JP3629183B2 - 補聴器フィッティング装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、評価基準が主観的であって不明確であるために定量的な評価基準に基づいて調整を行うことができない補聴器フィッティングについて、複数の条件における最適値と個人の主観的な評価に基づいて最適な調整結果を得るための補聴器フィッティング装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
個人の嗜好に合わせた音響特性や画像特性などの調整を行う場合、その特性の評価基準は極めて主観的であって不明確なものとなる。各特性に対する嗜好の傾向はユーザ毎に大きく異なる場合が多いため、調整結果を定量的に評価、表現することができないという問題がある。
加えて、通常の場合、対象とする音響特性や画像特性などを調整するためのパラメータは複数個存在し、これらのパラメータ値の相互作用がユーザの主観的な評価に大きな影響を及ぼすため、最適な調整結果の決定は更に困難なものとなる。
【0003】
このような問題を解決するために、例えば特開平9−54765号公報には、対話型遺伝的アルゴリズムを用いた最適化調整方法が提案されている。この方法では、n個の調整パラメータを要素とするn次元ベクトルを解ベクトル(染色体)とし、各解ベクトルに応じて処理された音響信号もしくは画像信号をユーザに提示した上で、各解ベクトルに対するユーザの評価値を基に遺伝的アルゴリズムを実施し、最適解ベクトルを推定するものである。
このような方法によれば、ユーザ自身が主観的に最も聞きやすいと感じるような特性を、各調整値の最適値を個別に算出するのではなく、各調整値間の相互作用も加味した上で算出することができる。
【0004】
本発明で対象としている補聴器のフィッティングにおいて、難聴者の聴覚特性は個人毎に様々である上に、音に対する嗜好も個人個人で異なる。補聴器の多くは、このような様々な難聴者各々にフィットできるように、複数の調整機能(例えば、音量調整、周波数特性調整、出力制限調整、自動利得制御調整など)を有している。
【0005】
補聴器フィッティングとは、これら各調整機能の調整度合(調整値)を個々の難聴者にとって最適な値に設定する作業であり、通常はオージオグラム等の値を既知のフィッティング用の処方式に代入することにより行われる。特開平9−54765号公報には、各調整機能の調整値を利用して前記n次元解ベクトルを構成し、対話型遺伝的アルゴリズムを用いて補聴器のフィッティングを行う方法が提案されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記対話型遺伝的アルゴリズムでは、ある問題に対する単一の条件に対して単一の最適値を決定するため、その条件、つまり調整に用いた条件に特化した最適値が決定されてしまうという問題がある。このため、複数の条件が存在しうる問題においては、各条件に対して各々対話型遺伝的アルゴリズムを実施し、各条件に特化した最適値を決定した上で、最終的な単一の最適値を別途決定せねばならず、この最終最適値は、調整者の主観的評価もしくは個々のユーザの嗜好に無関係に定められた計算式等によって決定されていた。
【0007】
例えば、前記補聴器フィッティングの場合では、前記対話型遺伝的アルゴリズムを実施するために何らかの単一の音源(例えば音声信号)を用いると、その音源に特化した最適値が決定されてしまうという問題がある。
【0008】
補聴器は様々な環境下で使用される機器であり、どのような環境下においても難聴者に快適な聴取状態を提供する必要があるので、単一の音源ではなく複数の条件(例えば、複数の環境音)に対して前記対話型遺伝的アルゴリズムを実施し、各条件に対する最適値を各々決定した上で最終最適値を決定する必要がある。
しかし、この最終最適値は、調整者の主観的評価もしくは個々のユーザの嗜好に無関係に定められた計算式等によって決定せざるを得ないという問題がある。
【0009】
