JP3632300B2 - 車両速度計測装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、電磁ピックアップ式の回転センサを利用して車両速度を計測する車両速度計測装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、自動車には、スピードメータを駆動したり、車両速度に応じてエンジンや自動変速機等を制御するために、車両速度を検出する車速センサが備えられている。そして、車両速度は、車両の低速走行から高速走行までの広範囲にわたって正確に検出する必要があるので、車速センサには、例えば特開平5−180326号公報に開示されているように、変速機の出力軸等,車両の走行速度に応じて回転する回転軸に歯車状のマグネットリングを設け、その回転を磁気抵抗素子(MRE素子)又はリードスイッチにより検出する、MRE或いはリードスイッチ式の回転センサが使用されている。
【0003】
一方、車輪のスリップ制御を行なうアンチスキッド制御装置(ABS)やトラクション制御装置(TRC)を搭載した車両には、上記車速センサとは別に、車輪の回転速度を検出する車輪速センサが備えられている。そして車輪速センサには、例えば特開昭61−193961号公報に開示されているように、通常、車輪の回転軸に、外周に複数の突起が形成されたロータを設け、このロータの突起の通過を電磁ピックアップにより検出する電磁ピックアップ式の回転センサが用いられる。つまり、車両のスリップ制御では、車輪の高速回転時の回転速度や車輪の回転変化を応答遅れなく検出する必要があり、逆に、極低速回転時の回転検出は不要であることから、高速回転時の追従性確保,コスト低減等のために、電磁ピックアップ式の回転センサが用いられているのである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、こうした車輪速センサを備えた車両において、車両速度検出のために車速センサを別途設けることは、車両のコストアップにつながるといった問題があり、また近年では、ABS等のスリップ制御装置を搭載した車両が標準化しつつあることから、車輪速センサを備えた車両においては、車輪速センサを利用して車両速度を計測できるようにすることが要求されている。
【0005】
しかしながら、車輪速センサには電磁ピックアップ式の回転センサが使用されることから、上記要求に応えるべく、車輪速センサからの検出信号を用いて車両速度を求めるようにすると、車両の極低速走行時の車両速度の検出精度が低下し、例えば、エンジン制御装置において、車両の極低速走行時に通常のエンジン制御を実行するかアイドル回転制御を実行するかを切り換えるために行なわれる、車両の停止判定を良好に実行することができなくなるといった問題があった。
【0006】
つまり、MRE或いはリードスイッチ式の回転センサは、回転軸の回転位置を検出するものであるため、回転軸が極低速で回転している場合にも、回転軸の回転位置を問題なく検出でき、その検出信号から回転速度(延いては車両速度)を高精度に検出できるが、電磁ピックアップ式の回転センサは、ロータの外周に等間隔で形成された突起の通過に伴う磁気変化を検出するものであるため、ロータが取り付けられた回転軸が極低速で回転している場合には、検出信号が小さくなってしまい、回転軸の極低速回転時の回転速度(延いては車両速度)を検出できなくなることがある。
【0007】
特に、電磁ピックアップ式の車輪速センサでは、ロータが、車輪の回転軸に対してその回転中心からずれて固定されると、ロータと電磁ピックアップとの距離(エアギャップ)が回転軸の回転位置によって変化するので、車両の極低速走行時に、エアギャップが広がった部分において検出信号を発生できず、この検出信号に基づき車両速度を演算すると、車両速度が回転軸の回転に同期して変動してしまうことがある。
【0008】
一方、エンジン制御装置等では、例えば、車両走行時には空燃比制御等の通常のエンジン制御を行ない、車両停止時にはエンジンの回転速度を所定のアイドル回転速度に制御するアイドル回転制御を行なうというように、車両走行時と車両停止時とで制御内容を切り換える必要がある。そして、こうした制御の切り換えを、車両の極低速走行時に車速センサに重畳されたノイズや車両の振動の影響を受けることなく行なえるようにするために、従来では、例えば、車速センサを用いて求めた車両速度が所定の停止判定速度未満であれば、車両が停止していると判断して、計測(演算)した車両速度を強制的に零に補正する、といった手順で、車両の停止判定を行なうようにしている。
【0009】
