JP3634949B2 - 人工大理石 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、雲母片を含有した粒子を分散させた天然石調模様の人工大理石及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然石は、その優雅さから壁材、床材、各種天板等として古くから使用されているが、重量が重くまた硬いことから施工・加工が難しく、また表面が多孔質であるので汚れを除去しにくい、長尺物の入手が難しい、継ぎ目ができる等の欠点を有する。
【0003】
これらの欠点を改良するために、従来から人工大理石等の天然石調の樹脂成形品が開発されており、優美な質感、優れた強度及び耐候性、施工・加工の容易性等から、サニタリー分野を中心に、その使用量は年々増加している。
【0004】
天然石調樹脂成形品としては、メラミン化粧板、表面のみ模様出しを施したゲルコート人工大理石、アクリル系人工大理石、ポリエステル系人工大理石等がある。これらは天然大理石に比べて軽量で無孔質であるが、前記のメラミン化粧板やゲルコート人工大理石は、表面のみの模様出しであるために加工・補修が困難であり、また衝撃に弱い等の欠点を有する。
【0005】
一方、アクリル系人工大理石及びポリエステル系人工大理石は、ソリッド材特有の優美な質感を有し、特にアクリル系人工大理石は、容易な加工性、優れた強度や耐衝撃性、耐候性を有する等の多くの長所を有している。
【0006】
天然石調模様のアクリル系、ポリエステル系人工大理石としては、例えば、石英、ガラス、孔雀石、大理石、黒曜石等の砕石、あるいはABS樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の樹脂粉砕物からなる透明/半透明/不透明粒子を分散させた人工大理石が特公昭61−24357号公報等に提案されている。
【0007】
しかし、石英やガラス等の硬質物からなる粒子を使用した人工大理石は、加工性に劣る傾向にあり、特に、表面研削や切断がうまくいかないことが多く、時には加工機を破損することもある。
【0008】
そこで、このような問題点を解決するため、樹脂組成物(不飽和ポリエステル−スチレン共重合体やメタクリル酸ベンジル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体)と水酸化アルミニウム等の軟質の無機充填物とからなる有機−無機複合透明粒子が特開平5−279575号公報等に提案されている。
【0009】
しかし、これらの透明粒子は透明性が不十分であり、該透明粒子を分散させた人工大理石の外観は、天然石に酷似した優美なものではなく、特にきらめき感が天然石とは異なる傾向にある。
【0010】
これに対して、天然石に似たきらめき感を再現する目的で、例えば、特開昭59−171612号公報、特開昭62−27363号公報、特開平6−172001号公報には、雲母を人工大理石の充填材や模様材として用いることが開示されている。
【0011】
さらに、特開平6−322143号公報には、雲母粒子と結晶質熱可塑性樹脂とからなる有機−無機複合粒子を、人工大理石の模様材として用いることが開示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭59−171612号公報、特開昭62−27363号公報、及び特開平6−172001号公報に開示されている人工大理石は、重合体と無機充填材とからなるマトリックスにフレーク状の雲母が直接配合されているため、外観が平面的で奥行き感に欠け、やはり天然石とは異なった質感となるという問題点を有していた。また、特開平6−322143号公報に開示された有機−無機複合粒子は、結晶質熱可塑性樹脂であるために硬度が高く、人工大理石に成形した際の加工性が低下するという問題点を有していた。特に、成形後の人工大理石の表面を研磨する場合には、樹脂と無機充填材とからなるマトリックスと複合粒子の硬度の差が大きいために、表面を平滑に仕上げることが困難であった。
【0013】
このように、人工大理石が本来持っている特徴、すなわち均質で無孔質なソリッド材、硬質木材と同等の施工・加工性、メンテナンスの容易さ、耐衝撃性、耐候性、難燃性等を維持したまま、きらめき感を有し天然石に酷似した外観を持つ人工大理石は知られていなかった。
【0014】
本発明の目的は、人工大理石本来の特徴を損なわずに、天然石に似たきらめき感を付与する人工大理石用模様材、及びこれを用いた人工大理石を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、雲母片を含有する重合体粒子が分散している人工大理石が、天然石に酷似した外観を有することを見いだし、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、ビニル系重合体(A)と雲母片(B)とを含有する粒子(X)が、ビニル系重合体(D)と無機充填材(E)とを含有するマトリックス(Y)中に分散されていることを特徴とする人工大理石に関するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
粒子(X)を構成するビニル系重合体(A)は、ラジカル重合性ビニル化合物(a)を構成成分とするものである。
【0018】
ラジカル重合性ビニル化合物(a)としては、必要に応じて適宜選択して使用されるものであり、特に限定されるものではない。具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン及びそれらの誘導体;(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等の窒素含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の分子中にエチレン性不飽和結合を有する芳香族ビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、アリール(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートや、ジビニルベンゼン、ブタジエン等の分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物;エチレン系不飽和ポリカルボン酸を含む少なくとも1種の多価カルボン酸と少なくとも1種のジオール類とから誘導された不飽和ポリエステルプレポリマー;エポキシ基の末端をアクリル変性することにより誘導されるビニルエステルプレポリマー等を挙げることができる。
【0019】
これらは、単独あるいは2種以上を併用して使用することができ、さらに、必要に応じて単量体の一部を予め部分的に重合させたものを使用することもでき、前記単量体から構成される他の重合体成分を使用することもできる。
【0020】
なお、粒子(X)の重合体成分として、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート等の結晶質熱可塑性重合体を用いると、粒子(X)の透明性が低下し、得られる人工大理石の外観が天然石とは異なったものになりやすく、さらに、成形後の人工大理石の表面を研磨する場合には、粒子(X)とマトリックス(Y)との硬度の差が大きくなるために、表面研磨時に凹凸が生じやすくなる傾向にあり好ましくない。
【0021】
粒子(X)におけるビニル系重合体(A)の含有量は、目的とする特性により適宜選択することができるが、粒子(X)の総重量を基準にして20〜99.95重量%の範囲であることが好ましい。これは、ビニル系重合体(A)の含有量を20重量%以上とすることによって、粒子(X)の原料として得られる雲母片含有樹脂の成形性や強度に優れる傾向にあり、99.95重量%以下とすることによって、得られる雲母片含有樹脂の帯電防止性や硬度が良好となる傾向にあるためである。さらに好ましくは40〜99.9重量%の範囲である。
【0022】
粒子(X)に含有される雲母片(B)としては、必要に応じて適宜選択することができ、使用に際して特に制限はないが、雲母片の最大粒子径の平均は、0.1〜50mmの範囲であることが好ましい。これは、最大粒子径の平均を0.1mm以上とすることによって、粒子(X)を人工大理石の模様材として使用した場合に、得られる人工大理石に天然石に似たきらめき感が発現される傾向にあり、50mm以下とすることによって、粒子(X)の原料として得られる雲母片含有樹脂の成形性が良好となり、さらに本発明の人工大理石の耐汚染性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは0.1〜10mmの範囲であり、さらに好ましくは0.2〜7mmの範囲である。
【0023】
本発明の雲母片含有樹脂中における雲母片(B)の含有量は、目的とする特性により適宜選択することができるが、雲母片含有樹脂の総重量を基準にして0.05〜80重量%の範囲であることが好ましい。これは、含有量を0.05重量%以上とすることによって、本発明の雲母片含有樹脂の粉砕物を人工大理石の模様材として使用した場合に、得られる人工大理石に天然石に似たきらめき感が発現される傾向にあり、80重量%以下とすることによって、粒子(X)の原料として得られる雲母片含有樹脂の成形性が良好となる傾向にあるためである。より好ましくは0.1〜60重量%の範囲である。
【0024】
また、必要に応じて雲母片(B)表面をシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ステアリン酸系及びリン酸系表面処理剤等で処理して用いることもできる。これら処理剤は、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0025】
さらに、粒子(X)中には、必要に応じて無機充填材(C)を含有させることができる。無機充填材(C)を含有させることにより、粒子(X)の帯電防止性を向上させることができるとともに、本発明の人工大理石を構成する粒子(X)とマトリックス(Y)との比重の差を容易に低減させることできる。
【0026】
帯電防止性が向上することによって、樹脂の粉砕物の輸送や粉砕工程での静電気の発生が抑えられ、樹脂粒子が装置の壁面等に付着・凝集しにくくなり、比重の差を低減させることによって、特に本発明の人工大理石を注型成形法で製造する場合において、成形品の深さ方向における粒子(X)の片寄りを防ぐことが可能となる。
【0027】
