JP3629212B2 - 植物病害防除剤 - Google Patents

植物病害防除剤 Download PDF

Info

Publication number
JP3629212B2
JP3629212B2 JP2001009323A JP2001009323A JP3629212B2 JP 3629212 B2 JP3629212 B2 JP 3629212B2 JP 2001009323 A JP2001009323 A JP 2001009323A JP 2001009323 A JP2001009323 A JP 2001009323A JP 3629212 B2 JP3629212 B2 JP 3629212B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
strain
plant
rhododendron
seedlings
medium
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Expired - Fee Related
Application number
JP2001009323A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2001322906A (ja
Inventor
富生 西村
均 久能
保 古米
康弘 五十嵐
幸生 佐藤
将文 清水
Original Assignee
株式会社 赤塚植物園
均 久能
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by 株式会社 赤塚植物園, 均 久能 filed Critical 株式会社 赤塚植物園
Priority to JP2001009323A priority Critical patent/JP3629212B2/ja
Priority to US09/801,651 priority patent/US6544511B2/en
Publication of JP2001322906A publication Critical patent/JP2001322906A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP3629212B2 publication Critical patent/JP3629212B2/ja
Anticipated expiration legal-status Critical
Expired - Fee Related legal-status Critical Current

Links

Images

Classifications

    • AHUMAN NECESSITIES
    • A01AGRICULTURE; FORESTRY; ANIMAL HUSBANDRY; HUNTING; TRAPPING; FISHING
    • A01NPRESERVATION OF BODIES OF HUMANS OR ANIMALS OR PLANTS OR PARTS THEREOF; BIOCIDES, e.g. AS DISINFECTANTS, AS PESTICIDES OR AS HERBICIDES; PEST REPELLANTS OR ATTRACTANTS; PLANT GROWTH REGULATORS
    • A01N63/00Biocides, pest repellants or attractants, or plant growth regulators containing microorganisms, viruses, microbial fungi, animals or substances produced by, or obtained from, microorganisms, viruses, microbial fungi or animals, e.g. enzymes or fermentates
    • A01N63/20Bacteria; Substances produced thereby or obtained therefrom
    • A01N63/28Streptomyces
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N1/00Microorganisms, e.g. protozoa; Compositions thereof; Processes of propagating, maintaining or preserving microorganisms or compositions thereof; Processes of preparing or isolating a composition containing a microorganism; Culture media therefor
    • C12N1/20Bacteria; Culture media therefor
    • C12N1/205Bacterial isolates
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12RINDEXING SCHEME ASSOCIATED WITH SUBCLASSES C12C - C12Q, RELATING TO MICROORGANISMS
    • C12R2001/00Microorganisms ; Processes using microorganisms
    • C12R2001/01Bacteria or Actinomycetales ; using bacteria or Actinomycetales
    • C12R2001/465Streptomyces

