JP3627381B2 - 単結晶薄膜の評価方法 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、単結晶基板上にエピタキシャル成長した単結晶薄膜の結晶性をX線を用いて評価する方法に関する。ここでいう単結晶基板或いは単結晶薄膜とは超電導体、良導体、半導体、絶縁体など全てを含む。
単結晶基板、単結晶薄膜は多くの用途がある。特に半導体の分野では、単結晶基板、薄膜は産業上への応用が活発であり、多様な電子デバイスや光デバイスが実用化されている。
【0002】
例えば、GaAsやInPなどのIII −V族化合物半導体基板の上にナノメータ単位の厚さのAlI−x Ga AsやIn1−x Ga As1−y などの単結晶薄膜を幾重にもエピタキシャル成長させることによって半導体レ−ザが作製されている。
【0003】
単結晶といっても欠陥を持つ場合がある。欠陥の種類、密度、分布などが結晶品質を決める。エピタキシャル成長した単結晶薄膜の結晶品質は半導体デバイスの特性に大きく影響する。そのためエピタキシャル成長した単結晶薄膜の結晶品質を予め評価することは重要である。
【0004】
エピタキシャル成長した単結晶薄膜の結晶品質は基板結晶の結晶品質或いはエピタキシャル成長条件などによって左右される。基板結晶に存在する結晶欠陥などがエピタキシャル成長層にどの程度伝搬するのかを正確に把握する事が重要である。
【0005】
また、エピタキシャル成長する温度環境などの成長条件を最適化するに当たっては、種々な成長パラメータがエピタキシャル成長層の結晶品質に与える影響を把握することが重要である。そのためにはエピタキシャル成長した単結晶薄膜の結晶品質を評価して、基板の結晶品質と比較することが必要となる。
【0006】
単結晶の結晶品質を非破壊で評価する方法としてX線回折法がある。X線回折といっても様々の様式がある。X線波長に関しても二つの場合がある。白色(連続波長をもつ)X線を用いることもある。例えばラウエ法の場合である。また単色(単一波長)X線を使う事もある。ビーム形状に関しても二つの場合がある。スポットビームに絞ることもある。面状の広いビームを用いる事もある。回折像そのものを見る二次元的な手法もある。さらにある方向に回折されたビームの強度を測定して結晶構造を知るものもある。多様なX線回折法がある。
【0007】
X線回線法による単結晶の結晶品質評価方法の中で、精度の高い方法として、2結晶法と呼ばれる方法がある。本発明はこれを改良するものである。これ以外のX線法と峻別しなければならない。
【0008】
単色のX線源といっても波長の幅を持っている。またビームは完全に平行でない。完全に単色、平行のビームを得るために2結晶法が用いられる。単色X線源から出たX線を初めに結晶性の良い第一結晶に当て、これから回折されたX線を試料結晶(第二結晶という)に当てる。優れた単結晶においてブラッグ回折されたX線であるから、単色性、平行性は極めて優れる。二つの結晶を使うから2結晶法と呼ぶ。
【0009】
第一結晶はシリコンやゲルマニウムといった結晶性に優れた単結晶が用いられる。X線源から発生したX線を一旦第一結晶によって回折させることによって、X線の単色性、平行性を向上させる。第1結晶は測定対象ではない。X線の単色性と平行性を高めるために使われるだけである。アナライザともアナライザ結晶とも呼ばれる。評価の対象となる試料は第二結晶として配置される。
【0010】
2結晶法には二つの方法がある。一つはロッキングカーブ法である。もう一つはトポグラフ法である。ロッキングカーブ法は、試料結晶で回折されたX線の強度をX線カウンターなどで検出する。回折角度を中心にして数十秒から数百秒の範囲で試料結晶を回転させ、X線カウンターの検出値をモニタする。回折角度対X線量の関係を示すスペクトルのことをロッキングカーブという。これを用いた評価方法であるからロッキングカーブ法という。
【0011】
一方トポグラフ法は、被検査結晶で回折されたX線をX線フィルムや原子核乾板などに当てて回折像を映し出す方法である。この回折像をトポグラフという。トポグラフを使うのでトポグラフ法と呼ぶ。ロッキングカーブとは違い二次元的な画像を信号として採用する。回折像は、対象となる結晶の前方と後方の両方にできる。前方にできるのが反射回折像、後方にできるのが透過回折像である。これに対応して、回折像を映し出すのに反射法と透過法がある。
【0012】
反射法は、試料に対して、入射X線と同じ側に出てくる反射による回折像を対象にする方法である。反射トポグラフ法と呼ぶ。表面近傍の結晶からの回折による像であるから基板に成長したエピタキシャル成長層の評価に良く用いられる。反射法の原理図を図10に示す。光源1から出たX線はスリット2を通過し、結晶性の良い単結晶である第一単結晶3に入射し、これによって回折される。非対称回折であるからビームの幅が広がり、ビームの平行性、単色性がよくなる。このビームが試料である第二結晶4に入射する。ここで回折されてフィルム5に入る。フィルム5を露光してゆく。フィルムを現像してトポグラフ像を得る。
【0013】
透過法は、試料を突き抜けた透過X線が作る回折像を対象にする方法である。透過トポグラフ法と呼ぶ。
X線源としては、普通CuKα1線など金属の特性X線が用いられる。シンクロトロン放射光が使われる事もある。平行性、単色性、強度にすぐれたX線ビームを得る事ができるからである。
【0014】
トポグラフ法は別段2結晶法でなくてもよくて、単色X線源を使ってトポグラフを撮ることはできる。2結晶法にするとより鮮明なトポグラフを得る事ができるのである。ただし第1結晶によるX線の損失があるのでX線パワーは幾分減少する。しかしそのような損失を補って余りある効果があるので、2結晶法もよく使われる。第1結晶、第2結晶ともに、特定の結晶方位面での回折線を利用する。入射X線、出射X線が結晶面となす角度が同一の場合、対称トポグラフということもある。入射角と出射角が異なる場合、非対称トポグラフという。トポグラフについてはいろんな試みがなされている。
