JP3629833B2 - 車両用アウターミラー装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アウターミラーを担持するシャフトを使用位置と格納位置との間で回動させる車両用アウターミラー装置の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、アウターミラーを担持するシャフトを使用位置と格納位置との間で回動させる車両用アウターミラー装置が知られている。この車両用アウターミラー装置は、一側に設けられたフランジ部を介してアウターミラーを担持し、かつ付勢手段により一方向に付勢されたシャフトと、シャフトを回動駆動する駆動機構と、シャフト及び駆動機構を収容しかつ車体に固定されるケースとを備えている。そして、フランジ部のフランジ面に形成された円弧状の溝内に、ケースの上面に設けられたボールを係合させて、シャフトを使用位置と格納位置との所定範囲に回動させるようになっている。このような車両用アウターミラー装置に関する先行技術として、例えば特願平7−73504号が同一出願人から出願されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の車両用アウターミラー装置では、アウターミラーが立木や電柱等に接触してシャフトが所定範囲を越えて回動したときに、装置本体内蔵のモータによりシャフトを元の位置に戻そうとしても、シャフトを容易に戻すことができない。すなわち、従来の車両用アウターミラー装置では、円弧状の溝が形成されたフランジ面が平坦であるために、シャフトが所定範囲を越えて回動してボールが溝の端部からフランジ面に乗り上げると、ボールとフランジ面との間の大きな摺動抵抗が働いてボールが移動し難くなり、モータの駆動力だけではシャフトを元の位置に戻すのが困難となる。
【0004】
出力の大きなモータを設ければ、シャフトを元の位置に戻すのは容易であるが、出力の大きなモータはサイズが大きく、アウターミラー装置本体が大型化するとともに、コストアップの要因ともなる。
【0005】
本発明の目的は、所定の回動範囲を越えて回動したシャフトを、出力の大きなモータを設けることなく、元の位置に容易に戻すことのできる車両用アウターミラー装置を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
請求項1に記載の発明は、上記目的を解決するために、一側に設けられたフランジ部を介してアウターミラーを担持し、かつ付勢手段により一方向に付勢されたシャフトと、前記シャフトを回動駆動する駆動機構と、前記シャフト及び前記駆動機構を収容しかつ車体に固定されるケースとを備え、前記フランジ部のフランジ面に形成された円弧状の溝内に、前記ケースの上面に設けられたボールが係合して、前記シャフトを使用位置と格納位置との所定範囲に回動させる車両用アウターミラー装置において、底面が傾斜し且つ前記溝の一端部に接続した円弧状の傾斜溝が前記フランジ面に形成され、前記傾斜溝の底面は、前記シャフトが前記所定範囲を越えて回動したときに、前記溝の一端部から当該底面に乗り上げたボールが、前記付勢手段の付勢力により溝内に戻る方向に傾斜していることを特徴としている。
【0007】
上記構成によれば、シャフトが所定の回動範囲を越えて回動して、ボールが溝の一端部から傾斜溝の底面に乗り上げたときは、付勢手段の付勢力によってボールは傾斜溝の底面に沿った方向の力、つまりボールを溝内に戻す方向の力を常に受けるようになる。その結果、出力のあまり大きくないモータでも、シャフトを元の位置に容易に戻すことが可能となる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、上記と同様な構成の車両用アウターミラー装置において、上面が傾斜し且つ前記溝の一端部に接続した円弧状の突条部が前記フランジ面に形成され、前記突条部の上面は、前記シャフトが前記所定範囲を越えて回動したときに、前記溝の一端部から当該上面に乗り上げたボールが、前記付勢手段の付勢力により溝内に戻る方向に傾斜していることを特徴としている。
