JP3630951B2 - 免震構造体 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は免震構造体に係わり、剪断変形を繰り返し受けても、減衰性能が低下しない免震構造体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、地震から建物を守るためは、複数個の鋼板等の剛性を有した硬質板と、粘弾性的性質を有したゴム等の軟質板とを交互に積層した複合積層体構造を有する免震構造体で建物を支えることが行われている。この免震構造体においては、複合積層体を備えることにより、建物の固有振動数の長周期化を図り、地震波との共振を防ぎ、振幅は大きいがゆっくりした振動とし、その揺れをダンパーを併設することにより短時間で収束させる方法が一般的に用いられている。また、ダンパーを併設することなく、単純な構造で高い免震性能を有するものとして、本願出願人は、積層構造体の中央部に貫通孔を設けてその中に摩擦板を封入するタイプの免震構造体を先に提案した。これらの免震構造体は従来品に比較して、単純な構造で高い免震性能を示している。
【0003】
この摩擦板封入タイプの免震構造体は、摩擦板を積層構造体の中央部に配置した後、好ましくは硬質の圧力伝達板を乗せ、面板に形成されたネジを切った開口部にボルトをねじ込むことによって、摩擦板を封入している。ところが、この免震構造体は長期間使用して、繰り返しせん断変形を受けた場合に、ボルトにゆるみが生じて、摩擦版に対する所望の封入力を付与できず、免震性能が低下する場合があることがわかった。建造物等に用いられる免震構造体は交換や修理が困難であるため、長期間、所望の性能を維持することが重要であり、特に、減衰性能の低下が、初期の設計値の20%を超える場合には、実用上問題になるため、減衰性能の低下を初期の設計値の20%以内、好ましくは15%以内、さらに好ましくは10%以内とすることが所望されていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記問題点を考慮してなされたものであり、本発明の目的は、簡単な構造で免震性能に優れ、長期間使用して、繰り返し剪断変形を受けても摩擦板封入ボルトのゆるみに起因する減衰性能の低下が少ない、実用性の高い免震構造体を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明の免震構造体は、上下の面板の間に剛性を有した硬質板と粘弾性的性質を有した軟質板とを、それぞれ複数個、交互に積層した複合積層体を設け、該複合積層体の内部に、該複合積層体を貫通する孔を設け、該孔の中に摩擦板を配置し、上部面板に形成された開口部にボルトをねじ込むことによって摩擦板を封入してなる免震構造体であって、前記摩擦板を封入するボルトの直径をd、摩擦板の直径をDとしたときに、ボルトの直径(d)と摩擦板の直径(D)とが、以下の関係を、満たすことを特徴とする。
【0006】
1≧d/D>0.40 式(1)
このとき、前記摩擦板とボルトとの間に、JIS K6253に規定のJIS Aゴム硬度が10以上のゴムで形成された厚さ0.5mm以上のゴムシートと圧力伝達板とをこの順に配置することを要する。
【0007】
また、本発明の請求項2に記載の免震構造体は、前記請求項1に記載の免震構造体であって、前記摩擦板が、シリコーンポリマーを1重量%〜20重量%含有する有機高分子材料で形成されることを特徴とする。
【0008】
本発明の免震構造体における作用機構は明らかではないが、摩擦板を封入するボルトに摩擦板の直径との対比において、所定の直径以上のものを使用することにより、オネジ、メネジの接触面積増加の作用により摩擦力が増加されるため、ボルトのゆるみを効果的に防止しうると考えられる。
【0009】
また、ボルトと摩擦板との間に、ゴムシートと圧力伝達板とを使用することにより、剪断変形時に発生する微小な振動をゴムシートが吸収するため、ボルトのゆるみを効果的に防止しうると考えられる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の免震構造体について詳細に説明する。