【0015】
▲1▼I.C.Bassignana, D.A.Macquistan and D.A.Clark,”X−RAY TOPOGRAPHY AND TEM STUDY OF CRYSTAL DEFECT PROPAGATION IN EPITAXIALLY GROWN AlGaAs LAYERS ON GaAs (001)”,Advances in X−Ray Analysis, Vol.34, p507 (1991)
【0016】
これは、Si(111)単結晶を第1結晶に、GaAs(100)単結晶を第2結晶にして、CuKαをX線源としたものである。GaAsウエハ−そのもののトポグラフ像を撮影して結晶粒界、ティルト境界、セル状転位、インクルージオンなどの欠陥が画像に直接に現れている様子を写真によって示している。さらにGaAs基板の上に、AlGaAs薄膜をMBE法でエピタキシャル成長させたものについてもトポグラフ撮影した結果を示し欠陥がトポグラフ像に直接に現れることを指摘している。
【0017】
ロッキングカーブ測定では、GaAs基板からのピークと、Al0.5 Ga0.5 As薄膜からのピークが175秒離れた角度に現れる。GaAs基板にAlAs単結晶を成長させたときのピークの離隔角度が350秒であるので、ピークの離れ角度からAlの混晶比xを知る事ができると述べている。トポグラフは基板と薄膜からの回折線が重畳したものである。両方の回折線が分離されていない。分離する事の必要性についても述べていない。分離の必要性にすら気づいていないようである。
【0018】
▲2▼A.Krost, J.Bohrer, H.Roehle, G.Bauer,”Strain Distribution in InP/InGaAs superlattice structure determined by high resolution x−ray diffraction”, Appl. Phys. Lett.,vol.64,p469,(1994)
【0019】
InP基板の上に、InPバッファ層(0.2μm)をのせ、その上にInP(3nm)/InGaAs(7nm)を5層繰り返し(50nm)これにInP層(55nm)をつけ全体として105nmとするものを10層成長させて超格子構造を作り、さらにInP(55nm)のキャップ層をエピタキシャル成長させたもののロッキングカーブを測定している。これはInP基板からの回折ピークと、その両側に出るサテライト+1、−1と微細なピークなどよりなる。微細なピークの間隔は、超格子の周期を現している。
【0020】
間隔から超格子の周期を計算できる。そしてこのような構造からどのようなロッキングカーブが現れるはずであるのか計算している。回折角2θに関し、実際のロッキングカーブは計算によるカーブよりも大きい広がりを持っている。計算を実験に合わせるためには、薄膜と基板間に生ずる応力を考えに入れなければならないと判断している。そして応力を考察に含めるシュミレーションをしている。薄膜と基板の間に働く応力の大きさを評価している。これはロッキングカーブだけで、トポグラフについては何もしていない。
【0021】
▲3▼N.N.Faleev, L.I.Flaks and S.G.Konnikev,”Double Crystal X−Ray Diffraction Characterization of Multilayer Heteroepitaxial Structures with Submicron Layers”, phys.stat.sol.(a) vol.113,No.431(1989)
【0022】
(100)Ge単結晶を第1結晶として使う。これの(400)回折線を用いる。試料はGaAsウエハ−に、AlGaAs薄膜をエピタキシャル成長させたものである。これを第2結晶の位置に取り付ける。AlGaAsの混晶比xによってピークの波長差が決まる。計算によってロッキングカーブをシュミレーションしている。これもトポグラフについては何にも言っていない。
【0023】
▲4▼特願平7−329677号(平成7年11月24日出願)これは本発明者の手になる新規な発明である。ロッキングカーブ測定とトポグラフ測定は別個に行われていたので、トポグラフにより二次元的な欠陥の分布、形状がわかったとしても定量的な評価ができないという難点があった。そこでトポグラフとロッキングカーブを同じ試料に対して試料台から取り外さず引き続き行うことによって、欠陥の定量的な測定を可能にしている。
【0024】
ロッキングカーブ+トポグラフを連続して行う優れた発明である。これはさらにウエハ−に撓みがある場合に、ウエハ−を微小回転させ常にX線方向と回折面のなす角度が一定になるようにして撓みの有るウエハ−全面のトポグラフを撮る事ができるようにしている。
【0025】
本発明はこれらの従来技術の何れにおいても問題とされていなかったことを取り上げる。薄膜のみからの回折X線が得られなければ薄膜の評価はできない。基板の上に薄膜を成長させた場合、回折線は基板と薄膜の両方からくるので薄膜のみの回折を知ることができない。透過法では基板からの回折が優勢であり薄膜の評価には役に立たない。しかし反射法であっても現在のところ薄膜の直接の評価はできない。多くの場合、基板からの回折線も含まれるからである。
【0026】
