JP3634110B2 - 徐放性粒子の製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、エマルション形成を経て多孔性粒子・徐放性粒子を製造する方法及びその方法により製造された徐放性粒子に関する。
【0002】
【従来の技術】
多孔性の微粒子を製造する方法としては、溶剤を含んだ状態でポリマー繊維を形成し、それを結晶化させた後で細分化して溶剤を除去することにより多孔質微小球を得る方法がある(特開平3−140340号公報)。
【0003】
また、本発明者らは、より良質な多孔性粒子を求めて研究を重ね、プライマリーエマルション及びセカンダリーエマルションという2回のエマルション形成を経て多孔性粒子を製造する方法を開発し、既に特許出願をしている(特願平8−63711号)。この方法によれば、セカンダリーエマルションを固化させることにより多孔性粒子を製造することができることに加え、香料、染料、顔料、あるいは薬剤等の機能性物質を含浸させることによって徐放性粒子を製造することができる。
【0004】
【課題を解決するための手段】
しかし、本発明者らによる上記方法は多孔性粒子製造の歩留まりを高める余地があった。また、上記方法により製造された多孔性粒子に機能性物質を含浸させて徐放性粒子を製造するにあたって、セカンダリーエマルションを固化させる過程で機能性物質を粒子内部にとどめておくのが困難な場合があり、特に機能性物質としてタンパク質を含有する多孔性微粒子を製造するのは困難であった。
【0005】
本発明は以上のような課題に鑑みなされたものであり、その目的は、上記方法を改良し、機能性物質としてタンパク質を含有する多孔性微粒子でも容易に製造することができる方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
以上のような課題を解決するために本願の多孔性粒子の製造方法は、固化成分を含有する第一の連続相11内に第一の分散相13が分散したプライマリーエマルション14を製造した後(図1(A))、このプライマリーエマルション14を第二の分散相15としてこれを更に第二の連続相16内に分散させることによってセカンダリーエマルション17を製造し(図1(B))、この状態で前記固化成分を固化させ(図1(C))てから前記プライマリーエマルションの前記第一の分散相部分を除去する(図1(D))ことにより多孔性の徐放性粒子を製造する方法において、前記第一の分散相に所定濃度の塩を添加することにより前記セカンダリーエマルションの安定性を調整して多孔性粒子を製造することを特徴とする。
【0007】
このような方法によれば、特願平8−63711号に係る発明と同様に、第一の連続相11内に含有されている固化成分によりプライマリーエマルションが硬化した後、その第一の分散相が除去されることにより、当該第一の分散相13が除去された部分が孔18となる。その一方で、第一の連続相11が骨材となって多孔性粒子が形成されるが(図1(C)→(D))、特願平8−63711号に係る発明では、ナノメーターオーダーの微細孔を有する多孔性粒子・徐放性粒子を製造することは容易に行えたが、サブミクロンオーダーの細孔を有する多孔性粒子・徐放性粒子を製造することは困難であった。それは、特願平8−63711号に係る発明をそのまま適用した場合には、サブミクロンオーダーの細孔を有する多孔性粒子・徐放性粒子を製造しようとすると、セカンダリーエマルションが不安定となって、セカンダリーエマルション中に含まれる第一の分散相が、セカンダリーエマルションが固化する前に放出されてしまって、多孔性粒子・徐放性粒子が形成されなくなるからである。
【0008】
より詳細に説明すれば、特願平8−63711号に係る発明によれば、サブミクロンオーダーの細孔を有する多孔性粒子・徐放性粒子を製造すべく、細孔を大きくしようとするためには、第一の分散相の体積割合を多くしたり、第一の連続相に溶解されている固化成分の濃度を小さくしたりする必要があるが、特に第一の連続相の固化成分を少なくすることにより固化が遅れ、固化が不十分な状態で第一の分散相が抜けてしまうので、多孔が形成されないのである。
【0009】
言い換えると、多孔が形成されるためには、固化が不十分ではなく、かつ、完全に固化していない状態で第一の分散相のいくつかが抜ける必要があるのであるから、非常にデリケートな問題であり、これを随意に制御するのは非常に困難である。このようなわけであるから、サブミクロンオーダーの細孔を形成する必要がある場合には、特願平8−63711号に係る発明だけでは、第二の分散相を固化させる過程で機能性物質を粒子内部にとどめておくのが困難であった。また、特願平8−63711号に係る発明では、第二の分散相を固化させる過程でタンパク質が抜けやすく、機能性物質としてタンパク質を含有する多孔性微粒子(タンパク質を徐放する徐放性粒子)を製造するのは困難であった。
