JP3624598B2 - 電動モータの巻線構造及び巻線形成方法 - Google Patents

電動モータの巻線構造及び巻線形成方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、電動モータの巻線構造及び巻線形成方法に関し、特に、巻線の空間占有率を向上させる技術に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の電動モータの一例として、例えば、SRモータがある。SRモータとは、図5に示すように、内向きの突極10a〜10fを有するステータ(固定子)10と外向きの突極11a〜11dを有するロータ(回転子)11とが同軸上に配置され、ステータ10の突極10a〜10fに巻線12a〜12fが巻き回されたものである。ここで、ステータ10の対向する2つの突極に巻き回された巻線を「相」と呼び、一般的には、相の巻線は直列に接続されている。また、ロータ11の突極とステータ10の突極の数は、相互に倍数関係になっていない偶数個に設定される。即ち、図5のSRモータでは、ロータ11の突極の数が4つ、ステータ10の突極の数が6つとなっている。
【0003】
そして、ステータ10の相に電流を流して磁束を発生させ、その近傍のロータ11の突極を引き付けることで、トルクが発生する。この際、ステータ10とロータ11のある突極同士が対向すると、他の突極同士にずれが生じており、逐次ずれた突極を選んでその相に通電すればロータ11の突極が連続的に引き付けられ、ロータ11を回転させることができる。SRモータに発生するトルクは、ロータ11とステータ10との相対位置、及び、相に供給される電流値と突極に巻き回される巻線の巻数とに応じて変化する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、SRモータが小型の場合には、ステータ10の内向きの突極10a〜10fに、例えば、巻線機等を使用して巻線を直接巻くことは困難であるため、実際の製造工程においては、予め突極形状に合わせて巻線を巻いておき、これを突極に嵌合している。この場合、図5に示すように、ステータ10の突極の先端部は基端部に比べて隣接する突極との間隔が小さいため、巻線を嵌合するための入口部が狭くなっており、ステータ10の基端部の突極同士の間隔が広いにも関わらず、製造工程を考慮すると、突極に巻き回す巻線の巻数を多くできないという問題が生じる。
【0005】
従って、従来型のSRモータを、例えば、電動ブレーキアクチュエータ等を制御するモータとして用いる場合、使用されていない内部空間が多く存在するので、電動ブレーキアクチュエータ等の制御のために必要なトルクを得るためには、外形の大きなモータを用いることになる。即ち、電動ブレーキアクチュエータの場合にはSRモータは4個必要となり、1個のモータが小型化できないことから、電動ブレーキアクチュエータ全体の小型化・軽量化ができないという問題点があった。
【0006】
そこで、本発明は以上のような従来の問題点に鑑み、電動モータにおける巻線の空間占有率を向上させることにより、小型化を図った電動モータの巻線構造及び巻線形成方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
このため、請求項1記載の発明は、内周方向に複数の突極が略等間隔に形成されたステータと、該ステータの夫々の突極に巻き回される巻線と、前記ステータの内周部でかつ同軸上に配設される外周方向の突極が形成されたロータと、を含んで構成され、前記ステータの対向する突極に巻き回される巻線が直列に接続されて形成される相の数が奇数個の電動モータにおいて、前記相を形成する巻線を、巻き形状及び巻数が異なる2種類の巻線から構成すると共に、前記ステータに形成される隣接する突極に、夫々、異なる種類の巻線を巻き回した
【0008】
このような構成の電動モータにすれば、ステータの対向する突極に巻き回される巻線からなる相に電流を流すため、双方の巻線で生じる磁束が相において一体となり、この磁束によってロータの突極を引き付けてトルクを発生させる。従って、ステータの各突極に巻き回される巻線の巻き形状を最適化することによって、従来構成の電動モータと比べて各相における巻線の巻数が増加し、一定の電流を相に流した場合、従来と比べて、相として発生する磁束が増大することとなる。