薄膜が薄い場合はX線が基板まで到達し、薄膜からの回折像と、基板からの回折像が重なりあって両者を区別できない。すると薄膜だけの評価ができない。どうすれば良いのか?回折像から基板による回折を差し引けば薄膜の寄与が分かるはずである。そのため初め基板のみのトポグラフを撮り、後にエピタキシャル成長層を有するウエハ−のトポグラフを撮る必要がある。
【0027】
しかしそうしても直接的な引き算によって薄膜の寄与のみを取り出すことはやはりできない。基板からの回折が圧倒的に大きいからである。たとえ薄膜からの回折が強いとしても、エピタキシャルウエハ−のトポグラフから、基板のトポグラフの濃度諧調を単純に差し引いたものが薄膜からの回折に等しいか?というとそうとも言えない。基板回折が単純にバックグラウンドとみなすことができない。
【0028】
二次元的な広がりを要するトポグラフ法では無理としても、回折強度−回折角だけを対象にするロッキングカーブでは薄膜だけを観察できないであろうか?ロッキングカーブ法では、反射トポグラフ法と同じ配置に試料やX線カウンターを置く。この場合もエピタキシャル成長薄膜が薄い場合は基板までX線が届くので、薄膜からの回折と基板からの回折が混ざる。この場合、基板と薄膜が格子整合している時と、不整合の時において事情がやや異なる。
【0029】
格子整合というのは基板の格子定数と、薄膜の格子定数が同じで結晶の方位が同一で位置ズレのない状態をいう。格子不整合というのは基板と薄膜の格子定数が異なるか、格子定数が同じでも面方位が傾いている場合をいう。エピタキシャル成長層が基板結晶と格子整合している場合、ロッキングカーブのエピタキシャル成長層のスペクトルと基板のスペクトルが重なる。ためにロッキングカーブによっても薄膜(成長層)だけの結晶性を評価できない。
【0030】
格子不整合であれば基板と薄膜のロッキングカーブのピーク位置が異なる。ピーク位置のズレから格子定数のズレを求めるという事はなされている。格子定数のズレからベガード則によって、薄膜の混晶比を求めるという事はなされている。それについては従来技術として既に説明した。しかしそれ以上のことはなされていない。
【0031】
【従来の技術】
2結晶トポグラフを用いて薄膜だけの品質を評価するとか薄膜の結晶欠陥を調べるてづるにするというような発想は未だ皆無である。実際格子不整合があって基板と薄膜のスペクトルが分離されている場合においても、エピタキシャル成長層が薄い場合にはエピ層からの回折は極めて微弱である。だからエピタキシャル成長層の結晶品質を正確に評価することは難しい。
【0032】
このような理由で、現在のロッキングカーブ法、トポグラフ法の何れをもってしても、基板の上に薄く成長された薄膜の結晶品質を正確に評価できない。だから実際に薄膜結晶評価に利用されていない。2結晶法にはそのような難点があった。
【0033】
薄膜が薄くてX線が基板結晶まで突き抜けるような場合であっても、薄膜(エピタキシャル成長層)のみの結晶品質をトポグラフによって評価したい。薄膜のみの結晶性を調べることができるような2結晶トポグラフ法を提供することが本発明の目的である。
【0034】
結晶評価法の従来技術の水準を説明する。単結晶の結晶品質を評価する方法としては、X線回折法とエッチング法がある。X線回折法については先に述べた。これは非破壊検査である。エッチング法というのは、酸性或いはアルカリ性溶液に試料結晶を浸し、結晶表面をエッチングして結晶欠陥を浮き立たせ、これを顕微鏡などによって観察する方法である。これは試料の表面を除去する破壊検査である。多くの場合、試料を損なわない非破壊検査が望ましい。
【0035】
次にX線回折法とエッチング法の問題点を述べる。従来のX線トポグラフの問題は、反射法を用いたとしても、エピタキシャル成長薄膜が薄い場合は、X線が基板にまで到達するということである。基板に達し基板で回折されたものも回折X線像に寄与する。だからエピ層と基板の結晶品質を分離して評価できないということである。
【0036】
同様の問題はエッチング法にもある。結晶欠陥を浮き出させるに十分なほど結晶を溶液に浸すと薄いエピタキシャル成長層は溶け去り基板結晶が露出する。このためエピタキシャル成長層のみの結晶品質をエッチング法によって評価するのは難しい。いずれもエピタキシャル層が薄すぎるので評価できないのである。
X線がどれほど深く結晶中に侵入するのか?これは方位にもよるし物質にもよる。X線の波長依存性もある。例としてCuKα1線に対するGaAs、InP、AlGaAs(混晶比=0.5)の線吸収係数は、
【0037】
GaAs 403.0/cm
InP 991.5/cm
AlGaAs 340.3/cm
【0038】
である。線吸収係数αというのは単位長さ当たりの強度変化がexp(−α)である値である。X線の侵入長さは線吸収係数αの逆数によって定義される。これは入射強度の1/eになる長さである。
【0039】
GaAs 24.8μm
InP 10.1μm
AlGaAs 29.4μm
【0040】
侵入深さは、侵入長さに入射角度Θを乗じたものになる。例えば(100)GaAsウエハ−において(422)で回折させる場合、入射角Θは6.6゜である。するとX線の到達深さは、24.8sin6.6゜=2.85μmである。このように表面にスレスレに入射したときですら、表面から約3μmまではX線が侵入する。エピタキシャル層の厚さが1μm〜3μmであると、一部のX線は基板に達する。さらに入射方向が面に直角に近いときはもっと深くまで到達する。
【0041】
そこで従来は、エッチング法、X線トポグラフ法どちらの評価方法でも、エピタキシャル成長層の厚さを、実際にデバイス構造に適用されるものよりもかなり厚く成長させていた。評価用に厚めに成長させていた訳である。どの程度厚いかというとX線回折法では、X線が膜において全部回折されるに足る厚みでなければならない。先ほどの記号を使うとsinΘ/α以上の膜厚とする。つまり膜での吸収が大きく基板にはX線が到達しない程度に薄膜を厚くする必要がある。エッチング法では、エッチングしても薄膜の一部が残っている程度に厚くする。何れにしても実際に利用されるものよりも格段に厚い薄膜を成長させる。
