JP3631965B2 - 橋梁、及び橋梁の耐震強度補強方法 - Google Patents

橋梁、及び橋梁の耐震強度補強方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐震強度が補強された橋梁と、橋梁の耐震強度補強方法とに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、橋梁分野においてその耐震性向上に対する要求が強くなっている。橋梁における従来の耐震対策は、構造強度を上げることにより作用する地震力を支持するという方法であり、例えば、図14,図15(図14のA−A矢視図)、図16(図14のB−B矢視図)に示すように、両岸の基礎9,9間に架設された橋桁1を、複数本の柱部材3’,・・・及び垂直部材3,・・・を介して、基礎8,8間に架設されたアーチリブ2で支持すると共に、一対のアーチリブ2,2間を複数の水平部材4,・・・で連結してブレース6,・・・を挿設し、また対向する垂直部材3,3同士及び柱部材3’,3’同士を複数の水平部材5,・・・で連結してブレース7,・・・を挿設したアーチ橋においては、上記各部材の断面を大きくするなどの補強方法が、一般的な対震対策として実施されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この場合、要求される耐震性の高さに対応して十分な耐震強度を確保するためには、上記各部材をかなり大型化する必要がある。しかしながら、ビルディングなどの一般的な建築構造物とは異なり、河川などを跨ぐように架設される橋梁では、その構造重量を支持する基礎数が限られる上に、既設の場合には重量増加分を賄えるほど十分に基礎強度を補強することができないため、新たな解決手段が求められている。
【0004】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保できるアーチ橋またはトラス橋である橋梁の提供と、橋梁の耐震強度補強方法の提供とを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために以下の手段を採用した。
すなわち、本発明の請求項1記載の橋梁は、橋桁と、該橋桁を橋軸方向の各箇所のそれぞれ幅方向左右で支持する柱部材と、これら柱部材間の前記橋軸方向に架設された一対のアーチリブと、これらアーチリブ上に立設されて前記橋桁を支持する垂直部材と、前記各アーチリブ間及び、前記各箇所の前記各柱部材間をそれぞれ水平に接続する水平部材と、これら柱部材及びアーチリブ及び垂直部材及び水平部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを備えたアーチ橋である橋梁において、前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、前記履歴型ブレースが、前記橋軸方向の前記各箇所における2本の柱部材と、これら柱部材間を接続する前記各水平部材との間に形成される第1の四角形構面内に、該第1の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第1の四角形構面の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられていることを特徴とする。
上記請求項1記載の橋梁によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動するため、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れが減衰する。特に、橋軸に垂直方向の揺れに対する耐震強度を強化することができる。
【0006】
請求項2記載の橋梁は、橋軸方向に架設された一対のアーチリブと、これらアーチリブ間に挟み込まれる位置に垂直部材により吊り下げ支持される橋桁と、前記アーチリブ間を水平に接続する水平部材と、これらアーチリブ及び垂直部材及び水平部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを備えたアーチ橋である橋梁において、前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、前記履歴型ブレースが、前記各アーチリブと、これらアーチリブ間を接続する前記各水平部材との間に形成される第2の四角形構面内に、該第2の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第2の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状に設けられていることを特徴とする。
上記請求項2記載の橋梁によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動するため、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れが減衰する。橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を強化することができる。
【0007】
請求項3記載の橋梁は、橋桁と、該橋桁を橋軸方向の各箇所のそれぞれ幅方向左右で支持する柱部材と、これら柱部材間の前記橋軸方向に架設された一対のアーチリブと、これらアーチリブ上に立設されて前記橋桁を支持する垂直部材と、前記各アーチリブ間及び、前記各箇所の前記各柱部材間をそれぞれ水平に接続する水平部材と、これら柱部材及びアーチリブ及び垂直部材及び水平部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを備えたアーチ橋である橋梁において、前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、前記履歴型ブレースが、前記各アーチリブと、これらアーチリブ間を接続する前記各水平部材との間に形成される第2の四角形構面内に、該第2の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第2の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状に設けられていることを特徴とする。