本発明は、従来の技術が有するこのような問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の条件に対応する最適値から、ユーザの嗜好が反映された補聴器の各調整機能の調整値を、短時間で効率的に決定するための補聴器フィッティング装置を提案しようとするものである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決すべく請求項1に係る発明は、複数の条件に対応する最適n次元解ベクトル候補に基づいて1つの最適n次元解ベクトルを決定する問題に対して、前記複数の最適n次元解ベクトル候補の位置を2次元空間上に図示する第1ステップと、前記2次元空間上の任意の座標を選択する第2ステップと、前記複数のn次元解ベクトル候補の2次元空間上の座標に基づいて選択した任意の座標に相当するn次元解ベクトルを算出する第3ステップにより、複数の最適n次元解ベクトル候補に基づいて最適な一つのn次元解ベクトルを決定し、前記n次元解ベクトル候補及び/又は前記最適な一つのn次元解ベクトルを補聴器の調整パラメータ値に変換して補聴器の補聴パラメータ記憶部に書き込むパラメータ書き込み手段と、音源を格納する音源記憶手段と、音源を補聴器に提示するための音源提示手段を備えるものである。
【0011】
請求項2に係る発明は、複数の条件に対応する最適n次元解ベクトル候補に基づいて1つの最適n次元解ベクトルを決定する問題に対して、前記複数の最適n次元解ベクトル候補の位置を2次元空間上に図示する第1ステップと、前記2次元空間上の任意の座標を選択する第2ステップと、前記複数のn次元解ベクトル候補の2次元空間上の座標に基づいて選択した任意の座標に相当するn次元解ベクトルを算出する第3ステップにより、複数の最適n次元解ベクトル候補に基づいて最適な一つのn次元解ベクトルを決定し、前記n次元解ベクトル候補及び/又は前記最適な一つのn次元解ベクトルを補聴器の調整パラメータ値に変換して補聴器の補聴パラメータ記憶部に書き込むパラメータ書き込み手段と、音源を格納する音源記憶手段と、音源を補聴器に提示するための音源提示手段と、前記補聴器の調整パラメータ値及び/又は前記n次元解ベクトルの表す音響的情報に基づく視覚的図形を表示する表示手段を備えるものである。
【0012】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2記載の補聴器フィッティング装置において、前記複数の最適n次元解ベクトル候補を、対話型遺伝的アルゴリズムによって求めるものである。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項1、2又は3記載の補聴器フィッティング装置において、前記複数の最適n次元解ベクトル候補を、複数の音源に対する最適n次元解ベクトルとするものである。
【0017】
請求項5に係る発明は、請求項2、3又は4に記載の補聴器フィッティング装置において、前記視覚的図形を、前記音響的な情報の周波数特性としたものである。
【0018】
請求項6に係る発明は、請求項2、3又は4に記載の補聴器フィッティング装置において、前記視覚的図形を、前記音響的な情報の入出力特性としたものである。
【0019】
請求項7に係る発明は、請求項2、3又は4に記載の補聴器フィッティング装置において、前記視覚的図形を、前記音響的な情報の時間波形としたものである。
【0020】
請求項8に係る発明は、請求項2、3又は4に記載の補聴器フィッティング装置において、前記視覚的図形を、前記音響的な情報のサウンドスペクトログラムとしたものである。
【0021】
請求項9に係る発明は、請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の補聴器フィッティング装置において、ユーザが選択した任意の座標に相当するn次元解ベクトルを補聴器の調整パラメータ値に変換して補聴器の補聴パラメータ記憶部に書き込み、前記複数の音源を順次ユーザに提示するものである。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、図1は本発明に係る補聴器フィッティング装置の構成図、図2は3つの環境音に対する最適値を予め獲得するためのフローチャート、図3は図2に示す方法により得られた結果に基づいて単一の最終最適フィッティング値を決定するためのフローチャート、図4は図3に示す方法で使用する2次元空間の一例を示す図、図5は図2に示す方法により得られた結果に基づいて単一の最終最適フィッティング値を決定するための別のフローチャート、図6は図5に示す方法で使用する2次元空間の一例を示す図である。