【0009】
また、相の数を奇数個とし、隣接する突極に夫々巻き形状及び巻数の異なる巻線を巻き回す構成とすることで、各相の巻線の合計巻数が等しくなり、電動モータの出力特性が滑らかになる。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記巻き形状及び巻数が異なる2種類の巻線を、前記ステータに形成された突極への取付時に、隣接する突極と非干渉形状に巻き形成された第1形状の巻線と、該第1形状の巻線及び第1形状の巻線が取り付けられる突極と非干渉形状に巻き形成された第2形状の巻線と、から構成した。
このようにすれば、隣接する突極及び巻線との干渉を防止しつつ、突極の基端部間の空間により多くの巻線が巻き回されることとなる。
【0011】
請求項3記載の発明は、前記第1形状の巻線を、該第1形状の巻線が取り付けられる自突極の一側面を表わす第1の直線と、前記ステータの内周面を表わす第1の円弧と、前記第1の直線と平行で、かつ、隣接するステータの突極の先端部の角と所定のクリアランスを設けた第2の直線と、前記第1の直線と垂直で、かつ、前記自突極の先端部の角よりステータ外周方向の点を通る第3の直線と、で構成される略長方形形状の領域内に形成し、前記第2形状の巻線を、該第2形状の巻線が取り付けられる自突極の一側面を表わす第4の直線と、前記ステータの内周面を表わす第2の円弧と、前記第4の直線と平行で、かつ、隣接するステータの突極の先端部の角と所定のクリアランスを設けた第5の直線と、ステータに形成された隣接する突極の一側面と平行で、かつ、自突極の先端部の角よりステータ外周方向の点を通る第6の直線と、で構成される略台形形状の領域内に形成する構成とした。
【0012】
このようにすれば、第1形状及び第2形状の巻線は、巻線を突極に取り付ける際に、隣接する巻線及び突極と相互干渉がない形状となる。
請求項4記載の発明は、前記相の数を3相とした。
このようにすれば、ステータの突極が6つとなるので、実用的なトルクを発生しつつ、構造が簡単になる。
【0015】
請求項5記載の発明は、内周方向に複数の突極が略等間隔に形成されたステータと、該ステータの夫々の突極に巻き回される巻線と、前記ステータの内周部でかつ同軸上に配設される外周方向の突極が形成されたロータと、を含んで構成され、前記ステータの対向する突極に巻き回される巻線が直列に接続されて形成される相の数を奇数個とすると共に、該相を形成する巻線を巻形状及び巻数の異なる第1形状の巻線及び第2形状の巻線から構成し、前記ステータに形成される隣接する突極に、夫々異なる形状の巻線が巻き回される電動モータにおいて、前記第1形状の巻線を、該第1形状の巻線が取り付けられる自突極の一側面を表わす第1の直線と、前記ステータの内周面を表わす第1の円弧と、前記第1の直線と平行で、かつ、隣接するステータの突極の先端部の角と所定のクリアランスを設けた第2の直線と、前記第1の直線と垂直で、かつ、前記自突極の先端部の角よりステータ外周方向の点を通る第3の直線と、で構成される略長方形形状の領域内に巻き形成し、前記第2形状の巻線を、該第2形状の巻線が取り付けられる自突極の一側面を表わす第4の直線と、前記ステータの内周面を表わす第2の円弧と、前記第4の直線と平行で、かつ、隣接するステータの突極の先端部の角と所定のクリアランスを設けた第5の直線と、ステータに形成された隣接する突極の一側面と平行で、かつ、自突極の先端部の角よりステータ外周方向の点を通る第6の直線と、で構成される略台形形状の領域内に巻き形成した。
【0016】
このような巻線の形成方法にすれば、第2形状の巻線を突極に取り付けた後、第1形状の巻線を突極に取り付けることで、隣接する巻線及び突極との相互干渉を防止しつつ、従来型の電動モータと比べて巻線の巻数が増大し、一定の電流を相に流した場合、相として発生する磁束が増大する。
請求項6記載の発明は、前記第1形状の巻線を、前記第1の直線、第1の円弧及び第3の直線を規定した巻線型を用い、前記第2の直線で規定される高さまで前記巻線型の最下層から順次線を巻き回して第1形状を形成した後、該第1形状を固定し前記巻線型を取り外して形成した。
【0017】
このようにすれば、簡単な形状の巻線型を用いて第1形状の巻線が容易に形成される。
