JP3627522B2 - 可変圧縮比機構を有する内燃機関 - Google Patents

可変圧縮比機構を有する内燃機関 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、運転状態に応じて圧縮比を変更可能な可変圧縮比機構を有する内燃機関に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
内燃機関には、機関の運転状態に応じた最適な圧縮比に変更することができるように、可変圧縮比機構を備えたものがある。
【0003】
例えば、直接噴射式ディーゼルエンジンでは、始動時及び低負荷時には高圧縮比が要求され、高負荷時には低圧縮比が要求されるため、可変圧縮比機構を備える場合がある。
【0004】
この可変圧縮比機構には種々の構造のものが開発されているが、その一つである中折れコンロッド式の可変圧縮比機構が特開昭62−35033号公報に開示されている。
【0005】
この中折れコンロッド式の可変圧縮比機構は、ピストンに連結される第1コンロッドとクランクシャフトに連結される第2コンロッドを回動可能に連結して屈曲可能(中折れ可能)なコンロッドとし、さらに第1コンロッドと第2コンロッドの連結部位にコントロールロッドの一端を回動可能に取り付け、このコントロールロッドの他端側を該コントロールロッドの回転支点とし、この回転支点をシリンダブロックに対して偏位可能に支持する偏位装置を備えて構成されている。この中折れコンロッド式の可変圧縮比機構の原理は、前記偏位装置で前記コントロールロッドの回転支点を偏位させることによって行程容積を変え、これにより圧縮比を変更するのである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記構造の中折れコンロッド式の可変圧縮比機構は、組付けが面倒で、生産性が悪いという問題があり、組み付け容易な構造が切望されている。尚、前記特開昭62−35033号公報には、組付け方法や組付け構造について何ら開示されていない。
【0007】
本発明はこのような従来の技術の問題点に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、構造が簡単で且つ組付けが容易な可変圧縮比機構付き内燃機関を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は前記課題を解決するために、以下の手段を採用した。本発明に係る可変圧縮比機構を有する内燃機関は、(イ)ピストンに連結される第1コンロッドとクランクシャフトに連結される第2コンロッドとを互いに回動可能に連結してなるコンロッドと、(ロ)前記第1コンロッドと第2コンロッドの連結部近傍に一端部が回動可能に連結されたコントロールロッドと、(ハ)前記コントロールロッドの他端部に設けた孔に挿通してこの他端部を回動可能に軸支する制御軸を有し、且つ、この制御軸を自身の中心軸周りに回動可能に配置した制御部材と、を備え、前記制御部材には、自身の所定回転位置で前記コントロールロッドの前記他端部を載置可能な載置部を設けたことを特徴とする。
【0009】
コントロールロッドと制御部材とを組み付ける際に、制御部材の載置部にコントロールロッドの他端部を載置してから制御軸を前記孔に挿通するようにすると、組み付けが容易にできる。
【0010】
尚、コントロールロッドの一端部が連結される第1コンロッドと第2コンロッドの連結部近傍とは、第1コンロッドと第2コンロッドの連結部そのものをも含む概念であり、コントロールロッドは第1コンロッドに連結してもよいし、第2コンロッドに連結してもよいし、第1コンロッドと第2コンロッドの連結部に連結してもよい。
【0011】
また、本発明に係る可変圧縮比機構を有する内燃機関においては、前記コントロールロッドの他端部に設けた孔に前記制御軸を挿通可能な位置にて、前記コントロールロッドの他端部と前記制御部材の前記載置部とを互いに係合し得る係合部を設けることができる。このようにすると、組み付け時におけるコントロールロッドと制御部材との位置決めが容易にでき、組み付け作業がさらに容易になる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る可変圧縮比機構を有する内燃機関の実施の形態を図1から図6の図面に基いて説明する。
【0013】
〔第1の実施の形態〕
