JP3633637B2 - インターロイキン1の産生誘導方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、特定の材料と血液とを接触させることによりインターロイキン1を産生誘導するための方法に関し、上記材料表面を工夫することによりインターロイキン1の産生を効果的に誘導し得るインターロイキン1の産生誘導方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
周知のごとく、生体の悪性腫瘍に対する免疫監視機構を担う抗腫瘍性細胞としては、キラー細胞、NK細胞、LAK細胞及び、活性化マクロファージ等が重要な役割を果たしている。また、これらの細胞やリンパ球から分泌されるインターロイキン、インターフェロン等のサイトカインは、生体の抗腫瘍性に大きく関与している。近年、外科手術、放射線療法、化学療法と併用して、生体の持つ免疫監視機構を賦活することを目的とした免疫療法が、悪性腫瘍の治療法として盛んに行われてきている。このような、免疫療法剤として、例えば、レンチナンやシゾフィランの様な薬剤があるが、癌患者は免疫抑制状態にあり、かかる状態の中で抗腫瘍免疫に関係する上記の細胞や因子を誘導することはなかなか困難である。
【0003】
このような困難を克服するために、最近、抗腫瘍免疫に関係する上記の細胞や因子を体外で誘導したり、直接体外から投与しようという試みがある。例えば、癌患者からリンパ球と腫瘍細胞とを体外に取りだし、遺伝子組み替えヒト・インターロイキンを加えて培養し、腫瘍を特異的に攻撃するリンパ球(LAK細胞)を誘導した後に、癌患者体内に戻して、抗腫瘍効果を発揮する養子免疫療法が行われている。(Rosenberg,S.A.,Lotze,M.T.,Muul,L.M.et al.:A Progress report on the treatment of 157 patients with advanced cancer using lymphokine−activated killer cells and interleukin 2 or high−dose interleukin 2 alone. N.Engl.J.Med.316:889−897,1987)。
【0004】
しかしながら、癌患者から大量のリンパ球を取り出し、無菌的に長期間、インターロイキンの存在下で培養した後に、癌患者に注入するという操作を行うため、非常に手間がかかること並びに、培養に長時間を要すること及び高価なインターロイキンが必要であることなどの多くの問題があった。
【0005】
また、遺伝子組み替え技術により、抗腫瘍免疫に関係する上記の種々のサイトカインを大量に得ることができるようになり、これらのサイトカインの直接投与(高久史麿 編集、南江堂、サイトカイン療法、1992)が行われている。しかしながら、遺伝子組み替え技術により得られたサイトカインは、その蛋白質分子内に糖鎖を持たなかったり、翻訳後修飾を受けていないものであり、本来患者体内で作られるサイトカインと異なっている。そのため、患者に直接投与しても血液中での寿命が短く、本来の効果が発揮できなかったり、様々な副作用が伴うという欠点を有している。
【0006】
近年、上記欠点を克服するために、癌患者が本来持っている抗腫瘍免疫機能を体外循環システム等を利用して、体外で産生を誘導しようという試みがある。例えば、グラム陰性菌細胞壁由来のリポ多糖(特開昭59−21145号公報)やレクチン(特開昭63−33339号公報)の様な生理活性物質を不溶性担体に固定化し、体外に取り出した血液および血液成分と接触させることによって抗腫瘍免疫機能を誘導することが開示されている。しかしながら、これらの生理活性物質は、体内にはいった場合に、強い毒性を示す物質であり、不溶性担体からの脱離の可能性が皆無である保証がない。また、特開平3−236790号公報、特開平3−240485号公報には、それぞれグルクロン酸やN−アセチルノイラミン酸のような酸性糖を不溶性材料に固定化し、サイトカインを誘導する血液処理剤が開示されている。これらは不溶性担体から脱離しても生体に対する毒性はないが、このようなリガンドであっても、不溶性担体に固定化するための反応を行わねばならず、煩雑な過程が必要である。