ところが、電磁ピックアップ式の車輪速センサを用いて車両速度を計測するようにした場合、車両の極低速走行時に、検出信号の低下によって車両速度を検出できず、上記停止判定によって車両停止を誤判定してしまうとか、或いは、車両の極低速走行時に、ロータの組付け誤差によって車両速度が回転軸の回転に同期して変動し、上記停止判定によって、車両の走行と停止とを車輪の回転に同期して周期的に判定してしまう、といった問題が生じる。
【0010】
そして、例えば、車両が自動変速機の動作によってクリープ走行している際に、車両停止を誤判定した場合には、エンジンの回転速度がアイドル回転速度よりもやや高めになるため、アイドル回転制御によって吸入空気量を少なくしてしまい、その後、車両運転者のブレーキ操作によって車両が実際に停止したときに、エンジンの回転速度が落ち込む可能性がある。
【0011】
また例えば、上記のように車両の停止判定が周期的になされると、アイドル回転制御も周期的に実行されることになるため、車両停止判定のハンチング周期とエンジン回転速度の変化周期とにより、場合によっては過補正となり、エンジンの回転速度がハンチングしてしまうこともある。
【0012】
なお、こうした問題を解決するためには、車輪速センサを用いてエンジン制御等に必要な極低速走行時の車両速度を求めることができるかどうかを検査することも考えられるが、電磁ピックアップ式の車輪速センサは車両に組付けた後でなければ動作確認を行なうことができないことから、こうした検査を行なうのも困難である。
【0013】
本発明は、こうした問題に鑑みなされたもので、従来よりABS等において使用されている電磁ピックアップ式の回転センサからの検出信号に基づき車両速度を計測でき、しかも、その計測結果を用いて、エンジン制御等の車両制御を、制御性を低下することなく良好に実行できる車両速度計測装置を提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】
かかる目的を達成するためになされた請求項1に記載の車両速度計測装置においては、カウンタが、電磁ピックアップ式の回転センサから出力される検出信号を計数し、車両速度演算手段が、所定周期毎に、そのカウンタの値に基づき演算車両速度を演算し、車両速度判定手段が、その演算された演算車両速度が予め設定された停止判定速度よりも低いか否かを判定し、演算車両速度が停止判定速度以上であれば、演算車両速度を、車両制御に用いる制御車両速度に設定する。また、停止判定時間計測手段が、この車両速度判定手段にて演算車両速度が停止判定速度よりも低いと判定されてから演算車両速度が停止判定速度以上であると判定されるまでの停止判定時間を計測する。そして、車両速度判定手段にて演算車両速度が停止判定速度よりも低いと判定されると、車両停止判定手段が、停止判定時間計測手段にて計測された停止判定時間が所定時間内であるか否かを判定し、停止判定時間が所定時間を越えている場合には、制御車両速度を車両停止を表す値に設定し、停止判定時間が所定時間を越えていなければ、制御車両速度を車両速度停止判定手段で用いた停止判定速度に設定する。
【0015】
つまり、本発明の車両速度計測装置においては、車両速度判定手段にて演算車両速度が停止判定速度よりも低いと判断されたときにそのまま車両停止を判定するのではなく、車両速度判定手段にて、所定時間連続して、演算車両速度が停止判定速度よりも低いと判定された場合にのみ、車両停止を判定して、制御車両速度を車両停止を表す値に設定する。このため、本発明によれば、車両の極低速走行時に、電磁ピックアップ式の回転センサから出力される検出信号の信号レベルが低下して、この検出信号から演算車両速度を正確に求めることができなくなった場合に、車両停止を誤判定してしまうのを防止できる。
【0016】
また既述したように、電磁ピックアップ式の回転センサは、ロータが回転軸に対してその回転中心からずれて固定されると、ロータの外周に形成された突起と電磁ピックアップとの間の距離がロータの回転に応じて変化し、回転センサから出力される検出信号がロータの1回転を1周期として増減することになり、このような場合には、車両の極低速走行時に、車両速度判定手段において、周期的に、演算車両速度が停止判定速度よりも低いと判定されることになるが、本発明によれば、車両速度判定手段において、演算車両速度が停止判定速度よりも低いことが周期的に判定されても、その判定時間が所定時間に達していなければ、車両停止を判定しないことから、ロータが回転軸に対して回転中心からずれて固定されている場合に、車両の停止と走行とを交互に判定してしまうようなことはなく、演算車両速度が実際に停止判定速度よりも低くなってから、車両停止を判定することができる。
【0017】
従って、本発明によれば、電磁ピックアップ式の回転センサを用いて車両速度及び車両停止を良好に計測することができ、この計測結果から、エンジン制御等の車両制御を、制御性を低下させることなく良好に実行することができるようになる。
【0018】
