JP3626552B2 - 溶鉱炉炉底の冷却方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は冷却条件を適切に決定することのできる溶鉱炉炉底の冷却方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶鉱炉の炉底に内張りされた耐火物を保護するために、その側壁や底盤の下部に配置された冷却管によって炉底の水冷がなされている。
しかし、この冷却管による抜熱が過剰となると、溶銑の高融点成分が冷却側に析出し、付着物を形成して、炉底における溶銑の流れが変化し、耐火物の溶損が不均一となって炉底耐火物の異常溶損の原因となることがある。
従って、このような付着物の析出、消長を制御して、溶鉱炉炉底の局部的な熱負荷の変動に応じて適正な冷却条件の下で冷却を行うことが必要となる。
例えば、特開平2−104603号公報には、高炉の炉底部の水冷による冷却法において、円形である前記炉底部の冷却範囲を中心部分と周辺部分に分け、炉底煉瓦に埋設された温度センサの指示により、それぞれ独立に冷却水の流量を調節する高炉の冷却方法が記載されている。
また、特開昭63−105913号公報には、冷却パイプを埋設してなる溶鉱炉炉底において、冷却管内の一部に伝熱抵抗体を設け、冷却管長手方向の冷却能を変更し、底盤冷却能の異なる領域を形成する溶鉱炉炉底の冷却方法が示されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、前記特開平2−104603号公報に示される方法では、所定の冷却範囲を設定するために、冷却配管を屈曲させて溶鉱炉炉底に埋設することが必要となり、一度設定した冷却管の配置を変更することが容易でなく、使用中に冷却管が破損したり、漏洩したりした場合の修復が困難になるという問題があった。
また、前記特開昭63−105913号公報の方法では、耐火物中に埋設された温度計の指示値により付着物の層厚を計算あるいは推定して、緩冷却部と通常冷却部の部位の決定がなされる。
ところが、付着物の層厚分布は経時的に変化するため、その設定時点における温度計の指示値を指標にして、緩冷却部と通常冷却部との境界を厳密に決定することが容易ではなく、炉体条件に応じて変化する冷却の最適条件を設定することが困難であるという問題点があった。
このように境界を厳密に設定することができず、境界線が中心に近すぎる場合には溶鉱炉炉底の中心付近の抜熱量が多くなって、中央部の付着物が消失することなくそのまま維持される。
一方、境界線が外周に近すぎると、通常冷却による冷却効果が不十分となって底盤方向への抜熱量が減少するため、側壁への熱負荷が増して、側壁の溶損が激化する等の弊害を生じる。
さらに、底盤冷却能を制御するために、冷却管を底盤から抜き出して、断熱材等を冷却管の所定の位置に配置し直して、所定の冷却効率となるように調整するか、又は、冷却管の内側の必要な箇所にノズルを内挿して吹き付けを行い、皮膜形成により伝熱抵抗体を取付ける等が必要であり、このような配置の変更あるいは伝熱抵抗体の取付け等には非常な労力と時間を要するという問題点があった。
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、炉体状況に応じて適切な冷却条件を精度よく設定でき、しかも簡単に冷却条件の変更が可能である溶鉱炉炉底の冷却方法を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記目的に沿う請求項1記載の溶鉱炉炉底の冷却方法は、溶鉱炉炉底を、該溶鉱炉炉底の中心を中心点として設定される冷却境界半径の円周を境界とする中心部領域と外周部領域とに分割して、該外周部領域の冷却効率を、前記中心部領域の冷却効率より高めて冷却する溶鉱炉炉底の冷却方法において、
