JP3628257B2 - 複合装甲パネル - Google Patents
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Description
(技術分野)
本発明は、複合装甲パネルに関する。特に、本発明は、ユーザが被服できるような軽量の被弾保護を提供する装甲パネル、および軽量級や重量級の移動機器や車両を、高速の装甲貫創可能な発射弾や破片から保護する装甲パネルに関する。本発明は、パネルの製造方法をも含むものである。
【0002】
(背景技術)
保護装甲パネルには、4つの重要な懸案要素がある。第1の懸案要素は、重量である。戦車や大型船舶などの重量級でかつ移動式の軍用機器のための保護装甲体が、周知である。そのような装甲体は、一般的に、重量のある爆発的な発射弾からの保護を提供するよう意図された厚層状の特殊鋼から成る。しかしながら、重量級の機器であっても、車両の構成部材への応力を低くするために、装甲の重量を軽減することは効果的である。さらに、そのような装甲は、鋼鉄は1mmにつき7.8kg/m2の重量要素が加わるため、数mm以上の厚さの鋼鉄板によってその性能が左右されるので、自動車、ジープ、軽量ボート、航空機などの軽量車両には不適当である。
【0003】
軽量車両の装甲は、毎秒700から1000メートルの範囲の速度で衝突しても、どのような形式の弾丸の貫創から保護できなければならない。しかしながら、重量制約のため、そのような発射弾に耐えうる標準装甲の重量では、車両の移動性や性能が損なわれるので、12.7mmおよび14.5mmなどの大口径の装甲貫創発射弾から軽量車両を保護することは困難である。
【0004】
第2の懸案要素は、コストである。特に合成繊維に全部が依存するような非常に複雑な装甲構成では、車両の全コストに対してかなりの部分を占めることになり、製造者の利益がなくなる。
【0005】
第3の懸案要素は、装甲設計におけるコンパクト性である。複数層間の空気の隙間を含む厚い装甲パネルでは、車両の目標サイズが増えてしまう。内側装甲を外装した市販車改造装甲自動車の場合、保護すべきほとんどの外側面において厚いパネルの配備余地などない。
【0006】
第4の懸案要素は、岩石や転倒などにより起こる機械的衝撃からの損傷を受けやすいセラミック製のプレートが個人装甲や軽量車両装甲に使われていることである。
【0007】
最新の装甲システムの事例が、アルミニウムの開放ハニカム構造から成る支持プレートを備えた装甲プレート複合体を開示している米国特許第4、836、084号や、衝撃吸収層を備えた耐砲弾複合装甲を開示している米国特許第4、868、040号に記載されている。また、米国特許第4、529、640号には、六角形のハニカム構造のコア部材を備えた空間装甲が開示されている。
【0008】
その他の装甲プレートパネルも、英国特許第1、081、464号、第1、352、418号、第2、272、272号、米国特許第4、061、815号などに開示されており、焼結耐火材やセラミック材の利用が記載されている。
【0009】
セラミック材は、結晶質構造つまりガラス質構造をもつ非金属の無機固体であって、耐熱、耐磨耗、耐圧、高剛性、鉄鋼より軽い重量を含む多くの有益な物理的特性および卓越した化学安定性をもっている。そのような特性は、長きにわたって装甲設計者の注目を集めてきており、今や、個人防御のための3mm厚から重量級軍用車両のための50mm厚の範囲のセラミック製プレートが、そのような目的のため市販されている。
【0010】
セラミック材の引張強度、弾性強度、耐破壊靱性の弱さを改善するための多くの研究が費やされてきたが、衝突する発射弾の衝撃に対する破壊および/または破砕などの、セラミックプレートやその他の大型部材での利用における主要な欠点がいまだ存在している。
【0011】
軽量で柔軟性のある被服装甲具も、銃器からの発射弾やその破片に対する個人防御のため何十年にもわたって利用されてきた。そのような形式の装甲具の例が、米国特許第4、090、005号に記載されている。その被服は、例えば、数百メートルの距離から発射された低エネルギーの発射弾に対しては一定の効果があるが、至近距離からの高速の発射弾に対する被服者の保護は無理であり、特に、装甲貫創可能な発射弾に対しては全く防御できない。そのような防御を可能にしても、被服装甲具の重量および/またはコストが上がって使用が躊躇されることになる。さらに、そのような装甲被服の周知の問題として、発射弾を停止させたとしても、衝撃が人体のわずかな場所に集中し、弾丸のエネルギーを吸収する必要があるため、被服のへこみによる人体への損傷という結果となる。
【0012】