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、上述した従来技術の諸欠点を解消し、抗腫瘍免疫機能を賦活するサイトカインであるインターロイキン1を、血液からより簡便に、かつより安全に産生誘導し得る方法を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を達成するためになされたものであり、中心線平均粗さRa値が0.58μm〜2.46μmであり、凸凹平均間隔Sm値が5.8μm〜101μmの範囲にある凹凸を表面に有する材料と、血液とを接触させることにより、インターロイキン1の産生を誘導することを特徴とする、インターロイキン1の産生誘導方法である。
【0009】
血液中の単球や好中球などの白血球が異物と反応すると、種々の酵素、メディエーターを放出し、炎症反応を引き起こす。これらの反応は、材料と接触するときにも同様に引き起こされる。これは、材料が異物とみなされて起こるものであるが、この反応は材料の性質によって大きく変わってくる。一方、インターロイキン1は1940年代に白血球が産生する発熱物質として古くから知られている物質であるが、種々の生理活性を持ち、炎症反応においても産生される。そこで、本発明者らは、材料の性質を制御することによって、インターロイキン1の白血球からの産生を制御できるのではないかと考えた。これまで、白血球と材料との上記反応については、材料の粒子径、繊維径や組成については調べられているが、材料表面の形状についてはよく分かっていなかった。そこで、我々は高分子材料の表面の形状と白血球のインターロイキン1の産生を調べた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム及び酢酸セルロースフィルムについてインターロイキン1の産生誘導試験を行ったところ、1200メッシュ以下の荒さのサンドペーパーで各フィルムを研磨した場合には(Ra値が0.2μm以上、10μm以下の表面粗さを有するように研磨した場合には、)、未研磨の各フィルムに比べてインターロイキン1の産生を効果的に誘導し得ることがわかった。また、ナイロンや酢酸セルロースの球状ビーズは、表面にRa値が0.2μm以上、10μm以下の粗さをつけることにより、著しくインターロイキン1の産生誘導が行われることもわかった。
【0011】
上記の事実は、適度な表面粗さを有する材料では、その材質によらず、表面の凹凸性が原動力となり、インターロイキン1の産生誘導を促進することを意味しているものと考えられる。また、白血球などの大きさが10μm〜20μmであるのに対し、上記材料のRa値が0.58μm〜2.46μmの範囲であり、白血球などに比べて、上記Ra値が非常に小さいため、上記表面粗さによる効果は、単なる接触表面積の増大によるものではないと考えられる。
【0012】
従って、本発明において用いられる上記材料は、材料の種類を問うものではなく、中心線平均粗さRa値が0.58μm〜2.46μmの範囲にあり、かつ後述の実施例から明らかなように凹凸平均間隔Sm値が5.8μm〜101μmの範囲にある凹凸を表面に有するものであれば任意の材料を用いることができる。
【0013】
なお、上記Ra値とはJIS B0601−1982における中心線平均粗さである。また、上記凹凸平均間隔Sm値は、以下のようにして定義される値である。
【0014】
でこぼこ平均間隔Sm値
現在のJIS規格では、表面粗さの高さ方向の情報については規定されているが、面方向の情報に関しては規定されていない。しかしながら、本発明における凹凸は、凹凸の面方向における間隔によっても後述の実施例から明らかなように限界付けられるものである。そこで、本発明では、でこぼこ平均間隔Sm値を用いることにより凹凸の面方向の範囲を規定した。
【0015】
上記でこぼこの平均間隔Sm値は、以下のようにして求められる。
まず、図1に示す粗さ曲線Aの中心線Bに対して、それぞれ、一定の高さ及び深さの位置に上側カウントレベル及び下側カウントレベルを引く。次に、下側のカウントレベルと粗さ曲線Aとが交差する2点間において、上側カウントレベルと粗さ曲線とが交差する点が一回以上存在するときに、一つの山として「山」を定義する。
