JP3628790B2 - チャネル上での情報伝達のための方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、情報伝達のための方法に関し、詳細には、受信した情報信号と非同期のクロックを用いたサンプリングによって得られたサンプルから、受信情報を再構成するための方法に関する。本発明は、特にVCR、コンピュータ周辺装置、及び特殊な専門用レコーダのための磁気記録の読取りに適用可能である。
【0002】
さらに詳細には、本発明は、最高確度シーケンス推定(MLSE)を適用することによってこの受信を行う。このMLSEはA ・J・Viterbi他の報文「Principles of Digital Communications and Coding 」(McGraw−Hill, 1979 年)に記載のビタビ・アルゴリズムを使用する。MLSEアルゴリズム自体は、G ・David Forney の論文「Maximum Likelihood Sequence Estimation of Digital Sequences in the Presence of Intersymbol Interferences」(IEEE Transactions on Information Theory 、IT−18巻、第3号、363−378 ページ、1972年5月)に記載されている。
【0003】
【従来の技術】
このアルゴリズムには、サンプリングされた信号はデータ信号の周波数fと同じ周波数fでデータと同期して処理する必要があるという制約がある。
【0004】
非同期システムの場合には、位相を修正するための等化の他に、「位相同期ループ(PLL)」補間を用いて前処理を実施する必要がある。これらの操作は、間引き(withdrawal)の場合は、換言すれば非常に低い周波数fについては良い結果をもたらさない。したがってfは、(ただしハードウェア導入上の理由で分数比として)>fとなるので、正しい周波数を得るためにはその後にデシメーションが必要である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
したがって本発明は、MLSEアルゴリズムの非同期受信への適用に関し、信号周波数f以外の周波数fでサンプリングされたデータの場合に及ぶ。これは、位相計算をデータ信号とサンプリング・クロックの間で実施しなければならないことを意味する。
【0006】
【課題を解決するための手段】
したがって本発明は、クロック信号を用いてサンプリングすることによってデータ信号を受信するためのシステムを含む情報伝達のための方法であって、クロック信号とデータ信号との間の位相シフトを計算するための手順を含み、ここで実施される演算は下記のグラディエント・アルゴリズムの式であり、
n+1 =t+p/q−αe(t)e’(t)
上式で、
n+1 : ランクn+1のサンプルについて計算すべき位相シフト信号、
: ランクnのサンプルについて事前に計算された位相シフト信号、
p/q: クロック周期とデータ周期の比、
α: 整合係数、
(t): 実サンプルとそのサンプルについて想定された理論値との間の誤差、
e’(t):tに関するe(t)の値の導関数であり、e(t )の値は次式で得られ、
【0007】
【数4】
Figure 0003628790
【0008】
上式で、
: データ信号の想定値、
h: チャネルからのパルス応答であり、e’(t)の値は、次式で得られ、
【0009】
【数5】
Figure 0003628790
【0010】
上式でh’は、時間に対するチャネル・パルス応答の導関数である方法に関する。
【0011】
この位相推定アルゴリズムは、h’(t)を使用する点で新規である。
【0012】
本発明の種々の目的と特徴は、下記の説明と添付の図面によってさらに明確に理解できよう。
【0013】
【発明の実施の形態】
図1に通信システムを概略的に図示する。
【0014】
チャネルx入力は、記号周期T=1/fに等しい間隔でディラック法によってモデル化される。これらの入力は、いくつかの値、例えば2進数の場合、+1と−1を無作為に、おそらくはコード化を伴って取る。
【0015】
チャネルは、連続パルス応答h(t)を有する。ノイズがその出力部で付加される。したがって周期は次のようにサンプリングされる。
【0016】
1/f=T=p/qT(p/q≦1)
サンプリングされた信号yは先験的に未知である任意の位相tを有し、次式で推定される。
【0017】
【数6】
Figure 0003628790
【0018】
したがって、
−0.5≦t/T<0.5
同期の場合、t=0
ビタビ・アルゴリズムの利点は、チャネル入力シーケンスの仮定を提案することである。したがって、古典的な一般式を有するグラディエントのためのアルゴリズムを下記の誤差平方関数に適用することによって、ビタビ・アルゴリズムを使用する。
【0019】
n|n =t n|n−1 −αdE n|n−1
上式で、
− αは係数であり、
n|n−1 は、最後に受け取ったサンプルがyn−1であるときに、サンプルyデータにおける位相推定値、