【0011】
本発明の免震構造体は硬質板と軟質板とを複数個、交互に積層した複合積層体の内部に貫通孔を設け、該孔の中に摩擦板を配置し、面板にボルトをねじ込むことにより摩擦板を封入した構造を有するが、ここで用いられる摩擦板とボルトの直径を特定のものとするか、或いは、摩擦板の上部にゴムシート、圧力伝達板を順次配置することを特徴としている。
【0012】
本発明の免震構造体の態様について図を示して説明する。図1は後述する本発明の実施例1の免震構造体10の態様を示す概略断面図である。免震構造体10を構成する複合積層体12は硬質板14と軟質板16とが交互に積層されてなり、複合積層体12の中央部には貫通孔(中空部)が設けられ、中空部に摩擦板20が積層されて封入されている。また、複合積層体12は外皮ゴム18で被覆されている。摩擦板20の積層体の上に圧力伝達板の機能を有する押さえ板24が配置され、上部面板(フランジ)22の中央部にM48のメネジを切った鋼板23を接合し、オネジを切った六角穴付き押さえボルトを上ブタ26として配置し、上ブタ26を締め付けて摩擦板20積層体に封入力をかけている。
【0013】
ここで、摩擦板20を封入するボルト26の直径をd、摩擦板20の直径をDとしたときに、ボルト26の直径(d)と摩擦板20の直径(D)とが、以下の関係を、満たすことを要する。
【0014】
1≧d/D>0.40 式(1)
具体的には例えば、摩擦板の直径(D)が69mmのとき、用いるボルトは直径(d)28mm〜69mmのもの、即ち、M28のボルト以上で、M69のボルト以下のであることが必要である。M27以下のボルト(d/D≦27/69)を使用した場合、複合積層体の繰り返し剪断変形によりロスエネルギーが大きく変化して実用的ではない。また、ボルトの直径が摩擦板のそれより大きくなると、摩擦板のみを圧縮するその封入に使用することができない。
【0015】
また、両者の関係は、下記式(2)の関係を満たすことが好ましく、
1≧d/D>0.55 式(2)
下記式(3)の関係を満たすことがより好ましく、
1≧d/D>0.60 式(3)
下記式(4)の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0016】
1≧d/D>0.65 式(4)
上記式(2)〜(4)の関係について、具体的に説明すれば、摩擦板の直径(D)が69mmのとき、用いるボルトは直径 d=38mm(M38)以上のものが好ましく、直径 d=42mm(M42)以上のものがより好ましく、直径
d=45mm(M45)以上のものがさらに好ましい。
【0017】
次に、本発明の免震構造体に用いられる摩擦板について説明する。本発明に係る摩擦板に用いる有機高分子材料としては、具体的には、例えば、熱可塑性樹脂として、ポリアミド(ナイロン)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ−P−キシレン、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリレート、ポリメタアクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、フッ素系プラスチック、ポリアクリロニトリル、ポリビニルエーテル、ポリビニルケトン、ポリエーテル、ポリカーボネイト、熱可塑性ポリエステル、ジエン系プラスチック、芳香族ポリアミド、ポリフェニレン、シリコーン等を、熱硬化性樹脂として、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル、ポリウレタン系プラスチック、エポシキ樹脂等を用いることができる。また、これらの有機高分子材料に対して、シリコーンポリマーを1重量%〜20重量%添加したものが、摩擦係数の低減及び剪断応力が掛かった場合の摩擦音発生防止の観点から好ましい。