また更に、本発明の車両速度計測装置では、演算車両速度が停止判定速度以上であれば、演算車両速度を車両制御に用いる制御車両速度に設定し、逆に、演算車両速度が停止判定速度よりも低い場合には、停止判定時間が所定時間を越えていれば制御車両速度を車両停止を表す値に設定し、停止判定時間が所定時間を越えていなければ制御車両速度を停止判定速度に設定することから、当該車両速度検出装置にて得られる制御車両速度は、車両停止時の値か車両走行時の値となり、車両制御を行う装置側では、制御車両速度の値から車両停止を判定して、制御を切り換えることができるようになる。
【0019】
なお、車両停止判定手段が停止判定時間から車両停止を判定する所定時間としては、長くすればする程、車両停止の誤判定の確率を少なくすることができるが、実際に車両が停止した際の判定が遅れることから、車両停止判定用の所定時間としては、請求項2に記載のように、車両が停止判定速度で走行しているときにロータが1回転するのに要する時間に設定することが望ましい。そして、このようにすれば、回転センサのロータが回転軸に対して回転中心からずれて固定された場合に生じる、車両停止の周期的な誤判定を確実に防止できる。
【0020】
また、本発明において使用される電磁ピックアップ式の回転センサは、ロータを車輪に同期して回転する回転軸に固定したものであればよく、例えば、駆動輪に動力を伝達する変速機の出力軸にロータを固定したものであってもよいが、請求項3に記載のように、車輪の回転軸に固定されたロータの回転に応じた信号を発生する車輪速センサを使用するようにすれば、より簡単且つ安価に実現することができる。つまり、既述したように、電磁ピックアップ式の車輪速センサは、従来より、車両のスリップ制御装置等で使用されており、量産化されているので、回転センサとして車輪速センサを利用すれば本発明の車両速度計測装置を簡単且つ安価に実現できるようになるのである。
【0021】
また、車輪速センサはスリップ制御装置を搭載した車両であれば備えられているので、請求項3に記載の装置によれば、スリップ制御装置を搭載した車両において、スリップ制御と車両速度の計測とで車輪速センサを共用させることができ、本発明をより安価に実現できることになる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施例を図面と共に説明する。
図1は本発明が適用された自動車用制御システムの概略構成図である。
図1に示すように、本実施例の自動車用制御システムには、車両の運転状態を検出するセンサの一つとして、左右の駆動輪10,20の回転を夫々検出する車輪速センサ16,26が備えられている。
【0023】
これら各車輪速センサ16,26は、夫々、エンジン2からの駆動力が変速機4及びディファレンシャルギヤ6を介して伝達される左右の駆動輪10,20の回転軸10a,20aに固定され、外周に等間隔で複数の突起(例えば48個の突起)が形成されたロータ12,22と、ロータ12,22の外周に対向する位置(車体側)に固定された電磁ピックアップ14,24とからなる、電磁ピックアップ式の回転センサにより構成されている。従って、車輪速センサ16,26においては、駆動輪10,20の回転に応じてロータ12,22が回転し、その回転に伴いロータ12,22の突起が電磁ピックアップ14,24を通過する度に、電磁ピックアップ14,24から検出信号が出力されることになる。そして、この検出信号は、車両制動時に最大の制動力が得られるように駆動輪10,20のブレーキ油圧を制御するアンチスキッド制御用の電子制御装置(以下,ABS−ECUという)30に入力される。
【0024】
ABS−ECU30は、車輪速センサ16,26を含むアンチスキッド制御用の各種センサからの検出信号を取り込み、その取り込んだ検出信号から車両制動時の駆動輪10,20のスリップ状態を検出して、そのスリップ状態が所定のスリップ状態となるように、駆動輪10,20のブレーキ装置に設けられたアンチスキッド制御用のアクチュエータ(ABSアクチュエータ)18,28を各々制御するものであり、CPU,ROM,RAM等を中心とするマイクロコンピュータにて構成されている。
【0025】
そして、ABS−ECU30は、こうしたアンチスキッド制御のための演算処理に加えて、車輪速センサ16,26からの検出信号に基づき左右の駆動輪10,20の平均車輪速度VSP1 を求め、この平均車輪速度VSP1 に基づき、例えば、車両速度(以下、単に車速という)が60km/hのときに1分間当りのパルス数が2548パルス(637*4パルス/min at 60km/h )となるようにパルス信号の反転周期を算出し、この反転周期を基に出力レベルを反転させることにより、車速信号SP1としてのパルス信号をエンジン制御用の電子制御装置(以下、E/G−ECUという)32に出力する、車速信号出力処理も実行する。
