JP3633511B2 - コイルの絶縁被覆検査方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、コイルの絶縁状態を検査するコイルの絶縁被覆検査方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、コイル表面の絶縁層の劣化を検査する方法として、例えば特開2000−155150号公報に記載されたものがある。この公報記載のものは、固定用の粘着テープ上に固定した水素イオン濃度試験紙に純水を含ませ、この濃度試験紙をコイル表面に所定時間(約20秒間)押し付ける。水素イオン濃度試験紙に含ませた純水中にはコイル表面の付着物が溶解し、この付着物の酸性度に応じて水素イオン濃度試験紙が変色する。これにより、コイル表面の絶縁劣化を検査する。
【0003】
また、塩水中に浸したコイルと電極との間に電圧を印加し、この状態でコイルと電極との間に漏れ電流が発生すると気泡が生じ、これに基づきコイルの絶縁劣化を検査する方法もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、水素イオン濃度試験紙を使用する方法では、その試験紙を劣化が発生すると思われる部位に押し付けてその特定部位の検査を行うものであることから、コイル全体の検査が一度にできず、特にコイル内部については検査が不可能であり、実用的ではない。
【0005】
また、塩水中にコイルを浸して漏れ電流を検出する方法では、コイル全体の検査が可能であるものの、塩水に浸したコイルは、腐食の恐れがあって検査後のコイルの品質劣化を招き、製品として使用できなくなってしまう。
【0006】
そこで、この発明は、コイル全体の検査を一度に可能としつつ、検査後のコイルの品質劣化を回避することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
前記目的を達成するために、請求項1の発明は、絶縁被覆されたコイルと電極とを、前記コイルに対して腐食性がなくかつ導電性を備え、フッ素系不活性液体にアルコール系溶剤を混合した溶剤中に浸し、前記溶剤中のコイルと電極との間に電圧を印加して前記コイルからの漏れ電流を検出するコイルの絶縁被覆検査方法であって、前記溶剤が収容される容器を円筒形状とし、この円筒容器の円筒部周囲を電極とし、前記コイルを、その中心と前記円筒容器の中心とが一致するように前記円筒容器内の中心位置に配置するようにしている。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明の検査方法において、円筒容器の円筒部自体を電極となる導電性材料とし、この円筒部の上下の開口部を閉塞する蓋部材を絶縁材料としてある。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明の検査方法において、アルコール系溶剤は、イソプロピルアルコールとしてある。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1ないし3のいずれかの発明の検査方法において、溶剤が収容される容器内に圧力を加えるようにしてある。
【0014】
請求項5の発明は、請求項1ないし4のいずれかの発明の検査方法において、検査後、溶剤を容器から排出し、溶剤排出後の容器内を減圧するようにしてある。
【0015】
請求項6の発明は、請求項1ないし5のいずれかの発明の検査方法において、溶剤中に、二つの基準値計測用電極を浸し、この二つの基準値計測用電極相互間に、コイルと電極との間に印加した電圧と同電圧を印加し、前記コイルと電極との間の漏れ電流と、前記基準値計測用電極相互間の漏れ電流とにより、コイルの絶縁性を検査するようにしてある。
【0016】
請求項7の発明は、請求項1ないし6のいずれかの発明の検査方法において、溶剤中に、基準値計測用電極を浸し、この基準値計測用電極と電極との間に、コイルと電極との間に印加した電圧と同電圧を印加し、前記コイルと電極との間の漏れ電流と、前記基準値計測用電極と電極との間の漏れ電流とにより、コイルの絶縁性を検査するようにしてある。
【0017】
