JP3635669B2 - 厚膜多層基板の製造方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は厚膜多層基板の製造方法に関する。
【0002】
【従来技術】
従来、セラミック基板上に絶縁層を印刷、焼成し、この絶縁層上に配線パタンを印刷、焼成することにより厚膜多層基板を製造する際には、複数の絶縁層及び配線パタンは、全て同じ温度で焼成している。
したがって、上記技術を応用して、セラミック基板上に厚膜抵抗を印刷、焼成し、このセラミック基板上に複数の絶縁層を順次、印刷、焼成しようとすると、厚膜抵抗、複数の絶縁層及び配線パタンは、全て同じ温度で焼成することが考えられる。
【0003】
しかしながら、上記の製造方法では、厚膜抵抗の焼成温度と絶縁層、配線パタンなどの焼成温度が同じであるため、厚膜抵抗焼成後の焼成工程において、熱的影響により厚膜抵抗とそれに接する絶縁層との間に相互拡散や熱ストレスが発生し、厚膜抵抗の抵抗値が大きく変動してしまうという問題がある。
そこで上記問題に対処する従来技術としては、下記の時点において、厚膜抵抗にレーザトリミングを実施し、抵抗値調整を行っている。
【0004】
第一の従来技術では全ガラス絶縁層の焼成前にレーザトリミングを実施する。第二の従来技術では全ガラス絶縁層の焼成後に全ガラス絶縁層を透過してレーザトリミングを実施する。第三の従来技術では全ガラス絶縁層を開口して設けた窓を通してレーザトリミングを実施する。第四の従来技術では上部のガラス絶縁層に設けた窓を通しかつ最下層のガラス絶縁層を透過してレーザトリミングを実施する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記したレーザートリミング方法は、それぞれ下記の問題点を有している。
まず上記第一の従来技術では、レーザートリミング後に全ガラス絶縁層及び配線の焼成を行うためにそれらの熱的影響により、厚膜抵抗の抵抗値が変動してしまう。図6に同一基板上に設けた3個の厚膜抵抗の各工程毎の抵抗値変動の一例を示す。図より明らかなように、抵抗体のシート抵抗値あるいは抵抗体の形状等によって抵抗値変動の絶対値が異なる。
【0006】
上記第二の従来技術では、厚い全ガラス絶縁層を透過してレーザートリミングを行うために、各ガラス絶縁層及びその界面における吸収、散乱、反射が生じ、厚膜抵抗トリミングのためにレーザー出力を増大させる必要がある。しかし、このレーザー出力の増大は周辺部への熱的影響の増大により周辺の配線や回路素子に熱ストレスなどの悪影響を与える可能性が危惧される。
【0007】
上記第三、第四の従来技術では、窓部に配線を布設できないので、多数のレーザートリミング厚膜抵抗を要する場合、配線パターンの設計が複雑となり、配線長が必要以上に長くなり、更に厚膜抵抗が露出するので耐外部環境性に不安が生じる。
本発明は上記問題点に鑑みなされたものであり、簡単に厚膜抵抗の抵抗値を高精度化できる厚膜多層基板の製造方法を提供することを、その目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、セラミック基板上に厚膜抵抗を印刷して焼成する厚膜抵抗形成工程と、前記厚膜抵抗及び前記セラミック基板の表面に第1の絶縁層を含む複数層の絶縁層を印刷して焼成する絶縁層形成工程と、前記絶縁層上に配線パタンを印刷、焼成する配線形成工程とを備える厚膜多層基板の製造方法において、以下に記載するように互いに独立する4つの厚膜多層基板の製造方法を含む。
請求項1は特に、厚膜抵抗との固相拡散が少なく、厚膜抵抗と前記第1の絶縁層との間の固相拡散を低減し、厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに第1の絶縁層よりも軟質又は高弾性の絶縁材料からなる緩衝層を少なくとも厚膜抵抗上に厚膜抵抗の形成後でかつ第1の絶縁層の形成前に形成することを特徴とする。
