JP3626999B2 - 排ガス浄化材及び排ガス浄化方法 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は窒素酸化物と過剰の酸素を含む燃焼排ガスから、窒素酸化物を効果的に還元除去することのできる排ガス浄化材及びそれを用いた浄化方法に関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
自動車用エンジン等の内燃機関や、工場等に設置された燃焼機器、家庭用ファンヒーターなどから排出される各種の燃焼排ガス中には、過剰の酸素とともに一酸化窒素、二酸化窒素等の窒素酸化物が含まれている。ここで、「過剰の酸素を含む」とは、その排ガス中に含まれる一酸化炭素、水素、炭化水素等の未燃焼成分を燃焼するのに必要な理論酸素量より多い酸素を含むことを意味する。また、以下における窒素酸化物とは一酸化窒素及び/又は二酸化窒素を指す。
【0003】
この窒素酸化物は酸性雨の原因の一つとされ、環境上の大きな問題となっている。そのため、各種燃焼機器が排出する排ガス中の窒素酸化物を除去するさまざまな方法が検討されている。
【0004】
過剰の酸素を含む燃焼排ガスから窒素酸化物を除去する方法として、特に大規模な固定燃焼装置(工場等の大型燃焼機等)に対しては、アンモニアを用いる選択的接触還元法が実用化されている。
【0005】
しかしながら、この方法においては、窒素酸化物の還元剤として用いるアンモニアが高価であること、またアンモニアは毒性を有すること、そのために未反応のアンモニアが排出しないように排ガス中の窒素酸化物濃度を計測しながらアンモニア注入量を制御しなければならないこと、一般に装置が大型となること等の問題点がある。
【0006】
また、別な方法として、水素、一酸化炭素、炭化水素等のガスを還元剤として用い、窒素酸化物を還元する非選択的接触還元法があるが、この方法では、効果的な窒素酸化物の低減除去を実行するためには排ガス中の酸素との理論反応量以上の還元剤を添加しなければならず、還元剤を多量に消費する欠点がある。このため非選択的接触還元法は、実際上は、理論空燃比付近で燃焼した残存酸素濃度の低い排ガスに対してのみ有効となり、汎用性に乏しく実際的でない。
【0007】
そこで、ゼオライト又はそれに遷移金属を担持した触媒を用いて、排ガス中の酸素との理論反応量以下の還元剤を添加して窒素酸化物を除去する方法が提案された(たとえば、特開昭63−100919 号、同63−283727 号、特開平1−130735号等) 。
【0008】
しかしながら、これらの方法では、効果的な窒素酸化物の除去が狭い温度領域でしか得られず、また、水分を含むような排ガスでは、窒素酸化物の除去率が著しく低下する。つまり、10%程度の水分を含み、運転条件によって温度変化の大きい車等からの排ガスに対して、窒素酸化物の効果的除去は困難である。
【0009】
したがって、本発明の目的は、固定燃焼装置および酸素過剰条件で燃焼するガソリンエンジン、ディーゼルエンジン等からの燃焼排ガスのように、窒素酸化物や、一酸化炭素、水素、炭化水素等の未燃焼分に対する理論反応量以上の酸素を含有する燃焼排ガスから、効率良く窒素酸化物を還元除去することができる排ガス浄化材及び排ガス浄化方法を提供することである。
【0010】
【課題を解決するための手段】
上記課題に鑑み鋭意研究の結果、本発明者は、多孔質無機酸化物に銀成分を担持してなる触媒上で、エタノールなどの有機化合物が、酸素及び窒素酸化物を含む排ガスと反応し、窒素酸化物を窒素ガスに還元するとともに、副生成物として亜硝酸エステル、アンモニアなどの含窒素化合物やアルデヒドを生成していることを見出した。生成されたアルデヒドを利用して効果的に窒素酸化物を除去できる第二の銀系触媒をさらに設けて、副生成物である含窒素化合物を窒素まで還元できる銅系又は銅、W系成分を担持してなる触媒と白金系成分を担持してなる触媒とを混合し、二つの銀系触媒と上記混合触媒とを組み合わせて形成される排ガス浄化材を用い、排ガス中に炭化水素と炭素数2以上の含酸素有機化合物のいずれか又はそれらを含む燃料を添加し、特定の温度及び空間速度で上記の浄化材に排ガスを接触させれば、広い温度領域で窒素酸化物を効果的に除去することができることを発見し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する本発明の第一の排ガス浄化材は、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)を担持してなる第三の触媒とからなり、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒及び前記第三の触媒を有することを特徴とする。
【0012】
窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する本発明の第二の排ガス浄化材は、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)と、W、V、Moからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物又は硫酸塩30重量%以下(金属元素換算値)とを担持してなる第三の触媒とからなり、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒及び前記第三の触媒を有することを特徴とする。
【0013】
窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する本発明の第三の排ガス浄化材は、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)を担持してなる第三の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種としてPt、Pd、Ru、Rh、Ir及びAuからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素0.01〜5重量%(金属元素換算値)を担持してなる第四の触媒とからなり、前記第三の触媒と前記第四の触媒とが混合されており、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒、前記混合触媒を有することを特徴とする
【0014】
窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する本発明の第四の排ガス浄化材は、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)と、W、V、Moからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物又は硫酸塩30重量%以下(金属元素換算値)とを担持してなる第三の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種としてPt、Pd、Ru、Rh、Ir及びAuからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素0.01〜5重量%(金属元素換算値)を担持してなる第四の触媒とからなり、前記第三の触媒と前記第四の触媒とが混合されており、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒、前記混合触媒を有することを特徴とする
【0015】
さらに、窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する本発明の排ガス浄化方法は、上記の排ガス浄化材を用い、前記排ガス浄化材を排ガス導管の途中に設置し、前記浄化材の上流側で炭化水素及び/又は含酸素有機化合物を添加した排ガスを、150〜600℃において前記浄化材に接触させ、前記第一の触媒上で前記窒素酸化物を還元し、前記第一の触媒上で副生したアルデヒドを還元剤として前記第二の触媒上で残存する窒素酸化物を還元し、前記第一の触媒上で副生した含窒素化合物を還元剤として前記第三の触媒上で残存する窒素酸化物を還元することにより、前記排ガス中の前記窒素酸化物を除去することを特徴とする。
【0016】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の第一の排ガス浄化材は、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩を担持してなる第三の触媒とからなる。
【0017】
本発明の第二の排ガス浄化材は、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)と、W、V、Moからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物又は硫酸塩30重量%以下(金属元素換算値)とを担持してなる第三の触媒とからなる。
【0018】
第一の排ガス浄化材及び第二の排ガス浄化材では、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒及び前記第三の触媒を有する排ガス浄化材を排ガス導管中に設置し、浄化材の設置位置より上流側で炭化水素と炭素数2以上の含酸素有機化合物のいずれか又はそれを含む燃料を添加した排ガスをこの浄化材に接触させて、排ガス中の窒素酸化物を還元除去する。このような配置とすることによって、広い排ガス温度領域で窒素酸化物を効果的に還元除去することができる。
【0019】
本発明の第三の排ガス浄化材は、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩を担持してなる第三の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種としてPt、Pd、Ru、Rh、Ir及びAuからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素0.01〜5重量%(金属元素換算値)を担持してなる第四の触媒とからなる。
【0020】
本発明の第四の排ガス浄化材は、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)と、W、V、Moからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物又は硫酸塩30重量%以下(金属元素換算値)とを担持してなる第三の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種としてPt、Pd、Ru、Rh、Ir及びAuからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素0.01〜5重量%(金属元素換算値)を担持してなる第四の触媒とからなる。
【0021】
第三の排ガス浄化材及び第四の排ガス浄化材では、前記第三の触媒と前記第四の触媒とが混合されており、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒、前記混合触媒を有する排ガス浄化材を排ガス導管中に設置し、浄化材の設置位置より上流側で炭化水素と炭素数2以上の含酸素有機化合物のいずれか又はそれを含む燃料を添加した排ガスをこの浄化材に接触させて、排ガス中の窒素酸化物を還元除去する。
【0022】
本発明の排ガス浄化材の第一の好ましい形態は、粉末状の多孔質無機酸化物に触媒活性種を担持してなる触媒を浄化材基体にコートしてなる浄化材である。浄化材の基体を形成するセラミックス材料としては、γ−アルミナ及びその酸化物(γ−アルミナ−チタニア、γ−アルミナ−シリカ、γ−アルミナ−ジルコニア等)、ジルコニア、チタニア−ジルコニアなどの多孔質で表面積の大きい耐熱性のものが挙げられる。高耐熱性が要求される場合、コージェライト、ムライト、アルミナ及びその複合物等を用いるのが好ましい。また、排ガス浄化材の基体に公知の金属材料を用いることもできる。
