JP3631510B2 - 細菌バイオフィルム形成阻害剤 - Google Patents
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Description
【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、細菌バイオフィルム形成阻害剤、とりわけ緑膿菌に対して優れた作用を示すバイオフィルム形成阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、抗菌剤の進歩は目ざましいものがあるが、試験管内で見られる抗菌力と実際にそれが使われた時の臨床的な除菌率の間には大きな狭間がある。その狭間を埋めるものの一つがバイオフィルム(微生物膜)の存在である。栄養に乏しい流水中のパイプ内面、岩石表面に細菌が固着、増殖してバイオフィルムが形成されることが観察されて以来(アニュアル・レビュー・オブ・マイクロバイオロジー, 35, 299(1981))、生体組織表面でも細菌がつくるバイオフィルムが観察された(インフェクション・アンド・イミュニティ, 43, 359(1984))。一方、医療機器の領域でも血管内カテーテル等において細菌バイオフィルムが観察されている(キドニー・インターナショナル, 35, 614(1989))。これらの細菌は周辺に多糖体を主成分とするアルジネート(alginate)を産生し、さらにバイオフィルムを形成して、薬が膜を通らないようにして生き延びていく(アニュアル・レビュー・オブ・マイクロバイオロジー, 41, 435(1987))。
【0003】
最近、生体内での細菌バイオフィルム形成を感染症の難治化要因の一つとして捉えるようになってきて、バイオフィルムと各種抗菌剤との相互作用が観察されているが、今日の時点では、細菌バイオフィルムに対し、高い透過性を有し、中の菌を完全に殺菌できうる抗菌剤はまだ見つかっていない。又、バイオフィルムを破壊するという補助的療法も完全なものではない。一方、緑膿菌性びまん性汎細気管支炎に対し、マクロライド抗生物質であるエリスロマイシン、クラリスロマイシンを長期投与することによる効果が報告され(感染症学雑誌, 60, 45(1986))、クラリスロマイシンは低濃度でグリコカリックス(glycocalyx)の産生を抑制し、組織への付着をも抑制することが観察されている(感染症, 21, 161(1991))が、その作用機構は不明である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
難治性感染症の治療に各種抗菌剤が単独あるいは併用で使われているが、必ずしも充分な効果が認められているわけではない。エリスロマイシンを中心としたマクロライドの長期投与においても、全ての症例において満足すべきQOL(Quality of Life)が得られているわけではない。そこで、従来の抗菌力を主眼においた新薬の開発の視点とは異なり、難治性感染症の原因でもある細菌バイオフィルム形成の阻害を目的とした、長期に安全に投薬ができ、より高いQOLが与えられる薬剤が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべくマクロライド抗生物質及びその部分構造に注目し鋭意研究を重ねた結果、構成成分の一つであるアミノ糖が細菌バイオフィルム形成を阻害することを見い出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は一般式(I)
【化3】
【0007】
[式中、R1は水素原子、炭素数1〜5の直鎖又は分枝鎖のアルキル基、又は12〜16員環マクロライドのアグリコン部であり、R2は水素原子又は水酸基]で表される化合物、又はその薬理学的に許容される塩類を有効成分とする細菌バイオフィルム形成阻害剤に関するものである。
【0008】
本発明の細菌バイオフィルム形成阻害剤は、細菌とりわけ緑膿菌に対して優れた作用を示し、難治性感染症、特に緑膿菌によるびまん性汎細気管支炎に対して有効である。従って、上記感染症の治療法を提供し、その方法は有効量の一般式(I)により表される化合物、又はその薬理学的に許容される塩類を投与することを特徴とする。
【0009】
一般式(I)で表される化合物のうち、R1がメチル基であり、R2が水素原子である化合物(1)(メチルデソサミナイド)は純合成によっても得ることができるが、アミノ糖であるデソサミンを有するマクロライド抗生物質、例えばエリスロマイシンから得られるデソサミンをメチル化して容易に得ることがができる(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソシエチー, 76, 3121(1954))。又、一般式(I)で表される化合物のうち、R1がメチル基であり、R2が水酸基である化合物(2)(メチルマイカミノサイド)は純合成によっても得ることができるが、アミノ糖であるマイカミノースを有するマクロライド抗生物質、例えばミデカマイシンより得られるマイカミノース(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソシエチー, 76, 5080(1954))をメチル化して容易に得ることができる(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソシエチー, 77, 3353(1955))。