n|n は、yを最終的に受け取った後の、この位相の推定値であり、Eは誤差の平方である。すなわち
n|n−1 )= n|n−1
かつ、
【0020】
【数7】
Figure 0003628790
【0021】
上式で、
はxの想定値である。
【0022】
この概念は、導関数を知ることができるので、例えばLMS(平均最小二乗)の場合のように近似値を求めるのではなくて、導関数の正確な式を取ることである。すなわち
【0023】
【数8】
Figure 0003628790
【0024】
チャネルの導関数h’(t)を、(ディジタル化された形で利用可能な)h (t)の関数として見つける方法はいくつかある。微分を行うことができ、あるいはFFT(高速フーリエ変換)またはその他何らかのディジタル法を使用することができる。この作業は復号を行う前に一回だけ実施される。推定装置中で新しいサンプルyn+1 を統合するときには、次のようにfとfに固有の位相スキップを加えなければならない。
【0025】
n+1|n =t n|n +p/q(tn+1として示される)
t=0.5を超えるとすぐ、これから1が差し引かれ、推定すべきサンプルxの添字kが1だけ増分される(逆に、t<−0.5の場合には、1サンプルだけ戻るが、実際にはこれが発生することは稀である)。この結果、次式が得られる。
【0026】
Figure 0003628790
例えば、hとh’をその最大値1に正規化する場合、信号雑音比が約20dBのとき、αが0.1と0.2の間の場合にシミュレーションは非常に良好な収れんをもたらす。
【0027】
したがって演算(2)を適用すると、信号サンプルの位相が求められる。
【0028】
まず最初に仮定ブランチという用語を定義する。
【0029】
ビタビ・アルゴリズムは、N個の状態x(1)、x(2)・・・x(N)を有する格子を操作する。例えば、2進システムが使用されており、かつサポート・サイズ2Tの外側のチャネル応答部分が無視できる場合には、N=2である。各時間ステップkにおいて、所与の数の入力信号に関する(この例では孤立ビットxに関する)仮定を形成する各状態x(j)について、残存状態と呼ばれる前の可能な状態x(j’)の探索が行われる。これは、ステップ(k−1,k)に関する許容されるすべての対(x(i)、x(j))(例ではすべてのxk− /x対)を探査することによって決定される。これらの探査すべき対を「仮定ブランチ」と呼ぶことにする。言い換えれば、これらは経路の一部を表す。
【0030】
ビタビ・アルゴリズムにおいて、各仮定ブランチごとに復号すべき信号のサンプルyが利用可能であり、かつ距離を計算するために使用されることが公知である。格子のN個の状態の各々に対応するN個の距離m(1)・・・m(N)がメモリに保持されなければならない。ここで、N個の位相推定値t(1)・・t(N)の各々をもメモリに保持することによって位相探索の概念を導入する。考慮する仮定ブランチに関する次のサンプルに進む必要があったので、1から差し引く前に上記の位相にこれらの値を割り当てることにする。したがって、xの可能な各状態x(i)(i=1...N)において、残存状態と新しい距離と位相推定とを更新する。
【0031】
例えば図3aでは、サンプルk−3からサンプルkまでが受信される。各サンプルごとに二つの状態がある。各サンプルの各状態に通ずる距離の計算は、サンプルkのための二つの可能な経路を与える。次に、サンプルk+1が受信されると、このサンプルk+1の状態0と先行サンプルkの状態0及び状態1との間の距離m0.0及びm0.1が計算される(図3b)。最低距離、例えば距離m0.0が選択される。サンプルk+1の状態と先行サンプルkの状態0及び状態1との間の距離m1.0及びm1.1も計算される。例えば、最短距離はm0.1であると判明する。したがってこの例では、図3cを見るとわかるように、距離m0.0及びm0.1を選択する。この手順では、サンプルkの状態1に通ずる経路セグメントを排除することができる。
【0032】
従来のビタビ・アルゴリズムにはない、新しい現象は、ある仮定ブランチのために、唯一つのサンプルではなく(特にp/qが1でない場合には)yのいくつかのサンプルを必要とする場合もあることである。これらの数は推定された位相の変化によって変化し、したがってこれは状態x(i)の関数として変化する。第1の帰結は、各状態によってyの最後の添字の値n(1)・・・n(N)をメモリに保存しなければならないことである。第2の帰結は、(位相はyの各サンプルについて再推定されるので、)いくつかの距離値を距離の計算のために使用できることである。この概念は下記形式の距離を使用することである。
【0033】
【数9】
Figure 0003628790
【0034】
上式で、nは仮定ブランチに対応するyのサンプルの添字全体を走査する。
【0035】
位相が+0.5または−0.5に近いyのサンプルは、チャネル応答の振幅が原因で、したがってサンプルの位置におけるサンプルの信号雑音比が原因で(または逆に、選択された原点に応じて)、位相が0に近いブランチよりも少ない情報を搬送する。したがって、誤り比を改善するためにこの距離に重みがつけられる。さらに重みの合計は、異なったサンプル数を有する二つの仮定ブランチ間の距離の不均衡を避けるために常に同じでなければならない(例えば1を選択してもよい)。次に距離は下記の形で表される。