請求項8の発明は、絶縁被覆されたコイルに対して腐食性がなくかつ導電性を備え、フッ素系不活性液体にアルコール系溶剤を混合した溶剤と、この溶剤中に配置され、前記溶剤中に浸したコイルとの間に電圧が印加される電極と、前記コイルと電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、前記コイルからの漏れ電流を検出する電流検出手段とを有するコイルの絶縁被覆検査装置であって、前記溶剤が収容される容器を円筒形状とし、この円筒容器の円筒部周囲を電極とし、前記コイルを、その中心と前記円筒容器の中心とが一致するように前記円筒容器内の中心位置に配置してある構成としてある。
【0019】
請求項9の発明は、請求項8の発明の構成において、円筒容器の円筒部自体を電極となる導電性材料で構成し、この円筒部の上下の開口部を閉塞する蓋部材を絶縁材料で構成してある。
【0021】
【発明の効果】
請求項1の発明によれば、絶縁被覆されたコイルと電極とを、コイルに対して腐食性がなくかつ導電性を備えた溶剤中に浸し、前記溶剤中のコイルと電極との間に電圧を印加して前記コイルからの漏れ電流を検出するようにしたため、コイル全体の絶縁検査を可能としつつ、検査後のコイルの品質劣化を回避することができる。
また、フッ素系不活性液体を使用することで、コイルの腐食を防止できるとともに、フッ素系不活性液体にアルコール系溶剤を混合することで、導電性を持たせることができる。
さらに、溶剤が収容される容器を円筒形状とし、この円筒容器の円筒部周囲を電極とし、前記コイルを、その中心と前記円筒容器の中心とが一致するように前記円筒容器内の中心位置に配置してあるため、コイルにおける傷の位置が異なる場合であっても、傷の位置と周囲の電極との距離の総計は大きく変化せず、したがって同程度の傷であれば漏れ電流値も大きく変化せず、安定した計測を行うことができる。
【0023】
請求項2の発明によれば、導電性材料とした円筒容器の円筒部自体が電極となるため、電極専用の部材が不要となり、その分部品点数が少なくて済み、コスト低下を図ることができる。
【0026】
請求項3の発明によれば、アルコール系溶剤として、イソプロピルアルコールを使用することで、導電性を持たせることができる。
【0027】
請求項4の発明によれば、溶剤が収容される容器内に圧力を加えるようにしたため、溶剤がコイルの内部にまで浸透し、コイル全体の検査を確実に行うことができる。
【0028】
請求項5の発明によれば、検査後、溶剤を容器から排出し、溶剤排出後の容器内を減圧するようにしたため、コイル内部に浸透した溶剤を確実に蒸発させて除去することができる。なお、減圧値は真空に近いほど溶剤の沸点が低くなるから、より早く溶剤を蒸発させて除去することができる。
【0029】
請求項6の発明によれば、溶剤中に、二つの基準値計測用電極を浸し、この二つの基準値計測用電極相互間に、コイルと電極との間に印加した電圧と同電圧を印加し、前記コイルと電極との間の漏れ電流と、前記基準値計測用電極相互間の漏れ電流とにより、コイルの絶縁性を検査するようにしたため、溶剤そのものの導電率の変化による計測誤差を防止することができる。
【0030】
請求項7の発明によれば、溶剤中に、基準値計測用電極を浸し、この基準値計測用電極と電極との間に、コイルと電極との間に印加した電圧と同電圧を印加し、前記コイルと電極との間の漏れ電流と、前記基準値計測用電極と電極との間の漏れ電流とにより、コイルの絶縁性を検査するようにしたため、溶剤そのものの導電率の変化による計測誤差を防止することができる。
【0031】
請求項8の発明によれば、絶縁被覆されたコイルに対して腐食性がなくかつ導電性を備え、フッ素系不活性液体にアルコール系溶剤を混合した溶剤と、この溶剤中に配置され、前記溶剤中に浸したコイルとの間に電圧が印加される電極と、前記コイルと電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、前記コイルからの漏れ電流を検出する電流検出手段とを有する構成としたため、コイル全体の絶縁検査を可能としつつ、検査後のコイルの品質劣化を回避することができる。
また、溶剤が収容される容器を円筒形状とし、この円筒容器の円筒部周囲を電極とし、前記コイルを、その中心と前記円筒容器の中心とが一致するように前記円筒容器内の中心位置に配置するようにしたため、コイルにおける傷の位置が異なる場合であっても、傷の位置と周囲の電極との距離の総計は大きく変化せず、したがって同程度の傷であれば漏れ電流値も大きく変化せず、安定した計測を行うことができる。
【0033】