さらに、一般式(I)で表される化合物のうち、R1が16員環マクロライドのアグリコン部であり、R2が水酸基で表される化合物(3)(9−デヒドロデマイカロシルプラテノマイシン)は16員環マクロライド抗生物質であるプラテノマイシンの生合成中間体(ジャーナル・オブ・アンチビオチックス, 28, 775(1975))である。又、16員環マクロライドであるミデカマイシンA3よりアシル化されたマイカロースを切断することにより容易に調製できる。今回、本発明者らは新たに一般式(I)で表される化合物(1)、(2)、(3)にムコイド型緑膿菌グリコカリックスすなわちアルジネートの産生を抑制する作用があることを見いだし、本発明を完成させた。本発明では、一般式(I)で表される化合物の投与量は経口投与及び非経口の場合、成人1日当たり約0.01mg/kg〜30mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kgであるが、患者の症状、年齢等によって変わりうるものであることは言うまでもない。尚、化合物(1)、(2)、(3)の0.2%CMC懸濁液を250mg/kgになるようにICRマウス(n=3)に経口投与し、7日間観察したが、死亡例は全く認められなかった。
【0010】
本発明の一般式(I)で表される化合物の薬理学的に許容される塩類としては、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、有機塩基との塩(例えばトリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩等)が含まれる。
【0011】
本発明の活性成分を経口投与する場合には種々の形態があり、例えば錠剤、顆粒、細粒、粉末、シロップ、エリキシル等とすればよく、特に顆粒及び粉末は必要に応じてカプセルに封入して単位量投与形態とすることができる。これら経口投与剤のうち固形剤は通常用いられる賦形剤、例えば無水珪酸、メタ珪酸、アルミン酸、マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、乳糖、砂糖、とうもろこし澱粉、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ又はグリシン;結合剤、例えばアラビアゴム、ゼラチン、トラガント、ヒドロキシプロピルセルロース又はポリビニルピロリドン;滑沢剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム;崩壊剤、例えばカルボキシルメチルセルロースカルシウム又は馬鈴薯澱粉;湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ソルビタンモノオレート等を含有してもよい。
【0012】
経口投与剤のうち液剤は水性又は油性の乳濁液、シロップ剤等にすればよく、あるいは使用する前に適当なビヒクルで再溶解し得る乾燥生成物にしてもよい。このような液剤は普通に用いられる添加剤、例えば乳化補助剤であるソルビットシロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース等;又乳化剤、例えば、レシチンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン硬化ひまし油;非水性ビヒクル、例えばアーモンド油、落花生油;防腐剤、例えばソルビン酸、P−ヒドロキシ安息香酸メチル、P−ヒドロキシ安息香酸プロピル等を添加してもよい。更に、これらの経口投与剤には必要に応じて安定化剤、保存剤等を含有してもよい。
【0013】
又、本発明の活性成分を注射剤にする場合には、水溶液、油溶液、乳化液のような形態にすればよく、これらの液体には通常用いられる乳化剤、安定化剤等を含有してもよい。これらの薬剤は投与方法により活性成分を1重量%以上、好ましくは5〜50重量%含有することができる。
【0014】
次に本発明化合物の有用性について述べる。緑膿菌におけるフルクトース6リン酸からアルジネートへの生合成には、少なくてもホスホマンノースイソメラーゼ(phosphomannose isomerase)、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)、グアノシンジホスホDーマンノースピロホスホリラーゼ(guanosine diphospho D−mannose pyrophosphorylase)、グアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼ(guanosine diphospho D−mannose dehydrogenase)の4つの酵素が関与している(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・アプライド・マイクロバイオロジー, 13, 179(1981))。この中でもグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼはアルジネート生合成の鍵酵素である。そこで、本発明の化合物がグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼに対して阻害活性を有していればバイオフィルムの形成が阻害されることになる。後記の試験例で明らかなように