【0010】
しかしながら、本願の多孔性粒子の製造方法のように第一の分散相に所定濃度の塩を添加することにより、セカンダリーエマルションの安定性を容易に向上させることができ、セカンダリーエマルションの崩壊(第二の分散相からの第一の分散相の離脱)が防止できるので、サブミクロンオーダーの細孔を有する多孔性微粒子・徐放性粒子でも簡易に製造することができるようになる。また、この方法によれば、タンパク質を徐放する徐放性粒子を簡易に製造することができるようにもなる。
【0011】
請求項に係る徐放性粒子の製造方法によれば、固化成分を含有する第一の連続相内に、徐放させたい機能性物質を含有する第一の分散相が分散したプライマリーエマルションを製造した後、このプライマリーエマルションを第二の分散相としてこれを更に第二の連続相内に分散させることによってセカンダリーエマルションを製造し、この状態で前記固化成分を固化させてから前記プライマリーエマルションの前記第一の分散相部分を除去することにより多孔性の徐放性粒子を製造する方法において、前記徐放させたい機能性物質に応じて前記第一の分散相に所定濃度の電解質もしくは非電解質を添加すると共に、前記第二の分散相の固化時に前記徐放させたい機能性物質の徐放を抑制するように前記第二の連続相の電解質もしくは非電解質の濃度を調整して徐放性粒子を製造することを特徴とする。
【0012】
この発明は、第一の分散相中に、徐放させたい機能性物質と共に、所定濃度の電解質もしくは非電解質を添加すると、第二の分散相の固化段階における機能性物質の徐放を抑制することができるため、機能性物質を多く含浸した徐放性粒子を製造することができる。なお、第一の分散相中に添加される電解質もしくは非電解質の種類は、徐放させたい機能性物質の種類に応じて適宜決定される。また、第一の分散相中に添加される電解質もしくは非電解質の濃度は、徐放させたい機能性物質の種類のみならず、その濃度も勘案して決定される。更に、第一の分散相中に電解質もしくは非電解質を添加したことに応じて、第二の連続相の電解質もしくは非電解質の濃度を調整すると、セカンダリーエマルション中の第一の分散相と第二の連続相の間の浸透圧の釣り合いにより、徐放性粒子の製造段階で機能性物質が徐放されてしまうのを防止できる。第二の連続相の電解質もしくは非電解質の種類・濃度は、第二の分散相の固化時において、徐放させたい機能性物質の徐放を抑制するという観点から定められる。
【0013】
なお、第一の分散相中に添加される電解質もしくは非電解質は、非電解質よりむしろ電解質であるほうが好適な場合がある。この場合には、前記徐放性粒子の製造方法は、前記徐放させたい機能性物質に応じて前記第一の分散相に所定濃度の電解質を添加すると共に、前記第二の分散相の固化時に前記徐放させたい機能性物質の徐放を抑制するように前記第二の連続相の電解質の濃度を調整して徐放性粒子を製造することを特徴とする(請求項)。
【0014】
第一の分散相中に添加される電解質もしくは非電解質の種類・濃度、並びに、第二の連続相の電解質もしくは非電解質の種類・濃度の組合せの例として、第一の分散相のものとして0.2mol/l以上の濃度の硝酸カリウムもしくは塩化ナトリウム水溶液(場合によってはこれを緩衝溶液とする(例えば、徐放させたい機能性物質としてタンパク質を採用するような場合))であり、かつ、第二の連続相のものとして0.4mol/l以上の濃度の塩化ナトリウム水溶液がある。これは、機能性物質としてタンパク質(卵白)を採用した場合には、第二の分散相固化時の機能性物質の徐放抑制を最大にすることができる。しかしながら、第一の分散相中に添加される電解質もしくは非電解質の種類・濃度、並びに、第二の連続相の電解質もしくは非電解質の種類・濃度の組合せは、この組合せに限られることなく、第二の分散相の固化時において、徐放させたい機能性物質の徐放を抑制することを達成するという観点から、如何なる組合せも採用することができる。
【0015】
前記第一の分散相に添加される塩(電解質)は、水溶性のアルカリ金属塩、アルカリ土類金属塩、アンモニウム塩であると好適である。また、前記第一の分散相に添加される塩は、水溶性の硫酸塩、硝酸塩、ハロゲン化物であると好適である。この中でも塩として更に好適なのは、塩化ナトリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、塩化アンモニウム、あるいは硫酸アンモニウム等である。