【0023】
排ガス浄化材の基体の形状及び大きさは、目的に応じて種々変更できる。実用的には、入口部分、中間部分及び出口部分等、二つ以上の部分からなることが好ましい。またその構造としては、ハニカム構造型、フォーム型、繊維状耐火物からなる三次元網目構造型、あるいは顆粒状、ペレット状等が挙げられる。
【0024】
本発明の排ガス浄化材の第二の好ましい形態は、ペレット状又は顆粒状粉末状の多孔質無機酸化物に触媒活性種を担持してなる触媒、又は触媒活性種をそれぞれ担持した粉末状多孔質無機酸化物をペレット状又は顆粒状に成形したものを所望形状のケーシングに充填してなる浄化材である。
【0025】
本発明の浄化材には以下の触媒が形成されている。
(1)第一の触媒及び第二の触媒
第一の触媒及び第二の触媒は、多孔質無機酸化物に銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物を担持してなり、排ガスの流入側に形成され、広い温度領域での窒素酸化物除去に作用する。銀化合物は銀の酸化物、ハロゲン化銀、硫酸銀及び燐酸銀などからなる群より選ばれた少なくとも一種であり、好ましくは銀の酸化物、塩化銀及び硫酸銀のいずれか一種以上であり、更に好ましくは銀の酸化物及び/又は塩化銀である。多孔質の無機酸化物としては、アルミナ、チタニアのいずれか又はそれらを含む複合酸化物を用いるのが好ましい。アルミナ、チタニア又はそれらの複合酸化物を用いることにより、添加した炭化水素、含酸素有機化合物及び/又は排ガス中の残留炭化水素と排ガス中の窒素酸化物との反応が効率良く起こる。
【0026】
第一の触媒及び第二の触媒で用いるアルミナなどの多孔質の無機酸化物の比表面積は10m2 /g以上であるのが好ましい。比表面積が10m2 /g未満であると、排ガスと無機酸化物(及びこれに担持した銀成分)との接触面積が小さくなり、良好な窒素酸化物の除去が行えない。より好ましい多孔質無機酸化物の比表面積は30m2 /g以上である。
【0027】
第一の触媒では、上記したγ−アルミナ等の無機酸化物に活性種として担持する銀成分の担持量は、無機酸化物100重量%に対して0.2〜12重量%(銀元素換算値)とする。0.2重量%未満では窒素酸化物の除去率が低下する。また、12重量%を超す量の銀成分を担持すると炭化水素及び/又は含酸素有機化合物自身の燃焼が起きやすく、窒素酸化物の除去率はかえって低下する。好ましい銀成分の担持量は0.5〜10重量%である。
【0028】
第二の触媒では、上記したγ−アルミナ等の無機酸化物に活性種として担持する銀成分の担持量は、無機酸化物100重量%に対して0.5〜15重量%(銀元素換算値)で、かつ第一の触媒の活性種の担持率より多い量とする。つまり、第二の触媒上の銀成分の含有率を常に第一の触媒上のものより大きくする。0.5重量%未満又は第一の触媒の活性種の担持率以下では、第一の触媒で生成したアルデヒドを用いた窒素酸化物の除去が行われない。また、15重量%を超す量の銀成分を担持すると炭化水素及び/又は含酸素有機化合物自身の燃焼が起きやすく、窒素酸化物の除去率はかえって低下する。好ましい第二触媒における銀成分の担持量は1〜12重量%である。
【0029】
アルミナ等の無機酸化物に銀を担持する方法としては、公知の含浸法、沈澱法等を用いることができる。含浸法を用いる際、銀の硝酸塩、塩化物、硫酸塩、炭酸塩等の水溶液又はアンモニア性水溶液に多孔質無機酸化物を浸漬する。又は硝酸銀水溶液に多孔質無機酸化物を浸漬し、乾燥後、塩化アンモニウム又は硫酸アンモニウムの水溶液に再び浸漬する。沈澱法では硝酸銀とハロゲン化アンモニウムとを反応させて、ハロゲン化銀として多孔質無機酸化物上に沈澱させる。これを50〜150℃、特に70℃程度で乾燥後、100〜600℃で段階的に昇温して焼成するのが好ましい。焼成は、空気中、酸素を含む窒素気流下や水素ガス気流下で行うのが好ましい。水素ガス気流下で行う場合には、最後に300〜650℃で酸化処理するのが好ましい。
【0030】
硝酸銀等の水溶液を用いて多孔質無機酸化物に担持された銀成分は酸化雰囲気下で焼成すると円状集合体を形成することが観測されている。本発明の浄化材では、銀成分集合体の平均直径を10〜10000nmとするのが好ましい。一般的には、銀成分集合体の直径が小さいほど、反応特性が高いが、平均直径が10nm未満であると、還元剤である炭化水素及び/又は含酸素有機化合物の酸化反応のみが進み、窒素酸化物の除去率が低下する。一方、平均直径が10000nmを越えると、銀成分の反応特性が低減し、窒素酸化物の除去率が下がる。好ましい銀成分集合体の平均直径は10〜5000nm、更に好ましくは10〜2000nmとする。なお、ここで言う平均とは算術平均のことを意味する。
【0031】
なお、浄化材の形態を上述した第一の好ましい形態とする場合、浄化材基体上に設ける第一の触媒及び第二の触媒の厚さは、一般に、基体材と、この触媒との熱膨張特性の違いから制限される場合が多い。浄化材基体上に設ける触媒の厚さを300μm以下とするのがよい。このような厚さとすれば、使用中に熱衝撃等で浄化材が破損することを防ぐことができる。浄化材基体の表面に触媒を形成する方法は公知のウォシュコート法等によって行われる。
【0032】
また、浄化材基体の表面上に設ける第一触媒及び第二の触媒の量は、それぞれ浄化材基体の20〜300g/リットルとするのが好ましい。触媒の量が20g/リットル未満では良好なNOx の除去が行えない。一方、触媒の量が300g/リットルを超えると除去特性はそれほど上がらず、圧力損失が大きくなる。より好ましくは、浄化材基体の表面上に設ける第一の触媒及び第二の触媒をそれぞれ浄化材基体の50〜200g/リットルとする。