本発明化合物はグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼに対して濃度依存的に酵素活性を阻害していることが明らかになった。
【0015】
【実施例】
次に実施例を示すが、これは単なる例示であって、本発明を限定するものではない。ここに例示しなかった多くの変法あるいは修飾手段を持ちうることは勿論のことである。又、化合物(1)、(2)、(3)の製造法を参考例に示す。
【0016】
参考例1
化合物(1)(メチルデソサミナイド)の製造法
エリスロマイシン 10 gをエタノール 50 mlに溶解した後、6N塩酸 160 mlを加え、4時間加熱還流した。反応液をクロロホルム 12.5 mlで5度洗浄した。水層を減圧濃縮しエタノールを除去した後、エーテル 50 mlで5度洗浄し、水層を減圧濃縮して残さ 2.92 gを得た。この内 1.0 gを飽和塩酸メタノール 37.5 mlに溶解し、27時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮後、10 mlの冷水に溶解した。これを20%水酸化ナトリウムでpH11にし、クロロホルム 25 mlで3度抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、これを濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた粗化合物(1) 766 mgをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100 g:クロロホルムーメタノール(5:1))で精製し、化合物(1) 647 mgを得た。
【0017】
参考例2
化合物(2)(メチルマイカミノサイド)の製造法
ミデカマイシン 10 gをエタノール 50 mlに溶解した後、6N塩酸 160 mlを加え、4時間加熱還流した。反応液をクロロホルム 12.5 mlで5度洗浄した。水層を減圧濃縮しエタノールを除去した後、エーテル 50 mlで5度洗浄し、水層を減圧濃縮して残さ 2.45 gを得た。この内 1.0 gを飽和塩酸メタノール 37.5 mlに溶解し、27時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮後、10 mlの冷水に溶解した。これを20%水酸化ナトリウムでpH11にし、クロロホルム 25 mlで3度抽出した。クロロホルムを無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、これを濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた粗化合物(2) 542 mgをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50 g:クロロホルムーメタノール(5:1))で精製し、化合物(2) 456 mgを得た。
【0018】
参考例3
化合物(3)( 9− デヒドロデマイカロシルプラテノマイシン)の製造法
ミデカマイシンA3 2.0 gをアセトニトリル 32 mlに溶解し、1N塩酸 32 mlを加え室温で17時間反応させた。反応液を8%炭酸水素ナトリウム水溶液 320 mlに加え、クロロホルム 260 mlで2度抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した後、減圧濃縮して得られた残さ 2.35 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(230 g:クロロホルムーメタノール(12:1)→(6:1))で精製し、化合物(3) 1.06 gを得た。
【0019】
実施例1
有効成分20mg含有錠剤は以下の組成にて調製した。
【0020】
実施例2
有効成分20mg含有カプセル剤は以下の組成にて調製した。
【0021】
試験例
化合物(1)、(2)、(3)のグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼ活性に対する阻害効果を調べた。まず、緑膿菌よりグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼを抽出し、粗酵素液を得た(ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー, 264, 9380(1989))。この粗酵素液と化合物(1)、(2)、(3)を30℃で5分反応させ、残存するグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼ活性を測定した(ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー, 264, 9380(1989))。その結果を図1に示す。化合物(1)、(2)、(3)ともに濃度依存的に酵素活性を阻害した。
【0022】
【発明の効果】