【0016】
なお、特願平8−63711号にて説明したように、多孔性粒子の孔径は、プライマリーエマルション形成の際の分散相と連続相の体積比によって調節することができる。一般に、分散相の体積割合が多ければ、得られる多孔性粒子の孔径は大きくなる。また、実験により、分散相と連続相の体積比によって多孔性粒子の孔数が変化することが分かっている。また、連続相に溶解されている固化成分の濃度が小さければ、その分だけ多孔性粒子の孔径は大きくなる。また、乳化の程度、分散相と連続相の体積比、連続相の組成、または、第一の分散相に溶解する塩の種類もしくは濃度を調整することによって、得られる多孔性粒子の孔径および/または孔数をコントロールすることができる。
【0017】
【発明の実施の形態】
上記いずれか記載の方法により製造された徐放性粒子も本発明の範囲に含まれるこれらは、機能性物質として医薬を用いればドラッグデリバリーシステムに使用されるような薬剤もしくは持続放出性医薬品とすることができ、香料を用いれば化粧品、栄養源を用いれば食品、顔料を用いればトナーなどにすることができる。この他にも、本発明に係る徐放性粒子は、例えば農薬、ワクチン、飼料、肥料、人工細胞、免疫定量試薬、液晶感熱デバイス、感圧複写紙、バイオリアクターにおける固定化酵素用担体、アフィニティークロマトグラフィーのマトリックス(もしくは担体)などにも用いることができる。また、塗料その他の種々の材料に混合させて使用することにより、絶縁体や断熱材、軽量化された建築材などの用途にも応用することができる。
【0018】
エマルションの生成は、撹拌羽根を振動させることを基本とするバイブロミキサ(商品名;例えば特公平 2−15247号公報、特開平2−293035号公報)を用いることもでき、ポーラスパイプを用いることを基本原理とする混合装置(例えば、特開平4−265137号公報)を使用することができる。勿論、特願平7−340335号)に記載されている混合装置を使用することも可能である。
【0019】
第一の連続相に溶解される固化成分としては、ポリエチレンやポリスチレンなどのビニル化合物を用いることができるのは勿論であるが、フェノール樹脂などの熱硬化性樹脂、ポリエチレンテレフタレートなどの芳香族性樹脂などのあらゆる樹脂を使用できる。これらは、製造したい多孔性粒子・徐放性粒子の種類に応じて適宜決定される。また、生分解性ポリマーを用いることにより、環境への配慮がなされたものとすることができる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこの実施例に限定されない。
【0021】
【実施例1】
[(W/O/W)複合エマルションのin situ重合を利用した架橋中空マイクロカプセルの調製]
従来の(O/W)エマルションの油相内に溶解したモノマーのin situ重合法による微粒子の調製では、ナノメーターオーダーの細孔が形成され、サブミクロンオーダーの細孔を形成して、それに内包物を包含させる事は困難である。 本実施例は、粒子内にサブミクロンオーダーの細孔を形成した粒子の調製と、さらにその中に機能性試剤を包含させた微粒子の調製およびその除法制御に関する検討を行ったものである。著者らは、安定な(W/O/W)複合エマルションの形成法を示し、その複合エマルションの油相内に溶解したモノマーのin situ共重合によって、中空マイクロカプセル調製法を検討し、中空粒径および微粒子粒径の制御法について明らかにした。
【0022】
[実験方法]
塩化ナトリウムまたは塩化カリウムを溶解した内水相(第一の分散相)を、骨格物質としてスチレンおよびジビニノベンゼン、重合開始剤として2,2″−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルおよびアゾビスイソブチロニトリルをトルエンに溶解した有機溶液(第一の連続相)に分散させて、さらにそれに超音波照射を行って滴径0.5μm以下の(W/O)エマルション(第二の分散相)を調製した(プライマリーエマルションの形成)。(W/O)エマルションを界面活性剤であるドデシル硫酸ナトリウムおよび分散安定剤ポリビニルアルコールを含んだ外水相(第二の連続相)に分散させて(W/O/W)複合エマルションを調製し(セカンダリーエマルションの形成)、その安定性を顕微鏡撮影によって検討した。
【0023】
調製した複合エマルションを、丸底型反応器中で、100rpm、333Kで撹拌反応させ、in situ重合によってマイクロカプセルを調製した。調製したマイクロカプセルは水洗し、低温乾燥した後、走査型電子顕微鏡で微粒子粒径および細孔径を測定した。