【0023】
本発明に係る補聴器フィッティング装置は、図1に示すように、音源処理部1と、パラメータ作成部2、2次元空間表示部3からなる。なお、4はいわゆるプログラマブル補聴器、6は補聴処理された音声や環境音などをプログラマブル補聴器4に提示するスピーカである。
【0024】
音源処理部1は、音源記憶部1a、音源信号変換部1b、音源信号選択部1c、音源提示部1dから、パラメータ作成部2は、座標獲得部2a、解ベクトル算出部2b、パラメータ書き込み部2cから、2次元空間表示部3は、最適解ベクトル獲得部3a、2次元座標算出部3b、表示部3cから構成される。
【0025】
プログラマブル補聴器4は、マイクロフォン4a、増幅器4b、補聴処理部4c、イヤホン4d、パラメータ記憶部5から構成される。ここで、パラメータ書き込み部2cは、プログラマブル補聴器4のパラメータ記憶部5に接続されている。
【0026】
音源記憶部1aは、フィッティングに用いる環境音をデジタルで記録した複数の環境音ファイルと1つの校正音ファイルを記憶している。ここで、環境音及び校正音ファイルは、例えばWAVEファイル形式のようなデジタルデータで構成される。
【0027】
音源信号変換部1bは、音源信号選択部1cからの制御信号に基づいて、音源記憶部1aに記憶されている環境音ファイルを呼び出す機能を有すると共に、環境音ファイルに記憶されているデジタルデータをアナログ環境音信号に変換する機能を有する。
【0028】
音源提示部1dは、音源信号変換部1bから出力された音源信号(アナログ環境音信号)を所定のレベルに増幅または減衰した後に、スピーカ6等を用いてプログラマブル補聴器4に向けて提示する。
【0029】
座標獲得部2aは、ユーザが選択した、表示部3cで表示された2次元空間内の任意の2次元座標を獲得する。解ベクトル算出部2bは、座標獲得部2aが獲得した2次元座標から、補聴器の各調整機能の調整値から構成されるn次元解ベクトルを算出する。
【0030】
パラメータ書き込み部2cは、解ベクトル算出部2bで算出された解ベクトルを、プログラマブル補聴器4の調整機能のパラメータとしてプログラマブル補聴器4のパラメータ記憶部5に書き込む機能を有する。
【0031】
最適解ベクトル獲得部3aは、予め定められた、各環境音に対するユーザの最適フィッティング値すなわち最適解ベクトルを獲得する。
【0032】
2次元座標算出部3bは、最適解ベクトル獲得部3aが獲得した解ベクトルから、ユーザに図示する2次元空間の座標を算出する。
【0033】
表示部3cは、2次元座標算出部3bが算出した2次元空間の座標に基づいてユーザに2次元空間を図示すると共に、2次元座標算出部3bが算出した2次元空間の座標に基づくプログラマブル補聴器4の調整パラメータ値(例えば、音響利得:GAIN、出力制限:MOPや入出力特性の折点:TKなど)及び音響的情報(周波数特性図、入出力特性図、時間波形図、サウンドスペクトログラム)を表示することができる。
【0034】
そして、音源処理部1を構成する音源記憶部1aと音源信号変換部1bと音源信号選択部1c、パラメータ作成部2を構成する座標獲得部2aと解ベクトル算出部2b、2次元空間表示部3を構成する最適解ベクトル獲得部3aと2次元座標算出部3bと表示部3cは、パーソナルコンピュータで構成することができる。
【0035】
即ち、パーソナルコンピュータの内臓ハードディスク及びまたはメモリが、音源記憶部1aの機能を担い、CPUと所定のプログラムが、音源信号変換部1b、音源信号選択部1c、解ベクトル算出部2b、2次元座標算出部3bの機能を担い、キーボード及びまたはマウスが座標獲得部2a、最適解ベクトル獲得部3aの機能を担い、ディスプレイが表示部3cの機能を担うことになる。
【0036】
以上のように構成した本発明に係る補聴器フィッティング装置の作用について、図2と図3に示すフローチャートにより説明する。
図2において、先ず、ステップSP1では、フィッティングに先立ち、音源提示の際の提示音圧レベル校正のために、音源信号選択部1cを操作して、音源記憶部1aより校正音ファイルを呼び出し、音源提示部1dより提示する。
ステップSP2において、騒音計等を用い提示音圧レベル校正を音源提示部1dの増幅度や減衰量を操作して行う。
【0037】
