JP3628046B2 - 車両用現在位置検出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は、車両の方位および移動距離により車両の現在位置を検出する車両用現在位置検出装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、この種の車載用ナビゲーション装置においては、車両の方位変化量を検出する相対方位センサ(ジャイロ、ステアリングセンサ、車輪センサ等)と、車両の速度(距離)を検出する距離センサ(車速センサ、車輪センサ等)の出力から、車両の位置・方位・車速等を検出する推測航法が用いられている。
【0003】
この推測航法の出力(位置・方位・車速等)には、センサの誤差が含まれるため、誤差が生じる。特に、位置・方位は積分的に求められるため、誤差が徐々に増大してしまう。
これに対し、GPSは、絶対的な位置・方位・車速を求めることができるため、GPSが測位した場合に推測航法の出力をGPSの出力に合わせることにより補正が可能である。例えば、推測航法で得られた位置をマップマッチングにより道路地図上の道路位置に位置合わせした時の位置と、GPSで得られた位置との差が所定値より大きくなった時に、道路地図上の位置をGPSで得られた位置に修正するようにすることができる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、推測航法で求められる位置については、GPSの出力により補正することはできるが、センサの補正はできない。このため、GPS非受信時においてセンサ出力の誤差により推測航法の出力精度が悪いという問題がある。
本発明は、センサ出力の誤差を修正して現在位置を求めるようにすることを第1の目的とする。
【0005】
本発明者等は、上記目的を達成するため、後述するように、カルマンフィルタを用い、推測航法から求められる車両の方位に関する情報と、GPSから出力される車両の方位に関する情報との差に基づいて、センサ誤差量を求め、センサ出力の誤差修正を行うものを考えた。
このカルマンフィルタによる誤差修正においては、GPSからの測位データが必要となる。しかしながら、GPSが長時間測位できない場合は、センサ誤差が大きくなるため、センサ誤差を何らかの方法で補正する必要がある。
【0006】
そこで、本発明は、GPSが長時間測位できないような場合に、GPS以外のデータにより補正を行うようにすることを第2の目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明においては、
車両の方位変化量に応じた信号を出力する相対方位センサ(2)と、
車両の移動距離を検出する移動距離検出手段(1および103)と、
前記相対方位センサからの信号に基づき、オフセット補正量によりオフセット補正して方位変化量を求めるとともにこの方位変化量により車両の方位を特定し、この車両の方位と前記移動距離検出手段にて検出した車両の移動距離に基づいて車両の位置を検出する位置検出手段(4,5およびそれに対する演算処理)とから構成される推測航法手段(1,2,4,5およびそれに対する演算処理)と、
GPS衛星からの衛星電波を受信して車両の方位に関する情報を出力するGPS(3)と、
少なくとも前記相対方位センサのオフセット誤差および車両の方位誤差と、前記移動距離検出手段の距離係数誤差若しくは車両の絶対位置誤差とを状態量X(t)とし、この誤差の時間的変化を与えるプロセス行列φおよび信号生成過程で発生する雑音ωにより、状態量X(t+1)をφ・X(t)+ωにて関係付ける信号生成過程と、状態量X(t)と観測値Y(t)とを、観測行列Hおよび観測過程で発生する雑音vにより、観測値Y(t)をH・X(t)+vにて関係付ける観測過程を形成するモデルを基に、前記推測航法手段における車両の方位に関する情報と前記GPSから出力される車両の方位に関する情報との差により、上記観測値Y(t)を演算するとともに、その演算値を基に上記モデルから状態量X(t)を演算する状態量演算手段(6およびそれに対する401〜408,410,411の処理)と、
この状態量演算手段にて求めた状態量X(t)によるオフセット誤差および車両の方位誤差により、前記オフセット補正量を修正するとともに前記位置検出手段における車両の方位を修正する修正手段(409)と、
車両の絶対方位を検出する絶対方位センサ(7)と
を備え、