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Virology (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Tropical Medicine & Parasitology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Agronomy & Crop Science (AREA)
  • Pest Control & Pesticides (AREA)
  • Plant Pathology (AREA)
  • Dentistry (AREA)
  • Environmental Sciences (AREA)
  • Agricultural Chemicals And Associated Chemicals (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ストレプトミセスsp.R−5株、該株を有効成分として含有してなる植物病害防除剤、該株を植物に接種することを特徴とする病害抵抗性植物の作出方法及び該株を有効成分として含有してなるファイトアレキシン誘導剤に関する。
【0002】
【従来技術】
従来より、花卉植物は、ハウス内で行う土壌栽培、ポット栽培、水耕栽培、礫耕栽培及びロックウール栽培、あるいは露地栽培などの様々な方法で栽培されてきた。しかし、栽培中に、植物が病原菌に侵され商品価値を失ってしまうことが少なくない。こうした病害を防除するため、様々な防除方法が講じられている。例えば、土壌栽培の場合、植物体をTPN(テトラクロロイソフタロニトリル)、キャプタン、エクロメゾール、メタラキシル、メプロニル、PCNB(ペンタクロロニトロベンゼン)剤などの化学農薬を用いて殺菌したり、植物病原菌の存在する土壌表層部に黒ビニールをかけ太陽熱で消毒したり、土壌深層部を臭化メチル、クロルピクリン酸など有毒ガスを発生する農薬によってガス燻蒸することが行われている。その他、水耕栽培、礫耕栽培、ロックウール栽培などの場合には、ホルマリンまたは次亜塩素酸ナトリウムによる装置全体の消毒あるいはエクロメゾールまたはTPN剤の培養液への混入が試みられている。
【0003】
ところで、現在、シャクナゲ、カルミア等のツツジ科植物等の花卉植物の栽培は、まず、ガラスまたはプラスチック容器内の培地上で苗を生育させ、次いで土壌、バーミキュライト、水苔などの基質に移植後、屋外環境へ馴化させることにより行われている。この栽培過程において、人工培地上での苗の育成は、無菌条件下で行われるため植物病原菌に侵されることは殆どないが、馴化過程に移した途端、周囲に存在する植物病原菌に侵され、苗全体が萎凋または枯死してしまうことがある。そこで、容器から取り出した幼苗を土壌またはバーミキュライト、水苔などからなる育苗床に移植後、メタラキシル、キャプタン、バリダマイシン、TPNなどの化学農薬を苗全体に散布することが行われる。そしてさらに、これらの苗を圃場に定植した後も、各種病害防除のために、ベノミル、TPN、マンネブ、マンゼブ、メタラキシルなどを頻繁に散布する。このような組織培養苗を利用する花卉植物の栽培は、タイ国などの東南アジアでも行われているが、病害防除のために大量の農薬が使用されるために、家庭に持ち込んだ鉢植え植物から揮発する農薬が人体に及ぼす影響が懸念されている。
【0004】
化学農薬に依存しない植物病害防除手段として、肥培管理、抵抗性品種育成、二次伝染源の除去などが試みられているが、これらの間接的方法には限度があり、現状では化学農薬処理や病態植物の除去・焼却以外に有効な方法は知られていない。土壌消毒に用いられる臭化メチル、クロルピクリン酸などのガスは、人体に有害で空気汚染を引き起こす恐れが強い。最近の化学農薬は、規制が厳しいため毒性は低く抑えられているものの、その分、使用回数が増加し、結果的に土壌や空気等の環境汚染を招き、環境ホルモンなどの後世に影響を及ぼす深刻な問題に結び付く危険性がある。特に、反復使用は病原菌の耐性化を誘発する可能性がある。このような現状からも、人体への害が少なく且つ環境汚染を引き起こすことのない安全な植物病害防除方法が求められている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、人体への害が少なく且つ環境汚染を引き起こすことのない生物農薬、すなわち、ストレプトミセスsp.R−5株、該株を有効成分として含有してなる植物病害防除剤、該株を植物に接種することを特徴とする病害抵抗性植物の作出方法及び該株を有効成分として含有してなるファイトアレキシン誘導剤を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題に基づいて鋭意研究を行った結果、シャクナゲから分離した放線菌R−5株を植物体に接種することにより病害抵抗性植物を作出することに成功し、本発明を完成するに至った。
【0007】
すなわち、本発明は、ストレプトミセスsp.R−5株(例えば、ストレプトミセスsp.FERM BP−7179菌株)を有効成分として含有してなる植物病害防除剤である。ここで、植物病害防除剤の投与対象植物としては、苗の状態のものが挙げられる。また、植物の種類としては、例えばツツジ科に属するもの(例えば、シャクナゲ)が挙げられる。
【0008】
さらに、本発明は、ストレプトミセスsp.R−5株(例えば、ストレプトミセスsp.FERM BP−7179菌株)を植物に接種することを特徴とする、病害抵抗性植物の作出方法である。ここで、植物病害防除剤の投与対象植物としては、苗の状態のものが挙げられる。また、植物の種類としては、ツツジ科に属するもの(例えば、シャクナゲ)が挙げられる。
【0009】
さらに、本発明は、ストレプトミセスsp.R−5株(例えば、ストレプトミセスsp.FERM BP−7179菌株)を有効成分として含有してなるファイトアレキシン誘導剤である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、従来の化学物質を有効成分とする植物病害防除剤とは異なり、放線菌R−5株を有効成分とする植物病害防除剤である。本発明の植物病害防除剤の有効成分となる放線菌R−5株は以下のようにして分離することができる。
【0011】
1.植物体からの放線菌の分離
放線菌R−5株の分離源としては、野外で生育させたシャクナゲ、カルミアなどのツツジ科の植物が挙げられる。放線菌R−5株は、例えば、以下のようにして植物体から分離することができる。すなわち、野外で土壌栽培したシャクナゲの組織(例えば、葉、茎、根など)の一部を水道水等で洗浄後、次亜塩素酸等に浸漬することにより殺菌処理する。次いで、滅菌水で十分濯いだ後、エタノール溶液(例えば、70%エタノール)等に浸漬し再度殺菌処理する。植物小片を十分乾燥後、放線菌分離用平板培地上に置床し、適当な条件下で培養する。ここで、放線菌分離用の培地としては、IMA−2培地、YMA培地、YMPG培地、Bennett−マルトース培地、グルコースアスパラギン寒天培地などが挙げられる。また、これらの培地には必要に応じて、抗生物質を添加することができる。
【0012】
次いで、培地上に置床した植物小片から伸長した放線菌の菌糸を、新鮮な培地に移植し培養することにより、放線菌を純粋分離する。分離された放線菌は、滅菌済グリセロール溶液(例えば、20%グリセロール)中に懸濁し、凍結保存することができる。なお、本発明においては、R−1株〜R−17株とそれぞれ命名された17株の放線菌が分離された。その17株の中の1株がR−5株である。
【0013】
2.分離された放線菌の抗菌力の検定
放線菌の抗菌力は、以下のように対峙培養法を用いて、検定することができる。「対峙培養法」とは、同一の平板培地上に、抗菌力検定対象の放線菌(以下、試験放線菌ともいう)と該放線菌の抗菌力の有無及び大きさを示す菌(以下、抗菌力指標菌ともいう)とを植菌し培養することにより、試験放線菌が抗菌力指標菌の生育にどのような影響を及ぼすかを調べる培養法をいう。具体的には、抗菌力指標菌と上記1において分離された放線菌とを、適当な距離(例えば、4〜5cm)を離して、同一の平板培地上に植菌し培養する。対照としては、別の平板培地上に抗菌力指標菌のみを植菌し培養するものとする。培養後、対峙培養した平板培地及び対照の平板培地上での抗菌力指標菌の生育を比較し、抗菌力指標菌の生育阻止帯幅を下表に従って評価する。なお、抗菌力指標菌としては、植物病害をもたらすフィトフトラ属(Phytophthora)やペスタロチオプシス(Pestalotiopsis)属に属する真菌などが挙げられるが、これらに限定されない。なお、本発明においては、上記1において分離されたR−1株〜R−17株の17株の放線菌の中で、フィトフトラ属(Phytophthora)及びペスタロチオプシス属(Pestalotiopsis)に属する真菌に対する抗菌力はR−5株が最も強力であった。
【0014】
【表1】
Figure 0003629212
【0015】
3.放線菌の分類学的同定
分離した放線菌は、形態学的特徴、培養性状、生理学的性状などから分類学同定を行うことができる。なお、本発明において、分離されたR−5株は、ストレプトミセス(Streptomyces)に属する放線菌と同定された。R−5株は、工業技術院生命工学工業技術研究所(茨城県つくば市東1丁目1番3号)に、平成12年3月1日付で、FERM P−17764として寄託されている。その後、この寄託は、平成12年6月2日付で、FERM BP−7179としてブタペスト条約に基づく国際寄託へ移管された。
【0016】
4.植物病害抵抗性植物の作出
本発明において分離された放線菌R−5株は、植物病原菌の増殖阻害活性を有し、該放線菌を植物に接種することによって、病害抵抗性植物を作出することができる。
【0017】
(1) 放線菌R−5株菌体懸濁液の調製
放線菌R−5株菌体懸濁液の調製は、以下のようにして行うことができる。すなわち、まず上記1において分離された放線菌R−5株を、液体培地又は固体培地中で増殖させる。液体培地中で増殖させた場合、培養物を遠心分離することによって菌体を回収し、菌体を所望の濃度になるように適当な緩衝液中に懸濁することにより調製する。一方、固体培養の場合、培養物に緩衝液を加え、固体培地表面に増殖しているコロニーを十分懸濁後、一旦遠心分離により菌体を回収する。次いで先と同様に菌体を所望の濃度になるように適当な緩衝液に懸濁することにより調製する。
【0018】
(2) 放線菌R−5株接種対象植物の育成
放線菌R−5株接種の対象となる植物は、園芸の分野において通常用いられる手法によって育成することができる。ここで、対象植物としては、双子葉植物、単子葉植物に限らずあらゆる植物が挙げられる。具体的には、ツツジ科、ツバキ科、バラ科植物など園芸用の花卉植物が挙げられる。これらの植物は、人工光の下でハウス内であるいは自然光の下で野外で育成することができる。なお、本発明においては、植物体に放線菌を接種するため、無菌的に育成することが好ましい。
【0019】