【0009】
上記構成の場合も請求項1の発明の場合と同様に、ボールが溝の一端部から突条部の上面に乗り上げたときは、付勢手段の付勢力によって、ボールを溝内に戻す方向の力を常に受ける。
【0010】
請求項3に記載の発明では、前記付勢手段は、前記フランジ面が前記ケースの上面に接近する方向へ、前記シャフトを付勢していることを特徴としている。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下に、本発明に係わる車両用アウターミラー装置の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。
【0012】
図1において、1はステー、2はシャフト、3はハウジング用の上部ケースである。ステー1の先端部には図示を略すアウターミラーが取り付けられている。ステー1の基端部は取り付けフランジ5に溶接固定されている。シャフト2は図1〜図3に示すように係合フランジ部6と柱状部7とを有する。取り付けフランジ5にはボルト挿通孔5aが4個形成され、係合フランジ部6にはボルト螺合孔8がボルト挿通孔5aの形成位置に対応して形成され、取り付けフランジ5は係合フランジ部6にボルト9により締結される。このように構成すれば、シャフト2とステー1とが別体構造であるので車種に応じてアウトターミラーの交換が可能である。
【0013】
係合フランジ部6は図3に示すように、その上面でかつその中央に円形凹所10を有し、かつ、図4、図5に示すようにその下面でかつ周辺部にボール案内溝11,12を有する。このボール案内溝11,12は円弧状とされ、車両用ドアーミラー4の使用位置(前方可倒)と格納位置(後方可倒)との間でシャフト2の回動角度を規制する。このボール案内溝11,12はシャフト2の中心からの半径方向の距離が互いに異ならされている。これにより、シャフト2の可倒角度を180度以上とすることが可能である。このボール案内溝11,12の回動域終端部には図6に拡大して示すようにボール13と協働してシャフト2を上昇させる段部14が形成されている。この段部14は傾斜面14aとストッパ面14bとを有する。ストッパ面14bはシャフト2の格納位置から使用位置までの回動角度を設定する。ここでは、その回動角度は120度である。ストッパ面14bの水平線14cに対する傾斜角は傾斜面14aの水平線14cに対する傾斜角よりも大きく設定されている。
【0014】
また、図4(a)に示すように、係合フランジ部6の下面(図4(a)では上側が係合フランジ部6の下面である)のフランジ面6aには、ボール案内溝11,12の一端部に接続した傾斜溝6b,6cが形成されている。図3、図5に示すように、傾斜溝6bはボール案内溝11の端部からボール案内溝12の端部近傍まで、傾斜溝6cはボール案内溝12の端部からボール案内溝11の端部近傍までそれぞれ形成されている。傾斜溝6bは、ボール案内溝11に近い方が低く、ボール案内溝12側に近い方が高く、また傾斜溝6cは、ボール案内溝12に近い方が低く、ボール案内溝11に近い方が高くなっている。そして、ボール13はシャフト2に所定以上の力が加わると、ストッパ面14bの段差を乗り越えて傾斜溝6b,6cに相対的に移行する。図4(b)は、ボール案内溝12と傾斜溝6cの接続部分を拡大して示した図である。
【0015】