請求項2は特に、厚膜抵抗との固相拡散が少なく、厚膜抵抗と第1の絶縁層との間の固相拡散を低減し、厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに第1の絶縁層の熱膨張率と厚膜抵抗の熱膨張率との中間の熱膨張率を有する絶縁材料からなる緩衝層を少なくとも厚膜抵抗上に厚膜抵抗の形成後でかつ第1の絶縁層の形成前に形成することを特徴とする。
請求項3は特に、第1の絶縁層が、厚膜抵抗との固相拡散が少なく、厚膜抵抗と第1の絶縁層との間の固相拡散を低減し、厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに、第1の絶縁層の直上に印刷焼成される他の絶縁層よりも軟質又は高弾性の緩衝層であることを特徴とする。
請求項4は特に、第1の絶縁層が、厚膜抵抗との固相拡散が少なく、厚膜抵抗と第1の絶縁層との間の固相拡散を低減し、厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに、第1の絶縁層の直上に印刷焼成される他の絶縁層の熱膨張率と厚膜抵抗の熱膨張率との中間の熱膨張率を有する緩衝層であることを特徴とする。
【0009】
好適な態様において、前記厚膜抵抗を前記絶縁層よりも20〜100℃高温で焼成する。
温度差が20℃未満の場合には抵抗値変動が大きくなり、温度差が100℃超過の場合には接する配線導体(通常Ag系導体(Ag、AgPd、AgPt)の溶融又は配線導体との固相拡散といった不具合が生じる。
【0010】
好適な態様において、前記厚膜抵抗は、その後に焼成される前記絶縁層よりも高温で焼成される。
好適な態様において、前記厚膜抵抗をレーザートリミングした後、前記絶縁層を形成する。
好適な態様において、前記レーザートリミング直後の前記厚膜抵抗の抵抗値と、前記厚膜抵抗の高温工程終了時の抵抗値との比率を記憶し、前記比率に基づいて目標抵抗値を予め補正して得た抵抗値に基づいてレーザートリミングを実施する。
【0011】
好適な態様において、前記厚膜抵抗に含まれるガラスを前記厚膜抵抗又は前記絶縁層の焼成により結晶化ガラスとする。
【0012】
【発明の効果】
本発明の厚膜多層基板の製造方法では、セラミック基板上の厚膜抵抗をその上に接して焼成される絶縁層よりも高温で焼成する。
このようにすれば、以下の効果を奏することができる。
(1)レーザートリミング跡や窓により絶縁層に凹部が形成されるレーザートリミングを使用しなくても高精度に抵抗値を決定できる。
【0013】
すなわち、厚膜抵抗焼成後におけるその抵抗値の変動は、その後の高温工程(絶縁層焼成、配線(回路パタン及びビヤーホール充填導体)焼成)、特に厚膜抵抗に接する絶縁層の焼成工程における厚膜抵抗とそれに接する絶縁層との相互拡散や熱ストレスなどによって生じる。
ところが本発明者らの実験によれば、厚膜抵抗をそれに接する絶縁層よりも高温で焼成すれば、その後の絶縁層の焼成などの高温工程による抵抗値変動を低減できることがわかった。
【0014】
恐らく、厚膜抵抗の高温焼成により、厚膜抵抗を構成するガラス粒子と導電粒子との反応ならびに結合力が強化されるために、その後により低温の絶縁層焼成工程を行っても、厚膜抵抗とそれに接する絶縁層との間で固相拡散が生じにくくなるためと推定される。
(2)厚膜抵抗焼成後でかつ絶縁層形成前にレーザートリミングすることにより、更なる高精度の抵抗値を得ることができる。また厚膜抵抗を絶縁層で被覆できるので、安定性に優れ、しかもその配線が可能となる。
【0015】
すなわち、厚膜抵抗が高温焼成されて安定であるので、レーザートリミング跡の絶縁層焼成を行っても抵抗値のばらつきが小さい。したがって、絶縁層に窓などを設ける必要がなくまた絶縁層透過のためにレーザー出力を増大しなくてもよい。