【0026】
なお、ABS−ECU30において、車輪速センサ16,26からの検出信号に基づき車速信号SP1を生成するのは、従来の自動車用制御システムにおいて車速検出のために変速機4の出力軸等に設けられるMRE或はリードスイッチ式の車速センサが出力する検出信号と同等の車速信号を、E/G−ECU32に入力するためであり、これによりE/G−ECU32は、車速センサを搭載している場合と同様の信号入力処理にて、車速信号SP1を取り込むことができる。また、ABS−ECU30から出力される車速信号SP1は、従来用いられていた車速センサからの検出信号と同等であるため、この車速信号SP1を図示しないスピードメータの駆動装置や自動変速機の制御装置等に入力すれば、これら各装置側で車速を検出して、スピードメータの駆動制御,自動変速機の変速制御等を実行させることができる。
【0027】
次に、E/G−ECU32は、ABS−ECU30からの車速信号SP1を含むエンジン制御用の各種センサからの信号を取り込み、空燃比制御,アイドル回転制御,点火時期制御等の各種エンジン制御を実行するためのものであり、ABS−ECU30と同様、CPU,ROM,RAM等を中心とするマイクロコンピュータにて構成されている。そして、E/G−ECU32は、車速信号SP1に基づき車速を演算し、その演算した車速から車両が停止しているか否かを判断して、車両は停止していると判断した際には、エンジン2の回転速度が所定のアイドル回転速度となるようにエンジン2の吸入空気量を制御するアイドル回転制御を実行し、車両は走行中であると判断した際には、例えば、空燃比が目標空燃比となるように燃料供給量を制御する空燃比制御等の車両走行時のエンジン制御を実行する。
【0028】
次に、このように構成された本実施例の自動車用制御システムにおいて、車速演算のためにE/G−ECU32において実行される演算処理について図2に示すフローチャートに沿って説明する。
図2(a)に示す如く、E/G−ECU32は、ABS−ECU30から入力される車速信号SP1により割込みを発生させ、この割込みルーチンにて車速信号計測用のカウンタCSPDをカウントアップする(ステップ110)。また、E/G−ECU32は、図2(b)に示す如く、所定時間毎(本実施例では471[msec.]毎)のタイマ割込みを発生させ、この割込みルーチンにて車速演算処理を実行する。
【0029】
車速演算処理では、まずステップ210(以下、ステップをSと記載する)にて、前回の割込みタイミングでRAMに記憶しておいたカウンタCSPDの値CSPDOを読み込み、この値CSPDOと現在のカウンタCSPDの値とに基づき、次式(1) を用いて車速tSPD’を算出する。
【0030】
tSPD’=2×CSPD+CSPDO …(1)
そして、続くS220では、次回の車速演算のために、現在のカウンタCSPDの値をCSPDOとしてRAM内に格納し(CSPDO=CSPD)、続くS230にて、カウンタCSPDを値0にクリアする(CSPD=0)。
【0031】
この結果、当該車速演算処理では、所定時間(471[msec.])毎に、2進デジタル値の最小ビットであるLSBが1km/hとなるように車速tSPD’を求めることができると共に、車速tSPD’に前回のカウント値CSPDOを加えることにより、車速tSPD’の計測精度を向上することができる。
【0032】
つまり本実施例では、ABS−ECU30にて、「637*4パルス/min at 60km/h」 となるように車速信号SP1が生成され、E/G−ECU32に入力されることから、実際の車速が60km/hであるとき、車速演算処理を実行する1周期内に20パルス分の車速信号SP1が入力されるように、車速演算の実行周期を471msec.に設定し、この演算周期内に入力される車速信号SP1の数をカウンタCSPDにてカウントして、このカウント値から上記(1) を用いて車速tSPD’を求めることにより、実際の車速が60km/hであるときに得られる車速の演算値tSPD’が値60(実際の車速が1km/hであれば演算値tSPDが値1)となるようにしており、しかも、車速演算には上記演算式(1) を用いて、カウンタCSPDによる最新のカウント値を2倍した値に前回のカウント値を加えたものを車速tSPD’として算出することにより、ノイズ等によって生じる車速信号SP1のカウント誤差に伴う車速tSPD’の演算誤差が少なくなるようにしている。
【0033】
次に、S240では、前回の割込みタイミングでRAMに記憶しておいた車速tSPDの演算値SPDOと、S210にて今回算出した車速tSPD’とに基づき、次式(2) を用いてこれら各値の平均値を求め、この平均値を車速tSPDとして設定する、2分の1なまし処理を行なう。なお、このなまし処理も、ノイズ等によって誤ったパルスが入力された場合の演算誤差を吸収するための処理である。そして、このなまし処理後の車速tSPDは、次回の処理のために上記演算値SPDOとしてRAMに格納される(tSPD=SPDO)。