請求項9の発明によれば、導電性材料で構成した円筒容器の円筒部自体が電極となるため、電極専用の部材が不要となり、その分部品点数が少なくて済み、構成の簡素化およびコスト低下を図ることができる。
【0035】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき説明する。
【0036】
図1は、この発明の実施の一形態を示すコイルの絶縁被覆検査装置の全体構成図である。内部が密閉された圧力容器1内には、後述するコイル7に対して腐食性がなく電子装置の洗浄に用いられるフッ素系不活性液体に、導電性を備えたイソピロピルアルコール(IPA)を7%混合した溶剤3が収容されている。
【0037】
圧力容器1の上部開口は、蓋5により密閉され、この蓋5に装着されたバルブ6を通して溶剤3が圧力容器1内に入れられる。この溶剤3中に絶縁被覆されたコイル7と電極9とが浸されるとともに、基準値計測用電極としての第2の電極11および第3の電極13も浸されている。
【0038】
コイル7の端部をハーメチックシールを通じて電気的に取り出したリード線15が、蓋5に装着した接続端子17の下端に接続され、電極9の上端に接続したリード線19は蓋5に装着した接続端子21の下端に接続されている。そして、接続端子17の上端はリード線23を介して電圧印加手段としての直流電源25の正極に接続され、接続端子21の上端はリード線27を介して電流検出手段としての電流計29に接続されている。直流電源25の負極と電流計29とはリード線31で接続されている。
【0039】
第2,第3の各電極11,13は、リード線33,35を介し、蓋5に装着されている接続端子37,39の下端にそれぞれ接続され、接続端子37,39の上端は、リード線41,43を介して直流電源45の正極,電流計47にそれぞれ接続されている。直流電源45の負極と電流計47とはリード線49により接続されている。
【0040】
圧力容器1の底部には、圧力容器1内の溶剤3を排出するためのバルブ51が設けられている。また、真空ポンプ53に接続され途中にバルブ55を備えた配管57は、蓋5を通して圧力容器1内に連通している。さらに、蓋5には、圧力容器1内の真空度を計測する真空計59に接続された検出端子61が取り付けられている。
【0041】
次に作用を説明する。溶剤3が入れられた圧力容器1内に、開放したバルブ6から図示しないコンプレッサにより空気を供給して圧力容器1内の圧力を高める。このとき、バルブ51,55は閉じておき、圧力を高めた後は、バルブ6も閉じる。これにより溶剤3中に浸されているコイル7は、溶剤3が内部まで確実に浸透する。
【0042】
この状態で、直流電源25により、コイル7と電極9との間に、100V程度の電圧を印加するとともに、直流電源45により、第2の電極11と第3の電極13との間にも同等の電圧を印加する。電圧印加後、電流計29で、コイル7と電極9との間の漏れ電流の値A1を、電流計47で第2の電極11と第3の電極13との間の漏れ電流の値A2を、それぞれ読み取る。
【0043】
そして、上記各読み取った電流値A1,A2と印加電圧値とから、それぞれの抵抗値R1,R2を求め、その差R1−R2をコイル7の絶縁抵抗値とする。この絶縁抵抗値が小さいほど、コイル7からの漏れ電流が多くなり、絶縁不良が生じていることになる。
【0044】
溶剤3の導電率は、溶剤3に含まれるIPAの濃度で変化し、この濃度は、IPAの蒸発などにより変化する。このため、溶剤3の電気抵抗も経時変化するので、コイル7の絶縁抵抗値を求める際に、第2,第3の電極11,13を用いて計測した溶剤3の抵抗値R2をR1から差し引くことで、溶剤3そのものの導電率の変化による計測誤差を防止することができる。
【0045】
検査終了後は、バルブ51を開放して溶剤3を圧力容器1から抜き取り、さらに、バルブ55を開放して真空ポンプ53により圧力容器1内を真空状態とする。これにより、コイル7の内部に浸透した溶剤3を確実に蒸発させて除去することができる。なお、圧力容器1内は真空とせず、単に減圧するだけでも構わないが、減圧値は真空に近いほど溶剤の沸点が低くなるから、より早く溶剤を蒸発させて除去することができる。
【0046】
上記したコイルの絶縁被覆検査装置を用いた検査方法によれば、溶剤3中にコイル7を浸しているので、コイル7の全体を一度に検査できる上、溶剤3としてイソピロピルアルコールを7%混合したフッ素系不活性液体を使用しているので、コイル7の腐食が回避されて検査後のコイル7の品質悪化が防止される。