シャフト2の柱状部7は断面D形状とされて平坦面7aを有する。柱状部7の下端部は小径柱部7bとされている。そのシャフト2の柱状部7には、ワッシャ15、Oリング16、ブッシュ16´が挿通される。シャフト2は図2に示すようにワッシャ15が当接されるワッシャ当接部15aとOリング16が当接されるOリング当接部15bとブッシュ16´が相対的に摺動可能に嵌合されるブッシュ嵌合部15cとを有する。係合フランジ部6と上部ケース3の上面との間には図2に示すようにクリアランスHが設けられて、係合フランジ部6の上部ケース3への固着が防止されている。その上部ケース3の上面箇所Tは図7、図8に示すように雨水の流れを助長するように傾斜されている。また、砂、ゴミ等が係合フランジ部6と上部ケース3との間に入っても、上面箇所Tから落下し易い。ワッシャ15は後述するスプリングの荷重を受けて上部ケース3とワッシャ当接部15aとの間でシャフト2の回動により摺動することになるが、ワッシャ15の内周側と外周側とに発生するバリによってワッシャ15の摺動抵抗が増加する。この摺動抵抗を低減するために、シャフト2と上部ケース3とには環状の逃げ溝Gが形成されている。
【0016】
上部ケース3は図7、図9、図10に示すようにその中央にシャフト2の挿通孔17とワッシャ当接部15aの受け入れ用の円形凹所17aとOリング当接部15bの受け入れ用の円形凹所17bとブッシュ16´の受け入れ用凹所17cとを有する。その上部ケース3の上面には図9に示すように、クリアランスGを保証するための環状周壁3Aが円形凹所17bを取り巻くようにして形成されている。この環状周壁3Aには互いに対向する箇所に半球形状のボール装着穴3a,3aが形成されている。ボール装着穴3a,3aを上部ケース3に設けたので、ボール案内溝11,12にゴミがたまるのを防止でき、また、組み付け時にボール13がボール装着穴3a,3aに位置決めされるので、組み付け易い。
【0017】
上部ケース3の車体取り付け側は図11、図12に示すように平面部3Bとされ、この平面部3Bには図13に示すようにネジ穴3C、呼吸穴3D、ハーネス引出し穴3Eが形成されている。ハーネス引き出し穴3Eは後述する下部ケースの衝合面に衝合される衝合面3Fに形成されている。このハーネス引き出し穴3Eから後述するプリント基板のハーネス3Gが引き出されている。平面部3Bには呼吸穴3D、ハーネス引き出し穴3Eの上方に逆Uの字状のひさし3H,3Iが形成されている。このひさし3H,3Iは呼吸穴3D、ハーネス引き出し穴3Eを介して上部ケース3内に水が侵入するのを防止する役割を果たす。更に、ハーネス引き出し穴3Eはハーネス3Gの案内穴としての役割を果たすので組付け時の作業性の向上に寄与する。ネジ穴3Cは図14に示す車体取付用ブラケット3Jを上部ケース3に締結するために用いられる。本実施の形態では、ネジ穴3Cが6個形成されているが、車体取付用ブラケット3Jに応じて適宜選択して使用するものである。
【0018】
車体取付用ブラケット3Jは、後述する下部ケースを支持する支持台部3Kと上部ケース3に締結部材としてのネジ部材3Lを介して取り付けられる締結板部3Mとを有する。この締結板部3Mにはネジ部材3L挿通用の2個の穴3Nが形成され、この形式の車体取付用ブラケット3Jを使用するときにはこの2個の穴3Nに対応するネジ穴3Cを用いる。また、この締結板部3Mには車体への取付用ボス部3Pが形成され、この取付用ボス部3Pに形成されたボルト穴3Qを介して図示を略すボルト、ナットを螺合させることにより、車体取付用ブラケット3Jが車体に固定される。なお、支持台部3Kにはネジ穴3Rが形成され、支持台部3Kはネジ穴3Rを介して締結部材としてのネジ部材3Sを後述する下部ケースのネジ穴に螺合させることにより下部ケースに固定される。その一方のネジ部材3Sにより下部ケースと上部ケース3とが締結される。
【0019】
上部ケース3の上部には、その平面部3Bに図1〜図3、図7、図9、図10、図13に示すように、ストッパ部材18の装着用凹所19が形成されている。そのストッパ部材18は正面から見てT字形状に形成され、取り付け板部18aと係合板部18bとからなる。その係合板部18bは上面から見て係合フランジ部6の外形に沿って湾曲する円弧形状とされている。取り付け板部18aにはネジ挿通孔18cが形成され、上部ケース3の背面にはその装着用凹所19にネジ挿通孔18cに対応してネジ螺合孔19a(図7参照)が形成されている。ストッパ部材18は図1に示すネジ部材18dによりその上部ケース3に固定される。上部ケース3の上面には、装着用凹所19を挟んでその両側に一対の補強用突起3Tが形成されている。この補強用突起3Tは係合板部18bの円弧形状に沿う円弧面3T´を有する。また、上部ケース3の上面には、この補強用突起3Tに隣接して、係合板部18bを下から受ける受け部3Xが形成されている。この受け部3Xと環状周壁3Aとは段差部3Vを介して連絡されている。