【0033】
(2)第三の触媒
第三の触媒は、多孔質無機酸化物に触媒活性種を担持してなる。多孔質無機酸化物としては、アルミナ、チタニア及びゼオライトのいずれか又はそれらを含む複合酸化物又はそれらの混合酸化物を用いるのが好ましい。第一の触媒と同様に、多孔質の無機酸化物の比表面積は10m2 /g以上であることが好ましい。
【0034】
本発明の第一及び第三の排ガス浄化材では、上記の第三の触媒の活性種としては銅の酸化物及び/又は硫酸塩を用いる。多孔質無機酸化物を100重量%として、銅の酸化物及び/又は硫酸銅の担持量は0.2〜30重量%(金属元素換算値)である。好ましい担持量が0.5〜25重量%(金属元素換算値)である。
【0035】
本発明の第二及び第四の排ガス浄化材では、上記の第三の触媒の活性種としては銅の酸化物及び/又は硫酸塩と、W、V、Moからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物又は硫酸塩とを用いる。W、V、Moのうち、W及び/又はVを用いるのが好ましい。多孔質無機酸化物を100重量%として、銅の酸化物及び/又は硫酸銅の担持量は0.2〜30重量%(金属元素換算値)であり、W系成分の担持量は30重量%以下(金属元素換算値)である。また銅成分とW系成分との合計担持量は0.2〜60重量%(金属元素換算値)(金属元素換算値)である。銅成分の好ましい担持量が0.5〜25重量%(金属元素換算値)であり、W系成分の好ましい担持量は25重量%以下(金属元素換算値)であり、銅成分とW系成分との好ましい合計担持量は0.5〜50重量%(金属元素換算値)とする。第三の触媒を用いることにより、窒素酸化物や第一触媒で生じる亜硝酸エステル、アンモニアなどの含窒素化合物を窒素まで還元して、窒素酸化物の除去が可能になる。
【0036】
第三の触媒における活性種の担持は、公知の含浸法、沈殿法等を用いることができる。含浸法を用いる際、触媒活性種元素の炭酸塩、硝酸塩、酢酸塩、硫酸塩等の水溶液に多孔質無機酸化物を浸漬する。銅成分の場合、硫酸銅、硝酸銅などの水溶液を用いる。W、V、Moの場合、各元素のアンモニウム塩、しゅう酸塩等の水溶液に多孔質無機酸化物を浸漬して用いる。50〜150℃、特に70℃で乾燥後、100〜600℃で段階的に昇温して焼成することによって行われる。この焼成は空気中、酸素を含む窒素気流下で行う。また、チタニアの代わりにメタチタン酸(含水酸化チタン)を出発物質として用い、V、W、Moを担持することも有効な方法である。
【0037】
なお、浄化材の形態を上述した第一の好ましい形態とする場合、浄化材基体上に設ける第三の触媒の厚さを300μm以下とするのがよい。また、浄化材基体の表面上に設ける第三の触媒の量は、浄化材基体の20〜300g/リットルとするのが好ましい。
【0038】
(3)第四の触媒
第四の触媒は、多孔質無機酸化物に触媒活性種を担持してなり、排ガスの流出側に形成され、低い温度領域における窒素酸化物の除去に作用するとともに、一酸化炭素や炭化水素の酸化除去を行う。多孔質無機酸化物としては、アルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、ゼオライトからなる群より選ばれた一種以上の酸化物又は複合酸化物を用いるのが好ましい。第一の触媒と同様に、多孔質の無機酸化物の比表面積は10m2 /g以上であることが好ましい。
【0039】
上記の第四触媒の活性種としては、Pt、Pd、Ru、Rh、Ir及びAuからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素を用い、Pt、Pd、Ru、Rh及びAuの少なくとも一種を用いるのが好ましく、特にPt、Pd及びAuの少なくとも一種が好ましい。第四の触媒で無機酸化物に担持する活性種の合計は、上述の多孔質の無機酸化物を基準(100重量%) として0.01〜5重量%とし、好ましくは0.01〜4重量%とする。触媒活性種の量が前記多孔質無機酸化物に対して、5重量%を超す触媒担持量としても窒素酸化物の除去性能が向上しない。
【0040】
また、第四の触媒の活性種として、さらに、La、Ce等の希土類元素、Ca、Mgなどのアルカリ土類元素、Na、Kなどのアルカリ金属元素からなる群より選ばれた少なくとも一つ以上の元素を10重量%以下担持することが好ましい。希土類、アルカリ土類、アルカリ金属元素を担持することにより、白金系の触媒の耐熱性を向上させることができる。
【0041】
第四の触媒における活性種の担持は、公知の含浸法、沈澱法等を用いることができる。含浸法を用いる際、触媒活性種元素の塩化物又はヘキサクロロ金属酸等の水溶液に多孔質無機酸化物を浸漬し、70℃で乾燥後、100〜700℃で段階的に昇温して焼成することによって行われる。焼成は窒素気流下、水素含有又は酸素含有窒素気流下で行い、好ましくは窒素気流下で焼成した後、水素含有窒素気流下、酸素含有窒素気流下でそれぞれ焼成を行う。なお、Pt系担持成分は金属元素として表示しているが、通常の浄化材の使用温度条件では担持成分は金属と酸化物の状態で存在する。
【0042】
なお、浄化材の形態を上述した第一の好ましい形態とする場合、浄化材基体上に設ける第四の触媒の厚さを300μm以下とするのがよい。また、浄化材基体の表面上に設ける第四の触媒の量は、浄化材基体に対して20〜300g/リットルとするのが好ましい。
【0043】
第一の触媒と第二の触媒との重量比(多孔質無機酸化物と触媒活性種との合計重量の比)は、1:10〜10:1とするのが好ましい。比率が1:10未満である(第一の触媒が少ない)と、150〜600℃の広い温度範囲で全体的に窒素酸化物の浄化率が低下する。一方、比率が10:1を超え、第二の触媒が少ないと、第一の触媒上でできたアルデヒドが窒素酸化物の還元に有効に使用されない。より好ましい第一触媒と第二の触媒の重量比は1:5〜5:1である。
【0044】
