JP3632151B2 - 断熱充電レジスタ回路 - Google Patents

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    • H03K3/037Bistable circuits

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、クロック系(クロック信号用配線の負荷容量とクロック信号を入力するゲートのゲート容量との和:以下同じ)の消費電力低減を図った断熱充電レジスタ回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
通常、LSI内には数千〜数万という非常に多くのレジスタ回路が存在し、このレジスタ回路には一般にDFF回路又はDラッチ回路が用いられ、以下にDFF回路をレジスタ回路として用いた場合について説明する。このDFF回路は2つのDラッチ回路により構成されている。図17にこのDラッチ回路の代表的な回路構成を示す(参考文献:日経BP社 パターソン、ヘネシー、コンピュータの構成と設計p.677)。図17のDラッチ回路70は、NORゲート71,72のたすき掛けによるRSFFとANDゲート73,74を用いて構成され、クロック端子CKと差動のデータ端子D、DNを入力端子とし、差動のQ端子とQN端子を出力端子としたものである。NORゲート71,72は一方の入力信号がLowのときインバータとして働くため、このDラッチ回路70は次の特徴をもつ。(1)クロック端子CKがLowの時にたすき掛けNORゲート71,72は同じ状態を記憶する。(2)クロック端子CKがHighの時にデータ端子Dの値が記憶される。
【0003】
さて、このDラッチ回路70を2つ縦続接続すると図18に示すDFF回路80が構成される。初段のDラッチ回路70AにはクロックCKがそのまま印加し、2段目のDラッチ回路70BにはそのクロックCKをインバータ90で180度位相反転したクロックが印加する。このDFF回路80は次の特徴をもつ。(1)クロックCKがHighになった時、初段のDラッチ回路70Aが開いて入力端子Dのデータが取り込まれる。(2)クロックCKがLowの時、2段目のDラッチ回路70Bが開いて、初段のDラッチ回路70AのQ出力信号O1を入力信号Dとして受け取る。
【0004】
図19にデータD、入力クロックCK、初段のDラッチ回路70Aの出力信号O1、2段目のDラッチ回路70Bの出力信号O2の波形図を示す。これらからわかるように、出力信号O2はクロックCKがHighからLowに変化するときにデータを取り込んでおり、エッジトリガ型となっている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、従来のクロック信号はCMOS回路構成のインバータにより生成されており、その波形は矩形状をしている。出力側の負荷は、出力信号がHighの時には、インバータのpチャネルMOSFETを通して電源電圧VDDに充電され、出力信号がLowの時には、インバータのnチャネルMOSFETを通してGNDに接地されるので、クロック信号による消費電力Pは、P=CVfと表される。ここで、fはクロック周波数、Vは電源電圧、Cは配線の負荷容量とクロック信号を入力するゲートのゲート容量の和である。
【0006】
近年では、上記した配線の容量が大規模集積化に伴うチップ面積の増大により増大し、チップの総消費電力の50%をクロックの充放電による消費電力が占めるようになってきている(文献:日経BP社 日経マイクロデバイス編 低電力LSIの技術白書 90ページ)。
【0007】
また、動画像を処理するようなLSIやRISCプロセッサでは、パイプライン用レジスタ回路の個数が多くなり、論理処理の消費電力とクロック系の消費電力が同程度となってきていることも知られている(文献:低消費電力、高速LSI技術、リアライズ社、p.8)。この関係は動作速度には依存せず、LSI中のレジスタ回路の占める割合でほぼ決められる。
【0008】
本発明は以上のような点に鑑みてなされたものであり、その目的は、電荷再利用を行う電源を用いて生成した緩やかに上昇下降する波形のクロックを使用して、クロック系で消費される電力を大きく低減させる断熱充電レジスタ回路を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