ベースとなる高分子材料としては、前記シリコーンポリマーを混練する際の材料特性及び入手の容易性の観点から、熱可塑性樹脂であるナイロン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ABS、ポリスチレン、塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等から選択されるものが好ましい。これらの有機高分子材料は、これをマトリックスとして、ガラス繊維、カーボン繊維、金属繊維等の強化繊維により補強された繊維強化樹脂(FRP)や無機質粒子を充填した材料としても使用することができる。これらの樹脂は単独でも、複数種を併用したものであってもよい。
【0018】
ここで、摩擦板を形成する高分子材料に添加しうるシリコーンポリマーについて説明する。ここでシリコーンポリマーとは、シロキサン結合(Si−O−Si)を主鎖とする有機ケイ素重合体を指す。
【0019】
具体的には、例えば、側鎖にメチル基の入ったジメチルポリシロキサン、側鎖にメチル基と水素の入ったメチルハイドロジェンポリシロキサン、側鎖にメチル基とフェニル基の入ったメチルフェニルポリシロキサン、側鎖にメチル基とビニル基の入ったメチルビニルポリシロキサン、側鎖にメチル基とフェニル基とビニル基の入ったメチルフェニルビニルポリシロキサン、側鎖にメチル基と3,3,3−トリフロロプロピル基の入ったメチル3,3,3−トリフロロプロピルポリシロキサン等が挙げられる。
【0020】
具体的には、ジメチルポリシロキサンを6,6ナイロンに混合したシリコーンコンセントレートBY27−005(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、分子量:45万)等の市販品を好適に使用し得る。
【0021】
本発明に用いられるシリコーンポリマーの重量平均分子量は、1000以上500万以下、好ましくは、5000以上100万以下、更に好ましくは、1万以上100万以下である。重量平均分子量が1000未満の場合、有機高分子材料に混合することが困難であり、長期間の使用においてオイルのブリードが生じる虞があり、耐久性、信頼性に問題がある。一方、重量平均分子量が500万を超える超高分子量シリコーンポリマーは、入手が困難であり、有機高分子材料と混合して均一の樹脂材料を調製するのが困難である。
【0022】
また、シリコーンポリマーの添加量は、樹脂材料に対して、1重量%〜20重量%が用いられ、好ましくは1.5重量%〜15重量%が用いられる。更に好ましくは、2重量%〜10重量%である。シリコーンポリマーの添加量が20重量%を超えると、摩擦板の強度が大きく低下し、添加量が1重量%未満では摩擦係数の低下が達成できず、摩擦音防止効果を得ることができない。
【0023】
摩擦板を構成する樹脂材料として、有機高分子材料にシリコーンポリマーを添加する際に、シリコーンポリマーの種類、分子量、添加量を調整することにより、樹脂同士の摩擦係数を任意に調整することができ、摩擦板同士の摩擦特性のみならず、摩擦板積層体の減衰性も調整することができる。
【0024】
本発明に用いられる摩擦板を積層した積層体は、円柱形、三角柱形、四角柱形、一般的に多角柱形など形状は特に制限されない。また、摩擦板を積層した積層体の大きさは、横断面積が、複合積層体の横断面積の1.0 %以上、64%以下で用いられる。好ましくは、1 %以上、50%以下、更には1 %以上、25%以下である。更に好ましくは、2 %以上、25%以下である。摩擦板の横断面積が64%を超えると、(1) 座屈しやすくなる、(2) 剪断歪100 %に於ける剪断弾性係数が摩擦板積層体を複合しない場合と比較して大きくなり所望の免震効果が得られなくなる、(3) 破断特性が低下する等の不具合が生じる。又摩擦板の横断面積が1.0 %未満の場合、減衰効果が得られず目的を達成出来ない。
【0025】
複合積層体に形成された中空部に充填される摩擦板は封入力をかけて充填されるが、摩擦板を封入するため応力として、面圧5〜150Kgf/cm2 が用いられる、好ましくは、5〜50Kgf/cm2 で好適に用いられる、更に好ましくは、5〜20Kgf/cm2 で好適に用いられる。
