JP3625244B2 - リゾスフィンゴ脂質の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、医薬、糖質工学及び細胞工学等に有用なリゾスフィンゴ脂質の製造方法、並びに該製造方法により得られたリゾスフィンゴ脂質から、リゾスフィンゴ脂質誘導体を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
スフィンゴ脂質はスフィンゴ糖脂質、スフィンゴリン脂質(スフィンゴホスホノリピドを含む)、セラミド、を含む長鎖塩基スフィンゴイドを持つ脂質の総称であり、スフィンゴイドのアミノ基に不均一な鎖長の長鎖脂肪酸を酸アミド結合したセラミドを共通構造としてもち、下等動物から高等動物にまで広く分布している。これらスフィンゴ脂質は近年、細胞の増殖、分化誘導、アポトーシス等のような生物活性において重要な役割に関与していることが明らかにされつつある。また、細胞表層の構成成分であることから化粧料等への添加物としても使用されつつある。
また、スフィンゴ脂質のスフィンゴイドのアミノ基に酸アミド結合した脂肪酸を欠くスフィンゴ脂質のN−脱アシル体はリゾスフィンゴ脂質と呼ばれ、スフィンゴ脂質と同様な生物活性を持つことが明らかにされつつある。
更に、リゾスフィンゴ脂質はスフィンゴイドに遊離のアミノ基を持っており、再アシル化によりリゾスフィンゴ脂質誘導体(スフィンゴ脂質誘導体)を合成する際の出発原料として有用である。例えば、均一な脂肪酸組成を持つスフィンゴ脂質や、基のスフィンゴ脂質と脂肪酸鎖長の異なるスフィンゴ脂質を再合成することができる。また、発色団や放射性同位元素14C等で標識化されたスフィンゴ脂質を得ることが可能である。更に、リゾスフィンゴ脂質の遊離のアミノ基を利用して担体に固定化することも可能である。
従来、リゾスフィンゴ糖脂質の製造方法は化学的方法、酵素を用いる方法、微生物を用いる方法が知られている。
化学的方法としては、ヒドラジン分解法やアルコール系溶媒中でのアルカリ加水分解法が知られている。しかし、これらの方法によると、シアル酸を含むスフィンゴ糖脂質(ガングリオシド)の場合、シアル酸部分の脱アシル化反応が同時に進行する。また、アミノ糖を含むスフィンゴ糖脂質の場合N−アセチル基の脱離が起こり、デ−N−アセチルリゾ糖脂質が生じる。そのため、脱アシル化後、脂質部分のアミノ基に保護基を選択的に導入した後、シアル酸部分を再アシル化を行い、その後、更に保護基を外す必要がある。また、これらの操作では様々な副生成物が生成する。このように化学的方法によるリゾ糖脂質の製造には多くの手間と技術的な熟練を要する。
【0003】
一方、スフィンゴ糖脂質からリゾ体を生成する酵素を用いる方法がこれまで知られている。しかしながら、ノカルディア(Nocardia) 属放線菌の生産するガングリオシドセラミダーゼを用いる方法(特開昭64−60379号公報)は、酵素の基質特異性のため中性糖脂質のリゾ体を得ることはできない。また、ロドコッカス(Rhodococcus)属放線菌の生産する酵素又は菌体処理物を用いる方法(特開平6−78782号公報)では、酸性糖脂質(ガングリオシド)のリゾ体を得ることはできない。また、更にシュードモナス(Pseudomonas)属細菌の生産するスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼを用いる方法(特開平8−84587号公報)は、各種スフィンゴ脂質に幅広く作用する。しかし、これらの酵素を用いるいずれの方法においても、リゾ体の収率は最高でも72.5%であり、効率が悪いものであった。
微生物又はその抽出物を用いる方法として、グリコスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼを生産する能力を有するストレプトミセス(Streptomyces) 属放線菌を用いる方法(特開平7−107988号公報)では、培地中にスフィンゴ糖脂質を添加しリゾ体に変換する方法が知られている。しかしこの方法においても効率が悪く、また基質特異性によりガングリオシドGM3及び中性糖脂質であるラクトシルセラミド、グルコシルセラミド、ガラクトシルセラミドには作用せず、これらの糖脂質のリゾ体を得ることはできない。
