JP3632217B2 - 静電荷像現像用トナー - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、静電荷像現像用トナーに関する。更に詳しくは、特定の分子量分布を有する樹脂をバインダー樹脂として用いる定着性(低温定着性、定着強度、耐オフセット性)及び耐ブロッキング性に優れた静電荷像現像用トナーに関する。
【0002】
【従来の技術】
着色剤等が分散されたバインダー樹脂を粉砕・分級して得られる静電荷像現像用トナーは、速やかに定着し、かつトナーが定着ローラー表面に転移して、以後定着工程を通過する転写材をローラー上のトナーによって汚す、いわゆるオフセット現象を発生しないことが必要である。従って、定着時には低温で速やかに溶融すること、そして溶融時に溶融トナーが凝集性を示すことが必要である。また、トナーは、現像器内の攪はんによる機械的衝撃にたいして微粉を発生することなく、またトナー自体が凝集することなく良好な流動性を示すことが必要であり、さらに、トナーは保存時あるいは運搬時等にブロッキングするようなことがあってはならない。このようなトナーは、流動性、帯電性等が著しく劣化しており、もはや現像剤としての機能を果たすことが出来ない。これらの性能を全て満足するトナーを設計することは極めて困難であり、特に低温定着性・定着強度と耐オフセット性・耐ブロッキング性は相反する性能である為両者の性能を両立することは至難の技である。そこで、トナーの主要成分であるバインダー樹脂には微妙な硬度及び熱溶融特性が要求される。
【0003】
従来からバインダー樹脂として使用される重合体の分子量及び分子量分布について多くの提案がなされている。例えば、数平均分子量が1000−4000の低温融解、高流動性樹脂を50−95重量%含有するトナーが提案されているが(特公昭59−107360号公報)、耐オフセット性、耐ブロッキング性になお問題を残している。また、特公昭63−32180号公報においては分子量が10−8×10及び10−8×10の各々の領域に少なくとも1つの極大値をもつバインダー樹脂を使用することが提案されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記公報によるトナーは、転写材への定着性、特に定着強度と耐ブロッキング性については未だ満足のいく結果が得られていない。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点を解決して、定着性(低温定着性、定着強度、耐オフセット性)耐ブロッキング性に優れたトナーを提供すべく鋭意検討の結果、上記性能を満足するトナーを完成するに至った。すなわち本発明の要旨はバインダー樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該バインダー樹脂がスチレン−アクリル酸エステル共重合体であり、重量平均分子量が5×104 以上で、かつゲルパーミュエーションクロマトグラムが、分子量1×103 〜5×106 の間にn(nは3以上の整数)個のピークを有し、低分子量側からi(1≦i≦n−1)番目のピークとi+1番目のピークの共通接線と分子量曲線とによって囲まれる面積をSi 、分子量曲線と分子量軸とによって囲まれる面積をSN 、分子量曲線に外接する長方形の面積をSN ′としたとき、
【0006】
【数3】
Figure 0003632217
【0007】
【数4】
Figure 0003632217
なる関係を満たしていることを特徴とする静電荷像現像用トナーにある。
【0008】
以下に本発明を詳細に説明する。
とSおよびS′について、ピーク数4の場合を図1を用いて具体的に説明する。この場合、斜線部分の面積が
【0009】
【数5】
Figure 0003632217
となり、白抜きの部分の面積がS、また、破線で囲んだ部分がS′となる。
【0010】
【数6】
Figure 0003632217
である樹脂をバインダー樹脂として用いると、定着性および耐ブロッキング性に優れたトナーが得られる。
上記のようなバインダー樹脂の中でも、
【0011】
【数7】
Figure 0003632217
或いは
【0012】
【数8】
Figure 0003632217
であればより好ましく、上記2式を同時に満たしていると特に好ましい。
【0013】
【数9】
Figure 0003632217
または
【0014】
【数10】
Figure 0003632217
【0015】
であるとピークとピークの間の樹脂成分が不足していることになり、樹脂同士の相溶性が悪化する。従って、定着性および耐ブロッキング性を同時に満足するトナーは得られない。
【0016】
また、バインダー樹脂の重量平均分子量が5×10未満である場合には、耐オフセット性及び耐ブロッキング性の面で問題がある。
尚、本発明において、使用する樹脂或いはトナー中の樹脂の分子量分布を測定するには、公知の通常の方法が用いられる。例えば、以下のような通常のゲルパーミュエーションクロマトグラフィ法を用いればよい。
【0017】
【表1】
1.測定条件
温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン
流速:0.5ml/min
試料濃度:0.1wt%
試料注入量:100μl
【0018】
2.カラム
1×10〜2×10の分子量領域を適正に測定するために使用するカラムとしては通常、市販のポリスチレンゲルカラムを複数本組合せたものを用いる。本発明の測定に際しては、東ソー(株)製のGMHXL(30cm×2本)を用いた。
【0019】
3.検量線
検量線作成に当っては、標準ポリスチレンを用いて行う。標準ポリスチレンとしては例えばPressure chemical Co.製あるいは東ソー(株)製の例えば分子量が6×10、2.8×10、6.2×10、1.03×10、1.67×10、4.39×10、1.02×10、1.86×10、4.22×10、7.75×10、1.26×10のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレンを用いるのが適当である。
4.検出器
検出器としてはRI(屈折率)検出器を用いる。
【0020】
本発明にバインダー樹脂として用いられる樹脂に特に制限はないが、スチレン単独重合体、スチレン−アクリル酸エステル共重合体、スチレン−メタクリル酸エステル共重合体、スチレン−アクリル酸エステル−メタクリル酸エステル共重合体等のスチレン系樹脂、及びポリエステル樹脂が好ましく、スチレン系樹脂、中でもスチレン−アクリル酸エステル共重合体が特に好適に使用できる。また、本発明の条件を満たすバインダーの製法としては、1×10〜5×10の間にピークを有するn個の樹脂を公知の方法でブレンドする方法等が挙げられる。
【0021】
本発明のトナーに用いる着色剤としては、公知のものが全て使用でき、たとえば、カーボンブラック、ニグロシン、ベンジジンイエロー、キナクリドン、ローダミンB、フタロシアニンブルーなどがある。
また、本発明によるトナーは、乾式1成分現像剤又は2成分現像剤のいずれにも使用でき、1成分の磁性体としては、フェライト、マグネタイト等をはじめとする鉄、コバルト、ニッケル等の強磁性元素を含む合金或いは化合物、または強磁性元素を含まないが適当に熱処理することによって強磁性を示すようになる合金、例えば、マンガン−銅−アルミニウムあるいはマンガン−銅−スズ等のマンガンと銅とを含むホイスラー合金と呼ばれる種類の合金、または二酸化クロム等を挙げることが出来る。磁性体は、平均粒径0.3〜30μmの微粉末の形でバインダー樹脂中に均一に分散される。磁性体粒子の含有量は、バインダー樹脂100重量部当り20〜70重量部が好ましく、特には40〜70重量部が望ましい。
【0022】
トナーの帯電制御は、バインダー樹脂、着色剤自体で行っても良いが、必要に応じて帯電制御剤を併用しても良い。正帯電制御剤として、第4アンモニウム塩、塩基性又は電子供与性の有機物質、負帯電制御剤として、金属キレート類、含金染料、酸性又は電子求引性の有機物質等を用いることができる。この他、金属酸化物等の無機粒子や前記有機物質で表面処理した無機物質を用いても良い。帯電制御剤の添加量は、バインダー樹脂の帯電性、着色剤の添加量及び分散方法を含めた製造方法、その他の添加剤の帯電性等の条件を考慮した上で決めることができるが、バインダー樹脂に対して0.1〜10重量部が適当である。これら帯電制御剤は、バインダー樹脂中に混合添加して用いても、トナー粒子表面に付着させた形で用いても良い。
【0023】
さらにまた、固体電解質、高分子電解質、電荷移動錯体、酸化スズ等の金属酸化物等の導電体、半導体、あるいは強誘電体、磁性体等を添加しトナーの電気的性質を制御することができる。
この他、トナー中には熱特性、物理的特性等を調整する目的で各種可塑剤及び離型剤等の助剤を添加することも可能である。その添加量は、0.1〜10重量部が適当である。
【0024】
さらに、トナー粒子にたいして、TiO、Al、SiO等の微粉末を添加し、これらでトナー粒子表面を被覆せしめることによってトナーの流動性及び耐凝集性の向上を図ることができる。その添加量は、0.1〜10重量部が好ましい。
【0025】
本発明のトナーの製造方法には、従来から用いられている各種トナー製造法が適用できるが、例えば一般的製造法として次の例が挙げられる。まず、樹脂、着色剤に場合により帯電制御剤等の添加剤を加え、ボールミル、V型混合機、S型混合機、ヘンシェルミキサー等で均一に分散する。次いで分散物を双腕ニーダー、加圧ニーダ等で溶融混練する。該混練物をハンマーミル、ジェットミル、ボールミル等の粉砕機で粉砕し、さらに得られた粉体を風力分級機等で分級する。
【0026】
得られたトナーは、必要に応じてキャリアと混合して電子写真用現像剤を形成させ、従来から実施されている電子写真法による複写に用いることができる。なお、キャリアは、公知の鉄粉系、フェライト系キャリア等の磁性物質またはそれらの表面にコーティングを施したものをトナー1部に対して10部〜100部用いることが好ましい。
【0027】
【実施例】
以下、本発明の具体的実施例について説明するが、本発明は、これらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例中の「部」は「重量部」を、「Mw」は「重量平均分子量」を表す。
(実施例1)