次いで、ステップSP3において、難聴者のオージオグラムを測定し、ステップSP4において、測定したオージオグラムを用いて、既知の補聴器フィッティング処方式により、仮のフィッティング値を算出する。
【0038】
ステップSP5、ステップSP6において初期設定(i=1,k=1)をした後、ステップSP7において、環境音ファイルを呼び出す。ここで使用する環境音ファイルは、例えば、事前に被験者から“最も頻繁に補聴器を使用する環境”を聴取しておき、その環境に最も近いと思われるものが使用される。
本発明の実施の形態では、環境音を家庭内騒音S1、事務所騒音S2、工場内騒音S3の3種類としている。
【0039】
次いで、ステップSP8において、プログラマブル補聴器4の各調整機能の調整値から構成されるフィッティング値を解ベクトル化する。ここで、解ベクトル集合をpik(i=1,2,3……,m、k=1,2,3……,n)とし、本発明の実施の形態では、m=3、n=20としている。
【0040】
次いで、ステップSP9において、パラメータ書き込み部2cにて指定された解ベクトルpikをプログラマブル補聴器4のパラメータに変換し、ステップSP10において、そのパラメータをプログラマブル補聴器4のパラメータ記憶部5に書き込む。
【0041】
次いで、ステップSP11において、音源信号変換部1b及び音源提示部1dで、先ほど呼び出した環境音ファイルを再生し、スピーカ6よりプログラマブル補聴器4に提示する。被験者はプログラマブル補聴器4の出力音(つまり、解ベクトルpikに応じて補聴処理された環境音)を聴取する。
【0042】
ステップSP12において、提示した音、つまり、その時の解ベクトルpikに対する被験者の評価値Eikを得る。評価値Eikは、提示音に対する快適性、明瞭性などに基づく、被験者の主観的な評価を表す数値であり、ここでは1〜5の5段階とし、1が最も評価が低く、5が最も評価が高いものとしている。
【0043】
ステップSP13において、Ei20までの全ての評価値が獲得されたか否かを判断し、獲得されていなければステップSP14へ進み、上記操作を繰り返す。ここで、ステップSP14では、現在のフィッティング値に対する被験者の主観的評価を聴取し、その内容と評価値Eikの値を併せて考慮してフィッティング値の調整、変更を行う。
【0044】
この調整、変更は、例えば、“うるさい”という評価ならば、音量調整や出力制限の値を低減するといった内容のものである。
一方、Ei20までの全ての評価値が獲得された場合には、ステップSP16において、これまでに最も高い評価値を得たpikをその環境音に対する最適フィッティング値Fiとする。
【0045】
次いで、ステップSP17において、上記操作が工場内騒音S3まで行われたか否か判断し、工場内騒音S3まで行われていればフィッティング作業を終了し、行われていなければステップSP18へ進み上記操作を工場内騒音S3についてフィッティング作業が終了するまで繰り返す。
【0046】
次に、図2に示すフローチャートによって求めた、3種の音源S1,S2,S3に対する最適フィッティング値F1,F2,F3を用いて、最終フィッティング値を決定する方法を図3のフローチャートに示す。
【0047】
先ず、ステップSP21にて、表示部3cのスクリーン上に任意の正三角形を図示し、ステップSP22において、2次元座標算出部3bによりこの三角形の三頂点の2次元座標x1,x2,x3を算出する。この時の正三角形の大きさはユーザが操作しやすい大きさとする。
【0048】
次いで、ステップSP23で、2次元座標算出部3bにより正三角形の重心の2次元座標xcを算出し、ステップSP24で、2次元座標算出部3bにより三頂点の2次元座標x1,x2,x3と重心の2次元座標xcについての各々の中点の2次元座標x12,x13,x1c,x23,x2c,x3cを算出する。
【0049】
そして、ステップSP25で、表示部3cにより、三頂点の2次元座標x1,x2,x3、重心の2次元座標xc、中点の座標x12,x13,x1c,x23,x2c,x3cの位置をスクリーン上に図示する。
図4にスクリーン上に図示された2次元空間の一例を示す。
【0050】
次いで、ステップSP26で、ユーザが図4に示された2次元空間上において、三頂点の位置を参考にして任意の2次元空間上の位置を指示する。
すると、座標獲得部2aは指示された位置の2次元空間上の座標xaを獲得する。例えば、職場が事務所で、補聴器は主に職場と帰宅後の家庭内で使用するというユーザは、図4に示すA点のような位置を指示する。