【0020】
柱状部7には図1に示すようにクラッチホルダー22が挿通されている。クラッチホルダー22はその中央に小判形状の挿通孔22aを有する。クラッチホルダー22の周辺部には図15に示すように挿通孔22aの回りに係合突起22bが形成されている。係合突起22bはここでは120度毎に形成され、山形形状を呈している。このクラッチホルダー22は駆動歯車23に噛み合い係合される。
【0021】
駆動歯車23は図16、図17に示すように歯部23aと円形の中央孔23bと係合凹所23cとスプリング位置決め用の環状リブ23dを有する。係合凹所23cは係合突起22bに対応する形状とされている。駆動歯車23は図1に示すように付勢手段としてのスプリング24により上昇付勢されて、駆動歯車23とクラッチホルダー22とは常時噛み合い係合されている。そのスプリング24の上端24aはワッシャ25の下面に当接され、下端24bは駆動歯車23の上面に当接されるものである。ワッシャ25は図1に示すようにD形孔25aと受け面25bと環状周壁25cとからなる。そのワッシャ25は、シャフト2の回転時にスプリング24、シャフト2と共に一体回転される。これにより、スプリング24の回転に基づく異音の発生が低減される。また、ワッシャ25はその受け面25bが環状段差を有し、これによりケース3との間の摺接抵抗が小さくされている。
【0022】
上部ケース3の内部には図2、図7、図8、図11、図12に示すように駆動機構27の収容空間26が形成されている。駆動機構27は、図1に示すようにモータ28、プリント基板29、プレート部材30、ウオーム31、ヘリカルギヤ32、ウオーム33から概略構成されている。ウオーム31はヘリカルギヤ32に噛合され、ヘリカルギヤ32はウオーム33と一体回転され、ウオーム33は駆動ギヤ23と噛合され、ウオーム31、ヘリカルギヤ32、ウオーム33、駆動歯車23はモータ28の回転をシャフト2に伝達する回転伝達機構を構成している。また、上部ケース3には、図11、図18に示すようにプレート部材30を固定するためのピン穴3a´,3a´、プレート部材30の受け面3e,3f,3g、図1、図12に示すボール36の収容部3h,3i、位置決め孔3m,3n、3個のネジ孔3xが形成されている。
【0023】
プレート部材30の上面には図1、図19、図20に示すように、ピン穴3a´,3a´と嵌合される嵌合ピン30a,30a、モータ取付部30b、プリント基板29の差込用突起30c,30c、案内突起30dが形成されている。プレート部材30の側部には、図19〜図23に示すようにハーネス3Gの嵌合穴30eが形成され、ハーネス3Gが弛んでふらつかないようにされている。モータ取付部30bにはモータ28の取付用ネジ穴30f,30f、モータの出力軸をウオーム31と直結するためのジョイント部材40(図1、図25、図26参照)の挿入穴30g、ウオーム31の小判形状の軸部31aが挿通される挿通孔30h、ウオーム31の案内部30iが形成されている。モータ28は図1、図12に示すようにネジ28a´,28a´によりモータ取付部30bに固定される。ジョイント部材40は図25、図26に示すようにウオーム31の軸部31aの挿通孔40aを有し、軸部31aと挿通孔40aとの間に図26に示すように遊びが設けられている。これにより、ウオーム31の起動トルクのアップを図ることができると共に、ウオーム31とヘリカルギヤ32との食いつきを防止できる。
【0024】