例えば、シャクナゲを育成する場合、まずシャクナゲの花蕾を採取し、エタノール、次亜塩素酸等に浸漬することにより表面を殺菌する。次いで、クリーンベンチ内で、この蕾から小花を切り取り、花卉植物の採芽用培地に植え付ける。1〜2か月間、人工光照射下(約4000〜5000ルクス、12〜14時間/日)、20〜25℃の培養室で無菌的に培養することにより、小花梗にカルスを形成させる。さらに1〜2か月間培養を続けることにより、茎、葉をもった幼植物を形成させることによって、放線菌接種用の植物を育成する。次いで、幼植物をクリンーベンチ内で容器から取り出し、それぞれの幼植物を無菌的に分け、新鮮な花卉植物組織培養苗増殖用培地に植え付け、さらに人工光光照射下(約4000〜5000ルクス、12〜14時間/日)、20〜25℃の培養室で無菌的に培養することによって、放線菌接種用の植物を得る。
【0020】
(3) 植物への放線菌の接種
植物への放線菌R−5株の接種は、例えば、以下のようにして行うことができる。上記(1)において調製した放線菌懸濁液を、無菌的に育成した植物(例えば、苗)の生育培地表面に塗布する。塗布された放線菌は、培地上で増殖し、同培地上の植物体へと感染し、植物体の下方から上方へと次第に生息範囲を拡大する。これにより、植物は、表面等が放線菌フローラに覆われた状態となり、植物病原菌などの外敵に対し抵抗性を有するようになる。上記の放線菌接種方法以外にも、植物体への菌体懸濁液の塗布、噴霧などにより、放線菌を植物体へ直接接種することも可能である。
【0021】
(4) 放線菌R−5株を接種した植物の育成
放線菌R−5株を接種した植物は、以下のようにして育成することができる。すなわち、上記(3)において放線菌を接種した植物体をクリンーベンチ内で容器から取り出し、無菌的にそれぞれの個体に分け、培養器内の花卉植物組織培養苗植え込み用培地に植え付け、光照射(約4000〜5000ルクス、12〜14時間/日)、20〜25℃の培養室で、30〜40日培養することによって幼苗を生育させる。
【0022】
植物を培養器から取り出した後、乾燥を避けるために水中で1本ずつ分離し、大きさごとに容器に入れる。次いで、発根促進のためにインドール酪酸(indole butyric acid)溶液に数時間浸漬した後、例えば、育苗用土を入れたセルトレイにピンセットで幼植物を1本ずつ挿すように植え込む。ここで、育苗用土としては、ピートモス(和泉農材社製)、パーライト(三井金属工業)、バーミキュライト(日東蛭石社製)、サチュライト〔界面活性剤〕(オーシャン貿易社製)、FFC2000〔土壌改良活性剤〕(FFCジャパン社製)などを適当量配合したものが挙げられる。
【0023】
次いで、幼植物の移植を終えたセルトレイを密閉したビニルトンネルに入れ、自動ミストで水を補給する。例えば、シャクナゲの場合、約2週間で発根する。1か月後にトンネルのビニルを徐々に解放して湿度の低い外気にならす。2か月で馴化が終了し、日光が十分当たり、通気性のある施設に移動し、苗を成長させる。10〜15日間隔で液肥を与え、約6か月で植物病害抵抗性セル成型苗として出荷することができる。
【0024】
5.本発明の植物病害防除剤及びファイトアレキシン誘導剤
本発明において分離されたR−5株は、植物に対しては病原性を示さず、反対に植物に植物病害抵抗性を付与することができるため、植物病害防除剤の有効成分として使用することができる。また、R−5株は、植物病原菌が植物に感染したときに、抗菌活性を有するアントシアン系色素の赤色色素(ファイトアレキシンの一種)の植物体内での誘導合成を促進することができるため、ファイトアレキシン誘導剤の有効成分としても使用することができる。
【0025】
植物病害防除剤及びファイトアレキシン誘導剤の製造に使用するR−5株は、固体培養法、液体培養法あるいはフスマなどの資材培養法等の公知の培養法によって増殖させたものを用いればよく、生細胞を得ることができる限り、培地の種類、培養条件等に制限はない。
【0026】
R−5株を有効成分として含有する植物病害防除剤及びファイトアレキシン誘導剤は、R−5株の胞子又は培養菌体を水などの液体に単に懸濁することにより製造することもできるが、他の成分を配合し、液剤、粉剤、粒剤等の製剤として製造することもできる。他の配合成分としては、液体担体、固体担体、界面活性剤(乳化剤、分散剤、消泡剤等)、補助剤等が挙げられる。より具体的には、液体担体としては、リン酸緩衝液、炭酸緩衝液、生理食塩水等が挙げられる。また、固体担体としては、カオリン、粘土、タルク、チョーク、石英、アタパルジャイト、モンモリロナイト、珪藻土等の天然鉱物粉末、ケイ酸、アルミナ、ケイ酸塩等の合成鉱物粉末、結晶性セルロース、コーンスターチ、ゼラチン、アルギン酸等の高分子性天然物が挙げられ、これらの1種又は2種以上を混合して使用することができる。界面活性剤としては、ポリオキシエチレン−脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン−脂肪アルコールエーテル、アルキルアリールポリグリコールエーテル、アルキルスルホネート、アルキルサルフェート、アリールスルフォネート等が挙げられる。補助剤としては、カルボキシメチルセルロース、ポリオキシアチレングリコール、アラビアゴム、デンプン、乳糖などが挙げられる。
【0027】
また、本発明の植物病害防除剤及びファイトアレキシン誘導剤を水系溶媒を担体とする液剤として製造する場合、溶媒中でのR−5株菌体の水和性を向上させるために、水溶性高分子を添加することも可能である。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルアミン、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンイミン、ポリアクリルアミドなどが挙げられる。さらに、R−5株の植物への付着性を良好し、製剤中でのR−5株の安定性を向上させるために、キシログルカン、グアーガムなどの多糖類を配合させることもできる。
【0028】
本発明の植物病害防除剤及びファイトアレキシン誘導剤にR−5株の含有量は、液剤の場合、0.01〜10重量%、粒剤では0.01〜50重量%、粉剤では0.01〜50重量%であるが、これらの濃度は適宜変更してもよい。粒剤及び粉剤の場合には、使用に際して水で希釈して、製品重量の100〜5000倍希釈で使用することができ、好ましくは500〜1000倍希釈で使用することができる。
【0029】
本発明の植物病害防除剤及びファイトアレキシン誘導剤は、噴霧法、ミスト法、ダスト法、散布法、注入法、塗布法等により、植物に直接投与してもよく、あるいは目的の植物の生育している培地又は土壌に投与してもよい。
本発明の植物病害防除剤及びファイトアレキシン誘導剤の使用量は、その使用方法により異なるが、例えば、噴霧法の場合、シャクナゲ1個体当たり、有効成分量で0.1〜10g噴霧するのが好ましい。
【0030】
本発明の植物防除剤の防除対象となる植物病原菌としては、ペスタロチオプシス属(Pestalotiopsis)やフィトフトラ属(Phytophthora)に属する真菌が挙げられる。具体的には、ペスタロチオプシス属(Pestalotiopsis)する真菌としては、ペスタロチオプシス・シドウィアナ(Pestalotiopsis sydowiana)、ペスタロチオプシス・ロンギセタ(Pestalotiopsis longiseta)、ペスタロチオプシス・ポプリニグレ(Pestalotiopsis populi−nigrae)などがあり、これらの菌は、ツツジ科、ツバキ科、バラ科植物など広範な花卉植物および樹木の葉に葉枯病を引き起こす。ここで、「葉枯病」とは、植物の葉に褐色の斑点または斑紋状の壊死部を生じ、激甚となると落葉に結びつく病害である。葉が汚れるため花卉植物では商品価値を損なう病害である。
【0031】
フィトフトラ属(Phytophthora)に属する真菌としては、フィトフトラ・インフェスタンス(Phytophthora infestans)、フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)、フィトフトラ・カプシシ(Phytophthora capsici)、フィトフトラ・メガスパーマ(Phytophthora megasperma)、フィトフトラ・ニコチアーナ(Phytophthora nicotianae)、フィトフトラ・パラジディチカ(Phytophthora parasitica)などがあり、これらの菌は、ナス科、ツツジ科、ユリ科、ウリ科、イネ科植物など広範な植物の根、茎の地際部、葉に疫病を引き起こす。ここで、「疫病」とは、植物の組織を急速に軟化、腐敗させ、植物体全体を枯死させる蔓延力が極めて強い伝染病をいう。
【0032】
【実施例】
以下に、本発明を実施例を示して具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
〔実施例1〕抗菌力を有する放線菌の分離
(1) 植物からの放線菌の分離
以下のようにして、放線菌をポット植えのシャクナゲ苗(品種さきがけ)の葉、茎または根から分離した。すなわち、まずポット植えのシャクナゲ(品種さきがけ)の葉、茎または根から採取した約1×2mmの小片を水道水流水でよく洗浄した。これらの小片を0.1%Tween 20に数秒間浸漬した後、1%次亜塩素酸に5分間浸漬し、殺菌蒸留水で数分間よく洗浄した。続いて、70%エタノールに1分間浸漬した後、クリーンベンチ内で表面を十分乾燥させた。
【0033】
このように表面殺菌した植物小片をシャーレ中の抗生物質添加放線菌分離平板培地(IMA−2)上に置き、30℃の培養噐の中で1カ月培養した。なお、IMA−2培地および添加した抗生物質溶液の組成は、それぞれ表2及び表3の通りである。IMA−2培地は、各成分を上流水に溶解後120℃で20分間オートクレーブ殺菌した。また、IMA−2培地1000mlに対し、抗生物質溶液を10ml添加した。
【0034】
【表2】
Figure 0003629212
【0035】
【表3】
Figure 0003629212
【0036】
IMA−2培地に置床した植物小片の表面から伸長してきた放線菌の菌糸を殺菌したガラス細管先端で採取し、新たに用意したIMA−2平板培地に移植し、30℃で数日間培養した。培地上で生育したコロニーを個別に、別のIMA−2培地上のメンブランフィルター(Mixed cellulose ester, f 0.2 mm, Advantec)に植え付け、30℃で1週間培養した。メンブランフィルターを除去後の培地表面に生育した形状が異なるコロニーを別個に20%グリセロールに懸濁し、−80℃のフリーザーで使用まで保存した。合計17菌株が得られ、それらをR−1〜R−17株と命名した。
【0037】
(2) 花卉植物組織培養苗の増殖用培地上で生育可能な株の選択
保存した17菌株を新たに用意したIMA−2平板培地に移植し、30℃で数日間培養した。次いで、花卉植物組織培養苗の増殖用培地上に各菌株を植え付け、25℃で培養して菌の生長を調べた。なお、花卉植物組織培養苗の増殖用培地(以下、花卉植物増殖用培地ともいう)の組成は表4の通りである。
【0038】
【表4】
Figure 0003629212
【0039】
