JP3628849B2 - 集積回路における金属配線の評価方法及び評価装置 - Google Patents
集積回路における金属配線の評価方法及び評価装置 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、集積回路における金属配線の耐エレクトロマイグレーション性と抵抗温度係数とを評価する評価方法及び評価装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、集積回路においては、金属配線が微細化され、かつ配線規模が拡大されているので、金属配線の評価がますます重要になっている。集積回路において、サブミクロン幅の薄い導体よりなる金属配線を流れる電流は、導体材料のエレクトロマイグレーションを引き起こして、該集積回路の不良原因となる。したがって、金属配線の信頼性を評価するためには、耐エレクトロマイグレーション性の評価が不可欠である。耐エレクトロマイグレーション性の評価においては、試験装置として、定電流源、電圧計、及びタイマーを有する自動測定器を使用する。該自動測定器によって、試験対象である試験配線に定電流を供給し、該定電流に基づく印加電流密度に対応する配線抵抗値をモニタして、断線によって配線抵抗値が急増する時点までの時間、すなわち故障時間を測定する。上述した通常のエレクトロマイグレーション試験によって得られた結果である、印加電流密度と故障時間とに基づいて、試験配線と同一仕様よりなる金属配線を実回路に使用する場合における許容電流密度を算出する。
【0003】
耐エレクトロマイグレーション性の評価において重要なことは、試験結果に基づいて実使用条件における金属配線の寿命を推定することである。該寿命推定のためには、それぞれ精度が高い、加速係数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaが必要になる。これら加速係数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaを高精度に算出するためには、それぞれ精度が高い、印加電流密度と配線温度と故障時間との組合せからなるデータを使用することが必要である。「半導体デバイスの信頼性技術」(日科技連)によれば、加速定数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaを得るには、まず活性化エネルギーEaを求め、次に電流密度係数nと加速係数Aとを求める。
【0004】
従来の、耐エレクトロマイグレーション性を評価する金属配線の評価方法を、図4を参照して説明する。図4は、従来の、耐エレクトロマイグレーション性を評価する金属配線の評価方法のフローチャート図である。図4の活性化エネルギー算出工程31においては、試験配線における印加電流密度を一定にして、ホットチャック、恒温槽等の温度制御装置を使用して該試験配線の配線温度を変化させる。各配線温度においてエレクトロマイグレーション試験を行ない、印加電流密度(一定)と配線温度と故障時間との組合せからなるデータを収集する。この場合は、一定の印加電流密度下におけるエレクトロマイグレーション試験であり、エレクトロマイグレーション評価式は、未知数として活性化エネルギーEaのみを有する。該エレクトロマイグレーション評価式、
Ea=k・ln(τ1/τ2)/(1/T1−1/T2) (1)
へ、配線温度と故障時間とのデータを代入して、活性化エネルギーEaを算出する。ここで、
k:ボルツマン定数
T1:第1のエレクトロマイグレーション試験における配線温度
T2:第2のエレクトロマイグレーション試験における配線温度
τ1:第1のエレクトロマイグレーション試験における故障時間
τ2:第2のエレクトロマイグレーション試験における故障時間
である。
【0005】
電流密度係数算出工程32においては、配線温度を一定にして、各試験配線における印加電流密度が異なるように、各試験配線へ異なる定電流をそれぞれ供給する。この場合には、ジュール熱を発生する各試験配線を温度制御することが難しい。通常は、試験配線における印加電流密度を小さくするように定電流を供給することによって、発生するジュール熱を抑える。印加電流密度がそれぞれ異なるように定電流が供給される各試験配線は、それぞれ異なる配線温度を有する。該配線温度の差異を解消するために、ホットチャック、恒温槽等の温度制御装置を使用して配線温度を上昇させ、高温状態において配線温度を一定にする。各印加電流密度においてエレクトロマイグレーション試験を行ない、印加電流密度と配線温度(一定)と故障時間との組合せからなるデータを収集する。この場合は、一定の配線温度下におけるエレクトロマイグレーション試験であり、エレクトロマイグレーション評価式は、未知数として電流密度係数nのみを有する。該エレクトロマイグレーション評価式、