【0034】
tSPD=(tSPD’+SPDO)/2 …(2)
こうしてABS−ECU30から入力される車速信号SP1に基づく車速演算が完了すると、今度は、この演算した車速tSPDに基づき車両の停止判定を行ない、その判定結果に従いエンジン制御に用いる車速SPDを設定する車両停止判定処理(S300)を実行する。
【0035】
なお、以下の説明において、上記S210〜S240にて実行される車両速度演算手段としての処理により求められた車両停止判定前の車速tSPDを、演算車速tSPDといい、S300にて実行される車両停止判定処理により設定される車両停止判定後の車速SPDを、制御車速SPDといい、これら両者を区別する。
【0036】
この車両停止判定処理では、まずS310にて、上記演算した演算車速tSPDが予め設定された停止判定速度(本実施例では車速3km/hを表わす値3)以上か否かを判定する、車両速度判定手段としての処理を実行する。そして、演算車速tSPDが停止判定速度以上であれば、現在車両は走行中であると判定して、S320にて、停止判定時間計時用のディレイカウンタCSPDSTPを値0にクリアした後、S330にて、演算車速tSPDをそのまま制御車速SPDとして設定し、これをRAMに格納した後、当該処理を一旦終了する。
【0037】
一方、演算車速tSPDが停止判定速度(値3)未満である場合には、S340に移行して、ディレイカウンタCSPDSTPをインクリメントする、停止判定時間計測手段としての処理を実行する。そして、続くS350にて、このディレイカウンタCSPDSTPの値が所定値(本実施例では値6)以上であるか否かを判定する。
【0038】
なお、この判定に用いる所定値は、車速が停止判定速度(3km/h)のときに駆動輪10,20が1回転する間(約2.8秒)に車速演算が実施される回数(値6=2.8/0.471)であり、S350では、演算車速tSPDが停止判定速度(3km/h)未満であるときにカウントアップされるディレイカウンタCSPDSTPの値から、演算車速tSPDが停止判定速度未満となる停止判定時間が車両が停止判定速度で走行しているときに駆動輪10,20が1回転するのに要する時間(約2.8秒)を越えたか否かを判断する。
【0039】
そして、ディレイカウンタCSPDSTPの値が所定値(値6)未満であれば、S360にて、制御車速SPDとして、車両走行時の最低車速となる停止判定速度(値3)を設定し、これをRAMに格納した後、当該処理を終了する。また逆に、ディレイカウンタCSPDSTPの値が所定値(値6)以上であれば、車両停止を判定して、S370にて、制御車速SPDに値0を設定し、これをRAMに格納した後、当該処理を終了する。なお、本実施例では、S350〜S370の処理が本発明の車両停止判定手段に相当する。
【0040】
以上説明したように、本実施例の自動車用制御システムでは、ABS−ECU30側にて、車輪速センサ16,26からの検出信号を、従来用いられていた車速センサからの検出信号と同等の車速信号SP1に変換してE/G−ECU32に入力し、E/G−ECU32側で、この車速信号SP1に基づき、車速演算を行なう。そして、車速演算の結果得られた演算車速tSPDが停止判定速度(3km/h)以上か否かを判断し、演算車速tSPDが停止判定速度未満であれば、この状態が駆動輪10,20が1回転するのに要する時間以上継続しているか否かを判断し、駆動輪10,20が1回転する間に連続して演算車速tSPDが停止判定速度未満である場合にのみ、車両が停止しているものとして制御車速SPDを値0に設定し、演算車速tSPDが停止判定速度未満であっても、その状態が駆動輪10,20が1回転する間継続していなければ、制御車速SPDを停止判定速度(値3)に設定する。
【0041】
このため、本実施例によれば、E/G−ECU32においてエンジン制御を車両走行時の制御から車両停止時のアイドル回転制御に切り換えるために車両停止を判定する際の誤判定を防止でき、特に車輪速センサ16,26のロータ12,14が駆動輪10,20の回転軸10a,20aに対して回転中心からずれて固定された場合に生じる停止判定のハンチングを確実に防止できる。以下、この点について図3を用いて詳しく説明する。
【0042】
なお、図3は、車輪速センサ16,26のロータ12,14が駆動輪10,20の回転軸10a,20aに対して回転中心からずれて固定されることにより、車両の極低速走行時に車輪速センサ16,26から車輪1回転当りに出力される検出信号(例えば48個)の内、半分の検出信号のレベルが低下して、ABS−ECU30側でそのレベル低下した半分の検出信号を取り込むことができなかった場合の車両停止の判定動作を表わすタイムチャートである。