R−1株〜R−17株の生長度の結果を表5に示した。表5に示したように、17菌株のうち、組織培養苗増殖用培地上で生長可能な放線菌株は、R−1、4、5、6、8、9、10、11、13、14の10菌株であった。
【0040】
【表5】
Figure 0003629212
【0041】
(3) 分離した放線菌の植物病原菌に対する抗菌力の検定
上記(2)において選択された10菌株の放線菌の、植物病原菌フィトフトラ菌およびペスタロチオプシス菌に対する抗菌力について、該植物病原菌との対峙培養により検定した。すなわち、シャーレ内のIMA−2平板培地上にやや距離(約5cm)を置いて、上記放線菌と植物病原菌フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)MAFF No.305565及びペスタロチオプシス・シドウィアナ(Pestalotiopsis sydowiana)MAFF No.305755をそれぞれ接種し、28℃で培養した。次いで、放線菌の菌叢と植物病原菌の菌叢との間に形成された生長阻止帯の幅を測定することによって、放線菌による前記植物病原菌に対する抗菌力を測定した。なお、対照としては病原菌のみを接種したIMA−2平板を設定した。表6に結果を示した。表6からも明らかなように、10菌株の放線菌の中でR−5株がフィトフトラ菌およびペスタロチオプシス菌の双方に対して最も強い抗菌力を示すことが分かった。
【0042】
【表6】
Figure 0003629212
【0043】
〔実施例2〕分離された放線菌の分類学的同定
(1) R−5株の形態学的特徴
実施例1において得られたR−5株の胞子の形態学的特徴を走査電子顕微鏡を用いて観察した。すなわち、まずIMA−2平板培地上で7日間30℃で培養したR−5株を、寒天培地ごとくりぬき試料台にはりつけ、試料台ごと液体窒素に浸漬して凍結させた。次いで、試料を走査電子顕微鏡クライオシステムに装着し、金蒸着を施した後、走査電子顕微鏡(日立製作所製S4000型)で観察した。観察したR−5株の胞子の像を図1に示す。図1に見られるように、R−5株は、10〜50個の胞子が直線状に連なり、全体として螺旋状をなす胞子を有し、各胞子は0.4〜0.6×0.3〜0.4μmの大きさで、楕円形の表面平滑であることがわかった。
【0044】
(2) 各種培地上でのR−5株の性状
R−5株について、インターナショナル・ストレプトミセス・プロジェクト(Internatinal Streptomyces Project:ISP)推奨のシャーリングらの方法[Shirling, E. B.,et al.:International Journal of Systematic Bacteriology 16(3):313−340(1996)]及び「放線菌の同定実験法」[日本放線菌学会編、1972年]に準じ、培地上の性状及び生理学的性状を検討した。すなわちR−5株を、ISP−2培地(酵母エキス・麦芽寒天培地)、ISP−3培地(オートミール寒天培地)、ISP−4培地(スターチ・無機塩寒天培地)及びISP−5(グリセリン・アスパラギン寒天培地)上に生育させたときの基生菌糸、基生菌糸裏面、気菌糸及び拡散性色素の性状、並びにスターチの加水分解能やメラニン合成等の生理学的性状について調べた。各種培地上での性状を表7に、生理学的性状を表8に示した。なお、表7中のカッコ内の数字は「新色名辞典、第4版」[財団法人日本色彩研究所編、日本色研事業株式会社発行、1998年]に基づく色調番号を示す。表7に示したように、R−5株はいずれの培地上でも良好に生育し、基生菌糸は黄色系、成熟した粉状の菌叢は灰色から黒褐色を呈し、黄色系色素を形成した。
【0045】
【表7】
Figure 0003629212
【0046】
【表8】
Figure 0003629212
【0047】
(3) R−5株の菌体成分の化学分類学的性質
放線菌の同定実験法[日本放線菌学会編、pp62−70、1985]ならびにスタネックら [Stanech, J. I.,et al.:Applied Microbiology 28:226−231(1974)]に記載の薄層クロマトグラフィー法により、全菌体の酸加水分解物を分析した結果、LL型のジアミノピメリン酸、グリシン、ガラクトースの存在が確認された。
上記の形態的性状、化学分類学的性状等から、R−5株はストレプトミセス(Streptomyces)属に属する放線菌と同定された。
【0048】
〔実施例3〕シャクナゲ組織培養苗の放線菌処理及び放線菌処理培養苗の電子顕微鏡観察
(1) R−5株の菌体懸濁液の調製
R−5株を、IMA−2液体培地に植菌し30℃で12時間振盪培養した。得られた培養物から菌体を回収し、0.01Mリン酸緩衝液(pH7.0)を用いて3〜4x10cfu/mlの菌体濃度になるようにR−5株菌体懸濁液を調製した。
【0049】
(2) シャクナゲの器官からの幼植物形成
シャクナゲの花蕾を採取し、70%エタノールに30秒間浸漬後、2%次亜塩素酸に10分間浸漬して表面殺菌した。クリーンベンチ内で、この蕾から小花を切り取り、表9の花卉植物の採芽用培地に植え付けた。1〜2か月間、光照射(約4000ルクス、10時間/日)、25℃の培養室で無菌的に培養することにより、小花梗にカルスを形成させた。さらに1〜2か月間培養を続けることにより、茎、葉をもった幼植物を形成させた。
【0050】
【表9】
Figure 0003629212
【0051】
(3) 幼植物の花卉植物組織培養苗増殖用培地への移植
上記(2)において得られた幼植物をクリンーベンチ内で容器から取り出し、それぞれの幼植物を無菌的に分け、新たに調製した表4の花卉植物組織培養苗増殖用培地に植え付けた。光照射(約4000ルクス、10時間/日)、25℃の培養室で無菌的に培養した。
【0052】
(4) シャクナゲ幼植物のR−5株での処理
上記(3)のシャクナゲ幼植物の生育している花卉植物組織培養苗増殖用培地の表面に上記(1)のR−5株菌体懸濁液1mlをクリーンベンチ内で無菌的に滴下し、シャクナゲ幼植物の茎基部がR−5株菌体に接触するように培地表面全体にひろげた。次いで、光照射(約4000ルクス、12時間/日)、25℃の人工気象器の中で1週間生育させた。
【0053】
(5) 走査電子顕微鏡観察
以下のようにして、R−5株処理シャクナゲ幼植物を走査電子顕微鏡で観察した。まず、人工気象器内で1週間生育させた上記(4)のR−5株処理シャクナゲ幼植物を容器から取り出し、茎、葉に切り分けた。これらを0.2%タンニン酸含有5%グルタルアルデヒド中に浸漬し、6時間室温固定した。さらに、2%タンニン酸含有5%グルタルアルデヒド中に6時間浸漬した後、十分水洗し、1%四酸化オスミウムで12時間固定した。試料を十分水洗した後、30、50、70、90、95、100%エタノールに順次20分間ずつ浸漬して試料を脱水した。100%エタノールを酢酸イソアミルに置換し、臨界点乾燥器で試料を乾燥し、金蒸着を試料に施した後に、走査電子顕微鏡で観察した。
【0054】
図2及び図3は、茎の表面で生育しているR−5株の様子を示す走査電子顕微鏡写真である。図2に見られるように、菌糸は茎表面のワックス層上を伸長し、随所でワックス層下にもぐっていた。また、図3に見られるように、茎表面で生育しているR−5株の菌糸からは胞子鎖が形成されていた。胞子は連鎖状に連なり、全体では螺旋状であった。胞子は、0.4〜0.6× 0.3〜0.4μmの大きさで球形ないしは楕円形をし、表面は滑らかであり、実施例2(1)において観察されたIMA−2培地上の胞子鎖および胞子の様相と一致していた。また、葉についても同様の観察を行ったところ、同様な結果が得られた。以上の結果から、シャクナゲ幼植物を生育させた花卉植物増殖用培地の表面に、R−5株を植菌すると、1週間以内に茎、葉の表面でR−5株が菌糸生長及び胞子形成をすることが分かった。
【0055】
(6) 蛍光顕微鏡観察
以下のようにして、R−5株処理シャクナゲ幼植物を蛍光顕微鏡で観察した。まず、人工気象器内で1週間生育させた上記(3)のR−5株処理シャクナゲ幼植物を容器から取り出し、葉から約1×2mmの小片を調製した。この小片を0.1%Tween 20に数秒間浸漬した後、1%次亜塩素酸に5分間浸漬し、殺菌蒸留水で数分間よく洗浄した。続いて、70%エタノールに1分間浸漬した後、クリーンベンチ内で表面を十分乾燥させた。このように表面殺菌した植物小片をシャーレ中の抗生物質添加IMA−2平板培地上に置き、30℃の培養噐の中で約1週間培養した。葉小片をガラス瓶に入れたTriton X 100含有3%フォルムアルデヒド(pH7.4)中に浸漬し、3時間減圧浸透した。十分水洗した後、さらに1%四酸化オスミウムで12時間固定した。試料を十分に水洗した後、30、50、70、90、95、100%エタノールに順次20分間浸漬して試料の脱水を行った。ヒストレジン樹脂に包埋した後、窒素を充填して1晩冷蔵庫(4℃)で固化させた。葉の小片を含む樹脂を、ガラスナイフ装着のミクロトームを用い、厚さ0.7μmの超薄切片を切り出した。切片をガラススライド上におき、電熱板上でスライドガラスを50〜60℃に温めて切片をガラススライドに貼り付けた。切片上に0.01%アクリジンオレンジ液を滴下し、カバーガラスをかけてUV照射蛍光顕微鏡で観察した。
【0056】
図4は、葉の内部で増殖するR−5株の様子を示す蛍光顕微鏡写真である。黄橙色の蛍光を発しているのがR−5株である。図4に見られるように、R−5株は、葉の内部、特に葉肉組織の細胞内部ならびに細胞縫合部で増殖し、培養中に葉内部から葉の外側に流れ出ていた。以上の結果から、シャクナゲ幼植物が生育している花卉植物増殖用培地の表面をR−5株で処理すると、1週間以内にR−5株は葉の内部に侵入し、特に葉肉組織の細胞内部ならびに細胞縫合部で増殖することが分かった。
【0057】
〔実施例4〕放線菌処理したシャクナゲ幼植物体における放線菌の分布
放線菌で処理後、一定時間経過したシャクナゲ幼植物体における当該放線菌の分布状態を、植物体の各部位からの放線菌の再分離によって調べた。すなわち、実施例3(3)と同じ手順によりシャクナゲ幼植物を生育させた花卉植物増殖用培地の表面にR−5株を接種後、幼植物を光照射(約4000ルクス、12時間/日)、25℃の人工気象噐の中で8日間生育させた。生育開始1日後から8日目まで毎日、一部の幼植物をクリーンベンチ内で容器から取り出し、茎を葉節ごとに葉付の茎を切り離した。この小片を0.1%Tween 20に数秒間浸漬した後、1%次亜塩素酸に5分間浸漬し、殺菌蒸留水で数分間よく洗浄した。次いで、70%エタノールに1分間浸漬後、クリーンベンチ内で表面を十分乾燥させた。このように表面殺菌した各葉節小片をシャーレ中の抗生物質添加IMA−2平板培地上に置き、30℃の培養噐の中で約1週間培養することにより、培地上にR−5株が生育してくるか否かを観察することによって、R−5株の再分離割合を調べた。表10に植物体の各部位における再分離の割合を示した。表10中の分数は、分母が供試個体数であり、分子はR−5株が分離された個体数である。
【0058】
【表10】
Figure 0003629212
【0059】