【0047】
表1は、溶剤として、フッ素系不活性液体100%とした例(1)、フッ素系不活性液体にIPAを7%混合した上記実施形態での溶剤3とした例(2)、エタノール100%とした例(3)、水(水道水)100%とした例(4)において、コイル7が良品の場合と不良品の場合とを、図2に示す実験装置で漏れ電流による抵抗を測定した結果である。図2中で101は容器、103は溶剤、105はエナメル銅線、107は電極、109は抵抗計である。
【0048】
【表1】
これによれば、(1)は、導電性の溶剤を含んでいないので絶縁抵抗が大となって良否の判別ができず(NG)、(2)は抵抗大であるが導電性を備えたIPAを含んでいるので良否の判別は可能(OK)、(3)は良否の判別可能(OK)であるが引火性があるので問題(NG)、(4)は良否の判別可能であるが(OK)乾燥性悪く、製品の腐食も発生する(NG)。これらの結果により、総合判断として、上記した実施形態で用いた(2)の例、すなわちフッ素系不活性液体にIPAを7%混合した溶剤が製品の腐食を発生させることなく、安全に良品、不良品の判別を行うことができる。
【0049】
なお、溶剤中のIPAの割合が7%を越えると、溶剤の抵抗値が下がり、コイルの絶縁抵抗計測には都合がよいが、労働安全衛生法の規制対象となるので、IPAの割合は7%としてある。もちろん、IPAの割合は、7%を多少下回っても構わない。
【0050】
また、図1の実施形態では、電流計29,47で電流値をそれぞれ測定してから各抵抗値を求めているが、電流計29,47に代えて、図2の実験装置で示してある抵抗(オーム)計などで、抵抗値を直接読み取るようにしてもよい。
【0051】
図3は、この発明の他の実施形態を示すコイルの絶縁被覆検査装置の全体構成図である。この実施形態は、圧力容器63を円筒形状の円筒容器とし、圧力容器63の円筒部65自体を、導電性材料で構成して電極としたものである。円筒部65の上下の開口部を覆う蓋部材としての上板67および底板69は、いずれも絶縁材料で構成してある。
【0052】
そして、圧力容器63内には、前記図1の実施形態で使用した溶剤3と同様な溶剤71が収容されている。この溶剤71は、タンク73内に収容されたものが、配管75に設けた液送ポンプ77およびバルブ79を通して圧力容器63に供給される。上記した圧力容器63の底部(底板69)とタンク73とは、バルブ81を備えた配管83により接続されている。
【0053】
圧力容器63に収容された溶剤71中には、コイル85および基準値計測用電極87がそれぞれ浸され、コイル85は円筒部65の中心位置に、基準値計測用電極87は円筒部65の内壁近傍に、それぞれ配置されている。
【0054】
コイル85の端部をハーメチックシールを通じて電気的に取り出したリード線89が、円筒部65に装着した接続端子91の一端に接続され、接続端子91の円筒部65の外部における他端は、リード線93の一端に接続されている。リード線93には、接続端子91側から順に電流検出手段としての電流計95および電圧印加手段としての直流電源97がそれぞれ接続され、リード線93の他端は、電極となっている円筒部65に接続されている。
【0055】
基準値計測用電極87の上端に接続したリード線99は、円筒部65に装着した接続端子111の一端に接続され、接続端子111の円筒部65の外部における他端は、リード線113の一端に接続されている。リード線113の途中には、電流計115が介装され、リード線113の他端は、電流計95と直流電源97との間のリード線93に接続されている。
【0056】
また、真空ポンプ117に一端が接続され途中にバルブ119を備えた配管121の他端は、円筒部65を通して圧力容器63内の溶剤71の液面より上部の空間に連通している。さらに図示しないコンプレッサに接続されて途中にレギュレータ123およびバルブ125を備えた配管127も、円筒部65を通して圧力容器63内に連通している。
【0057】
次に作用を説明する。まず、液送ポンプ77により、開放したバルブ79を通してタンク73内の溶剤が圧力容器63内に所定量供給される。この状態で、圧力容器63内に、開放したバルブ125から図示しないコンプレッサにより空気を供給して圧力容器63内の圧力を高める。このとき、バルブ79,81,119は閉じておき、圧力を高めた後は、バルブ125も閉じる。これにより溶剤71中に浸されているコイル85は、溶剤71が内部まで確実に浸透する。
