JP3633863B2 - 校正用の被検体を用いた表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法 - Google Patents

校正用の被検体を用いた表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ほぼ平面の形状を有する被検体の形状測定に際して、誤差を含む測定値より、系統誤差を求め、前記測定値より測定系の前記系統誤差を差し引いて精度を高めた形状測定値を得る分野に関する。詳しく言えば、被検体表面の高さの上下を所定の領域にわたって計測するエリアセンサを用いた、被検体の表面形状測定を分野に関する。
具体的な例としては、エリアセンサとして、CCDカメラを用いた光学干渉計による被検体の表面形状測定分野に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、被検体の表面形状を測定する測定系の誤差を、誤差を含む測定値を用いて同定する手段は非接触光学測定方式を中心に、いくつか提示されているが、現在実用段階に至った方式は見当たらない。従来技術としては、光学干渉計の中の参照面のみを取り出し、参照面の形状を3面合わせ法に準じる方法で決定した後に、参照面を干渉計に取り付ける場合がほとんどである。しかしながら、本方式は他の2つの面を用いて2つの面同士を向かい合わせて測定を行うものであり、参照面の正確な取り付けの位置と姿勢の設定に手間がかかり、非常に面倒である。また、参照面以外の系統誤差、校正の終了後、参照面の取り付け位置と姿勢の誤差、ならびに支持体の撓みの影響などは放置されたままである。
【0003】
一方、光学干渉計に参照面が取り付けられたままで被検体表面を干渉計の光軸と直交する方向にシフトさせる方法(2面法と呼ばれている)は検討がされているものの、被検体のシフトに伴う誤差の中で、特に、形状に誤差を与えるピッチング項、ローリング項、上下移動項を求めることができておらず、それらの影響を排除する方法が確立されていない.
【0004】
また、前述した2面法としては、下記に挙げる4つの方法が知られている。
(1)伊藤俊治、日名地輝彦、堀内宰;
「2方位法と半径方向シフト法を用いた平面度の高精度測定」
精密工学、58(1992)883−886
本方法は、光軸を中心に回転ステージを用いて回転し、円周方向の形状情報の獲得、かつ、半径方向へのシフトにより半径方向の形状を求めて、被検体表面の形状を決定する。
しかし、本方法は半径方向のシフトに伴うシフト誤差が全く考慮されていないので、形状の2次成分に誤差を生じる。オプチカルフラットのような形状は、2次成分の占める割合が一番大きいので、測定形状に甚大な誤差を有すると考えられる。
【0005】
(2)R.Mercier,M.Lamare,P.Picart,J.P.Marioge;
「Two−flat method for bi−dimentional measurement of abusolute
departure from the besut sphere」
Pure Appl Opt 6(1997)117−126
本方法では、被検体表面の形状が球面の特別な場合を仮定して、被検体表面のシフトのみで、そのシフト誤差(ピッチング、ローリング、上下移動の3つのシフト誤差を取り扱っている)と形状の分離を最小2乗法を用いて行っている。
しかし、形状が球面の特別な場合を仮定して、全部で34回のシフトを行うというのは問題であり、この方法では、形状に含まれる2次成分がシフト誤差と分離できないという指摘がある(東北大学・清野氏による)。
【0006】
(3)清野慧、孫 ヘイ、強 学峰、高 偉;
「干渉縞による平面形状の絶対測定法の理論的研究」
精密工学 64−8(1998),1137−1145
本方法は、3回のシフトで被検体表面の形状を決定可能としている。
しかし、本方法では、最重要な上下移動項を全く考慮しておらず、シフト誤差をピッチング項、ローリング項の2つのみと仮定しており、その上、これを求めるアルゴリズムに致命的な間違いが指摘されている。
【0007】
(4)清野慧、孫 ヘイ、強 学峰、高 偉;
「フィゾー干渉計による形状測定機の自律校正」
1999度精密工学秋期大会学術講演会論文集、457(1999)
本方法は前述した(1)の方法に属する。特に、半径方向のシフトについては、シフト誤差をピッチング項のみと仮定して、この影響を除去しようと試みているが、(3)と同様の問題を含み、これも正しく求められていない。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
以上のように、2面法では、2次元位置決めステージを用いても、被検体のシフトに伴うシフト誤差を正しく求める方法は示されておらず、更に、参照面を干渉計に取り付けたままの状態で系統誤差を容易に決定する方式、ならびに、実用的な干渉計の校正法は見当たらない。
