JP3637234B2 - レーダ装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、到来する電波に含まれる不要波成分を抑圧する機能を備えるアダプティブアンテナ装置を利用したレーダ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のように、従来のアダプティブアンテナ装置においては、妨害信号などの不要波の到来方向に指向性のヌルを形成すべく、アレイアンテナの各素子信号に対する複素ウェイトを算出し、これを素子信号に乗算したうえで合成することで、受信信号に含まれる不要波成分を抑圧するようにしている。このような特性を生かして、アダプティブアンテナ装置は例えば捜索レーダなどに搭載して幅広く利用されている。
【0003】
しかしながら上記の方式では、所望波と不要波とが共に同一の方向から到来した場合、すなわち見かけ上、両電波が同じ位置から到来するとみなされる場合には、両電波の分離を行い難く、両電波ともに抑圧されてしまうという不具合が有った。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
このように従来のアダプティブアンテナ装置には、所望波と不要波とが共に同一の方向から到来した場合に、不要波のみを分離して抑圧することができずに、所望波成分までも抑圧されてしまうという不具合が有った。
【0005】
本発明は上記事情によりなされたもので、その目的は、所望波と不要波とが共に同一の方向から到来した場合でも、不要波成分のみを抑圧することができるようにしたレーダ装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、到来する電波に含まれる所望波成分と不要波成分とを、予め既知である前記所望波の偏波状態をもとに区別してこれに基づき前記所望波と不要波とが同一方向から到来した際に前記不要波のみを抑圧することを特徴とする。
【0007】
より具体的には、レーダ送信波を送信する送信手段と、前記レーダ送信波に基づくレーダ反射波を含み到来する電波のそれぞれ互いに異なる複数の偏波成分を受信してこれらの偏波成分に対応する複数の受信信号を出力する受信手段と、前記複数の受信信号をもとに前記到来する電波に含まれる不要波の偏波状態を求める偏波演算手段と、この偏波演算手段により求められた偏波状態をもとにこの偏波状態と異なる偏波状態にて前記送信手段に前記レーダ送信波の送信を行わせるとともに、前記レーダ送信波と同じ偏波状態にて前記受信手段に前記到来する電波の受信を行わせる偏波制御手段とを具備することを特徴とする。
【0008】
上記構成によれば、偏波演算手段により、例えば予め既知である所望波の偏波状態に基づき不要波の偏波状態が算出され、偏波制御手段により、不要波の偏波状態とは異なる偏波状態にてレーダ波の送信および到来電波の受信がなされる。
【0009】
これにより、不要波と異なる偏波状態にて所望波を受信できることになる。換言すれば、受信すべき所望波の偏波状態を、不要波の偏波状態と強制的に変化させることが可能となる。したがって、所望波と不要波とが同一方向から到来したとしても、不要波成分を分離、抑圧することが可能となる。またこのとき、所望波はその偏波と同じ(並行する)偏波にて受信されるため、抑圧されることが無い。特に、レーダ波の送受信を不要波と直交した偏波状態にて行うことにより、不要波成分を見かけ上0とすることができ、不要波除去を最も効率良く行える。
【0010】
また本発明は、前記複数の受信信号をもとにこれらの各受信信号に含まれる不要波成分をそれぞれ抑圧するための複数のアダプティブウェイトを算出するアダプティブウェイト算出手段と、前記算出された複数のアダプティブウェイトをそれぞれ対応する前記受信信号に乗算するための乗算手段と、前記アダプティブウェイトを乗算後の各受信信号を合成し受信ビームを形成する合成手段とを具備することを特徴とする。
【0011】
このようにすることで、所望波すなわちレーダ受信パルスと異なる方向からの不要波成分をも抑圧できる。
【0012】
さらに本発明では、前記レーダ送信波がパルス状に送信され、この送信に引き続き当該レーダ送信パルスに基づくレーダ反射波を含み到来する電波が受信される場合に、到来する電波の受信の度ごとにアダプティブウェイトおよび不要波の偏波状態の演算を実行し、その値を更新するようにしている。
【0013】