表10からも明らかなように、培地表面に接種したR−5株は、図5のように、時間の経過とともに植物体の上部へと生息範囲を拡大していき、放線菌接種後8日目には、第5節以上の部位にも接種した放線菌が繁殖していることが分かった。
【0060】
〔実施例5〕植物病原菌抵抗性を有するシャクナゲの作出
(1) 植物病原菌の調製
ポテトデキストロース寒天培地の斜面培地上で保存しておいたペスタロチオプシス・シドウィアナ(Pestalotiopsis sydowiana)MAFF No.305755を、ポテトデキストロース寒天平板培地に植菌し、25℃で培養噐で1週間培養した。前記植物病原菌は菌糸を伸長させ、白色菌叢を形成した。寒天培地上に生育した菌叢を、クリーンベンチ内で寒天ごと直径4mmのディスク状に切り取り、これを以下の実験の植物病原菌の接種源として用いた。
【0061】
(2) シャクナゲ幼植物への病原菌の接種
放線菌で処理したシャクナゲ幼植物体の植物病原菌に対する抵抗性を調べるために、放線菌で処理したシャクナゲ幼植物体に植物病原菌を接種した。すなわち、実施例3(3)の手順によりシャクナゲ幼植物を生育させた花卉植物増殖用培地の表面にR−5株を接種後、幼植物を約4000ルクス、12時間/日の光照射条件下、25℃の人工気象噐の中で1週間生育させた。次いで、R−5株で処理したシャクナゲ幼植物の上位第4葉節の葉一枚の上に、上記(1)において調製した接種源ディスク1個を載せた。対照区として、R−5株で処理していないシャクナゲ幼植物の上位第4葉節の葉一枚の上にも同様に、接種源ディスク1個を載せた。次いで、R−5株処理および無処理のシャクナゲ幼植物を、約4000ルクス、12時間/日の光照射条件下、25℃の人工気象噐の中で2週間生育させた。
【0062】
(3) 植物病原菌を接種したシャクナゲ幼植物の発病状態
R−5株で処理していないシャクナゲ幼植物の写真を図6(A)に、R−5株で処理したシャクナゲ幼植物の写真を図6(B)に示した。図6(A)矢印と図6(B)矢印との比較から明らかなように、R−5株で処理していないシャクナゲ幼植物(図6(A)、矢印)では、病原菌を接種した葉は菌糸に覆われ、褐色に変色していたのに対し、R−5株で処理したシャクナゲ幼植物(図6(B)、矢印)は、病原菌を接種した葉のみ(図6(B)、三角印)が菌糸に覆われ、褐色に変色しただけで、菌糸はその葉にとどまり、上下の茎、葉には進展しなかった。
【0063】
さらに、R−5株で処理しなかったシャクナゲ幼植物(対照区)及びR−5株で処理したシャクナゲ幼植物(R−5株処理区)を7日及び14日後に苗を観察し、病徴程度を4段階(無病徴、接種葉のみ褐変、接種葉及び上下位葉と茎の一部が褐変、苗が枯死)で評価した。結果を表11に示した。
【0064】
【表11】
Figure 0003629212
【0065】
表11に示したように、7及び14日目における苗の枯死は、対照区では、14日後には、54%に達したのに対し、R−5株処理区では枯死した苗はなかった。 以上のことから、シャクナゲ組織培養苗をR−5株で処理することによって、ペスタロチオプシス・シドウィアナ(Pestalotiopsis sydowiana)による病害の進展を顕著に抑制することが可能であることが判明した。
【0066】
〔実施例6〕 根腐病に対する耐病性試験
培養土〔ピートモス:バーミキュライト=7:3(v/v)〕10gとイオン交換水50mlをプラスチックポット(6cm×6cm×9cm)に入れ、高圧滅菌(121℃で20分間、さらに24時間後に121℃で20分間)して滅菌土とした。ここに、ポテトデキストロース寒天培地で10日間培養した根腐病菌フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)MAFF No.305565の菌叢から打ち抜いた直径6mmの菌糸片ディスク30個を混ぜ合わせた。さらに、等量の滅菌土をこの病原糸状菌を混ぜた培養土の上に敷きつめ、汚染土とした。R−5株の菌液でシャクナゲ苗が生育している花卉植物増殖用培地表面を処理し、約4000ルクス、12時間/日の光照射条件下、25℃で10日間培養後、シャクナゲ苗を抜き取った。この苗を1ポットあたり5本ずつ汚染土に植え、蓋をして、先と同様約4000ルクス、12時間/日の光照射条件下、25℃で培養した。また、無処理の苗を同様の手順で汚染土に植え、対照区とした。2週間後に苗を観察し、病徴程度を3段階〔無病徴(健全)、苗の一部分が褐変化、苗が枯死〕に評価した。
【0067】
結果を図7に示した。図7から明らかなように、無処理区では、培養土移植2週間後には約40%の苗が完全に枯死し、健全な苗は約60%しか存在しなかった。一方、R−5株処理区では、約11%の苗で茎または葉の一部分が褐変化し、約8%の苗が完全に枯死したものの、約80%が健全であった。以上のことから、シャクナゲ組織培養苗をR−5株で処理することによって、フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)による根腐病の進展を顕著に抑制することが可能であることが判明した。
【0068】
〔実施例7〕放線菌処理によるファイトアレキシンの誘導
R−5株のファイトアレキシン誘導効果について、ファイトアレキシンの一種のアントシアン系赤色色素の生成に注目して調べた。すなわち、まず実施例3(3)と同じ手順によりシャクナゲ幼植物を生育させた。次いで、<1>無処理の植物体、<2>R−5株で処理後、上位第4葉節の葉一枚の上に、実施例5(1)において調製した植物病原菌ペスタロチオプシス・シドウィアナ含有ディスク1個を載せたもの、及び<3>無処理のものの上位第3葉節の葉一枚の上にペスタロチオプシス・シドウィアナ含有ディスク1個を載せたものを設定した。次いで、光照射(約4000ルクス、12時間/日)、25℃の人工気象噐の中で1週間生育させた。各植物体の状態を図8に示した。図8からも明らかなように、無処理の植物体(図8中、A)は、茎が緑色であるのに対し、R−5株で処理後、植物病原菌を接種したもの(図8中、B)は、茎が鮮明な赤色に変化しており、また無処理のものに植物病原菌を接種したもの(図8中、C)は若干赤色に変色していた。
【0069】
次いで、実施例5の手順により、シャクナゲ苗が生育している花卉植物増殖用培地をR−5株の菌液で処理し、25℃で12時間光照射下で培養した。処理2、4、6、8、10日後にシャクナゲ苗を回収し、イオン交換水で洗浄後、キムワイプで表面を拭き取った。これらの苗1gをそれぞれ50mlの0.5N HCl−メタノールに浸漬し、4℃、暗黒下で24時間静置後、濾紙(東洋濾紙No.1)で濾過し、得られた濾液をアントシアニン粗抽出液とした。また、無処理の苗からも同様の手順でアントシアニンの抽出を行った。5N HCl−メタノール300μlと3N HCl−メタノール100μlの混合した液の波長530nmの吸光度(A530)を測定してブランクとした。次に、それぞれのアントシアニン粗抽出液300μlと3N HCl−メタノール100μlを混合し、吸光度A530を測定した。さらに、粗抽出液中に含まれるアントシアニンを脱色するために、アントシアニン粗抽出液300μlと過酸化水素水100μlを混合し、15分間置いて脱色した液の吸光度吸光度A530を測定した。このようにして測定したアントシアニン脱色前の吸光度から脱色後の吸光度を差し引いた値を、アントシアニン量を示す吸光度とした。
【0070】
結果を図9に示した。無処理の苗のアントシアニン量を示す吸光度A530は約0.06であった。一方、R−5株で処理した苗では、アントシアニン量を示す吸光度A530は、日数とともに徐々に増加し、10日後には無処理苗の約4倍にあたる0.21となった。以上より、R−5株でシャクナゲ苗に処理することによって、シャクナゲ体中にアントシアニン(すなわちファイトアレキシン)を誘導できることが判明した。
【0071】
〔実施例8〕 R−5株由来抗生物質の抽出
R−5株の菌液でシャクナゲ苗が生育している花卉植物増殖用培地の表面を処理し、約4000ルクス、12時間/日の光照射条件下、25℃で10日間培養した。この花卉植物増殖用培地219.3gおよびシャクナゲ苗12.17gからの抗生物質の抽出を試みた。また、対照区として、R−5株で無処理の花卉植物増殖用培地(221g)と苗(8g)から同様の手順で抽出した。まず、花卉植物増殖用培地から抜き取ったR−5株処理または無処理シャクナゲ苗を、イオン交換水でよく洗った後、乳棒・乳鉢を用いて液体窒素中で凍結磨砕した。これをフラスコに移し、200mlのメタノールを加えて一晩撹拌した後、脱脂綿で濾過した。次に、濾液に半量程度のヘキサンを加えてよく撹拌し、分液ロートで分液後、メタノール層を回収した。この手順を4回繰り返し、濾液中に含まれる葉緑素を除去した。得られたメタノール層をエバポレーターで乾固し、壁付着物を酢酸エチルで回収した後、イオン交換水を加えて分液した。回収した酢酸エチル層に硫酸ナトリウムを適量加えて脱水した後、脱脂綿で濾過した。ろ液をエバポレータ−で濃縮し、アセトンで溶出後、再びエバポレーションした。この手順を2回繰り返し、得られた乾物の乾燥重を測定した後、1mg(乾物重)/mlになるようにHPLC用メタノールを加えた。これをコスモナイスフィルター(ナカライ、φ0.45μm)で濾過し、HPLC分析〔カラム(4.6×10 mm、Rainin microsorb)、アセトニトリル:リン酸緩衝液=60:40、サンプル注入量25μl、 流速1.0ml/分〕した。
【0072】
苗を抜き取ったR−5株処理または無処理の花卉植物増殖用培地は、400mlのメタノールを加えて一晩撹拌した後、遠心分離(8000rpm、3分)し、上清を回収した。得られた上清をロータリーエバポレーターで濃縮した後、凍結乾燥した。これに、イオン交換水と酢酸エチルを加えてよく撹拌し、分液ロートで酢酸エチル層のみを回収した。次に、硫酸ナトリウムを加えて脱水した後、脱脂綿でろ過し、回収したろ液をロータリーエバポレーターで濃縮した。これにアセトンを加え、ロータリーエバポレーターで濃縮し、得られた乾燥物の乾燥重を測定した。つぎに、1mg(乾燥物の乾物重)/mlとなるようにHPLC用メタノールに溶かした後、コスモナイスフィルターでろ過してHPLCで分析〔カラム(4.6×10 mm、 Rainin microsorb)、アセトニトリル:リン酸緩衝液=60:40、サンプル注入量25μl、流速1.0ml/分〕した。
【0073】
結果を表12に示した。R−5株処理したシャクナゲ苗および花卉植物増殖用培地からの抽出液をHPLC分析したところ、それぞれから保持時間約12.8分に、UV極大吸収241、427(ショルダー)、443nmをもつピークが検出された。これらを既知の抗生物質同定システムを用いて解析すると、いずれもアクチノマイシンに属する抗生物質であることが明らかとなった。また、検出された濃度は、それぞれ24μg/ml(シャクナゲに含まれる水分)と7μg/ml(培地に含まれる水分)であった。これらの抗生物質濃度は、ペスタロチオプシス・シドウィアナ(Pestalotiopsis sydowiana)MAFF No.305755とフィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)MAFF No.305565の菌糸生長を有意に抑制するのに充分な濃度である。