上記請求項3記載の橋梁によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動するため、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れが減衰する。橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を強化することができる。
【0008】
請求項4記載の橋梁は、橋桁と、該橋桁を支持する橋脚と、前記橋桁上の橋軸方向に沿って左右それぞれに立設されて主構面をなす柱部材及び垂直部材と、これら柱部材及び垂直部材の上端を接続する一対の上弦部材と、これら上弦部材間及び、前記橋軸方向の各箇所における一対の前記柱部材間を水平に接続する水平部材と、これら柱部材及び垂直部材及び水平部材及び上弦部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを有するトラス橋である橋梁において、前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、前記履歴型ブレースが、前記橋軸方向の各箇所における一対の柱部材と、これら柱部材間を接続する前記各水平部材との間に形成される第3の四角形構面内に、該第3の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第3の四角形構面の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられていることを特徴とする。
上記請求項4記載の橋梁によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動するため、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れが減衰する。特に、橋軸に垂直方向の揺れに対する耐震強度を強化することができる。
【0009】
請求項5記載の橋梁は、橋桁と、該橋桁を支持する橋脚と、前記橋桁上の橋軸方向に沿って左右それぞれに立設されて主構面をなす柱部材及び垂直部材と、これら柱部材及び垂直部材の上端を接続する一対の上弦部材と、これら上弦部材間及び、前記橋軸方向の各箇所における一対の前記柱部材間を水平に接続する水平部材と、これら柱部材及び垂直部材及び水平部材及び上弦部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを有するトラス橋である橋梁において、前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、前記履歴型ブレースが、前記各上弦部材と、これら上弦部材間を接続する前記各水平部材との間に形成される第4の四角形構面内に、該第4の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第4の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状、もしくは前記第4の四角形構面の一辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられていることを特徴とする。
上記請求項5記載の橋梁によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動するため、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れが減衰する。特に、橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を強化することができる。
【0015】
【発明の実施の形態】
本発明の橋梁及び橋梁の耐震強度補強方法の各実施の形態について、図面を参照しながら以下にその説明を行うが、本発明がこれらのみに限定解釈されるものでないことは勿論である。
まず、図1〜図5を参照しながら、本発明の第1の実施の形態について説明を行う。なお、図1は、本実施の形態の橋梁である上路式のアーチ橋の正面図である。また、図2は、同アーチ橋の要部を示す図であって、(a)は図1のC−C矢視図であり、(b)は(a)の変形例である。また、図3は、同アーチ橋の要部を示す図であって、(a)は図1のD−D矢視図であり、(b)は(a)の変形例である。また、図4は、同アーチ橋の要部を示す図であって、図2(a)のE部拡大図である。また、図5は、同アーチ橋の斜部材として用いられる履歴型ブレースの復元力特性を示すグラフであり、横軸は履歴型ブレースの軸方向変形量δ、縦軸は履歴型ブレースに加わる繰返し軸力Nを示している。
【0016】
図1,図2(a),図3(a)に示すように、本実施の形態のアーチ橋は、両岸の基礎10,10間に架設された橋桁11と、該橋桁11を橋軸方向(橋桁11の長手方向)の両端2箇所で、それぞれ橋桁11の幅方向左右2箇所で該橋桁11を支持する柱部材12,12と、これら柱部材12,12間の前記橋軸方向の基礎13,13上に架設された一対のアーチリブ14,14と、これらアーチリブ14,14上に立設されて橋桁11を支持する複数本の垂直部材15,・・・と、各アーチリブ14,14間及び、前記両端における各柱部材12,12間をそれぞれ水平に接続する複数本の水平部材16,・・・と、これら柱部材12,12及びアーチリブ14,14及び各垂直部材15,・・・及び各水平部材16,・・・間に斜めに挿設された複数本の斜部材17,・・・とを備えて構成されている。また、対向する各垂直部材15,・・・間も、対向する各柱部材12,12間と同様に、水平部材16,・・・及び斜部材17,・・・で連結されている。
【0017】
そして、本実施の形態では、各斜部材17,・・・の全てに、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレース(以下、各斜部材17,・・・を履歴型ブレース17,・・・と称する)を採用している点が特に特徴的となっている。すなわち、アーチリブ14,14と水平部材16,・・・と垂直部材15,・・・と水平部材16,・・・とが形成する各構面間に、従来の技術で説明した通常の前記ブレース6,7に代えて、耐震ダンパーとしての履歴型ブレース17,・・・が挿設された構成となっている。