一方、スフィンゴリン脂質であるスフィンゴミエリンのリゾ体を得る方法としては、化学的方法と酵素的方法が知られており、化学的方法としてアルコール系溶媒中での塩酸加水分解による方法が一般に知られている。しかしこの方法によると天然型のD−エリスロ(D−erythro)(2S,3R)だけではなくL−スレオ(L−threo)(2S,3S)の立体異性体が生じてしまい、これらを分離することは非常に困難であった。
また、特開平8−84587号公報にシュードモナス属細菌の生産するスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼによって、スフィンゴミエリンから異性体を生成することなく加水分解しリゾスフィンゴミエリンを得る方法が記載されている。しかしこの酵素を用いた方法ではスフィンゴミエリンを分解するためには精製酵素を用いる必要があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上述したように、従来の化学的あるいは酵素的にリゾスフィンゴ脂質を製造する方法及び微生物を用いるリゾスフィンゴ脂質の製造方法は、望ましくない副産物ができたり、多くの手間と技術的な熟練を要し、また基質が限定されたりするものであり、効率の悪いものであった。
したがって本発明の目的は、副生成物を生ずることなく幅広いリゾスフィンゴ脂質を効率よく製造するための方法を提供することにある。本発明の他の目的は、本発明の製造方法に使用する、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産能を有する微生物を提供することにある。
本発明の他の目的は、上記製造方法により得られたリゾスフィンゴ脂質から、リゾスフィンゴ脂質誘導体を製造する方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明を概説すれば、本発明の第1の発明は、スフィンゴ脂質を、ガングリオシドGM1、GD1a、GD1b及びGb4に作用し得るスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産能を有するシュードモナス( Pseudomonas )属細菌又はシェワネラ( Shewanella )属細菌と接触反応させ、リゾスフィンゴ脂質を採取することを特徴とするリゾスフィンゴ脂質の製造方法に関する。
本発明の第2の発明は、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産能を有するシェワネラ アルガ(Shewanella alga)NS−589(FERM P-15700)細菌に関する。
本発明の第3の発明は、下記の工程:
(a) 本発明の第1の発明の製造方法によりリゾスフィンゴ脂質を得る工程、及び
(b) 工程(a)によって得られるリゾスフィンゴ脂質を、再アシル化若しくはスフィンゴイドのアミノ基を標識する工程、
を包含することを特徴とするリゾスフィンゴ脂質誘導体の製造方法に関する。
【0006】
本発明者らはリゾスフィンゴ脂質の大量調製法について検討を行った結果、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼを生産する細菌をスフィンゴ脂質と共に培養すればそのリゾ体が得られることを見出した。なお、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産菌としてスフィンゴ脂質の内スフィンゴ糖脂質の一部にのみ作用する酵素を生産する放線菌はこれまで知られてきたが、スフィンゴ脂質に幅広く作用する酵素を生産する細菌としてはシュードモナス エスピー.TK−4(Pseudomonas sp. TK−4) のみであった。そこで、本発明者らは新たに海洋環境からスフィンゴ脂質を炭素源とする合成培地中でスフィンゴ脂質をリゾスフィンゴ脂質に変換する能力を有する細菌を単離し、これらの細菌をスフィンゴ脂質と共に培養すれば、効率的にしかも特定のスフィンゴ脂質に限定されることなく幅広いスフィンゴ脂質に対してそのリゾ体が得られることを見出し本発明を完成するに至った。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について具体的に説明する。