【0043】
図3に示すように、ABS−ECU30にて車輪速センサ16,26から出力される検出信号の半分を取り込むことができなかった場合、ABS−ECU30からE/G−ECU32に入力される車速信号SP1も、本来入力されるべき車速信号SP1の半数分だけ抜けることになる(図に点線で示す車速信号)。
【0044】
そして、このとき車両が停止判定速度(3km/h)で走行しているとすると、車速信号SP1は車速演算周期(0.471[msec.])毎に1個入力されることから、本来、カウンタCSPDは1となり、車両停止判定前の演算車速tSPDは値3になるが、上記のように車輪の1回転当り(回転周期:2.8秒)に車速信号SP1が半分(6個の内3個)抜けると、車速信号SP1が抜けた演算周期内ではカウンタCSPDは初期値0になったままとなり、車両停止判定前の演算車速tSPDは、値3から値2,1,0へと変化し、その後車速信号SP1が入力されることにより、演算車速tSPDは、値0から値1,2,3へと変化する。
【0045】
このため、車両の停止判定を、従来のように、演算車速tSPDが停止判定速度(値3)以上か否かを判定して、演算車速tSPDが停止判定速度(値3)未満である場合に車両が停止したと判断して、制御車速SPD′を値0に設定するようにしていると、制御車速SPD′は、図3の最下欄に示すように、車輪の回転周期(約2.8秒)を1周期として、車両停止を表わす値0と車両走行時の最低車速を表わす値3とに交互に変化することになり、安定したエンジン制御を実行できなくなってしまう。
【0046】
しかし、本実施例では、演算車速tSPDが停止判定速度未満になるとディレイカウンタCSPDSTPを用いてその状態の継続時間を計時し、ディレイカウンタCSPDSTPが、車両が停止判定速度で走行しているときの車輪の回転周期に対応した所定値6以上でなければ、車両は走行しているものとして、制御車速SPDを最低車速(停止判定速度3km/h)に設定することから、演算車速tSPDが周期的に停止判定速度以上になる場合には、車両停止を判定してしまうことはなく、車両停止の誤判定を確実に防止できる。
【0047】
また、本実施例において、車両が実際に停止した場合には、E/G−ECU32に車速信号SP1が入力されず、車速演算処理を実行する度にディレイカウンタCSPDSTPがカウントアップされることから、そのカウント値が値6に達した時点で制御車速SPDが値0となり、車両停止時のアイドル回転制御を開始できる。
【0048】
従って、本実施例によれば、E/G−ECU32において、車両停止の誤判定を生じることなく制御車速SPDを設定して、車両走行時と車両停止時とでエンジン制御を良好に切り換えることができ、安定したエンジン制御を実現できる。そしてこのように、本実施例によれば、車輪速センサを用いて求めた制御車速を用いてエンジン制御を良好に実行できるので、従来のように車輪速センサとは別に車速センサを設ける必要はなく、自動車用制御システムの構成を簡単にすることができる。
【0049】
以上本発明の一実施例について説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、種々の態様をとることができる。
例えば、上記実施例では、E/G−ECU32において、一定時間内(車速演算周期内)に入力される車速信号SP1の数に基づき車速を演算するものとして説明したが、例えば車速信号SP1の立上がりエッジ又は立下がりエッジの時間間隔から車速を演算するようにしてもよい。
【0050】
また上記実施例では、車輪速センサ16,26からの検出信号をABS−ECU30に入力し、ABS−ECU30側でこの検出信号を車速信号SP1に変換するように構成したが、これは、従来の自動車用制御システムを大きく変更することなく本発明を実現できるようにするためであり、E/G−ECU32に車輪速センサ16,26からの検出信号を直接入力するように構成すれば、上記実施例のようにABS−ECU30を車速信号生成手段として動作させる必要はない。またABS−ECU30側で車速演算を行ない、その演算結果(車速データ)をE/G−ECU32に伝送するようにしてもよい。また例えば、エンジン制御やアンチスキッド制御を一つの電子制御装置(ECU)にて実行するようにした車両用制御システムであれば、このECUに車輪速センサ16,26からの検出信号を直接入力するようにすればよい。
【0051】