この履歴型ブレース17,・・・としては、例えば特開2000−81085に開示されている履歴型ダンパー(引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける長尺部材であり、その中間部に中間材を配し、該中間材の両端にそれぞれ他端が他部材に連結される構成を有している)を好適に用いることができる。
【0018】
図5に、この種の履歴型ブレース17,・・・が有する復元力特性を示す。同図に示すように、繰返し軸力±N(Ny;降伏軸力)に対する軸変形δの描く曲線は、原点0より始まって図形Na−>Nb−>Nc−>Ndのような履歴曲線になり、この図形面積が塑性エネルギ吸収容量を示し、地震が作用した際に履歴型ダンパーとしての機能を発揮するようになっている。
【0019】
この履歴型ブレース17,・・・の配置について詳説すると、前記橋軸方向の各端部に形成される構面では、図3(a)に示すように、各履歴型ブレース17,・・・は、対向する2本の柱部材12,12及びこれら柱部材12,12間を接続する水平部材16,・・・との間に形成される複数の第1の四角形構面18,・・・内に、該第1の四角形構面18,・・・の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置(山形状)に設けられた構成となっている。同様に、対向する垂直部材15,15間及びこれらを接続する水平部材16,・・・によって形成される構面にも、同様の配置で履歴型ブレース17,・・・が傾斜配置されている。
なお、この他にも、例えば図3(b)に示すように、第1の四角形構面18,・・・の各対角間を結ぶ対角線状(X字状)に設ける構成など、その他の構成も勿論採用可能である。
【0020】
続いて、橋梁の下側構面への履歴型ブレース17,・・・の配置について説明すると、図2(a)に示すように、各履歴型ブレース17,・・・は、各アーチリブ14,14と、これらアーチリブ14,14間を接続する各水平部材16,・・・との間に形成される複数の第2の四角形構面19,・・・内に、該第2の四角形構面19,・・・各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状に設けられた構成となっている。これを図4を用いて詳説すると、四角形構面19をなす構面a−b−c−dを形成する各アーチリブ14,14の中央にそれぞれ取付けた接合部材14a,14aと、各水平部材16,16の中央にそれぞれ取付けた接合部材16a,16aとの間を接続するように、それぞれ傾斜配置されている。そして、これら4本の履歴型ブレース17,・・・は概略菱形をなしている。
なお、この他にも、例えば図2(b)に示されるように、第2の四角形構面19,・・・の各対角間を結ぶ対角線状(X字状)に設ける構成など、その他の構成も勿論採用可能である。
【0021】
以上説明の構成を有する橋梁に対し、地震が作用した場合について説明する。この地震エネルギにより、図2(a),(b)に示すアーチリブ14,14および水平部材16,・・・等が変形すると、この構面に挿設した各履歴型ブレース17,・・・に、この変形量に見合った繰返し軸力が作用し、各履歴型ブレース17,・・・が図5で示した履歴曲線を描いて応答する。その結果、地震エネルギが吸収されて振動が減衰する。
同様に、地震エネルギにより、図3(a),(b)に示す柱部材12,12及び垂直部材15,・・・及び水平部材16,・・・が変形すると、各構面に挿設した履歴型ブレース17,・・・に、この変形量に見合った繰返し軸力が作用し、各履歴型ブレース17,・・・が図5で示した履歴曲線を描いて応答する。その結果、地震エネルギが吸収されて振動が減衰する。
【0022】
以上説明の本実施の形態の橋梁は、柱部材12,12及びアーチリブ14,14及び垂直部材15,・・・及び水平部材16,・・・間に斜めに挿設される斜部材に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレース17,・・・を用いる構成を採用した。この構成によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材15,・・・や水平部材16,・・・等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレース17,・・・に対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレース17,・・・が作動し、その結果、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、柱部材12,12,アーチリブ14,14,垂直部材15,・・・,水平部材16,・・・といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、履歴型ブレース17,・・・の装備によって地震エネルギを吸収することができるので、橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。
しかも、橋梁の各主要構成部材を大型化せずに済むことから、建造コストを削減することも可能としている。
【0023】
また、本実施の形態の橋梁は、履歴型ブレース17,・・・を、第1の四角形構面18,・・・の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは第1の四角形構面18,・・・の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設ける構成を採用した。この構成によれば、特に、橋軸に垂直方向の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
また、本実施の形態の橋梁は、履歴型ブレース17,・・・を、第2の四角形構面19,・・・の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは第2の四角形構面19,・・・の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状に設ける構成を採用した。この構成によれば、特に、橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
【0024】
次に図6,図7を参照しながら本発明の第2の実施の形態について以下に説明を行う。なお、図6は、本実施の形態の橋梁である他のアーチ橋の正面図である。また、図7は、同アーチ橋の要部を示す図であって、(a)は図6のF−F矢視図であり、(b)は(a)の変形例である。