図1に示すように、この内燃機関は、第1コンロッド1と第2コンロッド2を連結してなるコンロッド3を備えている。第1コンロッド1の上部に形成された小端部4には、ピストン5に取り付けられたピストンピン6が回動可能に挿通している。第2コンロッド2の下部に形成された大端部7には図示しないクランクシャフトのクランクピンが回転可能に挿通している。第1コンロッド1の下部と第2コンロッド2の上部はコンロッドピン8を介して互いに回動可能に連結されている。
【0014】
さらに、第1コンロッド1の下部には、コントロールロッド9の一端部9aが回動可能に連結されており、このコントロールロッド9の他端部9bに設けた貫通孔9cには、コントロールシャフトガイド(制御部材)10に取り付けられたコントロールシャフト(制御軸)11が回動可能に挿通している。コントロールシャフトガイド10は、図2の分解図に示すように、シリンダブロック12に設けられた貫通孔12aを挿通して、シリンダブロック12に回動可能に支持されており、内燃機関の運転状態に応じて圧縮比を変更するために、制御部13によって所定回転角度位置に回転せしめることができるようになっている。
【0015】
コントロールシャフトガイド10は、その両端部と途中複数箇所に断面円形の軸受部14が設けられており、隣り合う軸受部14が断面三日月形をなす連結部15で連結された構造になっている。そして、隣り合う軸受部14間に形成される空間部16は、内燃機関の気筒数と同じ数だけ形成されている。
【0016】
コントロールシャフトガイド10の各軸受部14には、コントロールシャフトガイド10の回動中心軸(中心軸)Xから偏心した同一位置に、コントロールシャフト挿通孔17が形成されている。このコントロールシャフト挿通孔17にコントロールシャフト11が挿通し、空間部16を挿通するコントロールシャフト11は、コントロールロッド9の他端部9bに設けた貫通孔9cを回動可能に挿通している。
【0017】
ところで、この内燃機関の作動状態では、図4に示すように、コントロールロッド9はコントロールシャフト11を回動中心として揺動することとなるが、この時にコントロールシャフトガイド10の連結部15がコントロールロッド9の揺動に干渉しないように、連結部15の形状及び寸法が設定されている。
【0018】
次に、制御部13について、図5に基づいて説明する。コントロールシャフトガイド10の一端部には小径部18が設けられ、小径部18よりもさらに先端側にはギヤ部19が設けられている。コントロールシャフトガイド10の一端側の軸受部14は、シリンダブロック12に固定されたストッパプレート20によって、回動中心軸X方向への移動を規制されており、小径部18及びギヤ部19は、ストッパプレート20を貫通して外方に突出している。
【0019】
コントロールシャフトガイド10の小径部18には、プランジャ21が回動中心軸X方向へ移動可能に外嵌しており、このプランジャ21の小径部21aをコントロールシャフトガイド10のギヤ部19が貫通している。ギヤ部19の外周面とプランジャ21の小径部21aの内周面には、互いに係合するヘリカルスプライン22が形成されている。
【0020】
コントロールシャフトガイド10の小径部18及びギヤ部19とプランジャ21は、ストッパプレート20とともにシリンダブロック12に固定されたカバー23によって包囲されている。カバー23は小径部23aと大径部23bを備え、小径部23aにプランジャ21の小径部21aが挿入され、大径部23bにプランジャ21の大径部21bが挿入されている。プランジャ21の小径部21aの外周面とカバー23の小径部23a内周面には、互いに係合するヘリカルスプライン24が形成されている。尚、ヘリカルスプライン22とヘリカルスプライン24のヘリカルの向きは逆向きになっている。
【0021】
カバー23の大径部23bはプランジャ21の大径部21bに摺動可能に外嵌しており、これらの間はプランジャ21の大径部21bに取り付けられたシールリング25によってシールされている。このプランジャ21によって、ストッパプレート20とカバー21との間は2つの油圧室26,27に離隔されている。
【0022】