前記冷却境界半径を複数設定して、前記溶鉱炉炉底の冷却を行ない、それぞれ該溶鉱炉炉底に配置した各熱電対により測定した温度に基づいて得られる温度分布、あるいは、該各熱電対により測定した温度に基づいて伝熱計算から得られる温度分布を該溶鉱炉炉底の推定温度分布として予め求めておき、前記溶鉱炉炉底の前記推定温度分布と過去の溶鉱炉における操業実績のデータから設定される該溶鉱炉炉底の最適温度分布とを比較して該推定温度分布に最も適合する最適温度分布を選び、該選んだ最適温度分布に対応する冷却境界半径を決定して、該決定した冷却境界半径の円周を境界とする中心部領域及び外周部領域の冷却を行う。
請求項2記載の溶鉱炉炉底の冷却方法は、溶鉱炉炉底を、該溶鉱炉炉底の中心を中心点として設定される冷却境界半径の円周を境界とする中心部領域と外周部領域とに分割して、該外周部領域の冷却効率を、前記中心部領域の冷却効率より高めて冷却する溶鉱炉炉底の冷却方法において、
前記冷却境界半径を複数設定して、前記溶鉱炉炉底の冷却を行ない、それぞれ該溶鉱炉炉底に配置した各熱電対により測定した温度に基づいて得られる温度分布、あるいは、該各熱電対により測定した温度に基づいて伝熱計算から得られる温度分布を該溶鉱炉炉底の推定温度分布として予め求めておき、前記溶鉱炉炉底の前記推定温度分布から該溶鉱炉炉底の中心位置での水平方向及び垂直方向の各熱流量を求めそのベクトル和を中心部抜熱量とし、前記溶鉱炉炉底と溶鉱炉側壁とのコーナー部の水平方向及び垂直方向の各熱流量を求めそのベクトル和を側壁部抜熱量とし、前記冷却境界半径が前記溶鉱炉炉底半径に一致する場合の該溶鉱炉炉底の中心部抜熱量を基準として前記中心部抜熱量及び前記側壁部抜熱量との比をそれぞれ算出して中心部抜熱量比及び側壁部抜熱量比とし、該側壁部抜熱量比と該中心部抜熱量比の差を最大とする冷却境界半径を決定して、該決定した冷却境界半径の円周を境界とする中心部領域及び/又は外周部領域の冷却を行う。
請求項3記載の溶鉱炉炉底の冷却方法は、請求項1又は2記載の溶鉱炉炉底の冷却方法において、前記外周部領域の冷却が前記溶鉱炉炉底に配置された冷却管に冷却水を送入して行われ、前記中心部領域の冷却が前記冷却管への冷却水の送入を規制して行われる。
【0005】
冷却効率とは、冷却される領域内における抜熱量の時間当たりの変化量をいい、冷却管内を流れる冷却水の流量、冷却管の伝熱抵抗、伝熱面積等により調整される。なお、冷却管の中の冷却水の流量を減らしていき、この流量が零となるような状態においても冷却効率を定義することができる。
中心部領域とは、溶鉱炉炉底の中心を中心点として設定される冷却境界半径Rの円周に囲まれる領域をいい、冷却効率が外周部領域に較べて小さく制限されている部分である。
外周部領域とは、前記中心部領域の外周に形成される溶鉱炉炉底の領域をいい、冷却効率が中心部領域に較べて大きく設定される部分である。
溶鉱炉炉底の推定温度分布とは、冷却境界半径Rを溶鉱炉炉底内の特定の値に設定して、中心部領域と外周部領域とをそれぞれ定めて、中心部領域の冷却効率が外周部領域の冷却効率よりも高くなるようにして得られる溶鉱炉炉底の温度分布であり、このような複数の冷却境界半径Rの値(R1 、R2 ・・・)に対応するそれぞれの温度分布Tの集合(TR1、TR2・・・)をいう。
【0006】
溶鉱炉炉底の最適温度分布とは、その時点での溶鉱炉炉底に堆積沈着する付着物あるいは耐火物の溶損状態等に応じて、その都度、適宜設定される温度分布のパターンである。例えば、中心部の付着物が過剰であると判断されるときには、中心部の温度を高めに設定し、また側壁部の温度が通常より高くなって、耐火物の溶損速度が高くなるような場合には、側壁部の温度を低めに設定することにより全体のバランスに配慮した温度分布を設定することができる。
中心部抜熱量比とは、冷却境界半径Rを特定の値Rx に規定したときの耐火物稼働表面部の炉底中心位置における抜熱量をQRxとして求め、外周部領域が零となる場合の抜熱量、即ち冷却境界半径Rが炉底半径R0 と一致する場合の抜熱量QR0を基準として、両者の比QRx/QR0を取ったものをいう。