【0042】
こうするとエピタキシャル層の評価を行う事ができる。しかしこれには難点があった。エピタキシャル層を実際のものよりも厚くするので、結晶内部に実際の素子におけるより大きいストレスが掛かる。それが原因で、エピタキシャル成長層内に新たな結晶欠陥が発生する危険性がある。このため、実際にデバイス加工されるエピタキシャルウエハ−において、基板結晶の結晶欠陥がエピタキシャル成長層を伝搬する様子を正確に評価するというができない。さらに、エピタキシャル成長条件とエピタキシャル成長層の結晶品質との相関を正確に評価することもできない。
【0043】
このようにエッチング法も、X線回折法も、実際のデバイスに使用される薄い膜厚のまま結晶性の評価をすることは未だ不可能である。いずれも薄い薄膜評価という問題を克服することができないでいる。
【0044】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、エピタキシャル成長層が薄くても、2結晶トポグラフを用いてエピタキシャル成長層のみの結晶品質を評価できる方法を提供することが目的である。つまりエピタキシャル層を評価用に特別に厚くしなくてもエピタキシャル成長層のみを評価できるようにする。
【0045】
X線の透過力は十分に強くてエピタキシャル成長層(以後簡単に薄膜、エピ層と呼び同義に使う。)を透過し基板にまで到達する、これはやむを得ない事である。基板からの回折X線があっても、それと薄膜からのX線を分離できれば良いのである。そうすれば薄膜のみの結晶性の評価をすることができる。
【0046】
【課題を解決するための手段】
本発明者は次のことに気づいた。エピタキシャル成長層が薄い場合のX線ロッキングカーブを測定すると、基板結晶の回折スペクトルとエピタキシャル成長層の回折スペクトルの他に、薄膜の厚さを反映した振動スペクトルが現れることがある。また、多重量子井戸を持つ結晶のX線ロッキングカーブでは量子井戸の周期性を反映したサテライトピークが現れる。これら振動スペクトルあるいはサテライトピークはエピタキシャル成長層だけが関係する動力学的効果によって現れる現象である。
【0047】
本発明者らは振動スペクトルやサテライトピークに着目した。サテライトや小振幅のピークの角度に合わせてX線を入射してトポグラフを撮影する。これは未だなされた事のない手法である。こうすることによって、X線が基板結晶まで到達する場合でも、エピタキシャル成長層のみの情報からなるトポグラフ像が得られる。本発明者がこれに初めて気づいたのである。
【0048】
ロッキングカーブにおいて、主ピークは基板の着目する方位の面群によって回折したX線によって形成されるものである。第2の高さを持つピーク(副ピークと仮に呼ぶ)は薄膜の同じ方位の面群によって回折されたX線によってできるピークである。これらのピークの角度の差によって薄膜の格子定数を求め、混晶比xを求めるという方法は既に従来技術として紹介した。サテライトや小振動のピークというのはこれらの主ピークや副ピークとは違う。もっと低いピークである。サテライトは超格子が有る場合にはぼ等間隔に現れる。サテライトの間隔によって超格子の厚みを知るという方法は知られている。
【0049】
しかしサテライトの方向にX線を入射しトポグラフを撮影するという着想はこれまで全くなかった。
初めにサテライトはどのようにして生じるのかという事を述べる。これは超格子構造を前提とする。図11に超格子の例を示す。物質Aと物質Bが薄膜をなしこれが何層にも繰り返し積層されているとする。物質Aの面間隔をd とし、層の数をN とする。物質Aの原子散乱因子をf とする。
【0050】
物質Aの原子散乱因子といっても注釈が必要である。物質Aは例えばGaAs、AlGaAs、InPというように2つあるいは3以上の種類の元素が規則的に並んでいるものである。面方向についてはこれらの原子について積分したものとして考えるべきである。X線のベクトルをQとする。Qの方向にこれらの原子散乱因子を単位面積内で足し合わせる。つまり
【0051】
=Σ exp(iQr )f (1)
【0052】
である。面dというのは(422)とか(100)とか任意の結晶面を指す。面状にxy座標をとる。面と垂直にz軸をとる。(1)の積分はxy面での積分である。pは面内で付した原子の番号である。Qは入射X線の波数ベクトルである。r は原子pのxy面での座標である。f は原子pの原子構造因子である。Σ は面内の原子pの全てについて和を取るということである。これによって物質Aの面内での原子構造因子の総和(単位面積当たり)が求まる。であるからこれはX線ベクトルQの関数であるが、その表記を省略し単にf とする。つぎに面と直角の方向の和を考える。
【0053】
実際には基板からの回折もある。がここでは基板からの寄与ではなく、薄膜からの寄与のみを考える。基板の構造因子は後に考える。超格子からの回折だけを反映する原子構造因子をF(Q)とする。
【0054】
Figure 0003627381
【0055】
と書く事ができる。但しQnd などの表現においてこれはベクトルの内積を意味する。d などはz軸方向のベクトルである。これらをスカラー量とみなすとQがZ軸となす角度をθとしてQnd cosθである。しかし以後の計算においてもこれらはベクトル内積(Qd )とみなすことにしcosθは書かない。つまり三角関数の中の波数Qと厚みdの積は内積であると約束する。明細書ではベクトルの表示ができないから普通のスカラーのように書くが、三角関数の中のこれらの値はベクトルであるという事である。