前記状態量演算手段は、少なくとも前記オフセット誤差の大きさの見積もりと、前記車両の方位誤差の大きさの見積もりと、前記距離係数誤差の大きさの見積もり若しくは前記車両の絶対位置誤差の大きさの見積もりと、それらの誤差の相互相関値から構成される誤差共分散行列を計算する手段(405,411)を有して、前記状態量X(t)の演算を行うものであって、
前記GPSが長時間測位できず、前記車両の方位誤差の大きさの見積もりにより、車両の絶対方位の精度が前記絶対方位センサで期待できる精度より低下した状態を検出した時に前記位置検出手段にて特定される車両の方位を前記絶対方位センサにて検出される方位にする変更手段(601〜603)と
を更に備え、
前記変更手段は、前記位置検出手段にて特定される車両の方位を前記絶対方位センサにて検出される方位にする時に前記誤差共分散行列のうちの前記車両の方位誤差と相関のある相互相関値を0に設定する手段(603)を有することを特徴としている。
【0010】
請求項に記載の発明においては、
車両の方位変化量に応じた信号を出力する相対方位センサ(2)と、
車両の移動距離を検出する移動距離検出手段(1および103)と、
前記相対方位センサからの信号に基づき、オフセット補正量によりオフセット補正して方位変化量を求めるとともにこの方位変化量により車両の方位を特定し、この車両の方位と前記移動距離検出手段にて検出した車両の移動距離に基づいて車両の位置を検出する位置検出手段(4,5およびそれに対する演算処理)とから構成される推測航法手段(1,2,4,5およびそれに対する演算処理)と、
GPS衛星からの衛星電波を受信して車両の方位に関する情報を出力するGPS(3)と、
少なくとも前記相対方位センサのオフセット誤差および車両の方位誤差と、前記移動距離検出手段の距離係数誤差若しくは車両の絶対位置誤差とを状態量X(t)とし、この誤差の時間的変化を与えるプロセス行列φおよび信号生成過程で発生する雑音ωにより、状態量X(t+1)をφ・X(t)+ωにて関係付ける信号生成過程と、状態量X(t)と観測値Y(t)とを、観測行列Hおよび観測過程で発生する雑音vにより、観測値Y(t)をH・X(t)+vにて関係付ける観測過程を形成するモデルを基に、前記推測航法手段における車両の方位に関する情報と前記GPSから出力される車両の方位に関する情報との差により、上記観測値Y(t)を演算するとともに、その演算値を基に上記モデルから状態量X(t)を演算する状態量演算手段(6およびそれに対する401〜408,410,411の処理)と、
この状態量演算手段にて求めた状態量X(t)によるオフセット誤差および車両の方位誤差により、前記オフセット補正量を修正するとともに前記位置検出手段における車両の方位を修正する修正手段(409)と、
を備え、
前記状態量演算手段は、少なくとも前記オフセット誤差の大きさの見積もりと、前記車両の方位誤差の大きさの見積もりと、前記距離係数誤差の大きさの見積もり若しくは前記車両の絶対位置誤差の大きさの見積もりと、それらの誤差の相互相関値から構成される誤差共分散行列を計算する手段(405,411)を有して、前記状態量X(t)の演算を行うものであって、
前記オフセット誤差の大きさの見積もりにより前記オフセット補正の精度が低下した状態を検出した時に、車両停止時の前記相対方位センサからの出力に基づき、オフセット補正量を変更する変更手段(701〜703)と
を更に備え、
前記変更手段は、オフセット補正量を変更する時に前記誤差共分散行列のうちの前記オフセット誤差と相関のある相互相関値を0に設定する手段(703)を有することを特徴としている。
なお、上記した、車両の方位に関する情報とは、方位そのものに限らず、方位に関係する情報も含む概念であり、後述するように方位と相関のある絶対位置等も含まれるものである。
【0013】
また、上記各手段のカッコ内の符号は、後述する実施例記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
また、後述するフローチャート内の各ステップはそれぞれの機能を実現する機能実現手段を構成するものである。
【0014】
【発明の作用効果】
請求項1、に記載の発明によれば、推測航法から求められる車両の方位に関する情報とGPSから出力される車両の方位に関する情報との差により、オフセット誤差を求め、相対方位センサのオフセット補正を行うようにしているから、相対方位センサに対するセンサ出力の誤差修正を行うことができる。
【0015】