側壁部抜熱量比とは、溶鉱炉炉底の耐火物炉底表面と耐火物側壁部とのコーナー部における冷却境界半径R=Rx である場合の抜熱量QRxについて、外周部領域が零となる場合の抜熱量QR0を基準として、抜熱量の比QRx/QR0を取ったものをいう。
【0007】
【発明の実施の形態】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の実施の形態に係る溶鉱炉炉底の冷却方法を適用する溶鉱炉炉底の構造について、図1〜図3を用いて詳細に説明する。
ここで、図1は溶鉱炉炉底10の平断面図であり、図2、図3は前記平断面図における矢視A、B方向のそれぞれの側断面図である。
図1〜図3に示されるように、溶鉱炉炉底10は、溶鉱炉の外殻を構成する鉄皮12と、鉄皮12の内部に内張りされた耐火物15と、耐火物15を支持する底盤13と、底盤13と基盤28との間に配置され、底盤13を支えて冷却管11の挿入間隙を形成するビーム14とを有している。
冷却管11は図1〜図3に示されるように、ほぼ直線状のパイプ配管よりなり、底盤13から冷却管11への抜熱量を調整するために、冷却効率の低い領域と高い領域とに区画されている。このような冷却効率の調整に際しては、例えば伝熱抵抗体となる断熱材30を冷却管11の内壁の任意の位置に内挿することにより冷却効率の調整を行うことができる。また、冷却管11内を流れる冷却水の流量を冷却管11の両端に配置された流量調整弁16により調整することができる。
そして、このような冷却管11を底盤13と基盤28との間に挿入して、冷却管11内に冷却水を所定の流量で供給することにより、それぞれ異なる冷却効率となる中心部領域17と外周部領域18とを設定して、底盤13の冷却が行えるようになっている。
【0008】
続いて、前記説明した溶鉱炉炉底10について、本発明の第1の実施の形態に係る溶鉱炉炉底の冷却方法について説明する。
まず、溶鉱炉炉底10内の耐火物15に多数配置された熱電対により各部位の温度を測定して、その測定データ等を基にして溶鉱炉炉底10の温度分布を求める。
また、熱電対により得られるデータの数が少ない場合には、冷却管11の冷却効率、関与する材料の熱伝導率等の熱条件を設定し、炉底プロフィール等の操業データに基づいて必要な伝熱計算を行って、より精密な温度分布のデータを得ることも可能である。
例えばこのような伝熱計算は以下の手順により行うことができる。
1)直近の操業データより、耐火物残厚みと粘稠層(付着物層)厚みを含む炉底プロフィールを決定する。
2)図8に示すように、前記炉底プロフィールの溶鉱炉炉底部分を伝熱計算の要素となるメッシュに分割して、各メッシュ位置に対応する材料の熱伝導率、比熱等の物性値を決定する。
3)現状の耐火物温度(底盤温度、側壁温度等)、冷却水温度、溶銑温度、基盤温度の測定値、前記炉底プロフィールデータ、及び物性値のデータとを用いて、各メッシュ間あるいは、マクロな条件で伝熱計算を行って、地面(基盤)への総括伝熱係数等の基礎となる熱定数を決定する。
4)前記求められた総括伝熱係数を含む熱定数、及び既知の温度データを用いて、溶鉱炉炉底10の各部における未知の温度を逆算して求め、これにより、より詳細な推定温度分布とする。
例えば、前記伝熱計算に際しては、2つの平行平面間の熱流量がその平行平面間の温度差、面積、及び時間に比例し、距離に反比例するというフーリエの熱伝導方程式を適用して、温度が既知の2点間における任意の各点における温度を計算することができる。
図10(a)、(b)はそれぞれ側壁及び、底盤におけるこのような伝熱計算の結果を示す模式図の一例であり、溶銑温度Tm 及び、基盤(地面)あるいは冷却水への総括伝熱係数αg 、αw 、基盤温度Tg 、冷却水温度Tw 等を定めることにより、関与する材料の熱伝導率に基づいて、その溶銑と基盤間の温度分布を点線で示すように計算することができる。
【0009】