【0056】
項目は物質A層からの構造因子への寄与である。面の構造因子f に厚み方向の寄与を加えている。Qが波数(2π/λ)ベクトルであるからQnd がn枚目の位相遅れになる。だからf exp(iQnd )がn枚目の寄与になるのである。1枚目からN 枚目までの総和を求める。第2項目は物質B層からの寄与である。表面から距離N にあるからexp(iQN )が余分にかかる。
【0057】
この層においてもf exp(iQnd )がn枚目の寄与になる。1枚目からN までを加える。大括弧の内側は結局超格子の一つの単位物質Aと物質Bの層からの構造因子への寄与である。大括弧の外側は、これらの2物質よりなる単位が超格子を構成する事による寄与である。超格子の一つの単位の厚みは(N +N )である。n枚目の位相遅れは(N +N )nQとなる。これを1枚目からN枚目まで加えると超格子による全体の寄与が求められる。
【0058】
【発明の実施の形態】
この超格子の、ベクトルQに対する回折X線の強度I(Q)は構造因子F(Q)とその複素共役を乗じたものである。これは式(3)に示すようになる。大括弧の中と外は積の形になっているからそれぞれ独立に和の演算をすることができる。大括弧の内部は、物質層Aと物質層Bの違い(これはここの原子の相違ではない化合物の組成の違いである)がf とf で表現されているが、これのクロス項が出てくる。大括弧の外部の項が超格子の繰り返しを反映するものである。
【0059】
【数3】
Figure 0003627381
【0060】
数の和の複素共役積については良く知られた(4)のような関係式がある。
【0061】
【数4】
Figure 0003627381
【0062】
ここで出てくるsin関数の商sin(Mx/2)/sin(x/2)について、Mが無限大の極限ではxが0又は2πの整数倍の時だけMとなる。その他の場合は0である。これらの式においてxはX線の波数ベクトルと格子の並進ベクトルとの内積である。つまり、波数ベクトルとその並進ベクトルの内積xがある一定値の場合に、その方向に強い回折線が現れるということである。またその強度はMの二乗に比例するから、繰り返しの層の数の二乗に比例するということである。
【0063】
超格子の場合は、xがX線波数ベクトルと超格子の単位の並進ベクトルの内積になる。基板の格子構造はこの式には入っていないが、基板からの回折の場合は、X線波数ベクトルと単位の格子面ベクトルとの内積がsin(x/2)関数のxとなるのである。分母のsin関数が0になるときその項が発散する。発散によってX線の回折線がピークを作る。
【0064】
【数5】
Figure 0003627381
【0065】
式(5)においていくつかのsin関数が分母にきている。分母が0になることによってこの量は発散する。発散について考察する。式(5)の括弧内において、因子f が掛かっている項は分母のsin関数がx=Qd を持つ。これが2πの整数倍の時にN の二乗に比例する回折を与える。波数ベクトルQと面ベクトルd の挟角をΦとすると、x=πという条件は、Qd cosΦ=πという事になる。Q=2π/λであるから、面とX線のなす角度をθとするとcosΦ=sinθである。2d sinθ=λとなる。これはブラッグ条件に等しい。
【0066】
ここでd に付いて考察する。物質層Aの面間隔がd であるが、物質層Aと基板は格子整合している。であるから格子定数は同じである。面の方位も同じである。とすれば、基板と物質層Aにおいて同じ方位の面間隔dは同じはずである。するとこれは基板のブラッグ回折と同じ方向に現れる。超格子を構成する物質層Aであってもそれぞれの層の面間隔から回折されるX線は基板回折と同方向に現れるから区別できない。
【0067】
式(5)において因子f の掛かっている項も同様である。これもx=πという条件はブラッグ条件2d sinθ=λに等しい。しかしこれも格子整合の条件から基板のブラッグ条件と一致する。ために因子f の掛かっている項の分母の発散も、基板からのX線回折と同じ角度に現れるので区別が付かない。x=nπというピークはあるがこれも基板からの回折に含まれる。しかしこの場合の隣接ピークまでの角度は広くて、ロッキングカーブ測定でも二つのピークが含まれるような広い範囲を測定することはない。このように、波数ベクトルQに掛かる値が単位の格子間隔の場合は基板からの回折と同じ角度に現れる。超格子からの信号と基板からの信号は同じ位置にでるから区別できない。
【0068】
これは完全に基板と薄膜が格子整合している理想的な場合である。AlGaAsをGaAs上に成長させた場合は、格子整合していると言っても少しのズレがあるので、AlGaAsからの回折ピークはGaAs基板からのピークと少しはずれる。これを利用してAlの混晶比を求めることができるという事は既に説明した。強度因子I(Q)はさらに次のように計算できる。
【0069】
【数6】
Figure 0003627381
【0070】
【数7】
Figure 0003627381
【0071】
【数8】
Figure 0003627381
【0072】
これまでの説明は、超格子構造を取ったとしても、その微視的な格子面の繰り返しからくるブラッグ回折は、基板の回折と重なっており薄膜のみの性質を測定するためには不適当であるという事を明らかにしている。
【0073】
もっと小さい間隔のピークを作る分母が(5)には含まれている。それは大括弧の外部にある。分母のsin関数の変数がQ(N +N )である項である。Qに対する乗数が大きい場合は、ロッキングカーブにおいて当然により細かいピークを作る。これを説明する。sin関数が発散するということを、ブラッグ回折の条件と比較できるように書き換えると、
【0074】