そして、このように、車輪速センサ16,26からの検出信号を直接利用して車速演算する場合であっても、その検出信号の所定時間当りの入力数或は検出信号の入力間隔(時間)等から車速を演算することができ、その演算結果から、上記実施例と同様に、車両の停止判定を行なうようにすれば、車両停止の誤判定を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例の車両用制御システムの構成を表わす概略構成図である。
【図2】E/G−ECUにおいて車速演算のために実行される演算処理を表わすフローチャートである。
【図3】車両停止判定時の動作を説明するタイムチャートである。
【符号の説明】
2…エンジン 4…変速機 6…ディファレンシャルギヤ
10,20…駆動輪 10a,20a…回転軸 12,22…ロータ
14,24…電磁ピックアップ 16,26…車輪速センサ
30…ABS−ECU 32…E/G−ECU
Claims (3)
- 車輪に同期して回転する回転軸に固定され、外周に複数の突起が形成されたロータと、該ロータの回転に伴う突起の通過を検出する電磁ピックアップとからなり、該電磁ピックアップから車輪の回転に応じた検出信号を発生する回転センサと、
該回転センサから出力される検出信号を計数するカウンタと、
所定周期毎に該カウンタの値に基づき演算車両速度を演算する車両速度演算手段と、
該車両速度演算手段にて演算された前記演算車両速度が予め設定された停止判定速度よりも低いか否かを判定し、前記演算車両速度が前記停止判定速度以上と判定した場合は、前記演算車両速度を、車両制御に用いる制御車両速度に設定する車両速度判定手段と、
該車両速度判定手段にて前記演算車両速度が前記停止判定速度よりも低いと判定されてから前記演算車両速度が前記停止判定速度以上であると判定されるまでの停止判定時間を計測する停止判定時間計測手段と、
前記車両速度判定手段にて前記演算車両速度が前記停止判定速度よりも低いと判定されると、前記停止判定時間計測手段にて計測された停止判定時間が所定時間内であるか否かを判定し、前記停止判定時間が前記所定時間を越えている場合に、前記制御車両速度を車両停止を表す値に設定し、前記停止判定時間が前記所定時間を越えていなければ、前記制御車両速度を前記車両速度停止判定手段で用いた前記停止判定速度に設定する車両停止判定手段と、
を備えたことを特徴とする車両速度計測装置。 - 前記車両停止判定手段が前記停止判定時間から車両停止を判定する所定時間として、車両が前記停止判定速度で走行しているときに前記ロータが1回転するのに要する時間を設定してなることを特徴とする請求項1に記載の車両速度計測装置。
- 前記回転センサは、車輪の回転軸に固定されたロータの回転に応じた信号を発生する車輪速センサであることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の車両速度計測装置。
Priority Applications (1)
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JP14618596A JP3632300B2 (ja) | 1996-06-07 | 1996-06-07 | 車両速度計測装置 |
Applications Claiming Priority (1)
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JP14618596A JP3632300B2 (ja) | 1996-06-07 | 1996-06-07 | 車両速度計測装置 |
Publications (2)
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JPH09329608A JPH09329608A (ja) | 1997-12-22 |
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Family Applications (1)
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JP14618596A Expired - Lifetime JP3632300B2 (ja) | 1996-06-07 | 1996-06-07 | 車両速度計測装置 |
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JP (1) | JP3632300B2 (ja) |
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-
1996
- 1996-06-07 JP JP14618596A patent/JP3632300B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
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