一般式(I)で表される化合物は、緑膿菌のアルジネート生合成の鍵酵素グアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼを阻害することから、細菌バイオフィルム形成阻害剤、特に緑膿菌バイオフィルム形成阻害剤として、難治性感染症、特に緑膿菌によるびまん性汎細気管支炎の治療剤として有効である。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物(1)、(2)、(3)のグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼ活性に対する阻害効果を表す。
【産業上の利用分野】
本発明は、細菌バイオフィルム形成阻害剤、とりわけ緑膿菌に対して優れた作用を示すバイオフィルム形成阻害剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、抗菌剤の進歩は目ざましいものがあるが、試験管内で見られる抗菌力と実際にそれが使われた時の臨床的な除菌率の間には大きな狭間がある。その狭間を埋めるものの一つがバイオフィルム(微生物膜)の存在である。栄養に乏しい流水中のパイプ内面、岩石表面に細菌が固着、増殖してバイオフィルムが形成されることが観察されて以来(アニュアル・レビュー・オブ・マイクロバイオロジー, 35, 299(1981))、生体組織表面でも細菌がつくるバイオフィルムが観察された(インフェクション・アンド・イミュニティ, 43, 359(1984))。一方、医療機器の領域でも血管内カテーテル等において細菌バイオフィルムが観察されている(キドニー・インターナショナル, 35, 614(1989))。これらの細菌は周辺に多糖体を主成分とするアルジネート(alginate)を産生し、さらにバイオフィルムを形成して、薬が膜を通らないようにして生き延びていく(アニュアル・レビュー・オブ・マイクロバイオロジー, 41, 435(1987))。
【0003】
最近、生体内での細菌バイオフィルム形成を感染症の難治化要因の一つとして捉えるようになってきて、バイオフィルムと各種抗菌剤との相互作用が観察されているが、今日の時点では、細菌バイオフィルムに対し、高い透過性を有し、中の菌を完全に殺菌できうる抗菌剤はまだ見つかっていない。又、バイオフィルムを破壊するという補助的療法も完全なものではない。一方、緑膿菌性びまん性汎細気管支炎に対し、マクロライド抗生物質であるエリスロマイシン、クラリスロマイシンを長期投与することによる効果が報告され(感染症学雑誌, 60, 45(1986))、クラリスロマイシンは低濃度でグリコカリックス(glycocalyx)の産生を抑制し、組織への付着をも抑制することが観察されている(感染症, 21, 161(1991))が、その作用機構は不明である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
難治性感染症の治療に各種抗菌剤が単独あるいは併用で使われているが、必ずしも充分な効果が認められているわけではない。エリスロマイシンを中心としたマクロライドの長期投与においても、全ての症例において満足すべきQOL(Quality of Life)が得られているわけではない。そこで、従来の抗菌力を主眼においた新薬の開発の視点とは異なり、難治性感染症の原因でもある細菌バイオフィルム形成の阻害を目的とした、長期に安全に投薬ができ、より高いQOLが与えられる薬剤が望まれている。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決すべくマクロライド抗生物質及びその部分構造に注目し鋭意研究を重ねた結果、構成成分の一つであるアミノ糖が細菌バイオフィルム形成を阻害することを見い出し、本発明を完成した。
【0006】
すなわち、本発明は一般式(I)
【化3】
【0007】
[式中、R1は水素原子、炭素数1〜5の直鎖又は分枝鎖のアルキル基、又は12〜16員環マクロライドのアグリコン部であり、R2は水素原子又は水酸基]で表される化合物、又はその薬理学的に許容される塩類を有効成分とする細菌バイオフィルム形成阻害剤に関するものである。
【0008】
本発明の細菌バイオフィルム形成阻害剤は、細菌とりわけ緑膿菌に対して優れた作用を示し、難治性感染症、特に緑膿菌によるびまん性汎細気管支炎に対して有効である。従って、上記感染症の治療法を提供し、その方法は有効量の一般式(I)により表される化合物、又はその薬理学的に許容される塩類を投与することを特徴とする。
【0009】
一般式(I)で表される化合物のうち、R1がメチル基であり、R2が水素原子である化合物(1)(メチルデソサミナイド)は純合成によっても得ることができるが、アミノ糖であるデソサミンを有するマクロライド抗生物質、例えばエリスロマイシンから得られるデソサミンをメチル化して容易に得ることがができる(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソシエチー, 76, 3121(1954))。又、一般式(I)で表される化合物のうち、R1がメチル基であり、R2が水酸基である化合物(2)(メチルマイカミノサイド)は純合成によっても得ることができるが、アミノ糖であるマイカミノースを有するマクロライド抗生物質、例えばミデカマイシンより得られるマイカミノース(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソシエチー, 76, 5080(1954))をメチル化して容易に得ることができる(ジャーナル・オブ・アメリカン・ケミカル・ソシエチー, 77, 3353(1955))。