【0058】
この状態で、直流電源97により、コイル85と電極となっている円筒部65との間および、基準値計測用電極87と円筒部65との間に、それぞれ100V程度の電圧を印加する。電圧印加後、電流計95で、コイル85と円筒部65との間の漏れ電流の値A1を、電流計115で基準値計測用電極87と円筒部65との間の漏れ電流の値A2を、それぞれ読み取る。
【0059】
そして、上記各読み取った電流値A1,A2と印加電圧値とから、それぞれの抵抗値R1,R2を求め、その差R1−R2をコイル85の絶縁抵抗値とする。この絶縁抵抗値が小さいほど、コイル85からの漏れ電流が多くなり、絶縁不良が生じていることになる。
【0060】
溶剤71の導電率は、溶剤71に含まれるIPAの濃度で変化し、この濃度は、IPAの蒸発などにより変化する。このため、溶剤71の電気抵抗も経時変化するので、コイル85の絶縁抵抗値を求める際に、基準値計測用電極87を用いて計測した溶剤71の抵抗値R2をR1から差し引くことで、溶剤71そのものの導電率の変化による計測誤差を防止することができる。
【0061】
検査終了後は、バルブ81を開放して溶剤71を圧力容器63から抜き取り、さらに、バルブ119を開放して真空ポンプ117により圧力容器63内を真空状態とする。これにより、コイル85の内部に浸透した溶剤71を確実に蒸発させて除去することができる。なお、圧力容器63内は真空とせず、単に減圧するだけでも構わないが、減圧値は真空に近いほど溶剤の沸点が低くなるから、より早く溶剤を蒸発させて除去することができる。
【0062】
上記図3に示したコイルの絶縁被覆検査装置を用いた検査方法によれば、図1に示した実施形態と同様な効果を有する他、以下に示す効果を備えている。すなわち、この実施形態では、コイル85の周囲を囲むように電極となる円筒部65が配置されているため、コイル85に発生する傷の位置が異なる場合に、その傷から所定方向に周囲の電極のある位置に対して近づいたとすると、その電極位置に対しコイル85を中心として逆方向の周囲の電極のある位置に対しては遠ざかることになり、トータル的には傷と周囲の電極との距離の総計が大きく変化しないことになる。
【0063】
このため、コイル85に発生する傷の位置が周方向に沿って異なる場合であっても、同程度の傷であれば漏れ電流値も大きく変化せず、安定した計測を行うことができる。
【0064】
図4は、円筒容器201内に、溶剤71を入れ、溶剤71中で傷の付いたエナメル銅線205を矢印Aで示す上下および矢印Bで示す横にそれぞれ移動させたときの絶縁抵抗値を、抵抗計207にて計測するための実験装置である。
【0065】
表2は、エナメル銅線205の下端を溶剤71の液面から深さ20mm〜180mmまで20mm毎に、矢印A方向に順次下降させた状態での抵抗値を示し、図5は、それを図表化したものである。これによれば、エナメル銅線205の傷の位置が、円筒容器201内にて上下方向位置が変化しても、抵抗値変化はほとんど見られないことがわかる。
【0066】
【表2】
表3は、エナメル銅線205を、深さ51mm、100mmおよび150mmにそれぞれ下降させた状態で、中心位置から横方向(矢印B方向)に120mmまで20mm毎に移動させた状態での抵抗値を示し、図6は、深さ51mmでの抵抗値変化を図表化したものである。これによれば、エナメル銅線205の傷の位置が、円筒容器201内にて横方向(半径方向)位置が変化しても、抵抗値の大きな変化が見られないことがわかる。
【0067】
【表3】
なお、上記図3の実施形態では、圧力容器63の円筒部65そのものを導電性材料で構成して電極とすることで、電極専用の部材が不要となり、その分部品点数が少なくて済み、コスト低下を図ることができるが、円筒部65を導電性材料で構成せず、その内面に電極となる部材を別途設ける構成としても構わない。
【0068】
また、図1の実施形態では、基準値計測用電極として第2の電極11および第3の電極13の二つ設けているが、図3の実施形態のように、一つの直流電源97に対して電流計95,115を互いに並列接続して一つの基準値計測用電極87を備える構成と同様な回路構成とすることで、基準値計測用電極を一つとすることもできる。逆に、図3の実施形態においては、図1の実施形態のように、直流電源を二つ設けて基準値計測用電極を二つ設ける回路構成としても構わない。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一実施形態を示すコイルの絶縁被覆検査装置の全体構成図である。