ゲルパーミュエーションクロマトグラムにおいて3.2×10、5.3×10、6.0×10の位置に3つのピークを有し、Mw=6.9×10
【0028】
【数11】
Figure 0003632217
【0029】
であるスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体100部、ポリプロピレンワックス(三洋化成(株)製「ビスコール550P」3部)、カーボンブラック(三菱化成(株)製「#30」)6部、ニグロシン染料(オリエント化学製「ボントロンN−04」)2部を分散混合した後、二軸押出機を用いて溶融混練した。冷却後、ハンマーミルにより粗粉砕し、次いで、超音速ジェットミル粉砕機にて微粉砕した。得られた粉体を風力分級機で分級し平均粒径10.3μmのトナーAを得た。
【0030】
比較例1)ゲルパーミュエーションクロマトグラムにおいて8.0×103 、4.9×105 の位置に2つのピークを有し、Mw=2.5×105
【0031】
【数12】
Figure 0003632217
であるスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして平均粒径10.3μmのトナーBを得た。
【0032】
(実施例3)
ゲルパーミュエーションクロマトグラムにおいて2.0×10、3.0×10、8.0×10、1.0×10の位置に4つのピークを有し、Mw=4.3×10
【0033】
【数13】
Figure 0003632217
であるスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして平均粒径10.3μmのトナーCを得た。
【0034】
(比較例)ゲルパーミュエーションクロマトグラムにおいて3.2×103 、5.3×104 、6.0×104 の位置に3つのピークを有し、Mw=3.8×104
【0035】
【数14】
Figure 0003632217
であるスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして平均粒径10.3μmのトナーDを得た。
【0036】
(比較例)ゲルパーミュエーションクロマトグラムにおいて3.0×103 、4.0×105 の位置に2つのピークを有し、Mw=4.1×104
【0037】
【数15】
Figure 0003632217
であるスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして平均粒径10.3μmのトナーEを得た。
【0038】
(比較例)ゲルパーミュエーションクロマトグラムにおいて3.0×103 、4.0×104 、8.0×105 、2.0×106 の位置に4つのピークを有し、Mw=4.1×105
【0039】
【数16】
Figure 0003632217
であるスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして平均粒径10.3μmのトナーFを得た。
【0040】
(比較例)ゲルパーミュエーションクロマトグラムにおいて3.0×103 、5.6×104 、8.0×105 の位置に3つのピークを有し、Mw=3.2×105
【0041】
【数17】
Figure 0003632217
であるスチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体を使用した以外は実施例1と同様にして平均粒径10.3μmのトナーGを得た。
【0042】
トナーA〜Gを用い、以下の方法に従い定着テストと耐ブロッキングテストを行った。結果を表1に示す。
【0043】
定着テスト:未定着のトナーを400m/sの定着ローラに通紙し、定着する下限温度とホットオフセットが発生する温度を調べた。
耐ブロッキング性:トナーに一定荷重を加え、50℃の環境下に5時間放置した後の耐ブロッキング性の良否を判定した。
【0044】
【表2】
Figure 0003632217
【0045】
【発明の効果】
以上説明した本発明によれば、定着性及び耐ブロッキング性に優れたトナーが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に用いるバインダー樹脂のゲルパーミュエーションクロマトグラムの一例。

Claims (1)

  1. バインダー樹脂及び着色剤を含有する静電荷像現像用トナーにおいて、該バインダー樹脂がスチレン−アクリル酸エステル共重合体であり、重量平均分子量が5×104 以上で、かつゲルパーミュエーションクロマトグラムが、分子量1×103 〜5×106 の間にn(nは3以上の整数)個のピークを有し、低分子量側からi(1≦i≦n−1)番目のピークとi+1番目のピークの共通接線と分子量曲線とによって囲まれる面積をSi 、分子量曲線と分子量軸とによって囲まれる面積をSN 、分子量曲線に外接する長方形の面積をSN′としたとき、
    Figure 0003632217
    Figure 0003632217
    なる関係を満たしていることを特徴とする静電荷像現像用トナー。
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