請求項7記載の発明は、前記第1形状の巻線型を、該巻線型に巻き回された巻線と共に前記ステータの突極に嵌合した。
このようにすれば、巻線型によって第1形状の巻線の形崩れが防止される。
【0018】
請求項8記載の発明は、前記第2形状の巻線を、前記第4の直線、第2の円弧及び第4の直線と第6の直線との交点を規定した巻線型を用い、前記第5の直線で規定される高さまで前記第6の直線に巻端を合わせつつ、前記巻線型の最下層から順次線を巻き回して第2形状を形成した後、該第2形状を固定し前記巻線型を取り外して形成した。
【0019】
このようにすれば、簡単な形状の巻線型を用いて第2形状の巻線が容易に形成される。
請求項9記載の発明は、前記第2形状の巻線型を、該巻線型に巻き回された巻線と共に前記ステータの突極に嵌合した。
このようにすれば、巻線型によって第2形状の巻線の形崩れが防止される。
【0021】
【発明の効果】
以上説明したように、請求項1記載の発明によれば、相を形成する巻線を巻き形状及び巻数の異なる2種類の巻線から構成したので、夫々の巻線の巻き形状を最適化することによって、ステータに形成された突極の基端部間の空間における巻線の占める割合(空間占有率)が高くなり、相としての巻線数が増大する。従って、一定の電流を相に流した場合、相に発生する磁束が大きくなるので、ロータの突極を引き付ける力、即ちトルクが大きくなり、同一外寸の電動モータの場合には出力トルクの増大、或いは、一定出力の電動モータの場合には小型化を図ることができる。例えば、電動モータをアクチュエータの制御に使用する場合には、アクチュエータの小型化及び軽量化を促進することができる。
【0022】
また、相の数を奇数個とし、隣接する突極に夫々巻き形状及び巻数の異なる巻線を巻き回すことで、各相の巻線の合計巻数が等しくなるので、電動モータの出力特性を滑らかにすることができる。
請求項2記載の発明によれば、ステータの突極の基端部間の空間により多くの巻線を巻き回すことが可能となる。
【0023】
請求項3記載の発明によれば、各相における巻線の巻数を効率的に増大しつつ、隣接する突極及び巻線との干渉がない簡単な第1形状及び第2形状を規定することができる。従って、第1形状及び第2形状の巻線を容易に形成することができるので、電動モータの性能とコストとのバランスを高い次元で両立させることができる。
【0024】
請求項4記載の発明によれば、相の数を3相としステータの突極の数を6とすれば、実用的なトルクを発生しつつ、電動モータの構造を簡単にすることができる。従って、電動モータの性能とコストとのバランスの向上を図ることができる。
【0026】
請求項5記載の発明によれば、第1形状及び第2形状の巻線を容易に形成することができ、第2形状の巻線を突極に取り付けた後、第1形状の巻線を突極に取り付けることで、隣接する巻線及び突極との相互干渉を防止しつつ、従来型の電動モータと比べて巻線の巻数を効率的に増大することができる。
請求項6記載の発明によれば、簡単な巻線型を用いて第1形状の巻線が形成されるので、巻線の製造を自動化することができ、コスト低減を図ることができる。
【0027】
請求項7記載の発明によれば、第1形状の巻線型に巻き回された巻線を巻線型と共にステータの突極に嵌合するので、巻線型によって第1形状の巻線の形崩れが防止される。また、第1形状の巻線とステータの突極との絶縁を考慮する必要もなくなる。
請求項8記載の発明によれば、簡単な巻線型を用いて第2形状の巻線が形成されるので、巻線の製造を自動化することができ、コスト低減を図ることができる。
【0028】
請求項9記載の発明によれば、第2形状の巻線型に巻き回された巻線を巻線型と共にステータの突極に嵌合するので、巻線型によって第2形状の巻線の形崩れが防止される。また、第2形状の巻線とステータの突極との絶縁を考慮する必要もなくなる。
【0029】
【発明の実施の形態】
以下、添付された図面を参照して本発明を詳述する。
先ず、本発明の原理を説明する。
SRモータ等の電動モータは、ステータの対向する突極に巻き回される巻線からなる相に電流を流すため、双方の巻線で生じる磁束が相において一体となり、この磁束によってロータの突極を引き付けてトルクを発生させる。
【0030】
即ち、ステータの各突極に巻き回された巻線で発生する磁束が必ずしも同一である必要はなく、各相として発生する磁束が夫々同一であれば良いこととなる。