【0074】
【表12】
Figure 0003629212
【0075】
〔実施例9〕 R−5株が生産する抗生物質の特定
R−5株胞子懸濁液をIMA−2液体培地に接種し、30℃で4日間振盪培養(振盪数:200rpm)した。高圧滅菌したA−3M生産培地〔グルコース5g、グリセロール20ml、可溶性デンプン20g、Pharmamedia(Southern Cotton Oil Co., U.S.A)15g、酵母抽出物 3g、Diaion HP−20 resin(三菱化学)1g、イオン交換水 1000ml〕100mlにR−5株培養液を接種し、さらに30℃で6日間振盪培養した。これに100mlのアセトンを加え、30℃で2時間振盪抽出した後、遠心分離(3000rpm、10分)し、上清を回収した。この上清をロータリーエバポレーターで濃縮し、酢酸エチルを加えてよく撹拌した後、分液ロートで水層と酢酸エチル層に分液した。さらに、この酢酸エチル層をエバポレーターで完全に濃縮し、アセトンで溶出後、再びエバポレーターで完全に濃縮した。これに、メタノールを加えて溶出後、HP−1090HPLCを用いて、既知抗生物質同定システムで解析するとともに、得られた各ピーク画分のミクロコッカス・ルーテウス(Micrococcus luteus)ATCC9341とサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S−100に対する抗菌活性を検定した。
【0076】
結果を表13に示した。R−5株を培養したIMA−2液体培地からの抽出液を既知の抗生物質同定システムを用いてHPLC分析したところ、保持時間11分(ピーク1)にサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S−100対して、22.138分(ピーク2)にミクロコッカス・ルーテウス(Micrococcus luteus)ATCC9341に対して抗菌活性を示すピークが検出された。ピーク1のUV吸収を解析すると、約310、325、340、356nmに特徴的な極大吸収をもつことが明らとなった。このことから、このピーク1はポリエン抗カビ抗生物質であることが判明した。また、ピーク2は、約244、427(ショルダー)、443nmに特徴的な極大吸収をもつことから、アクチノマイシンに属する抗生物質であることが判明した。以上の結果から、R−5株はポリエン抗カビ抗生物質およびアクチノマイシンに属する抗生物質をIMA−2液体培地中に生産することが明らかとなった。
【0077】
【表13】
Figure 0003629212
【0078】
〔実施例10〕病原糸状菌の抗生物質感受性検定
R−5株が生産することがわかったアクチノマイシンに属する抗生物質及びポリエン抗カビ抗生物質に対する病原糸状菌の感受性を検定した。まず、約45℃に冷ましたジャガイモ・蔗糖寒天培地に、0.1、1、10μg/mlの濃度になるようにアクチノマイシンD又はアンホテリシンB(ポリエン抗カビ抗生物質)を溶かし、固化させた。これに、ジャガイモ・蔗糖寒天培地で7日間前培養したフィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)MAFF No.305565またはペスタロチオプシス・シドウィアナ(Pestalotiopsis sydowiana)MAFF No.305755のコロニーより打ち抜いた直径6mmの菌糸片ディスクを接種し、3日間、経時的にそれぞれの菌叢直径を測定した。
【0079】
結果を図10〜13に示した。図10はフィトフトラ・シンナモミのアクチノマイシンD感受性を、図11はフィトフトラ・シンナモミのアンホテリシンB感受性を、図12はペスタロチオプシス・シドウィアナのアクチノマイシンD感受性を、図13はペスタロチオプシス・シドウィアナのアンホテリシンB感受性をそれぞれ示している。なお、図中、◆は0.1μg/ml、■は1μg/ml、▲は10μg/ml、×は0μg/mlの抗生物質濃度の場合を示している。これらの図から明らかなように、ペスタロチオプシス・シドウィアナ(Pestalotiopsis sydowiana)MAFF No.305755はアンホテリシンBに対する感受性が強く、0.1μg/mlで菌叢生育が完全に抑制された。またアクチノマイシンDに対しては感受性が弱かったものの、10μg/mlでは有意に抑制された。一方、フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)MAFF No.305565は、アンホテリシンBにはほとんど感受性がなく、アクチノマイシンDに対して感受性を示した。本菌の菌叢生育は、アクチノマイシンDによって濃度依存的に抑制され、10μg/mlでほぼ完全に生長が停止した。
【0080】
〔実施例11〕 R−5株が生産する二次代謝産物の抗菌活性検定
R−5株胞子懸濁液をIMA−2液体培地に接種し、30℃で4日間振盪培養(×200rpm)した。高圧滅菌したA−3M生産培地〔グルコース 5g、グリセロール 20ml、可溶性デンプン 20g、Pharmamedia(Souther Cotton Oil Co., U.S.A)15g、酵母抽出物 3g、Diaion HP−20 resin(三菱化学)1g、イオン交換水 1000ml〕100mlにR−5株培養液を接種し、さらに30℃で6日間振盪培養した。これに100mlのアセトンを加え、30℃で2時間振盪抽出した後、遠心分離(3000rpm、10分)し、上清を回収した。この抽出液上清に浸漬したろ紙ディスク(直径5mm)をクリーンベンチ内で風乾した後、細菌、酵母及び糸状菌プレート上に置いて、それぞれ37℃、30℃及び25℃で一晩培養した。これにより、ろ紙ディスク周辺に形成された生長阻止円の直径を測定した。また、上記の検定に用いた各種細菌、酵母および糸状菌プレートは以下のように調製した。すなわち、4種類の細菌懸濁液〔エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)NIHJ JC−2、バチルス・スブチリス(Bacillus subtilis)M−45、スタフィロコッカス・オーレウス(Staphylococcus aureus)209P JC−1又はミクロコッカス・ルーテウス(Micrococcus luteus)ATCC 9341を滅菌水に懸濁〕1mlを、約45℃に冷ました50mlのニュートリエントアガー(Nutreint agar;Difco)とよく混ぜ合わせ、シャーレに分注し、固化させた(細菌プレート)。2種類の酵母〔カンジダ・アルビカンス(Candida albicans)A9540又はサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)S−100〕と7種の糸状菌〔フィトフトラ・シンナモミ(Phytophthora cinnamomi)MAFF No.305565、ピシウム・アファニデルマタム(Pythium aphanidermatum)Py−3、リゾクトニア・ソラニー(Rhizoctonia solani)PE−75、フザリウム・アベナセウム(Fusarium avenaceum)Fu−20、スクレロチニア・ホモエオカルパ(Sclerotinia homoeocarpa)Sc−8、ボトリチス・シネレア(Botrytis cinerea)MAFF No.410083又はペスタロチオプシス・シドウィアナ(Pestalotiopsis sydowiana)MAFF No.305755〕は、それぞれジャガイモ・蔗糖液体培地(Potato Dextrose Broth、Difco)に接種し、25℃で3日間振盪培養(振盪数:200rpm)した。また、糸状菌の場合は、培養後に磨砕した。こうして得られた酵母培養液または磨砕した糸状菌菌体1mlを、約45℃に冷ましたジャガイモ・蔗糖寒天培地 50mlとよく混ぜ合わせて、シャーレに分注・固化させた(それそれ酵母プレートおよび糸状菌プレート)。
【0081】
結果を表14に示した。抗菌活性検定の結果、細菌では、グラム陽性菌であるバチルス・スブチリスM−45、スタフィロコッカス・オーレウス209P及びミクロコッカス・ルーテウスATCC 9341に対して直径28〜39mmの生長阻止円を形成したが、グラム陰性菌のエッシェリヒア・コリNIHJ JC−2には活性を示さなかった。酵母に対しては、供試したカンジダ・アルビカンスA9540及びサッカロマイセス・セレビシエS−100の両菌株に対して直径約25mmの生長阻止円を形成した。また、病原糸状菌では、鞭毛菌亜門に属するフィトフトラ・シンナモミMAFF No.305565及びピシウム・アファニデルマタムPy−3、不完全菌亜門に属するボトリチス・シネレアMAFF No.410083(完全世代が存在すれば、子のう菌亜門)、フザリウム・アベナセウムFu−20(完全世代が存在すれば、子のう菌亜門)及びリゾクトニア・ソラニーPE−75(完全世代が存在すれば、担子菌亜門)、子のう菌亜門に属するペスタロチオプシス・シドウィアナMAFF No.305755及びスクレロチニア・ホモエオカルパSc−8のいずれの供試菌に対しても直径30mm以上の生長阻止円を形成した。このことから、R−5株がIMA−2液体培地中に生産する抗生物質は、グラム陽性細菌、酵母および糸状菌といった幅広い微生物種に対して抗菌活性を示すことが明らかとなった。
【0082】
【表14】
Figure 0003629212
【0083】
【発明の効果】
本発明により、ストレプトミセスsp.R−5株、該株を有効成分として含有してなる植物病害防除剤、該株を植物に接種することを特徴とする病害抵抗性植物の作出方法及び該株を有効成分として含有してなるファイトアレキシン誘導剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【図1】R−5株の胞子を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図2】茎の表面で生育するR−5株の様子を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図3】茎の表面で生育するR−5株の様子を示す走査電子顕微鏡写真である。
【図4】葉の内部で生育するR−5株の様子を示す蛍光電子顕微鏡写真である。
【図5】シャクナゲ上でのR−5株の経日的推移を示した図である。
【図6】R−5株で処理しない場合及び処理した場合のシャクナゲの発病状態を示す写真である。
【図7】R−5株で処理しない場合及び処理した場合のシャクナゲの根腐病徴の程度を示すグラフである。
【図8】R−5株で処理しない場合及び処理した場合のシャクナゲの茎色の様子を示す写真である。
【図9】R−5株で処理後のシャクナゲのアントシアニン量の経時的変化を示すグラフである。
【図10】フィトフトラ・シンナモミのアクチノマイシンD感受性を示すグラフである。
【図11】フィトフトラ・シンナモミのアンホテリシンB感受性を示すグラフである。
【図12】ペスタロチオプシス・シドウィアナのアクチノマイシンD感受性を示すグラフである。
【図13】ペスタロチオプシス・シドウィアナのアンホテリシンB感受性を示すグラフである。