無機充填材(C)としては、ラジカル重合性ビニル化合物(a)に不溶であり、かつ、その重合硬化を妨害しないものであれば特に制限されるものではない。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ、石英、タルク、クレー、硅藻土、石膏、粉末ガラス、モンモリナイト、ベントナイト、ピロフィライト、カオリン、粉末チョーク、大理石、石灰岩、アスベスト、ムライト、硅酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、硅酸カルシウム、硬石膏、α−クリストバライト、アルミナホワイト(一般式[Al2SO4(OH)4・XH2O・2Al(OH)3]n)、エトリンジャイト、粘土と焼成後に色を呈し得る無機物との混合物を焼成して得られた焼成体を粉砕した微粉末等を挙げることができる。これらは、必要に応じて単独あるいは2種以上を併用して使用することができるが、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを使用すると得られる雲母片含有樹脂に優れた難燃性や意匠性を付与することができる傾向にあり好ましい。中でも、水酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0028】
また、必要に応じて、無機充填材(C)の表面をシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ステアリン酸系及びリン酸系表面処理剤等で処理して用いることもできる。これら処理剤は、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0029】
無機充填材(C)の平均粒子径は、通常は0.001〜200μmの範囲であることが好ましい。これは、この範囲において、粒子(X)の原料となる雲母片含有樹脂の成形性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜80μmの範囲である。
【0030】
本発明の粒子(X)中における無機充填材(C)の含有量は、目的とする特性により適宜選択することができるが、粒子(X)の総重量を基準にして10〜80重量%の範囲であることが好ましい。これは、無機充填材(C)の含有量を10重量%以上とすることによって、得られる雲母片含有樹脂の帯電防止性や硬度、耐熱性、難燃性等が良好となる傾向にあり、80重量%以下とすることによって、得られる雲母片含有樹脂の透明性や強度等が良好となる傾向にあるためである。
【0031】
好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜70重量%の範囲である。
【0032】
さらに、雲母片(B)と無機充填材(C)との合計が、粒子(X)の総重量を基準にして25〜75重量%の範囲であることが好ましく、無機充填材(C)/雲母片(B)の重量比が1000以下であることが好ましい。より好ましくは700以下である。
【0033】
粒子(X)は、本発明の人工大理石の模様材として使用されるものである。本発明の人工大理石に天然石により近い外観を付与させるためには、粒子(X)は、不透明から透明まで様々な透明感を有するものであることが好ましい。
【0034】
特に、透明性の高い粒子(X)を得るためには、粒子(X)を構成するビニル系重合体(A)の室温における屈折率と、無機充填材(C)の室温における屈折率との差を±0.02以内に調整する必要がある。
【0035】
この場合、ラジカル重合性ビニル化合物(a)として前記に列挙した化合物のうち、芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリレート、さらに好ましくはスチレンと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
【0036】
これは、室温での屈折率が前記範囲内であるビニル系重合体(A)を得やすい傾向にあり、また、粒子(X)を人工大理石の模様材として使用する場合において、粒子(X)が人工大理石製造時に溶解、膨潤して粒子(X)の境界がぼやけることによって、人工大理石の外観が損なわれることを防ぐことができる傾向にあるためである。必要に応じて、その他のラジカル重合性ビニル化合物を併用することもできる。
【0037】
さらに、多官能(メタ)アクリレートとして、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンのような、硬化物の室温での屈折率が1.55以上のものを用いることにより、ビニル系重合体(A)の室温での屈折率を上記範囲内に保ったまま、ラジカル重合性ビニル化合物(a)の組成を粒子(X)に対する要求性能(硬度、強度、耐溶剤性、寸法安定性等)に応じて、ある程度自由に選択することが可能となり、より好ましい。
【0038】
粒子(X)は、本発明の人工大理石の模様材として使用されるものであるため、染料、顔料等の着色剤を含有させることによって、様々な色を付与させることが好ましい。
【0039】
また、必要に応じて、難燃剤、強化材、紫外線吸収剤、熱安定剤、離型剤、沈降防止剤等の添加剤を粒子(X)に含有させることができる。
【0040】
粒子(X)は、前記のラジカル重合性ビニル化合物(a)、雲母片(B)、及び必要に応じて無機充填材(C)を含有する混合物を成形硬化し、さらにそれを粉砕することによって得られるものである。この場合、ラジカル重合性ビニル化合物(a)としては、前記の単量体成分と重合体成分から構成される重合性シラップであってもよい。
【0041】
重合性シラップとしては、前記単量体成分に重合体成分を混合したものでも良く、単量体成分の一部を部分的に重合させたものでも良い。
【0042】
本発明の粒子(X)を構成する、前記のラジカル重合性ビニル化合物(a)、雲母片(B)、及び必要に応じて無機充填材(C)を含有する混合物を得る方法(添加順序、混練方法等)には特に制限はなく、各成分及び必要に応じてその他の成分を添加して、高速撹拌機や混練ロール、ニーダー等公知の混合・混練機器を用いて均一に混練することにより得ることができる。
【0043】
また、粒子(X)の製造方法にも特に制限はなく、注型成形法、加圧成形法、押し出し成形法、トランスファー成形法等を用いて成形した後に重合硬化させた雲母片含有樹脂を粉砕することよって得ることができる。
【0044】
本発明の粒子(X)の重合硬化方法としては特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下又は非存在下に加熱する方法、ラジカル重合開始剤と促進剤からなるいわゆるレドックス系による方法等の任意の方法で行うことができる。2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の有機過酸化物及びこれらのレドックス系の重合開始剤等はそのような開始剤の例であり、これらを単独、あるいは二種類以上を併用して使用することができる。重合開始剤が有機過酸化物の場合は、重合促進剤として第三級アミンを用いることもできる。また、例えばt−ブチルパーオキシマレイン酸等の飽和第三級アルキルパーオキシマレイン酸と塩基性金属化合物を反応させたマレイン酸のヘミパーエステル類に、重合促進剤として水、エチレングリコールジメルカプトアセテート等のメルカプタン化合物、硫黄のオキソ酸塩またはその遊酸塩である硫黄活性剤等を組み合わせた系も用いることができる。これらの重合開始剤系は、製造者が所望する重合硬化条件(温度、時間、コスト等)によって適宜選択することができる。
【0045】
本発明の粒子(X)の原料となる雲母片含有樹脂の注型成形法を例示すると、まず前記の方法により注型用混合物を製造し、周辺をガスケットでシールし、対向させた二枚の無機ガラス板または金属板の間に、この混合物を注入して加熱する方法(セルキャスト法)や、同一方向に同一速度で進行する二枚の金属製エンドレスベルトとガスケットとでシールされた空間、あるいは一枚の金属製エンドレスベルトと一枚の樹脂フィルムとガスケットとでシールされた空間の上流から、連続的に注入して加熱する方法(連続キャスト法)等によって成形することができる。この際、成形物の離型性、意匠性等を考慮して、無機ガラス板や金属板の表面を、ポリビニルアルコールやポリエステル等の樹脂フィルムで覆って成形することもできる。
【0046】
また、本発明の粒子(X)の原料となる雲母片含有樹脂の加熱・加圧成形法を例示すると、まず前記の方法により加熱・加圧成形用混合物を製造し、これを成形型内に充填し、これを加熱・加圧硬化させる。加熱温度としては、通常60〜180℃、好ましくは80〜150℃の範囲が望ましい。また、加圧条件としては10〜500kg/cm2、好ましくは20〜250kg/cm2の範囲である。
【0047】
上記した方法により得られた雲母片含有樹脂は、天然石に似たきらめき感を有しており、該樹脂の粉砕することによって得られる粒子(X)を人工大理石の模様材として使用した場合、該人工大理石外観を天然石に酷似した非常に優美なものとすることができる。
【0048】
上記した方法により得た雲母片含有樹脂は、機械的に粉砕して所望の大きさの粒子(X)にする。粉砕物の大きさは、大きい程、より天然石に近い外観を人工大理石に与える傾向にある。しかし、粒子(X)を分散させた人工大理石は、粒子(X)の粒子径の半分の深さを表面研削した場合に、人工大理石表面に粒子(X)が引き出て、より天然石に近い外観が得られるので、粒子(X)の大きさが小さい程、表面研削は容易になる。このことから粒子(X)の大きさは、粒子径0.2〜10mm程度が好ましい。
【0049】
雲母片含有樹脂の粉砕方法としてはボールミル、ロッドミル、塔式磨砕機、振動ミル、ブレーキクラッシャー、ハンマーミル、ジェットミル、流動粉砕等の粉砕方法が使用できる。粉砕されて得られる粒子(X)は角張っており、人工大理石に自然に近い外観をもたらす。
【0050】
人工大理石中の粒子(X)の含有量は、目的とする人工大理石の特性(特に表面外観)に応じて適宜選択することができるが、通常、人工大理石の総重量を基準にして、0.5〜80重量%、好ましくは2〜60重量%の範囲で使用される。粉砕物の含有量を0.5重量%以上とすることによって、天然石調模様の意匠性が良好になり、含有量が80重量%以下の場合おいて、天然石調模様の意匠性が良好になり、また強度等の特性が良好になる傾向にある。
【0051】
また、本発明で使用される粒子(X)は、意匠性のある透明感を有していることが必要となる場合がある。この場合、粒子(X)において、雲母片(B)を除いた部分の全光線透過率が70%以上(ASTM D1003に準じて厚さ0.3mmのシートで測定したときの値)であることが好ましい。より好ましくは80%以上である。全光線透過率を70%以上とすることによって、粒子(X)の透明性が充分となり、天然石に酷似した外観を人工大理石に付与することができる傾向にある。