従来のセラミック製装甲に共通する問題として、停止しようが貫創しようが、第1番目の発射弾による装甲構造へのダメージがある。そのダメージにより装甲パネルが弱められるため、第1弾の数センチ以内に着弾する続く発射弾の貫創を許すことになる。
【0013】
(発明の開示)
それゆえ、本発明の目的は、従来のセラミック製装甲の欠点を解消し、第1の実施例のように、小口径の銃器の発射弾に対して効果的であり、かつ、約9lbs/ft2に等価である45kg/m2を越えない重量程度の軽量性をもつ嵩の低い装甲パネルを提供することにある。
【0014】
本発明の別の目的は、通常の小口径の銃器の発射弾はもとより、5.56mmから30mmまでの全範囲の装甲貫創発射弾に対して効果的であり、かつ、例えば、25mmから30mmの口径の発射弾に対応した本発明の重量級装甲においても、185kg/m2を越えない重量程度の軽量性をもつ装甲パネルを提供することにある。
【0015】
本発明のさらなる目的は、パネルの同じ区域に着弾する複数の装甲貫創発射弾を停止させるのに特に効果的な装甲パネルを提供することにある。
【0016】
上記の目的を達成するためには、ペレットが複数の隣接列に接合できるよう、固化材によりパネルに直接に接合され固定された、単一の内側層状の高密度セラミックペレットから成り、前記ペレットはAl203を少なくとも93%内包し比重が少なくとも2.5であって、大部分のペレットのそれぞれが、少なくとも3mm長の少なくとも1本の軸をもち、前記固化材により隣接列の単一内側層形状に接合されており、かつ、それぞれのペレットが少なくとも4個の隣接ペレットと接合しており、前記固化材とプレートとが弾性をもつことを特徴とする、高速の装甲貫創可能な発射弾から運動エネルギーを吸収し散逸させる複合装甲プレートを提供する。
【0017】
本発明の好ましい実施例では、前述のように説明した複合装甲プレートを提供し、前記大部分のペレットのそれぞれが、長さがおよそ6〜19mmの範囲の少なくとも1本の軸をもち、前記固化材により隣接列の単一内側層に接合されており、かつ、前記大部分のペレットのそれぞれが、少なくとも4個の隣接ペレットに直接に接触しており、前記プレートの全重量が45kg/m2を越えない。
【0018】
本発明のさらなる好ましい実施例では、前述のように説明した複合装甲プレートを提供し、前記大部分のペレットのそれぞれが、長さがおよそ20から40mmの範囲の少なくとも1本の軸をもち、前記プレートの重量が185kg/m2を越えない。
【0019】
本発明のさらなる好ましい実施例では、前記大部分のペレットのそれぞれが、少なくとも6個の隣接ペレットに直接に接触している。
【0020】
前記固化材は、アルミニウム、エポキシ、熱可塑性重合体、熱硬化性プラスチックなどの、使われる厚さに硬化したときに弾性を保持できる適切な素材であって、プレートの曲率を、破損することなく、本体表面を含む保護すべき曲面に整合させることができ、同時に、衝突する発射弾へのプレートの弾性反応作用が、衝突点での隣接ペレット間での接触力を増加させることができる。
【0021】
フランス国特許第2、711、782号には、セラミック材で補強された鋼鉄製パネルが記載されているが、パネルの鋼鉄に弾性がなく剛性であるため、その厚さのためパネルに不必要な重量を追加するような厚さが8〜9mm程度の鋼鉄を使用しないかぎり、パネルは装甲貫創発射弾を偏向させる能力をもたない。
【0022】
本発明の好ましい実施例で利用する素材の弾性は、一定の範囲で、発射弾が同時に複数のペレットに衝突する確率を増加させる作用をするので、本発明のパネルの停止能力の効率を上げることができる。
【0023】
本発明のさらにまた別の好ましい実施例では、高速の装甲貫創可能な発射弾を変形させ破砕させるための、前述のように説明した複合装甲プレートの外側衝撃受容パネルと、その破片から残留運動エネルギーを吸収する弾性材製の第2パネルで構成された、前記外側パネルに隣接した内側パネルとから成る多層装甲パネルを提供する。前記弾性材は、コストや重量の観点から選定して、アルミニウムや編込テキスタイル材などの適切な素材で作成できる。
【0024】
本発明のさらにまた別の好ましい実施例では、高速の装甲貫創可能な発射弾を変形させ破砕させるための、前述のように説明した複合装甲プレートの外側衝撃受容パネルと、前記発射弾の残留破片を非対称変形させ、その破片から残留運動エネルギーを吸収する靱性のある編込テキスタイルの第2パネルから成る、前記外側パネルに隣接した内側層とから成り、前記多層装甲パネルが、連続して発射された3つの発射弾をそのパネルの三角形区域で止めれるよう構成されており、前記三角形区域の高さが前記ペレットの軸長のほぼ3倍であることを特徴とする多層装甲パネルを提供する。