2(N +N )sinθ=mλ (9)
【0075】
となる。格子整合した薄膜を成長させるのであるから、層Aの面間隔d も層Bの面間隔d も基板の面間隔dもほぼ同一である。超格子の一単位はN +N の厚みをもつが、(9)式の次数を表現するmがm=N +N であれば、その時の回折角θは、基板回折角と同じである。次数mがこれより少しでも大きい整数値N +N +kであるとき或いは小さい整数値N +N −hであるときも(9)を満足する限り、式(5)を発散させることができる。これは超格子だけの寄与である。kやhが整数値をとる場合、ロッキングカーブはその角度で小さいピークを作る。これがサテライトである。例えばプラスにk番目のサテライトm=N +N +kの場合、ブラッグ角は、
【0076】
sinΘ=(N +N +k)λ/2(N +N )になる。ロッキングカーブの横軸は2θであるから、この式を満たすΘの2倍の所2Θにピークができる。サテライトのピークは超格子のみの寄与を含み、基板の寄与を含まない。これが重要な点である。本発明はこの原理を初めて見いだしたものである。そしてサテライトピークが基板寄与を含まない事からサテライトによって薄膜のみの結晶欠陥の評価に利用できるという事に初めて気づいている。本発明はこの発見に立脚したものであり、全く新規な発想に基づいている。
【0077】
この点は重要であるので証明しなければならない。これはX線の方向Qと面とのなす角度Θを決めている。これは超格子の回折強度因子I(Q)を発散させるが、基板の構造因子を発散させない。つまり基板からの対応する構造因子Fsub (Q)は、
【0078】
sub (Q)= f sinMdQ/sindQ (10)
【0079】
である。f は基板の原子構造因子である。たびたび言うがMdQやdQはベクトルの内積である。分母が発散する角度は勿論、基板のブラッグ角sinθ=λ/2dである。dQ=dQcosΦ=2πdcosΦ/λ=2πdsinθ/λ=πであり、sinπ=0であるから基板の構造因子Fsub (Q)はこのθで発散する。
【0080】
さて、(9)で与えられる先述のk番目のサテライトのブラッグ角Θは、基板の構造因子をどのようにするのか?これが問題である。Θの余角(足して90度になる角度)をΦ’として、cosΦ’を計算する。
【0081】
cosΦ’=sinΘ=(N +N +k)λ/2d(N +N )(11)
である。サテライトの次数kは、もちろん超格子の一単位の層の数N +N よりもずっと小さい。
【0082】
cosΦ’=λ/2d+kλ/2d(N +N ) (12)
である。基板構造因子Fsub (Q)の分母sindQは、
【0083】
sin(dQ)=sin(dQcosΦ’)=sin(2πdcosΦ’/λ)(13)
であるが、(12)を代入するとこれが0にならず、有限確定値になる。
【0084】
sin(dQ)=−sin{kπ/(N +N )} (14)
【0085】
これが0にならないという事が重要である。基板の構造因子の分母がこのΘに対して発散しない。基板からの回折がピークを形成するのは、Fsub (Q)がM(Mは層の数)に比例し実質的に発散する角度である。分母を0とする角度と言っても良い。すると先ほどのサテライトの角度Θに対しては分母が0にならず、Fsub (Q)が発散しない。2Θの方向への回折において、基板からの回折線は互いに打ち消し合うのである。だからFsub (Q)が有限になる。
【0086】
つまり2Θのピーク(サテライト)は基板からの回折線の寄与がないのである。これが本発明を基礎づける原理である。基板からの寄与がないということは、薄膜からの寄与だけがあるということである。
先に計算したものは薄膜の構造因子F(Q)である。これがサテライトでピークをもつのは、薄膜が規則正しい規則性をもつからである。この場合は層Aと層Bが規則正しく交互に積層されているからサテライトでN(超格子の繰り返し数)の二乗に比例する回折X線が存在するわけである。
【0087】
もしも欠陥が超格子の中に存在すると、ロッキングカーブのおいてサテライトのピークは下がる。トポグラフというのは平行のX線を試料に当てて平行のX線を回折させ、それによってフィルム等を露光したものである。フィルムの(x,y)点での露光量は、試料の対応点の(x’,y’)でのロッキングカーブのその角度Θの回折線の強度に比例する。トポグラフというのは試料の表面の各点でロッキングカーブを取ったときのサテライト強度を露光量に変換したものと考える事ができる。従ってサテライトの角度にあわせて撮影すると、超格子のみの欠陥の空間分布が分かる事になる。このようなことはこれまで誰も試みた事がない。だれも気づいたこともないと言えよう。
【0088】
以上で本発明の原理を述べた。
実際にトポグラフを撮影する場合はさまざまの工夫が必要になる。ウエハ−が歪んでいるとき(湾曲しているとき)は、同じ方向からX線を入射しても面とX線のなす角度が場所によって変動する。その場合は予め場所によって面方位がどう変化するかを調べておき、ウエハ−の一部に帯状のX線を照射し、ウエハ−を回転させながら、X線を走査する。X線と面との角度を一定に保持しながら走査するのである。サテライトからの回折X線は弱いし、サテライトと主ピークの角度間隔は狭いから歪のあるウエハ−の場合、X線入射角と面の方位のなす角度を厳密にサテライト角度に合致させることは極めて大切な事になる。
【0089】
【実施例】
[実施例1(InP基板)] 基板となる2インチInPウエハ−の透過型X線トポグラフを撮影した。図2にその透過トポグラフ像を示す。模様のようなものはなく縞状の構造もない。濃淡の分布もなく一様なトポグラフ像である。InP基板が均一な単結晶であるからトポグラフ像も均一である。
【0090】