【0016】
そして、でこぼこ平均間隔Sm値は、図2に示すように、基準長さLの間にある山の間隔をSmiとしたときに、下記の式▲1▼で定義される値である。
【0017】
【数1】
Figure 0003633637
【0018】
すなわち、でこぼこ平均間隔Sm値とは、基準長さLの間にある山同士の間隔の平均値を示す。このようにして、でこぼこの平均間隔Sm値により、凹凸の面方向の条件が定義される。
【0019】
本発明者らは、前述したRa値が0.2μm以上、10μm以下であるPETフィルムを1200メッシュのサンドペーパーで研磨時間を変えて研磨することにより、Sm値が474、374、213、101、56、31μmの各フィルムを作成し、後述のフィルムによるインターロイキン1の産生誘導試験を実施した結果、Sm値が5.8μm以上、101μm以下となるとインターロイキン1の産生誘導が著しく高められることを見いだした。
【0020】
従って、インターロイキン1の産生誘導を高めるには、中心線平均粗さRa値が0.58μm〜2.46μmであり、かつでこぼこの平均間隔Sm値が5.8μm〜101μmであることが必要である。
【0021】
本発明で血液と接触させるのに用いられる材料
本発明において用い得る上記材料としては、人体に対して有害でないもの、例えば、血液と材料とが接触された際に有害な金属や可塑剤などの添加物の流出が無いものであれば、その種類を問わず利用することができる。用い得る材料の例としては、ガラス及びアルミナ等の無機材料、並びに酢酸セルロース、ポリスチレン、ナイロン、ポリテトラフルオルエチレン、ポリトリフルオルエチレン、パーフルオロエチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、エチルセルロースなどの合成及び天然の有機高分子材料等が挙げられる。
【0022】
また、材料に上記表面粗さを付与する方法としては、研磨法が一般的であるが、他の方法によって上記特定の表面粗さを有するように構成してもよい。例えば、材料表面に微粒子を物理的或いは化学的に固定する方法や、表面が多孔質の材料を用いる方法等も利用することができる。
【0023】
材料表面に微粒子を固定する方法としては、例えば0.1μm〜20μmの微粒子をコーティングする方法が挙げられ、それによってインターロイキン1を産生誘導させ得る。ここで用いる微粒子は、例えばスチレン系やアクリル系などのビニル系モノマーの単独あるいは2成分以上の混合物を乳化重合や懸濁重合することにより調製することができる。これらの微粒子としては、好ましくは、例えば、ジビニルベンゼンのような2官能基以上の多官能性モノマーとの共重合体からなるものが用いられる。
【0024】
次に、上記微粒子コーティングする方法を説明する。先ず、コーティングのための結合剤としての合成高分子や天然高分子を0.1〜5重量%程度溶解させた液にこれらの微粒子を懸濁させる。次に、この懸濁液に予め成形しておいた有機もしくは無機材料からなるビーズ、繊維またはフィルム状の担体を浸漬し、その後乾燥することにより、本発明のインターロイキン1の産生誘導に用いられる材料を作製することができる。この場合のRa値の調整は微粒子の大きさにより、またSm値の調整は懸濁粒子の濃度によって行い得る。
【0025】
また、多孔質材料の場合でも、その形状は膜状、繊維状またはビーズ状の何れでもよく、かつ表面のみが多孔性であってもよく、材料全体が多孔性であってもよい。表面多孔質材料については、例えば、有機もしくは無機材料からなるビーズ、繊維またはフィルム状の担体に、コーティング液として合成高分子や天然高分子をそれらの良溶媒中に0.1〜5重量%程度溶解させた液をスプレーによって霧状に吹き付けて加熱乾燥することによって得られる。また、材料全体が多孔性になっているものの製法としては、一般的な多孔性膜及び多孔性ビーズなどの製法を使用することができる。例えば、多孔性膜では、合成高分子を良溶媒に溶解させてガラス板上に流延させてキャスティングフィルムを作製し、その後、合成高分子の貧溶媒にてフィルムを洗浄し、良溶媒を抽出することによって多孔性膜を調製することができる。