【0052】
さらに、本発明の粒子(X)としては、その静電気帯電量が小さいものが好ましく、JIS K6911に準じて表面抵抗値を測定したときの値が1.0×1015Ω以下であることが好ましい。これは、表面抵抗値を1.0×1015Ω以下とすることによって、粒子(X)の輸送や粉砕工程で静電気が発生しにくくなることに伴って、粒子(X)が装置の壁面等に付着・凝集しにくくなる傾向にあるためである。
【0053】
本発明の人工大理石は、前記の粒子(X)がビニル系重合体(D)と無機充填材(E)とを含有するマトリックス(Y)中に分散されているものであり、これによって、人工大理石本来の特徴を損なわずに、天然石に似たきらめき感が付与されるものである。
【0054】
ビニル系重合体(D)は、単量体成分や重合体成分から構成される重合性シラップ(d)を構成成分とするものである。この重合性シラップ(d)としては、例えば、前記のラジカル重合性ビニル化合物(a)を適宜選択して使用することができ、相溶し且つ共重合し得る2種以上の化合物を混合して用いることもできるが、中でも(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特にメチルメタクリレートが好ましい。
【0055】
この場合、重合性シラップ(d)の構成成分としては、1種以上の(メタ)アクリル酸エステルが全体の50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。更に、単量体の一部を予め部分的に重合させたものを用いることもできる。また、必要に応じて、多官能(メタ)アクリレートを架橋剤として使用することもできる。
【0056】
マトリックス(Y)中におけるビニル系重合体(D)の含有量は、得られる人工大理石の要求性能に応じて適宜選択することができるが、15〜80重量%、好ましくは25〜55重量%の範囲が好ましい。
【0057】
マトリックス(Y)中に含有される無機充填材(E)としては、例えば、前記の無機充填材(C)から適宜選択して使用することができるが、中でも、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0058】
無機充填材(E)としては、通常、平均粒子径が1〜200μmの範囲のものが使用される。これは、平均粒子径を1μm以上とすることによって成形性が良好となり、得られる成形品の意匠性が人工大理石特有なものとなる傾向にあり、200μm以下とすることによって無機充填材(E)がマトリックス(Y)中に均一に分散される傾向にあるためである。好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜80μmの範囲である。
【0059】
マトリックス(Y)中における無機充填材(E)の含有量は、得られる人工大理石の要求性能に応じて適宜選択することができるが、20〜85重量%の範囲が好ましい。
【0060】
これは、無機充填材(E)の含有量を20重量%以上とすることによって、人工大理石特有の優れた意匠性が得られ、また、硬度や耐熱性、難燃性等に優れる傾向にあり、85重量%以下とすることによって、得られる人工大理石の意匠性や強度等に優れる傾向にあるためである。好ましくは45〜75重量%の範囲である。
【0061】
また、マトリックス(Y)は、粒子(X)を分散させたときに、意匠性を有するコントラストを与える程度に、粒子(X)と透明感が異なることが好ましい。その好ましい状態としては、ASTM D1003に準じて厚さ0.3mmのシートで全光線透過率を測定したときの値が、粒子(X)の全光線透過率より1%以上の差があることである。マトリックス(Y)と粒子(X)の全光線透過率の差が1%以上とすることによって、マトリックス(Y)と粒子(X)とのコントラストが大きくなり、得られる人工大理石の外観が天然石と酷似したものとなる傾向にある。
【0062】
本発明の人工大理石は、重合性シラップ(d)、無機充填材(C)、及び粒子(X)を含有する混合物を成形硬化することによって製造されるものである。
【0063】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、難燃剤、着色剤、強化材、紫外線吸収剤、熱安定剤、離型剤、顔料、沈降防止剤等の添加剤を混合物中に配合することができる。
【0064】
粒子(X)を含有する人工大理石用混合物を得る方法(添加順序、混練方法等)としては特に制限はなく、粒子(X)を製造する場合と同様に、各成分及び必要に応じてその他の成分を添加して、高速撹拌機や混練ロール、ニーダー等公知の混合・混練機器を用いて均一に混練することにより得ることができる。
【0065】
この人工大理石用混合物の重合硬化方法としては特に制限はなく、例えば、前記の粒子(X)を製造する方法と同様な方法を挙げることができる。
【0066】
また、人工大理石の成形方法も特に制限はなく、前記の本発明の雲母片含有樹脂を製造する場合と同様に、注型成形法、加圧成形法、押し出し成形法、トランスファー成形法等の各種成形法が適用でき、これらを用いて成形した後、重合硬化させることにより目的とする人工大理石を得ることができる。
【0067】
なお、加圧成形法、射出成形法、及びトランスファー成形法を適用する場合には、成形される物品の金型形状、使用される人工大理石用組成物の物性により、成形温度は70〜180℃、好ましくは80〜150℃、成形圧力は20〜500kg/cm2、好ましくは20〜250kg/cm2、成形時間は1〜30分間、好ましくは2〜20分間の範囲で選択することができる。また重合に伴い体積収縮が起きやすいので、使用する金型には、体積収縮に伴ってキャビティーの体積を厚み方向に減少させ得る構造であることが好ましい。
【0068】
粒子(X)が分散した人工大理石は、表面を研削することにより表面に現れる粒子(X)の大きさが大きくなり、より天然石に近い外観を与える。そのためには、粒子(X)のうち最大なものの粒子径の少なくとも半分以上の深さで、その表面を研削するのが好ましい。
【0069】
さらに好ましくは、人工大理石表面の光沢を上げることによって、粒子(X)とマトリックス(Y)とのコントラストが大きくなり、粒子(X)の存在感が高まり、より一層意匠性を高めることができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。以下の実施例において「部」は特記のない限り「重量部」を意味する。なお評価方法は以下の通りである。
・外観:目視により評価した。
・全光線透過率:ヘーズメータ(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を使用して、ASTM D1003に準じて厚さ0.3mmのシートを用いて測定した。
・表面抵抗値:ULTRA MEGOHMMETER(東亜電波工業(株)製、SM−10E)を使用して、JIS K6911に準じて測定した。
【0071】
[参考例1](粒子(X−1)の製造)
スチレン70部、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(新中村化学(株)製、商品名:BPE−80N)(以下、BPE−80Nと略す)30部の混合モノマー溶液を予め重合率20重量%にまで予備重合した混合シラップに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、AVNと略す)3部を溶解させた。なお、この混合シラップの硬化物の室温での屈折率は1.58であった。
【0072】
次いで、該混合シラップ40部に対して、水酸化アルミニウム(以下、ATHと略す)(日本軽金属(株)製、商品名:BW103、屈折率:1.57)57部、雲母片((株)山口雲母工業所製、商品名:C−113)(以下、MICAと略す)3部を添加、撹拌機で混合して鋳込み原料を調製した。この鋳込み原料中には、ATHが57重量%、MICAが3重量%配合されている。
【0073】
調製した鋳込み原料を減圧にして溶存空気を除去した後、これをガスケット及び2枚のステンレス製鋼板(ポリエステルフィルムで表面を覆ったもの)により形成され、あらかじめ厚さ3mmになるように設定されたセル中に注いだ。その後、80℃において4時間、120℃において2時間重合を行い、透明性良好できらめき感を有する雲母片含有樹脂成形品を得た。
【0074】
なお、この成形品の表面抵抗値は1.2×1012Ωであった。
【0075】
また、この成形品のMICAを除いた部分の全光線透過率を測定するために、MICAを入れずに、前述と同様の方法で0.3mm厚の成形品を作製して全光線透過率を測定すると90%であった。
【0076】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径5〜0.2mmの透明な粒子(X−1)を作製した。この際、粒子(X−1)は粉砕機やふるいの壁面に付着することはなく、粒子(X−1)に静電気が帯電している様子はみられなかった。
【0077】
粒子(X−1)の組成及び物性値を表1に示す。
【0078】
[参考例2](粒子(X−2)の製造)
参考例1で用いたのと同じ鋳込み原料100部にアクリル樹脂用黒トナー(大日精化工業(株)製、商品名:AT−854)2部を添加すること以外は、参考例1と同様にして透明できらめき感を有する黒色成形品を得た。
【0079】
なお、この混合シラップの硬化物の室温での屈折率は1.58であり、また成形品の表面抵抗値は1.3×1012Ωであった。
【0080】
この成形品のMICAを除いた部分の0.3mm厚での全光線透過率は72%であった。
【0081】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径3〜0.2mmの黒色透明な粒子(X−2)を作製した。この際、粒子(X−2)は粉砕機やふるいの壁面に付着することはなく、粒子(X−2)に静電気が帯電している様子は見られなかった。
【0082】
粒子(X−2)の組成及び物性値を表1に示す。
【0083】
[参考例3](粒子(X−3)の製造)
メチルメタクリレート(以下、MMAと略す)97部、エチレングリコールジメタクリレート(以下、EDMAと略す)3部の混合モノマー溶液を予め重合率20重量%にまで予備重合した混合シラップにAVN3部を溶解させた。なお、この混合シラップの硬化物の室温での屈折率は1.49であった。
【0084】
次いで、該混合シラップ97部に対して、MICA3部を添加、撹拌機で混合して鋳込み原料を調製した。この鋳込み原料中には、MICAが3重量%配合されている。
【0085】
調製した鋳込み原料を、参考例1と同様にして成形・重合硬化して、透明性良好できらめき感を有する成形品を得た。