そして、溶鉱炉炉底10における冷却パターンを図4(a)、(b)、(c)に示すように設定した場合のそれぞれの推定温度分布を求める。
ここで、図4(a)は中心部領域17が溶鉱炉炉底10全体に拡張される場合、即ち、中心部領域を規定する冷却境界半径Rが炉底半径R0 に一致する場合であり、実際的には全冷却管への冷却水の供給を停止した状態に相当する場合と同じであり、底盤13から冷却管11に取り込まれる全抜熱量が最小となるケースである。
逆に、図4(c)は溶鉱炉炉底10の全面が断熱材30によって被覆されていない冷却管11によって冷却されている場合、即ち冷却境界半径Rが零となり、冷却管11による全抜熱量が最大となるようなケースである。
図4(b)は冷却境界半径RがRx となる中心部領域17を溶鉱炉炉底10に形成して、中心部領域17の冷却効率を抑制させた場合であり、図4(a)と図4(c)の中間のケースに相当する。
【0010】
このような図4(a)〜(c)の各場合における溶鉱炉炉底10内の耐火物15の温度分布は、溶鉱炉炉底10の各位置に配置された熱電対により実際に測定される温度データ、あるいはこれらの温度データを基にして伝熱計算を行って求めることができる。
また、特定の冷却境界半径Rについて温度分布が測定されていない場合には、その冷却境界半径Rの近傍の値を持つ既知の温度分布のデータから数値補間法を用いて計算することも可能である。
図5は、このような溶鉱炉炉底10の耐火物15における温度分布の模式図であり、図中の曲線A、B、Cがそれぞれ、図4(a)、(b)、(c)のケースの温度分布に相当する。
ここで、溶鉱炉炉底10の炉底半径(R0 )は8.2mであり、△印が炉底中心の位置を、○印が側壁部の位置をそれぞれ示している。
なお、図5は溶鉱炉炉底10における特定の高さ位置に限定した一次元となる温度分布の模式図であり、以降の伝熱計算に際しては、二次元あるいは三次元の温度分布のデータを用いて計算を行うことができる。
【0011】
また、このような温度分布の計算においては、通常の伝熱計算の他に、有限要素法等の手法を適用することができ、溶鉱炉炉底10を小部分となる各要素に分割して、各要素、及び各要素間に成立する伝熱関係式に基づいて全体の温度分布あるいは熱流量の分布等を計算することも可能である。
図8は有限要素法等を適用する場合の溶鉱炉炉底10における要素分割図の一例であり、少数の測定点の温度に基づいて全体の温度分布を設定できる。
そして、上記のようにして求められた特定の冷却境界半径RがRx における温度分布TRxのデータより、溶鉱炉炉底10内の任意の位置における抜熱量を計算することができる。
例えば、図8の側壁の耐火物15と底敷きの耐火物15とのコーナー部(P点)を側壁部として、また、中央部を底盤13中心上の対応する耐火物15表面(C点)にそれぞれ設定して、P点、及びC点における熱流量を計算する。
ここでは、側壁部(P点)、及び中心部(C点)における水平方向の熱流量QH 、と垂直方向の熱流量QV とを求めて、両者のベクトル和を取って、これを抜熱量Qとする。従ってQ2 =QH 2 +QV 2 である。
【0012】
以上のようにして、その時の各冷却境界半径Rに対応した抜熱量Qを計算して、冷却境界半径Rが溶鉱炉炉底10の炉底半径(R0 =8.2m)に一致する場合、即ち図4(a)の場合の抜熱量の値を基準として比を取り、それぞれの抜熱量比を求めて、冷却境界半径R、あるいは底盤冷却長L(=R0 −R)をパラメータとして、図6に示すグラフを得ることができる。
ここで、○印で示すデータが図8の側壁部(P点)に対応する側壁部抜熱量比であり、△印に示すデータが図8の中心部(C点)に対応する中心部抜熱量比である。
次に、図6に示す抜熱量比のデータを用いて、側壁部抜熱量比と中心部抜熱量比との差Dをパラメータである底盤冷却長Lに対してプロットしたものが図7に示されるデータである。