このため本発明は、複数のnチャネルMOSFETと複数のpチャネルMOSFETから構成されるレジスタ回路において、前記nチャネルMOSFETのしきい値をVTNとし、前記pチャネルMOSFETのしきい値をVTPとし、電源電圧を一定のVDDとするとき、|VTN|+|VTP|>VDDとし、且つ、入力クロックを電荷再利用を行う階段状波形生成回路又はLC共振回路を用いて生成した緩やかに上昇下降する波形のパワークロックとした。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明の断熱充電レジスタ回路では、通常のレジスタ回路が通常の矩形のクロックを使用するのに対して、電荷再利用を行う電源を用いて生成した緩やかに上昇下降する波形の電荷リサイクル型のパワークロックを用いる。このようなパワークロックを用いたレジスタ回路では、クロック系の消費電力を従来回路に比ベて大幅に低減することが可能で、その低減量は1/10程度以下にまで可能である。また、このとき、レジスタ回路を構成するnチャネルMOSFET、pチャネルMOSFETのしきい値VTN,VTPについて、
|VTN|+|VTP|>VDD
の条件を満足させることにより、論理ゲートの電源からGNDへの貫通電流を無くすことも可能である。以下詳しく説明する。
【0011】
[第1の実施形態]
図1は本発明の第1の実施形態のレジスタ回路であるDFF回路20のブロック図であり、このDFF回路20は初段のDラッチ回路10Aと2段目のDラッチ回路10Bから構成されている。Dラッチ回路10A,10Bは図2の符号10に示すように、RSFFを構成するNORゲート11,12とANDゲート13,14から構成されている。
【0012】
本発明では、Dラッチ回路10を構成するNORゲート11,12,ANDゲート13,14のnチャネルMOSFETのしきい値をVTNとし、pチャネルMOSFETのしきい値をVTPとし、電源電圧をVDDとするとき、
|VTN|+|VTP|>VDD
の条件を満足するように、それらしきい値を大きな値に設定する。これにより、Dラッチ回路10内の論理ゲートの電源から接地への貫通電流を無くすことができる。
【0013】
また、本発明では、DFF回路20の初段のDラッチ回路10Aのクロック端子PCKに、電荷再利用を行う電源を用いて生成した緩やかに上昇下降する波形の電荷リサイクル型のパワークロックPCK1を入力させ、2段目のDラッチ回路10Bのクロック端子PCKはそのパワークロックPCK1を180度位相反転したパワークロックPCK2を入力させる。
【0014】
これらのパワークロックPCK1、PCK2は、図3に示すようなスイッチドキャパシタ回路により構成した階段状波形(出力波形が階段状に緩やかに立ち上がり緩やかに立ち下がる波形)生成回路30(文献:1999 SSDM p.444)や、LC共振回路(図示せず)を使用して生成させることができる。図3において、T0〜T4,T0’〜T4’はトランスミッションゲート、C1〜C3はキャパシタである。この階段状波形生成回路30では、トランスミッションゲートT0〜T4、T0’〜T4’を、
(T0,T0’)→(T1,T1’)→(T2,T2’)→(T3,T3’)→(T4,T4’)→(T3,T3’)→(T2,T2’)→(T1,T1’)→(T0,T0’)→(T1,T1’)→・・・
の順序で個々に2個づつ導通させれば、階段状波形のパワークロックPCK1、PCK2を出力端子31,32に得ることができる。
【0015】
いま、VDD=1V、|VTN|=|VTP|=0.7Vと仮定するとき、初段と2段目のDラッチ回路10A,10Bの動作は、図4に示すようになる。パワークロックPCK1、PCK2のレベルが0.7Vより大きいとき、Dラッチ回路10A,10Bでは入力取り込みが行われ、0.7Vより小さいとき、そのときの状態を記憶する。図5,図6はデューティが異なる場合のパワークロックPCK1、PCK2の波形を示したものである。
【0016】
ここで、時間TFFはDFF回路20において、入力から出力までに要する時間を表している。また、TcombinationはDFF回路20の前段又は後段に接続される組み合わせ論理回路に許される遅延時間を表している。
【0017】