【0036】
【数10】
Figure 0003628790
【0037】
上式で、p(t)の値は位相tに割り当てられた重みを指す。例えば均一の重み付け、換言すればtのすべての値についてp(t)=1を取ることもできる。
【0038】
ビタビ・アルゴリズムが適用される本発明による手順はまた下記のように要約することができる。
【0039】
各時間ステップkにおいて、次の情報が利用可能である。
【0040】
− 状態x(1)、x(2)・・・x(N)
− それぞれ、一つの距離m(1)、m(2)・・・m(N)を有し、
− また一つの位相t(1)、t(2)・・・t(N)を有し、
− また一つの対応するyの添字n(1)、n(2)・・・n(N)を有する。
【0041】
この情報は残存状態を選択した後に残る(図2を参照のこと)。
【0042】
すべての完全な残存経路は、従来のビタビ・アルゴリズムにおけるのと同様に所与のランクk−Pまで記憶され、Pを深さと呼ぶ。初期設定ではk<Pの場合、yの新しいサンプルは、復号器中で統合され、さらに復号された状態Zを供給することはない。
【0043】
図4は、簡略化された本発明による復号の流れ図を示す。ここでサンプリング頻度は復号すべき信号の周波数に等しいと仮定する。
【0044】
処理すべき所定のサンプルkについて下記の値がメモリに記憶されていると仮定する。すなわち
− 前ステップ(サンプル)k−1における、すべての状態iについての距離mk−1 (i)及び位相tk−1 (i)。
【0045】
このサンプルx、第1状態j、及びこの第1状態jに通じる第1経路iについて、位相計算と距離計算が次式を適用して行われる(ベクトル表記による)。
【0046】
=X(i,j)・(tk−1(i))−y
e’=X(i,j)・h’(tk−1(i))
位相:t’(i)=tk−1(i)+1−αee’
距離:m’(i)=
この演算が各経路iごとにループされる。
【0047】
状態jに通ずるすべての経路iを計算し終わると、最低距離を有する経路の位相と距離が記憶保持される。
【0048】
次に、各状態jについてこの演算をループする。
【0049】
すべての状態jと種々の経路iを計算し終わると、各状態についての距離と位相がメモリ内で得られる。
【0050】
これで、システムは次のサンプルを処理する準備ができている。
【0051】
図5は、本発明による詳細な手順の一例の流れ図を示す。
【0052】
この流れ図は、図4における流れ図に示されているループ(A)及びループ(B)を含む。
【0053】
ループ(A)は、サンプリング頻度が信号周波数を超える場合に対応するいくつかの追加位相を含むことがわかる。
【0054】
図5の流れ図では、h(t)とh’(t)によるフィルタリングを表すために使用されるベクトル表記に留意されたい。x(i,j)で示されるベクトルは、状態x(i)とx(j)の連結であり(したがって原則として、x(j)の前に記号がついたものに対応し)、x(i,j)の次元はサンプリングされた応答h(t)における有意サンプルの数に等しい。Pは式(3)における分母を表す。
【0055】
この流れ図によれば、
− 見つけるべき各チャネル入力構成xについて、状態と呼ばれるN個の可能性x(j)があり、これらの各々は経路によって前入力xk−1 に対応する(多くて)N個の状態x(i)に結合されている。
【0056】
− 各現在状態x(j)、各先行状態x(i)、及びチャネル出力における各サンプルyについて、時間の添字nが考慮する状態x(i)とx(j)についてxk−1 をxに結合する経路に対応する場合には、位相t及び経路長を特徴づける距離の項が計算される。
【0057】
すべての先行状態x(i)及び考慮すべきすべてのサンプルyをこの方法で処理し終わると、ただ一つの先行状態x(i)がメモリに保持され、残存状態と呼ばれ、これがその先行距離項とちょうど計算が終わった距離の項との合計を最小にするように選択される。この合計は現在状態x(j)の新しい距離となり、これもまた対応する位相及び添字nの最終値と共に記憶されることになる。
【0058】
− 残存状態の選択により、手順中に蓋然性の高い経路を選択し他のものを除去して、唯一つのものが残り、それが復号された入力を提供するようにすることが可能になる。前の演算が、入力k+1と対応する新しいサンプルy(nは予見される状態x(j)に依存する)について再開される。したがって、この残存状態の選択は、前に記憶された経路が放棄されることを意味することができる。後退方向に作業することによって可能な経路の数が減少し、やがて唯一つの経路になることがわかる。この単一の経路は、最高確度の原理を使用する復号されたシーケンスである。
【0059】
したがって本発明は、まず第1に、サンプリングされたクロックに対する伝達されたデータの位相を決定する方法を提唱し、第2に、ビタビ・アルゴリズムの拡張を形成する。
【0060】