【0026】
この摩擦板の封入力(押込み力)は、摩擦板の上部面板に設けられた前記ボルト(ネジ山を有するフタ)のネジの締めつけトルクを調整することによってコントロールすることができる。即ち、上面板にネジを切り、そこに適合するボルトを設けて、そのネジの締め付けトルクを一定にすることにより摩擦板に加わる封入力を一定になるよう調整するものである。なお、摩擦板の直径とボルトの直径は前記した範囲にあるものとする。
【0027】
以下、本発明の免震構造体を構成する複合積層体について説明する。複合積層体を構成する粘弾性的性質を有した軟質板に用いられる材料とは、50%モジュラスが1〜10Kgf/cm2 、好ましくは1〜8Kgf/cm2 の特性を有するものを指す。各種材料の50%モジュラスは、例えば、JIS K6251に準拠して測定することができる。
【0028】
本発明の複合積層体の軟質板に用いられる材料としては、熱可塑ゴム、ウレタンゴム、各種の加硫ゴム、未加硫ゴム、微架橋ゴム、プラスチックス等の有機材料、これらの発泡体、アスファルト、粘土等の無機材料、これらの混合材料など各種のものを用いることが出来る。これらのものを単独で用いても良いが、内側部分に高ダンピング材、外側にクリープ性能の良い材料等と2種類以上を組み合わせて使用しても良い。
【0029】
これらの材料は、平板状に成形され、軟質板として用いられる。軟質板の形状は特に制限はないが、本発明の免震構造体においては複合積層体内に柱状の中空部を有することから、軟質板形状は、中央に中空部を有する形状であることが必要である。免震構造体が円柱状で中空部も円柱状の場合、個々の軟質板はドーナツ盤状の形状を有するが、外形や孔形状が角柱であればその形状に合わせた四角形のものであっても良い。軟質板の厚みには特に制限はなく、使用される材料及び所望の免震性能によって選択できるが、一般には、1〜4mm程度の厚みのものが使用される。
【0030】
また、本発明における硬質板としては、金属、セラミックス、プラスチックス、FRP、ポリウレタン、木材、紙板、スレート板、化粧板等所要の剛性を有する各種の材料を使用することが出来る。ここで所望の剛性とは設計条件により大きく変わるが、せん断変形した時、座屈現象が生じにくい剛性を意味する。
【0031】
硬質板の厚み、形状には特に制限はなく、使用される材料及び所望の免震性能によって選択できるが、その厚みは、一般には0.5〜5mm程度の厚みのものが使用される。また形状は、積層される軟質板と同様、中央に中空部を有することの他は任意であるが、通常は、併用する軟質板と同じ形状のものを用いる。
【0032】
前記軟質板と硬質板とを交互に複数段積層して複合積層体を構成するものである。軟質板及び硬質板、それぞれの形状、面積及び厚さは前記した如く要求される免震性能によって異なるが、複合積層体は前記した如く、その内部に該複合積層体の免震性能を改善する後述の各手段を配置するための中空部を要するため、通常は、軟質板及び硬質板両者の形状が同じドーナツ盤状又は中空部を有する四角形の板状をなし、且つ、表面積も同じであるものが利用される。
【0033】
本発明の免震装置に用いる複合積層体に耐候性を付与するために複合積層体の外側を耐候性の優れた材料で被覆しても良い。この被覆材料としては、例えば、ブチルゴム、アクリルゴム、ポリウレタン、シリコンゴム、フッソゴム、多硫化ゴム、エチレンプロピレンゴム(EPM,EPDM)、クロロプレンゴム等、またハイパロン、塩素化ポリエチレン、エチレン酢酸ビニルゴム等の熱可塑ゴム、樹脂等を用いることができる。これらの材料は単独でも二種類以上をブレンドしても良い。また天然ゴム、イソプレンゴム、ブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴム、ニトリルゴムなどとブレンドしても良い。
【0034】
本発明の複合積層体の孔側に摩擦板と軟質板との摩擦により軟質板が破壊するのを保護するため摩耗性に優れたゴム体を配置しても良い。
【0035】