(3)更に、各発明では、厚膜抵抗との固相拡散が少なく、厚膜抵抗と絶縁層との間の固相拡散を低減し、厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに、この絶縁層よりも軟質又は高弾性の絶縁材料、又は、この絶縁層の熱膨張率と厚膜抵抗の熱膨張率との中間の熱膨張率をもつ絶縁材料からなる緩衝層を、この緩衝層の直上の絶縁層と厚膜抵抗との間に形成するため、緩衝層の直上の絶縁層と厚膜抵抗との間の熱膨張係数の差に起因する熱応力を緩衝層により緩和することができる。
【0016】
【実施例】
(参考例1)
本発明の厚膜多層基板の一参考例を図1を参照して説明する。
図1は、アルミナ基板1上に3層のガラス絶縁層2〜4を有する厚膜多層基板を示す。
【0017】
基板1上には配線5、厚膜抵抗6が印刷、焼成されており、その上にガラス絶縁層2〜4が形成され、ガラス絶縁層4上には配線7、保護ガラス71が形成されている。また、ガラス絶縁層4上には回路部品8がはんだ付けされている。9はビアホールに充填された孔部充填導体である。
以下、この厚膜多層基板の製造方法を説明する。
(厚膜抵抗形成工程)
まず、図2に示すように、Ag粉末にバインダとしてのエチルセルロースと溶剤としてのテルビネオールなどとを混練して導体ペーストを作成し、次に約1600℃で焼成されたアルミナ基板1上にこの導体ペーストを印刷し、空気中、800〜1050℃で10分間保持する焼成プロファイルにて焼成して配線5を形成する。
【0018】
次に、1200〜1500℃で溶融後、水中急冷し、粉砕した所定の混合比率のPbO、Al2 O3 、SiO2 、B2 O3 混合物などからなる平均粒径2〜5μmのガラス粉末50〜80vol%にRu02 粉末を所定vol%混合した混合粉末を作成し、この混合粉末に溶剤(例えばテルビネオール)、バインダ(例えばエチルセルロース)を入れて混練して抵抗体ペーストを作成し、この抵抗体ペーストをアルミナ基板1の表面に焼成後の膜厚が7〜15μmの厚さになるように印刷し、空気中、820〜1050℃で10分間保持する焼成プロファイルにて焼成して厚膜抵抗6を形成する。
(ガラス絶縁層の最下層を厚膜抵抗上に形成する工程)
次に、図3に示すように、1200〜1500℃で溶融後、水中急冷し、粉砕した所定の混合比率のCaO、Al2 O3 、ZrO、PbOなどの混合物からなる平均粒径2〜5μmのガラス粉末に、溶剤(例えばテルビネオール)、バインダ(例えばエチルセルロース)を所定量加え、混練してガラスペーストを作成する。このガラスペーストをアルミナ基板1上に15〜25μmの厚さで印刷し、800〜950℃で10分間保持する焼成プロファイルにて焼成してガラス絶縁層2を形成する。
(残部のガラス絶縁層及び内部配線形成工程)
次に、図4に示すように、上記したガラス絶縁層2の製造工程と同じ工程でガラス絶縁層3を形成し、次に、上記導体ペーストをガラス絶縁層2、3の互いに連通するビアホールにスクリーン印刷して充填し、空気中、800〜950℃で10分間保持する焼成プロファイルにて焼成して孔部充填導体9の下部を形成する。
【0019】
次に、上記したガラス絶縁層2の製造工程と同じ工程でガラス絶縁層4を形成し、次に、上記ビアホールに連通するガラス絶縁層4のビアホールにAgペーストをスクリーン印刷して充填し、空気中、800〜950℃で10分間保持する焼成プロファイルにて焼成して孔部充填導体9の上部を形成する。
(表層回路形成工程)
次に、図4に示す様に導体ペーストをガラス絶縁層4表面に印刷し、800〜950℃で10分間保持する焼成プロファイルにて焼成して配線7を形成し、その上に保護ガラスペーストを印刷し、空気中、500〜650℃をピーク温度とする焼成プロファイルにて焼成して保護ガラス層71を形成した。
【0020】
保護ガラスペーストは、1200〜1500℃で溶融後、水中急冷し、粉砕した所定の混合比率のPbO、SiO2 、B2 O3 混合物からなる平均粒径2〜5μmのガラス粉末に、溶剤(例えばテルピネオール)、バインダ(例えばエチルセルロース)を所定量加え、混練して作成した。