そのInP基板上に発光波長が1.3μmとなるInGaAsP多重量子井戸構造の活性層を有する半導体レ−ザ用単結晶薄膜を有機金属エピタキシャル成長法によって形成した。図1にその構造を示す。InP基板の厚みは350μmである。その上に0.5μmのInPバッファ層、0.2μmの多重量子井戸活性層(λg=1.3μm)、0.4μmのInPクラッド層、0.2μm厚みのInGaAsキャップ層がエピタキシャル成長させてある。
【0091】
エピタキシャル層を有する状態でロッキングカーブ測定をした。図3はロッキングカーブ測定の結果を示す。横軸は2θ、縦軸は反射型回折X線の強度である。63.3゜にあるピークAはInP(004)基板からと基板に格子整合したエピタキシャル成長層からの回折のピークである。これより大きい角度の側にサテライトピークB(+1)、B(+2)、B(+4)、B(+5)が存在する。基板ピークより低い角度の側には、B(−1)、B(−2)、B(−3)、B(−4)、B(−5)のサテライトピークがある。
【0092】
これらは超格子の周期性を反映したサテライトである。ピークAの回折ピークをトポグラフ撮影することもできるし、サテライトピークのトポグラフ像を撮ることもできる。サテライトの場合は回折強度が小さいので露光時間が掛かる。
【0093】
[ピークAのトポグラフ] 初めにピークAの回折を用いて、2結晶反射トポグラフを撮影した。この時、試料に対するX線の入射角度が一定である場合はウエハ−全面のトポグラフ像が得られなかった。その原因は、ウエハ−の反りである。ウエハ−が反っているので、結晶の格子面が湾曲しており、ウエハ−の全面で、平行なX線が回折条件を満足できないからである。
【0094】
そこで面状のビームによって全面のトポグラフ像を撮影することを諦め、X線ビームを線状にした。線状のビームをウエハ−に照射し、これを線と直交する方向に走査することにする。試料は回転可能に支持する。試料をビームによって走査しながら、X線が照射されている線状の領域において、常にピークAの回折条件を満足できるように試料を微小回転させる。試料角度の微調整によって、X線の試料面に対する入射角度は変動するが、ビームと格子面のなす角度は一定に維持される。
【0095】
その結果、図4に示すようなウエハ−全面での2結晶反射トポグラフ像を撮影することができた。中央部の上下に広い暗い部分がある。左右には明るい部分がある。周辺部には同心円上の縞が発生している。外周部の同心円縞の中に微弱であるが、碁盤目状の微細な模様が見られる。このような縞状の模様や碁盤目状の模様はInP基板には存在しなかったものである。であるから、同心円縞模様、碁盤模様はエピタキシャル成長工程において薄膜に導入されたものであると考えられる。
【0096】
さらに微かであるが、ウエハ−の中央部には、(横方向に)直線状の模様がみられる。これも薄膜の欠陥を反映しているものと思われる。しかしピークAはInP基板からの回折が主であるのでエピタキシャル成長層のみの情報を抽出するのは難しい。そこでサテライトピークについての回折像を撮影した。サテライトのトポグラフを取るというところが本発明の新規なところである。
【0097】
[サテライトピークB(−1)のトポグラフ]
これは2θが62.8゜の辺りにピークを持つサテライトである。主ピークAから約0.5゜低いところにできる。入射方向を僅かに変えてサテライトB(−1)のトポグラフを撮影することができる。但し主ピークに比較して回折強度は弱い。当然撮影に長時間かかる。図5はサテライトB(−1)のトポグラフである。10時間かけて撮影したものである。
【0098】
基板の回折ピークAから外れているから、これは薄膜だけからの回折像である。中央部にくっきりと直線が現れている。これは図4にも微かに見えるものであるが、図5では明瞭に見える。基板からの回折X線を全く含まず、エピタキシャル成長層の情報のみからなっている。従って図5のウエハ−中央の横方向の直線模様はエピタキシャル成長層の結晶異常を現しているものと考えられる。このようにサテライトが現れ、サテライトのトポグラフを撮影する、という事は本発明によって初めて提案された新手法である。
【0099】
[ 実施例2(GaAs基板)] 初めに3インチGaAs単結晶ウエハ−の2結晶トポグラフ像を撮影した。これを図7に示す。半径方向に何本かの線が見える。これは結晶方位が不連続になる部分を結ぶ線であろう。広く暗い部分もあるがこれは格子の傾きがあることを意味するのであろう。やはり反りのために一度で全面のトポグラフを撮影することができない。そこで反りに応じてGaAsウエハ−を微小回転させながら全体のトポグラフ像を得た。
【0100】
そのGaAs単結晶基板上に図6に示す薄膜単結晶構造を分子線エピタキシャル成長法によって形成した。厚さ400μmのGaAsウエハ−に、0.8μmのGaAsバッファ層、0.2μm厚のAlGaAs層、0.4μmのGaAs層がエピタキシャル成長してある。エピ層/基板からなる試料のロッキングカーブ測定をした。その結果を図8に示す。横軸はX線の入射角である。単位は秒である。有る基準角からのズレの角度を秒によって表現したものである。縦軸は毎秒のX線カウント数である。
【0101】
中央の高いピークはGaAsの(422)方向の回折ピークである。基板からの回折であるとこれまで述べてきたものである。これが最も高い。薄膜が薄くてX線が薄膜で減衰せず基板まで到達した成分が多いということである。その左側には副ピークAがある。これはAlGaAsからの回折線のピークである。AlGaAs薄膜のAlの混晶比xは主ピークと副ピークAの差の角度に影響する。Alの混晶比が0.5であれば、主ピークとサテライトAの差の角度は175secである。ここでは入射角の差が約20secであるから混晶比は約0.06である。