プレート部材30の下面には、図21〜図23、図27に示すように、筒状ブッシュ41,42(図1、図12参照)を固定するための一対の嵌合部30j,30kが形成され、一対の嵌合部30j,30kの間はウオーム33の設置空間30lとされている。嵌合部30j,30kは断面U字形状のブッシュ挿入用の開口を有し、嵌合部30j,30kはウオーム33の軸部33a,33b(図12参照)をブッシュ41,42を介して支承する一対の軸受部として機能する。嵌合部30jにはブッシュ42を案内しかつブッシュ42の両端面に臨んでその軸方向の移動を規制する移動規制用リブ30m,30nが形成されている。この一対の移動規制用リブ30m,30nは図27に示すように下方が広くかつ上方が狭いハの字形状とされ、ブッシュ42を案内し易い形状とされている。嵌合部30jにはブッシュ41の軸方向の移動を規制する移動規制用リブ30oが形成されている。ウオーム33の軸部33a,33bの端面はボール36,36に当接されている。プレート部材30にはモータ取り付け部30bと反対側に円弧状の位置決め外筒30pと円弧状の位置決め内筒30qとが形成されている。位置決め外筒30pと位置決め内筒30qとは挿通孔30hと同心である。位置決め外筒30pと位置決め内筒30qとの間は下部ケース43に形成された円弧状の位置決め筒43aを案内する円弧状の案内凹所30rとなっている。位置決め筒43aも挿通孔30hと同心である。また、プレート部材30の下面にはヘリカルギヤ32を保護する保護面部30sが形成されている。
【0025】
下部ケース43には、図28に示すようにシャフト2の軸受け筒43b、上部ケース3との嵌合壁43c、上部ケース3のピン穴3m,3nに嵌合されるピン43d,43d、ブッシュ41,42を押さえるためのブッシュ押え部43e,43f(図29も併せて参照)、ネジ穴43x,43y,43zが形成されている。軸受け筒43bにはブッシュ44が図2に示すように嵌合され、シャフト2の小径柱部7bがこのブッシュ44に嵌合されている。シャフト2の小径柱部7bよりも直上部の柱状部7にはEリング45が装着されている。Eリング45は駆動ギヤ23、クラッチホルダー22をスプリング24の付勢力に抗して支持する役割を果たす。図28に示すように、位置決め筒43aと同心にウオーム31の軸31bを支持する軸穴43gが形成されている。
【0026】
ウオーム31は図31に示すようにその軸部31bにワッシャ31cを一体に有する。しかしながら、このワッシャ31cは図32に示すように別体でもよい。軸部31aには樹脂製ワッシャ31dが嵌合される。31eはウオーム31の小判形状部31fと嵌合される小判形状穴であり、このワッシャ31dはウオーム31と一体回転される。ウオーム31は位置決め筒43aと案内凹所30rとを嵌合させることによりプレート30と下部ケース43との間に位置決め支持される。モータ取付部30bの挿通孔30hの支承壁部と下部ケース43の軸穴43gの支承壁部とはウオーム31のワッシャ31c,31dが図33、図34に摺接する摺動面となっている。ワッシャ31dはベーク材料からなり、これにより耐摩耗性が良好となると共に、ウオーム31の回転に基づく作動音の低減が図られる。また、ワッシャ31cを設けて、スラスト方向の荷重を受ける構造となっているので、このワッシャ31cの大きさ、形状、材質を変更することにより、下部ケースの軸穴43gの支承壁部との摺動面積を変更調整することができ、シャフト2の格納方向へのウオーム31の回転による出力トルクと、シャフト2の使用方向へのウオーム31の回転による出力トルクとの出力トルク差を小さくすることができる。すなわち、従来の車両用アウターミラー装置は、ウオーム31の軸部31bの端面をボールで受ける構成であったので、ウオーム31の回転方向によって出力トルク差があったが、これを解消できる。更に、ウオーム31のスラスト方向の荷重をワッシャで受ける構造となっているので、ウオーム31の両軸部31a,31bを支承する一対の支承壁部の壁面の摩耗の低減をも図ることができる。