従って、本発明は、各相の巻線を2種類の異なる形状(巻数)の巻線に分割し、夫々の巻線をその取付時に他と干渉のない形状に最適化することで、従来型の電動モータと比べて各相における巻線の巻数を増加させ、電動モータの出力トルクの増大、或いは、電動モータの小型化を促進するようにした。
【0031】
図1は、このような技術的思想を実現した、本発明に係る電動モータの巻線構造の実施例を示し、相数を3(ステータの突極数を6)、ロータの突極数を4とした場合のSRモータの回転軸に垂直な平面での断面図を表わす。
【0032】
ステータ(固定子)1には、その中心軸に対して略60°毎に内向きの6つの突極1a〜1fが形成されている。この突極1a〜1fは、ステータ1の軸方向(即ち、紙面に対して垂直方向)に所定の長さを持った略長方形形状となっており、突極1a〜1fの夫々に対して、巻線2a〜2fが巻き回されている。ここで、巻線2a,2c,2eは断面形状が略長方形形状となっており(以下、この形状を「第1形状」という)、巻線2b,2d,2fは断面形状が略台形形状となっている(以下、この形状を「第2形状」という)。なお、第1形状及び第2形状の詳細は、後述する。そして、図中の小丸が巻線の断面を表わし、各巻線を形成する小丸の数の半分が巻線の巻数となる。
【0033】
また、対向する2つの巻線、具体的には、2aと2d、2bと2e、2cと2fとが夫々直列に接続され、相を形成している。ここで、相の数が奇数(3)であるため、形状の異なる第1形状と第2形状の巻線とが対となり相を形成する。この相を形成する巻線は、共に同方向に磁束を発生するように直列に接続されており、例えば、巻線2aと2dとからなる相に電流を流した場合に、巻線2aがステータ1の外周方向(矢印A)に向かって磁束が発生したとすると、巻線2dはステータ1の中心方向(矢印B)に向かって磁束を発生する。換言すると、突極1a及び1dの左側で電流が紙面の手前側に向かって流れ、突極1a及び1dの右側で電流が紙面の向こう側に向かって流れるように、巻線2a及び2dが直列に接続されている。
【0034】
ステータ1の内部には、ロータ(回転子)3が同軸上に配設されており、ロータ3には、その中心軸に対して略90°毎に外向きの4つの突極3a〜3dが形成されている。そして、ロータ3の中心軸には、ロータ3の回転を介してトルクを取り出すための軸4が設けられている。
図2は、巻線2a〜2fの断面形状の詳細を表わす説明図である。
【0035】
巻線の形状としては第1形状(巻線2a,2c,2e)と第2形状(巻線2b,2d,2f)とがあるが、その代表として巻線2aと2bとを説明し、他の巻線2c〜2fはこれと同様であるので、その説明は省略する。
先ず、第1形状の巻線2aについて説明すると、第1形状は、突極1aの一側面を表わす直線a(第1の直線)と、ステータ1の内周面を表わす円弧b(第1の円弧)と、直線aと平行で、かつ、隣接する突極1bの先端部の角を通る直線に対し所定のクリアランスΔ1を有する直線c(第2の直線)と、直線cに垂直で、かつ、突極1aの先端部の角或いは巻線2aの取付先端部を通る直線d(第3の直線)と、で囲まれる領域内に形成される。ここで、クリアランスΔ1は、巻線2aの形成時の膨らみやばらつきを考慮して決定し、後述する巻線2bと干渉が生じないようにする。
【0036】
次に、第2形状の巻線2bについて説明すると、第2形状は、突極1bの一側面を表わす直線e(第4の直線)と、ステータ1の内周面を表わす円弧f(第2の円弧)と、直線eと平行で、かつ、隣接する突極1aの先端部の角を通る直線に対し所定のクリアランスΔ2を有する直線g(第5の直線)と、前記直線cと平行で、かつ、突極1bの先端部の角或いは巻線2bの取付先端部を通る直線h(第6の直線)と、で囲まれる領域内に形成される。なお、クリアランスΔ2の設け方は、第1形状のクリアランスΔ1と同様である。
【0037】
図3は、第1形状の巻線(2a,2c,2e)の形成方法を表わす模式図である。ここでは、説明の便宜上、巻線2aの形成方法についてのみ説明する。
即ち、巻線2aは、図3(a) に示すような巻線型5を用いて形成する。この巻線型5は、4分割された巻線型5a〜5dにより構成されており、その断面形状は、コの字形状(いわゆるチャンネル形状)の断面を有している。巻線型5の断面形状は、図3(b) に示すように、基部6aが前記直線aに、一端面6bが前記直線d(又は、円弧b)に、他端面6cが前記円弧b(又は、直線d)に相当し、前記直線cに相当する部分は巻き重ねる巻線2aの層数で調整する(図2参照)。