(回路部品装着工程)
次に、図1に示すように、ガラス絶縁層4の表面に焼成基板の表面に、回路部品8をはんだ付けして工程を完了した。
【0021】
また、基板形成プロセスにて導体ペーストのAg粉末の代わりにAgとPdあるいはAgとPtとの混合粉を用いてもよい。またCuを用いることもできるがこの場合には酸化防止のため、焼成をN2 雰囲気で行なう必要がある。
さらに、表層回路形式工程において、導体ペーストを用いて配線形成後、この配線間に抵抗体を形成する事もできる。
【0022】
次に、厚膜抵抗6の抵抗値変化を各製造工程終了毎にモニターした結果を図5に示す。また、厚膜抵抗6の焼成を850℃で10分間保持する焼成プロファイルにて焼成した他は実施例と同じ方法で作成した厚膜抵抗の抵抗値変化を示す。図6からわかるように、厚膜抵抗6の抵抗値は、高温焼成する本実施例品の抵抗値変化は比較例品に比べて格段に縮小されていることがわかる。
(参考例2)
上記参考例では、レーザートリミングを行わなかったが、厚膜抵抗6の形成後にそのレーザートリミングを行って、厚膜抵抗6の値を精密に所定値に決め、その後、厚膜抵抗6を含む基板1上にガラス絶縁層2〜4を形成してもよい。厚膜抵抗6が高温焼成されているために、その上にガラス絶縁層2〜4を低温焼成しても、図5からわかるように殆ど変わらない。
(参考例3)
上記参考例2では、ガラス絶縁層2〜4形成前にレーザートリミングを実施したが、ガラス絶縁層2の形成後にレーザートリミングを行い、その後でガラス絶縁層3、4を形成してもよい。このようにすれば更に抵抗値変動を低減し、更に厚膜抵抗6上をガラス絶縁層3そして4で被覆することができる。
(参考例4)
他の参考例を説明する。
【0023】
この参考例は、参考例1において、厚膜抵抗6のレーザートリミング後の抵抗値R3と、製造工程完了後の上記厚膜抵抗6の抵抗R4との変化率Rr=R4/R3について多数のサンプルの平均変化率Rrmを計算し、レーザートリミング時にこの平均変化率Rrmを利用してレーザートリミング時の抵抗値R3を決定する。
【0024】
例えば厚膜抵抗6の目標抵抗値をRxとする。そこでレーザートリミングにより厚膜抵抗6のレーザートリミング設定抵抗値R3をR3=Rx/Rrmとしてレーザートリミングを行う。このようにすれば、レーザートリミング後にガラス絶縁層焼成などを行い、厚膜抵抗6に熱履歴が加えられる場合でも、この熱履歴による厚膜抵抗6の抵抗値変動を最小限に抑制することが可能となる。
【0025】
これは、レーザートリミング後のガラス絶縁層や配線の焼成工程が一定であり、それによる抵抗値変動も本質的に一定範囲内に収まるためである。
(参考例5)
参考例4の変形態様を以下に説明する。
この参考例では、レーザートリミングにおける抵抗値比較(モニタ抵抗と記憶する目標抵抗との比較)を行うコンピュータのメモリに、回路基板上の全部の厚膜抵抗6に対してそれぞれ、平均変化率Rrmを個別に記憶しておく。
【0026】
これは、回路基板上の位置や、各厚膜抵抗6の抵抗値などにより微妙に平均変化率Rrmが異なるのを補償するためである。
このようにすれば、回路基板上の位置や、各厚膜抵抗6の抵抗値などにより微妙に平均変化率Rrmが異なる場合でも、熱履歴による各厚膜抵抗6の抵抗値変動を最小化することができる。
(参考例6)
参考例5の変形態様を以下に説明する。
【0027】
回路基板は複数枚(例えば4枚)を1ロットとして同じハンドリング用のボート(たとえばアルミナ製)に載置して、各工程を実施する。この実施例では、レーザートリミングにおける抵抗値比較(モニタ抵抗と記憶する目標抵抗との比較)を行うコンピュータのメモリに、上記ボート上の各回路基板上のレーザートリミングが必要な各厚膜抵抗6の全数に対して、それぞれ平均変化率Rrmを個別に記憶しておく。そしてレーザートリミングが必要な全厚膜抵抗6に対して各抵抗値R3を目標抵抗Rx/Rrmとして個別にレーザートリミングする。