このようにしたので、不要波の偏波状態の変化に追従することができ、不要波の抑圧効果を常時保つことが可能となる。
【0014】
また別の本発明は、レーダ波の送信機能を持たないアダプティブアンテナ装置についても、到来する電波に含まれる所望波成分と不要波成分とを、予め既知である前記所望波の偏波状態をもとに区別して、これに基づき前記所望波と不要波とが同一方向から到来した際に前記不要波のみを抑圧することをその基本思想としている。
【0015】
すなわち、所望波と不要波とが同一方向から到来したとしても、互いの偏波状態が異なってさえいれば両波を分離することができ、その結果不要波成分のみを抑圧したアダプティブビームを得ることが可能となる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1に、本発明の第1の実施形態に係わるレーダ装置の構成を示す。図1に示すレーダ装置は、例えば捜索レーダとして実現される。このレーダ装置は、水平偏波素子X1〜Xmと垂直偏波素子Y1〜Ynとを備え、受信偏波および送信偏波を可変できるものである。各素子には送受信モジュールMX1〜MXm、MY1〜MYnがそれぞれ接続されており、その送信用増幅器8、受信用増幅器9の各利得および移相器10の移相量を、制御部7から与えられる制御信号により制御することで、送信偏波および受信偏波を自在に制御できるものとなっている。
【0017】
すなわち、送信機1X、1Yから与えられる送信パルスは、それぞれ電力合成器2X、2Yにより電力合成され、送受信モジュールMX1〜MXm、MY1〜MYnを介してレーダ送信パルスとして送出される。
【0018】
一方、空間からレーダ反射パルスや不要波を含み到来する電波は、その水平偏波成分が水平偏波素子X1〜Xmで、垂直偏波成分が垂直偏波素子Y1〜Ynでそれぞれ受信される。各偏波成分の受信信号は、電力合成器3X、3Yで電力合成されて受信機4X、4Yに導かれる。受信機4X、4Yでは、各受信信号に対して周波数変換などの処理が施され、その出力が乗算器5X、5Yを介して加算器6にて合成され、アダプティブビームが出力される。
【0019】
ここで、各受信機4X、4Yの出力は制御部7にも与えられ、これに基づきアダプティブウェイトが演算される。このアダプティブウェイトWX、WYは、乗算器5X、5Yにてそれぞれ受信機4X、受信機4Yの出力と乗算され、これにより不要波の水平、垂直偏波成分の抑圧されたアダプティブビームを得ることができる。
【0020】
ところで、制御部7は、上に述べたアダプティブウェイトWX、WYの演算を行うアダプティブウェイト演算手段7aに加え、偏波演算手段7bと、偏波制御手段7cとを備えている。偏波演算手段7bは、受信機4X、受信機4Yの出力に基づき、到来電波に含まれる不要波の偏波状態を算出するものである。ここで言う偏波状態とは、偏波の向き、軸比、旋回回転方向などの情報を意味する。
【0021】
偏波制御手段7cは、上記算出された偏波状態に基づき、レーダ送信パルスの送出の際の偏波を不要波の偏波状態と直交させるべく、送受信モジュールMX1〜MXm、MY1〜MYnに対して制御信号を与える。同様に、到来電波受信の際の偏波を不要波の偏波状態と直交させるべく、送受信モジュールMX1〜MXm、MY1〜MYnに対して制御信号を与えるものである。
【0022】
なお、アダプティブウェイト演算手段7aは、例えばシストリックアレイ状に接続された演算素子により構成されるものが知られているが、ROM(Read Only Memory)に記憶された演算プログラムとして、ソフトウェア的に実現することも可能である。偏波演算手段7b、偏波制御手段7cも同様に、その処理手順をROMなどに記憶させたソフトウェアとして実現可能である。
【0023】
次に、上記構成における動作を図2のタイミングチャートを参照して説明する。レーダ送信パルスは、一定のパルス繰返し周期(PRI)で送出される。(図2(a))パルスの送出が完了すると、該レーダ装置は受信状態に入り、前回の受信の際に算出されたアダプティブウェイトWX、WY(図2(b))に基づき受信処理を行い、不要波成分を抑圧したアダプティブビーム出力を得る。
【0024】