【0027】
下部ケース43には図30、図35に示すようにその下面で車体取り付け側に位置決めピン46,46が形成されている。この位置決めピン46,46は図14に示す車体取り付け用ブラケット3Jの支持台部3Kに形成された位置決め穴(図示を略す)に嵌合される。下部ケース43には図30に示すようにその車体取り付け側に水抜き穴47,47が形成されている。この水抜き穴47,47は上部ケース3の衝合面3Fが衝合される下部ケース43の衝合面43pから下部ケース43の下面43qにまで渡って延びている。この下部ケース43は図36、図37に示すように車体取り付け側に向かって傾斜する断面形状とされ、ケース内に侵入した雨水等の水が水抜き穴から排出され易い構造となっている。モータ28とプリント基板29とは上部ケース3の衝合面3Fよりも上方に位置され、雨水等がたとえ侵入したとしても、雨水等に基づきモータ28、プリント基板29等の電気部品が腐食しないように配慮されている。
【0028】
図1、図3〜図5に示すように、係合フランジ部6にはその外周に係合切欠部6zが形成されている。ストッパ部材18の係合板部18bはその係合切欠部6zの回動域に臨んでいる。シャフト2はモータ28によって回転駆動される。使用位置と格納位置との間でのシャフト2の回動角は、通常ボール案内溝11,12のボール回動域によって決定される。モータ28はプリント基板29の過電流検出回路(図38参照)によってモータ28に流れるロック電流(過電流)を検出することにより例えば使用位置又は格納位置においてオフされる。ボール13が段部14に位置すると、シャフト2が若干上昇されるため、スプリング24が若干圧縮され、フランジ部6のボール13に対する圧接力が増大し、シャフト2は使用位置又は格納位置においてガタつくことなく保持される。なお、モータ28の駆動トルクはボール13がストッパ面14bを乗り越えさせるには満たない大きさとされている。
【0029】
駆動回路は、図38に示すように、バッテリ50の両端に接続された固定接点51a,51b,52a,52b、連動可動接点53a,53bからなるスイッチ回路、モータ28に接続された整流用の第1ダイオード54,55、過電流検出手段としての第1PTC素子56、第2PTC素子57から概略構成され、モータに流れる過負荷電流に基づく第1PTC素子56、第2PTC素子57の内部抵抗の急激な増大によりモータ28の回転を停止させるようになっている。
【0030】
シャフト2に外力が無理やりに加わった場合、例えば、人がステー1を握って無理やりにシャフト2を回転させた場合や、アウターミラーが立木・電柱等の障害物に衝突してシャフト2に大きな力が加わった場合には、クラッチホルダ22の係合突起22bがスプリング24の上方付勢力に抗して駆動歯車23を上方に押し上げ、クラッチホルダ22と駆動歯車23の回転伝達係合が解除される。これにより、駆動機構27の破壊、シャフト2の毀損等が防止される。
【0031】
なお、係合フランジ部6のフランジ面6aには、傾斜溝6b,6cの代わりに、図39に示すようにボール案内溝11,12の一端部に接続した突条部6b´,6c´を設けても良い。突条部6b´はボール案内溝11の端部からボール案内溝12の端部近傍まで、突条部6c´はボール案内溝12の端部からボール案内溝11の端部近傍までそれぞれ形成されている。突条部6b´は、ボール案内溝11に近い方が低く、ボール案内溝12側に近い方が高く、また突条部6c´は、ボール案内溝12に近い方が低く、ボール案内溝11に近い方が高くなっている。そして、ボール13はシャフト2に所定以上の力が加わると、ストッパ面14bの段差を乗り越えて突条部6b´,6c´に相対的に移行する。
【0032】
以下に、本発明に係わる車両用アウターミラー装置の作用の一例を図40〜図42を参照しつつ説明する。
【0033】