図6,図7(a)に示すように、本実施の形態の中路式のアーチ橋は、両岸の基礎20,20間に架設された一対のアーチリブ21,21と、これらアーチリブ21,21間に挟み込まれる位置に垂直部材22,・・・により中央部が吊り下げ支持され、かつ両端が両岸の基礎23,23上に架設された橋桁24と、アーチリブ21,21間を水平に接続する水平部材25,・・・と、これらアーチリブ21,21及び水平部材25,・・・間に斜めに挿設された斜部材26,・・・とを備えた構成となっている。
中路式であるため、橋桁24は、アーチリブ21,21の高さ方向の中間位置に架設されており、垂直部材22,・・・は、橋桁24より上方位置のアーチリブ21,21との間にのみ垂設され、また、各アーチリブ21,21は、車両の通行する部分を除き、水平部材25,・・・で連結されている。
【0025】
そして、本実施の形態では、各斜部材26,・・・の全てに、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレース(以下、各斜部材26,・・・を履歴型ブレース26,・・・と称する)を採用している点が特に特徴的となっている。すなわち、各アーチリブ21,21と、これらアーチリブ21,21間を接続する各水平部材25,・・・との間に形成される第2の四角形構面27,・・・内に、該第2の四角形構面27,・・・の各辺中央部間を互いに結ぶ菱形状(四角形状)に、従来の技術で説明した通常の前記ブレース6,7に代えて、耐震ダンパーとしての履歴型ブレース26,・・・が挿設された構成となっている。これら履歴型ブレース26,・・・は、上記第1の実施の形態で説明した履歴型ブレース17,・・・と同様のものであるとして、その説明を省略する。
なお、この他にも、例えば図7(b)に示されるように、第2の四角形構面27,・・・の各対角間を結ぶ対角線状(X字状)に設ける構成など、その他の構成も勿論採用可能である。
【0026】
以上説明の構成を有する橋梁に対し、地震が作用した場合について説明する。この地震エネルギにより、図7(a),(b)に示すアーチリブ21,21および水平部材25,・・・等が変形すると、この構面に挿設した各履歴型ブレース26,・・・に、この変形量に見合った繰返し軸力が作用し、各履歴型ブレース26,・・・が、上記第1の実施の形態で図5を用いて示した履歴曲線を描いて応答する。その結果、地震エネルギが吸収されて振動が減衰する。
なお、必要に応じて、橋桁24を挟んで対向する各垂直部材22,・・・間に、車輌の通過する部分を除いて水平部材25,・・・でさらに接続するとともに、ここに履歴型ブレース26,・・・を挿設する構成も、勿論採用可能である。
【0027】
以上説明の構成を有する本実施の形態の橋梁によれば、上記第1の実施の形態と同様に、橋梁に地震力が作用してアーチリブ21,21や水平部材25,・・・等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレース26,・・・に対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレース26,・・・が作動するため、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、アーチリブ21,21,垂直部材22,・・・,水平部材25,・・・といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、履歴型ブレース26,・・・の装備によって地震エネルギを吸収することができるので、橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。
しかも、橋梁の各主要構成部材を大型化せずに済むことから、建造コストを削減することも可能としている。
【0028】
また、本実施の形態の橋梁は、履歴型ブレース26,・・・を、第2の四角形構面27,・・・の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状、もしくは第2の四角形構面27,・・・の各対角間を結ぶ対角線状に設ける構成を採用した。この構成によれば、特に、橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
【0029】
次に図8,図9を参照しながら本発明の第3の実施の形態について以下に説明を行う。なお、図8は、本実施の形態の橋梁である他のアーチ橋の正面図である。図9は、同アーチ橋の要部を示す図であって、図8のG部拡大図である。本実施の形態は、図1〜図5を用いて説明した上記第1の実施の形態の変形例であるので、上記第1の実施の形態との相違点を中心に説明するものとし、その他は上記第1の実施の形態と同様であるとしてその説明を省略する。
【0030】
本実施の形態の橋梁は、対向する前記各柱部材12,12間に形成される構面(図3で説明した前記第1の四角形構面18,・・・)と、前記各アーチリブ14間に形成される構面(図3で説明した前記第2の四角形構面19,・・・)とに加えて、さらに、垂直部材15,・・・及びアーチリブ14を含む主構面(橋軸方向の左右両側面)内にも履歴型ブレース17,・・・を挿設するようにした点が特に特徴的となっている。
すなわち、図9に示すように、この主構面e−f−g−hにおける履歴型ブレース17は、アーチリブ14と垂直部材15との接合部(角部g)に取り付けた接合部材15aと、橋桁11と垂直部材15との接合部でかつ角部gの対角である角部eに取り付けた接合部材15bとの間を接続するように傾斜配置されている。
なお、図示を省略するが、この角部e−g間に加えて、角部f−h間も履歴型ブレース17で接続するなど、その他の構成も勿論採用可能である。
【0031】
以上説明の構成を有する橋梁に対し、地震が作用した場合について説明する。この地震エネルギにより、主構面をなすアーチリブ14および垂直部材15が変形すると、この主構面に挿設した各履歴型ブレース17,・・・に、この変形量に見合った繰返し軸力が作用し、各履歴型ブレース17,・・・が、上記第1の実施の形態で図5を用いて示した履歴曲線を描いて応答する。その結果、地震エネルギが吸収されて振動が減衰する。
【0032】
