JP3631907B2 - オフセット印刷機の駆動装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、筒状のブランケットを備えた胴溝の無いブランケット胴と、主モータによって回転駆動される主軸を有するオフセット印刷機の駆動装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より一般の印刷機のブランケット胴には、この胴本体の外周面にシート状のブランケットを捲着するための巻き込み機構が内蔵されている。このためブランケット胴本体の外周面には、軸方向に沿って形成されたスリット状の胴溝(以後ギャップと称する)が設けられている。
図6はオフセット輪転機における最も一般的な印刷胴の配置とその断面形状の一例を示したものである。この印刷胴は図6に示すごとく、連続紙5を挟んで回転する表裏のブランケット胴20a,20bと、これらの胴に相接して回転する表裏の版胴4a,4bより構成されている。ブランケット胴20a,20bにおけるそれぞれのギャップ21gは、それぞれ1回転ごとに相手の胴と接し、瞬間的に印圧が抜けるので、これが印刷機の振動や走行している連続紙5の張力変動を引き起こしいろいろな印刷障害の原因となっている。また、これらのギャップ部にはインキが着かないため、このギャップ幅が広いと非印刷長が長くなる。
【0003】
こうした不具合を解消するため、近年オフセット輪転機のブランケット胴には外周面にギャップの無い所謂、ギャップレスのブランケット胴が開発されるに至った。これは、図7に示すごとく、スリット状の胴溝が加工されていない胴本体11の外周面に筒状のブランケット12などを装着したもので、特に商業印刷分野では次第に採用されるようになってきている。
また、従来より輪転機の駆動装置は、図8および図9に例示するごとく、各印刷部Pと折り部Fを主軸1で連結し、この主軸1に取り付けられた主モータ2によって、図示せざる各部のギヤボックス、縦軸または歯車列、クラッチなどを経て各部を一括して駆動する方式が採られてきた。
【0004】
しかし、最近、輪転機の駆動方式も、機械の簡素化、版変えの効率化、損紙の軽減化、準備時間の短縮化などを求めて、シャフトレス輪転機と称し、各部間を連結する主軸1を無くして、輪転機全体を一括して駆動する主モータを無くす方式が登場するようになってきた。一般にシャフトレス輪転機と称しても、その駆動方式にはいろいろのものがあり、折り部Fと印刷部Pの各ユニットごとにモータを1台づつ取り付けた独立駆動方式や、1対の版胴・ブランケット胴ごとにモータを1台づつ取り付けた単独駆動方式などが公表されている。
【0005】
主軸1によって各部を連結した従来の一括駆動方式では、図10に示すごとく、表裏の版胴4a,4bとブランケット胴10a,10b又は20a,20bは、それぞれの駆動側軸端に固設された歯車6a,6b,25a,25bが相接する胴の歯車と互いに噛合し、主モータ2からの動力が伝達され、全胴が等速で回転駆動されている。この全胴等速回転駆動はシャフトレス輪転機における独立駆動方式の場合も同じである。また、1対の印刷胴ごとにモータを設けた単独駆動方式においても、1対の版胴・ブランケット胴、例えば版胴4aとブランケット胴20aでは、それぞれの駆動側軸端に固設された2枚の歯車6aと25aが噛合し、両胴は等速で回転駆動されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
ところが以上のような駆動方式を用いた輪転機では主軸1の有無に拘わらず、ギャップのある従来型のブランケット胴20a,20bを使用しているものは勿論のこと、ギャップレスのブランケット胴10a,10bを採用した最新の輪転機においても、版胴4a,4bとこれらのブランケット胴20a,20b又は10a,10bが常に等速で回転駆動されているため、次のような問題点が内在していた。
(イ) 版面上の絵柄に応じたインキが1回転ごとにブランケット胴の同じ位置に転移するため、ブランケット胴の表面上にはインキと絡まった紙粉が堆積し易く、これが刷り面の劣化を招くので、ブランケット胴の表面を頻繁に洗浄する必要があった。
【0007】
(ロ) 版胴の版装着用ギャップが1回転ごとにブランケット胴の同じ位置にくるため、ブランケットが局部的に損傷し、これがブランケットの寿命延長を妨げる大きな要因の一つになっていた。