このパワークロックPCK1、PCK2により駆動されるDFF回路を断熱充電DFF回路と呼ぶことにすると、この断熱充電DFF回路の特徴は次の通りである。(1)たすき掛けNORゲートによるスタティック動作であり、ダイナミック動作に比べて安定である。(2)初段と2段目のDラッチ回路10A,10Bが同時にデータを取り込むことがないため、データの突き抜けは起こらない。(3)初段と2段目のDラッチ回路10A,10Bが同時に記憶モードとなる期間があり、このとき各々のDラッチ回路10A,10Bは独立にデータを記憶する。(4)時間TFFがCMOS構成のDFF回路に比べて大きい。(5)パワークロックPCK1、PCK2を使用できるため、消費電力を通常のクロックを使用する場合に比べて1/10以下にすることができる。(6)CMOSのDFF回路を断熱充電DFF回路+電荷再利用型電源に容易に置き換えることが可能となる(CMOS回路との互換性あり)。
【0018】
図1に示した断熱充電DFF回路の動作を図7に示す。パワークロックPCK1がHighからLowになるときの入力データDを取り込み、そのクロックPCK1の1周期の間だけそのデータを保持している(O2参照)ことが分かる。
【0019】
HSPICEによるシミュレーション結果を図8,図9に示す。図8は通常の矩形クロックCKを用いた図18のDFF回路80の波形図であり、図9がパワークロックPCK1,PCK2を用いた図1のDFF回路20の波形図である。ただし、パワークロックPCK2の波形はPCK1の逆相であるため省略した。nチャネルMOSFET、pチャネルMOSFETのゲート長は各々0.25μm、pチャネルのMOSFETのゲート幅は9μm、nチャネルのMOSFETのゲート幅は6μmである。また、しきい値は|VTN|=|VTP|=0.3Vである。電源電圧VDD=0.5Vとし、クロックPCK1,PCK2,CKの周期を100ns(f=10MHz)としてシミュレーションを行った。
【0020】
これらのシミュレーション結果によれば、パワークロックPCK1,PCK2を用いても、出力は通常の矩形クロックCKを使用したときと同一であることが分かる。また、DFF回路の定電圧による消費電力は、通常のCMOSのDFF回路と断熱充電のDFF回路の場合のどちらも320nWである。貫通電流が無いため貫通電流による消費電力の増大は生じていない。また、通常の矩形クロックCKによる消費電力が310nWであるのに対し、パワークロックPCK1,PCK2による場合は23nWであり、断熱充電電荷リサイクルによりクロック系の消費電力が1/10以下となっている。
【0021】
図10は図1に示したDFF回路20からなるDFF回路20A〜20Cと組み合わせ論理回路40A〜40Cが交互に接続されるようそれらを縦続接続して構成した回路であり、個々の論理回路40A〜40Cは1クロック当りの処理時間が前記した時間Tcombination以内となるように構成する。
【0022】
[第2の実施形態]
図11は本発明の第2の実施形態を示す図である。ここでは、図2に示したDラッチ回路10からなるDラッチ回路10A〜10Dと組み合わせ論理回路40A〜40Dが交互に接続されるようそれらを縦続接続して回路を構成している。ここでは、時間TFFの概念はなくなり、組み合わせ論理回路40A〜40Dに許される遅延時間は、通常の矩形クロックによるラッチ回路間転送と同じ時間となる。2個のDラッチ回路10A、10Bを直接接続し組み合わせ論理回路を省略した構成を図12に示し、その動作波形図を図13に示した。これらは図1のDFF回路20に対する図7の波形図とほぼ同じであるが、入力信号Iの波形を若干変更して、パワークロックPCK1がしきい値以上のとき、時刻t1において入力信号IがHighからLowに変化すると、その波形が出力O1に現れていることが表されている。
【0023】
[第3の実施形態]
図14は本発明の第3の実施形態を示す図である。ここでは、インバータ60A,60Bとトランスミッションゲート50Bからなる記憶回路と、その入力側に接続したトランスミッションゲート50Aとによりラッチ回路を構成している。パワークロックはPCK1〜PCK4の4種を使用し、そのうちPCK1とPCK2をトランスミッションゲート50A用として反転関係に、またPCK3とPCK4をトランスミッションゲート50B用として反転関係にしている。PCK1とPCK3、PCK2とPCK4は各々180度逆相関係にある。図15にパワークロックPCK1〜PCK4の波形図を示した。
【0024】
[Dラッチ回路についての考察]