さらに、請求項1に記載の発明においては、GPSが長時間測位できないような場合で車両の絶対方位の精度が絶対方位センサで期待できる精度より低下した時に絶対方位センサからの出力により車両の方位を決めるようにしているから、そのような場合の車両の方位の補正を行うことができる。さらに、絶対方位センサを用いた車両の方位の設定時に、誤差共分散行列のうちの車両の方位誤差と相関のある相互相関値を0に設定するようにしているから、再びGPSが測位した後の誤差修正を良好にすることができる。
【0016】
また、請求項に記載の発明においては、GPSが長時間測位できないような場合でオフセット補正の精度が低下した時に、車両停止時の相対方位センサからの出力により、オフセット補正量を設定するようにしているから、そのような場合のオフセット補正量を補正することができる。さらに、上記のような車両停止時のオフセット補正量の設定時に、誤差共分散行列のうちのオフセット誤差と相関のある相互相関値を0に設定するようにしているから、再びGPSが測位した後の誤差修正を良好にすることができる。
【0017】
【実施例】
以下、本発明を図に示す実施例について説明する。
この実施例は、推測航法とGPSとの複合化を図るため、カルマンフィルタを用いている。このカルマンフィルタの概要について説明する。
このカルマンフィルタにおいては、図7に示すように、信号生成過程と観測過程に分けられる。図において、線形システム(φ)があり、そのシステムの状態X(t)に対して、観測行列Hで関係付けられるX(t)の一部が観測できる場合に、フィルタはX(t)の最適な推定値を与える。ここで、ωは信号生成過程にて発生する雑音であり、vは観測過程にて発生する雑音である。このフィルタの入力はY(t)であり、出力はX(t)の最適推定値である。
【0018】
時刻tまでの情報を用いた状態Xの最適推定値、すなわち状態量X(t|t)は、数1により求められる。
【0019】
【数1】
X(t|t)=X(t|t−1)+K(t){Y(t)−HX(t|t−1)}
ここで、X(t|t−1)は事前推定値、K(t)はカルマンゲインであり、それぞれ数2、数3により表される。
【0020】
【数2】
X(t|t−1)=φX(t−1|t−1)
【0021】
【数3】
K(t)=P(t|t−1)H(HP(t|t−1)H+V)−1
ここで、Pは状態量Xの誤差共分散であり、P(t|t−1)は誤差共分散の予測値、P(t−1|t−1)は誤差共分散であり、それぞれ数4、数5により表される。
【0022】
【数4】
P(t|t−1)=φP(t−1|t−1)φ+W
【0023】
【数5】
P(t−1|t−1)=(I−K(t−1)H)P(t−1|t−2)
なお、Vは観測過程で発生する雑音vの分散、Wは信号過程で発生する雑音ωの分散である。また、A(i|j)は時刻jまでの情報に基づく時刻iでのAの推定値を表す。なお、添字のは転置行列を意味し、−1は逆行列を意味する。Iは単位行列である。
【0024】
さらに、VとWは平均0の白色ガウス雑音であり、互いに無相関である。
上記のようなカルマンフィルタにおいて、状態量Xと誤差共分散Pの初期値に適当な誤差を与えてやり、新しい観測が行われる度に以上の計算を繰り返し行うことにより、状態量Xの精度が向上する。
このようなカルマンフィルタを推測航法へ適用したのが本実施例である。
【0025】
まず、上記の信号生成過程の定義について説明する。
推測航法でのカルマンフィルタは、推測航法の誤差の補正を目的とするので、状態量Xは以下の5つの誤差値を定義する。この誤差値の時間的な変化を与えるものがプロセス行列φである。
▲1▼オフセット誤差(εG)
【0026】
【数6】
εG=εGt−1 +ω
確定的な変化はなく、前回の誤差にノイズが付加される。
▲2▼絶対方位誤差(εA)
【0027】
【数7】
εA=T×εGt−1 +εAt−1 +ω
前回の誤差に、オフセット誤差に前回からの経過時間をかけて求める方位誤差とノイズが付加される。
▲3▼距離係数誤差(εK)
【0028】
【数8】
εK=εKt−1 +ω
確定的な変化はなく、前回の誤差にノイズが付加される。
▲4▼絶対位置北方向誤差(εY)
【0029】
【数9】
εY=sin(A+εAt−1 +εGt−1 ×T/2)×L×(1+εKt−1 )−sin(A)×L+εYt−1
前回の誤差に方位誤差・距離誤差によって生じる誤差が付加される。
▲5▼絶対位置東方向誤差(εX)
【0030】
【数10】