(ハ) 複数の印刷ユニットに連続紙を通して多色刷りを行う場合や、多数の印刷ユニットでそれぞれ印刷した連続紙を重ね合わせて多ページ印刷を行う場合には、走行紙の張力がブランケット胴の仕立て径に左右されるので、このような印刷運転には多くのノウハウが必要なほか、輪転機の張力制御装置を複雑にしていた。
したがって本発明は、これらの問題を解決し、機械構造が簡単で紙粉が堆積しにくく、しかも走行紙の張力制御が容易にできるオフセット印刷機の駆動装置を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、筒状のブランケットを使用するブランケット胴と、主モータによって回転駆動される主軸を有するオフセット印刷機の駆動装置において、前記主軸を介して機械的に版胴を駆動する第1駆動手段と、単独モータによって前記ブランケット胴を駆動する第2駆動手段と、前記主モータの速度に対して前記単独モータを任意に設定する比率で追従するように回転せしめる回転制御手段とを設けた。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の第1の実施の形態によるオフセット印刷機の駆動装置について、図面を参照しながら説明する。
本発明のオフセット印刷機は、図1に示すように、B−B型のオフセット印刷ユニット3A,3B,3C,3Dをタワー状に積み重ねてなる輪転機の印刷部Pと、輪転機の折り部Fを設けている。
印刷部Pには、輪転機の主軸1が設けられ、印刷ユニット3A,3B,3C,3Dには、主軸1を回転駆動せしめる主モータ2、表裏の版胴4a,4b及び表裏のギャップレスのブランケット胴10a,10bを設け、表裏のブランケット胴10aと10bの間には、こららの間を走行しながら印刷される連続紙が供給される。
【0010】
本実施の形態のオフセット印刷機の駆動装置は、上記のように構成されたオフセット輪転機における印刷胴の駆動装置に適用したものであって、本駆動装置は第1駆動手段と第2駆動手段とから成る。
第1の駆動手段は表裏の版胴4a,4bを回転駆動させる手段であり、主モータ2及び主モータ2の回転力を版胴4a,4bに伝達する第1中間伝達機構から成る。第1中間伝達機構は、版胴4a,4bのそれぞれの駆動側軸端に歯車6a,6bが固設され、歯車6aには、主軸1より傘歯車7および中間歯車群8を介して回転動力が伝達されるようになっている。また、表裏のギャップレスのブランケット胴10a,10bのそれぞれの駆動側の軸には、歯車15a,15bがベアリングを介して回転自在に支持されており、これらの歯車15a,15bは隣接する歯車6a,6bとそれぞれ噛合するとともに、互いに噛合している。
【0011】
第2の駆動手段は、サーボモータ14と第2中間伝達機構とから成る。第2中間伝達機構は、ブランケット胴10a,10bのそれぞれの駆動側軸端に、歯車16a,16bが固設され、これらの歯車16aと16bは互いに噛合し、一方の歯車16bには、サーボモータ14の出力軸に固設された歯車17が噛合している。このような構成により、表裏のギャップレスのブランケット胴10a,10bが、版胴4a,4bとは単独で回転駆動されるようになっている。
【0012】
主軸1およびサーボモータ14には、それぞれロータリエンコーダ9,13が取り付けられ、サーボモータ14の回転を制御する制御回路に接続されている。なお、本実施例の版胴4a,4bは、図7に示すごとく、版装着用ギャップ2gのある一般的なものを示しているが、版締め機構を必要としないギャップレスの版胴を用いてもよい。
【0013】
次に、本実施の形態の作用について説明する。
本実施の形態の駆動装置は、以上のように構成されているので、表裏4色刷りの場合であれば、輪転機の起動ボタンを押すと、主モータ2と印刷ユニット3A,3B,3C,3Dの全てのサーボモータ14が一斉に回転する。
主モータ2によって輪転機の主軸1が回転駆動され、主軸1の回転が傘歯車7、中間歯車群8および図示せざるユニット関連結歯車を介して各印刷ユニットの歯車6a→歯車15a→歯車15b→歯車6bに回転動力が伝達される。したがって歯車6a,6bを軸端に固定しているそれぞれの版胴4a,4bは主軸1によって回転駆動されるが、歯車15a,15bをそれぞれ回転自在に支持するブランケット胴10a,10bは、主軸1によって回転駆動されない。
【0014】