n=ln(τ3/τ4)/ln(J3/J4) (2)
へ、印加電流密度と故障時間とのデータを代入して、電流密度係数nを算出する。ここで、
τ3:第3のエレクトロマイグレーション試験における故障時間
τ4:第4のエレクトロマイグレーション試験における故障時間
J3:第3のエレクトロマイグレーション試験における印加電流密度
J4:第4のエレクトロマイグレーション試験における印加電流密度
である。
【0006】
加速係数算出工程33においては、通常のエレクトロマイグレーション試験を行ない、印加電流密度Jと配線温度Tと故障時間τとの組合せからなるデータを収集する。なお、配線温度Tは、後述する試験配線の抵抗温度係数(TCR)を使用して算出する。収集された印加電流密度J、配線温度T、及び故障時間τと、活性化エネルギー算出工程31において算出された活性化エネルギーEaと、電流密度係数算出工程32において算出された電流密度係数nとを、エレクトロマイグレーション評価式、
A=τ・Jn/exp(Ea/kT) (3)
へ代入して、加速係数Aを算出する。
【0007】
以上説明したエレクトロマイグレーションの評価においては、試験配線の配線温度を算出するために、該試験配線の抵抗温度係数(TCR)を予め求める必要がある。TCR値を求めるためには、ホットチャック、恒温槽等の温度制御装置によって配線温度を制御しながら、試験配線において発生するジュール熱を無視できる程度にまで、印加される定電流を小さくして配線抵抗値を測定する。該測定された配線抵抗値Rと、制御された配線温度Tと、初期配線温度T0及び該初期配線温度T0における初期配線抵抗値R0とを、関係式、
TCR=(R−R0)/R0/(T−T0) (4)
へ代入して、TCR値を算出する。ここで、初期配線抵抗値R0は、室温環境下である初期配線温度T0において、試験配線におけるジュール熱を無視できる程度の微小電流を該試験配線へ印加することにより、測定された配線抵抗値である。なお、このTCR値の求め方は、ASTM(American Society for Testing Materials)F1260−89に明記されている。
【0008】
求められた抵抗温度係数TCRと、初期配線温度T0と初期配線抵抗値R0とを利用して、定電流印加中の配線抵抗値Rに基づき、該定電流印加中の配線温度Tを、関係式
T=T0+(R−R0)/R0/TCR (5)
に基づいて算出する。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の構成によれば、金属配線のエレクトロマイグレーション評価において必要である電流密度係数nと活性化エネルギーEaとを求めるために、それぞれ別々に試験を行なう必要がある。したがって、試験環境及び対象となる試験配線がそれぞれ異なるので高精度な電流密度係数nと活性化エネルギーEaとを得られず、別々に試験するので試験時間を短縮できない。また、電流密度係数nを求める試験の場合には、一定の配線温度下において印加電流密度が異なるように定電流を印加する際に試験配線自身がジュール熱を発生するので、配線温度一定という条件が近似的になり、高精度な電流密度係数nが得られない。また、配線温度を一定にし、又は様々な定温に変化させるために、ホットチャック、恒温槽等の温度制御装置を使用するので、耐エレクトロマイグレーション性を簡便に評価できない。
【0010】
更に、エレクトロマイグレーション評価において必要である、試験配線の抵抗温度係数(TCR)を求めるための試験においては、配線抵抗測定の際に、試験配線を高温状態へ長時間置くので、該試験配線を有するウェハー試料全体がストレスマイグレーションによって劣化するおそれがある。また、該試験配線を有するウェハー試料はTCR値測定専用であり、測定されたTCR値は、別のウェハー試料に関する耐エレクトロマイグレーション性の評価に使用される。したがって、耐エレクトロマイグレーション性の評価対象である試験配線自体のTCR値を測定できず、評価の精度が低下する。また、高温状態を制御するために温度制御装置を必要とするので、TCR値を求める試験を簡便に実施できない。