【0086】
なお、この成形品の表面抵抗値は、1.0×1015Ωであった。
【0087】
また、この成形品のMICAを除いた部分の全光線透過率を測定するために、MICAを入れずに、前述と同様の方法で0.3mm厚の成形品を作製して全光線透過率を測定すると99%であった。
【0088】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径5〜0.2mmの透明な粒子(X−3)を作製した。
【0089】
粒子(X−3)の組成及び物性値を表1に示す。
【0090】
[参考例4](粒子(X−4)の製造)
混合モノマー溶液として、MMA97部、EDMA3部の混合モノマー溶液を用いて調製した鋳込み原料100部に、白色顔料(ハーウィックケミカルコーポレション製、商品名:Stan−Tone White)2部を添加したこと以外は、参考例1と同様にして半透明性できらめき感を有する成形品を得た。
【0091】
なお、混合モノマー溶液の硬化物の室温での屈折率は1.49であり、成形品の表面抵抗値は1.5×1012Ωであった。
【0092】
また、この成形品のMICAを除いた部分の0.3mm厚での全光線透過率は32%であった。
【0093】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径5〜0.2mmの半透明な粒子(X−4)を作製した。この際、粒子(X−4)は粉砕機やふるいの壁面に付着することはなく、粒子(X−4)に静電気が帯電している様子は見られなかった。
【0094】
粒子(X−4)の組成及び物性値を表1に示す。
【0095】
[参考例5〜8](粒子(X−5)〜(X−8)の製造)
成形品中にMICAを含まないこと以外は参考例1〜4と同様にして、それぞれMICAを含まない透明な粒子(X−5)、粒子(X−7)、黒色透明な粒子(X−6)、及び半透明な粒子(X−8)を得た。
【0096】
各粒子の組成及び物性値を表1に示す。
【0097】
[参考例9](粒子(X−9)の製造)
スチレン70部、BPE−80N30部の混合モノマー溶液を予め重合率20重量%にまで予備重合した混合シラップにAVN3部を溶解させた。なお、この混合シラップの硬化物の室温での屈折率は1.58であった。
【0098】
次いで、該混合シラップ40部に対して、ATH57部、MICA3部、沈降防止剤として不定形シリカ微粒子(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300)0.5部を添加、撹拌機で混合して鋳込み原料を調製した。この鋳込み原料中には、ATHが57重量%、MICAが3重量%配合されている。
【0099】
調製した鋳込み原料を、参考例1と同様にして成形・重合硬化して、透明性良好できらめき感を有する成形品を得た。
【0100】
またこの成形品のMICAを除いた部分の全光線透過率を測定するために、MICAを入れずに、前述と同様の方法で0.3mm厚の成形品を作製して全光線透過率を測定すると98%であった。
【0101】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径5〜0.2mmの透明な粒子(X−9)を作製した。
【0102】
粒子(X−9)の組成及び物性値を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
1)MMA:メチルメタクリレート
2)EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
3)BPE−80N:2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(新中村化学(株)製、商品名:BPE−80N)
4)ATH:水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製、商品名:BW103)
5)MICA:雲母片((株)山口雲母工業所製、商品名:C−113)
6)黒色トナー:アクリル樹脂用黒トナー(大日精化工業(株)製、商品名:AT−854)
7)白色顔料:ハーウィックケミカルコーポレーション製、商品名:Stan−Tone White
8)シリカ微粒子:不定形シリカ微粒子(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300)
[実施例1]
MMA17部に、予め重合率20重量%にまで予備重合したMMAシラップ15部、EDMA0.15部、AVN0.1部を溶解させた後、ATH(日本軽金属(株)製、商品名:BW53)47部、白色顔料(ハーウィックケミカルコーポレーション製、商品名:Stan−Tone White)0.9部、参考例1で得た透明粒子(X−1)8部、参考例2で得た黒色透明粒子(X−2)3部、参考例3で得た透明粒子(X−3)5部、参考例4で得た半透明粒子(X−4)5部を添加、撹拌機で混合して鋳込み原料を調製した。
【0105】
調製した鋳込み原料を参考例1と同様にして成形、重合硬化して、各粒子がシート表面、深さ方向に均一に分散した人工大理石を得た。この人工大理石は、従来の人工大理石よりも天然石に近い外観を有し、非常に意匠性の高いものであった。
【0106】
なお、この人工大理石のマトリックス部分の全光線透過率を測定するために、各粒子(X−1)、(X−2)、(X−3)、(X−4)を入れずに、前述と同様の方法で人工大理石を作製し、全光線透過率を測定すると42%であった。
【0107】
各粒子(X−1)、(X−2)、(X−3)、(X−4)が分散した人工大理石の表面を、木工用プレーナーで約0.5mmの深さに削った後、600番サンドペーパーで表面研磨した。
【0108】
表面研削・研磨する前は、人工大理石の表面に見える各粒子の大きさは実際の半分以下であり、かつ、ぼやけて見えたが、表面研削・研磨後は、表面に見える透明粒子の大きさは実際の粒子径と同程度であり、且つ鮮明に見え、天然石により近い外観を出すことができた。
【0109】
さらに、800番サンドペーパーで研磨した後、研磨用コンパウンドで鏡面まで磨くと、各粒子とマトリックスとのコントラストが大きくなり、より意匠性に優れた人工大理石に加工することができた。
【0110】
[実施例2]
黒色透明粒子(X−2)の代わりに参考例6で得た黒色透明粒子(X−6)、半透明粒子(X−4)の代わりに参考例8で得た半透明粒子(X−8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして人工大理石を得た。この人工大理石は、従来の人工大理石よりも天然石に近い外観を有し、意匠性の高いものであった。
【0111】
さらに、実施例1と同様に表面研削・研磨を施すことにより、各粒子とマトリックスとのコントラストがより大きくなり、より意匠性に優れた人工大理石に加工することができた。
【0112】
[実施例3]
透明粒子(X−1)の代わりに参考例9で得た透明粒子(X−9)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして人工大理石を得た。この人工大理石は、従来の人工大理石よりも天然石に近い外観を有し、意匠性の高いものであった。
【0113】
更に実施例1と同様に表面研削・研磨を施すことにより、各粒子とマトリックスとのコントラストがより大きくなり、より意匠性に優れた人工大理石に加工することができた。
【0114】
[比較例1]
透明粒子(X−1)の代わりに参考例5得た透明粒子(X−5)、黒色透明粒子(X−2)の代わりに参考例6で得た黒色透明粒子(X−6)、透明粒子(X−3)の代わりに参考例7で得た透明粒子(X−7)、半透明粒子(X−4)の代わりに参考例8で得た半透明粒子(X−8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして人工大理石を得た。しかしその外観はきらめき感のない均一な粒子が分散しているのみで、従来の石目調人工大理石とほとんど相違なく、天然石の外観とは異なるものであった。
【0115】
さらに、実施例1と同様に表面研削・研磨を施したが、従来の人工大理石と比較して新規な外観は得られなかった。
【0116】
[比較例2]
鋳込み原料として、MMA33部に、予め重合率20重量%にまで予備重合したMMAシラップ15部、EDMA0.15部、AVN0.1部を溶解させた後、ATH(日本軽金属(株)製、商品名:BW53)47部、白色顔料(ハーウィックケミカルコーポレーション製、商品名:Stan−Tone White)0.9部、MICA5部の鋳込み原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして人工大理石を得た。
【0117】
しかし、その外観はMICAによりきらめき感はあるものの平面的で奥行き感に欠け、従来の石目調人工大理石の外観と殆ど相違ないものであった。
【0118】
更に実施例1と同様に表面研削・研磨を施したが、従来の人工大理石と比較して新規な外観は得られなかった。
【0119】
【表2】
【0120】
9)MMA:メチルメタクリレート
10)MMAシラップ:予め重合率20重量%にまで予備重合したMMAシラップ
11)EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
12)ATH:水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製、商品名:BW53)
13)白色顔料:ハーウィックケミカルコーポレーション製、商品名:Stan−Tone White
14)MICA:雲母片((株)山口雲母工業所製、商品名:C−113)
15)マトリックス(Y)の全透:参考例で得た粒子(比較例2の場合はMICA)を入れずに同様の方法で作製した人工大理石の全光線透過率
【0121】
【発明の効果】
本発明の人工大理石は、きらめき感を有する粒子が分散しており、その外観は奥行き感があり、天然石に酷似した非常に優美なものであるだけでなく、アクリル系人工大理石の本来の特徴(施工・加工性、メンテナンスの容易さ等)を維持している。よって、本発明の人工大理石は、施工・加工性が特に要求されるカウンターやキッチン家具の天板や床板等に特に有用である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、雲母片を含有した粒子を分散させた天然石調模様の人工大理石及びその製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
