項1乃至5のいずれか1項に記載の液晶表示装置用偏光板。
- 請求項1乃至6のいずれかに記載の液晶表示装置用偏光板の製造方法であって、液晶表示装置の液晶セル表面基板に接着される偏光板において、偏光フィルムの一面に、エチレン、酢酸ビニル並びにアクリレート系及び/又はメタクリレート系モノマーの共重合体100重量部に対して有機過酸化物が0.1〜10重量部、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物、及びアリル基含有化合物から選ばれる1種又は2種以上が0.1〜50重量部配合された熱硬化性接着剤であって、前記共重合体における酢酸ビニル単位の含有率が4〜14重量%、アクリレート系及び/又はメタクリレート系単位の含有率が0.01〜20重量%である熱硬化性接着剤よりなる層を形成した後、上記基板と重ね合わせ、脱気しながら70〜170℃で2〜60分間、0.01〜50kgf/m 2 の加圧下で前記熱硬化性接着剤よりなる層を硬化させることを特徴とする液晶表示装置用偏光板の製造方法。
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