これと並行して、現在受信中の受信信号に基づく演算処理により、新たなアダプティブウェイトおよび到来電波の偏波状態が算出される(図2(c))。ここで算出された値は、いずれも目標の移動などにより前回の演算とは異なる値になっていることが多い。そこで、更新トリガ(図2(d))により、すなわち1回のPRIの完了の度ごとに、アダプティブウェイトの値および到来電波の偏波状態を示す値が更新される。以後同様の手順で、レーダ送信パルスの送出および到来電波の受信が行われる。
【0025】
このような処理により、パルス繰返し周期のたびに、アダプティブウェイトWX、WYと不要波の偏波状態とが算出され、そのデータが更新される。そこで、この最新のデータを用いて、レーダ波の送受信を不要波と直交する偏波にて行うようにすれば、レーダ受信パルスを十分な利得で受信できるにも拘わらず、不要波の電力成分を見かけ上0とすることができ、結果的に不要波成分のみを抑圧することが可能となる。
【0026】
例えば、不要波とレーダ反射パルス(すなわち所望波)とが同一の方向から到来したとし、このうち不要波の偏波が水平に対して60°をなす直線偏波であるとする。この場合、偏波演算手段7bにより「水平に対して60°をなす直線偏波」が算出され、これをもとに偏波制御手段7cにより「水平に対して150°をなす直線偏波」なる制御信号が送受信モジュールMX1〜MXm、MY1〜MYnに与えられる。これにより、レーダ送信パルスは、その偏波を「水平に対して150°をなす直線偏波」として送出され、目標にて反射される。
【0027】
このレーダ反射パルスも、目標の移動などに連れて多少の変動はあるものの、「水平に対して150°をなす直線偏波」にて再び帰還するはずである。これを受信する際にも、偏波制御手段7cにより「水平に対して150°をなす直線偏波」なる受信ビームが形成されているので、十分な利得にて受信することができる。
【0028】
このように本実施形態では、水平偏波素子X1〜Xm、垂直偏波素子Y1〜Ynおよびこれらの素子にそれぞれ接続される送受信モジュールMX1〜MXm、MY1〜MYnを備え、レーダ波の送信偏波および受信偏波を可変可能とする。そして、受信信号からこれに含まれる不要波を抑圧するためのアダプティブウェイトWX、WYを算出し、これにより所望波の到来方向以外から到来する不要波を抑圧する。また不要波の偏波状態を偏波演算手段7bにより求め、これと直交する偏波にてレーダ送信パルスの送信、およびレーダ反射パルスの受信を行う。さらに、アダプティブウェイトおよび不要波の偏波状態をパルス繰返し周期ごとに演算し、その値を更新するようにしている。
【0029】
このようにしたので、所望波と不要波とが同一の方向から到来した場合でも、不要波成分を見かけ上0にすることができ、所望波を抑圧すること無しに不要波成分のみを抑圧することが可能となる。また、演算処理をパルス繰返し周期ごとに行っているので、不要波の偏波状態の変化にも追従でき、常時効率の良い不要波除去を行えるようになる。
【0030】
(第2の実施形態)
上記実施形態では、送信機能を有するレーダに本発明の思想を適用した例を説明したが、これに限らず、受信機能のみを備えるアダプティブアンテナ装置に対しても本願思想を適用することが可能である。この実施形態では、アダプティブアンテナ装置に対して本願思想を適用し、例えば放送電波受信用のアンテナとして好適に利用することのできる例を説明する。
【0031】
図3に、本実施形態に係わるアダプティブアンテナ装置の構成を示す。同図において、図1と共通する部分には同一の符号を付して示す。このアダプティブアンテナ装置は送信機能を有さず、従って送信機を備えていない。また、図1の送受信モジュールMX1〜MXm、MY1〜MYnに代えてビーム形成部PX1〜PXm、PY1〜PYnを備えており、さらに、偏波制御手段7aに代えて受信偏波制御手段70aを備えたものとなっている。なお、区別のため制御部に70なる符号を付し、ここでは異なる部分についてのみ説明する。
【0032】
ビーム形成部PX1〜PXm、PY1〜PYnは、増幅器9と移相器10とを備え、制御部70から与えられる制御信号に基づき受信ビームの偏波を可変可能とするものである。受信偏波制御手段70aは、偏波演算手段7bにより求められた不要波の偏波状態をもとに、これと直交する偏波に受信ビームを形成すべく、ビーム形成部PX1〜PXm、PY1〜PYnに制御信号を与えるものである。
【0033】