本明細書において、スフィンゴ脂質とは、スフィンゴ糖脂質、スフィンゴリン脂質、セラミド、を含む長鎖塩基スフィンゴイドを有する天然物あるいは合成物の単体、あるいはそれらの混合物等が挙げられる。また、本明細書において、リゾスフィンゴ脂質とは、スフィンゴイドのアミノ基に酸アミド結合した脂肪酸を欠くスフィンゴ脂質のN−脱アシル体を示す。
更に、本明細書において、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼとは、スフィンゴ脂質のスフィンゴイド塩基のアミド結合に作用し、リゾスフィンゴ脂質と脂肪酸に加水分解する酵素、すなわち、スフィンゴ脂質のスフィンゴイドと脂肪酸との酸アミド結合を特異的に加水分解する酵素を示す。例えば、スフィンゴ糖脂質(ガングリオシド、中性糖脂質)、スフィンゴリン脂質(スフィンゴミエリン)を含むスフィンゴ脂質に幅広く作用する酵素としてシュードモナス属に属する微生物の生産するスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ〔SCDase、ジャーナル オブ バイオロジカル ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第270巻、第24370〜24374頁(1995)、特開平8−84587号公報〕、が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
本明細書において、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産能を有する微生物とは、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産能を有するシュードモナス属細菌及びシェワネラ属細菌を意味する。この場合、産生されるスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼはスフィンゴ脂質に幅広く作用するものが好ましい。このような微生物の単離方法としては、例えば、土壌や海藻、海水、海砂、海泥、海産生物の消化管内容物などのサンプルを、スフィンゴ脂質を唯一の炭素源とする合成培地に加え、25℃で3〜4日培養する。その後培養上清中の基質の分解をTLCで確認し、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ活性のあるものを同培地に植え継ぎ、これを数回繰り返した後、平面培地で各コロニーを単離することにより得ることができる。
また、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼをコードする遺伝子を適当なベクターに連結し、該ベクターを導入した微生物、更に、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼをコードする遺伝子が欠失、付加、挿入若しくは置換された遺伝子を適当なベクターに導入し、該ベクターを導入した微生物も本明細書で言うスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産能を有する微生物に含まれる。
【0008】
本発明のリゾスフィンゴ脂質の製造に用いる菌株の具体例としては、シュードモナス属細菌、例えばシュードモナス エスピー.TK−4(Pseudomonas sp. TK−4) あるいはシェワネラ属細菌、例えばシェワネラ アルガ NS−589(Shewanella alga NS−589) が挙げられる。シュードモナス エスピー.TK−4(Pseudomonas sp. TK−4) はG−182と表示され、通商産業省工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM BP−5096として寄託されている。
【0009】
またシェワネラ アルガ NS−589(Shewanella alga NS−589) は、本発明者らが福岡県和白干潟の土壌より新たに検索して得た菌株で、その菌学的性質は以下の通りである。
【0010】