Claims (14)

  1. ストレプトミセス(Streptomyces)sp.R−5株を有効成分として含有してなるツツジ科植物病害防除剤。
  2. ストレプトミセスsp.R−5株が、ストレプトミセスsp.FERM BP-7179菌株である、請求項1記載のツツジ科植物病害防除剤。
  3. ツツジ科植物が苗であることを特徴とする、請求項1又は2記載のツツジ科植物病害防除剤。
  4. ツツジ科植物がシャクナゲであることを特徴とする、請求項1〜3のいずれか1項記載のツツジ科植物病害防除剤。
  5. ストレプトミセスsp.R−5株をツツジ科植物に接種することを特徴とする、病害抵抗性ツツジ科植物の作出方法。
  6. ストレプトミセスsp.R−5株が、ストレプトミセスsp.FERM BP-7179菌株である、請求項5記載の作出方法。
  7. ツツジ科植物が苗であることを特徴とする、請求項5又は6記載の作出方法。
  8. ツツジ科植物がシャクナゲであることを特徴とする、請求項5〜7のいずれか1項記載の作出方法。
  9. ストレプトミセスsp.R−5株を、ツツジ科植物の生育培地に接種することを特徴とする、病害抵抗性ツツジ科植物の作出方法。
  10. ストレプトミセスsp.R−5株が、ストレプトミセスsp.FERM BP-7179菌株である、請求項9記載の作出方法。
  11. ツツジ科植物が苗であることを特徴とする、請求項9又は10記載の作出方法。
  12. ツツジ科植物がシャクナゲであることを特徴とする、請求項9〜11のいずれか1項記載の作出方法。
  13. ストレプトミセスsp.R−5株を有効成分として含有してなるツツジ科植物のファイトアレキシン誘導剤。
  14. ストレプトミセスsp.R−5株が、ストレプトミセスsp.FERM BP-7179菌株である、請求項13記載のツツジ科植物のファイトアレキシン誘導剤。
JP2001009323A 2000-03-09 2001-01-17 植物病害防除剤 Expired - Fee Related JP3629212B2 (ja)