そして、側壁部抜熱量比と中心部抜熱量比との差Dを最大とする冷却境界半径Rを、この場合はR=R0 −L=8.2m−2.5m(即ち、L=2.5m)として設定する。
このようにして定めた冷却境界半径R=5.7mの中心部領域17となるように、水冷管に装着する断熱材30の配置を変更して溶鉱炉炉底10の冷却を実施した。
【0013】
溶鉱炉炉底10における温度分布のデータを基にして、溶鉱炉炉底10の中心部領域17をその都度変更して、溶鉱炉炉底10の冷却を行って、底盤13中央部の抜熱量を必要最小限度に抑制すると共に、側壁部の抜熱量を効果的に増加することができ、耐火物15の溶損を均等化することができ、溶鉱炉寿命の延長を達成するこが可能となる。
【0014】
続いて、前記説明した溶鉱炉炉底10について、本発明の第2の実施の形態に係る溶鉱炉炉底の冷却方法について説明する。
まず、本発明の第1の実施の形態に示したのと同様にして、各冷却境界半径Rに対応する冷却状態における溶鉱炉炉底10内の耐火物15の推定温度分布を求める。
図5は、このような溶鉱炉炉底10の耐火物15における推定温度分布の模式図であり、図中の曲線A、B、Cがそれぞれ、図4(a)、(b)、(c)のケースの推定温度分布に相当する。
ここで、図5は溶鉱炉炉底10における特定の高さ位置に限定した一次元となる推定温度分布の一例であり、以降の伝熱計算に際しては、二次元あるいは三次元の温度分布のデータを用いることができる。
このような伝熱計算においては、有限要素法等の手法を適用して、全体の温度分布あるいは熱流量の分布等を計算することができ、また、これらのデータを処理して通常の伝熱計算に基づいて推定温度分布を求めることもできる。
【0015】
そして、過去の溶鉱炉における操業実績のデータを集約することにより、目標とする最適温度分布のパターンを設定して、これを前記推定温度分布のパターンと比較して、最適温度分布のパターンに最も適合するような推定温度分布のパターンを選んで、この推定温度分布のパターンに対応する冷却境界半径Rの値を決定する。
ここで、最適温度パターンは、その時点での溶鉱炉炉底10に堆積沈着する付着物27あるいは耐火物15の溶損状態に応じて、適宜設定されるパターンである。
例えば、中心部の付着物27が過剰であると判断されるときには、中心部の温度を高めに設定し、また側壁部の温度が通常より高くなって、耐火物15の溶損速度が高くなるような場合には側壁部の温度を低めに設定することにより、全体の温度分布あるいは熱収支のバランスを取りながら炉底の耐火物15の溶損速度及び、付着物27の厚みなど制御することができる。
また、最適温度分布と推定温度分布のとのパターンマッチング(適合度)の判定には、最適温度分布と推定温度分布との差の自乗和を取って、この自乗和の合計値を最小にするような推定温度分布を選んで、この推定温度分布に対応する冷却境界半径Rを求めることができる。
次いで、上記のようにして設定した冷却境界半径Rの中心部領域17を形成するように冷却管11に断熱材30を装着して、溶鉱炉炉底10の冷却を行うことにより、所望の最適温度分布に近い状態で炉底の冷却を行うことができる。
このため、溶鉱炉炉底10の耐火物15の溶損を制御して、溶鉱炉寿命の延長を図ることが可能となる。
【0016】
続いて、前記説明した溶鉱炉炉底10について、本発明の第3の実施の形態に係る溶鉱炉炉底の冷却方法について説明する。
ここで、図9は本発明の第3の実施の形態に係る溶鉱炉炉底の冷却方法に使用する冷却管11の側断面図である。
冷却管11にはその内部に2つの外周部冷却装置19、20が対向して配置されており、冷却管11の中の2つの外周部冷却装置19、20間の空洞26が冷却管11への冷却水の送入が規制される中心部領域17となり、冷却水によって冷却される外周部冷却装置19、20の配置される部分が外周部領域18となるように構成されている。