【0009】
本発明者らは、特願2000−297802、発明の名称「表面形状測定系の系統誤差の決定方法および表面形状測定装置」において、前記シフトに伴って発生するピッチング、ローリングならびに、上下移動を主要成分とするシフト誤差のうちピッチング項、ローリング項と前記多項式の係数を上下移動項の関数として表し、かつ、前記上下移動項は別途検出手段(ギャップセンサ)を利用して決定し、これより、前記披検体表面の算出形状を求めて、前記形状測定系の系統誤差を決定する方法を提示した。しかしながら、本方法では、別途検出手段が必要であり、検出手段の専門的な準備、着脱のコストと手間がかかり、さらに、ユーザサイドで系統誤差の決定を行い測定系の校正を行うのは困難である。
【0010】
本発明の目的は、被検体の2次元領域での表面の高さの上下を測定するエリアセンサを備えた前記表面形状測定装置において、上下軸と直交する方向に稼動可能な2次元位置決めステージに特定(被検体の表面形状に1次と2次成分を持たない)の被検体を固定して、x軸y軸の正方向に各1回合計2回のシフトによる形状測定系の系統誤差を含む被検体の表面形状の測定値のみを用いて、前記系統誤差と各シフトに伴い発生するピッチング、ローリング、上下移動のシフト誤差の双方の誤差の影響を排除して、表面形状測定系の系統誤差を被検体表面の前記エリアの各検出位置毎に決定を行い、次に、他の任意の被検体の形状測定に関しては、前記シフト用の2次元位置決めステージを用いず、即ち、前記被検体のシフトに頼ること無く、系統誤差を含む被検体の表面形状の算出形状より、前記系統誤差を差し引くことにより、系統誤差の除去された被検体の表面形状を高精度に求める表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法を得るにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため、本発明は、
検体の表面上に座標軸と共に投影される原点をもちかつエリアセンサの測定領域内に前記原点と共に固定された直交x,y,z座標軸で被検体の断面形状が決定される座標系であって、形状の高さzをx,yの次多項式;
【数3】
Figure 0003633863
で表し、
前記x,y平面で前記被検体の指令シフト量に基づきシフトを実現する2次元位置決めステージにより、所定のシフトを施して前記エリアセンサを介して取得した測定データのみを用い、所定の形状算出過程を経て、系統誤差ε(x,y)とピッチング項p(α,β)x、ローリング項r(α,β)y、ならびに、上下移動項g(α,β)の和で表されるシフト誤差ξ(α,β,x,y)の影響を受けた形状算出データz(α,β,x,y)から、系統誤差ε(x,y)をシフト誤差ξ(α,β,x,y)の影響を排除して求める校正用アルゴリズムを有する表面形状測定装置において、
表面形状に1次と2次成分を持たない(すなわち、a1 (y)=a2 (y)=0,b1 =b2 =0)特定の校正用被検体を所定のx,y方向のシフト(それぞれのシフト量をα,βとする)を与えて得られる前記形状測定系の系統誤差を含む前記校正用の被検体表面の形状を表す形状算出データにつき、
シフト前の形状算出データ
z(0,0,x,y)=z(x,y)+ε(x,y)
を測定した前記エリアセンサの測定領域と、シフト後の形状算出データ
z(α,β,x,y)=z(x−α,y−β)+ε(x,y)+ξ(α,β,x,y)
を測定した前記エリアセンサの測定領域とのx,yの共通領域で、シフトαのみを施した差形状算出データ
【数4】
Figure 0003633863
を作り、
n個のxの値を指定して、k≧3の項に含まれるn−2個の未知数ak (y)と、k=2の項、k=1の項をp(α,0)x+r(α,0)y+g(α,0)と共にa2 (y),a1 (y)を整理したcx+dの形式の1次式の2つの未知数c,dの合計n個を未知数とした連立方程式を解くことにより、ak (y);
k≧3を求め、
また、bj ;j≧3においても同様の処理によって前記校正用被検体の表面算出形状と共に、前記シフト誤差と前記系統誤差を自律的に求め、
任意の前記被検体の表面形状の測定に際しては、前記被検体のシフトを行うことなく、前記エリアセンサの測定値から得られた系統誤差を含む前記被検体表面の形状算出値から前記系統誤差を除去することによって、前記被検体の表面算出形状を求めることを特徴とする校正用の被検体を用いた表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法を提案するものである。
【0012】
後述する本発明の好ましい実施例の説明においては、