本発明の第一及び第二の排ガス浄化材においては、第一の触媒及び第二の触媒の合計重量と第三の触媒の重量との比(多孔質無機酸化物と触媒活性種との合計重量の比)は、10:1〜1:5とするのが好ましい。比率が1:5未満である(第一の触媒及び第二の触媒が少ない)と、150〜600℃の広い温度範囲で全体的に窒素酸化物の浄化率が低下する。一方、比率が10:1を超え、第三の触媒が少ないと、第一の触媒上でできた亜硝酸エステルやアンモニアが窒素酸化物の還元に有効に使用されない。より好ましい第一の触媒及び第二の触媒の合計重量と第三の触媒の重量比は5:1〜1:4である。
【0045】
本発明の第三及び第四の排ガス浄化材では、第三の触媒と第四の触媒を混合して用いる。この混合によって、第三の触媒の還元作用と第四の触媒の酸化作用が互いに影響することなく同時に進行することができる。浄化材が上記第一の好ましい形態である場合、浄化材基体上に設ける第三の触媒と第四の触媒との混合触媒の厚さを300μm以下とするのがよい。また、浄化材基体の表面上に設ける第三の触媒と第四の触媒との混合触媒の量は、浄化材基体に対して20〜300g/リットルとするのが好ましい。
【0046】
第三の触媒と第四の触媒との重量比(多孔質無機酸化物と触媒活性種との合計重量の比)は、100:1〜100:50とするのが好ましい。第三の触媒100重量部に対して第四の触媒が1重量部未満の場合では、炭化水素、一酸化炭素の除去率が低下する。一方、第三の触媒100重量部に対して第四の触媒が50重量部を越えると、150〜600℃の広い温度範囲で全体的に窒素酸化物の浄化率が低下する。より好ましい第三の触媒と第四の触媒の重量比は100:1〜100:30である。
【0047】
第一の触媒及び第二の触媒の合計重量と、第三の触媒と第四の触媒との混合触媒の重量との比(多孔質無機酸化物と触媒活性種との合計重量の比)は、10:1〜1:5とするのが好ましい。比率が1:5未満である(第一の触媒及び第二の触媒が少ない)と、150〜600℃の広い温度範囲で全体的に窒素酸化物の浄化率が低下する。一方、比率が10:1を超え、混合触媒が少ないと、第一の触媒上でできた亜硝酸エステルやアンモニアが窒素酸化物の還元に有効に利用されない、また、一酸化炭素、炭化水素の除去率が低下する。より好ましい第一触媒及び第二の触媒の合計重量と混合触媒の重量比は5:1〜1:4である。
【0048】
上述した構成の浄化材を用いれば、150〜600℃の広い温度領域において、水分10%程度及び硫黄酸化物を含む排ガスでも、良好な窒素酸化物の除去を行うことができる。
【0049】
次に、本発明の方法について説明する。
まず、本発明の第一及び第二の排ガス浄化材を用いる場合、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に第一の触媒、第二の触媒及び第三の触媒を排ガス導管の途中に設置する。
【0050】
本発明の第三及び第四の排ガス浄化材を用いる場合、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に第一の触媒、第二の触媒、第三の触媒と第四の触媒の混合触媒を排ガス導管の途中に設置する。
【0051】
排ガス中には、残留炭化水素としてエチレン、プロピレン等がある程度は含まれるが、一般に排ガス中のNOx を還元するのに十分な量ではないので、外部から炭化水素及び/又は含酸素有機化合物、好ましくは含酸素有機化合物又はそれと炭化水素燃料と混合してなる還元剤を排ガス中に導入する。還元剤の導入位置は、浄化材を設置した位置より上流側である。
【0052】
外部から導入する炭化水素としては、標準状態でガス状又は液体状のアルカン、アルケン及び/又はアルキンを用いることができる。特にアルカン又はアルケンの場合では炭素数2以上が好ましい。標準状態で液体状の炭化水素としては、具体的に、軽油、セタン、ヘプタン、灯油、ガソリン等の炭化水素が挙げられる。その中でも、沸点50〜350℃の炭化水素が特に好ましい。外部から導入する含酸素有機化合物として、炭素数2以上のエタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、又はそれらを含む燃料を用いることができる。
【0053】
外部から導入する炭化水素及び/又は含酸素有機化合物の量は、重量比(添加する還元剤の重量/排ガス中の窒素酸化物の重量)が0.1〜5となるようにするのが好ましい。この重量比が0.1未満であると、窒素酸化物の除去率が大きくならない。一方、5を超えると、燃費悪化につながる。
【0054】
また、炭化水素又は含酸素有機化合物を含有する燃料を添加する場合、燃料としてガソリン、軽油、灯油などを用いるのが好ましい。この場合、還元剤の量は上記と同様に重量比(添加する還元剤の重量/排ガス中の窒素酸化物の重量)が0.1〜5となるように設定する。
【0055】
本発明では、含酸素有機化合物、炭化水素、亜硝酸エステル又はアンモニア等による窒素酸化物の還元除去を効率的に進行させるために、第一の触媒及び第二の触媒における空間速度はそれぞれ 150,000h−1以下、好ましくは 100,000h−1以下とする。第一の触媒及び第二の触媒の空間速度が 150,000h−1を越えると、窒素酸化物の還元反応が十分に起こらず、窒素酸化物の除去率が低下する。第三の触媒又は第三の触媒と第四の触媒との混合触媒の空間速度は 200,000h−1以下、好ましくは 150,000h−1以下とする。
【0056】
また、本発明では、炭化水素及び/又は含酸素有機化合物と窒素酸化物とが反応する部位である浄化材設置部位における排ガスの温度を150〜600℃に保つ。排ガスの温度が150℃未満であると還元剤と窒素酸化物との反応が進行せず、良好な窒素酸化物の除去を行うことができない。一方、600℃を超す温度とすると炭化水素及び/又は含酸素有機化合物自身の燃焼が始まり、窒素酸化物の還元除去が行えない。好ましい排ガス温度は200〜550℃であり、より好ましくは300〜500℃である。