εX=cos(A+εAt−1 +εGt−1 ×T/2)×L×(1+εKt−1 )−cos(A)×L+εXt−1
前回の誤差に方位誤差・距離誤差によって生じる誤差が付加される。
上記の定義において、Aは真の絶対方位、Lは前回からの移動距離、Tは前回からの経過時間である。
【0031】
上記の各式を状態量で偏微分し線形化すると信号生成過程は以下のように定義される。
【0032】
【数11】
Figure 0003628046
【0033】
上記Aは、絶対方位A+εAt−1 +εGt−1 ×T/2を意味する。この値は真の絶対方位Aにセンサ誤差が加わったものであり、後述するように、方位変化量から求められる絶対方位Aとする。
また、ωは、オフセット雑音(温度ドリフト等によるオフセットの変動分)、ωは絶対方位雑音(ジャイロのゲイン的な誤差)、ωは距離係数雑音(経年変化)を意味する。
【0034】
次に、上記観測過程の定義について説明する。
観測値は推測航法の出力と、GPSの出力の差より求める。それぞれの出力には誤差が含まれるため、観測値において、推測航法の誤差とGPSの誤差の和が得られる。この観測値Yと状態量Xを関係付け、数12のように定義される。
【0035】
【数12】
Figure 0003628046
【0036】
但し、観測過程で発生する雑音vはGPSの雑音であり、数13のように定義される。
【0037】
【数13】
Figure 0003628046
【0038】
以上の定義を基に、カルマンフィルタを用いた推測航法について説明する。図1に本実施例における概略構成を示す。
この図に示すように、車速センサ1、ジャイロ2からの信号を基に、相対軌跡演算部4、絶対位置演算部5での演算が行われ、それらの演算(推測航法演算)により、車速、相対軌跡、絶対位置、絶対方位が出力される。また、GPS3からは位置・方位・車速の出力が得られる。カルマンフィルタ6は、推測航法により得られた車速、絶対位置・絶対方位の情報およびGPS3からの車速、位置・方位の情報を基に、車速センサ1の距離係数補正、ジャイロ2のオフセット補正、絶対位置補正、絶対方位補正を行う。
【0039】
このような車載用ナビゲーション装置へカルマンフィルタを適用すると、車速センサ1の距離係数補正、ジャイロ2のオフセット補正、および絶対方位補正、絶対位置補正により、数2に示す、事前推定X(t|t−1)は0となる。従って、数1は数14に示すようになる。
【0040】
【数14】
X(t|t)=K(t)Y(t)
従って、上記信号生成過程にて定義された5つの誤差値による状態量Xは、数3〜数5によって求められるカルマンゲインK(t)および観測値Y(t)により求められる。
【0041】
ここで、数3における誤差共分散Pは、数15により定義される。
【0042】
【数15】
Figure 0003628046
【0043】
この誤差共分散PにおけるσGG はオフセット誤差の大きさの見積もりを表し、σAA は絶対方位誤差の大きさの見積もりを表し、σKK は距離係数誤差の大きさの見積もりを表し、σYY は絶対位置北方向誤差の大きさの見積もりを表し、σXX は絶対位置東方向誤差の大きさの見積もりを表す。それら以外のσij はi行とj列の相互相関値を表す。例えばσAG はオフセット誤差と絶対方位誤差の相互相関値を表す。
【0044】
この誤差共分散Pの値は、数4の計算によって更新される。なお、初期値においては、σGG 、σAA 、σKK 、σYY 、σXX の各値を誤差が最大となる値に設定しておき、また相互相関値については全て0に設定しておく。
また、数3におけるHは数12で示される行列を用い、Vについては数13に示されるものを用いる。また、数4におけるWは数11に示されるωの分散を用いる。
【0045】
観測過程における観測値Yとしては、数12に示すように、εADRt −εAGPSt、εKDRt −εKGPSt、εYDRt −εYGPSt、εXDRt −εXGPStを用いている。ここで、添字のDRt は時刻tにおいて車速センサ1、ジャイロ2からの信号に基づく推測航法にて求められた値を意味し、GPStは時刻tにおいてGPS3から出力される値を意味する。
【0046】
εADRt −εAGPStは、推測航法により求められた絶対方位とGPS3から出力される方位の差、すなわち推測航法により求められた絶対方位には真の絶対方位とその誤差εADRt が含まれており、またGPS3から出力される方位には真の絶対方位とその誤差εAGPStが含まれているため、それらの差を取ることによりεADRt −εAGPStが得られる。