天然石は、その優雅さから壁材、床材、各種天板等として古くから使用されているが、重量が重くまた硬いことから施工・加工が難しく、また表面が多孔質であるので汚れを除去しにくい、長尺物の入手が難しい、継ぎ目ができる等の欠点を有する。
【0003】
これらの欠点を改良するために、従来から人工大理石等の天然石調の樹脂成形品が開発されており、優美な質感、優れた強度及び耐候性、施工・加工の容易性等から、サニタリー分野を中心に、その使用量は年々増加している。
【0004】
天然石調樹脂成形品としては、メラミン化粧板、表面のみ模様出しを施したゲルコート人工大理石、アクリル系人工大理石、ポリエステル系人工大理石等がある。これらは天然大理石に比べて軽量で無孔質であるが、前記のメラミン化粧板やゲルコート人工大理石は、表面のみの模様出しであるために加工・補修が困難であり、また衝撃に弱い等の欠点を有する。
【0005】
一方、アクリル系人工大理石及びポリエステル系人工大理石は、ソリッド材特有の優美な質感を有し、特にアクリル系人工大理石は、容易な加工性、優れた強度や耐衝撃性、耐候性を有する等の多くの長所を有している。
【0006】
天然石調模様のアクリル系、ポリエステル系人工大理石としては、例えば、石英、ガラス、孔雀石、大理石、黒曜石等の砕石、あるいはABS樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂等の樹脂粉砕物からなる透明/半透明/不透明粒子を分散させた人工大理石が特公昭61−24357号公報等に提案されている。
【0007】
しかし、石英やガラス等の硬質物からなる粒子を使用した人工大理石は、加工性に劣る傾向にあり、特に、表面研削や切断がうまくいかないことが多く、時には加工機を破損することもある。
【0008】
そこで、このような問題点を解決するため、樹脂組成物(不飽和ポリエステル−スチレン共重合体やメタクリル酸ベンジル−エチレングリコールジメタクリレート共重合体)と水酸化アルミニウム等の軟質の無機充填物とからなる有機−無機複合透明粒子が特開平5−279575号公報等に提案されている。
【0009】
しかし、これらの透明粒子は透明性が不十分であり、該透明粒子を分散させた人工大理石の外観は、天然石に酷似した優美なものではなく、特にきらめき感が天然石とは異なる傾向にある。
【0010】
これに対して、天然石に似たきらめき感を再現する目的で、例えば、特開昭59−171612号公報、特開昭62−27363号公報、特開平6−172001号公報には、雲母を人工大理石の充填材や模様材として用いることが開示されている。
【0011】
さらに、特開平6−322143号公報には、雲母粒子と結晶質熱可塑性樹脂とからなる有機−無機複合粒子を、人工大理石の模様材として用いることが開示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、特開昭59−171612号公報、特開昭62−27363号公報、及び特開平6−172001号公報に開示されている人工大理石は、重合体と無機充填材とからなるマトリックスにフレーク状の雲母が直接配合されているため、外観が平面的で奥行き感に欠け、やはり天然石とは異なった質感となるという問題点を有していた。また、特開平6−322143号公報に開示された有機−無機複合粒子は、結晶質熱可塑性樹脂であるために硬度が高く、人工大理石に成形した際の加工性が低下するという問題点を有していた。特に、成形後の人工大理石の表面を研磨する場合には、樹脂と無機充填材とからなるマトリックスと複合粒子の硬度の差が大きいために、表面を平滑に仕上げることが困難であった。
【0013】
このように、人工大理石が本来持っている特徴、すなわち均質で無孔質なソリッド材、硬質木材と同等の施工・加工性、メンテナンスの容易さ、耐衝撃性、耐候性、難燃性等を維持したまま、きらめき感を有し天然石に酷似した外観を持つ人工大理石は知られていなかった。
【0014】
本発明の目的は、人工大理石本来の特徴を損なわずに、天然石に似たきらめき感を付与する人工大理石用模様材、及びこれを用いた人工大理石を提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、雲母片を含有する重合体粒子が分散している人工大理石が、天然石に酷似した外観を有することを見いだし、本発明を完成させた。
【0016】
すなわち、本発明は、ビニル系重合体(A)と雲母片(B)とを含有する粒子(X)が、ビニル系重合体(D)と無機充填材(E)とを含有するマトリックス(Y)中に分散されていることを特徴とする人工大理石に関するものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
粒子(X)を構成するビニル系重合体(A)は、ラジカル重合性ビニル化合物(a)を構成成分とするものである。
【0018】
ラジカル重合性ビニル化合物(a)としては、必要に応じて適宜選択して使用されるものであり、特に限定されるものではない。具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリル酸等の不飽和カルボン酸;無水マレイン酸、無水イタコン酸等の酸無水物;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド誘導体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有単量体;酢酸ビニル、安息香酸ビニル等のビニルエステル類;塩化ビニル、塩化ビニリデン及びそれらの誘導体;(メタ)アクリルアミド、アクリロニトリル等の窒素含有単量体;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有単量体;スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン等の分子中にエチレン性不飽和結合を有する芳香族ビニル化合物、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジメチロールエタンジ(メタ)アクリレート、1,1−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、2,2−ジメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン、アリール(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレートや、ジビニルベンゼン、ブタジエン等の分子中に2個以上のエチレン性不飽和結合を有する化合物;エチレン系不飽和ポリカルボン酸を含む少なくとも1種の多価カルボン酸と少なくとも1種のジオール類とから誘導された不飽和ポリエステルプレポリマー;エポキシ基の末端をアクリル変性することにより誘導されるビニルエステルプレポリマー等を挙げることができる。
【0019】
これらは、単独あるいは2種以上を併用して使用することができ、さらに、必要に応じて単量体の一部を予め部分的に重合させたものを使用することもでき、前記単量体から構成される他の重合体成分を使用することもできる。
【0020】
なお、粒子(X)の重合体成分として、ポリアミド、ポリアルキレンテレフタレート等の結晶質熱可塑性重合体を用いると、粒子(X)の透明性が低下し、得られる人工大理石の外観が天然石とは異なったものになりやすく、さらに、成形後の人工大理石の表面を研磨する場合には、粒子(X)とマトリックス(Y)との硬度の差が大きくなるために、表面研磨時に凹凸が生じやすくなる傾向にあり好ましくない。
【0021】
粒子(X)におけるビニル系重合体(A)の含有量は、目的とする特性により適宜選択することができるが、粒子(X)の総重量を基準にして20〜99.95重量%の範囲であることが好ましい。これは、ビニル系重合体(A)の含有量を20重量%以上とすることによって、粒子(X)の原料として得られる雲母片含有樹脂の成形性や強度に優れる傾向にあり、99.95重量%以下とすることによって、得られる雲母片含有樹脂の帯電防止性や硬度が良好となる傾向にあるためである。さらに好ましくは40〜99.9重量%の範囲である。
【0022】
粒子(X)に含有される雲母片(B)としては、必要に応じて適宜選択することができ、使用に際して特に制限はないが、雲母片の最大粒子径の平均は、0.1〜50mmの範囲であることが好ましい。これは、最大粒子径の平均を0.1mm以上とすることによって、粒子(X)を人工大理石の模様材として使用した場合に、得られる人工大理石に天然石に似たきらめき感が発現される傾向にあり、50mm以下とすることによって、粒子(X)の原料として得られる雲母片含有樹脂の成形性が良好となり、さらに本発明の人工大理石の耐汚染性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは0.1〜10mmの範囲であり、さらに好ましくは0.2〜7mmの範囲である。
【0023】
本発明の雲母片含有樹脂中における雲母片(B)の含有量は、目的とする特性により適宜選択することができるが、雲母片含有樹脂の総重量を基準にして0.05〜80重量%の範囲であることが好ましい。これは、含有量を0.05重量%以上とすることによって、本発明の雲母片含有樹脂の粉砕物を人工大理石の模様材として使用した場合に、得られる人工大理石に天然石に似たきらめき感が発現される傾向にあり、80重量%以下とすることによって、粒子(X)の原料として得られる雲母片含有樹脂の成形性が良好となる傾向にあるためである。より好ましくは0.1〜60重量%の範囲である。
【0024】
また、必要に応じて雲母片(B)表面をシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ステアリン酸系及びリン酸系表面処理剤等で処理して用いることもできる。これら処理剤は、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0025】
さらに、粒子(X)中には、必要に応じて無機充填材(C)を含有させることができる。無機充填材(C)を含有させることにより、粒子(X)の帯電防止性を向上させることができるとともに、本発明の人工大理石を構成する粒子(X)とマトリックス(Y)との比重の差を容易に低減させることできる。
【0026】
帯電防止性が向上することによって、樹脂の粉砕物の輸送や粉砕工程での静電気の発生が抑えられ、樹脂粒子が装置の壁面等に付着・凝集しにくくなり、比重の差を低減させることによって、特に本発明の人工大理石を注型成形法で製造する場合において、成形品の深さ方向における粒子(X)の片寄りを防ぐことが可能となる。
【0027】