【0038】
一般的に、巻線2aを巻き重ねるときには、図3(b) のように、下の2本の巻線の中央に次の巻線を巻き重ねていくと最も安定し、かつ、空間に対する線の占める割合(空間占有率)も高くなる。そこで、巻線型5の端面6bと6cとがなす間隔(幅)は、最下層の巻数×線の太さに合わせ、最下層にはこの巻数、2層目には1層目より1回少ない巻数、3層目は再び最下層と同じ巻数、というように巻き重ねる。この作業によって第1形状の略長方形断面を持つ巻線2aが完成する。巻き終わったらワニスなどで巻線2aを固め、その後、巻線型5a〜5dを分割して外す。なお、巻線2aを巻き重ねる際、例えば、3層目の端の線は、巻線型5の端面6b若しくは6cが逃げてしまうと2層目に落ちてしまうので、巻線型5(5a〜5d)はそれに耐えるだけの剛性を持ったものとする必要がある。
【0039】
なお、ここで用いる巻線型5は、図のように分割可能な構成で巻線作業終了後に外せる単なる型の役割のものでも良いし、巻線型5a〜5dを一体的に形成し、巻線2aと共にステータ1に取り付けるボビンの役割のものでも良い。型の役割だけの場合には、SRモータのコストが安くなる他(型の必要個数が少ない)、ボビンのスペースが不要なため巻線2aをたくさん巻けるなどのメリットがある。一方、ボビンの場合には、ボビンの外寸を前記直線a,c,d及び円弧d(図2参照)に合わせて作成する必要があるが、ボビン取付時に、巻線2aが形崩れを起こしにくい、ステータ1と巻線2aとの間の絶縁を別途考える必要がないなどのメリットがある。従って、どちらを採用するかは、SRモータの要求性能(出力トルク、外寸等)を考慮して選択すれば良い。
【0040】
図4は、第2形状の巻線(2b,2d,2f)の形成方法を表わす模式図である。ここでは、説明の便宜上、巻線2bの形成方法についてのみ説明する。
即ち、巻線2bは、図4(a)に示すような巻線型7を用いて形成する。この巻線型7も第1形状の巻線型5(図3参照)と同様に、4分割された巻線型7a〜7dにより構成されており、その断面形状は、一側面が短いコの字形状(いわゆるアングル形状に近い)の断面を有している。巻線型7の断面形状は、図4 (b)に示すように、基部8aが前記直線eに、高さが短い一端面8bが前記直線eと直線hとの交点に、他端面8cが前記円弧fに相当し、前記直線gに相当する部分は巻き重ねる巻線2bの層数で調整する(図2参照)。
【0041】
ところで、第2形状の巻線2bは、第1形状の巻線2aと異なり、前記直線hと直線eとが略直角となっていない(即ち、直線hが傾いている)ので、巻線2bの巻数は上層になるほど減らしながら巻いていかなければならない。この場合にも、第1形状の巻線2aと同様に下の2本の巻線の中央に次の巻線を巻き重ねるが、図4(b) のように、最下層と2層目は第1形状の巻線2aと同じで、3層目は2層目と同じ巻数で1列ずらして巻き、4層目は3層目より1回少ない巻数を巻く。このように2層毎に1巻きずつ巻数を減らしていくと、図4(b) のような傾斜面が形成され、その傾斜角が略60°となる。本実施例では、相が3つ(ステータ1の突極数が6)であるので、上記のように第2形状の巻線2bを巻けば必要な傾斜角60°を容易に形成することができる。
【0042】
また、2層目で2回減らして巻くと、傾斜角は略30°となる。そこで、図4(c) のように、2層目2回減(30°)、3層目1回減(30°)、4層目2回減(30°)、5層目1回減(30°)とし、6層目だけは1回減(60°)という減らし方を採用すれば、平均的に略36°の角度にできる。この角度は、5相(ステータ1の突極数が10)のSRモータの斜面形成に使うことができる(30°ずつのものは、相が6相で偶数となるため使えない)。
【0043】
なお、ここで説明した一側面が短いコの字断面形状の巻線型7(7a〜7d)は、型にもボビンにも使えるものであるが、型に使う場合は第1形状と同じようなコの字の長さが同じものであっても差し支えない。
また、ここで示した2つの形状(第1形状及び第2形状)は、巻線作業の容易さを考慮して略長方形・略台形に形成してあるが、ステータ1の突極1a〜1fの基端部(前記円弧b、fの近傍)には、さらに巻線を巻いても構わない。