そして、以上説明の構成を有する本実施の形態の橋梁によれば、上記第1の実施の形態と同様の効果が得られる上に、履歴型ブレース17,・・・を、垂直部材15,・・・及びアーチリブ14を含む各主構面内に設ける構成を採用したことにより、橋軸方向に沿った揺れに対する耐震強度をさらに強化することが可能となる。
【0033】
次に図10を参照しながら本発明の第4の実施の形態について以下に説明を行う。なお、図10は、本実施の形態の橋梁である他のアーチ橋の正面図である。本実施の形態は、図6及び図7を用いて説明した上記第2の実施の形態の変形例であるので、上記第2の実施の形態との相違点を中心に説明するものとし、その他は上記第2の実施の形態と同様であるとしてその説明を省略する。
【0034】
本実施の形態の橋梁は、アーチリブ21,21と、これらアーチリブ21,21間を接続する前記各水平部材25,・・・との間に形成される前記第2の四角形構面27,・・・に加えて、さらに、垂直部材22,・・・及びアーチリブ21を含む主構面(橋軸方向の左右両側面)内にも履歴型ブレース26,・・・を挿設するようにした点が特に特徴的となっている。
すなわち、図10に示すように、この主構面における履歴型ブレース26,・・・は、アーチリブ21と垂直部材22,・・・と橋桁とで形成される概略台形状の主構面内に、一対の対角間を接続するように傾斜配置されている。
なお、図示を省略するが、前記台形状の主構面内に、二対の対角間を接続するようにX字状に履歴型ブレース26,・・・を交差配置させるなど、その他の構成も勿論採用可能である。
【0035】
以上説明の構成を有する橋梁に対し、地震が作用した場合について説明する。この地震エネルギにより、主構面をなすアーチリブ21および垂直部材22が変形すると、この主構面に挿設した各履歴型ブレース26,・・・に、この変形量に見合った繰返し軸力が作用し、各履歴型ブレース26,・・・が、上記第1の実施の形態で図5を用いて示した履歴曲線を描いて応答する。その結果、地震エネルギが吸収されて振動が減衰する。
【0036】
そして、以上説明の構成を有する本実施の形態の橋梁によれば、上記第2の実施の形態と同様の効果が得られる上に、履歴型ブレース26,・・・を、垂直部材22,・・・及びアーチリブ21を含む各主構面内に設ける構成を採用したことにより、橋軸方向に沿った揺れに対する耐震強度をさらに強化することが可能となっている。
【0037】
次に図11〜図13を参照しながら本発明の第5の実施の形態について以下に説明を行う。なお、図11は、本実施の形態のトラス橋の正面図である。また、図12は、同トラス橋の要部を示す図であって、(a)は図11のH−H矢視図であり、(b)及び(c)は(a)の変形例である。また、図13は、同トラス橋の要部を示す図であって、(a)は図11のI−I矢視図であり、(b)は(a)の変形例である。
【0038】
図11,図12(a),図13(a)に示すように、本実施の形態のトラス橋は、橋桁30と、該橋桁30を橋軸方向(橋桁30の長手方向)の複数箇所で支持する橋脚31,・・・と、橋桁30上の橋軸方向に沿って左右それぞれに立設されて主構面をなす柱部材32,・・・及び垂直部材33,・・・と、これら柱部材32,・・・及び垂直部材33,・・・の各上端を接続する一対の上弦部材34,34と、これら上弦部材34,34間及び、前記橋軸方向の各箇所における一対の柱部材32,・・・間を水平に接続する水平部材35,・・・と、これら柱部材32,・・・及び垂直部材33,・・・及び水平部材35,・・・及び上弦部材34,34間に斜めに挿設された斜部材36,・・・とを備えて構成されている。
【0039】
そして、本実施の形態では、各斜部材36,・・・の全てに、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレース(以下、各斜部材36,・・・を履歴型ブレース36,・・・と称する)を採用している点が特に特徴的となっている。これら履歴型ブレース36,・・・は、上記第1の実施の形態で説明した履歴型ブレース17,・・・と同様のものであるとして、その説明を省略する。
すなわち、垂直部材33,・・・及び柱部材32,・・・を含む主構面(橋軸方向の左右両側面)内においては、図11に示すように、四角形の一対の対角間を結ぶ対角線状、もしくは、四角形をなす一方の垂直部材33の一辺中央とその対角間を結ぶ「く」の字状に、耐震ダンパーとしての履歴型ブレース36,・・・が挿設された構成となっている。
【0040】
また、各上弦部材34,34と、これら上弦部材34,34間を接続する各水平部材35,・・・との間に形成される第4の四角形構面37,・・・内においては、図12(a)に示すように、この第4の四角形構面37,・・・の一辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に、履歴型ブレース36,・・・を設けた構成となっている。なお、この他にも、例えば図12(b)に示すように、第4の四角形構面37,・・・の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状(菱形状)に設けたり、または図12(c)に示すように、第4の四角形構面37,・・・の各対角間を結ぶ対角線状(X字状)に設ける構成など、その他の構成も勿論採用可能である。
【0041】
また、橋軸方向の各箇所における一対の柱部材32,32と、これら柱部材32,32間を接続する各水平部材35,・・・との間に形成される複数の第3の四角形構面38,・・・内においては、図13(a)に示すように、この第3の四角形構面38,・・・の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に、履歴型ブレース36,・・・を設けた構成となっている。なお、この他にも、例えば図13(b)に示すように、第3の四角形構面38,・・・の各対角間を結ぶ対角線状(X字状)に設ける構成など、その他の構成も勿論採用可能である。
【0042】
以上説明の構成を有する橋梁に対し、地震が作用した場合について説明する。この地震エネルギにより、上弦部材34,34及び水平部材35,・・・及び垂直部材33,・・・,柱部材32,・・・等が変形すると、各構面に挿設した各履歴型ブレース36,・・・に、この変形量に見合った繰返し軸力が作用し、各履歴型ブレース36,・・・が図5で示した履歴曲線を描いて応答する。その結果、地震エネルギが吸収されて振動が減衰する。
【0043】