【0025】
米国特許第5、361、678号などに記述されているように、アルミニウム合金マトリクス構造中に分布された球形のセラミック製ボールを含む複合装甲プレートは、従来技術で周知である。しかしながら、そのような従来の複合装甲プレートは、1つまたはそれ以上の重大な欠点をもっており、製造が困難になり、金属製発射弾を偏向させる目的には全く適していない。つまり、前記特許に記載された装甲プレートでは、セラミック製ボールがセラミック粒子を含む結合剤で被膜されており、被膜の厚さが0.76と1.5の範囲であり、プレートの製造の際、溶解マトリクス材を注入するときの熱衝撃によるダメージからセラミック製のコア部を保護支援できるようになっている。しかしながら、被膜により、ボールの硬いセラミック製コア部が分離してしまい、弾丸またはその他の発射弾からの衝撃に対してボール間で伝播すなわち分配されるエネルギーのモーメントを低下させる作用をする。このため、かつ被膜の素材がセラミック製のコア部の素材よりも内在的な堅固性が劣るため、前記特許に記載されたプレートの停止能力は、重量は同じでも、硬いセラミック製のペレットが隣接ペレットと直接に接触しているような本発明によるプレートほど良いとはいえない。
【0026】
McDougalらの米国特許第3、705、558号には、セラミック製ボールの層を含む軽量装甲プレートが開示されている。セラミック製ボールは、互いに接触しているが、溶解金属の注入のための小さな隙間を残している。その1つの実施例では、セラミック製ボールがステンレス鋼製網スクリーン内に収容されており、別の実施例では、ポリ硫化物接着剤でニッケル被膜のアルミナ球形体をアルミニウム合金プレートに接着することにより、複合装甲が製造されている。
【0027】
McDougalらの特許に記載された複合装甲プレートは、セラミック製球形体が、溶解金属との接触から発生する熱衝撃により損傷を受けるため、製造が困難である。また、セラミック製球形体は、球形体間の相互隙間に溶解金属を注型中に移動してしまう場合がある。
【0028】
そのような移動を最小限にするため、Huetの米国特許第4、534、266号と第4、945、814号は、溶解金属の注型中にセラミック挿入体を収容するための網状の相互リンク金属シェルを提示している。金属が固化した後、金属シェルは複合装甲になる。しかしながら、そのような網状の相互リンク金属シェルは、装甲パネルの総重量を増加させ、その停止能力を低下させる。
【0029】
また、McDougalによると、アレー状のセラミック製ボールをピラミッド形態にて接触するよう配置させており、その構成のせいで、装甲パネルの総重量が増加し、衝突時の玉突き現象により停止能力も低下することにも注意してほしい。
【0030】
米国特許第3、523、057号と第5、134、725号にも、セラミック製ボールから成る装甲パネルが記述されているが、パネルに弾性があり、衝突の力自体がパネルに弾性を発生させ、衝突されたセラミック製ボールに隣接するセラミック製ボールの支持効果を低下させるため、その弾性により衝突時の停止強さが低下してしまう。さらに、米国特許第5、134、725号の教示では、少なくとも2つの重畳層状に形成された複数のガラス材またはセラミック材の構成本体をもつ装甲プレートに制限されており、その構成は、McDougalの特許(第3、705、558号)に表示されているのと同じである。さらに、その特許の図3と図4に図示されているように、第1層のペレットは同じ層のペレットには接触しておらず、隣接する層のペレットにだけ接触している。
【0031】
それから明らかなように、従来例の発明のいずれもが、下記で説明するような、ペレットで構成されるパネルが比較的に軽量であるにも関わらず、装甲貫創可能な14.5mm口径の発射弾の貫創を阻止するという、互いに接触しているセラミック製ペレットの単一層の驚くべき予期しない停止能力について教示も指摘もされていない。
【0032】
それゆえ、本発明の新規の装甲は、互いに堅固に突き合わせ状態で単一層内に保持された硬いセラミック製ペレット間の衝突する発射弾を補足することができる。ペレットが比較的適当なサイズであるため、第1番目の発射弾により起こるダメージが局所的となり、セラミック製ペレットの場合のように隣接区域に拡がらない。
【0033】
本発明による新規のアプローチの長所は、例えば、個人防御のためや、5.56mm、7.62mm、9mm口径の発射弾の攻撃に対処するためには小さなサイズのペレットを使い、14.5mm、25mm、あるいは、30mm口径の装甲貫創可能な発射弾による攻撃に対処するために大きなサイズのペレットを使うなど、異なる攻撃に対処できるよう設計された異なるパネルの製造が可能になることである。