【0026】
多孔性材料の場合のRa値やSm値の調整は、細孔径や細孔量を調整することによって達成され、細孔径や細孔量は材料を溶解させる溶媒の種類や量を変えることにより容易に調節することができる。
【0027】
本発明において、血液と上記材料とを接触させる方法については、血液と上記材料とが十分に接触され得る限り、任意の方法を用いることができる。例えば、繊維状の上記材料をカラムに充填し、該カラムに血液を循環させる方法、や粒径50μm〜5mmのビーズ状の材料をカラムに充填し、血液を循環させる方法を用いることができる。さらに、血液中に種々の形状の上記材料を浮遊させることにより、血液と上記材料を接触させてもよい。
【0028】
上記材料と血液とを接触させる際の温度は、細胞や蛋白質への影響を考えた場合、15℃〜42℃の範囲で行うことが望ましいが、より好ましくは、30℃〜40℃の範囲の方が、インターロイキン1の産生誘導を高めるうえでは好ましい。
【0029】
本発明では、上記材料を血液とを接触させることにより、上記材料と細胞との相互作用により、インターロイキン1の産生誘導が行われる。このインターロイキン1産生細胞とは、抹消血中の細胞に限らず、リンパ管、リンパ節または脾臓等から得られる細胞も含まれる。血液中には、インターロイキン1を産生するこれらの細胞が多く含まれている。血液中のこれらの細胞が、上記材料と作用し、インターロイキン1が産生誘導されるが、直接作用せずとも、上記材料と血液中の何らかの因子とが作用して誘導された別の因子を介して上記細胞により、インターロイキン1の産生が誘導されてもよい。
【0030】
本発明では、上記特定の表面粗さの材料が、血液と接触されてインターロイキン1の産生誘導が行われるため、癌患者等の血液からインターロイキン1を産生誘導することができるため、本発明は癌などの治療に好適に用いることができる。また、本発明の方法によってインターロイキン1が産生誘導された血液を癌患者に戻すことにより、癌患者内因性のインターロイキン1を患者に与えることができるため、患者の体内において優れた抗腫瘍効果を発揮させることができる。
【0031】
本発明を用いた癌治療法について以下に例示する。癌患者の血液を血液回路等を用いて連続的に体外に導き、繊維状またはビーズ状の上記インターロイキン1誘導材料を充填したカラム部にて、好ましくは体温付近の温度にて血液を上記材料と接触させ、血液内にインターロイキン1を産生誘導する。しかる後、この癌患者内因性のインターロイキン1を多量に含む血液および血液成分を癌患者体内に連続的に返血する。上記治療方法に用いられる装置としては、市販の体外循環システム等の上記操作過程を可能にする装置であれば任意のものを用いることができる。
【0032】
また、本発明を用いた別の癌治療法としては、あらかじめ癌患者の血液を採血し、上記材料を内部に含有する血液バッグ内で上記材料と癌患者血液とを接触させ、インターロイキン1を産生誘導し、遠心分離等の手段を用いて血漿等を分離後、患者に投与する方法が挙げられる。また、上記方法によって得た癌患者内因性のインターロイキン1を多量に含む癌患者自身の血漿等を冷凍保存し、しかる後に、必要に応じて患者に投与することも可能である。
【0033】
【作用】
本発明では、中心線平均粗さRa値が0.58μm〜2.46μmであり、でこぼこ平均間隔Sm値が5.8μm〜101μmの範囲にある凸凹を表面に有する材料が血液と接触されるため、上記材料の上記表面形状により血液中のインターロイキン1を産生する細胞と該材料との相互作用が促進されることにより、あるいは上記材料と何らかの因子とが相互作用し、それによって誘導された別の因子により、インターロイキン1の産生が効率よく誘導され得る。
【0034】
【実施例】
以下、本発明の実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を詳細に説明する。
【0035】
まず、下記の実施例1〜13及び比較例1〜13に用いた試料の作製方法及び試験方法を説明する。
(1)研磨フィルムの作製方法(実施例1〜6、比較例1〜6)