【0024】
[実験結果]
エマルションの安定性;界面活性剤としてSpan80,Span85、ヘキサグリセリンリシノレイン酸(818SX)、ペンタオレイン酸ダカグリセリン(Q175)、Tween85を用いてエマルションを調製した。Span80、85およびQ175を用いた場合には、安定なエマルションの調製は困難であった。Tween85および818SXを用いた場合、エマルションの調製は可能であつたが、(W/O/W)エマルションの状態で放置すると、外水相と内水相の浸透圧によって内水相が油滴から放出されて不安定となった。浸透圧の影響を小さくするため、内水相へ硝酸カリウムまたはNaClを添加して(W/O/W)を調製した。調製されたエマルションは60゜Cで長時間放置しても殆ど変化しないことが分かった。
【0025】
マイクロカプセルの調製;内水相に硝酸カリウムまたはNaClを添加して調製した(W/O/W)複合エマルションを用いてマイクロカプセルを調製した。調製されたマイクロカプセルは、平均粒径が約10〜20μmで、何れも粒子内に直径約0.4〜0.8μmの多数の中空を有した真円状の粒子であった。粒子内に形成された中空の大きさはマイクロカプセルの調製条件によって変化することが分かった。
(1)内水相への添加塩濃度と内水相に添加した硝酸カリウム濃度を変化させた場合、粒子の平均粒径は塩濃度に無関係にほぼ10〜20μmと一定であった。粒子内に形成された中空の直径、dpは塩濃度に殆ど影響されない。
(2)油相中のスチレン/DVB=R(7)値を変化させた場合、Rが大きくなるほど、dpは大きくなるが、平均粒子径は殆ど変化しない。架橋剤の割台が高くなると、重合速度が上昇して、油相内の内水相の凝集が小さくなって、中空径が小さくなると考えられる。
(3)油相のトルエン添加量を増加して、スチレンおよびDVB濃度を増加すると、dpは小さくなった。モノマーおよび架橋剤濃度の増加と共に、油相内における重合速度が上昇して、内水相の凝縮が小さいためと考えられる。
(4)(W/O)エマルシヨン調製の際の内水相分率を変化させた場合、dpは内水相分率が大きくなるほど大きくなる。内水相分率が上昇するとモノマーの重合過程において油相内の内水相の凝縮が激しくなって粒子に形成される中空の径は大きくなったと考えられる。
【0026】
【実施例2】
[バイオポールおよびポリ乳酸を骨格とした液中乾燥法によるマイクロカプセルの調製とその粒子特性]
従来、微粒子およびマイクロカプセルの骨格物質として多くの場合、合成ポリマーが使用されてきた。今後、多量の微粒子の使用が予想される中で、骨格物質が使用後分解されずに地下および散布場所に残留し、環境的な観点から多くの問題を発生させる可能性が大きい。この様な環境汚染問題に対処するため、分解可能な基材を骨格物質に使用した微粒子およびマイクロカプセルの調製法の開発が必要となる。本研究では、生分解性ボリマーであるポリ乳酸およびバイオポール(poly(3HB−co−3HV))を骨格としたマイクロカプセルの調整法の確立とそのマイクロカプセル中への機能性剤の内包率向上およびその除放特性について検討した。
【0027】
[実験方法]
バイオポール(Zeneka(株))は所定の方法で精製してジクロロエタンに溶解し、それに界面活性剤である縮合レシノレイン酸ヘキサグリセリン(sunsoft 818SX)を添加した有機溶液を調製した。
【0028】
内水相にはアスコルビン酸マグネシウムを添加した水溶液を用い、外水相には、界面活性剤としてモノラウリン酸デカグリセリン(sunsoftQ12)と分散安定剤ポリビニールアルコール、ゼラチンまたはアラビアゴムを添加した水熔液を用いた。土記の有機溶液に所定分散相体積分率に相当する内水相をホモジナイザーで分散させて(5000rpm,10min)(W/O)エマルションを調製した。丸底反応容器中に外水相を入れ、所定量の(W/O)エマルションを添加して撹拌し、約100μmの(W/O/W)エマルションを調製した。その後、反応液表面に窒素ガスを吹き付けながら303K〜343Kの一定温度で保温する。窒素ガス吹き付けを続けると、約1.5時間〜3時間で液中のクロロエタンは完全に蒸発した。溶媒が蒸発するとポリ乳酸は固化され約100μmの真円状のマイクロカプセルが調製された。
【0029】
[実験結果]
本実験で行った調製条件を以下の表に示した。
【0030】
【表1】
Figure 0003634110