【0044】
さらに、図3(b) の一側面6b(又は6c)を外側に湾曲させ、逆反り形状に巻けば、図2における前記直線dは、突極1aの内周面1a’を延長した円弧d’とすることも可能である。この場合、より多くの巻線を巻くことができる。
SRモータの組み立ては、巻線の組み付け・結線、ロータの取り付け、両端のキャップ取り付けの順で行われるが、ここでは巻線の組み付けのみ図1を参照しつつ説明する。
【0045】
先ず、第2形状の巻線2b,2d,2fをステータ1の突極1b,1d,1fに組み付ける。巻線2bをステータ1の内側へ差し込み、突極1bに嵌合する。このとき、巻線2bの外周面は、前述したように直線g(図2参照)によって隣接する突極1a及び1cの先端部の角と干渉しないように形成されているので、何の障害もなく突極1bに嵌合することができる。同様にして、巻線2d及び2fも組み付ける。
【0046】
次に、第1形状の巻線2a,2c,2eをステータ1の突極1a,1c,1eに組み付ける。第2形状の巻線2b,2d,2fと同様に、巻線2aをステータ1の内側に差し込み、突極1aに嵌合する。このとき、巻線1aの外周面は、前述したように直線c(図2参照)に合わせて形成されており、また、隣接する巻線2b及び2fの直線h部分が、直線cと所定のクリアランスΔ1を隔てて形成されているので、何の障害もなく突極1aに嵌合することができる。同様にして、巻線2c及び2eも組み付ける。
【0047】
すべての巻線2a〜2fを組み付けたら、巻線2a〜2fを固定する。巻線の固定方法には各種の方法があるが、前記直線d及びhを突極の先端部の角で規定したならば接着、また、巻線先端位置で規定したならば先端部に板を挟み込む方法などが使用できる。
以上説明した構成からなるSRモータの動作は、従来型のSRモータと同様である。但し、各突極の巻線を同じ形状として巻いた場合、図5のように、ステータ10に形成した突極10a〜10fの基端部近傍には、使用されていない空間がたくさん存在し、巻線の巻数が少ない。実際、この図で1相の巻数(断面図の小丸の数)は107(回/巻線)×2=214回である。一方、本発明のSRモータにおける1相の巻数は、129回+115回=244回であり(図1参照)、図5より明らかに巻線の巻数が多い。従って、同一電流値を相に流した場合に発生する磁束量、即ち、トルクを増加することができるため、より小さなサイズのモータとしても同じトルクを発生させることが可能となる。
【0057】
以上説明したように、本発明では、SRモータの各相の巻線を2種類の異なる巻線に分割し、その代わりに夫々の巻線の形状を最適化して順々に組み付け、最後にそれらを接続することで相としての巻数を増やす、という構成としたことにより、実際に組み立てが可能で、各相の発生するトルクは一定でありながら、突極間のスペースにおける巻線の占める割合を高くすることができる。従って、ステータ形状を小さくしても多くの巻線を巻くことができるため、モータの小型化、即ち、アクチュエータの小型化が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る電動モータの巻線構造を示す断面図
【図2】同上の第1形状及び第2形状の巻線の形状を説明する詳細図
【図3】同上の第1形状の巻線の形成方法の一例を示し、(a)は第1形状の巻線型を示す斜視図、(b)は第1形状の巻線の断面形状を示す断面図
【図4】同上の第2形状の巻線の形成方法の一例を示し、(a)は第2形状の巻線型を示す斜視図、(b)は第2形状の巻線の断面形状の一例を示す断面図、(c)は第2形状の巻線の断面形状の他の一例を示す断面図
【図5】従来の電動モータの巻線構造を示す断面図
【符号の説明】
1 ステータ
1a〜1f 突極
2a,2c,2e 第1形状の巻線
2b,2d,2f 第2形状の巻線
3 ロータ
3a〜3d 突極
5 巻線型
5a〜5d 巻線型
7 巻線型
7a〜7d 巻線型

Claims (9)

  1. 内周方向に複数の突極が略等間隔に形成されたステータと、該ステータの夫々の突極に巻き回される巻線と、前記ステータの内周部でかつ同軸上に配設される外周方向の突極が形成されたロータと、を含んで構成され、前記ステータの対向する突極に巻き回される巻線が直列に接続されて形成される相の数が奇数個の電動モータにおいて、