インターロイキン1産生誘導材料としてのフィルムを用意し、該フィルムの表面をメチルアルコールで洗浄した後、ストルアス社(デンマーク)製、自動研磨機(商品名;プラノボールペデマックス)に、220、500、1200、2400、及び4000メッシュのサンドペーパーを取り付けたものを用い、表面の両側に表面粗さを持つ研磨フィルムを作製した。
【0036】
(2)フィルムによるインターロイキン1産生誘導試験方法(実施例1〜9、比較例1〜9)
フィルムを3cm×4cmの大きさに切り、これをさらに5mm×5mmの大きさの細片にした。これらの細片を注射用生理食塩水(大塚製薬社製)で洗浄後、同じく注射用生理食塩水で洗浄した2m1用チューブ(eppendorf 社) にすべて充填した。
【0037】
フィルムを充填したチューブにヘパリン採血した健常人新鮮血2.0mlを加えて回転円盤に取り付けて、37℃にて2時間、回転数26rpmで転倒混和した。しかる後、血液を回収し、後述の方法で血漿中のインターロイキン1の濃度を測定した。
【0038】
(3)ビーズによるインターロイキン1産生誘導実験(実施例10〜13及び比較例10〜13)
ビーズを注射用生理食塩水(大塚製薬社製)で洗浄後、同じく注射用生理食塩水で洗浄した2m1用チューブ(eppendorf 社) に規定数を充填した。
【0039】
各ビーズを充填したチューブにヘパリン採血した健常人新鮮血1.6m1を加えて回転円盤に取り付けて、37℃にて2時間、回転数26rpmで転倒混和した。しかる後、血液を回収し、後述の方法で血漿中のインターロイキン1の濃度を測定した。
【0040】
(4)表面粗さの測定方法
各実施例及び比較例において記載されている中心線平均粗さRa値(カットオフ値は、フィルムでは0.8mm、ビーズでは0.08mm)及びでこぼこ平均間隔Sm値は、表面粗さ測定装置(小坂研究所製、商品名;サーフコーダSE−30D)により測定した。
【0041】
(5)血漿中インターロイキン1濃度測定方法
インターロイキン1産生誘導試験後の血液を遠心分離して血漿を採取し、血漿中のインターロイキン−1βの濃度をインターロイキン−1βモノクローナル抗体を用いて、免疫酵素抗体法(Madgenix社製、商品名;IL−1B−EASIAR)にて測定した。この測定方法の検出限界濃度は10pg/mlであった。
【0042】
また、採血直後の血液を遠心分離して血漿を採取して、血漿中のインターロイキン−1βの濃度を同様にして測定した。採血直後の血液の血漿中インターロイキン−1β濃度は何れも検出限界以下であった。
【0043】
実施例1〜3及び比較例1〜3
PETフィルム(ユニチカ社製、ポリエチレンテレフタレートフィルム、商品名:エンブレットS−75)を用い、上述した研磨フィルムの作製方法に従って、5段階に研磨されたフィルムを作製した。そして、未研磨のフィルム及び5段階に研磨されたフィルムのそれぞれについて、Ra値及びSm値を求めた後、上述したフィルムによるインターロイキン1産生誘導試験を行った。結果を下記の表1に示す。
【0044】
【表1】
Figure 0003633637
【0045】
表1から明らかなように、Ra値が0.6lμm以上の実施例1〜3では、インターロイキン1の産生誘導が急激に増加した。
なお、Sm値については、比較例1の未研磨フィルムでは475μmであったのに対して、それ以外のフィルムで30〜130μmの範囲であった。
【0046】
実施例4〜6及び比較例4〜6
PETフィルムをCAフィルム(アートプラス社製、酢酸セルロースフィルム、商品名;アセチフィルムVR−R)に代え、さらに、メチルアルコールで洗浄する代わりにメチルアルコールでソックスレー抽出(24時間)を行って可塑剤を抽出し、フィルムを取り出した後、15時間風乾後、さらに80℃で5時間乾燥させたこと以外は、実施例1〜3及び比較例1〜3と同様にして未研磨及び研磨フィルムを作製し、インターロイキン1産生誘導試験を行った。結果を表2に示す。
【0047】
【表2】
Figure 0003633637
【0048】
表2から明らかなように、実施例4〜6、すなわち1200メッシュ以下のサンドペーパーで研磨した研磨フィルム(Ra値=0.58μm以上)においてインターロイキン1の産生誘導は急激に増加した。