【0047】
同様に、εKDRt −εKGPStは、推測航法により求められる速度とGPS3から出力される速度の差から求まる距離係数誤差であり、具体的には、(推測航法による速度−GPSによる速度)/(推測航法による速度)により求められる。また、εYDRt −εYGPStは、推測航法により求められる絶対位置のY成分とGPS3から出力される位置のY成分の誤差の差であり、εXDRt −εXGPStは、推測航法により求められる絶対位置のX成分とGPS3から出力される位置のX成分の誤差の差である。
【0048】
また、数13に示す、観測過程で発生する雑音vはGPS3の雑音であり、以下のようにして求められる。GPS3における擬似距離の計測誤差(UERE)とHDOP(Horizontal Dilution of Presision)の関係により測位精度が、UERE×HDOPで求められ、この測位精度を2乗することにより、v2t、v3tが求められる。また、ドップラー周波数の計測誤差とHDOPの関係より速度精度が、ドップラー周波数の計測誤差×HDOPで求められ、この速度精度/車速にて距離係数計測誤差が求められ、これを2乗することによりv1tが求められる。さらに、車両の速度Vc と速度精度から方位精度がtan−1(速度精度/Vc )で求められ、この方位精度を2乗するこによりv0tが求められる。
【0049】
従って、観測過程におけるεADRt −εAGPSt、εKDRt −εKGPSt、εYDRt −εYGPSt、εXDRt −εXGPStおよび上記雑音Vを入力とし、数3〜数5および数1を実行することにより、信号生成過程にて定義された5つの誤差値による状態量Xが求められ、これらにより車速センサ1の距離係数補正、ジャイロ2のオフセット補正、絶対位置補正、絶対方位補正が行われる。
【0050】
上記の相対軌跡演算、絶対位置演算、カルマンフィルタはマイクロコンピュータによる演算処理にて行われるため、以下これについて説明する。
図2に推測航法のメインルーチンの演算処理を示す。
ステップ100にて方位変化量・移動距離の演算を行う。この処理の詳細を図3に示す。まず、ステップ101にてジャイロ2の出力角速度にメインルーチンの起動周期Tを掛けて方位変化量を算出する。次のステップ102にて、その方位変化量から、オフセット補正量(この補正量については後述する)にメインルーチンの起動周期Tを掛けたものを引き、方位変化量のオフセット補正を行う。次のステップ103では、車速センサ1からの車速パルス数に距離係数(この距離係数についても後述する)を掛けて移動距離を算出する。
【0051】
このステップ100の次に、ステップ200の相対軌跡演算処理を行う。この処理の詳細を図4に示す。まず、ステップ201にて、方位変化量(ステップ102にて求めたもの)を基に相対方位を更新する。この更新した相対方位およびステップ103にて求めた移動距離によりステップ202にて相対位置座標の更新を行う。この更新は、移動距離に対する相対方位のX,Y成分をそれまでの相対位置座標に加算することにより行う。この相対位置座標は相対軌跡を求めるたに行うもので、その相対軌跡と道路形状との関係により、いわゆるマップマッチングが行われる。
【0052】
このステップ200の次に、ステップ300の絶対方位・絶対位置の演算処理を行う。この処理の詳細を図5に示す。まず、ステップ301にて、方位変化量(ステップ102にて求めたもの)を基に絶対方位を更新する。この更新した絶対方位およびステップ103にて求めた移動距離によりステップ202にて絶対位置座標の更新を行う。このステップ200の処理にて更新された絶対方位Aと絶対位置は後述するGPSとの複合化処理にて利用される。
【0053】
このGPSとの複合化処理を行うステップ400の詳細を図6に示す。まず、ステップ401にて前回の測位又は予測計算からT1 秒経過したか否かを判定する。これはGPS3の測位が行われる毎にステップ403〜409にて推測航法の誤差を補正する処理を行うが、GPS3の測位ができない場合には誤差が大きくなるため、それに対応した誤差の予測計算をステップ410、411にて定期的に行うために設けられている。
【0054】
ステップ401の判定がNOになると、ステップ402にてGPS3からの測位データがあるか否かを行う。GPS3からの測位データがあると、ステップ403以降のカルマンフィルタの演算処理に進む。