さらに、一般式(I)で表される化合物のうち、R1が16員環マクロライドのアグリコン部であり、R2が水酸基で表される化合物(3)(9−デヒドロデマイカロシルプラテノマイシン)は16員環マクロライド抗生物質であるプラテノマイシンの生合成中間体(ジャーナル・オブ・アンチビオチックス, 28, 775(1975))である。又、16員環マクロライドであるミデカマイシンA3よりアシル化されたマイカロースを切断することにより容易に調製できる。今回、本発明者らは新たに一般式(I)で表される化合物(1)、(2)、(3)にムコイド型緑膿菌グリコカリックスすなわちアルジネートの産生を抑制する作用があることを見いだし、本発明を完成させた。本発明では、一般式(I)で表される化合物の投与量は経口投与及び非経口の場合、成人1日当たり約0.01mg/kg〜30mg/kg、好ましくは0.1mg/kg〜10mg/kgであるが、患者の症状、年齢等によって変わりうるものであることは言うまでもない。尚、化合物(1)、(2)、(3)の0.2%CMC懸濁液を250mg/kgになるようにICRマウス(n=3)に経口投与し、7日間観察したが、死亡例は全く認められなかった。
【0010】
本発明の一般式(I)で表される化合物の薬理学的に許容される塩類としては、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩、マグネシウム塩等)、アンモニウム塩等の無機塩基との塩、有機塩基との塩(例えばトリエチルアミン塩、ピリジン塩、ピコリン塩等)が含まれる。
【0011】
本発明の活性成分を経口投与する場合には種々の形態があり、例えば錠剤、顆粒、細粒、粉末、シロップ、エリキシル等とすればよく、特に顆粒及び粉末は必要に応じてカプセルに封入して単位量投与形態とすることができる。これら経口投与剤のうち固形剤は通常用いられる賦形剤、例えば無水珪酸、メタ珪酸、アルミン酸、マグネシウム、合成珪酸アルミニウム、乳糖、砂糖、とうもろこし澱粉、微晶質セルロース、ヒドロキシプロピルスターチ又はグリシン;結合剤、例えばアラビアゴム、ゼラチン、トラガント、ヒドロキシプロピルセルロース又はポリビニルピロリドン;滑沢剤、例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム;崩壊剤、例えばカルボキシルメチルセルロースカルシウム又は馬鈴薯澱粉;湿潤剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリエチレングリコール、ソルビタンモノオレート等を含有してもよい。
【0012】
経口投与剤のうち液剤は水性又は油性の乳濁液、シロップ剤等にすればよく、あるいは使用する前に適当なビヒクルで再溶解し得る乾燥生成物にしてもよい。このような液剤は普通に用いられる添加剤、例えば乳化補助剤であるソルビットシロップ、メチルセルロース、ゼラチン、ヒドロキシエチルセルロース等;又乳化剤、例えば、レシチンソルビタンモノオレート、ポリオキシエチレン硬化ひまし油;非水性ビヒクル、例えばアーモンド油、落花生油;防腐剤、例えばソルビン酸、P−ヒドロキシ安息香酸メチル、P−ヒドロキシ安息香酸プロピル等を添加してもよい。更に、これらの経口投与剤には必要に応じて安定化剤、保存剤等を含有してもよい。
【0013】
又、本発明の活性成分を注射剤にする場合には、水溶液、油溶液、乳化液のような形態にすればよく、これらの液体には通常用いられる乳化剤、安定化剤等を含有してもよい。これらの薬剤は投与方法により活性成分を1重量%以上、好ましくは5〜50重量%含有することができる。
【0014】
次に本発明化合物の有用性について述べる。緑膿菌におけるフルクトース6リン酸からアルジネートへの生合成には、少なくてもホスホマンノースイソメラーゼ(phosphomannose isomerase)、ホスホマンノムターゼ(phosphomannomutase)、グアノシンジホスホDーマンノースピロホスホリラーゼ(guanosine diphospho D−mannose pyrophosphorylase)、グアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼ(guanosine diphospho D−mannose dehydrogenase)の4つの酵素が関与している(ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・アプライド・マイクロバイオロジー, 13, 179(1981))。この中でもグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼはアルジネート生合成の鍵酵素である。そこで、本発明の化合物がグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼに対して阻害活性を有していればバイオフィルムの形成が阻害されることになる。後記の試験例で明らかなように
本発明化合物はグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼに対して濃度依存的に酵素活性を阻害していることが明らかになった。
【0015】
【実施例】
次に実施例を示すが、これは単なる例示であって、本発明を限定するものではない。ここに例示しなかった多くの変法あるいは修飾手段を持ちうることは勿論のことである。又、化合物(1)、(2)、(3)の製造法を参考例に示す。