ここで、Sunsoft818Sx=lwt%、sunsoftQ12=0.25wt%、W/Oエマルション=120ml、外水相=680mlと各々一定とした。表に示した条件で調製した場合真円状のマイクロカプセルが調製されたが、その外表面には何れも小さな凹凸面が形成された。この凹凸面の形状は調製条件によって変化した。一次乳化における内水相分率、φW/Oを変化させた場合、マイクロカプセルの平均粒径は殆ど100μmと一定で、その外表面も殆ど変化が見られなかった。有機相内のバイオポール濃度を増加した場合、マイクロカプセルおよびW/Oエマルションの平均粒径は、濃度と共に増加した。バイオポール濃度の上昇によって、有機相の粘度が大きくなり、粒子の平均粒径が大きくなった。また、バイオポール濃度が低濃度になるにつれてエマルションからマイクロカプセルへの固化過程において、粒子の収縮が大きく、外表面の凹凸が大きくなった。バイオポール濃度を高めて、7wt%としたとき、固化の過程で微粒子間の接触と凝集が起こり、粒子の魂状化が生じた。液中乾燥法では、溶媒の蒸発速度を変化することによって、微粒子内の細孔径を変動させることが可能であると考えられる。
【0031】
撹拌速度を400および500rpm、反応温度を313〜343Kとしてマイクロカプセルを調製した。400および500rpmでは、各々323Kおよび313K以上で安定なマイクロカプセルが生成されたが、低温になると固化過程でエマルションの凝集が進行して安定なマイクロカプセルの調製は困難であった。安定なカプセル生成が可能な温度領域で調製されたカプセルの平均粒径は、回転速度に依存し温度には影響されないことが分かった。
【0032】
外表面は、高温になるほど表面の凹凸が少なくなり、細孔の形成も少なくなることが分かった。外水相に添加する分散安定剤はエマルションの安定性に影響を及ぼす。分散安定剤として、PVA、ゼラチンおよびアラビアゴムを用いた場合、粒径はPVA<ゼラチン<アラビアゴムの順に大きくなった。ゼラチンおよびアラビアゴムを用いた場合、粒子分布は単分散的で、無数の小さな凹凸面が表面に形成された粒子が調製され、PVAの場合と著しく異なることが分かった。
【0033】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によりサブミクロンオーダーの細孔を有する多孔性粒子を形成することができ、機能性物質としてタンパク質を含有する多孔性微粒子(タンパク質を徐放する徐放性粒子)を製造することが可能になる。
【0034】
これにより得られた徐放性粒子は、医薬分野への適用など、多方面での応用が期待される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多孔性粒子の生成工程を説明するための図である。
【符号の説明】
11 第一の連続相
13 第一の分散相
14 プライマリーエマルション
15 第二の分散相
16 第二の連続相
17 セカンダリーエマルション
18 孔

Claims (2)

  1. 固化成分を含有する第一の連続相内に、徐放させたい機能性物質を含有する第一の分散相が分散したプライマリーエマルションを製造した後、このプライマリーエマルションを第二の分散相としてこれを更に第二の連続相内に分散させることによってセカンダリーエマルションを製造し、この状態で前記固化成分を固化させてから前記プライマリーエマルションの前記第一の分散相部分を除去することにより多孔性の徐放性粒子を製造する方法において、
    前記徐放させたい機能性物質に応じて前記第一の分散相に所定濃度の電解質もしくは非電解質を添加すると共に、前記第二の分散相の固化時に前記徐放させたい機能性物質の徐放を抑制するように前記第二の連続相の電解質もしくは非電解質の濃度を調整して徐放性粒子を製造することを特徴とする徐放性粒子の製造方法。
  2. 固化成分を含有する第一の連続相内に、徐放させたい機能性物質を含有する第一の分散相が分散したプライマリーエマルションを製造した後、このプライマリーエマルションを第二の分散相としてこれを更に第二の連続相内に分散させることによってセカンダリーエマルションを製造し、この状態で前記固化成分を固化させてから前記プライマリーエマルションの前記第一の分散相部分を除去することにより多孔性の徐放性粒子を製造する方法において、
    前記徐放させたい機能性物質に応じて前記第一の分散相に所定濃度の電解質を添加すると共に、前記第二の分散相の固化時に前記徐放させたい機能性物質の徐放を抑制するように前記第二の連続相の電解質の濃度を調整して徐放性粒子を製造することを特徴とする徐放性粒子の製造方法。
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