【0034】
それゆえ、本発明によるパネルにおいて利用するには、直径が9.5mmで高さが9.5mmと11.6mmの間の筒状ペレット、および、直径が12.7mmで高さが9.5mmと11.6mmの間の筒状ペレットが、5.56mmから9mmまでの発射弾に対処するのにより適していることが判明した。
【0035】
同様に、下記で説明するように、直径が19mmで高さが22mmと26mmの間の筒状ペレットが、14.5mm口径の装甲貫創可能な発射弾に対処するのにより好適であった。
【0036】
さらに重量級装甲車両用としては、本発明による多層装甲パネルで使えば、直径が38mmで高さが32mmと45mmの間のペレットが、20mm、25mm、さらに30mm口径もの発射弾に対処するのにより適していることが判明した。
【0037】
前記アレー状ペレットに衝突する発射弾は、次のような3つのうちの1つの状態にある。
【0038】
1.中央衝突
この衝突では、ペレットの全容積が発射弾を停止させるのに関与するため、エネルギー集中動作でペレット全体を破砕しないかぎり貫創できない。使われるペレットは、球形か、断面が六角形の準球形のいずれかで、堅固なマトリクス状に保持される場合、その形状のほうが、長方形よりも破砕に対する抵抗性の点でわずかに良好であることが判明した。
【0039】
2.側面衝突
この衝突では、発射弾が片側へ反れるため、発射弾の先端だけでなく前面の大きな部分に接触するので、発射弾を停止させるのが容易になる。発射弾は側面に反れて、貫創するにはより大きな孔が必要となるため、装甲により発射弾のエネルギーが吸収できる。
【0040】
3.谷間衝突
発射弾は、普通は3個のペレットの側面の中間で、それら全部が停止に関与するため、補足されてしまう。ペレットにかかる高圧側力は、固体マトリクス内に保持された隣接するペレットの抵抗を受けるため、貫創を防ぐことができる14.5mm口径のB−32発射弾を使ったこの衝突モードのためのテストでは、そのような結果が実際に得られることが原則確認できた。
【0041】
本発明の研究開発の最中に、プレート状複合注型の用意が必要となり、中央層にセラミック製ペレットを詰めて、ペレットをアルミニウム充填により完全に埋め込んだ。その溶解金属を使ったとき、ペレットにより溶解金属が冷えてしまい、かつ、注型操作によりペレットの密な配列が乱れてしまった。前述したように、この問題はMcDougalの米国特許第3、705、558号で指摘されている。この問題を解決しようとする試みが、Huetの米国特許第4、534、266号と第4、945、814号で行われ、さらに、Roopchandらの米国特許第5、361、678号では、溶解金属を金型に注入する前に、結合剤とセラミック粒子でセラミック製本体を被膜する方法が提示されている。
【0042】
本発明のさらにまた別の目的は、最終パネルに不必要で余分な成分を加えることなく、本文に記載の複合装甲パネルを製造する方法を提供することである。
【0043】
本発明による、前述のように説明した複合装甲プレートを製造する方法は、その2つの主表面の間の距離が前記ペレットの高さの約1.1倍から1.4倍である、1つの底面、2つの主表面、2つの副側面、1つの開口上面をもつ金型を提供し、前記底面からほぼ開口上面まで、前記2つの副表面間のほぼ全距離に沿って延びた複数のペレットの重畳列を形成するため、前記金型に前記ペレットを挿入し、前記金型に注入される固化材の溶解点より高い少なくとも100℃の温度まで、前記金型とペレットを暫時加熱し、前記溶解固化材を前記金型に注入してその金型を充満させ、前記溶解固化材を固化させ、前記金型から複合装甲プレートを取り出す各工程を含む。
【0044】
さらにまた、本発明による、複合装甲プレートを製造する別の方法は、その2つの主表面の間の距離が前記ペレットの高さの約1.1倍から1.4倍である、1つの底面、2つの主表面、2つの副側面、1つの開口上面をもつ金型を提供し、前記底面からほぼ開口上面まで、前記2つの副側面間のほぼ全距離に沿って延びた複数のペレットの重畳列を形成するため、前記金型に前記ペレットを挿入し、液状エポキシ樹脂を前記金型に注入してその金型を充満させ、前記エポキシ樹脂を固化させ、前記金型から複合装甲プレートを取り出す各工程を含む。
【0045】
同様に、前記エポキシ樹脂は、流し込む代わりに、周知の方法により水平式金型内に配列されたペレット上に噴霧して注型しても構わない。
【0046】
理解されるように、本発明の複合装甲パネルを製造する際、ペレットの両側を完全に固化材で覆ってしまう必要はなく、形成されたパネルの外側表面に接触していても、あるいは、そこから膨らんでいても構わない。