【0011】
本発明は、上記従来の問題に鑑み、同一仕様よりなる金属配線のうちの複数の試験配線に対し並行して試験を行ない、該金属配線の耐エレクトロマイグレーション性を、簡便、短時間かつ高精度に評価することを目的とする。また、本発明は、耐エレクトロマイグレーション性評価に必要なTCR値を、耐エレクトロマイグレーション性評価に使用する試験配線自体を対象として、ウェハー試料を劣化させず簡便、かつ短時間に測定することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、本発明は、同一仕様よりなる金属配線の耐エレクトロマイグレーション性を評価する評価方法を、印加電流密度が異なるようにN本(NはN≧3なる整数)の試験配線へ異なる定電流を並行して供給し、配線抵抗値をそれぞれ測定し、該配線抵抗値と予め入力された熱パラメータとに基づいて配線温度をそれぞれ算出し、かつ、故障時間をそれぞれ測定する工程と、印加電流密度と配線温度と故障時間とからなる組合せを所定の関係式へ入力してN個の評価式よりなる連立方程式を作成する工程と、該連立方程式を解いて、金属配線の加速係数、電流密度係数、及び活性化エネルギーを算出する工程とを備えた構成とするものである。
【0013】
また、本発明は、同一仕様よりなる金属配線の耐エレクトロマイグレーション性を評価するための評価装置を、印加電流密度が異なるようにN本(NはN≧3なる整数)の試験配線へ異なる定電流を並行して供給し、配線抵抗値をそれぞれ測定し、該配線抵抗値と予め受け取った熱パラメータとに基づいて配線温度をそれぞれ算出し、かつ、故障時間をそれぞれ測定するための試験手段と、印加電流密度と配線温度と故障時間とからなる組合せを所定の関係式へ入力してN個の評価式よりなる連立方程式を作成するための方程式作成手段と、該連立方程式を解いて、金属配線の加速係数、電流密度係数、及び活性化エネルギーを算出するための方程式求解手段とを備えた構成とするものである。
【0014】
上記の構成を有する評価方法又は評価装置により、同一の試験環境下で、N本の試験配線から得られた結果に基づきN個の評価式よりなる連立方程式を作成し、かつ、該連立方程式を解いて金属配線の加速係数、電流密度係数、及び活性化エネルギーを算出する。
【0015】
また、本発明は、金属配線の抵抗温度係数を評価する評価方法を、試験配線へ複数の電流値を有する定電流を順次供給して配線抵抗値を測定する工程と、印加電流密度及び配線抵抗値からなる複数の組合せと該試験配線の初期配線抵抗値とを所定の関係式へ入力して、数値解析により該試験配線の抵抗温度係数を算出する工程とを備えた構成とするものである。
【0016】
また、本発明は、金属配線の抵抗温度係数を評価するための評価装置を、試験配線へ複数の電流値を有する定電流を順次供給して配線抵抗値を測定するための測定手段と、印加電流密度及び配線抵抗値からなる複数の組合せと該試験配線の初期配線抵抗値とを所定の関係式へ入力して、数値解析により該試験配線の抵抗温度係数を算出するための算出手段とを備えた構成とするものである。
【0017】
上記の構成を有する評価方法又は評価装置により、ウェハー試料全体を高温状態へ置くことなく、試験配線の抵抗温度係数を算出する。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施形態)
本発明に係る金属配線の評価方法及び評価装置の第1の実施形態を、図1を参照して説明する。図1は、本実施形態に係る金属配線の評価装置の構成を示すブロック図である。図1において、入力手段11は、集積回路における同一仕様よりなる金属配線のうちのN本(NはN≧3なる整数)の試験配線がそれぞれ有する、予め測定された初期配線抵抗値R0と抵抗温度係数TCRとからなる熱パラメータを受け取るための熱パラメータ入力手段である。試験手段12は、試験配線における印加電流密度がそれぞれ異なるように各試験配線へ異なる定電流をそれぞれ並行して供給し、該異なる印加電流密度に応じた各試験配線の配線抵抗値を測定し、該測定された配線抵抗値と受け取った熱パラメータとに基づいて各試験配線における配線温度を算出し、かつ、異なる印加電流密度に応じた配線抵抗値の変化に基づいて各試験配線の故障時間を測定するためのエレクトロマイグレーション試験手段である。