まず、ステップ403にて観測値Yの計算を行う。これは、GPS3から出力される速度、位置、方位データおよび推測航法におけるステップ300の処理にて求めた絶対方位、絶対位置および図示しない速度演算処理により車速センサ1からの車速パルスに基づく車両の速度とから、数12に示した、εADRt −εAGPSt、εKDRt −εKGPSt、εYDRt −εYGPSt、εXDRt −εXGPStを計算するとともに、数13に示す、観測過程で発生する雑音vをGPS3の測位データ等を基に計算する。
【0055】
ステップ404では、プロセス行列φの計算を行う。これは、前回のプロセス行列の計算時点からの移動距離L、経過時間T(これらは図示しない計測処理により別途求められている)およびステップ301にて求めた絶対方位Aにより、数11に示すプロセス行列φを求める。
このようにして計算した観測値Yおよびプロセス行列φを基に、上述した数3〜数5の計算を行って数14に示す状態量Xを求める。すなわち、ステップ405では、数3により誤差共分散Pの予測計算を行う。ステップ406では、数4によりカルマンゲインKの計算を行う。ステップ407では、数5により誤差共分散Pの計算を行う。この後、カルマンゲインKおよび観測値Yに基づき、ステップ408にて、数14の計算により状態量Xを求める。この状態量Xは、数11の左辺に示すように、オフセット誤差(εG)、絶対方位誤差(εA)、距離係数誤差(εK)、絶対位置北方向誤差(εY)、絶対位置東方向誤差(εX)を表している。
【0056】
これらの誤差により、ステップ409にて、図に示す計算にて推測航法誤差の修正、すなわちジャイロ2のオフセット補正、車速センサ1の距離係数補正、絶対方位補正、絶対位置補正が行われる。ジャイロ2のオフセット補正により、ステップ102にて用いられるオフセット補正量が修正され、車速センサ1の距離係数補正により、ステップ103にて用いられる距離係数が修正され、絶対方位補正により、ステップ301にて用いられる絶対方位Aが修正され、絶対位置補正によりステップ302にて用いられる絶対位置が修正される。
【0057】
上記の処理を、GPS3からの測位データが有る毎に繰り返し行い、上記誤差修正を行って、より正確なる推測航法データを得ることができる。
また、GPS3の測位が長時間できない場合で、ステップ401の判定がYESとなると、ステップ410、411に進み、プロセス行列φの計算および誤差共分散Pの予測計算を行う。これによって、GPS3の測位ができない場合の誤差に対応した誤差共分散の予測計算を行い、その後にGPS3が測位できた時に行われるカルマンフィルタの処理を正確に行えるようにする。
【0058】
上記したカルマンフィルタによる誤差修正においてはGPS3からの測位データが必要となる。しかしながら、GPS3が長時間測位できない場合は、センサ誤差が大きくなるため、センサ誤差を何らかの方法で補正する必要がある。
そこで、絶対方位に対しては地磁気センサ7を用いて補正を行う。この場合、推測航法の絶対方位と地磁気方位を比較し、差が一定値以上ある場合に推測航法の絶対方位を地磁気方位に合わせるようにすることができる。
【0059】
このような補正により、方位の誤差は減少するが、方位精度の予測値は大きなままであり、信頼性のないデータとなる。そこで、絶対方位を地磁気方位に補正した時に、絶対方位の精度予測値を地磁気センサで期待できる値まで減少させることが考えられる。しかしながら、この場合、絶対方位分散の部分のみ小さくすると、絶対方位誤差と他の状態量共分散の大きさの関係が異常になり、次にGPS3が測位しカルマンフィルタが動作した時に、間違った補正をし更に誤差共分散が負の数字となり演算不能になってしまう。
【0060】
そこで、地磁気方位を利用して絶対方位の補正を行った時には、その補正により、絶対方位誤差と、絶対位置の誤差、オフセット誤差および距離係数誤差とのそれぞれの関係は相関のないものとなるため、誤差共分散行列の内の絶対方位とそれ以外の状態量との共分散項の相互相関値をクリア(0を設定)する。
具体的には、図8に示す処理を行う。
【0061】
図8において、ステップ601にて絶対方位精度が地磁気センサで期待できる精度より低いか否かを判定する。ここで、絶対方位精度は誤差共分散行列におけるσAA により把握することができる。また、地磁気センサで期待できる精度は実験等で求めることができ、比較判定に際しては実験等で求めた値とすることができるが、車両が着磁しているような場合にはその値をそれに応じて変化させるようにしてもよい。従って、このステップ601ではσAA とその比較値が比較される。