【0047】
重量重視の装甲被服を含む本発明のさらなる実施例も、下記に説明している。
【0048】
本発明を以下に、より理解しやすいよう、下記の関連図面を参照にした好ましい実施例を使って詳細に説明する。
【0049】
詳細な図面参照による説明にあたって、説明の事項は、本発明の好ましい実施例の説明する目的や例として示すものであって、本発明の原則や概念の最も効果的で理解しやすい記述を提供することを意図するものであることを理解されたい。この点において、本発明の基本的理解に必要な事項以上のことを、本発明の構成を詳細に説明しようとする意図はなく、図面を伴った説明から、本発明のいくつもの形態が実際に実施できることは、当業者にとっては明白となるであろう。
【0050】
(発明を実施するための最良の形態)
図1には、高速の発射弾12から運動エネルギーを吸収して散逸させる複合装甲プレート10が図示されている。パネル14は固化材16で形成されており、高密度のセラミック製ペレット18の内側層をもつ。パネルの外側面は、固化材16で形成されており、ペレット18はそれに埋め込まれている。固化材16の特性は、装甲の利用目的に応じた重量、性能、経済性を考慮して選定する。
【0051】
陸上車両や海上船舶の装甲は、少なくとも80%のアルミニウムを内包する注型金属合金を使って適切に製造される。適切な合金には、引張力が35、000kg/in2(5,400Kg/cm2)で高く、かつ、伸び率が9%の延性が高い、アルミニウム工業会番号No.535.0がある。また、別の適当な合金として、シリコンを5%含んだB443.0種でもよい。それら合金は、薄い形状の注型が容易であるので、その機械加工性が悪くとも、本発明の適用例ではあまり関係ない。エポキシやその他のプラスチック剤やポリマー剤、特にファイバー補強されたものも同様に望ましい。
【0052】
ペレット18は、少なくとも93%のアルミナ(Al2O3)を内包し、モース硬度が9の堅さをもつ。大きさに関しては、大部分のペレットは、その長軸が3〜40mm程度の範囲であり、個人装甲具や軽量車両用としては、好ましくは6〜19mmであり、大口径装甲貫創発射弾から軽量式や重量式の移動機器や車両を保護するためには、20〜30mm程度であるのが好ましい。
【0053】
図1に示すパネルは、説明を目的として、少なくとも1つの凸状端面をもつ筒状ペレット18aと、平坦筒状ペレット18bと、球形ペレット18cの混成体である。対称性の観点において、本発明者が行ったテストから、最も効果的なペレット形状は、少なくとも1つの凸状端面をもつ筒状ペレット18aである。セラミック製ペレットは、典型的にはタンブリング研磨機などの様々な形式のサイズ減少用研磨器で研磨剤として使われているものであり、常識的な値段で市販されている。
【0054】
完成パネル14では、ペレット18は固化された溶解剤16により重畳列20の単一層状に接合されている。大部分のペレット18のそれぞれが、少なくとも4個の隣接ペレットに直接接合している。
【0055】
その作用において、パネル14は、前述したように3つのモード(中央衝突、側面衝突、谷間衝突)のうちの1つで飛んできた発射断12を止めるよう作用する。
【0056】
図2には、別の形状例のペレット18dが図示されており、1つの凸状面22をもつ規則的幾何学プリズム形状のペレットである。
【0057】
図3に示すのは、線A−Aにおける断面24が円形のペレット18eである。ペレットは、衛星形状であって、市販されている。
【0058】
図4は、多層式装甲パネル26を示す。以下の図面の説明において、同じ構成部品を示すのに同じ番号を使う。複合装甲材の外側衝撃パネル28も、上記の図1で説明したパネル14と構造が同じである。パネル28は、衝突する高速発射弾12を変形し破砕する作用をする。個人防御のための軽量装甲は、好ましくは、ポリカーボネート、アクリロニトリルブタジエンスチレン、エポシキなどの丈夫で硬い熱可塑性樹脂を使って作成される。
【0059】
内側パネル層30は、外側パネル28に隣接して、それに好適に接着されている。内側パネル30は、例えば、多層状の「Kevlar」(商標)や商品名が「Famaston」などの弾性材で形成されている。別の実施例として、内側層パネル30は、多層のポリアミド網体で構成できる。
【0060】
作用において、内側パネル30は、発射弾12の残留破片32の非対称変形を起こし、それら破片を図4に示す区域34内に偏向させて圧縮することにより破片の残留運動エネルギーを吸収する。ここで、区域34は、発射弾の断面積よりもずっと大きいため、内側パネル30の内側36にかかる圧力を削減することができることに注意してほしい。この要素は、個人防御装甲具では重要である。