試験手段12は、定電流源と、電圧計と、タイマーとから構成される。方程式作成手段13は、異なる印加電流密度と配線温度と故障時間とからなる各々の組合せを予め定められた関係式へ入力することによって、N個の評価式よりなる連立方程式を作成するための連立方程式作成手段である。求解手段14は、該作成された連立方程式を解くことによって、パラメータa,b,cをそれぞれ算出するための連立方程式求解手段である。算出及び出力手段15は、受け取ったパラメータa,b,cに基づいて、同一仕様よりなる金属配線の加速係数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaをそれぞれ算出し、かつこれらを出力するための算出及び出力手段である。
【0019】
本実施形態に係る金属配線の評価方法を実現するための、図1の金属配線の評価装置の動作を説明する。入力手段11は、N本(NはN≧3なる整数)よりなる試験配線がそれぞれ有する、配線温度T0における初期配線抵抗値R0と抵抗温度係数TCRとからなる、配線温度Tを算出するための熱パラメータを受け取る。試験手段12は、N本の試験配線に対して、それぞれ異なる印加電流密度による定電流印加法を使用してエレクトロマイグレーション試験を行なう。すなわち、試験配線へ印加されるべき定電流値を該試験配線の断面積で除すことによって、印加電流密度Jを算出する。印加電流密度Jがそれぞれ異なるように、各試験配線へ異なる定電流を並行して印加する。定電流を印加されている各試験配線の配線抵抗値Rを測定し、該測定された配線抵抗値Rと受け取った熱パラメータとに基づいて、式(5)を使用して配線温度Tを算出する。該測定された配線抵抗値Rの変化に基づいて、各試験配線の故障時間τを測定する。このことによって、それぞれ求めようとする、加速係数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaを求解できるだけの、印加電流密度Jと配線温度Tと故障時間τとからなるデータの組合せをN個だけ得られる。この場合において、該データの組合せの数が多いほど、求解された加速係数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaの精度は高くなる。方程式作成手段13は、式(3)に基づくエレクトロマイグレーション評価式、
a+{−ln(J)}・b+(1/kT)・c=ln(τ) (6)
へ、試験手段12によって得られた印加電流密度Jと配線温度Tと故障時間τとを代入し、パラメータa,b,cを未知数とする方程式を、試験配線1本につき1個作成する。ここで、式(6)は、式(3)の両辺の自然対数をとって変形した式、
ln(τ)=ln(A)+{−ln(J)}・n+(1/kT)・Ea (7)
において、a=ln(A)、b=n、c=Eaとおいて得られた評価式である。式(6)は1本の試験配線についての評価式であって、N本の試験配線については、図1の方程式作成手段13に記載された、行列で表わされたN個の連立一次方程式が得られる。求解手段14は、ガウス−ヨルダン法、ドリトル法、コレスキー法、バンド行列に対する方法、乗積形逆行列法、ガウス−ザイデル法等の数値解析によって、方程式作成手段13において生成されたN個の連立一次方程式を解き、パラメータa,b,cを算出する。算出及び出力手段15は、該算出されたパラメータa,b,cに基づいて、未知数である加速定数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaを、それぞれA=exp(a)、n=b、Ea=cなる計算により求め、該求められたそれぞれの値を、ディスプレイ表示、印字等の方法によって出力する。
【0020】
以上説明したように、第1の実施形態に係る金属配線の評価方法及び評価装置によれば、同一仕様よりなるN本(NはN≧3なる整数)の金属配線よりなる試験配線に対して、それぞれ異なる電流密度となるように異なる定電流を並行して供給する。各試験配線について印加電流密度Jと配線温度Tと故障時間τとからなるデータの組合せを算出し、N個の評価式からなる連立方程式を生成し、該連立方程式を数値解析により解いて金属配線の加速係数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaを算出する。