以上説明の本実施の形態の橋梁は、柱部材32,・・・及び垂直部材33,・・・及び水平部材35,・・・及び上弦部材34,34間に斜めに挿設される斜部材に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレース36,・・・を用いる構成を採用した。この構成によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材33,・・・や水平部材35,・・・等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレース36,・・・に対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレース36,・・・が作動し、その結果、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、柱部材32,・・・,垂直部材33,・・・,水平部材35,・・・,上弦部材34,34といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、履歴型ブレース36,・・・の装備によって地震エネルギを吸収することができるので、橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。
【0044】
また、本実施の形態の橋梁は、履歴型ブレース36,・・・を、垂直部材33,・・・及び柱部材32,・・・を含む主構面内に設ける構成を採用した。この構成によれば、特に、橋軸方向に沿った揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
また、本実施の形態の橋梁は、履歴型ブレース36,・・・を、第3の四角形構面38,・・・の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置、もしくは第3の四角形構面38,・・・の各対角間を結ぶ対角線状に設ける構成を採用した。この構成によれば、特に、橋軸に垂直方向の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
【0045】
また、本実施の形態の橋梁は、履歴型ブレース36,・・・を、第4の四角形構面37,・・・の一辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置、もしくは第4の四角形構面37,・・・の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状、もしくは第4の四角形構面37,・・・の各対角間を結ぶ対角線状に設ける構成を採用した。この構成によれば、特に、橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
【0046】
本発明は、新設の橋梁への適用に加えて、各種既設の橋梁を改修してその耐震強度を補強する改修方法としても採用することが可能である。すなわち、橋桁を支持する柱部材と、前記橋桁及び前記柱部材を補強支持する垂直部材及び水平部材と、これら柱部材及び垂直部材及び水平部材間に斜めに挿設された斜部材とを有する既設橋梁の耐震強度を補強する場合(以上図示省略)において、前記斜部材として、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースに換装して耐震強度を補強する方法である。
【0047】
この補強方法(改修方法)によれば、補強後の橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた前記各履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して各履歴型ブレースが作動し、その結果、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、柱部材,垂直部材,水平部材といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、前記各履歴型ブレースの装備によって地震エネルギを吸収することができるので、既設橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。
【0048】
【発明の効果】
本発明の請求項1記載の橋梁は、各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、この履歴型ブレースが、橋軸方向の各箇所における2本の柱部材と、これら柱部材間を接続する前記各水平部材との間に形成される第1の四角形構面内に、該第1の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは第1の四角形構面の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられている構成を採用した。この構成によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動し、その結果、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、柱部材,アーチリブ,垂直部材,水平部材といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、履歴型ブレースの装備によって地震エネルギを吸収することができるので、橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。特に、橋軸に垂直方向の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
【0049】