以上のような菌学的性質を有する菌株について、バージーズ マニュアル システマティック バクテリオロジー(Bergey’s Manual of Systematic Bacteriology) 、第1巻、ウィリアムズ アンド ウィルキンス カンパニー(Williams & Wilkins Company) 、1984年発行の分類法、システム アンド アプライド マイクロバイオロジー(System and Applied Microbiology)、第6巻、第171頁(1985)及びインターナショナル ジャーナル オブ システマティック バクテリオロジー(International Journal of Systematic Bacteriology) 、第42巻、第628頁(1992)に基づいて同定を行ったところ、本菌株はシェワネラ アルガ(Shewanella alga)に属する細菌であると同定される。
本菌株は Shewanella alga NS−589 と命名、表示され、工業技術院生命工学工業技術研究所に、FMRM P−15700として寄託されている。
【0011】
本菌株によって生産されるスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼの酵素化学的及び理化学的性質は次の通りである。
(1)作用
スフィンゴ脂質中の分子内セラミドに作用して、スフィンゴシン塩基と脂肪酸とに加水分解し、リゾ糖脂質と脂肪酸を生成する。
(2)基質特異性
GM1、GM2、GD1a、GD1b、シアロシルパラグロボシド等の酸性糖脂質、ラクトシルセラミド、Gb4、Gb5等の中性糖脂質、スルファチド等の硫糖脂質、スフィンゴリン脂質であるスフィンゴミエリンに作用しそれぞれに対するリゾスフィンゴ脂質と脂肪酸を生成する。
(3)至適pH及び温度安定性
本酵素の至適pHは7〜8で、pH5〜8.5の間で比較的高い活性を示す〔図1:図1中、縦軸は相対活性(%)、横軸はpHを表す。また白四角印が酢酸緩衝液、白ひし形印がMOPS、白丸印がグリシン緩衝液を示す〕。
また、本酵素を種々の温度で15分間保温した場合、本酵素は50℃以上ではほぼ失活しており、比較的低い温度域(40℃以下)で安定である〔図2:図2中、縦軸は残存活性(%)、横軸は温度(℃)を示す〕。
【0012】
本発明のリゾスフィンゴ脂質の製造方法においては、例えば上述した菌株を栄養培地中で培養した後、培地にスフィンゴ脂質を加えるか、あるいはあらかじめスフィンゴ脂質を加えた栄養培地中で培養する方法が用いられる。
培地としては本菌株が生育し、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼが生産され、培地中に存在するスフィンゴ脂質から効率よくリゾスフィンゴ脂質が生成するようなものであればよく、特に限定されるものではない。かかる培地において炭素源としては、例えばスフィンゴ糖脂質であるガングリオシド、中性糖脂質、硫糖脂質等あるいはスフィンゴリン脂質であるスフィンゴミエリンあるいはこれらの混合物が利用でき窒素源としては例えば塩化アンモニウム、ポリペプトン、酵母エキス等が適当である。その他にリン酸塩、カリウム塩、マグネシウム塩、亜鉛塩などの無機質及び金属塩類や界面活性剤等を加えても良い。これらの成分は菌株に合せて適時選択される。
本菌株を培養するに当り、スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼの生産量、リゾスフィンゴ脂質の生成量は培養条件により大きく変動するが、一般的に培養温度は20〜35℃、培地のpH6〜8が良く、1日〜7日の通気かくはん培養で本発明のリゾスフィンゴ脂質が生産される。
本発明者らは、上記培養に当り、β−シクロデキストリンのメチル化物を共存させると、目的物の生成量を増大させることができることを見出した。メチル化の位置、個数に制限はないが、中でも2,6−O−ジメチル−β−シクロデキストリンは好適なものである。
培養終了後、目的のリゾスフィンゴ脂質を含む培養液から遠心分離、ろ過等によって菌体等の不溶性成分を除去し、得られた培養上清から通常用いられる方法でタンパク質や塩類を除去する。このためには、例えば培養上清を逆相カラム等に負荷してタンパク質を除去し、同時に脱塩を行う方法が効果的である。脱塩した培養上清から通常用いられる方法、例えば逆相クロマトグラフィーやシリカゲルカラムの順相クロマトグラフィーあるいはイオン交換クロマトグラフィーによってリゾスフィンゴ脂質を精製することができる。精製したリゾスフィンゴ脂質の構造の確認は、薄層クロマトグラフィーや液体クロマトグラフィー、質量分析、核磁気共鳴スペクトルなどの分析法によって行うことができる。このようにしてスフィンゴ脂質を本発明に用いる微生物と共に培養することにより、スフィンゴ脂質から目的のリゾスフィンゴ脂質に変換することができる。