ビタビ・アルゴリズムと同じ方法で構築された復号格子における各ブランチについて、チャネル・パルス応答の導関数を使用するグラディエント法を用いて帰納的に位相を決定する。次にこの情報を、距離を計算するために使用されるチャネルのモデル中で統合される。距離の計算が終わると、手順は従来のビタビ・アルゴリズムの場合と同様である。
【0061】
本発明による手順によって計算された位相情報は、ビタビ・アルゴリズムを使用して得られた距離と同様な方法で、格子のすべての状態について保持できることに留意されたい。位相とは異なり、チャネルのパルス応答は事前に知られていると仮定する。
【0062】
本発明は次の利点を有する。
【0063】
− 間引きにもかかわらず非常に低い周波数で、または記号周波数自体でサンプリングされた信号に対して作業が可能である。
【0064】
− 等化を省略した磁気記録でビタビ復号が使用されるときに通常提唱されるものとは異なり、特定の部分応答をチャネルに与えることなくチャネルを使用すること。特に、(この場合にはうまく働かない簡単なビタビ復号器とは異なり)ナイキスト・チャネルを使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】通信システムのブロック図である。
【図2】復号格子の一例を示す図である。
【図3】ビタビ・アルゴリズムの簡略化された操作の一例を示す図である。
【図4】本発明によるMLSEアルゴリズムを適用する簡略化された復号流れ図である。
【図5】本発明によるMLSEアルゴリズムを適用するより詳細な復号流れ図である。

Claims (6)

  1. クロック信号を用いてサンプリングすることによってデータ信号を受信するためのシステムを含む情報伝達のための方法であって、クロック信号とデータ信号との間の位相シフトを計算するための手順を含み、実施される演算が下記のグラディエント・アルゴリズムの式であり、
    n+1=t+p/q−αe(t)e’ n
    上式で、
    n+1 : ランクn+1のデータ信号について計算すべき位相シフト信号、
    : ランクnのデータ信号について事前に計算した位相シフト信号、
    p/q: クロック周期とデータ周期の比、
    α: 整合係数、
    (t): 実サンプルとそのサンプルについて想定された理論値との間の誤差、
    e’(t):tに関するe(t)の値の導関数
    であり、e(t)の値は次式で与えられ、
    Figure 0003628790
    上式で、
    : データ信号の理論値、
    h: チャネルからのパルス応答
    : サンプル
    : クロック周期
    : データ周期
    であり、e’(t)の値は次式で与えられ
    Figure 0003628790
    上式で、h’は、時間に対するチャネル・パルス応答の導関数である情報伝達のための方法。
  2. − 見つけるべき各チャネル入力構成xについて、状態と呼ばれるN個の可能性x(j)があり、これらがそれぞれ経路によって前入力xk−1に対応する(最多で)N個の状態x(i)に結合されており、
    − 各現在状態x(j)について、各先行状態x(i)について、かつチャネル出力における各サンプルyについて、時間の添字nが、考慮する状態x(i)及びx(j)に関して、xk−1をxに結合する経路に対応する場合には、位相t及び経路長を特徴づける距離の項が計算され、すべての先行状態x(i)及び考慮に入れるべきすべてのサンプルyをこの方法で処理し終わったとき、ただ一つの先行状態x(i)がメモリに保持され、残存状態(サーバイバ)と呼ばれ、これがその先行距離項とちょうど計算が終わった距離項との合計を最小にするように選択され、この合計が現在状態x(j)の新しい距離となり、これもまた対応する位相及び添字nの最終値と共に記憶され、
    − 残存状態の選択により、手順中に蓋然性の高い経路を選択し、他のものを除去して、唯一つの経路が残り、それが復号された入力を提供するようにすることが可能になる、請求項1に記載の方法。
  3. 最高確度シーケンス推定(MLSE)アルゴリズムを使用する復号手順に適用され、位相シフト計算が最高確度シーケンス推定(MLSE)における距離計算と同時に実施されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
  4. 一つの状態を先行状態に結合する経路の距離が、次式を実行することによって得られ、
    Figure 0003628790
    上式で、p(t)は位相(t)に割り当てられた重みであり、
    次いで、推定された各位相と各状態の各距離とが記憶され、この手順が各データ・サンプルごとに実施される、請求項2に記載の方法。
  5. 位相tn+1がしきい値を超えるまで、いくつかのサンプルについて計算手順が実施される請求項4に記載の方法。
  6. しきい値が0.5であることを特徴とする、請求項に記載の方法。
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