【0051】
次いで、ステップSP27で、xaに相当する解ベクトルpaを解ベクトル算出部2bにて算出する。ここで、解ベクトルpaは、例えば、xa=xcならば、解ベクトル(3種の音源S1,S2,S3に対する最適フィッティング値)F1,F2,F3の各要素の平均値を要素とする平均解ベクトルFcとし、xa=x3cならば、F3とFcの各要素の平均値を要素とする平均解ベクトルF3cとする。
【0052】
次いで、ステップSP28において、解ベクトルpaをパラメータ書き込み部2cによりプログラマブル補聴器4のパラメータに変換し、更にステップSP29において、そのパラメータをプログラマブル補聴器4のパラメータ記憶部5に書き込む。
【0053】
次いで、ステップSP30〜ステップSP32において、音源信号変換部1b及び音源提示部1dで、解ベクトルF1に対応する環境音(家庭内騒音S1)のファイルを再生し、スピーカ6よりプログラマブル補聴器4に提示する。被験者は、プログラマブル補聴器4の出力音(つまり、解ベクトルpaに応じて補聴処理された家庭内騒音S1)を聴取する。
【0054】
被験者がプログラマブル補聴器4の出力音を、ステップSP31〜ステップSP34で、3種の環境音S1,S2,S3全てについて聴取し終えた後に、ステップSP35において、被験者が現在のフィッティング値paに満足するならば、フィッティングを終了し、満足しないならば、ステップSP26に戻って上記操作を繰り返し実行する。
【0055】
この際の任意の座標xaは、例えば、ユーザが現在のpaでは、家庭内騒音下、事務所内騒音下ともに聞きやすいが、工場内騒音下でももう少し快適に聴取できるようにしたいと感じるのであればB点のような場所になる。
【0056】
次に、図2に示すフローチャートによって求めた、3種の音源S1,S2,S3に対する最適フィッティング値F1,F2,F3を用いて、最終フィッティング値を決定する別の方法を、図5に示すフローチャートにより説明する。
【0057】
先ず、ステップSP41〜ステップSP48の内容は、図3に示すフローチャートのステップSP21〜ステップSP28の内容と同様なので説明を省略する。
【0058】
次いで、ステップSP49では、図6に示すように、2次元空間上の座標xaに対応したプログラマブル補聴器4の調整パラメータ(例えば、音響利得:GAIN=5、出力制限:MOP=3や入出力特性の折点:TK=2などの値)及び音響特性図(例えば、入出力音圧レベル毎の周波数特性図)を表示部3cのスクリーン上に表示する。
【0059】
このように表示部3cのスクリーン上に、2次元空間上の座標xaに対応したプログラマブル補聴器4の調整パラメータ値及び音響特性図を表示することにより、被験者にとっても、パラメータの調整作業者にとっても補聴器の調整具合を視覚的に把握できるので、最適な補聴器の調整パラメータ値を効率的かつ正確に設定することができる。
【0060】
なお、図6では、表示部3cのスクリーン上に表示する視覚的図形を、xaに相当する解ベクトルpaによって生ずる周波数特性としているが、この場合の図形は解ベクトルpaの表す音響的情報に基づく図形であれば周波数特性でなくとも良い。例えば、音の入出力特性を変更できるタイプの補聴器(いわゆるAGC補聴器もしくはノンリニア補聴器)であるならば、その入出力特性を視覚的図形としても良い。
【0061】
また、表示部3cのスクリーン上に表示する図形を、特定の音信号が補聴器に入力された場合の、その補聴器の出力音の時間波形としても良い。この場合の入力音は、遺伝的アルゴリズムで用いた音源を用いても良いし、他の音信号を用いても良い。
【0062】
また、表示部3cのスクリーン上に表示する図形を、特定の音信号が補聴器に入力された場合の、その補聴器の出力音のサウンドスペクトログラムとしても良い。この場合の入力音は、遺伝的アルゴリズムで用いた音源を用いても良いし、他の音信号を用いても良い。
【0063】
更に、ステップSP50〜ステップSP56の内容は、図3に示すフローチャートのステップSP29〜ステップSP35の内容と同様なので説明を省略する。
【0064】
なお、本発明の実施の形態では、3種類の環境音S1,S2,S3を用いてフィッティングを実施しているが、2もしくは4種類以上の環境音で実施しても良い。