【図2】各種溶剤による抵抗値検査を行った実験装置の概略図である。
【図3】この発明の他の実施形態を示すコイルの絶縁被覆検査装置の全体構成図である。
【図4】図3の実施形態でのコイル傷の位置変化による抵抗値変化を計測するための実験装置の概略図である。
【図5】図4の実験装置におけるコイル傷の上下方向位置に対する絶縁抵抗値変化特性図である。
【図6】図4の実験装置におけるコイル傷の横方向位置に対する絶縁抵抗値変化特性図である。
【符号の説明】
1 圧力容器
3,71 溶剤
7,85 コイル
9 電極
11 第2の電極(基準値計測用電極)
13 第3の電極(基準値計測用電極)
25,97 直流電源(電圧印加手段)
29,95 電流計(電流検出手段)
63 圧力容器(円筒容器)
65 円筒部(電極)
67 上板(蓋部材)
69 底板(蓋部材)
Claims (9)
- 絶縁被覆されたコイルと電極とを、前記コイルに対して腐食性がなくかつ導電性を備え、フッ素系不活性液体にアルコール系溶剤を混合した溶剤中に浸し、前記溶剤中のコイルと電極との間に電圧を印加して前記コイルからの漏れ電流を検出するコイルの絶縁被覆検査方法であって、前記溶剤が収容される容器を円筒形状とし、この円筒容器の円筒部周囲を電極とし、前記コイルを、その中心と前記円筒容器の中心とが一致するように前記円筒容器内の中心位置に配置してあることを特徴とするコイルの絶縁被覆検査方法。
- 円筒容器の円筒部自体を電極となる導電性材料とし、この円筒部の上下の開口部を閉塞する蓋部材を絶縁材料としたことを特徴とする請求項1記載のコイルの絶縁被覆検査方法。
- アルコール系溶剤は、イソプロピルアルコールであることを特徴とする請求項1記載のコイルの絶縁被覆検査方法。
- 溶剤が収容される容器内に圧力を加えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載のコイルの絶縁被覆検査方法。
- 検査後、溶剤を容器から排出し、溶剤排出後の容器内を減圧することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のコイルの絶縁被覆検査方法。
- 溶剤中に、二つの基準値計測用電極を浸し、この二つの基準値計測用電極相互間に、コイルと電極との間に印加した電圧と同電圧を印加し、前記コイルと電極との間の漏れ電流と、前記基準値計測用電極相互間の漏れ電流とにより、コイルの絶縁性を検査することを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載のコイルの絶縁被覆検査方法。
- 溶剤中に、基準値計測用電極を浸し、この基準値計測用電極と電極との間に、コイルと電極との間に印加した電圧と同電圧を印加し、前記コイルと電極との間の漏れ電流と、前記基準値計測用電極と電極との間の漏れ電流とにより、コイルの絶縁性を検査することを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載のコイルの絶縁被覆検査方法。
- 絶縁被覆されたコイルに対して腐食性がなくかつ導電性を備え、フッ素系不活性液体にアルコール系溶剤を混合した溶剤と、この溶剤中に配置され、前記溶剤中に浸したコイルとの間に電圧が印加される電極と、前記コイルと電極との間に電圧を印加する電圧印加手段と、前記コイルからの漏れ電流を検出する電流検出手段とを有するコイルの絶縁被覆検査装置であって、前記溶剤が収容される容器を円筒形状とし、この円筒容器の円筒部周囲を電極とし、前記コイルを、その中心と前記円筒容器の中心とが一致するように前記円筒容器内の中心位置に配置してあることを特徴とするコイルの絶縁被覆検査装置。
- 円筒容器の円筒部自体を電極となる導電性材料で構成し、この円筒部の上下の開口部を閉塞する蓋部材を絶縁材料で構成したことを特徴とする請求項8記載のコイルの絶縁被覆検査装置。
Priority Applications (1)
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