【0021】
したがって、別々の試験ではなく、同一の試験環境において並行して行なった試験から得られた結果に基づいて印加電流密度Jと配線温度Tと故障時間τとを算出するので、各試験配線に関するこれらのデータの組合せを、短い試験時間により、かつ精度よく算出できる。また、N個のデータの組合せを使用して作成した連立方程式を求解することによって、多数のデータに基づいて、加速係数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaを精度よく算出できる。また、配線温度を一定にするための温度制御装置を使用するのではなく、算出された配線温度を使用して評価するので、該算出された配線温度に基づいて電流密度係数nを精度よく算出でき、かつ、データの組合せを簡便にオンラインで算出できる。また、温度制御装置を使用せず、かつ、各構成手段が独立しているために、各構成手段の保守が容易である。
【0022】
(第2の実施形態)
本発明に係る金属配線の評価方法及び評価装置の第2の実施形態を、図2と図3とを参照して説明する。図2は、本実施形態に係る金属配線の評価装置の構成を示すブロック図である。本実施形態においては、金属配線のエレクトロマイグレーション評価に必要な、該金属配線の抵抗温度係数(TCR)を測定する。図2において、測定機器21は、定電流源と電圧計との機能を有し、試験配線へ定電流を印加し、かつ配線抵抗を測定するための測定手段である。コンピュータ22は、試験配線へ供給された電流値に基づく印加電流密度Jと配線抵抗値Rとに基づいて、TCR値を算出するための算出手段である。出力機器23は、算出されたTCR値を出力するための出力手段である。
【0023】
測定機器21によって測定された、印加電流密度Jと配線抵抗値Rとの関係を、図3を参照して説明する。図3は、印加電流密度Jと配線抵抗値Rとの関係を示す説明図である。図3において、印加電流密度Jの増加に伴なう配線抵抗値の増加は、ジュール熱による配線温度の上昇に基づく。また、配線温度T0において、配線抵抗値は初期配線抵抗値R0となる。
【0024】
本実施形態に係る、金属配線の評価装置の動作を説明する。測定機器21は、少なくとも1本の試験配線へ複数の電流値を有する定電流を順次供給し、それぞれの電流値に対応する配線抵抗値を順次測定する。また、試験配線において発生するジュール熱を無視できる程度の微小電流を、該試験配線へ供給することによって、配線温度T0における初期配線抵抗値R0を測定する。コンピュータ22は、それぞれ測定機器21によって測定された、初期配線抵抗値R0と印加電流密度Jと配線抵抗値Rとを、関係式、
(R−R0)/R0/TCR
=J2 ・R0/(B−J2 ・R0・TCR) (8)
へ代入する。式(8)の左辺は、式(5)を変形することによりT−T0と等しく、試験配線において発生するジュール熱による配線温度の上昇分を表わす。式(8)の右辺は、「Harry A. Schafft,“Thermal Analysis of Electromigration Test Structures”,in IEEE Trans. Electron Devices,VOL.ED−34,P.664〜P.672,MARCH 1987」から、関係式、
を変形して、T−T0に等しいとして表わされる部分である。ここで、
ki:層間膜の熱伝達係数
t:配線の膜厚
ti:配線と基板との間の距離
w:配線幅
である。また、式(8)のBは、式(9)から、B=Ki/t/ti(1+0.88・ti/W)であり、層間膜の熱伝達係数kiと配線形状とに関する値よりなる放熱係数(配線固有値)である。更に、コンピュータ22は、式(8)において、放熱係数Bと抵抗温度係数TCRとをフィッティング用パラメータとし、非線形最小2乗法の数値解析であるレーベン・マルカート法を使用して、放熱係数Bと抵抗温度係数TCRとを算出する。非線形最小2乗法の数値解析として、パウエル法を使用してもよい。出力機器23は、コンピュータ22において数値解析によって算出されたTCR値を出力する。
【0025】