1)任意の前記被検体の表面形状の測定に際して、前記エリアセンアの測定領域を超える領域をもつ前記被検体の場合、前記被検体の前記シフトα,βを行い、前記エリアセンアの測定値より得られた表面算出形状から既に求められたシフト誤差を前記系統誤差と共に、差し引くことにより、前記被検体の表面算出形状を求める表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法、
2)校正用被検体のシフトは、x方向に1 回、y方向に1 回行うのみである表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法
が説明される。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、参照面を含む干渉光学系による表面形状測定系を例に取り、本発明の具体例を説明するが、本発明におけるエリアセンサは、前記CCDの他に被検体表面の測定エリアを走査する機構を持ち、表面の高さの上下を測定し、被検体表面の形状を測定する測定器であれば、本発明はすべて適用可能で、適用可能の例としては、3次元形状測定器、非球面レンズ等の形状測定器、更には、AFM、STM等も挙げられる。
また、以下の説明では、次の(0)項で本表面形状測定装置のシステム構成とシステム動作について述べ、次に(1)項から(4)項に特定の被検体の前記シフトによる系統誤差を決定するアルゴリズムを示す。
【0014】
(0)表面形状測定装置のシステム構成ならび本システムの動作
参照面誤差を含む系統誤差を有する干渉計による被検体表面の測定を行うシステム構成を図1に示す。
【0015】
本システムは、レーザ光源1、干渉縞の2次元画像を撮像するCCDカメラ2、参照面3などを有する干渉縞計測の干渉計システム5と、本発明での被検体のシフトのために設けられた2次元位置決めステージ6上に置かれた特定の被検体7などから構成される。
また、本表面形状測定装置は、システムの動作ならびアルゴリズムの説明のためのxyz座標系と、被検体の表面上に座標軸と共に投影される図2示の原点をもち、エリアセンサの測定領域内に原点と共に固定された座標軸x,y,zを有する。つまり、干渉計5の光軸4に平行な方向をz軸とし、前記2次元位置決めステージ6の1次元移動方向をx軸、x軸に直交する他の1次元移動方向をy軸としてある。
【0016】
干渉計システム5において、レーザ光源1から発せられたレーザ光は、各光学系を透過して、参照面3を一部は透過し一部は反射する。透過部分は、被検体表面7で反射して参照面3で反射した部分と干渉させて、被検体表面7と参照面3の相対形状は測定された光学的干渉に基づく干渉縞の解析から算出される。
【0017】
さて、干渉計による平面度測定は、参照面に対する被検体表面の相対測定である。ゆえに、高精度な被検体表面の測定を実現するためには、参照面の(理想平面からの)誤差、参照面以外の光学系による波面歪などを含めた干渉計の系統誤差を予め正確に求めて校正しておく必要がある。
【0018】
次に、干渉計の前記系統誤差を決定して高精度に被検体表面の測定を行うための前記システムの動作と方法の概要を簡単に述べる。
被検体7は2次元位置決めステージ6上に固定されており、被検体7を図4の矢印で示す2方向に2次元位置決めステージ6よりそれぞれシフトさせて、シフト前と合わせた計3つの被検体表面7の各位置で各々干渉縞の測定を行い、公知の干渉縞解析により算出された系統誤差を含む被検体の表面の形状に対して、(1)から(3)のアルゴリズムを施すことによって、シフト誤差の影響を排した前記被検体の表面形状を決定する。
そして、(4)より、参照面誤差を含む系統誤差が、参照面の各点において決定された後の実際の被検体表面の測定においては、被検体をシフトさせる必要もなく、したがって、前記2次元位置決めステージも不要となり、被検体を固定したままで被検体表面の形状を測定し、
「干渉計による測定値から導出される系統誤差を含む形状測定値」−「系統誤差」
により、被検体の表面形状の高精度測定が実現される。
【0019】
(1)1 次と2次成分を持たない校正用の被検体表面の形状を多項式で近似
図3において、被検体表面8の形状を断面形状の集合9として、x軸方向に関する断面形状をn次多項式で、下記のように表す。
【数5】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
ただし、式(1.1)のa (y)は図3における定数項10であり、
【数6】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
のように定義することができる。
ここに、1次2次成分を持たない特定の被検面を仮定しているので、a (y)=a (y)=0,b =b =0である。
【0020】
(2)被検体のシフトに伴う関係式
各y座標y=y (k=1,2,....,m)に対する、xのn次多項式の係数決定を行うため、先ず、被検体のシフト前の得られる系統誤差を含む被検体表面の形状z(0,0,x,y)は、下記式で表わされる。