【0102】
副ピークAのさらに左側にサテライトB1、B2が出現する。サテライトB1、B2はAlGaAsエピタキシャル成長層の厚みを反映して現れるピークである。超格子ではないが、GaAsの中に、AlGaAsが一層存在するので、GaAsとAlGaAsの上下の境界でX線が多重反射する。AlGaAs層で多重反射が可能なブラッグ角がサテライトB1、B2の角度である。ロッキングカーブにおける角度の差はAlGaAsの厚みを与える。従来はこれでとどまっていたのである。
【0103】
本発明はサテライトのトポグラフから薄膜のみの情報が得られるというものである。そこでサテライトB1の角度にX線の入射角を併せてトポグラフを撮影した。これによって、AlGaAsのみの情報を得る事ができる。
その結果を9図に示す。3インチウエハ−のうち横端の部分の約1インチ角の領域のみについてトポグラフを撮影している。サテライトからのX線は微弱である。これでも10時間以上掛かる。ウエハ−全体でなく一部に限定したのは検査時間を短縮するためである。ウエハ−全体にするとさらに数倍の時間がかかる。
【0104】
図7の基板のトポグラフと、図9の薄膜のトポグラフを比較すると次のような事が分かる。セル状の欠陥が図7に現れている。これは基板の欠陥である。同じ位置に同じようなセル状の欠陥が図9にも見える。これは薄膜の欠陥である。GaAs基板の欠陥がそのままエピタキシャル成長層に引き継がれていることが分かる。
【0105】
【発明の効果】
基板の上にエピタキシャル成長させた単結晶薄膜は十分に厚くない限り、従来のX線回折法では薄膜だけの結晶性を評価する事は不可能であった。X線が基板にまで到達し基板からの回折線の強度が薄膜からの回折よりもずっと強いからである。ロッキングカーブ法でもトポグラフ法でも薄膜のみの結晶欠陥を調べることはできなかった。
【0106】
本発明は、2結晶X線回折法を用いて、エピタキシャル成長層の結晶欠陥に代表される結晶性の異常を、基板結晶の異常とは、切り放して評価できる方法を初めて提案する。主ピークの方向ではなくサテライトの方位にX線を入射させサテライトからの回折X線によってトポグラフ像を得る。これによって初めて薄膜のみの情報を、基板情報から分離して求める。
【0107】
本発明は、エピタキシャル成長層が薄い場合でも、薄膜単独の表面欠陥を知る事ができる。これによってエピタキシャル成長層(薄膜)の結晶性と、基板の結晶性との相関を求めることができる。さらにこの相関が、エピタキシャル成長条件によってどのように影響されるのかという事もあきらかになる。このように基板の上のエピタキシャル層を基板から分離してトポグラフを撮影できる方法は本発明が初めて提案するものである。
【0108】
半導体産業は基板の上にエピタキシャル成長させた薄膜にデバイスを作製するようになっている。このような場合、薄膜のみの特性を二次元的に求めることができる優れた方法を初めて提案することになる。本発明の適用範囲は基板、薄膜の結晶性の相関の調査に限定されない。その用途は極めて広い。
【図面の簡単な説明】
【図1】InP基板上に多重量子井戸をエピタキシャル成長させたウエハ−の断面図。
【図2】基板とするInPウエハ−の透過型トポグラフ像の写真。
【図3】InP基板上に成長させた多重量子井戸のロッキングカーブの例。
【図4】InP基板上に多重量子井戸を成長させたウエハ−の基板からの回折を与える主ピークに入射角を合致させて撮影したトポグラフ像。
【図5】InP基板上に多重量子井戸を成長させたウエハ−の薄膜超格子からの回折を与えるサテライトB(−1)に入射角を合致させて撮影したトポグラフ像。
【図6】GaAs基板の上にGaAsバッファ層、AlGaAs活性層、GaAs層をエピタキシャル成長させたウエハ−の概略断面図。
【図7】エピタキシャル成長の基板となる、GaAsウエハ−の2結晶反射トポグラフ像。
【図8】GaAs基板上に図6にしめす層をエピタキシャル成長させたウエハ−に対するロッキングカーブの測定結果を示すグラフ。
【図9】GaAs基板上に図6にしめす層をエピタキシャル成長させたウエハ−に対しサテライトピークB1に入射角を併せてウエハ−の一部のトポグラフを撮影した場合の結果を示す写真。
【図10】2結晶反射トポグラフの原理的な構成を示す平面図。
【図11】基板の上に、物質層Aと物質層Bとが繰り返し成長した超格子構造を示す断面図。
【符号の説明】
1 X線源
2 スリット
3 第1結晶
4 試料(第2結晶)
5 フィルム

Claims (3)

  1. X線2結晶法を用いて単結晶基板上にエピタキシャル成長した単結晶薄膜の結晶性を評価する方法において、ロッキングカーブの主ピーク以外の単結晶薄膜の厚さの周期変化を反映して現れるピークの角度にX線の入射方向をあわせて2結晶トポグラフを撮影することによって基板結晶とは独立に単結晶薄膜のみの結晶性を評価することを特徴とする単結晶薄膜の評価方法。
  2. X線2結晶法を用いて単結晶基板上にエピタキシャル成長した超格子薄膜の結晶性を評価する方法において、超格子の周期性によってロッキングカーブに現れるサテライトピークの角度に入射角度を合致させて2結晶トポグラフグラフを撮影し、基板結晶とは独立に超格子薄膜の結晶性を評価することを特徴とする単結晶薄膜の評価方法。
  3. 2結晶トポグラフの撮影を行うとき、試料の走査に伴って試料結晶の反りに応じて試料を回転させ、X線の試料に対する入射角度を調整し、所定の振動スペクトル或いはサテライトピークに対するX線の角度が一定になるようにしてトポグラフ撮影を行うようにしたことを特徴とする請求項1或いは2に記載の単結晶薄膜の評価方法。
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