【0057】
【実施例】
本発明を以下の具体的実施例によりさらに詳細に説明する。
実施例1
市販のγ−アルミナ粉末(比表面積200m2 /g)を硝酸銀水溶液に浸漬したあと取り出して、70℃で2時間乾燥した。そして、空気中で、段階的に600℃まで昇温したあと、5時間焼成し、アルミナに対して3.1重量%(金属元素換算値)の銀を担持した第一の触媒を調製した。第一の触媒0.26gを、市販のコージェライト製ハニカム状成形体(直径20mm、長さ8.3mm、400セル/インチ2 )にコートし、乾燥後600℃まで段階的に焼成し、銀系浄化材(第一の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0058】
上記銀系触媒と同じ方法で、粉末状アルミナに5.0重量%(金属元素換算値)の銀を担持した第二の触媒を調製し、上記と同様なハニカム状成形体に第二の触媒0.26gをコートし、同じ方法で第二の銀系浄化材(第二の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0059】
次に、硫酸銅水溶液(銅濃度7.7重量%)に粉末状チタニア(比表面積50m2 /g)を浸漬し、空気中で、80℃、100℃、120℃で各2時間乾燥した。続いて、酸素を20%含む窒素気流下で120℃〜500℃まで段階的に昇温して500℃で5時間焼成し、チタニアに対して硫酸銅4.4重量%(銅元素換算値)を担持した第三の触媒を調製した。上記銀系浄化材と同様なハニカム成形体に0.26gのスラリー化した第三の触媒をコートし、銀系浄化材と同じ条件で乾燥、焼成を行い、銅系浄化材(第三の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0060】
反応管内の排ガスの流入側から流出側へ順に銀系浄化材、第二の銀系浄化材、銅系浄化材をセットした。次に、表1に示す組成のガス(一酸化窒素、酸素、エタノール、二酸化硫黄、窒素及び水分)を毎分3.48リットル(標準状態)の流量で流して(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h-1である)、反応管内の排ガス温度を300〜500℃の範囲に保ち、エタノールと窒素酸化物とを反応させた。
【0061】
反応管通過後のガスの窒素酸化物の濃度を化学発光式窒素酸化物分析計により測定し、窒素酸化物除去率を求めた。結果を表2に示す。
【0062】
【0063】
実施例2
タングステン酸アンモニウムパラ五水和物、しゅう酸に水を加え、水浴上で加熱して溶解させた後、冷却した水溶液(タングステン濃度15.5重量%)に、粉末状チタニア(比表面積50m2 /g)を投入し、20分間浸漬した。その後、溶液からチタニアを分離し、空気中で、80℃、100℃、120℃で各2時間乾燥した。続いて、酸素20%を含む窒素気流下で120℃から500℃まで5時間かけで昇温し、500℃で4時間焼成して、チタニアに対してWの酸化物を7.4重量%(金属元素換算値)担持したW系触媒を調製した。この触媒を硫酸銅水溶液(銅濃度9.0重量%)に20分間浸漬し、そして実施例1の第三の触媒と同じ方法で乾燥、焼成し、チタニアに対してWの酸化物7.4重量%、硫酸銅3.7重量%(金属元素換算値)を担持した第三の触媒を調製した。0.26gの第三の触媒をスラリー化した後、実施例1と同じ方法でハニカム成形体にコートし、乾燥、焼成を行い、銅、W系浄化材(第三の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0064】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅、W系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0065】
実施例3
五酸化バナジウムにしゅう酸を加え、水浴上で加熱して溶解させた後、冷却した水溶液(バナジウム濃度7.8重量%)に、粉末状チタニア(比表面積50m2 /g)を投入し、20分間浸漬した。その後、溶液からチタニアを分離し、空気中で、80℃、100℃、120℃で各2時間乾燥した。続いて、酸素20%を含む窒素気流下で120℃〜500℃まで5時間かけで昇温し、500℃で4時間焼成して、チタニアに対してV酸化物を3.8重量%(金属元素換算値)担持したV系触媒を調製した。このV系触媒3.3g(見掛け体積3.1ml)を硫酸銅水溶液(銅濃度9.0重量%)に20分間浸漬し、そして実施例1の第三の触媒と同じ方法で乾燥、焼成し、チタニアに対してVの酸化物3.8重量%、硫酸銅4.0重量%(金属元素換算値)を担持した第三の触媒を調製した。0.26gの第三の触媒をスラリー化した後、実施例1と同じ方法でハニカム成形体にコートし、乾燥、焼成を行い、銅、V系浄化材(第三の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0066】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅、V系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0067】
実施例4
実施例3で調製したV系触媒3.3g(見掛け体積3.1ml)を硝酸銅水溶液(銅濃度9.5重量%)に20分間浸漬し、そして実施例1の第三の触媒と同じ方法で乾燥、焼成し、チタニアに対してVの酸化物3.8重量%、銅の酸化物4.5重量%(金属元素換算値)を担持した第三の触媒を調製した。0.26gの第三の触媒をスラリー化した後、実施例1と同じ方法でハニカム成形体にコートし、乾燥、焼成を行い、銅、V系浄化材(第三の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0068】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅、V系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0069】