この2つの油圧室26,27の油圧を調整して、プランジャ21に対しコントロールシャフトガイド10の回動中心軸X方向に力を作用させると、ヘリカルスプライン24の作用により、プランジャ21は回動中心軸X方向に沿って移動すると共にコントロールシャフトガイド10の周りを回転する。そして、プランジャ21が回転すると、ヘリカルスプライン22の作用により、コントロールシャフトガイド10が回転せしめられる。また、油圧室26,27の油圧をバランスさせてプランジャ21を停止させると、コントロールシャフトガイド10の回転を停止させその状態に保持することができる。つまり、油圧室26,27内の油圧を制御することにより、コントロールシャフトガイド10をその回転中心軸X周りに所定角度だけ回転させ、また、その角度に保持することができるのである。
【0023】
そして、コントロールシャフトガイド10の回転角度位置を変えることにより、シリンダブロック12に対するコントロールシャフト11の位置を変位させ、これによりコントロールロッド9の揺動支点を変位させて、行程容積を変化させ、圧縮比を変更することができるのである。
【0024】
油圧室26,27の油圧を制御するために、油圧室26はストッパプレート20及びシリンダブロック12に設けられたオイル通路28を介して、また、油圧室27はコントロールシャフトガイド10及びシリンダブロック12に設けられたオイル通路29を介して、それぞれオイルコントロールバルブ30に接続されている。このオイルコントロールバルブ30は、内燃機関の運転状態に応じてエンジンコントロール用電子制御ユニット40により作動制御される。
【0025】
次に、この内燃機関の組み立て手順を説明する。まず、ピストン5に第1コンロッド1を連結し、第1コンロッド1に第2コンロッド2とコントロールロッド9を連結した組み付け状態のユニットを、この内燃機関の気筒数だけ用意し、各ユニットのピストン5を、シリンダブロック12に設けられた図示しないシリンダボアに挿入する。尚、以下の作業において、コントロールロッド9とコントロールシャフト11とを連結するまでは、第2コンロッド2をクランクシャフト(図示せず)に連結させないでおく。
【0026】
次に、コントロールシャフトガイド10を、図2に示すように、そのギヤ部19側からシリンダブロック12の貫通孔12aに挿入していき、シリンダブロック12に回動可能に取り付ける。
【0027】
次に、前記各ユニットのコントロールロッド9の他端部9bをコントロールシャフトガイド10よりも上側に位置させた後、コントロールシャフトガイド10を、図3に示すように連結部15の凸面が下方に向くように位置させる。換言すれば、連結部15の凹面15aが上を向くようにコントロールシャフトガイド10を位置させる。
【0028】
次に、各連結部15の凹面15aの上に、前記各ユニットのコントロールロッド9の他端部9bを載せる。これにより、各コントロールロッド9の他端部9bを安定させることができるとともに、コントロールシャフトガイド10の各軸受部14に設けたコントロールシャフト挿通孔17と、各コントロールロッド9の他端部9bに設けた貫通孔9cとを、ほぼ同心上に位置させることができることとなる。この実施の形態では、連結部15の凹面15aが、コントロールロッド9の他端部9bを載置するための載置部として機能する。
【0029】
次に、図2に示すように、コントロールシャフト11を、コントロールシャフトガイド10の一端側の軸受部14のコントロールシャフト挿通孔17に挿通し、さらに連結部15に載置されているコントロールロッド9の貫通孔9cに挿通し、さらに次の軸受部14のコントロールシャフト挿通孔17に挿通し、という具合に、軸受部14のコントロールシャフト挿通孔17とコントロールロッド9の貫通孔9cに順々に挿通していく。この作業は、前述したように、各連結部15の凹面15aの上に各コントロールロッド9の他端部9bを載せることによって、他端部9bを安定させ、且つ、コントロールシャフト挿通孔17と貫通孔9cとをほぼ同心上に位置させて行うことができるので、作業が非常に容易になり、組み付け性及び生産性が向上する。
【0030】
このようにしてコントロールロッド9とコントロールシャフトガイド10とコントロールシャフト11とを組み付けた後、コントロールシャフトガイド10を回動して図4に示す作動状態に配置する。そして、コントロールシャフトガイド10の小径部18及びギヤ部19を制御部13と連繋させながら、シリンダブロック12に制御部13を取り付ける。その後、各第2コンロッド2の大端部7をクランクシャフト(図示せず)に連結する。
【0031】
〔第2の実施の形態〕
図6は、本発明に係る可変圧縮比機構を有する内燃機関の第2の実施の形態におけるコントロールシャフトガイド10及びコントロールロッド9の連結部を示している。