【0065】
また、本発明の実施の形態では、2次元空間上に図示する図形を常に正三角形としているが、例えば、各多次元ベクトルである解ベクトルF1,F2,F3間のユークリッド距離の比率に従って三角形の形状を決定しても良いし、MDS(Multidimensional Scaling)法や自己組織化写像技術などを用いて解ベクトルF1,F2,F3を2次元空間に写像することによって三角形の形状を決定し、図示しても良い。
【0066】
また、本発明の実施の形態では、図示する座標を10点に限定しているが、例えば、図示する点数を定めずに、2次元空間上の全ての座標について同様の処理を行っても良い。
【0067】
また、本発明の実施の形態では、ユーザが指示した任意の座標に相当する解ベクトルを、既知の解ベクトルF1,F2,F3に基づき、各要素の平均値を要素とする平均解ベクトルを算出することにより決定しているが、各解ベクトル間のユークリッド距離や、図2に示すフローチャートにより求めた複数の解ベクトルに対する評価値Eikの値等に基づいて決定しても良い。
【0068】
なお、以上の発明の実施の形態では、各種音源に対する最適フィッティング値および各種のフィッティング値に対する評価値獲得を図2に示すフローチャートにより行う方法について説明した。
しかし、これらの値の獲得は対話型遺伝的アルゴリズムを用いて行っても良い。
【0069】
対話型遺伝的アルゴリズムでは、音源に特化した最適値が求まり、加えて、最適値決定の過程で各種の解ベクトルに対する評価値を得るので、これらの値を記録しておけば、そのまま本方法に利用することも可能である。
【0070】
つまり、音源を家庭内騒音S1、事務所騒音S2、工場内騒音S3とする対話型遺伝的アルゴリズムをそれぞれ実施し、各音源に対する最適解ベクトルF1,F2,F3を求めると同時に、対話型遺伝的アルゴリズムの進化の過程で得られた複数の解ベクトルをpikとし、これらに対する評価値をEikとして本発明を実施するのである。
【0072】
【発明の効果】
以上説明したように請求項1に係る発明によれば、評価基準が主観的であって不明確な補聴器フィッティングに対して、特定の条件に特化した最適値ではなく、個々の難聴ユーザの音に対する嗜好を反映し、様々な音環境に適した補聴器フィッティングを行うことができる。
【0073】
請求項2に係る発明によれば、評価基準が主観的であって不明確な補聴器フィッティングに対して、個々の難聴ユーザの音に対する嗜好を反映し、様々な音環境に適した補聴器フィッティングを、表示手段により表示される補聴器の調整パラメータ値及び/又は音響的情報に基づく視覚的図形を参照しながら行うことができる。
【0074】
請求項3に係る発明によれば、複数の条件に対する最適値と複数の解ベクトルに対する評価値を効率的かつ正確に獲得することができるため、複数の条件を鑑みた単一の最適値をより効率的かつ正確に求めることができ、個々の難聴ユーザの音に対する嗜好を反映し、様々な音環境に適した補聴器フィッティングを行うことができる。
【0076】
請求項4に係る発明によれば、提示する音源を複数の環境音とすることにより、特定の音環境に特化したフィッティングでなく、様々な音環境に適したフィッティングを行うことができる。
【0079】
請求項5に係る発明によれば、視覚的図形として音響的情報の周波数特性を付与するため、ユーザが過去の解ベクトルに自ら与えた評価値を容易に記憶することができるので、評価のゆらぎを最小限にとどめて、最適解を効率的かつ正確に求めることができる。
【0080】
請求項6に係る発明によれば、視覚的図形として音響的情報の入出力特性を付与するため、ユーザが過去の解ベクトルに自ら与えた評価値を容易に記憶することができるので、評価のゆらぎを最小限にとどめて、最適解を効率的かつ正確に求めることができる。
【0081】
請求項7に係る発明によれば、視覚的図形として音響的情報の時間波形を付与するため、ユーザが過去の解ベクトルに自ら与えた評価値を容易に記憶することができるので、評価のゆらぎを最小限にとどめて、最適解を効率的かつ正確に求めることができる。
【0082】
請求項8に係る発明によれば、視覚的図形として音響的情報のサウンドスペクトログラムを付与するため、ユーザが過去の解ベクトルに自ら与えた評価値を容易に記憶することができるので、評価のゆらぎを最小限にとどめて、最適解を効率的かつ正確に求めることができる。