【数7】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
ここで、
z(x,y)・・・被検体表面の形状の真値、
ε(x,y)・・・参照面誤差を含む系統誤差、
z(α,β,x,y)・・・干渉縞データより解析されて得られたシフト量α,βに対応して発生するシフト誤差と系統誤差を含む被検体表面の形状の測定値
と定義する。
【0021】
同様に、被検体をx軸方向にαだけシフトして得られる関係式は、シフトによって発生したシフト誤差が含まれており、
【数8】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
である。この式(2.2)で、シフト誤差は第3項から第5項のように表される(p(α,0)・・・ピッチング項、r(α,0)・・・ローリング項、g(α,0)・・・上下移動項)である。
【0022】
ここで、式(2.2)−式(2.1)より、
【数9】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
となる。左辺は測定値であり、右辺は被検体表面の断面形状を表す多項式
(z(x−α,y)−z(x,y))と
被検体表面の姿勢の変化を表す項
(p(α,0)x+r(α,0)y+g(α,0))から成り立つ。
前述した式(1.1)および式(2.3)から、
【数10】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
が成立する。
【0023】
ここで、式(2.2)−式(2.1)より、
【数11】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
となる。左辺は測定値であり、右辺は被検体表面の断面形状を表す多項式
(z(x−α,y)−z(x,y))と
シフト後の被検体表面の姿勢の変化を表す項
(p(α,0)x+r(α,0)y+g(α,0))から成り立つ。
ここで、式(2.5)から、x=0,y=0の原点において
【数12】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
が成立する。
式(1.1),(2.3)から、
【数13】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
が成立する。
本アルゴリズムでは、各シフト後の位置とシフト前の位置を合わせた被検体表面の各位置で干渉縞データの測定を行い、シフト誤差と系統誤差を含む被検体表面の形状を求めことにより、系統誤差と被検体表面の断面形状を表す多項式の定数成分を除いた関係式(式(2.4))が各シフトごとに成立する。
【0024】
(3)被検体表面の形状を近似する多項式の係数a (y)(k≧3)、b (j≧3))の決定
(3.1)x軸の正方向へαシフトさせた被検体表面の形状の測定値を用いて、係数a (y)(k≧3)の決定
【0025】
式(2.4)より
【数14】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
となる。
ただし、
【数15】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
【数16】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
とおく。
【0026】
ここで、求める変数a (y),...,a (y),a (y),p(α,0),r(α,0),g(β,0)のn+2個の未知数をa (y),...,a (y),c(α,0,0,y),d(α,0,0,y)のn個の未知数に変数変換しておき、x=x ,x ,x ,...,x のそれぞれに対して、式(3.1)に代入して、行列とベクトルを用いれば、
【0027】
【数17】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
と表される。ただし、
【数18】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
【数19】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
【数20】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
である。
【0028】
よって、
【数21】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
のように、n個の未知数、即ち、a (y),...,a (y),c(α,0,0,y),d(α,0,0,y)が定まる。
【0029】
(3.2)y軸の正方向へβだけシフトさせた被検体表面の形状の測定値を用いて、係数b (j≧3)の決定