【0013】
既述の本発明の第3の発明に従って、リゾスフィンゴ脂質を処理してリゾスフィンゴ脂質誘導体を製造する方法について以下説明する。
処理の1例としては再アシル化があり、アシル化は、アミノ基の酸アミド化の常法に従って化学的方法又は酵素的方法によって行うことができる。
化学的方法では、標識を有し、又は有しない脂肪族カルボン酸又はその反応性誘導体を用いて反応を行えばよい。
本発明において使用可能な脂肪族カルボン酸の例には、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸はもちろんのこと、それら脂肪酸の炭化水素鎖が、ハロゲン、置換若しくは非置換のアミノ基、オキソ基、水酸基等の官能性基で置換されている酸、あるいは当該炭化水素鎖中に酸素、硫黄、アミノ基を有する酸等の脂肪族性をもつカルボン酸がすべて含まれる。
他方酵素的方法としては、公知のリパーゼを用いる方法等があるが、特に有用な方法としては、スフィンゴ脂質のスフィンゴイドと脂肪酸との酸アミド結合を特異的に加水分解する酵素、又は該酵素の生産能を有する微生物を用いる方法がある。酵素の例にはスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼがある。
【0014】
処理の他の例としては、リゾスフィンゴ脂質を用いてスフィンゴイドのアミノ基を標識する方法がある。標識化方法としては、標識する部分に、発色団を形成する物質、蛍光物質、ビオチン、放射性同位元素等を導入すればよい。
【0015】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を更に具体的に示すが、本発明は実施例に限定されるものではない。
【0016】
実施例1 シュードモナス エスピー.TK−4によるリゾGM1の製造
ガングリオシドGM1(ヤトロン社製)を30mg及び2,6−O−ジメチル−β−シクロデキストリン0.1%を含むPY培地(ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.1%、塩化ナトリウム0.2%、pH7.2)を滅菌後、牛脳粗ガングリオシド0.1%含む斜面培地〔牛脳粗ガングリオシドはメソッズ インエンザイモロジー(Methods in Enzymology)、第14巻、第660〜664頁(1969)の記載の方法にて調製〕で一晩培養しておいた菌体を接種し、25℃で3日間振とう培養を行った。
得られた培養液から遠心分離により菌体を除き、培養上清を得た。この培養上清を薄層クロマトグラフィーにより分析した結果、すべてのガングリオシドGM1はリゾGM1に変換されていた。
この培養上清をSep−PakC18カラム(ウォーターズ社製)に添加し、水で非吸着画分を洗浄後、カラム体積と同量のメタノールを流し、クロロホルム/メタノール=1:2(v/v)で溶出しリゾGM1を得た。
次に、得られたリゾGM1を乾固し、クロロホルム/メタノール/水=60:30:5(v/v)に溶解した。更にAquasil SS−1251カラム(4.6×250mm、センシュー科学社製)を用いて高速液体クロマトグラフィーにかけ、クロロホルム/メタノール/水=60:30:5(v/v)1.5ml/minで溶出し、リゾGM1を精製した。これらの操作により精製リゾGM1を18mg得ることができた。
【0017】
実施例2 シュードモナス エスピー.TK−4による各種スフィンゴ糖脂質のリゾ体への変換
オートクレーブ滅菌した2,6−O−ジメチル−β−シクロデキストリン0.1%を含むPY培地(ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.1%、塩化ナトリウム0.2%、pH7.2)に、フィルター滅菌した各種スフィンゴ糖脂質水溶液のうちGM1、GM3(ヤトロン社製)、GD1a(ヤトロン社製)、GD1b(ヤトロン社製)、GD3(ヤトロン社製)、GT1b(バイオカーブ社製)を0.5mg/ml、Gb4(ヤトロン社製)を0.1mg/mlになるようにそれぞれを添加した培地に、牛脳粗ガングリオシド0.1%を含む斜面培地で一晩培養しておいた菌体を接種し、25℃、3日間振とう培養を行った。