【0028】
これは、上記セラミックボート上の回路基板の載置位置により、回路基板毎に微妙に温度などが変化し、そのために回路基板上の同一位置に形成される厚膜抵抗6でも上記微妙な温度変化により抵抗値が変動するためである。この参考例によれば、更に一層の抵抗値変動抑制が可能となる。
【0029】
参考例7
厚膜抵抗6の膜厚と熱履歴後の平均変化率Rrmとは一定の関係をもつので、この関係を示すグラフを記憶しておけば、厚膜抵抗6の膜厚を変える度にこのグラフから平均変化率Rrmをサーチすることができ、厚膜抵抗6の膜厚を変える度に一々、平均変化率Rrmを実験的に導出しなくてもよい。
【0030】
参考例8
厚膜抵抗6形成後でかつガラス絶縁層2形成前に、厚膜抵抗6とガラス絶縁層2との間の固相拡散を防止又は低減するバリア層を少なくとも厚膜抵抗6上に形成する。このバリア層はレーザートリミング前に形成してもよく、その後に形成してもよい。このバリア層の条件としては、厚膜抵抗6との固相拡散が少なく、厚膜抵抗6とガラス絶縁層2との間の固相拡散を低減し、厚膜抵抗6形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料であり、例えば、窒化シリコン膜やアルミナ膜などを採用することができ、製造プロセスとしてはCVD法やPVD法や印刷焼成法などを採用できる。なお、レーザートリミング前に形成する場合には、レーザートリミングにより溶断可能な厚さとする必要がある。
【0031】
実施例1
この実施例では、厚膜抵抗6形成後でかつガラス絶縁層2形成前に又はガラス絶縁層2として、直上のガラス絶縁層よりも軟質又は高弾性の緩衝層を少なくとも厚膜抵抗6上に形成する。この緩衝層はレーザートリミング前に形成してもよく、その後に形成してもよい。この緩衝層の条件としては、厚膜抵抗6との固相拡散が少なく、厚膜抵抗6とガラス絶縁層4との間の固相拡散を低減し、厚膜抵抗6形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料であり、製造プロセスとしてはCVD法やPVD法や印刷焼成法などを採用できる。なお、レーザートリミング前に形成する場合には、レーザートリミングにより溶断可能な厚さとする必要がある。
【0032】
このようにすれば、厚膜抵抗6とガラス絶縁層2又は3との熱膨張係数の差に起因する熱応力をこの緩衝層で緩和することができ、それにより上記熱応力による厚膜抵抗6の抵抗値の変動を低減することができる。
実施例2
この実施例では、厚膜抵抗6形成後でかつガラス絶縁層2形成前に、ガラス絶縁層2として、直上のガラス絶縁層の熱膨張率と厚膜抵抗6の熱膨張率との中間の熱膨張率を有する緩衝層を設ける。この緩衝層はレーザートリミング前に形成してもよく、その後に形成してもよい。この緩衝層の条件としては、厚膜抵抗6との固相拡散が少なく、厚膜抵抗6とガラス絶縁層4との間の固相拡散を低減し、厚膜抵抗6形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料であり、製造プロセスとしてはCVD法やPVD法や印刷焼成法などを採用できる。なお、レーザートリミング前に形成する場合には、レーザートリミングにより溶断可能な厚さとする必要がある。
【0033】
このようにすれば、厚膜抵抗6とガラス絶縁層2又は3との熱膨張係数の差に起因する熱応力をこの緩衝層で緩和することができ、それにより上記熱応力による厚膜抵抗6の抵抗値の変動を低減することができる。
変形態様
この態様では、厚膜抵抗6に含まれるガラスの主成分を結晶化ガラスとする。
【0034】
このようにすれば、厚膜抵抗6の内部のガラスが厚膜抵抗6の焼成時に結晶化し、結晶化ガラスの融点が高くなる。好適には、結晶化状態で非晶質状態のときより融点が50℃以上上昇する組成が好ましい。したがって、その後の絶縁層の焼成工程における絶縁層と厚膜抵抗6との相互反応をより良好に抑止することができる。