図40〜図42はシャフト2の回動角θ1と円弧状のボール案内溝11,12の円弧角θ2とがほぼ等しい場合のシャフト2の回動を説明する説明図である。なお、図40〜図42はシャフト2を底面側から見た図である。
【0034】
図40に示すようにシャフト2が矢印A1で示す格納方向に回動すると、ボール13がボール案内溝11,12の使用位置(セット位置)から反対方向の段部に位置すると、モータ28に過負荷が加わり、駆動回路の過電流検出回路がモータ28に流れる過電流を検出し、モータ28の駆動が停止される。図41は格納位置におけるボール案内溝11,12とボール13との位置関係を示している。また、シャフト2を格納位置から使用位置に回動させる場合には、スイッチ回路のモータ28に対する接続関係を逆にすればよい。
【0035】
次に、シャフト2に外力が無理やりに加わった場合(手動又は障害物への衝突のとき)には、クラッチホルダ22と駆動歯車23との回転伝達係合が解除される。このとき、シャフト2は図40で示した矢印B1方向へ回動し、係合フランジ部6の係合切欠部6zが係合板部18bの一側辺18eに当接して、シャフト2の回動が停止される。またボール13は、図42に示すようにボール案内溝11,12の一端部から傾斜溝6b,6cの底面に乗り上げる。この場合、傾斜溝6b,6cはそれぞれボール案内溝11,12の端部に近い方が低くなっており、しかも傾斜溝6b,6cはスプリング24によって上部ケース3の上面に接近する方向に付勢されているので、傾斜溝6b,6cの底面に乗り上げたボール13は、当該底面に沿ってボール案内溝11,12の方へ転がろうとする力を受ける。このために、モータ28を逆転させるだけで、ボール13はボール案内溝11,12内に戻りようになり、これにより、シャフト2を電動で容易に元の位置に戻すことが可能となる。
【0036】
なお、係合切欠部6zが係合板部18bの一側辺18eまでは到達せず、ボール13が傾斜溝6b,6cの長手方向の中間で停止した場合であっても、ボール13には上述と同様の力が作用するため、シャフト2を電動で容易に元の位置に戻すことが可能である。
【0037】
【発明の効果】
本発明に係わる車両用アウターミラー装置は、以上説明したように構成したので、所定の回動範囲を越えて回動しても、装置本体に内蔵されたモータの駆動力だけでシャフトを元の位置に容易に戻すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる車両用アウターミラー装置の要部構成を示す分解斜視図である。
【図2】本発明に係わる車両用アウターミラー装置の内部構造を示す断面図である。
【図3】本発明に係わる車両用アウターミラー装置を、ステー取り付け前に上から見た平面図である。
【図4】本発明に係わるシャフトを示しており、(a)は全体構成の斜視図、(b)はボール案内溝と傾斜溝の接続部分の拡大斜視図ある。
【図5】本発明に係わるシャフトの底面図である。
【図6】本発明に係わるボールとフランジ部の案内溝との摺接関係を示す部分拡大図である。
【図7】図11のA−A線に沿う断面図である。
【図8】図11のB−B線に沿う断面図である。
【図9】上部ケースの斜視図である。
【図10】図9に示す上部ケースを上から見た平面図である。
【図11】図9に示す上部ケースを下から見た平面図である。
【図12】上部ケースに駆動機構を組み込んだ状態を下から見た平面図である。
【図13】ケースを車体取付面側からみた背面図である。
【図14】本発明に係わる車体取り付けブラケットの一例を示す斜視図である。である。
【図15】図1に示すクラッチホルダーの断面図である。
【図16】図1に示す駆動ギヤの平面図である。
【図17】図16のC−C線に沿う断面図である。
【図18】図11のD−D線に沿う断面図である。
【図19】図1に示すプレート部材を上から見た斜視図である。
【図20】プレート部材の上面図である。
【図21】プレート部材の側面図である。
【図22】プレート部材を下から見た斜視図である。
【図23】プレート部材の底面図である。