【0061】
図5に図示されているのは、図1で説明した複合装甲材10を製造するのに使う成形金型38である。製造には、下記のような設定温度工程が、使用される。
【0062】
工程A
金型38は、1つの底面40、2つの主表面42、2つの副側面44、1つの開口上面46をもち、それら2つの主表面間の距離は、ペレット18の長軸の1.2倍から1.8倍である。例えば、8mmペレット利用の場合、主表面間の距離は10mmとなる。
【0063】
工程B
ペレット18を金型38に挿入して、底面40からほぼ開口上面46まで、副側面44間のほぼ全距離に沿って延びた複数のペレット18の重畳列20を形成する。
【0064】
工程C
金型38とそれに充填されたペレット18とを、最初は約100℃の温度まで暫時加熱し、さらに、金型38に注入される固化材の溶解点よりも高い、少なくとも100℃の温度に加熱する。例えば、アルミニウムの溶解点はほぼ540℃であって、内部にセラミック製ペレットが充填された金型をほぼ640℃まで加熱する必要がある。使う合金によって異なるが、850℃の温度までの金型の加熱が好適であることが判明した。
【0065】
工程D
アルミニウムC443.2ASTH B85やGBD−AlSi9Cu2などの溶解固化材16を、金型38に注入してそれを充満させる。アルミニウムの標準的な注入温度範囲は、830〜900℃である。ポリカーボネートの場合、250〜350℃である。好ましくは、溶解固化材16を注入するさいに空気の排出を容易にするため、金型38の表面に、複数の空気孔48を設けるのがよい。注入の際、溶解固化材により付加される静水圧や流体圧のせいでペレット18はわずかだが再配列される。
【0066】
工程E
溶解固化材16を、固化させる。
【0067】
工程F
複合装甲材10を、金型38から取り出す。
【0068】
下記の製造方法の別の実施例では、熱硬化性マトリクス構造を形成するのにエポキシ樹脂を使う。周知のように、エポキシ樹脂は室温で固化し、化学的に硬化するので、その硬化処理を加熱により加速させることも可能である。エポキシ樹脂の装甲は、航空機での利用も可能である。降伏強さやヤング率は、ファイバー補強によりどちらも改善できる。
【0069】
工程A
1つの底面40、2つの主表面42、2つの副側面44、1つの開口上面46をもち、それら2つの主表面42間の距離は、ペレット18の長軸の1.2倍から1.8倍である金型38を提供する。
【0070】
工程B
ペレット18を金型38に挿入して、底面40からほぼ開口上面46まで、副側面44間のほぼ全距離に沿って延びた複数のペレット18の重畳列20を形成する。
【0071】
工程C
液状エポキシ樹脂を、金型38に注入してそれを充満させる。
【0072】
工程D
液状エポキシ樹脂を、固化させる。
【0073】
工程E
複合装甲材を、金型38から取り出す。
【0074】
図6には、高速の発射弾から運動エネルギーを吸収して散逸させるための複合装甲プレート50を図示している。
【0075】
プレートには、エポキシなどの固化剤54によりパネル形状に接合し保持した複数の高密度セラミック本体52の単一内側層が備わっている。本体52は、複数の隣接列状に配列されており、プレートの端に沿ったペレット52’は4個の隣接するペレットに直接に接触しており、内側のペレット52”は6個の隣接するペレットに直接に接触している。ペレット52の長軸AAは、互いにほぼ平行に、プレート表面56に垂直に延びている。
【0076】
図7aと7bに示すのは、それぞれフランスのA.R.E.S.でテストされた、本発明による2つのプレート上の衝撃点間の距離のパターンと測定値である。
【0077】
各プレートのサイズは、25×30cmであって、少なくとも1つの凸状面をもつほぼ筒状形状の複数のペレットを内包し、ペレットの直径は約12.7mmで、凸状面を含むペレットの高さは約11mmであり、ペレットはエポキシ樹脂で複数の隣接列状に接合されており、図7aのプレートは、「Dyneema」(商標)製で12mm厚の内側バックアップ層を備えており、図7bのプレートは、「Dyneema」(商標)製で10mm厚の内側バックアップ層を備えている。1番目の多層装甲パネルの重量は38.6kg/m2で、2番目の多層装甲パネルの重量は33.6kg/m2である。
【0078】
第1パネルは、高低差のない13mの距離から、それぞれ831.1m/秒、845.7m/秒、885.8m/秒の増加速度で発射された連続した3発の7.62×51PPI発射弾で被弾したものである。
【0079】