【0035】
さらに厚膜抵抗6内部のガラスだけでなく、ガラス絶縁層2に含まれるガラスの主成分をも結晶化ガラスとしても同様の効果が生じる。すなわち、ガラス絶縁層2に含まれるガラスの主成分が結晶化ガラスとなることにより、焼成後のガラス絶縁層2とそれに隣接する厚膜抵抗6との相互反応が抑制される。
これにより、厚膜抵抗6の抵抗値変動を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】参考例1の厚膜多層基板を示す模式断面図である。
【図2】参考例1の製造工程を示す模式断面図である。
【図3】参考例1の製造工程を示す模式断面図である。
【図4】参考例1の製造工程を示す模式断面図である。
【図5】参考例1における各工程後の厚膜抵抗の抵抗値の変動を示す図である。
【図6】従来の厚膜多層基板の各部に形成された3個の抵抗の各工程後の抵抗値の変動を示す図である。
【符号の説明】
1は基板、2〜4はガラス絶縁層、6は厚膜抵抗である。
Claims (4)
- セラミック基板上に厚膜抵抗を印刷して焼成する厚膜抵抗形成工程と、前記厚膜抵抗及び前記セラミック基板の表面に第1の絶縁層を含む複数層の絶縁層を印刷して焼成する絶縁層形成工程とを備える厚膜多層基板の製造方法において、
前記厚膜抵抗との固相拡散が少なく、前記厚膜抵抗と前記第1の絶縁層との間の固相拡散を低減し、前記厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに前記第1の絶縁層よりも軟質又は高弾性の絶縁材料からなる緩衝層を少なくとも前記厚膜抵抗上に前記厚膜抵抗の形成後でかつ前記第1の絶縁層の形成前に形成することを特徴とする厚膜多層基板の製造方法。 - セラミック基板上に厚膜抵抗を印刷して焼成する厚膜抵抗形成工程と、前記厚膜抵抗及び前記セラミック基板の表面に第1の絶縁層を含む複数層の絶縁層を印刷して焼成する絶縁層形成工程とを備える厚膜多層基板の製造方法において、
前記厚膜抵抗との固相拡散が少なく、前記厚膜抵抗と前記第1の絶縁層との間の固相拡散を低減し、前記厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに前記第1の絶縁層の熱膨張率と前記厚膜抵抗の熱膨張率との中間の熱膨張率を有する絶縁材料からなる緩衝層を少なくとも前記厚膜抵抗上に前記厚膜抵抗の形成後でかつ前記第1の絶縁層の形成前に形成することを特徴とする厚膜多層基板の製造方法。 - セラミック基板上に厚膜抵抗を印刷して焼成する厚膜抵抗形成工程と、前記厚膜抵抗及び前記セラミック基板の表面に第1の絶縁層を含む複数層の絶縁層を印刷して焼成する厚膜多層基板の製造方法において、
前記第1の絶縁層は、前記厚膜抵抗との固相拡散が少なく、前記厚膜抵抗と前記第1の絶縁層との間の固相拡散を低減し、前記厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに、前記第1の絶縁層の直上に印刷焼成される他の絶縁層よりも軟質又は高弾性の緩衝層であることを特徴とする厚膜多層基板の製造方法。 - セラミック基板上に厚膜抵抗を印刷して焼成する厚膜抵抗形成工程と、前記厚膜抵抗及び前記セラミック基板の表面に第1の絶縁層を含む複数層の絶縁層を印刷して焼成する厚膜多層基板の製造方法において、
前記第1の絶縁層は、前記厚膜抵抗との固相拡散が少なく、前記厚膜抵抗と前記第1の絶縁層との間の固相拡散を低減し、前記厚膜抵抗形成後の熱履歴に対して相変化しない絶縁性材料からなるとともに、前記第1の絶縁層の直上に印刷焼成される他の絶縁層の熱膨張率と前記厚膜抵抗の熱膨張率との中間の熱膨張率を有する緩衝層であることを特徴とする厚膜多層基板の製造方法。
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