【0049】
なお、Sm値については、未研磨フィルム(比較例3)が250μmであったのに対して、研磨フィルムは30〜130μmの範囲であった。
実施例7〜9及び比較例7〜9
1200メッシュのサンドペーパーを用いて研磨したこと、及び研磨時間を変化させたこと以外は実施例1〜3と同様にして、表面粗さRa値が0.6μm以上、Sm値が30〜370μmの範囲にある5種類の研磨フィルムを作製した(表3参照)。
【0050】
上記5種類の研磨フィルムと未研磨のPETフィルム(比較例7)とを用意し、実施例1と同様にしてインターロイキン1の産生誘導試験を行った。結果を表3に併せて示す。
【0051】
【表3】
Figure 0003633637
【0052】
表3から明らかなように、Sm値が200μmを超えている比較例7〜9に比べて、Sm値が200μm以下である実施例7〜9では、インターロイキン1の産生誘導が著しく大きいことがわかる。すなわち、同程度のRa値を持っていても、Sm値が200μm以下でないと産生誘導の効果が出ないことがわかる。
【0053】
実施例10
酢酸セルロースペレット(アートプラス社製、可塑剤としてアセチルクエン酸トリエチル30重量%含有)を射出成形し、直径2.5mmの球状ビーズを作製した。このビーズ50gをメタノール300mlにより、50℃で24時間ソックスレー抽出し、可塑剤を抽出した。しかる後、可塑剤が抽出されたビーズをステンレス製バットに取り出し、15時間風乾した後、さらに80℃で5時間乾燥させた。
【0054】
ポットミル(東洋エンジニアリング社製、商品名;5l−セラミックポットミルBP−5)に、上記ビーズ200ml及び同容量の研磨材;WHITE ABRAX(WA)#34(日本研磨材工業社製)を投入し、さらにセラミックポットミル用ボール(東洋エンジニアリング社製、商品名;BB−13)数個を投入し、ボール研磨機(日陶科学社製ポットミル、商品名;AN−3S)により5時間研磨した。このようにして、Ra値1.36μm及びSm値97.2μmのビーズを得た。
【0055】
得られたビーズをメタノールで3回洗浄して、注射用生理食塩水(大塚製薬社製)で5回洗浄した。その後、同じく注射用生理食塩水で洗浄した2ml用チューブ(eppendorf 社)に充填した。充填量はビーズ70個とした。
【0056】
比較例10とともに上記ビーズによるインターロイキン1産生誘導実験を行った。結果を下記の表4に示す。
比較例10
実施例10と同様にして、但し、研磨をしていないRa値0.186μm、Sm値298.7μm のビーズを作製した。
【0057】
実施例10と同様に、洗浄し、次に2m1用チューブに上記ビーズ70個を充填し、上記ビーズによるインターロイキン1産生誘導試験を行った。結果を、下記の表4に示す。
【0058】
【表4】
Figure 0003633637
【0059】
実施例11
ナイロン66ペレット(宇部興産社製、商品名;ウベ66 2020B)を射出成形し、直径2.5mmの球状ビーズを作製した。
【0060】
ポットミル(東洋エンジニアリング社製、商品名;5l−セラミックポットミルBP−5)に、上記ビーズ200ml及び同容量の研磨材;WHITE ABRAX(WA)#34(日本研磨材工業社製)を投入し、さらにセラミックポットミル用ボール(東洋エンジニアリング社製、商品名;BB−13)数個を投入し、ボール研磨機(日陶科学社製ポットミル、商品名;AN−3S)により5時間研磨した。
【0061】
上記のようにして、Ra値9.1μm及びSm値123.5μmのビーズを得た。
このビーズをメタノールで3回洗浄して、注射用生理食塩水(大塚製薬社製)で5回洗浄した。その後、同じく注射用生理食塩水で洗浄した2ml用チューブ(eppendorf 社)に充填した。充填量はビーズ70個とした。
【0062】
比較例11とともに上記のビーズによるインターロイキン1産生誘導実験を行った。結果を下記の表5に示す。
比較例11
実施例11と同様にして、但し、研磨をしていない、Ra値0.210μm、Sm値294.4μmのビーズを作製した。
【0063】