【0032】
この実施の形態では、コントロールシャフトガイド10の連結部15の凹面15aに係合凹部(係合部)15bが形成されており、コントロールロッド9の他端部9bの外周面に、係合凹部(係合部)15bに係合する係合突起9dが設けられている。そして、係合凹部15bと係合突起9dは、これらを図のように係合させたときにコントロールロッド9の貫通孔9cと軸受部14のコントロールシャフト挿通孔17とが同心上に位置するように、配置されている。
【0033】
このようにすれば、コントロールシャフト挿通孔17と貫通孔9cとを確実に同心上に位置させることができるので、コントロールロッド9とコントロールシャフトガイド10とコントロールシャフト11の組み付けがさらに容易になる。
【0034】
【発明の効果】
本発明に係る可変圧縮比機構を有する内燃機関によれば、(イ)ピストンに連結される第1コンロッドとクランクシャフトに連結される第2コンロッドとを互いに回動可能に連結してなるコンロッドと、(ロ)前記第1コンロッドと第2コンロッドの連結部近傍に一端部が回動可能に連結されたコントロールロッドと、(ハ)前記コントロールロッドの他端部に設けた孔に挿通してこの他端部を回動可能に軸支する制御軸を有し、且つ、この制御軸を自身の中心軸周りに回動可能に配置した制御部材と、を備え、前記制御部材には、自身の所定回転位置で前記コントロールロッドの前記他端部を載置可能な載置部を設けたことにより、コントロールロッドと制御部材の組み付けの際に、制御部材の載置部にコントロールロッドの他端部を載置した状態で制御軸を前記孔に挿通することができるので、可変圧縮比機構を有する内燃機関の組み付け性が向上し、生産性が向上するという優れた効果が奏される。
【0035】
また、前記コントロールロッドの他端部に設けた孔に前記制御軸を挿通可能な位置にて、前記コントロールロッドの他端部と前記制御部材の前記載置部とを互いに係合し得る係合部を設けた場合には、組み付け時におけるコントロールロッドと制御部材との位置決めが容易にでき、組み付け性がさらに向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る可変圧縮比機構を有する内燃機関の第1の実施の形態における組立図である。
【図2】前記第1の実施の形態における内燃機関の分解図である。
【図3】前記第1の実施の形態の内燃機関において、コントロールシャフトガイドとコントロールロッドの組付け時の要部断面図である。
【図4】前記第1の実施の形態の内燃機関において、コントロールシャフトガイドとコントロールロッドの作動時の要部断面図である。
【図5】前記第1の実施の形態の内燃機関における可変圧縮比機構の制御部の断面図である。
【図6】本発明に係る可変圧縮比機構を有する内燃機関の第2の実施の形態において、コントロールシャフトガイドとコントロールロッドの組付け時の要部断面図である。
【符号の説明】
1 第1コンロッド
2 第2コンロッド
3 コンロッド
5 ピストン
9 コントロールロッド
9a 一端部
9b 他端部
9c 貫通孔(孔)
9d 係合突起(係合部)
10 コントロールシャフトガイド(制御部材)
11 コントロールシャフト(制御軸)
15 連結部
15a 凹面(載置部)
15b 係合凹部(係合部)

Claims (2)

  1. (イ)ピストンに連結される第1コンロッドとクランクシャフトに連結される第2コンロッドとを互いに回動可能に連結してなるコンロッドと、
    (ロ)前記第1コンロッドと第2コンロッドの連結部近傍に一端部が回動可能に連結されたコントロールロッドと、
    (ハ)前記コントロールロッドの他端部に設けた孔に挿通してこの他端部を回動可能に軸支する制御軸を有し、且つ、この制御軸を自身の中心軸周りに回動可能に配置した制御部材と、
    を備え、前記制御部材には、自身の所定回転位置で前記コントロールロッドの前記他端部を載置可能な載置部を設けたことを特徴とする可変圧縮比機構を有する内燃機関。
  2. 前記コントロールロッドの他端部に設けた孔に前記制御軸を挿通可能な位置にて、前記コントロールロッドの他端部と前記制御部材の前記載置部とを互いに係合し得る係合部を設けたことを特徴とする請求項1に記載の可変圧縮比機構を有する内燃機関。
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