本発明の免震構造体は、面圧5Kgf/cm2 以上200Kgf/cm2 以下で用いられる。好ましくは、面圧5Kgf/cm2 以上150Kgf/cm2 以下で好適に用いられる。
【0036】
次に、本発明の免震構造体の他の態様について説明する。図2は後述する本発明の実施例3の免震構造体30の態様を示す概略断面図である。免震構造体30を構成する複合積層体12は図1に示したものと同じである。この複合積層体12の中央部には貫通孔(中空部)が設けられ、中空部に摩擦板20が積層され、その上部にはゴムシート32、さらに圧力伝達板24が配置され、封入されている。また、複合積層体12は外皮ゴム18で被覆されている。摩擦板20の積層体の上に剪断変形時の振動を吸収するためのゴムシート32と圧力伝達板の機能を有する押さえ板24が配置され、上部面板(フランジ)22の中央部にM27のメネジを切った鋼板23を接合し、オネジを切った六角穴付き押さえボルトを上ブタ26として配置し、上ブタ26を締め付けて摩擦板20積層体に封入力をかけている。
【0037】
ここで用いるゴムシート32は、JIS K6253に規定のJIS Aゴム硬度が10以上のゴム材料によって成形され、厚さは0.5mm以上のものであることが好ましい。ゴムシート32を構成するゴム材料は硬度がJIS Aゴム硬度10以上の物性を有するものであれば特に制限はなく、例えば、先に被覆材料の説明において例示した各種ゴム材料等の公知のゴム材料より任意に選択することができる。好ましいJIS Aゴム硬度としては20以上であり、より好ましくは30以上であり、さらに好ましくは40〜100の範囲である。JIS
Aゴム硬度が10未満であると強度的に弱く、且つ、製造が困難となり実用的ではない。また、100を超えると高弾性となり、振動吸収性が低下するため好ましくない。
【0038】
また、ゴムシートの厚みは好ましくは1.0mm以上、さらに好ましくは1.0〜20mmの範囲であり、厚みが0.5mm未満であるとボルトのゆるみ防止効果が不十分である。また、20mmを超えるとフランジの厚みが厚くなり、実用的な観点から、好ましくない。
【0039】
本発明においては、先に述べたボルトの構造を有する免震構造体に、さらにこの圧力伝達板とゴムシートを摩擦板上部に封入する態様が、効果の観点からはより好ましい。
【0040】
本発明の免震構造体は単独で免震装置として利用するのみならず、さまざまな免震装置に組み込んでその免震性能を生かして用いることができる。
【0041】
【実施例】
(実施例1)
図1は本実施例に係る免震構造体10の概略断面図を示している。
【0042】
複合積層体12として、硬質板14(内部鋼板)(外径250mmφ、内径74mmφ、厚さ1.6mm)を19枚、軟質板16(50%モジュラス:1.6Kgf/cm2 、引っ張り強度:50kgf/cm2 、破断時の伸び:810%のゴム材料を使い厚さ2.5mm)を20枚(総ゴム厚:50mm)用いて構成する。この複合積層体12の中央部に直径70mmの中空部をもうけた。
【0043】
6,6ナイロンに高分子量シリコンポリマー(東レ・ダウコーニング・シリコーン株式会社製、シリコーンコンセントレートBY27−005、分子量:45万)を、シリコーン量として3.5重量%になるように添加した材料を射出成型で、直径69mm、厚さ2mmに成形し摩擦板20を作製した。
【0044】
前記複合積層体12の中空部にその摩擦板20を45枚入れ、その上に厚さ5mm、直径69mmの鋼板24を圧力伝達板として配置した。M48のネジを切った鋼板23をフランジ22に接合し、M48のボルト26を締め付けトルク400kgf−cmで押し込んで、摩擦板20を封入した。このときの締め付け力は、10kgf/cm2 であった。このときの摩擦板20の摩擦係数は、0.135であった。
評価試験
前記実施例1の免震構造体に、荷重6Tonf(面圧12Kgf/cm2 )を掛け、振動数0.2Hzの正弦波でせん断歪み100%でせん断変形を30回与え、その時のヒステリシスループから複合積層体のロスエネルギーの変化を計測する。結果を下記表1に示した。
【0045】