一方、サーボモータ14の回転によって、歯車17を介して歯車16b→歯車16aに回転動力が伝達される。したがって歯車16a,16bをそれぞれ軸端に固定しているブランケット胴10a,10bが共通のサーボモータ14によって連続紙5を送り出す方向に回転駆動される。このときサーボモータ14の回転は、ロータリエンコーダ13によってディジタル信号で検出され、その制御回路によって主モータ2の回転数に対し、印刷条件に応じて設定された一定の比率で追従するように制御される。したがってブランケット胴10a,10bの外周面を、印刷条件に応じて設定された設定値により版面に対して僅かにスリップする状態で回転させることができる。
【0015】
以上のように、本発明の印刷機の駆動装置では、版胴4a,4bを主軸1によって回転駆動し、ギャップレスのブランケット胴10a,10bをサーボモータ14によって、版胴4a,4bの回転数に対して設定された一定の比率で回転駆動し、ブランケット胴10a,10bの外周面が版面に対して僅かにスリップする状態で回転するようにしているので次の効果がある。
(イ) 版面上の絵柄に応じたインキが1回転ごとにブランケット胴の同じ位置に転移されなくなるため、インキ紙粉がブランケット上に堆積しにくくなり、印刷時間帯におけるブランケット洗浄の頻度および時間を減少させることができる。
【0016】
(ロ) 版装着用ギャップのある版胴を用いる場合には、このギャップが1回転ごとにブランケット胴の同じ位置に当たらなくなるため、ブランケットが局部的に損傷することがなくなり、その寿命を延長させることができる。
(ハ) 複数の印刷ユニットに連続紙を通して多色刷りを行う場合や、多数の印刷ユニットでそれぞれ印刷した連続紙を重ね合わせて多ページ印刷を行う場合には、各印刷ユニットから送り出されてくる走行紙の張力が最適値になるようにブランケット胴の回転速度を微細に調整できるので、輪転機の張力制御装置が簡素化されるとともに、従来熟練を要していたこの種の印刷運転が極めて容易になる。
【0017】
なお、ハーモニックドライブ等を使用して、版胴からブランケット胴を相対的にずらせるよう機械的に駆動する方法に対し、部品点数が著しく少なく安価であり、従って、故障・損傷が起こる率が少なく安定した運転ができる。
また円筒ブランケットのブランケット胴との摩擦力を利用して円筒ブランケットをブランケット胴に対し、回転をずらせる方法もあるがこれは摩擦力が安定せず意図した回転にすることができないのに比べ安定して意図した回転を得ることができる。
【0018】
次に、本発明の第2の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
上記第1の実施の形態では、表裏のギャップレスのブランケット胴10a,10bのそれぞれの駆動側軸端には、互いに噛合する歯車16a,16bが固設され、一台のサーボモータ14によって、これらのブランケット胴10a,10bを等速で回転駆動されるようになっていた。これに対し、実施例2の駆動装置では、表裏のギャップレスのブランケット胴10a,10bのそれぞれの駆動側軸端に固設された歯車26a,26bは互いに噛合せず、これらの歯車26a,26bはサーボモータ24a,24bの各出力軸に固設されたそれぞれの歯車27a,27bに噛合し、ギャップレスのブランケット胴10a,10bをそれぞれのサーボモータ24a,24bによって単独で回転駆動するようになっている。
なお、サーボモータ24a,24bには、それぞれロータリエンコーダ23a,23bが取り付けられ、それぞれのサーボモータ24a,24bの回転を別々に制御する制御回路に接続している。
版胴4a,4bの駆動機構その他は、上記第1の実施の形態と同じである。
【0019】
本実第2の実施の形態の駆動装置では、表裏のギャップレスのブランケット胴10a,10bの駆動手段が以上のように構成されているので、表裏4色刷りの場合であれば、輪転機の起動ボタンを押すと、主モータ2と印刷ユニット3A,3B,3C,3Dの全てのサーボモータ24a,24bが一斉に回転する。サーボモータ24aの回転によって、歯車27aが歯車26aを介して表ブランケット胴10aを回転駆動し、サーボモータ24bは歯車27b→歯車26bを介して裏ブランケット胴10bを回転駆動する。
【0020】