Dラッチ回路の構成としては、前述の図2に示したRSFFタイプとこの図14に示したトランスミッションゲートタイプが挙げられる。RSFFタイプでは、データの入力/記憶がスタティックで行われており、低速でも正常に動作するが、トランスミッションゲートタイプでは動作がダイナミックとなり、極低速動作には適していない。また、通常のCMOS回路の動作を考ると、クロックを入力とするトランジスタ数はRSFFタイプで4個(各ANDゲートに2個)、トランスミッションゲートタイプで6個(通常はクロックを反転する1個のインバータが必要であるので、これに要する2個のトランジスタも必要故)であるため、RSFFタイプの方が合計トランジスタ数では多いが、クロック系のトランジスタ数が少ない点から消費電力は小さくなる(文献:C.Svensson and D.Liu,Low Power Design Methodologies,eds.J.M.Rabaey and M.Pedram (Kluwer Academic Publisheres,1996) Chap.3,p.37.)。断熱充電可逆論理として、RSFFタイプを用いるかトランスミッションゲートタイプを用いるかは、上記のことを考慮して、目的に応じて判断するとよい。
【0025】
[サブスレッショルド領域での使用について]
また、この断熱充電レジスタ回路は、極めて特殊な条件ではあるが、しきい値よりも低い電源電圧(サブスレッショルド領域:|VTN|>VDD、且つ|VTP|>VDD)の弱反転状態領域でも、CMOSと同様に動作が可能である。生体センサや環境センサのようなサブスレッショルド領域低速動作LSIへの応用が可能なことは言うまでもない。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように本発明の断熱充電レジスタ回路によれば、クロック系で消費される電力を通常のCMOSのレジスタ回路で消費される電力に比べて1/10程度にまで削減することが可能となる(図16)。また、本発明では、従来のCMOS回路においてCMOS構成のレジスタ回路を断熱充電レジスタ回路に置き換えるだけでよいので、CMOS構成の回路との互換性があり、容易に設計できる利点もある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のDFF回路のブロック図である。
【図2】図1のDFF回路を構成するDラッチ回路の回路図である。
【図3】階段状波形生成回路の回路図である。
【図4】図1のDFF回路に入力するパワークロックの波形図である。
【図5】図1のDFF回路に入力する別のパワークロックの波形図である。
【図6】図1のDFF回路に入力する別のパワークロックの波形図である。
【図7】図1のDFF回路の動作波形図である。
【図8】従来の矩形クロックを使用したDFF回路の動作のシミュレーション波形図である。
【図9】本発明のパワークロックを使用したDFF回路の動作のシミュレーション波形図である。
【図10】図1のDFF回路と論理回路を交互に接続した回路のブロック図である。
【図11】図1のDラッチ回路と論理回路を交互に接続した回路のブロック図である。
【図12】図11の1部の回路で論理回路を省略してDラッチ回路を2個直接接続した回路の回路図である。
【図13】図12の回路の動作波形図である。
【図14】トランスミッションゲートを使用したDラッチ回路の回路図である。
【図15】図14の回路で使用するパワークロックの波形図である。
【図16】本発明の効果の説明図である。
【図17】従来のDラッチ回路の回路図である。
【図18】従来のDFF回路のブロック図である。
【図19】図18のDFF回路の動作波形図である。
【符号の説明】
10,10A〜10D:Dラッチ回路、11,12:NORゲート、13,14:ANDゲート
20,20A〜20C:DFF回路
30:階段状波形生成回路、31,32:端子
40A〜40D:組み合わせ論理回路
50A、50B:トランスミッションゲート
60A、60B:インバータ
70、70A、70B:Dラッチ回路、71,72:NORゲート、73,74:ANDゲート
80:DFF回路
90:インバータ

Claims (1)

  1. 複数のnチャネルMOSFETと複数のpチャネルMOSFETから構成されるレジスタ回路において、
    前記nチャネルMOSFETのしきい値をVTNとし、前記pチャネルMOSFETのしきい値をVTPとし、電源電圧を一定のVDDとするとき、|VTN|+|VTP|>VDDとし、且つ、
    入力クロックを電荷再利用を行う階段状波形生成回路又はLC共振回路を用いて生成した緩やかに上昇下降する波形のパワークロックとしたことを特徴とする断熱充電レジスタ回路。
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