Priority Applications (2)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2001009323A JP3629212B2 (ja) 2000-03-09 2001-01-17 植物病害防除剤
US09/801,651 US6544511B2 (en) 2000-03-09 2001-03-09 Plant disease control agent

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2000-65511 2000-03-09
JP2000065511 2000-03-09
JP2001009323A JP3629212B2 (ja) 2000-03-09 2001-01-17 植物病害防除剤

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2001322906A JP2001322906A (ja) 2001-11-20
JP3629212B2 true JP3629212B2 (ja) 2005-03-16

Family

ID=26587126

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2001009323A Expired - Fee Related JP3629212B2 (ja) 2000-03-09 2001-01-17 植物病害防除剤

Country Status (2)

Country Link
US (1) US6544511B2 (ja)
JP (1) JP3629212B2 (ja)

Families Citing this family (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
AU2005322268B2 (en) 2004-12-23 2011-09-01 Innovation Hammer, Llc Compositions and methods for anti-transpiration in plants
JP2007145718A (ja) * 2005-11-24 2007-06-14 Sumitomo Chemical Co Ltd 有害生物防除能力を有する微生物の施用方法
JP2007210981A (ja) * 2006-02-13 2007-08-23 Atomu Japan:Kk 植物活着安定剤
KR101952220B1 (ko) 2011-11-21 2019-05-27 이노베이션 해머 엘엘씨 실리케이트계 기질을 사용하여 식물을 성장시키는 방법 및 시스템, 내생성 글리코피라노실-단백질 유도체를 위한 외생성 글리코피라노사이드 사용에 의한 향상된 광합성 생산성 및 광안전화 재배, 및 그를 위한 제제, 방법 및 시스템
EA030043B1 (ru) 2012-05-21 2018-06-29 ИННОВЕЙШН ХАММЕР ЭлЭлСи Способы получения мицеллярных координационных комплексов, безопасных для обработки растений и их композиций
JP5795676B1 (ja) * 2014-11-28 2015-10-14 株式会社果実堂 発芽処理植物種子の製造方法、発芽誘導用原料種子の製造方法、発芽処理植物種子の抽出組成物、及び、スクリーニング方法
WO2017189311A1 (en) 2016-04-29 2017-11-02 Innovation Hammer Llc Formulations and methods for treating photosynthetic organisms and enhancing qualities and quantities of yields with glycan composite formulations

Family Cites Families (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
ZA751269B (en) * 1974-03-21 1976-01-28 Du Pont N-carbamoyl-2-cyano-2-oxyiminoacetamines as plant disease control agents
US4164405A (en) * 1975-01-27 1979-08-14 The Ekol Corporation Method of controlling the rate of damping-off of plant seedlings and improving the rate of tree growth with treated cotton gin waste
JP3386489B2 (ja) * 1992-05-29 2003-03-17 大日本製薬株式会社 ファイトアレキシンの誘導剤

Also Published As

Publication number Publication date
US6544511B2 (en) 2003-04-08
US20010031258A1 (en) 2001-10-18
JP2001322906A (ja) 2001-11-20

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP3612071B2 (ja) 植物病原体を制御するためのStreptomycesWYEC108の使用
KR101066283B1 (ko) 오크로박트럼 sp.KUDC1013과 상기 균주를 이용한 식물병 방제제 및 식물생장 촉진제
CA2923773C (en) Isolated strain of clonostachys rosea for use as a biological control agent
KR100197077B1 (ko) 항균성 미생물제제, 그 제조방법 및 처리방법
US10327448B2 (en) Bacterium of Bacillus genus and uses thereof
KR102086066B1 (ko) 스트렙토마이세스 스코풀리리디스 n29 균주, 또는 이의 배양여액을 유효성분으로 포함하는 잡초 방제용 조성물
JP3629212B2 (ja) 植物病害防除剤
KR100397796B1 (ko) 항균성 미생물제제와 그의 용도
Fiddaman et al. Screening of bacteria for the suppression of Botrytis cinerea and Rhizoctonia solani on lettuce (Lactuca sativa) using leaf disc bioassays
KR100963774B1 (ko) 식물병 방제 효과와 식물 생장 촉진의 활성을 가지는바실루스 메가테리움 knuc251과 상기 균주를 이용한식물병 방제제 및 식물생장 촉진제
JP3898343B2 (ja) 新規微生物及びそれを用いたコガネムシ科昆虫の防除方法
RU2307158C2 (ru) ШТАММ БАКТЕРИЙ Bacillus subtilis М1, ОБЛАДАЮЩИЙ ФУНГИЦИДНОЙ И ФУНГИСТАТИЧЕСКОЙ АКТИВНОСТЬЮ ПО ОТНОШЕНИЮ К ВОЗБУДИТЕЛЯМ БОЛЕЗНЕЙ КУЛЬТУРНЫХ РАСТЕНИЙ
CN115851476A (zh) 一株水稻根内生高地芽孢杆菌258r-7及其生物制剂与应用
JP2004143102A (ja) 放線菌を含む微生物製剤
KR100319135B1 (ko) 식물병해 길항 미생물 제제
AU2001267948A1 (en) Biological control of plant diseases
NZ529578A (en) Use of Ulocladium oudemansii as a biological control agent
CN118360206B (zh) 一种解淀粉芽孢杆菌hp-j2及其应用
CN116731932B (zh) 一株贝莱斯芽孢杆菌nbt78-2及其应用
KR101972010B1 (ko) 흑축으로부터 분리된 파르비틴을 유효성분으로 함유하는 식물병 방제용 조성물 및 이를 이용한 식물병 방제방법
CN115725450A (zh) 一株橙色粘球菌及其在植物细菌性病害生物防治中的应用
KR100378419B1 (ko) 토양으로부터 분리한 식물기생성 토양선충에 대한포식능을 갖는 미생물 제제
KR20010109531A (ko) 식물병원균의 길항미생물, 이것을 포함하는 미생물 제제 및 이것을 이용한 식물병원균의 방제방법
Abdullah Some Factors that Influence the Growth and Development of Sclerotia and the Biological Control of Sclerotinia sclerotiorum
Gonzalez Evaluation of Trichoderma atroviride as a potential biological control agent of Cryphonectria parasitica

Legal Events

Date Code Title Description
A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20041012

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20041019

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20041119

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20041207

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20041210

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081217

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20081217

Year of fee payment: 4

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091217

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20091217

Year of fee payment: 5

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101217

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20101217

Year of fee payment: 6

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111217

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20111217

Year of fee payment: 7

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20121217

Year of fee payment: 8

LAPS Cancellation because of no payment of annual fees