【0016】
参考例1
化合物(1)(メチルデソサミナイド)の製造法
エリスロマイシン 10 gをエタノール 50 mlに溶解した後、6N塩酸 160 mlを加え、4時間加熱還流した。反応液をクロロホルム 12.5 mlで5度洗浄した。水層を減圧濃縮しエタノールを除去した後、エーテル 50 mlで5度洗浄し、水層を減圧濃縮して残さ 2.92 gを得た。この内 1.0 gを飽和塩酸メタノール 37.5 mlに溶解し、27時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮後、10 mlの冷水に溶解した。これを20%水酸化ナトリウムでpH11にし、クロロホルム 25 mlで3度抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、これを濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた粗化合物(1) 766 mgをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(100 g:クロロホルムーメタノール(5:1))で精製し、化合物(1) 647 mgを得た。
【0017】
参考例2
化合物(2)(メチルマイカミノサイド)の製造法
ミデカマイシン 10 gをエタノール 50 mlに溶解した後、6N塩酸 160 mlを加え、4時間加熱還流した。反応液をクロロホルム 12.5 mlで5度洗浄した。水層を減圧濃縮しエタノールを除去した後、エーテル 50 mlで5度洗浄し、水層を減圧濃縮して残さ 2.45 gを得た。この内 1.0 gを飽和塩酸メタノール 37.5 mlに溶解し、27時間加熱還流した。反応液を減圧濃縮後、10 mlの冷水に溶解した。これを20%水酸化ナトリウムでpH11にし、クロロホルム 25 mlで3度抽出した。クロロホルムを無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥後、これを濾過し、濾液を減圧濃縮して得られた粗化合物(2) 542 mgをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(50 g:クロロホルムーメタノール(5:1))で精製し、化合物(2) 456 mgを得た。
【0018】
参考例3
化合物(3)( 9− デヒドロデマイカロシルプラテノマイシン)の製造法
ミデカマイシンA3 2.0 gをアセトニトリル 32 mlに溶解し、1N塩酸 32 mlを加え室温で17時間反応させた。反応液を8%炭酸水素ナトリウム水溶液 320 mlに加え、クロロホルム 260 mlで2度抽出した。クロロホルム層を無水硫酸ナトリウムを用いて乾燥した後、減圧濃縮して得られた残さ 2.35 gをシリカゲルカラムクロマトグラフィー(230 g:クロロホルムーメタノール(12:1)→(6:1))で精製し、化合物(3) 1.06 gを得た。
【0019】
実施例1
有効成分20mg含有錠剤は以下の組成にて調製した。
【0020】
実施例2
有効成分20mg含有カプセル剤は以下の組成にて調製した。
【0021】
試験例
化合物(1)、(2)、(3)のグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼ活性に対する阻害効果を調べた。まず、緑膿菌よりグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼを抽出し、粗酵素液を得た(ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー, 264, 9380(1989))。この粗酵素液と化合物(1)、(2)、(3)を30℃で5分反応させ、残存するグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼ活性を測定した(ザ・ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー, 264, 9380(1989))。その結果を図1に示す。化合物(1)、(2)、(3)ともに濃度依存的に酵素活性を阻害した。
【0022】
【発明の効果】
一般式(I)で表される化合物は、緑膿菌のアルジネート生合成の鍵酵素グアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼを阻害することから、細菌バイオフィルム形成阻害剤、特に緑膿菌バイオフィルム形成阻害剤として、難治性感染症、特に緑膿菌によるびまん性汎細気管支炎の治療剤として有効である。
【0023】
【図面の簡単な説明】
【図1】化合物(1)、(2)、(3)のグアノシンジホスホDーマンノースデヒドロゲナーゼ活性に対する阻害効果を表す。
Claims (4)
- 請求項1の式(I)において、R1はメチル基であり、R2は水素原子で表される化合物、又はその薬理学的に許容される塩類を有効成分とする細菌バイオフイルム形成阻害剤。
- 請求項1の式(I)において、R1はメチル基であり、R2は水酸基で表される化合物、又はその薬理学的に許容される塩類を有効成分とする細菌バイオフイルム形成阻害剤。
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