無機充填材(C)としては、ラジカル重合性ビニル化合物(a)に不溶であり、かつ、その重合硬化を妨害しないものであれば特に制限されるものではない。例えば、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化ジルコニウム、アルミナ、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、硫酸バリウム、シリカ、石英、タルク、クレー、硅藻土、石膏、粉末ガラス、モンモリナイト、ベントナイト、ピロフィライト、カオリン、粉末チョーク、大理石、石灰岩、アスベスト、ムライト、硅酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、硅酸カルシウム、硬石膏、α−クリストバライト、アルミナホワイト(一般式[Al2SO4(OH)4・XH2O・2Al(OH)3]n)、エトリンジャイト、粘土と焼成後に色を呈し得る無機物との混合物を焼成して得られた焼成体を粉砕した微粉末等を挙げることができる。これらは、必要に応じて単独あるいは2種以上を併用して使用することができるが、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウムを使用すると得られる雲母片含有樹脂に優れた難燃性や意匠性を付与することができる傾向にあり好ましい。中でも、水酸化アルミニウムが特に好ましい。
【0028】
また、必要に応じて、無機充填材(C)の表面をシラン系カップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミニウム系カップリング剤、ステアリン酸系及びリン酸系表面処理剤等で処理して用いることもできる。これら処理剤は、単独あるいは2種以上を併用して使用することができる。
【0029】
無機充填材(C)の平均粒子径は、通常は0.001〜200μmの範囲であることが好ましい。これは、この範囲において、粒子(X)の原料となる雲母片含有樹脂の成形性が良好となる傾向にあるためである。好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜80μmの範囲である。
【0030】
本発明の粒子(X)中における無機充填材(C)の含有量は、目的とする特性により適宜選択することができるが、粒子(X)の総重量を基準にして10〜80重量%の範囲であることが好ましい。これは、無機充填材(C)の含有量を10重量%以上とすることによって、得られる雲母片含有樹脂の帯電防止性や硬度、耐熱性、難燃性等が良好となる傾向にあり、80重量%以下とすることによって、得られる雲母片含有樹脂の透明性や強度等が良好となる傾向にあるためである。
【0031】
好ましくは20〜70重量%、さらに好ましくは30〜70重量%の範囲である。
【0032】
さらに、雲母片(B)と無機充填材(C)との合計が、粒子(X)の総重量を基準にして25〜75重量%の範囲であることが好ましく、無機充填材(C)/雲母片(B)の重量比が1000以下であることが好ましい。より好ましくは700以下である。
【0033】
粒子(X)は、本発明の人工大理石の模様材として使用されるものである。本発明の人工大理石に天然石により近い外観を付与させるためには、粒子(X)は、不透明から透明まで様々な透明感を有するものであることが好ましい。
【0034】
特に、透明性の高い粒子(X)を得るためには、粒子(X)を構成するビニル系重合体(A)の室温における屈折率と、無機充填材(C)の室温における屈折率との差を±0.02以内に調整する必要がある。
【0035】
この場合、ラジカル重合性ビニル化合物(a)として前記に列挙した化合物のうち、芳香族ビニル化合物と(メタ)アクリレート、さらに好ましくはスチレンと多官能(メタ)アクリレートとを併用することが好ましい。
【0036】
これは、室温での屈折率が前記範囲内であるビニル系重合体(A)を得やすい傾向にあり、また、粒子(X)を人工大理石の模様材として使用する場合において、粒子(X)が人工大理石製造時に溶解、膨潤して粒子(X)の境界がぼやけることによって、人工大理石の外観が損なわれることを防ぐことができる傾向にあるためである。必要に応じて、その他のラジカル重合性ビニル化合物を併用することもできる。
【0037】
さらに、多官能(メタ)アクリレートとして、2,2−ビス(4−(メタ)アクリロキシポリエトキシフェニル)プロパンのような、硬化物の室温での屈折率が1.55以上のものを用いることにより、ビニル系重合体(A)の室温での屈折率を上記範囲内に保ったまま、ラジカル重合性ビニル化合物(a)の組成を粒子(X)に対する要求性能(硬度、強度、耐溶剤性、寸法安定性等)に応じて、ある程度自由に選択することが可能となり、より好ましい。
【0038】
粒子(X)は、本発明の人工大理石の模様材として使用されるものであるため、染料、顔料等の着色剤を含有させることによって、様々な色を付与させることが好ましい。
【0039】
また、必要に応じて、難燃剤、強化材、紫外線吸収剤、熱安定剤、離型剤、沈降防止剤等の添加剤を粒子(X)に含有させることができる。
【0040】
粒子(X)は、前記のラジカル重合性ビニル化合物(a)、雲母片(B)、及び必要に応じて無機充填材(C)を含有する混合物を成形硬化し、さらにそれを粉砕することによって得られるものである。この場合、ラジカル重合性ビニル化合物(a)としては、前記の単量体成分と重合体成分から構成される重合性シラップであってもよい。
【0041】
重合性シラップとしては、前記単量体成分に重合体成分を混合したものでも良く、単量体成分の一部を部分的に重合させたものでも良い。
【0042】
本発明の粒子(X)を構成する、前記のラジカル重合性ビニル化合物(a)、雲母片(B)、及び必要に応じて無機充填材(C)を含有する混合物を得る方法(添加順序、混練方法等)には特に制限はなく、各成分及び必要に応じてその他の成分を添加して、高速撹拌機や混練ロール、ニーダー等公知の混合・混練機器を用いて均一に混練することにより得ることができる。
【0043】
また、粒子(X)の製造方法にも特に制限はなく、注型成形法、加圧成形法、押し出し成形法、トランスファー成形法等を用いて成形した後に重合硬化させた雲母片含有樹脂を粉砕することよって得ることができる。
【0044】
本発明の粒子(X)の重合硬化方法としては特に制限はなく、例えば、ラジカル重合開始剤の存在下又は非存在下に加熱する方法、ラジカル重合開始剤と促進剤からなるいわゆるレドックス系による方法等の任意の方法で行うことができる。2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ化合物、過酸化ベンゾイル、過酸化ラウロイル等の有機過酸化物及びこれらのレドックス系の重合開始剤等はそのような開始剤の例であり、これらを単独、あるいは二種類以上を併用して使用することができる。重合開始剤が有機過酸化物の場合は、重合促進剤として第三級アミンを用いることもできる。また、例えばt−ブチルパーオキシマレイン酸等の飽和第三級アルキルパーオキシマレイン酸と塩基性金属化合物を反応させたマレイン酸のヘミパーエステル類に、重合促進剤として水、エチレングリコールジメルカプトアセテート等のメルカプタン化合物、硫黄のオキソ酸塩またはその遊酸塩である硫黄活性剤等を組み合わせた系も用いることができる。これらの重合開始剤系は、製造者が所望する重合硬化条件(温度、時間、コスト等)によって適宜選択することができる。
【0045】
本発明の粒子(X)の原料となる雲母片含有樹脂の注型成形法を例示すると、まず前記の方法により注型用混合物を製造し、周辺をガスケットでシールし、対向させた二枚の無機ガラス板または金属板の間に、この混合物を注入して加熱する方法(セルキャスト法)や、同一方向に同一速度で進行する二枚の金属製エンドレスベルトとガスケットとでシールされた空間、あるいは一枚の金属製エンドレスベルトと一枚の樹脂フィルムとガスケットとでシールされた空間の上流から、連続的に注入して加熱する方法(連続キャスト法)等によって成形することができる。この際、成形物の離型性、意匠性等を考慮して、無機ガラス板や金属板の表面を、ポリビニルアルコールやポリエステル等の樹脂フィルムで覆って成形することもできる。
【0046】
また、本発明の粒子(X)の原料となる雲母片含有樹脂の加熱・加圧成形法を例示すると、まず前記の方法により加熱・加圧成形用混合物を製造し、これを成形型内に充填し、これを加熱・加圧硬化させる。加熱温度としては、通常60〜180℃、好ましくは80〜150℃の範囲が望ましい。また、加圧条件としては10〜500kg/cm2、好ましくは20〜250kg/cm2の範囲である。
【0047】
上記した方法により得られた雲母片含有樹脂は、天然石に似たきらめき感を有しており、該樹脂の粉砕することによって得られる粒子(X)を人工大理石の模様材として使用した場合、該人工大理石外観を天然石に酷似した非常に優美なものとすることができる。
【0048】
上記した方法により得た雲母片含有樹脂は、機械的に粉砕して所望の大きさの粒子(X)にする。粉砕物の大きさは、大きい程、より天然石に近い外観を人工大理石に与える傾向にある。しかし、粒子(X)を分散させた人工大理石は、粒子(X)の粒子径の半分の深さを表面研削した場合に、人工大理石表面に粒子(X)が引き出て、より天然石に近い外観が得られるので、粒子(X)の大きさが小さい程、表面研削は容易になる。このことから粒子(X)の大きさは、粒子径0.2〜10mm程度が好ましい。
【0049】
雲母片含有樹脂の粉砕方法としてはボールミル、ロッドミル、塔式磨砕機、振動ミル、ブレーキクラッシャー、ハンマーミル、ジェットミル、流動粉砕等の粉砕方法が使用できる。粉砕されて得られる粒子(X)は角張っており、人工大理石に自然に近い外観をもたらす。
【0050】
人工大理石中の粒子(X)の含有量は、目的とする人工大理石の特性(特に表面外観)に応じて適宜選択することができるが、通常、人工大理石の総重量を基準にして、0.5〜80重量%、好ましくは2〜60重量%の範囲で使用される。粉砕物の含有量を0.5重量%以上とすることによって、天然石調模様の意匠性が良好になり、含有量が80重量%以下の場合おいて、天然石調模様の意匠性が良好になり、また強度等の特性が良好になる傾向にある。
【0051】
また、本発明で使用される粒子(X)は、意匠性のある透明感を有していることが必要となる場合がある。この場合、粒子(X)において、雲母片(B)を除いた部分の全光線透過率が70%以上(ASTM D1003に準じて厚さ0.3mmのシートで測定したときの値)であることが好ましい。より好ましくは80%以上である。全光線透過率を70%以上とすることによって、粒子(X)の透明性が充分となり、天然石に酷似した外観を人工大理石に付与することができる傾向にある。