【0083】
請求項9に係る発明によれば、個々の難聴ユーザが自ら選択したフィッティング値の補聴効果を、様々な音環境で確認しながら最適なフィッティング値を決定していくことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る補聴器フィッティング装置の構成図
【図2】3つの環境音に対する最適値を予め獲得するためのフローチャート
【図3】図2に示す方法により得られた結果に基づいて単一の最終最適フィッティング値を決定するためのフローチャート
【図4】図3に示す方法で使用する2次元空間の一例を示す図
【図5】図2に示す方法により得られた結果に基づいて単一の最終最適フィッティング値を決定するための別のフローチャート
【図6】図5に示す方法で使用する2次元空間の一例を示す図
【符号の説明】
1…音源処理部、1a…音源記憶部、1b…音源信号変換部、1c…音源信号選択部、1d…音源提示部、2…パラメータ作成部、2a…座標獲得部、2b…解ベクトル算出部、2c…パラメータ書き込み部、3…2次元空間表示部、3a…最適解ベクトル獲得部、3b…2次元座標算出部、3c…表示部、4…プログラマブル補聴器、5…パラメータ記憶部、6…スピーカ。
Claims (9)
- 複数の条件に対応する最適n次元解ベクトル候補に基づいて1つの最適n次元解ベクトルを決定する問題に対して、前記複数の最適n次元解ベクトル候補の位置を2次元空間上に図示する第1ステップと、前記2次元空間上の任意の座標を選択する第2ステップと、前記複数のn次元解ベクトル候補の2次元空間上の座標に基づいて選択した任意の座標に相当するn次元解ベクトルを算出する第3ステップにより、複数の最適n次元解ベクトル候補に基づいて最適な一つのn次元解ベクトルを決定し、前記n次元解ベクトル候補及び/又は前記最適な一つのn次元解ベクトルを補聴器の調整パラメータ値に変換して補聴器の補聴パラメータ記憶部に書き込むパラメータ書き込み手段と、音源を格納する音源記憶手段と、音源を補聴器に提示するための音源提示手段を備えることを特徴とする補聴器フィッティング装置。
- 複数の条件に対応する最適n次元解ベクトル候補に基づいて1つの最適n次元解ベクトルを決定する問題に対して、前記複数の最適n次元解ベクトル候補の位置を2次元空間上に図示する第1ステップと、前記2次元空間上の任意の座標を選択する第2ステップと、前記複数のn次元解ベクトル候補の2次元空間上の座標に基づいて選択した任意の座標に相当するn次元解ベクトルを算出する第3ステップにより、複数の最適n次元解ベクトル候補に基づいて最適な一つのn次元解ベクトルを決定し、前記n次元解ベクトル候補及び/又は前記最適な一つのn次元解ベクトルを補聴器の調整パラメータ値に変換して補聴器の補聴パラメータ記憶部に書き込むパラメータ書き込み手段と、音源を格納する音源記憶手段と、音源を補聴器に提示するための音源提示手段と、前記補聴器の調整パラメータ値及び/又は前記n次元解ベクトルの表す音響的情報に基づく視覚的図形を表示する表示手段を備えることを特徴とする補聴器フィッティング装置。
- 前記複数の最適n次元解ベクトル候補を、対話型遺伝的アルゴリズムによって求める請求項1又は2記載の補聴器フィッティング装置。
- 前記複数の最適n次元解ベクトル候補を、複数の音源に対する最適n次元解ベクトルとする請求項1、2又は3記載の補聴器フィッティング装置。
- 前記視覚的図形が、前記音響的情報の周波数特性である請求項2、3又は4に記載の補聴器フィッティング装置。
- 前記視覚的図形が、前記音響的情報の入出力特性である請求項2、3又は4に記載の補聴器フィッティング装置。
- 前記視覚的図形が、前記音響的情報の時間波形である請求項2、3又は4に記載の補聴器フィッティング装置。
- 前記視覚的図形が、前記音響的情報のサウンドスペクトログラムである請求項2、3又は4に記載の補聴器フィッティング装置。
- ユーザが選択した任意の座標に相当するn次元解ベクトルを補聴器の調整パラメータ値に変換して補聴器の補聴パラメータ記憶部に書き込み、前記複数の音源を順次ユーザに提示する請求項1乃至請求項8のいずれかに記載の補聴器フィッティング装置。
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