上記構成によれば、所望波と不要波とが同一の方向から到来した際、両波の偏波状態が異なっている場合にのみ、不要波を抑圧することが可能となる。すなわち、不要波成分を見かけ上0とできるし、これと同時に所望波成分の利得を残しておくことが可能である。勿論、同一方向以外の方向から到来する不要波に対しては、アダプティブウェイト演算手段7aにより十分な抑圧効果を有しており、これと相俟って受信性能をさらに高めることが可能となる。本実施例のアダプティブアンテナ装置は、例えばマルチパスの存在する受信環境下において、耐マルチパス性能を向上させることが可能である。
【0034】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されるものではない。
例えば上記実施形態では、複数のアンテナ素子を備えたアレイアンテナを使用したが、これに限らず、送信および受信偏波を可変であればアンテナの形式は問わない。また、一次放射器および反射鏡によりビームを形成する反射鏡アンテナを使用しても良い。
また上記第1の実施形態では、レーダ波の送信および受信の際の偏波を制御するようにしたが、送信の偏波のみを不要波と直交させるようにしても良い。このようにしても上記と同様の効果を得られるほか、送受信モジュールMX1〜MXm、MY1〜MYnの構成を簡易化できる利点がある。
また上記第1の実施形態では、レーダ波の送受信を不要波と直交させるようにしているが、これに限らず、要するにレーダ波の送受信を不要波の偏波状態と異なる偏波状態にて行うことにより所望波と不要波との分離を行えるようになるので、この結果不要波成分のみを除去することが可能となる。
【0035】
その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形実施を行うことができる。
【0036】
【発明の効果】
以上詳述したように本発明によれば、レーダ送信パルスの送信およびレーダ反射パルスの受信を、不要波と直交する偏波にて行っているので、所望波と不要波とが共に同一の方向から到来した場合でも、不要波成分のみを抑圧することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の第1の実施形態に係わるレーダ装置の構成を示す図。
【図2】 図1のレーダ装置の動作を説明するためのタイミングチャート。
【図3】 本発明の第2の実施形態に係わるアダプティブアンテナ装置の構成を示す図。
【符号の説明】
X1〜Xm…水平偏波素子
Y1〜Yn…垂直偏波素子
MX1〜MXm、MY1〜MYn…送受信モジュール
1X、1Y…送信機
2X、2Y、3X、3Y…電力合成器
4X、4Y…受信機
5X、5Y…乗算器
6…加算器
7、70…制御部
7a…アダプティブウェイト演算手段
7b…偏波演算手段
7c…偏波制御手段
7…増幅器
8…移相器
PX1〜PXm、PY1〜PYn…ビーム形成部
70a…受信偏波制御手段
Claims (1)
- レーダ送信波を送信する送信手段と、
前記レーダ送信波に基づくレーダ反射波を含み到来する電波の、それぞれ互いに異なる複数の偏波成分を受信して、これらの偏波成分に対応する複数の受信信号を出力する受信手段と、
前記複数の受信信号をもとに、前記到来する電波に含まれる不要波の偏波状態を求める偏波演算手段と、
この偏波演算手段により求められた偏波状態をもとに、この偏波状態と異なる偏波状態にて前記送信手段に前記レーダ送信波の送信を行わせるとともに、前記レーダ送信波と同じ偏波状態にて前記受信手段に前記到来する電波の受信を行わせる偏波制御手段と、
前記複数の受信信号をもとに、これらの各受信信号に含まれる不要波成分をそれぞれ抑圧するための複数のアダプティブウェイトを算出するアダプティブウェイト算出手段と、
前記算出された複数のアダプティブウェイトを、それぞれ対応する前記受信信号に乗算するための乗算手段と、
前記アダプティブウェイトを乗算後の各受信信号を合成し、受信ビームを形成する合成手段とを具備し、
前記レーダ送信波がパルス状に送信され、この送信に引き続き該レーダ送信パルスに基づくレーダ反射波を含み到来する電波が受信される場合に、
前記偏波演算手段は、前記到来する電波の受信の度ごとに、この受信された電波に含まれる不要波の偏波状態を算出してその値を更新するものであり、
前記アダプティブウェイト算出手段は、前記到来する電波の受信の度ごとに、次回の受信のための前記アダプティブウェイトを算出してその値を更新するものであることを特徴とするレーダ装置。
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