【0052】
さらに、本発明の粒子(X)としては、その静電気帯電量が小さいものが好ましく、JIS K6911に準じて表面抵抗値を測定したときの値が1.0×1015Ω以下であることが好ましい。これは、表面抵抗値を1.0×1015Ω以下とすることによって、粒子(X)の輸送や粉砕工程で静電気が発生しにくくなることに伴って、粒子(X)が装置の壁面等に付着・凝集しにくくなる傾向にあるためである。
【0053】
本発明の人工大理石は、前記の粒子(X)がビニル系重合体(D)と無機充填材(E)とを含有するマトリックス(Y)中に分散されているものであり、これによって、人工大理石本来の特徴を損なわずに、天然石に似たきらめき感が付与されるものである。
【0054】
ビニル系重合体(D)は、単量体成分や重合体成分から構成される重合性シラップ(d)を構成成分とするものである。この重合性シラップ(d)としては、例えば、前記のラジカル重合性ビニル化合物(a)を適宜選択して使用することができ、相溶し且つ共重合し得る2種以上の化合物を混合して用いることもできるが、中でも(メタ)アクリル酸エステルが好ましく、特にメチルメタクリレートが好ましい。
【0055】
この場合、重合性シラップ(d)の構成成分としては、1種以上の(メタ)アクリル酸エステルが全体の50重量%以上であることが好ましく、70重量%以上であることがより好ましい。更に、単量体の一部を予め部分的に重合させたものを用いることもできる。また、必要に応じて、多官能(メタ)アクリレートを架橋剤として使用することもできる。
【0056】
マトリックス(Y)中におけるビニル系重合体(D)の含有量は、得られる人工大理石の要求性能に応じて適宜選択することができるが、15〜80重量%、好ましくは25〜55重量%の範囲が好ましい。
【0057】
マトリックス(Y)中に含有される無機充填材(E)としては、例えば、前記の無機充填材(C)から適宜選択して使用することができるが、中でも、水酸化アルミニウムが好ましい。
【0058】
無機充填材(E)としては、通常、平均粒子径が1〜200μmの範囲のものが使用される。これは、平均粒子径を1μm以上とすることによって成形性が良好となり、得られる成形品の意匠性が人工大理石特有なものとなる傾向にあり、200μm以下とすることによって無機充填材(E)がマトリックス(Y)中に均一に分散される傾向にあるためである。好ましくは1〜100μm、より好ましくは1〜80μmの範囲である。
【0059】
マトリックス(Y)中における無機充填材(E)の含有量は、得られる人工大理石の要求性能に応じて適宜選択することができるが、20〜85重量%の範囲が好ましい。
【0060】
これは、無機充填材(E)の含有量を20重量%以上とすることによって、人工大理石特有の優れた意匠性が得られ、また、硬度や耐熱性、難燃性等に優れる傾向にあり、85重量%以下とすることによって、得られる人工大理石の意匠性や強度等に優れる傾向にあるためである。好ましくは45〜75重量%の範囲である。
【0061】
また、マトリックス(Y)は、粒子(X)を分散させたときに、意匠性を有するコントラストを与える程度に、粒子(X)と透明感が異なることが好ましい。その好ましい状態としては、ASTM D1003に準じて厚さ0.3mmのシートで全光線透過率を測定したときの値が、粒子(X)の全光線透過率より1%以上の差があることである。マトリックス(Y)と粒子(X)の全光線透過率の差が1%以上とすることによって、マトリックス(Y)と粒子(X)とのコントラストが大きくなり、得られる人工大理石の外観が天然石と酷似したものとなる傾向にある。
【0062】
本発明の人工大理石は、重合性シラップ(d)、無機充填材(C)、及び粒子(X)を含有する混合物を成形硬化することによって製造されるものである。
【0063】
さらに、本発明の効果を損なわない範囲で、難燃剤、着色剤、強化材、紫外線吸収剤、熱安定剤、離型剤、顔料、沈降防止剤等の添加剤を混合物中に配合することができる。
【0064】
粒子(X)を含有する人工大理石用混合物を得る方法(添加順序、混練方法等)としては特に制限はなく、粒子(X)を製造する場合と同様に、各成分及び必要に応じてその他の成分を添加して、高速撹拌機や混練ロール、ニーダー等公知の混合・混練機器を用いて均一に混練することにより得ることができる。
【0065】
この人工大理石用混合物の重合硬化方法としては特に制限はなく、例えば、前記の粒子(X)を製造する方法と同様な方法を挙げることができる。
【0066】
また、人工大理石の成形方法も特に制限はなく、前記の本発明の雲母片含有樹脂を製造する場合と同様に、注型成形法、加圧成形法、押し出し成形法、トランスファー成形法等の各種成形法が適用でき、これらを用いて成形した後、重合硬化させることにより目的とする人工大理石を得ることができる。
【0067】
なお、加圧成形法、射出成形法、及びトランスファー成形法を適用する場合には、成形される物品の金型形状、使用される人工大理石用組成物の物性により、成形温度は70〜180℃、好ましくは80〜150℃、成形圧力は20〜500kg/cm2、好ましくは20〜250kg/cm2、成形時間は1〜30分間、好ましくは2〜20分間の範囲で選択することができる。また重合に伴い体積収縮が起きやすいので、使用する金型には、体積収縮に伴ってキャビティーの体積を厚み方向に減少させ得る構造であることが好ましい。
【0068】
粒子(X)が分散した人工大理石は、表面を研削することにより表面に現れる粒子(X)の大きさが大きくなり、より天然石に近い外観を与える。そのためには、粒子(X)のうち最大なものの粒子径の少なくとも半分以上の深さで、その表面を研削するのが好ましい。
【0069】
さらに好ましくは、人工大理石表面の光沢を上げることによって、粒子(X)とマトリックス(Y)とのコントラストが大きくなり、粒子(X)の存在感が高まり、より一層意匠性を高めることができる。
【0070】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらにより何ら制限されるものではない。以下の実施例において「部」は特記のない限り「重量部」を意味する。なお評価方法は以下の通りである。
・外観:目視により評価した。
・全光線透過率:ヘーズメータ(スガ試験機(株)製、HGM−2DP)を使用して、ASTM D1003に準じて厚さ0.3mmのシートを用いて測定した。
・表面抵抗値:ULTRA MEGOHMMETER(東亜電波工業(株)製、SM−10E)を使用して、JIS K6911に準じて測定した。
【0071】
[参考例1](粒子(X−1)の製造)
スチレン70部、2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(新中村化学(株)製、商品名:BPE−80N)(以下、BPE−80Nと略す)30部の混合モノマー溶液を予め重合率20重量%にまで予備重合した混合シラップに2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(以下、AVNと略す)3部を溶解させた。なお、この混合シラップの硬化物の室温での屈折率は1.58であった。
【0072】
次いで、該混合シラップ40部に対して、水酸化アルミニウム(以下、ATHと略す)(日本軽金属(株)製、商品名:BW103、屈折率:1.57)57部、雲母片((株)山口雲母工業所製、商品名:C−113)(以下、MICAと略す)3部を添加、撹拌機で混合して鋳込み原料を調製した。この鋳込み原料中には、ATHが57重量%、MICAが3重量%配合されている。
【0073】
調製した鋳込み原料を減圧にして溶存空気を除去した後、これをガスケット及び2枚のステンレス製鋼板(ポリエステルフィルムで表面を覆ったもの)により形成され、あらかじめ厚さ3mmになるように設定されたセル中に注いだ。その後、80℃において4時間、120℃において2時間重合を行い、透明性良好できらめき感を有する雲母片含有樹脂成形品を得た。
【0074】
なお、この成形品の表面抵抗値は1.2×1012Ωであった。
【0075】
また、この成形品のMICAを除いた部分の全光線透過率を測定するために、MICAを入れずに、前述と同様の方法で0.3mm厚の成形品を作製して全光線透過率を測定すると90%であった。
【0076】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径5〜0.2mmの透明な粒子(X−1)を作製した。この際、粒子(X−1)は粉砕機やふるいの壁面に付着することはなく、粒子(X−1)に静電気が帯電している様子はみられなかった。
【0077】
粒子(X−1)の組成及び物性値を表1に示す。
【0078】
[参考例2](粒子(X−2)の製造)
参考例1で用いたのと同じ鋳込み原料100部にアクリル樹脂用黒トナー(大日精化工業(株)製、商品名:AT−854)2部を添加すること以外は、参考例1と同様にして透明できらめき感を有する黒色成形品を得た。
【0079】
なお、この混合シラップの硬化物の室温での屈折率は1.58であり、また成形品の表面抵抗値は1.3×1012Ωであった。
【0080】
この成形品のMICAを除いた部分の0.3mm厚での全光線透過率は72%であった。
【0081】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径3〜0.2mmの黒色透明な粒子(X−2)を作製した。この際、粒子(X−2)は粉砕機やふるいの壁面に付着することはなく、粒子(X−2)に静電気が帯電している様子は見られなかった。
【0082】
粒子(X−2)の組成及び物性値を表1に示す。
【0083】
[参考例3](粒子(X−3)の製造)
メチルメタクリレート(以下、MMAと略す)97部、エチレングリコールジメタクリレート(以下、EDMAと略す)3部の混合モノマー溶液を予め重合率20重量%にまで予備重合した混合シラップにAVN3部を溶解させた。なお、この混合シラップの硬化物の室温での屈折率は1.49であった。
【0084】
次いで、該混合シラップ97部に対して、MICA3部を添加、撹拌機で混合して鋳込み原料を調製した。この鋳込み原料中には、MICAが3重量%配合されている。
【0085】
調製した鋳込み原料を、参考例1と同様にして成形・重合硬化して、透明性良好できらめき感を有する成形品を得た。
【0086】
なお、この成形品の表面抵抗値は、1.0×1015Ωであった。
【0087】
また、この成形品のMICAを除いた部分の全光線透過率を測定するために、MICAを入れずに、前述と同様の方法で0.3mm厚の成形品を作製して全光線透過率を測定すると99%であった。