また、請求項2記載の橋梁は、各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、この履歴型ブレースが、各アーチリブと、これらアーチリブ間を接続する各水平部材との間に形成される第2の四角形構面内に、該第2の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは第2の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状に設けられている構成を採用した。この構成によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動し、その結果、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、アーチリブ,垂直部材,水平部材といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、履歴型ブレースの装備によって地震エネルギを吸収することができるので、橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。特に、橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
【0050】
また、請求項3記載の橋梁は、各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、この履歴型ブレースが、各アーチリブと、これらアーチリブ間を接続する各水平部材との間に形成される第2の四角形構面内に、該第2の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは第2の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状に設けられている構成を採用した。この構成によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動し、その結果、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、柱部材,アーチリブ,垂直部材,水平部材といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、履歴型ブレースの装備によって地震エネルギを吸収することができるので、橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。特に、橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
【0051】
また、請求項4記載の橋梁は、各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、この履歴型ブレースが、橋軸方向の各箇所における一対の柱部材と、これら柱部材間を接続する各水平部材との間に形成される第3の四角形構面内に、該第3の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは第3の四角形構面の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられている構成を採用した。この構成によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動し、その結果、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、柱部材,垂直部材,水平部材,上弦部材といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、履歴型ブレースの装備によって地震エネルギを吸収することができるので、橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。特に、橋軸に垂直方向の揺れに対する耐震強度を強化することが可能となる。
【0052】
また、請求項5記載の橋梁は、各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、この履歴型ブレースが、各上弦部材と、これら上弦部材間を接続する各水平部材との間に形成される第4の四角形構面内に、該第4の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは第4の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状、もしくは第4の四角形構面の一辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられている構成を採用した。この構成によれば、橋梁に地震力が作用して垂直部材や水平部材等が変形した場合、ここに斜部材として設けられた履歴型ブレースに対して引っ張りと圧縮の交番軸力が発生するが、この交番軸力に呼応して履歴型ブレースが作動し、その結果、地震エネルギが吸収されて橋梁の揺れを減衰させることができる。したがって、柱部材,垂直部材,水平部材,上弦部材といった橋梁の各主要構成部材を大型化せずとも、履歴型ブレースの装備によって地震エネルギを吸収することができるので、橋梁の構造重量の大幅増加を招来せずに済み、基礎構造を大幅に補強することなく高い耐震強度を確保することが可能となる。特に、橋軸方向及びこれに垂直方向の両方の揺れに対する耐震強度を確保することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の橋梁の第1の実施の形態を示す図であって、アーチ橋の正面図である。
【図2】同アーチ橋の要部を示す図であって、(a)は図1のC−C矢視図であり、(b)は(a)の変形例である。
【図3】同アーチ橋の要部を示す図であって、(a)は図1のD−D矢視図であり、(b)は(a)の変形例である。
【図4】同アーチ橋の要部を示す図であって、図2(a)のE部拡大図である。
【図5】同アーチ橋の斜部材として用いられる履歴型ブレースの復元力特性を示すグラフであり、横軸は履歴型ブレースの軸方向変形量δ、縦軸は履歴型ブレースに加わる繰返し軸力Nを示している。
【図6】本発明の橋梁の第2の実施の形態を示す図であって、他のアーチ橋の正面図である。
【図7】同アーチ橋の要部を示す図であって、(a)は図6のF−F矢視図であり、(b)は(a)の変形例である。
【図8】本発明の橋梁の第3の実施の形態を示す図であって、他のアーチ橋の正面図である。
【図9】同アーチ橋の要部を示す図であって、図8のG部拡大図である。
【図10】本発明の橋梁の第4の実施の形態を示す図であって、他のアーチ橋の正面図である。
【図11】本発明の橋梁の第5の実施の形態を示す図であって、トラス橋の正面図である。
【図12】同トラス橋の要部を示す図であって、(a)は図11のH−H矢視図であり、(b)及び(c)は(a)の変形例である。