なお、このせん断変形を30回与える評価試験条件は、実用的には、4年に一度大地震が発生し、その際、せん断歪み100%の剪断変形を2回受けることを想定した場合、60年間に経験する剪断変形に匹敵するものである。
(実施例2)
摩擦板20の封入に用いたボルトとしてM38のものを用いたほかは、実施例1と全く同様にして免震構造体を得た。この時の締め付け力は、同様に10kgf/cm2 であった。
【0046】
この免震構造体について、実施例1と同様に評価試験を行った結果を下記表1に示した。
(比較例1)
摩擦板20の封入に用いたボルトとしてM27のものを用いたほかは、実施例1と全く同様にして免震構造体を得た。この時の締め付け力は、同様に10kgf/cm2 であった。
【0047】
この免震構造体について、実施例1と同様に評価試験を行った結果を下記表1に示した。
(実施例3)
図2は本実施例に係る免震構造体30の概略断面図を示している。
【0048】
実施例1と同様の中空部を設けた複合積層体12を準備し、その中空部に摩擦板20を45枚入れ、さらに、厚さ2mm、直径69mmのゴムシート32(ゴム硬度=42:JIS A法による)を重ね、その上に厚さ5mm、直径69mmの鋼板24を圧力伝達板として配置した。この摩擦板20の封入には、比較例1と同じM27のボルトを用いた。この時の締め付け力は、同様に10kgf/cm2 とした。
【0049】
この免震構造体について、実施例1と同様に評価試験を行った結果を下記表1に示した。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に記載の結果から明らかなように、摩擦板とボルトの直径が本発明に規定の範囲にある実施例1及び2の免震構造体はロスエネルギー保持率が高く、減衰能力の低下が少ないことがわかる。一方、摩擦板の直径に対して小さすぎる直径のボルトを用いた比較例1の免震構造体は、繰り返し剪断変形を受けた場合の減衰能力の低下が著しく、実用上不適であった。
【0052】
この比較例1の免震構造体の摩擦板と圧力伝達板との間に所定のゴム硬度を有するゴムシートを配置した実施例3においては、減衰能力の低下が抑制され、繰り返し剪断変形を受けた後も、実用上問題のないレベルの減衰能力を示した。このことから、ゴムシートの配置も減衰性能の低下防止に有効であることがわかった。
【0053】
【発明の効果】
本発明によれば、簡単な構造で免震性能に優れ、長期間使用して、繰り返し剪断変形を受けても摩擦版封入ボルトのゆるみに起因する減衰性能の低下が少ない、実用性の高い免震構造体を提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1の免震構造体を示す概略断面図である。
【図2】実施例3の免震構造体を示す概略断面図である。
【符号の説明】
10 免震構造体
12 複合積層体
14 硬質板
16 軟質板
18 外皮ゴム
20 摩擦板
22 フランジ
23 ネジを切った鋼板
26 ネジを切ったボルト(フタ)
30 免震構造体
32 ゴムシート
Claims (2)
- 上下の面板の間に剛性を有した硬質板と粘弾性的性質を有した軟質板とを、それぞれ複数個、交互に積層した複合積層体を設け、該複合積層体の内部に、該複合積層体を貫通する孔を設け、該孔の中に摩擦板を配置し、上部面板に形成された開口部にボルトをねじ込むことによって摩擦板を封入してなる免震構造体であって、
前記摩擦板を封入するボルトの直径をd、摩擦板の直径をDとしたときに、ボルトの直径(d)と摩擦板の直径(D)とが、下記式(1)で表される関係を満たし、且つ、前記摩擦板とボルトとの間に、JIS K6253に規定のJIS Aゴム硬度が10以上のゴムで形成された厚さ0.5mm以上のゴムシートと、圧力伝達板とをこの順に配置することを特徴とする免震構造体。
- 前記摩擦板が、シリコーンポリマーを1重量%〜20重量%含有する有機高分子材料で形成されることを特徴とする請求項1に記載の免震構造体。
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