外周部冷却装置19、20は、内管23、外管25を有すると共に、内管23及び外管25の端部に設けられた風船21に空気を送入し、あるい風船21の空気を排気するための吹排気管22を有しており、この吹排気管22から風船21に空気を送入することで該風船21を拡張して冷却管11内をシール遮断する。
更に、風船21に貫通して収容される内管23の端部が冷却管11の中心部領域17に向けて開放され内管先端孔24となっている。
このため、中心部領域17に万一、冷却水が漏れ出て、水蒸気を発生したとしても、内管23内を通って圧力が抜かれるために、爆発等の危険がなく、操業の安全性が維持される。
【0017】
そして、冷却管11と外周部冷却装置19、20の外周部分とで形成される空隙31が冷却水の流路となっている。
従って、送水孔32を介して内管23と外管25との間の通路に冷却水を供給すると、冷却水が通水孔29を経由して、外管25と冷却管11の間の空隙31に流入し、冷却水の供給方向と逆方向に流れて排水孔33から排出され、底盤13の外周部領域18となる部分のみを効率的に冷却することができる。
このように、冷却境界半径R又は外周部領域18の底盤冷却長L(=R0 −R)を前記第1又は第2の実施の形態のようにして決定して、実際にこの冷却境界半径Rで規定される中心部領域17、及び外周部領域18を必要な冷却条件の下で冷却することができる。
このため、溶鉱炉炉底10の耐火物15の溶損を制御して、溶鉱炉寿命の延長を図ることが容易となる。
【0018】
以上、本発明の実施の形態を説明したが、本発明はこれらの実施の形態に限定されるものではなく、要旨を逸脱しない条件の変更等は全て本発明の適用範囲である。
例えば、本実施の形態においては、直線状となる冷却管を用いる例について説明したが、屈曲部を設けた冷却管を多数配置して、中心部領域の冷却効率を、断熱材の装着等により調整することにより所定の適正化された中心部領域及び外周部領域を設定することも可能である。
【0019】
【発明の効果】
請求項1及び3記載の溶鉱炉炉底の冷却方法においては、冷却境界半径Rを複数設定して、溶鉱炉炉底の冷却を行った場合の温度データ、あるいは数値計算処理のデータに基づいてそれぞれの推定温度分布を予め求めておく。そして、これを参照して所望の最適温度分布を与える冷却境界半径Rの値を推定することができる。
即ち、該溶鉱炉炉底の推定温度分布と最適温度分布とを比較して最適温度分布となる前記冷却境界半径を決定し、前記中心部領域、及び外周部領域の冷却を行うので、適宜、溶鉱炉炉底の条件に対応した冷却条件の変更が可能となり、炉底耐火物の局部溶損、あるいは湯流れを適正化して、溶鉱炉の安定操業を可能とすると共に、炉底耐火物の寿命延長を図ることができる。
【0020】
請求項2及び3記載の溶鉱炉炉底の冷却方法においては、冷却境界半径Rを複数設定して、溶鉱炉炉底の冷却を行った場合のそれぞれの推定温度分布を予め求めておく。
そして、前記溶鉱炉炉底の推定温度分布を基にして溶鉱炉炉底の中心部、及び側壁部における中心部抜熱量比、側壁部抜熱量比をそれぞれ算出するので、中心部、及び側壁部における熱量の動きを基準とした炉底の状態評価を適切に行うことが可能となる。
次いで、側壁部抜熱量比と中心部抜熱量比の差を最大とする冷却境界半径の値により冷却境界半径を決定するので、中心部における抜熱量を必要最小限の範囲に抑制した条件の下で、側壁部における抜熱量を最大化するような冷却境界半径を求めることができる。
そして、このように設定された冷却条件で溶鉱炉炉底の冷却を行うことにより、側壁部の耐火物の溶損が抑制されると共に、中心部領域における付着物の沈積傾向を弱めて、溶鉱炉炉底を安定状態に維持することができる。
【0021】
特に、請求項3記載の溶鉱炉炉底の冷却方法においては、外周部領域の冷却が溶鉱炉炉底に配置された冷却管に冷却水を送入して行われ、中心部領域の冷却が前記冷却管への冷却水の送入を規制して行われるので、冷却境界半径R又は中心部領域の変更を容易に行うことができると共に、側壁部抜熱量と、中心部抜熱量との差をより大きく設定でき、溶鉱炉炉底における耐火物に掛かる溶損負荷をさらに軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】溶鉱炉炉底の構造を示す平断面図である。