得られた培養液から遠心分離により菌体を除き、培養上清を得た。この培養上清を薄層クロマトグラフィーにより分析した。その結果を表1に示す。
【0018】
【表1】
【0019】
実施例3 シェワネラ アルガ NS−589によるスフィンゴシルホスホリルコリン(リゾスフィンゴミエリン)の製造
合成培地(リン酸水素二カリウム0.05%、塩化アンモニウム0.05%、スフィンゴミエリン0.1%、タウロデオキシコール酸ナトリウム0.1%、塩化ナトリウム2%、2,6−O−ジメチル−β−シクロデキストリン0.1%、pH7.4)200mlにシェワネラ アルガ NS−589を植菌し、30℃で2日間振とう培養を行った。
得られた培養液から遠心分離により菌体を除き、培養上清を得た。この培養上清を薄層クロマトグラフィーにより分析した結果、スフィンゴミエリンの80%がスフィンゴシルホスホリルコリンに変換されていた。この培養上清をC18逆相ラカム〔Preparative C18125A(ミリポア社製)充てん量30g、カラム直径30mm、オープンカラム〕に添加し、水300mlで脱塩、洗浄した後、メタノール300ml、クロロホルム/メタノール=1:1(v/v)300mlで溶出した。この時、スフィンゴシルホスホリルコリンはメタノール画分に溶出された。次に、スフィンゴシルホスホリルコリン画分の溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、シリカゲル60カラム(メルク社製)に添加し、クロロホルム/メタノール/水=5:4:1(v/v)で分画した。更に得られたスフィンゴシルホスホリルコリン画分の溶媒をロータリーエバポレーターにより除去した後、凍結乾燥することにより精製スフィンゴシルホスホリルコリン47.6mgを得ることができた。
この精製スフィンゴシルホスホリルコリンを薄層クロマトグラフィーにより展開しクマシーブリリアントブルーで染色した結果、単一のバンドが得られた。またスタフィココッカス アウレウス(Staphylococcus aureus)由来スフィンゴミエリナーゼ(シグマ社製)によって消化した後、薄層クロマトグラフィーにより解析した結果スフィンゴシンが遊離されることが確認された。更にFAB−マススペクトル分析した結果、(M+ H)+ の465、及び((M+ Na)+ の487のイオンピークが確認された。
以上の結果より本方法によって高純度のスフィンゴシルホスホリルコリンを得ることができることが明らかとなった。
【0020】
実施例4 シェワネラ アルガ NS−589によるスフィンゴシルホスホリルコリン(リゾスフィンゴミエリン)の製造における培地組成の検討
PY培地(ポリペプトン0.5%、酵母エキス0.1%、塩化ナトリウム1%、スフィンゴミエリン0.1%、タウロデオキシコール酸ナトリウム0.1%、pH7.2)、合成培地(リン酸水素二カリウム0.05%、塩化アンモニウム0.05%、スフィンゴミエリン0.1%、タウロデオキシコール酸ナトリウム0.1%、pH7.4)において塩化ナトリウム濃度を0、0.5、1、2、3%に調製した培地、合成培地に酵母エキス0.05%を加え、塩化ナトリウム濃度を0、0.5、1、2、3%に調製した培地、1%塩化ナトリウムを含む合成培地に0.1%グルコースを加えた培地を用意し、更にそれぞれについて2,6−O−ジメチル−β−シクロデキストリン0.1%を加えた系、及び加えない系を用意した。それぞれにシェワネラ アルガ NS−589を植菌し、25℃で3日間振とう培養した後、得られた培養上清を薄層クロマトグラフィーにより展開し、スフィンゴシルホスホリルコリンの生成を分析した。
スフィンゴシルホスホリルコリンはクマシーブリリアントブルーで染色後、TLCクロマトスキャナーCS9000(島津製作所社製)を用い波長600nmでのデンシトグラムより定量した。この結果を図3に示す。すなわち図3は、スフィンゴシルホスホリルコリンの生成量を600nmにおけるピーク面積で示したものであり、縦軸はピーク面積、横軸はNaCl濃度(%)を示す。
図3からも分かるようにPY培地、及び塩化ナトリウムを含まない培地では全くスフィンゴシルホスホリルコリンを生成しないこと、塩化ナトリウム2%、2,6−O−ジメチル−β−シクロデキストリン0.1%を含む合成培地で最も生成量が多いことが明らかとなった。