【0088】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径5〜0.2mmの透明な粒子(X−3)を作製した。
【0089】
粒子(X−3)の組成及び物性値を表1に示す。
【0090】
[参考例4](粒子(X−4)の製造)
混合モノマー溶液として、MMA97部、EDMA3部の混合モノマー溶液を用いて調製した鋳込み原料100部に、白色顔料(ハーウィックケミカルコーポレション製、商品名:Stan−Tone White)2部を添加したこと以外は、参考例1と同様にして半透明性できらめき感を有する成形品を得た。
【0091】
なお、混合モノマー溶液の硬化物の室温での屈折率は1.49であり、成形品の表面抵抗値は1.5×1012Ωであった。
【0092】
また、この成形品のMICAを除いた部分の0.3mm厚での全光線透過率は32%であった。
【0093】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径5〜0.2mmの半透明な粒子(X−4)を作製した。この際、粒子(X−4)は粉砕機やふるいの壁面に付着することはなく、粒子(X−4)に静電気が帯電している様子は見られなかった。
【0094】
粒子(X−4)の組成及び物性値を表1に示す。
【0095】
[参考例5〜8](粒子(X−5)〜(X−8)の製造)
成形品中にMICAを含まないこと以外は参考例1〜4と同様にして、それぞれMICAを含まない透明な粒子(X−5)、粒子(X−7)、黒色透明な粒子(X−6)、及び半透明な粒子(X−8)を得た。
【0096】
各粒子の組成及び物性値を表1に示す。
【0097】
[参考例9](粒子(X−9)の製造)
スチレン70部、BPE−80N30部の混合モノマー溶液を予め重合率20重量%にまで予備重合した混合シラップにAVN3部を溶解させた。なお、この混合シラップの硬化物の室温での屈折率は1.58であった。
【0098】
次いで、該混合シラップ40部に対して、ATH57部、MICA3部、沈降防止剤として不定形シリカ微粒子(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300)0.5部を添加、撹拌機で混合して鋳込み原料を調製した。この鋳込み原料中には、ATHが57重量%、MICAが3重量%配合されている。
【0099】
調製した鋳込み原料を、参考例1と同様にして成形・重合硬化して、透明性良好できらめき感を有する成形品を得た。
【0100】
またこの成形品のMICAを除いた部分の全光線透過率を測定するために、MICAを入れずに、前述と同様の方法で0.3mm厚の成形品を作製して全光線透過率を測定すると98%であった。
【0101】
この成形品を粉砕機で粉砕後、ふるいで分級することにより、粒径5〜0.2mmの透明な粒子(X−9)を作製した。
【0102】
粒子(X−9)の組成及び物性値を表1に示す。
【0103】
【表1】
【0104】
1)MMA:メチルメタクリレート
2)EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
3)BPE−80N:2,2−ビス(4−メタクリロキシポリエトキシフェニル)プロパン(新中村化学(株)製、商品名:BPE−80N)
4)ATH:水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製、商品名:BW103)
5)MICA:雲母片((株)山口雲母工業所製、商品名:C−113)
6)黒色トナー:アクリル樹脂用黒トナー(大日精化工業(株)製、商品名:AT−854)
7)白色顔料:ハーウィックケミカルコーポレーション製、商品名:Stan−Tone White
8)シリカ微粒子:不定形シリカ微粒子(日本アエロジル(株)製、商品名:アエロジル300)
[実施例1]
MMA17部に、予め重合率20重量%にまで予備重合したMMAシラップ15部、EDMA0.15部、AVN0.1部を溶解させた後、ATH(日本軽金属(株)製、商品名:BW53)47部、白色顔料(ハーウィックケミカルコーポレーション製、商品名:Stan−Tone White)0.9部、参考例1で得た透明粒子(X−1)8部、参考例2で得た黒色透明粒子(X−2)3部、参考例3で得た透明粒子(X−3)5部、参考例4で得た半透明粒子(X−4)5部を添加、撹拌機で混合して鋳込み原料を調製した。
【0105】
調製した鋳込み原料を参考例1と同様にして成形、重合硬化して、各粒子がシート表面、深さ方向に均一に分散した人工大理石を得た。この人工大理石は、従来の人工大理石よりも天然石に近い外観を有し、非常に意匠性の高いものであった。
【0106】
なお、この人工大理石のマトリックス部分の全光線透過率を測定するために、各粒子(X−1)、(X−2)、(X−3)、(X−4)を入れずに、前述と同様の方法で人工大理石を作製し、全光線透過率を測定すると42%であった。
【0107】
各粒子(X−1)、(X−2)、(X−3)、(X−4)が分散した人工大理石の表面を、木工用プレーナーで約0.5mmの深さに削った後、600番サンドペーパーで表面研磨した。
【0108】
表面研削・研磨する前は、人工大理石の表面に見える各粒子の大きさは実際の半分以下であり、かつ、ぼやけて見えたが、表面研削・研磨後は、表面に見える透明粒子の大きさは実際の粒子径と同程度であり、且つ鮮明に見え、天然石により近い外観を出すことができた。
【0109】
さらに、800番サンドペーパーで研磨した後、研磨用コンパウンドで鏡面まで磨くと、各粒子とマトリックスとのコントラストが大きくなり、より意匠性に優れた人工大理石に加工することができた。
【0110】
[実施例2]
黒色透明粒子(X−2)の代わりに参考例6で得た黒色透明粒子(X−6)、半透明粒子(X−4)の代わりに参考例8で得た半透明粒子(X−8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして人工大理石を得た。この人工大理石は、従来の人工大理石よりも天然石に近い外観を有し、意匠性の高いものであった。
【0111】
さらに、実施例1と同様に表面研削・研磨を施すことにより、各粒子とマトリックスとのコントラストがより大きくなり、より意匠性に優れた人工大理石に加工することができた。
【0112】
[実施例3]
透明粒子(X−1)の代わりに参考例9で得た透明粒子(X−9)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして人工大理石を得た。この人工大理石は、従来の人工大理石よりも天然石に近い外観を有し、意匠性の高いものであった。
【0113】
更に実施例1と同様に表面研削・研磨を施すことにより、各粒子とマトリックスとのコントラストがより大きくなり、より意匠性に優れた人工大理石に加工することができた。
【0114】
[比較例1]
透明粒子(X−1)の代わりに参考例5得た透明粒子(X−5)、黒色透明粒子(X−2)の代わりに参考例6で得た黒色透明粒子(X−6)、透明粒子(X−3)の代わりに参考例7で得た透明粒子(X−7)、半透明粒子(X−4)の代わりに参考例8で得た半透明粒子(X−8)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして人工大理石を得た。しかしその外観はきらめき感のない均一な粒子が分散しているのみで、従来の石目調人工大理石とほとんど相違なく、天然石の外観とは異なるものであった。
【0115】
さらに、実施例1と同様に表面研削・研磨を施したが、従来の人工大理石と比較して新規な外観は得られなかった。
【0116】
[比較例2]
鋳込み原料として、MMA33部に、予め重合率20重量%にまで予備重合したMMAシラップ15部、EDMA0.15部、AVN0.1部を溶解させた後、ATH(日本軽金属(株)製、商品名:BW53)47部、白色顔料(ハーウィックケミカルコーポレーション製、商品名:Stan−Tone White)0.9部、MICA5部の鋳込み原料を用いたこと以外は、実施例1と同様にして人工大理石を得た。
【0117】
しかし、その外観はMICAによりきらめき感はあるものの平面的で奥行き感に欠け、従来の石目調人工大理石の外観と殆ど相違ないものであった。
【0118】
更に実施例1と同様に表面研削・研磨を施したが、従来の人工大理石と比較して新規な外観は得られなかった。
【0119】
【表2】
【0120】
9)MMA:メチルメタクリレート
10)MMAシラップ:予め重合率20重量%にまで予備重合したMMAシラップ
11)EDMA:エチレングリコールジメタクリレート
12)ATH:水酸化アルミニウム(日本軽金属(株)製、商品名:BW53)
13)白色顔料:ハーウィックケミカルコーポレーション製、商品名:Stan−Tone White
14)MICA:雲母片((株)山口雲母工業所製、商品名:C−113)
15)マトリックス(Y)の全透:参考例で得た粒子(比較例2の場合はMICA)を入れずに同様の方法で作製した人工大理石の全光線透過率
【0121】
【発明の効果】
本発明の人工大理石は、きらめき感を有する粒子が分散しており、その外観は奥行き感があり、天然石に酷似した非常に優美なものであるだけでなく、アクリル系人工大理石の本来の特徴(施工・加工性、メンテナンスの容易さ等)を維持している。よって、本発明の人工大理石は、施工・加工性が特に要求されるカウンターやキッチン家具の天板や床板等に特に有用である。
Claims (6)
- ビニル系重合体(A)と雲母片(B)とを含有する粒子(X)が、ビニル系重合体(D)と無機充填材(E)とを含有するマトリックス(Y)中に分散されていることを特徴とする人工大理石。
- さらに、粒子(X)が、無機充填材(C)を含有することを特徴とする請求項1記載の人工大理石。
- 粒子(X)が、ビニル系重合体(A)20〜99.95重量%、雲母片(B)0.05〜80重量%から構成されることを特徴とする請求項1記載の人工大理石。
- 粒子(X)が、ビニル系重合体(A)10〜80重量%と、雲母片(B)0.05〜30重量%、無機充填材(C)10〜80重量%から構成されることを特徴とする請求項2記載の人工大理石。
- ビニル系重合体(A)が、(メタ)アクリル酸エステルと芳香族ビニル化合物との共重合体から構成されることを特徴とする請求項1記載の人工大理石。
- ビニル系重合体(A)が、多官能(メタ)アクリレートと芳香族ビニル化合物を含有する単量体成分、及び芳香族ビニル系重合体からなる重合性シラップの重合体から構成されることを特徴とする請求項1記載の人工大理石。
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