【図24】図23のE−E線に沿う断面図である。
【図25】ジョイント部材の断面図である。
【図26】ジョイント部材とウオームとの嵌合関係を示す平面図である。
【図27】図23のF−F線に沿う断面図である。
【図28】下部ケースの平面図である。
【図29】図28のG−G線に沿う断面図である。
【図30】下部ケースを車体取り付け側から見た図である。
【図31】ウオームとワッシャとを示す分解斜視図である。
【図32】ウオームとワッシャとの他の一例を示す分解斜視図である。
【図33】図31に示すウオームの取り付け状態を示す側面図である。
【図34】図32に示すウオームの取り付け状態を示す側面図である。
【図35】下部ケースの底面図である。
【図36】図28のH−H線に沿う断面図である。
【図37】図28のI−I線に沿う断面図である。
【図38】駆動回路の回路図である。
【図39】変形例によるシャフトの斜視図である。
【図40】シャフトが使用位置にある場合のボールとボール案内溝と係合部材との三者の位置関係を示す説明図である。
【図41】シャフトが格納位置にある場合のボールとボール案内溝と係合部材との三者の位置関係を示す説明図である。
【図42】過大な外力が加わってシャフトが所定の回動範囲を越えて回動したときの、ボールとボール案内溝と係合部材との三者の位置関係を示す説明図である。
【符号の説明】
2 シャフト
3 上部ケース
6 フランジ部
6a フランジ面
6b,6c 傾斜溝
6b´,6c´ 突条部
11,12 ボール案内溝
13 ボール
18 ストッパ部材
27 駆動機構
28 モータ
29 プリント基板
30 プレート
43 下部ケース
Claims (3)
- 一側に設けられたフランジ部を介してアウターミラーを担持し、かつ付勢手段により一方向に付勢されたシャフトと、前記シャフトを回動駆動する駆動機構と、前記シャフト及び前記駆動機構を収容しかつ車体に固定されるケースとを備え、前記フランジ部のフランジ面に形成された円弧状の溝内に、前記ケースの上面に設けられたボールが係合して、前記シャフトを使用位置と格納位置との所定範囲に回動させる車両用アウターミラー装置において、
底面が傾斜し且つ前記溝の一端部に接続した円弧状の傾斜溝が前記フランジ面に形成され、前記傾斜溝の底面は、前記シャフトが前記所定範囲を越えて回動したときに、前記溝の一端部から当該底面に乗り上げたボールが、前記付勢手段の付勢力により溝内に戻る方向に傾斜していることを特徴とする車両用アウターミラー装置。 - 一側に設けられたフランジ部を介してアウターミラーを担持し、かつ付勢手段により一方向に付勢されたシャフトと、前記シャフトを回動駆動する駆動機構と、前記シャフト及び前記駆動機構を収容しかつ車体に固定されるケースとを備え、前記フランジ部のフランジ面に形成された円弧状の溝内に、前記ケースの上面に設けられたボールが係合して、前記シャフトを使用位置と格納位置との所定範囲に回動させる車両用アウターミラー装置において、
上面が傾斜し且つ前記溝の一端部に接続した円弧状の突条部が前記フランジ面に形成され、前記突条部の上面は、前記シャフトが前記所定範囲を越えて回動したときに、前記溝の一端部から当該上面に乗り上げたボールが、前記付勢手段の付勢力により溝内に戻る方向に傾斜していることを特徴とする車両用アウターミラー装置。 - 請求項1又は2記載の車両用アウターミラー装置において、
前記付勢手段は、前記フランジ面が前記ケースの上面に接近する方向へ、前記シャフトを付勢していることを特徴とする車両用アウターミラー装置。
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-
1996
- 1996-09-11 JP JP24012896A patent/JP3629833B2/ja not_active Expired - Fee Related
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