3発の発射弾のいずれも、各辺がわずかに5cmの三角形の区域にあって、パネルを貫創していない。
【0080】
第2パネルには、高低差のない13mの距離から、それぞれ783.7m/秒、800.2m/秒、760.5m/秒、788.4m/秒の速度で連続に発射された4発の7.62×51PPI発射弾が着弾している。
【0081】
4発の発射弾のいずれもパネルを貫創しておらず、発射弾1から3は互いに3cm以内に着弾しており、発射弾4はパネルの側端から7cm以内に着弾して、損傷を与えていない。
【0082】
それらテストでは、本発明の複合装甲プレートの高い多衝撃特性が示されている。
【0083】
表1は、図4で説明したアルミニウムマトリクス構造の多層パネルに関するテスト結果のコピーであって、少なくとも1つの凸状面をもつほぼ筒状の複数のペレットを有し、各ペレットの直径は約9.5mmで、凸状面を含むペレットの高さも約9.5mmであり、ペレットはアルミニウムにより複数の隣接列状に接合されており、プレートは「Famaston」(商標)製の内側バックアップ層を備えている。多層装甲パネルの総重量は、34.3kg/m2である。個人被服装甲具としての限定利用できるほど軽量な多層装甲パネルに、AK−47攻撃ライフルから至近距離で3発の装甲貫創可能弾丸を発射した。その結果は、本発明に従って製造されたパネルの効果を証明するものであった。
【0084】
【表1】
表2は、プレートにおける被弾抵抗性に関するテスト結果のコピーであって、パネルは少なくとも1つの凸状面をもつほぼ筒状の複数のペレットを有し、各ペレットの直径は約19mmで、凸状面を含むペレットの高さは約23mmであり、ペレットはエポキシ樹脂により複数の隣接列状に接合されており、プレートは「Dyneema」(商標)製の24mm厚の内側バックアップ層を備えている。多層装甲パネルの総重量は、80.9lbs(36.7Kg)にすぎない。
【0085】
表2に示されているように、1発目と2発目のテスト発射で使われた銃器は、平均弾速度が早くなるよう14.5mm口径の装甲貫創可能B−32発射弾であって、同じように本発明による24×24インチ(60×60cm)角のパネルに向けて発射した残りのテストでの弾丸は、高速の20mm破砕STM発射弾である。14.5mm口径の装甲貫創可能な発射弾の1発目の弾速度は3303フィート/秒(991m/秒)であり、2発目は3391フィート/秒(1017m/秒)で続き、以後、2発の20mm破砕STM発射弾をそれぞれ平均弾速度が4333フィート/秒(1300m/秒)と4437フィート/秒(1331m/秒)で発射し、その4発目の弾丸だけが、前の3発には耐えたパネルに貫創した。
【0086】
【表2】
表3は、プレートにおける被弾抵抗性に関するテスト結果のコピーであって、パネルは少なくとも1つの凸状面をもつほぼ筒状の複数のペレットを有し、各ペレットの直径は約19mmで、凸状面を含むペレットの高さは約23mmであり、ペレットはエポキシ樹脂により複数の隣接列状に接合されており、プレートは「Dyneema」(商標)製の17mm厚の内側バックアップ層とさらに6.35mm厚のアルミニウム製のバックアップ層を備えている。多層装甲パネルの総重量は、わずか78.3lbs(35.5Kg)である。
【0087】
表3に示されているように、1発目のテスト発射で使われた銃器は、高速の20mm口径破砕STM発射弾であって、同じように本発明による24.5×24.5インチ(62×62cm)角のパネルに向けて発射した残りの弾丸は、平均弾速度が早くなるような14.5mm口径の装甲貫創可能B−32発射弾である。1発目の20mm口径破砕発射弾の速度は4098フィート/秒(1229m/秒)であり、その後、7発の14.5mm口径の装甲貫創可能B−32発射弾を平均弾速度が2764フィート/秒(829m/秒)から3328フィート/秒(998m/秒)で連続して発射した。明らかなように、前の7発には耐えたパネルに貫創したのは、平均弾速が3328フィート/秒(998m/秒)の8発目の装甲貫創可能B−32発射弾だけである。
【表3】
本発明は上記で説明した実施例の詳細内容に限定されるものではなく、かつ、本発明は、その精神や基本的属性から逸脱することなく別の特定の形態で実施できることは、当業者には明白であろう。それゆえ、上記実施例はあらゆる点で説明のためのものであってそれらに限定されるものではなく、本発明の範囲は上記の説明ではなく、付随する請求項により定義されるものであって、それら請求項と同等の意味や範囲内における変更もその範疇で包含されるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による装甲パネルの好ましい実施例の分解斜視図である。