(3.1)と同様にして求める。すなわち、被検体をy軸方向にシフトして得られる式(2.2)に相当する関係式で、特に、x=0として、
【数22】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
と表す(p(0,β)・・・ピッチング項、g(0,β)・・・上下移動項)。
【0030】
このとき、式(3.9)からシフト前の式(2.1)を引くことによって、
【数23】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
となる(式(3.1)に対応)。
【0031】
ただし、
【数24】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
【数25】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
とおく。
ここで、式(3.1)と同様に、求める変数b ,...,b ,b ,p(0,β),g(0,β)のn+2個の未知数をb ,...,b ,c(0,β,0,0),d(0,β,0,0)のn個の未知数に変数変換しておき、y=y ,y ,y ,...,y のそれぞれに対して式(3.10)に代入して、式(3.4)に対応する線型方程式を導き、同様に解けば、n個の未知数、b ,...,b ,c(0,β,0,0,),d(0,β,0,0,)が定まる。
【0032】
(3.3) (3.1),(3.2) の過程を経て得られる被検体表面の断面形状
(y)(k≧3)、b (j≧3)の係数が(3.1) および(3.2) から求めることができた。
用いる特定の被検体はその表面形状は1次2次成分をを持たない、即ち、a (y)=a (y)=0,b =b =0であったので、被検体表面の断面形状を示すn次多項式は
【数26】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
となる。ただし、
【数27】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
によって表される。
【0033】
シフト誤差について述べると、ピッチング誤差p(α,0)、p(0,β)は、式(3.2)(3.11)から、
【数28】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
【数29】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
として求められる。
【0034】
また、上下移動項g(α,0)、g(0, β)も式(3.3)(3.12)より、y=0とおいて、
【数30】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
【数31】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
となる。
【0035】
また、ローリング項r(α,0)は式(3.3)に上下移動項が求められているので、適当なy ≠0に対して
【数32】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
として求められる。
【0036】
(4)座標系の各点(x,y)に対する系統誤差ε(x,y)の決定
(1)項から(3)項では、特定の被検体表面の形状z(x,y)が決定された。
よって、系統誤差はε(x,y)は、被検体のシフト前の測定値z(0,0,x,y)の関係式(2.1)を再掲すれば、
【数33】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
であるから、
【数34】
Figure 0003633863
Figure 0003633863
のように決定される。
【0037】
【発明の効果】
以上の説明から明らかなように、本発明の系統誤差の自律的決定方法を用いれば、干渉計の系統誤差が、校正用の被検体を方向に移動可能な2次元位置決めステージに固定して、それぞれ1回のシフトを施すことによって、前記エリアセンサから得られるデータを用いれば、自律的に系統誤差を参照面の各点で決定できる。
前述した系統誤差測定の場合は、シフト動作のための2次元位置決めステージが必要であり、また、前記エリアセンサの測定領域を超えた広い領域の被検体の表面形状計測のためも、かかるステージは必要であるが、一度系統誤差が決定された後では、前記エリアセンサが被検体の表面の測定領域をカバーする場合は前記ステージは用いる必要はない。
本発明においては、被検体表面の真値は形状の測定値から系統誤差を差し引くことによって容易に得ることができる。
【0038】