【0062】
このステップ601の判定がYESになると、ステップ602にて、絶対方位Aを地磁気センサ7にて検出した方位に補正する。この後、ステップ603にて数15に示す誤差共分散行列の内、σAA を地磁気センサで期待できる方位精度の分散値に設定するとともに、σAG 、σAK 、σAY 、σAX 、σG A 、σKA 、σYA 、σXA の各値を0に設定する。
【0063】
上記のような制御により、地磁気センサ7による補正の効果を精度予測値に反映させることができるとともに、次にGPS3が測位でき補正が行われた場合にも正常な補正が可能となる。
次に、ジャイロオフセットの補正について説明する。GPS3が長時間測位できず推測航法のオフセット補正精度が低下し、車両停止時に行うジャイロオフセット補正で期待できるオフセット補正精度より低い精度となった場合は、車両停止によるオフセット補正が可能となった時に、推測航法のオフセット補正量を更新する。
【0064】
この時、誤差共分散行列のオフセット補正誤差分散の部分を車両停止時の補正で期待できる値まで小さくする。
また、車両停止時のオフセット補正を行ったため、オフセット補正誤差とその他の状態量の誤差の関係は相関のないものとなるため、誤差共分散行列のオフセット補正誤差とそれ以外の状態量との共分散項の相互相関値をクリア(0に設定)する。
【0065】
具体的には、図9に示す処理を行う。
図9において、ステップ701にてオフセット補正精度が車両停止時のオフセット補正で期待できる精度より低いか否かを判定する。ここで、オフセット補正精度は誤差共分散行列におけるσGG により把握することができる。また、車両停止時のオフセット補正で期待できる精度は実験等で求めた値とすることができるため、σGG とその比較値が比較される。
【0066】
このステップ701の判定がYESになると、ステップ702にて、車両停止時、すなわち車速センサ1からの信号に基づいて車両停止を判定し、この時のジャイロ3の出力を求めてその値を0にするような値にオフセット補正量を補正する。この後、ステップ703にて数15に示す誤差共分散行列の内、σGG を車両停止時のオフセット補正で期待できるオフセット補正精度の分散値に設定するとともに、σGA 、σGK 、σGY 、σGX 、σAG 、σKG 、σYG 、σXG の各値を0に設定する。
【0067】
上記のような制御により、車両停止時のオフセット補正の効果を精度良く値に反映させることができるとともに、次にGPS3が測位でき補正が行われた場合にも正常な補正が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す概略構成図である。
【図2】推測航法のメインルーチンの演算処理を示すフローチャートである。
【図3】方位変化量・移動距離の演算処理を示すフローチャートである。
【図4】相対軌跡の演算処理を示すフローチャートである。
【図5】絶対方位・絶対位置の演算処理を示すフローチャートである。
【図6】GPSとの複合化処理を示すフローチャートである。
【図7】カルマンフィルタのモデルを示す構成図である。
【図8】地磁気方位を利用して絶対方位の補正を行う処理を示すフローチャートである。
【図9】車両停止時のオフセット補正を行う処理を示すフローチャートである。
【符号の説明】
1 距離センサ
2 相対方位センサ
3 GPS
4 相対軌跡演算部
5 絶対位置演算部
6 カルマンフィルタ
7 地磁気センサ

Claims (2)

  1. 車両の方位変化量に応じた信号を出力する相対方位センサと、
    車両の移動距離を検出する移動距離検出手段と、
    前記相対方位センサからの信号に基づき、オフセット補正量によりオフセット補正して方位変化量を求めるとともにこの方位変化量により車両の方位を特定し、この車両の方位と前記移動距離検出手段にて検出した車両の移動距離に基づいて車両の位置を検出する位置検出手段とから構成される推測航法手段と、
    GPS衛星からの衛星電波を受信して車両の方位に関する情報を出力するGPSと、