このとき、サーボモータ24a,24bの回転は、それぞれのロータリエンコーダ23a,23bによってディジタル信号で検出され、それぞれの制御回路によって主モータ2の回転数に対し、印刷条件に応じて設定された一定の比率で追従するように制御される。したがって表裏のギャップレスのブランケット胴10a,10bの外周面を、印刷条件に応じて設定された設定値により版面に対して僅かにスリップする状態で個別に回転させることができる。
版胴4a,4bの駆動、その他の作用・効果は上記第1の実施の形態と同じである。
【0021】
以上、本発明の実施の形態について説明したが、勿論、本発明はこれに限定されることなく本発明の技術的思想に基いて種々の変形が可能である。
例えば、上記実施の形態では、オフセット輪転機のうち、B−Bタイプについて説明したが、サテライトタイプ及び3本胴タイプにも適用が可能である。
【0022】
【発明の効果】
本発明のオフセット印刷機の駆動装置は、ブランケット胴と、該ブランケット胴に併設された版胴と、主モータによって回転駆動される主軸を有するオフセット印刷機の駆動装置において、前記主軸を介して前記版胴を駆動する第1駆動手段と、単独モータを介して前記ブランケット胴を駆動する第2駆動手段と、前記主モータの回転速度に対して前記単独モータを任意の比率で回転させる回転制御手段とを設けたので、版面上の絵柄に応じたインキが1回転ごとにブランケット胴の同じ位置に転移されなくなるため、インキ紙粉がブランケット上に堆積しにくくなり、印刷時間帯におけるブランケット洗浄の頻度および時間を減少させることができる。
また、版装着用ギャップのある版胴を用いる場合には、このギャップが1回転ごとにブランケット胴の同じ位置に当たらなくなるため、ブランケットが局部的に損傷することがなくなり、その寿命を延長させることができる。
さらに、複数の印刷ユニットに連続紙を通して多色刷りを行う場合や、多数の印刷ユニットでそれぞれ印刷した連続紙を重ね合わせて多ページ印刷を行う場合には、各印刷ユニットから送り出されてくる走行紙の張力が最適値になるようにブランケット胴の回転速度を微細に調整できるので、輪転機の張力制御装置が簡素化されるとともに、従来熟練を要していたこの種の印刷運転が極めて容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施の形態によるオフセット印刷機の駆動装置の全容を示す配置図である。
【図2】図1のオフセット印刷機の駆動装置の要部を示す平面図である。
【図3】図2のオフセット印刷機の駆動装置の歯車部の拡大図である。
【図4】本発明の第2の実施の形態によるオフセット印刷機の駆動装置の要部を示す平面図である。
【図5】図4のオフセット印刷機の駆動装置の歯車部の拡大図である。
【図6】ギャップを有するブランケット胴を備えた一般的な印刷胴の配置図である。
【図7】ギャップを有しないブランケット胴を備えた一般的な印刷胴の配置図である。
【図8】従来のオフセット印刷機の駆動装置の全容を示す配置図である。
【図9】他の従来のオフセット印刷機の駆動装置の全容を示す配置図である。
【図10】従来のオフセット印刷機の駆動装置の要部を示す平面図である。
【符号の説明】
1 主軸
2 主モータ
3A〜3D オフセット印刷ユニット
4a,4b 版胴
5 連続紙
6a,6b,15a,15b,16a,16b,17,26a,26b,27a,27b 歯車
8 中間歯車群
9,13,23a,23b ロータリエンコーダ
10a,10b ブランケット胴
14,24a,24b サーボモータ
F 折り部
P 印刷部
Claims (3)
- 版胴と、該版胴に併設されたブランケット胴とを備えたオフセット印刷機の駆動装置において、前記版胴を第1中間伝達機構を介して回転駆動させる主モータを有する第1駆動手段と、前記ブランケット胴を第2中間伝達機構を介して回転駆動させる補助モータを有する第2駆動手段とを備えて成り、上記主モータと補助モータとにより、上記版胴の周速と上記ブランケット胴の周速をずらしたことを特徴とするオフセット印刷機の駆動装置。
- 前記ブランケット胴が2以上設けられ、該ブランケット胴の各々に補助モータを設けたことを特徴とする請求項1に記載のオフセット印刷機の駆動装置。
- 前記主モータの回転速度に対して前記補助モータを任意の比率で回転制御させるモータの回転制御手段を設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載のオフセット印刷機の駆動装置。
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