実施例5
実施例1と同じ方法で粉末状チタニアを硝酸銅水溶液(銅濃度9.5重量%)に20分間浸漬し、そして実施例1の第三の触媒と同じ方法で乾燥、焼成し、チタニアに対して銅の酸化物4.5重量%(金属元素換算値)を担持した第三の触媒を調製した。
【0070】
上記第二の触媒と実施例1で調製した0.26gの第三の触媒をスラリー化した後、実施例1と同じ方法でハニカム成形体に混合触媒をコートし、乾燥、焼成を行い、銅系浄化材(第三の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0071】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0072】
実施例6
実施例1の第三の触媒と同様のチタニアを塩化白金酸水溶液に20分間浸漬した後、空気中、80℃で2時間乾燥し、窒素気流下で120℃で2時間、200〜400℃まで段階的に各1時間焼成した。そして、水素ガス4%を含む窒素気流下で50℃〜400℃まで5時間かけて昇温し、400℃で4時間焼成し、さらに、酸素を10%含む窒素気流下で50℃〜500℃まで5時間かけて昇温し、500℃で5時間焼成し、チタニアに対してPtを0.21重量%(金属元素換算値)担持した第四の触媒を調製した。
【0073】
実施例1の第三の触媒と上記第四の触媒の重量比が40:1になるように第二の触媒と第三の触媒を混合してスラリー化した後、実施例1の銀系浄化材と同様なハニカム成形体に0.26gの混合触媒をコートし。実施例1の銀系浄化材と同じ条件で乾燥、焼成を行い、銅、白金系浄化材(第三、第四の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0074】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅、白金系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0075】
実施例7
実施例2で調製した第三の触媒と実施例6で調製した第四の触媒を重量比が40:1になるように混合してスラリー化した後、実施例6と同じ方法でハニカム成形体に0.26gの混合触媒をコートし、乾燥、焼成を行い、銅、W、白金系浄化材(第三、第四の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0076】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅、W、白金系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0077】
実施例8
実施例3で調製した第三の触媒と実施例6で調製した第四の触媒を重量比が20:1になるように混合してスラリー化した後、実施例6と同じ方法でハニカム成形体に0.26gの混合触媒をコートし、乾燥、焼成を行い、銅、V、白金系浄化材(第三、第四の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0078】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅、V、白金系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0079】
実施例9
実施例4で調製した第三の触媒と実施例6で調製した第四の触媒を重量比が20:1になるように混合してスラリー化した後、実施例6と同じ方法でハニカム成形体に0.26gの混合触媒をコートし、乾燥、焼成を行い、銅、V、白金系浄化材(第三、第四の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0080】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅、V、白金系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0081】
実施例10
実施例5で調製した第三の触媒と実施例6で調製した第四の触媒を重量比が20:1になるように混合してスラリー化した後、実施例6と同じ方法でハニカム成形体に0.26gの混合触媒をコートし、乾燥、焼成を行い、銅、白金系浄化材(第三、第四の触媒をコートした浄化材)を調製した。
【0082】
反応管内の排ガスの流入側からに流出側へ順に実施例1の銀系浄化材、実施例1の第二の銀系浄化材、上記銅、白金系浄化材をセットした。実施例1と同様の反応条件(各浄化材の見かけ空間速度はそれぞれ約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0083】
比較例1
実施例1で調製した第一の触媒0.52gを同様のハニカム成形体にコートして、乾燥、焼成を行い、銀系浄化材を調製した。銀系浄化材を排ガスの導管にセットし、実施例1と同様の反応条件(見かけ空間速度は約80,000h−1である)で、表1に示す組成のガスを用いて評価を行った。結果を表2に示す。
【0084】
【0085】
表2からわかるように、銀触媒だけを用いた比較例1に比べて、実施例1〜10では広い排ガス温度領域で窒素酸化物の良好な除去がみられた。
【0086】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明の排ガス浄化材を用いれば、広い温度領域において過剰の酸素を含む排ガス中の窒素酸化物を効率良く除去することができる。本発明の排ガス浄化材及び浄化方法は、各種燃焼機、自動車等の排ガス浄化に広く利用することができる。