なお、本発明で述べた2次元位置決めステージによるシフトは通常の数値制御によりシフトの指令値を与えるだけで高精度に自動的に行うことができるので、ユーザ自身で系統誤差の決定を行い、高精度な測定を常時行うことができる。
また、本発明の実施例では、エリアセンサとしてCCDカメラを用いた参照面を含む干渉光学系による例に取り述べたが、本方式は参照面を含む干渉光学系だけに限られたものではなく、測定によって得られた「系統誤差を含む形状の測定値」が得られれば、前記エリアセンサと同機能のエリア内の高さ検出センサ(例:触針をエリア内で2次元的に走査する走査型AFM、または、触針を有する粗さ検出器など)を用いれば、これらのエリアセンサを用いた表面微細形状、緩斜面からなる非球面レンズ表面性状測定器、触針をさらには、3次元形状測定器などにも広く活用できることはいちいち説明するまでもない。
【図面の簡単な説明】
【図1】高精度に被検体表面の測定を行う本発明の表面形状測定装置の概念図である。
【図2】同表面形状測定装置の被検体位置決めステージの拡大斜視図である。
【図3】被検体表面を近似する断面形状の模式図である。
【図4】被検体のシフト位置の説明図である。
【符号の説明】
1 レーザ光源
2 CCDカメラ
3 参照面
5 干渉計
6 2次元位置決めステージ
7 被検体

Claims (3)

  1. 検体の表面上に座標軸と共に投影される原点をもちかつエリアセンサの測定領域内に前記原点と共に固定された直交x,y,z座標軸で被検体の断面形状が決定される座標系であって、形状の高さzをx,yのn次多項式;
    Figure 0003633863
    で表し、
    前記x,y平面で前記被検体の指令シフト量に基づきシフトを実現する2次元位置決めステージにより、所定のシフトを施して前記エリアセンサを介して取得した測定データのみを用い、所定の形状算出過程を経て、系統誤差ε(x,y)とピッチング項p(α,β)x、ローリング項r(α,β)y、ならびに、上下移動項g(α,β)の和で表されるシフト誤差ξ(α,β,x,y)の影響を受けた形状算出データz(α,β,x,y)から、系統誤差ε(x,y)をシフト誤差ξ(α,β,x,y)の影響を排除して求める校正用アルゴリズムを有する表面形状測定装置において、
    表面形状に1次と2次成分を持たない(すなわち、a1 (y)=a2 (y)=0,b1 =b2 =0)特定の校正用被検体を所定のx,y方向のシフト(それぞれのシフト量をα,βとする)を与えて得られる前記形状測定系の系統誤差を含む前記校正用の被検体表面の形状を表す形状算出データにつき、シフト前の形状算出データ
    z(0,0,x,y)=z(x,y)+ε(x,y)
    を測定した前記エリアセンサの測定領域と、シフト後の形状算出データ
    z(α,β,x,y)=z(x−α,y−β)+ε(x,y)+ξ(α,β,x,y)
    を測定した前記エリアセンサの測定領域とのx,yの共通領域で、シフトαのみを施した差形状算出データ
    Figure 0003633863
    を作り、
    n個のxの値を指定して、k≧3の項に含まれるn−2個の未知数ak (y)と、k=2の項、k=1の項をp(α,0)x+r(α,0)y+g(α,0)と共にa2 (y),a1 (y)を整理したcx+dの形式の1次式の2つの未知数c,dの合計n個を未知数とした連立方程式を解くことにより、ak (y);k≧3を求め、
    また、bj ;j≧3においても同様の処理によって前記校正用被検体の表面算出形状と共に、前記シフト誤差と前記系統誤差を自律的に求め、
    任意の前記被検体の表面形状の測定に際しては、前記被検体のシフトを行うことなく、前記エリアセンサの測定値から得られた系統誤差を含む前記被検体表面の形状算出値から前記系統誤差を除去することによって、前記被検体の表面算出形状を求める
    ことを特徴とする校正用の被検体を用いた表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法。
  2. 任意の前記被検体の表面形状の測定に際して、前記エリアセンアの測定領域を超える領域をもつ前記被検体の場合、前記被検体の前記シフトα,βを行い、前記エリアセンアの測定値より得られた表面算出形状から既に求められたシフト誤差を前記系統誤差と共に、差し引くことにより、前記被検体の表面算出形状を求める
    ことを特徴とする請求項1記載の校正用の被検体を用いた表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法。
  3. 校正用被検体のシフトは、x方向に1 回、y方向に1 回行うのみである
    ことを特徴とする請求項1または請求項2記載の校正用の被検体を用いた表面形状測定系の系統誤差の自律的決定方法。
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