【図13】同トラス橋の要部を示す図であって、(a)は図11のI−I矢視図であり、(b)は(a)の変形例である。
【図14】従来の橋梁の一例を示す図であって、アーチ橋の正面図である。
【図15】同アーチ橋を示す図であって図14のA−A矢視図である。
【図16】同アーチ橋を示す図であって図14のB−B矢視図である。
【符号の説明】
11,24,30・・・橋桁
12,32・・・柱部材
14,21・・・アーチリブ
15,22,33・・・垂直部材
16,25,35・・・水平部材
17,26,36・・・斜部材,履歴型ブレース
18・・・第1の四角形構面
19,27・・・第2の四角形構面
34・・・上弦部材
37・・・第4の四角形構面
38・・・第3の四角形構面

Claims (5)

  1. 橋桁と、該橋桁を橋軸方向の各箇所のそれぞれ幅方向左右で支持する柱部材と、これら柱部材間の前記橋軸方向に架設された一対のアーチリブと、これらアーチリブ上に立設されて前記橋桁を支持する垂直部材と、前記各アーチリブ間及び、前記各箇所の前記各柱部材間をそれぞれ水平に接続する水平部材と、これら柱部材及びアーチリブ及び垂直部材及び水平部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを備えたアーチ橋である橋梁において、
    前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、
    前記履歴型ブレースが、前記橋軸方向の前記各箇所における2本の柱部材と、これら柱部材間を接続する前記各水平部材との間に形成される第1の四角形構面内に、該第1の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第1の四角形構面の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられていることを特徴とする橋梁。
  2. 橋軸方向に架設された一対のアーチリブと、これらアーチリブ間に挟み込まれる位置に垂直部材により吊り下げ支持される橋桁と、前記アーチリブ間を水平に接続する水平部材と、これらアーチリブ及び垂直部材及び水平部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを備えたアーチ橋である橋梁において、
    前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、
    前記履歴型ブレースが、前記各アーチリブと、これらアーチリブ間を接続する前記各水平部材との間に形成される第2の四角形構面内に、該第2の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第2の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状に設けられていることを特徴とする橋梁。
  3. 橋桁と、該橋桁を橋軸方向の各箇所のそれぞれ幅方向左右で支持する柱部材と、これら柱部材間の前記橋軸方向に架設された一対のアーチリブと、これらアーチリブ上に立設されて前記橋桁を支持する垂直部材と、前記各アーチリブ間及び、前記各箇所の前記各柱部材間をそれぞれ水平に接続する水平部材と、これら柱部材及びアーチリブ及び垂直部材及び水平部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを備えたアーチ橋である橋梁において、
    前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、
    前記履歴型ブレースが、前記各アーチリブと、これらアーチリブ間を接続する前記各水平部材との間に形成される第2の四角形構面内に、該第2の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第2の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状に設けられていることを特徴とする橋梁。
  4. 橋桁と、該橋桁を支持する橋脚と、前記橋桁上の橋軸方向に沿って左右それぞれに立設されて主構面をなす柱部材及び垂直部材と、これら柱部材及び垂直部材の上端を接続する一対の上弦部材と、これら上弦部材間及び、前記橋軸方向の各箇所における一対の前記柱部材間を水平に接続する水平部材と、これら柱部材及び垂直部材及び水平部材及び上弦部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを有するトラス橋である橋梁において、
    前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、
    前記履歴型ブレースが、前記橋軸方向の各箇所における一対の柱部材と、これら柱部材間を接続する前記各水平部材との間に形成される第3の四角形構面内に、該第3の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第3の四角形構面の上辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられていることを特徴とする橋梁。
  5. 橋桁と、該橋桁を支持する橋脚と、前記橋桁上の橋軸方向に沿って左右それぞれに立設されて主構面をなす柱部材及び垂直部材と、これら柱部材及び垂直部材の上端を接続する一対の上弦部材と、これら上弦部材間及び、前記橋軸方向の各箇所における一対の前記柱部材間を水平に接続する水平部材と、これら柱部材及び垂直部材及び水平部材及び上弦部材間に構成される四角形構面で囲まれたスペースに斜めに挿設された斜部材とを有するトラス橋である橋梁において、
    前記各斜部材のうちの少なくとも一部に、引っ張りと圧縮の交番軸力を受ける履歴型ブレースが用いられ、
    前記履歴型ブレースが、前記各上弦部材と、これら上弦部材間を接続する前記各水平部材との間に形成される第4の四角形構面内に、該第4の四角形構面の各対角間を結ぶ対角線状、もしくは前記第4の四角形構面の各辺中央部間を互いに結ぶ四角形状、もしくは前記第4の四角形構面の一辺中央部とその各対角間を結ぶ傾斜位置に設けられていることを特徴とする橋梁。
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