Claims (10)
- 窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する排ガス浄化材において、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)を担持してなる第三の触媒とからなり、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒及び前記第三の触媒を有することを特徴とする排ガス浄化材。
- 窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する排ガス浄化材において、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)と、W、V、Moからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物又は硫酸塩30重量%以下(金属元素換算値)とを担持してなる第三の触媒とからなり、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒及び前記第三の触媒を有することを特徴とする排ガス浄化材。
- 窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する排ガス浄化材において、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)を担持してなる第三の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種としてPt、Pd、Ru、Rh、Ir及びAuからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素0.01〜5重量%(金属元素換算値)を担持してなる第四の触媒とからなり、前記第三の触媒と前記第四の触媒とが混合されており、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒、前記混合触媒を有することを特徴とする排ガス浄化材。
- 窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する排ガス浄化材において、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.2〜12重量%(銀元素換算値)を担持してなる第一の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銀及び/又は銀化合物、又はそれらの混合物0.5〜15重量%(銀元素換算値)かつ前記第一の触媒の活性種の担持率より多い量を担持してなる第二の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種として銅の酸化物及び/又は硫酸塩0.2〜30重量%(銅元素換算値)と、W、V、Moからなる群より選ばれた少なくとも一種の元素の酸化物又は硫酸塩30重量%以下(金属元素換算値)とを担持してなる第三の触媒と、多孔質の無機酸化物に活性種としてPt、Pd、Ru、Rh、Ir及びAuからなる群より選ばれた少なくとも1種の元素0.01〜5重量%(金属元素換算値)を担持してなる第四の触媒とからなり、前記第三の触媒と前記第四の触媒とが混合されており、浄化材の排ガス流入側から流出側へ順に前記第一の触媒、前記第二の触媒、前記混合触媒を有することを特徴とする排ガス浄化材。
- 請求項3又は4に記載の排ガス浄化材において、前記第三の触媒と第四の触媒の重量比は100:1〜100:50であることを特徴とする排ガス浄化材。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の排ガス浄化材において、前記第一、第二、第三及び第四の触媒の内の一つ以上がセラッミクス製又は金属製の基体の表面にコートされたものであることを特徴とする排ガス浄化材。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の排ガス浄化材において、前記第一、第二、第三及び第四の触媒の内の一つ以上がペレット状又は顆粒状であることを特徴とする排ガス浄化材。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の排ガス浄化材において、前記銀化合物は銀の酸化物、ハロゲン化銀、硫酸銀及び燐酸銀からなる群より選ばれた少なくとも一種であることを特徴とする排ガス浄化材。
- 請求項1〜8のいずれかに記載の排ガス浄化材において、前記多孔質無機酸化物が、第一及び第二の触媒ではアルミナ、チタニアのいずれか又はそれらを含む複合酸化物、第三の触媒ではアルミナ、チタニア及びゼオライトのいずれか又はそれらを含む複合酸化物又はそれらの混合酸化物、第四の触媒ではアルミナ、チタニア、ジルコニア、シリカ、ゼオライトからなる群より選ばれた一種以上の酸化物であることを特徴とする排ガス浄化材。
- 請求項1〜9のいずれかに記載の排ガス浄化材を用い、窒素酸化物と、共存する未燃焼成分に対する理論反応量より多い酸素とを含む燃焼排ガスから窒素酸化物を還元除去する排ガス浄化方法において、前記排ガス浄化材を排ガス導管の途中に設置し、前記浄化材の上流側で炭化水素及び/又は含酸素有機化合物を添加した排ガスを、150〜600℃において前記浄化材に接触させ、前記第一の触媒上で前記窒素酸化物を還元し、前記第一の触媒上で副生したアルデヒドを還元剤として前記第二の触媒上で残存する窒素酸化物を還元し、前記第一の触媒上で副生した含窒素化合物を還元剤として前記第三の触媒上で残存する窒素酸化物を還元することにより、前記排ガス中の前記窒素酸化物を除去することを特徴とする排ガス浄化方法。
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