【図2】ペレットの実施例の斜視図である。
【図3】ペレットの実施例の斜視図である。
【図4】装甲パネルの2層式の実施例の断面図である。
【図5】パネル製造方法において使用する金型の説明図である。
【図6】本体間の隙間を注型剤で充填する、パネルの一部の斜視図である。
【図7】本発明によるパネルの発射弾衝撃アレー構造の図である。
Claims (16)
- 高速の装甲貫創可能な発射弾から運動エネルギーを吸収し散逸させる複合装甲プレートであって、ペレットが複数の重畳列を形成するように結合しかつ大部分のペレットのそれぞれが少なくとも4個の隣接ペレットと接合するように、固化材によりパネルに直接に接合され固定された高密度セラミックペレットの単一内側層を含み、前記ペレットはAl203を少なくとも93%内包し比重が少なくとも2.5であって、大部分のペレットのそれぞれが3から19mmの長さの長軸をもち、前記固化材とプレートとが弾性を有し、さらに前記プレートの重量が45kg/m2を越えないことを特徴とする複合装甲プレート。
- 前記大部分のペレットのそれぞれが、6から19mmの長さの長軸をもつことを特徴とする請求項1記載の複合装甲プレート。
- 前記ペレットが、少なくとも1つの凸状曲面をもつ規則的幾何学形状であることを特徴とする請求項1記載の複合装甲プレート。
- 前記ペレットが、少なくとも1つの円形断面をもつことを特徴とする請求項1記載の複合装甲プレート。
- 前記ペレットが、丸い端の筒形、平らな端の筒形あるいは球形であることを特徴とする請求項1記載の複合装甲プレート。
- 前記ペレットが、少なくとも9のモース硬度の堅さをもつことを特徴とする請求項1記載の複合装甲プレート。
- 前記固化材が、少なくとも80%のアルミニウムを内包することを特徴とする請求項1記載の複合装甲プレート。
- 前記固化材が、熱可塑性樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複合装甲プレート。
- 前記固化材が、エポキシ樹脂であることを特徴とする請求項1記載の複合装甲プレート。
- 多層装甲パネルであって、
高速の装甲貫創可能な発射弾を変形させ破砕させるための、請求項1記載の複合装甲プレートの外側衝撃受容層と、
前記発射弾の残留破片を非対称変形させその破片から残留運動エネルギーを吸収するための、靱性のある編込テキスタイル材を含む、前記外側層に隣接した内側層とから成り、
該多層装甲パネルが、連続して発射された3つの弾丸をそのパネルの各辺が5cmの三角形区域で止めることができることを特徴とする多層装甲パネル。 - 前記第2パネルが、「Kevlar」(商標)で作成されていることを特徴とする請求項10記載の多層装甲パネル。
- 前記内側層が、ポリアミド網体の多層を含むことを特徴とする請求項10記載の多層装甲パネル。
- 請求項1記載の複合装甲プレートを製造する方法であって、
1つの底面、2つの主表面、2つの副側面、1つの開口上面をもち、該2つの主表面の間の距離がペレットの長軸の約1.2倍から1.8倍である金型を提供し、
前記底面からほぼ開口上面まで、前記2つの副表面間のほぼ全距離に沿って延びた複数のペレットの重畳列を形成するように、前記金型に前記ペレットを挿入し、
前記金型に注入される固化材の溶解点より高い少なくとも100℃の温度まで、前記金型とペレットを暫時加熱し、
前記溶解固化材を前記金型に注入してその金型を充満させ、
前記溶解固化材を固化させ、
前記金型から複合装甲プレートを取り出す各工程を含む複合装甲プレートの製造方法。 - 前記溶解固化材が、少なくとも80%のアルミニウムを内包する注型合金を含み、前記金型が少なくとも850℃の温度まで加熱されることを特徴とする請求項13記載の製造方法。
- 前記金型の表面が、それに前記溶解固化材を注入する際に、空気の排出を容易にするための複数の空気孔を設けていることを特徴とする請求項13記載の製造方法。
- 請求項1記載の複合装甲プレートを製造する方法であって、
1つの底面、2つの主表面、2つの副側面、1つの開口上面をもち、該2つの主表面の間の距離がペレットの長軸の約1.2倍から1.8倍である金型を提供し、
前記底面からほぼ開口上面まで、前記2つの副側面間のほぼ全距離に沿って延びた複数のペレットの重畳列を形成するように、前記金型に前記ペレットを挿入し、
液状エポキシ樹脂を前記金型に注入してその金型を充満させ、
前記エポキシ樹脂を固化させ、
前記金型から複合装甲プレートを取り出す各工程を含む複合装甲プレートの製造方法。
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