【0021】
実施例5 シェワネラ アルガ NS−589によるスフィンゴシルホスホリルコリン(リゾスフィンゴミエリン)の製造における培養温度の検討
合成培地(リン酸水素二カリウム0.05%、塩化アンモニウム0.05%、スフィンゴミエリン0.1%、タウロデオキシコール酸ナトリウム0.1%、塩化ナトリウム2%、2,6−O−ジメチル−β−シクロデキストリン0.1%、pH7.4)を用い、25℃、30℃、37℃の各温度で3日間培養した後、TLCクロマトスキャナーCS9000(島津製作所社製)を用い波長600nmでのデンシトグラムより定量した。この結果を図4に示す。すなわち図4は、スフィンゴシルホスホリルコリンの生成量を600nmにおけるピーク面積で示したものであり、縦軸はピーク面積、横軸は温度(℃)を示す。図4から分かるように、スフィンゴシルホスホリルコリンの製造は、30℃が最も適することが明らかとなった。
【0022】
実施例6 シェワネラ アルガ NS−589によるスフィンゴシルホスホリルコリン(リゾスフィンゴミエリン)の製造における界面活性剤の検討
合成培地(リン酸水素二カリウム0.05%、塩化アンモニウム0.05%、スフィンゴミエリン0.1%、タウロデオキシコール酸ナトリウム0.1%、塩化ナトリウム2%、2,6−O−ジメチル−β−シクロデキストリン0.1%、pH7.4)を用い、各種濃度で界面活性剤を添加し、30℃で3日間培養した後、TLCクロマトスキャナーCS9000(島津製作所社製)を用い波長600nmでのデンシトグラムより定量した。この結果を図5に示す。界面活性剤はタウロデオキシコール酸ナトリウム(TDC)、コール酸ナトリウム(コール酸Na)、トリトンX−100(Triton X−100) を用い、各々0.05%、0.1%、0.2%を培地に添加した。図5中、縦軸はピーク面積、横軸は界面活性剤の添加量(%)を示す。図5からも分かるようにタウロデオキシコール酸ナトリウムが最も適することが明らかとなった。
【0023】
【発明の効果】
本発明の製造方法により、効率よく安価にリゾスフィンゴ脂質を大量調製することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のシェワネラ属細菌の産生するスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼの至適pHを示す図である。
【図2】本発明のシェワネラ属細菌の産生するスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼの温度安定性を示す図である。
【図3】本発明のシェワネラ属細菌によるスフィンゴシルホスホリルコリンの製造における培地組成の検討を示す図である。
【図4】本発明のシェワネラ属細菌によるスフィンゴシルホスホリルコリンの製造における培養温度の検討を示す図である。
【図5】本発明のシェワネラ属細菌によるスフィンゴシルホスホリルコリンの製造における界面活性剤添加の検討を示す図である。
Claims (4)
- スフィンゴ脂質を、ガングリオシドGM1、GD1a、GD1b及びGb4に作用し得るスフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産能を有するシュードモナス( Pseudomonas )属細菌又はシェワネラ( Shewanella )属細菌と接触反応させ、リゾスフィンゴ脂質を採取することを特徴とするリゾスフィンゴ脂質の製造方法。
- 請求項1記載の製造方法において、当該接触反応時に、β−シクロデキストリンのメチル化物を共存させることを特徴とする請求項1記載の製造方法。
- スフィンゴリピドセラミドデアシラーゼ生産能を有するシェワネラ アルガ(Shewanella alga)NS−589(FERM P-15700)細菌。
- 下記の工程:
(a) 請求項1又は2に記載の製造方法によりリゾスフィンゴ脂質を得る工程、及び
(b) 工程(a)によって得られるリゾスフィンゴ脂質を、再アシル化若しくはスフィンゴイドのアミノ基を標識する工程、
を包含することを特徴とするリゾスフィンゴ脂質誘導体の製造方法。
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