    少なくとも前記相対方位センサのオフセット誤差および車両の方位誤差と、前記移動距離検出手段の距離係数誤差若しくは車両の絶対位置誤差とを状態量X(t)とし、この誤差の時間的変化を与えるプロセス行列φおよび信号生成過程で発生する雑音ωにより、状態量X(t+1)をφ・X(t)+ωにて関係付ける信号生成過程と、状態量X(t)と観測値Y(t)とを、観測行列Hおよび観測過程で発生する雑音vにより、観測値Y(t)をH・X(t)+vにて関係付ける観測過程を形成するモデルを基に、前記推測航法手段における車両の方位に関する情報と前記GPSから出力される車両の方位に関する情報との差により、上記観測値Y(t)を演算するとともに、その演算値を基に上記モデルから状態量X(t)を演算する状態量演算手段と、
    この状態量演算手段にて求めた状態量X(t)によるオフセット誤差および車両の方位誤差により、前記オフセット補正量を修正するとともに前記位置検出手段における車両の方位を修正する修正手段と、
    車両の絶対方位を検出する絶対方位センサと
    を備え、
    前記状態量演算手段は、少なくとも前記オフセット誤差の大きさの見積もりと、前記車両の方位誤差の大きさの見積もりと、前記距離係数誤差の大きさの見積もり若しくは前記車両の絶対位置誤差の大きさの見積もりと、それらの誤差の相互相関値から構成される誤差共分散行列を計算する手段を有して、前記状態量X(t)の演算を行うものであって、
    前記GPSが長時間測位できず、前記車両の方位誤差の大きさの見積もりにより、車両の絶対方位の精度が前記絶対方位センサで期待できる精度より低下した状態を検出した時に前記位置検出手段にて特定される車両の方位を前記絶対方位センサにて検出される方位にする変更手段と
    を更に備え、
    前記変更手段は、前記位置検出手段にて特定される車両の方位を前記絶対方位センサにて検出される方位にする時に前記誤差共分散行列のうちの前記車両の方位誤差と相関のある相互相関値を0に設定する手段を有することを特徴とする車両用現在位置検出装置。
  2. 車両の方位変化量に応じた信号を出力する相対方位センサと、
    車両の移動距離を検出する移動距離検出手段と、
    前記相対方位センサからの信号に基づき、オフセット補正量によりオフセット補正して方位変化量を求めるとともにこの方位変化量により車両の方位を特定し、この車両の方位と前記移動距離検出手段にて検出した車両の移動距離に基づいて車両の位置を検出する位置検出手段とから構成される推測航法手段と、
    GPS衛星からの衛星電波を受信して車両の方位に関する情報を出力するGPSと、
    少なくとも前記相対方位センサのオフセット誤差および車両の方位誤差と、前記移動距離検出手段の距離係数誤差若しくは車両の絶対位置誤差とを状態量X(t)とし、この誤差の時間的変化を与えるプロセス行列φおよび信号生成過程で発生する雑音ωにより、状態量X(t+1)をφ・X(t)+ωにて関係付ける信号生成過程と、状態量X(t)と観測値Y(t)とを、観測行列Hおよび観測過程で発生する雑音vにより、観測値Y(t)をH・X(t)+vにて関係付ける観測過程を形成するモデルを基に、前記推測航法手段における車両の方位に関する情報と前記GPSから出力される車両の方位に関する情報との差により、上記観測値Y(t)を演算するとともに、その演算値を基に上記モデルから状態量X(t)を演算する状態量演算手段と、
    この状態量演算手段にて求めた状態量X(t)によるオフセット誤差および車両の方位誤差により、前記オフセット補正量を修正するとともに前記位置検出手段における車両の方位を修正する修正手段と、
    を備え、
    前記状態量演算手段は、少なくとも前記オフセット誤差の大きさの見積もりと、前記車両の方位誤差の大きさの見積もりと、前記距離係数誤差の大きさの見積もり若しくは前記車両の絶対位置誤差の大きさの見積もりと、それらの誤差の相互相関値から構成される誤差共分散行列を計算する手段を有して、前記状態量X(t)の演算を行うものであって、
    前記オフセット誤差の大きさの見積もりにより前記オフセット補正の精度が低下した状態を検出した時に、車両停止時の前記相対方位センサからの出力に基づき、オフセット補正量を変更する変更手段と
    を更に備え、
    前記変更手段は、オフセット補正量を変更する時に前記誤差共分散行列のうちの前記オフセット誤差と相関のある相互相関値を0に設定する手段を有することを特徴とする車両用現在位置検出装置。
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