【図2】溶鉱炉炉底の構造を示す矢視A方向の側断面図である。
【図3】溶鉱炉炉底の構造を示す矢視B方向の側断面図である。
【図4】(a)、(b)、及び(c)は溶鉱炉炉底における冷却パターンを示す説明図である。
【図5】溶鉱炉炉底の耐火物の温度分布の模式図である。
【図6】溶鉱炉炉底の底盤冷却長に対する抜熱量比を示した図である。
【図7】溶鉱炉炉底の底盤冷却長に対する抜熱量比の差を示した図である。
【図8】溶鉱炉炉底における要素分割図である。
【図9】本発明の第3の実施の形態に係る溶鉱炉炉底の冷却方法に使用する冷却管の側断面図である。
【図10】溶鉱炉炉底における温度分布の模式図である。
【符号の説明】
10 溶鉱炉炉底 11 冷却管
12 鉄皮 13 底盤
14 ビーム 15 耐火物
16 流量調整弁 17 中心部領域
18 外周部領域 19 外周部冷却装置
20 外周部冷却装置 21 風船
22 吹排気管 23 内管
24 内管先端孔 25 外管
26 空洞 27 付着物
28 基盤 29 通水孔
30 断熱材 31 空隙
32 送水孔 33 排水孔
Claims (3)
- 溶鉱炉炉底を、該溶鉱炉炉底の中心を中心点として設定される冷却境界半径の円周を境界とする中心部領域と外周部領域とに分割して、該外周部領域の冷却効率を、前記中心部領域の冷却効率より高めて冷却する溶鉱炉炉底の冷却方法において、
前記冷却境界半径を複数設定して、前記溶鉱炉炉底の冷却を行ない、それぞれ該溶鉱炉炉底に配置した各熱電対により測定した温度に基づいて得られる温度分布、あるいは、該各熱電対により測定した温度に基づいて伝熱計算から得られる温度分布を該溶鉱炉炉底の推定温度分布として予め求めておき、前記溶鉱炉炉底の前記推定温度分布と過去の溶鉱炉における操業実績のデータから設定される該溶鉱炉炉底の最適温度分布とを比較して該推定温度分布に最も適合する最適温度分布を選び、該選んだ最適温度分布に対応する冷却境界半径を決定して、該決定した冷却境界半径の円周を境界とする中心部領域及び外周部領域の冷却を行うことを特徴とする溶鉱炉炉底の冷却方法。 - 溶鉱炉炉底を、該溶鉱炉炉底の中心を中心点として設定される冷却境界半径の円周を境界とする中心部領域と外周部領域とに分割して、該外周部領域の冷却効率を、前記中心部領域の冷却効率より高めて冷却する溶鉱炉炉底の冷却方法において、
前記冷却境界半径を複数設定して、前記溶鉱炉炉底の冷却を行ない、それぞれ該溶鉱炉炉底に配置した各熱電対により測定した温度に基づいて得られる温度分布、あるいは、該各熱電対により測定した温度に基づいて伝熱計算から得られる温度分布を該溶鉱炉炉底の推定温度分布として予め求めておき、前記溶鉱炉炉底の前記推定温度分布から該溶鉱炉炉底の中心位置での水平方向及び垂直方向の各熱流量を求めそのベクトル和を中心部抜熱量とし、前記溶鉱炉炉底と溶鉱炉側壁とのコーナー部の水平方向及び垂直方向の各熱流量を求めそのベクトル和を側壁部抜熱量とし、前記冷却境界半径が前記溶鉱炉炉底半径に一致する場合の該溶鉱炉炉底の中心部抜熱量を基準として前記中心部抜熱量及び前記側壁部抜熱量との比をそれぞれ算出して中心部抜熱量比及び側壁部抜熱量比とし、該側壁部抜熱量比と該中心部抜熱量比の差を最大とする冷却境界半径を決定して、該決定した冷却境界半径の円周を境界とする中心部領域及び/又は外周部領域の冷却を行うことを特徴とする溶鉱炉炉底の冷却方法。 - 前記外周部領域の冷却が前記溶鉱炉炉底に配置された冷却管に冷却水を送入して行われ、前記中心部領域の冷却が前記冷却管への冷却水の送入を規制して行われることを特徴とする請求項1又は2記載の溶鉱炉炉底の冷却方法。
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