実施例11と同様に、上記ビーズを洗浄して、70個を2ml用チューブに充填した。
【0064】
【表5】
Figure 0003633637
【0065】
実施例12及び比較例12
比較例10で得たCAビーズ(未研磨ビーズ)を、懸濁重合により作製したスチレン−ジビニルベンゼン共重合体(共重合比は1:1)微粒子(積水化学工業社製、粒径3μm)2重量%を懸濁した酢酸セルロース(ダイセル化学工業社製、商品名;リンター)の1重量%の塩化メチル−エタノール(重量比で9:1)溶液に浸漬した後、風乾し、それによって微粒子コーティングビーズ(実施例12)を作製した。
【0066】
ビーズ表面上に、上記微粒子が酢酸セルロースによってコーティングされていることを電子顕微鏡により確認した。
上記のようにして得た微粒子コーティングビーズ(実施例12)及び未コーティングビーズ(比較例12)各70個を用い、前述したビーズによるインターロイキン1産生誘導試験を行った。結果を表6に示す。
【0067】
【表6】
Figure 0003633637
【0068】
表6から明らかなように、微粒子コーティングビーズ(実施例12)では、Ra値が2.46μm、Sm値が62.5μmであるためか、未コーティングビーズ(比較例12)に比べて、インターロイキン1の産生誘導量は25倍であった。
【0069】
実施例13及び比較例13
インターロイキン1の産生誘導試験に用いる多孔性の担体として、ナイロン66ペレット(宇部興産社製)を射出成形し、粒径2.5mmのビーズを調製した。上記ビーズ4.6kgをとり、コーティング液として、酢酸セルロース樹脂(ダイセル化学工業社製)5重量%の塩化メチレン/メタノール(重量比9:1)溶液を用い、フローコーター(フロイント産業社製、商品名;FL0−5)を用いスプレーし、酢酸セルロース樹脂でコーティングされたビーズを作製した。このコーティングされたビーズを走査型電子顕微鏡により写真撮影し、観察した結果、厚み200μmのコーティング層を有する表面多孔性のビーズが得られていることが確認された。
【0070】
なお、コーティング条件は下記の通りである。
スプレー空気圧 :3.5kg/cm
スプレー液温度 :室度
スプレー液流速 :100ml/分
スプレー温度 :60℃
スプレーノズル口径:1.2mm
上記のようにして得たコーティングビーズ(実施例13)及び未コーティングビーズ(比較例13)各70個を用い、前述したビーズによるインターロイキン1産生誘導試験を行った。結果を表7に示す。
【0071】
【表7】
Figure 0003633637
【0072】
表7から明らかなように、コーティングビーズ(実施例12)ではRa値が1.18μm、Sm値が5.8μmであり、未コーティングビーズ(比較例12)に比べて、インターロイキン1の産生誘導量は31倍であった。
【0073】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、上記特定の表面形状を有する材料と血液とが接触されるため、インターロイキン1の産生が効果的に誘導される。従って、癌患者の血液を用いることにより、癌患者由来の内因性インターロイキン1を患者に与えることが出来、新規な癌治療方法を提供することが可能となる。
【0074】
また、本発明では、上記のような表面形状を有する材料を用いれば良いだけであり、従来の生理活性物質固定化材料のように、固定化された生理活性物質等の脱離が発生しないため、安全性の点においても優れており、かつ特定の固定化リガンドも必要ないため効率的である。
【図面の簡単な説明】
【図1】でこぼこ平均間隔Sm値を求めるための山の定義方法を説明するため図。
【図2】でこぼこ平均間隔Sm値を求めるための方法を説明するための図。

Claims (1)

  1. 中心線平均粗さRa値が0.58μm〜2.46μmであり、でこぼこ平均間隔Sm値が5.8μm〜101μmの範囲にある凹凸を表面に有する材料と血液とを接触させることにより、インターロイキン1の産生を誘導することを特徴とするインターロイキン1の産生誘導方法。
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