以上説明したように、第2の実施形態に係る金属配線の評価方法及び評価装置によれば、試験配線へ供給されたそれぞれの電流値に対応する配線抵抗値を順次測定し、該電流値に対応する印加電流密度Jと該測定された配線抵抗値Rと予め測定された初期配線抵抗値R0とに基づき、放熱係数Bと抵抗温度係数TCRとをフィッティング用パラメータとした非線形最小2乗法の数値解析により、その試験配線のTCR値を算出する。
【0026】
このことにより、試験配線を有するウェハー試料を高温状態へ置くことなく短時間に、該試験配線自体のTCR値を算出できる。また、耐エレクトロマイグレーション性の評価対象である試験配線自体のTCR値を、該試験配線を劣化させずに算出できる。また、温度制御装置を使用しないので、TCR値を求めるための試験を簡便に実施できる。
【0027】
【発明の効果】
本発明によれば、金属配線のうちN本(NはN≧3なる整数)の試験配線から、同一の試験環境において並行して行なった試験により得られたデータの組合せに基づいて、金属配線の加速係数A、電流密度係数n、及び活性化エネルギーEaを短時間、かつ精度よく算出できるので、金属配線の耐エレクトロマイグレーション性を短時間、かつ高精度に評価できる。また、N個の連立方程式を求解することにより、多数のデータに基づき同一仕様よりなる金属配線の耐エレクトロマイグレーション性を高精度に評価できる。また、温度制御装置を使用せず、算出された配線温度を使用して評価するので、該配線温度に基づいて耐エレクトロマイグレーション性を高精度、かつ、簡便に評価できる。
【0028】
更に、本発明によれば、試験配線へ複数の電流値を有する定電流を順次供給し、それぞれの印加電流密度に対応する配線抵抗値を順次測定し、非線形最小2乗法の数値解析によりその試験配線のTCR値を算出する。したがって、試験配線を有するウェハー試料を高温状態へ置かないので該ウェハー試料を劣化させず、かつ短時間に、該試験配線のTCR値を算出できる。また、耐エレクトロマイグレーション性の評価対象である試験配線自体のTCR値を、該試験配線を劣化させず、かつ高精度に評価できる。また、温度制御装置を使用しないので、TCR値を求めるための試験を簡便に実施できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る金属配線の評価装置の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第2の実施形態に係る金属配線の評価装置の構成を示すブロック図である。
【図3】金属配線における印加電流密度と配線抵抗値との関係を示す説明図である。
【図4】従来の、耐エレクトロマイグレーション性を評価する金属配線の評価方法のフローチャート図である。
【符号の説明】
11 入力手段
12 試験手段
13 方程式作成手段
14 求解手段
15 算出及び出力手段
21 測定機器(測定手段)
22 コンピュータ(算出手段)
23 出力機器(出力手段)
Claims (2)
- 集積回路における金属配線が各々有する初期配線抵抗値に基づいて、前記金属配線が各々有する抵抗温度係数を評価する評価方法であって、
前記金属配線のうちの少なくとも1本よりなる試験配線に対して複数の電流値を有する定電流を順次供給し、該複数の電流値に応じて前記試験配線が有する配線抵抗値を順次測定する工程と、
前記複数の電流値に基づく印加電流密度及び配線抵抗値からなる複数の組合せと、前記初期配線抵抗値とを予め定められた関係式へ入力し、かつ数値解析によって前記試験配線が有する抵抗温度係数を算出する工程と、
前記算出された抵抗温度係数を出力する工程とを備えたことを特徴とする金属配線の評価方法。 - 集積回路における金属配線が各々有する初期配線抵抗値に基づいて、前記金属配線が各々有する抵抗温度係数を評価するための評価装置であって、
前記金属配線のうちの少なくとも1本よりなる試験配線に対して複数の電流値を有する定電流を順次供給し、該複数の電流値に応じて前記試験配線が有する配線抵抗値を順次測定するための測定手段と、
前記複数の電流値に基づく印加電流密度及び配線抵抗値からなる複数の組合せと、前記初期配線抵抗値とを予め定められた関係式へ入力し、かつ数値解析によって前記試験配線が有する抵抗温度係数を算出するための算出手段と、
前記算出された抵抗温度係数を出力するための出力手段とを備えたことを特徴とする金属配線の評価装置。
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