    前記相を形成する巻線は、巻き形状及び巻数が異なる2種類の巻線から構成されると共に、前記ステータに形成される隣接する突極には、夫々、異なる種類の巻線が巻き回される構成であることを特徴とする電動モータの巻線構造。
  2. 前記巻き形状及び巻数が異なる2種類の巻線は、前記ステータに形成された突極への取付時に、隣接する突極と非干渉形状に巻き形成された第1形状の巻線と、該第1形状の巻線及び第1形状の巻線が取り付けられる突極と非干渉形状に巻き形成された第2形状の巻線と、から構成されることを特徴とする請求項1記載の電動モータの巻線構造。
  3. 前記第1形状の巻線は、該第1形状の巻線が取り付けられる自突極の一側面を表わす第1の直線と、前記ステータの内周面を表わす第1の円弧と、前記第1の直線と平行で、かつ、隣接するステータの突極の先端部の角と所定のクリアランスを設けた第2の直線と、前記第1の直線と垂直で、かつ、前記自突極の先端部の角よりステータ外周方向の点を通る第3の直線と、で構成される略長方形形状の領域内に形成され、
    前記第2形状の巻線は、該第2形状の巻線が取り付けられる自突極の一側面を表わす第4の直線と、前記ステータの内周面を表わす第2の円弧と、前記第4の直線と平行で、かつ、隣接するステータの突極の先端部の角と所定のクリアランスを設けた第5の直線と、ステータに形成された隣接する突極の一側面と平行で、かつ、自突極の先端部の角よりステータ外周方向の点を通る第6の直線と、で構成される略台形形状の領域内に形成されることを特徴とする請求項2記載の電動モータの巻線構造。
  4. 前記相の数は3相であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の電動モータの巻線構造。
  5. 内周方向に複数の突極が略等間隔に形成されたステータと、該ステータの夫々の突極に巻き回される巻線と、前記ステータの内周部でかつ同軸上に配設される外周方向の突極が形成されたロータと、を含んで構成され、前記ステータの対向する突極に巻き回される巻線が直列に接続されて形成される相の数が奇数個であると共に、該相を形成する巻線を巻形状及び巻数の異なる第1形状の巻線及び第2形状の巻線から構成し、前記ステータに形成される隣接する突極に、夫々異なる形状の巻線が巻き回される電動モータにおいて、
    前記第1形状の巻線を、該第1形状の巻線が取り付けられる自突極の一側面を表わす第1の直線と、前記ステータの内周面を表わす第1の円弧と、前記第1の直線と平行で、かつ、隣接するステータの突極の先端部の角と所定のクリアランスを設けた第2の直線と、前記第1の直線と垂直で、かつ、前記自突極の先端部の角よりステータ外周方向の点を通る第3の直線と、で構成される略長方形形状の領域内に巻き形成し、
    前記第2形状の巻線を、該第2形状の巻線が取り付けられる自突極の一側面を表わす第4の直線と、前記ステータの内周面を表わす第2の円弧と、前記第4の直線と平行で、かつ、隣接するステータの突極の先端部の角と所定のクリアランスを設けた第5の直線と、ステータに形成された隣接する突極の一側面と平行で、かつ、自突極の先端部の角よりステータ外周方向の点を通る第6の直線と、で構成される略台形形状の領域内に巻き形成することを特徴とする電動モータの巻線形成方法
  6. 前記第1形状の巻線を、前記第1の直線、第1の円弧及び第3の直線を規定した巻線型を用い、前記第2の直線で規定される高さまで前記巻線型の最下層から順次線を巻き回し て第1形状を形成した後、該第1形状を固定し前記巻線型を取り外して形成することを特徴とする請求項5記載の電動モータの巻線形成方法
  7. 前記第1形状の巻線型を、該巻線型に巻き回された巻線と共に前記ステータの突極に嵌合することを特徴とする請求項6記載の電動モータの巻線形成方法。
  8. 前記第2形状の巻線を、前記第4の直線、第2の円弧及び第4の直線と第6の直線との交点を規定した巻線型を用い、前記第5の直線で規定される高さまで前記第6の直線に巻端を合わせつつ、前記巻線型の最下層から順次線を巻き回して第2形状を形成した後、該第2形状を固定し前記巻線型を取り外して形成することを特徴とする請求項5記載の電動モータの巻線形成方法。
  9. 前記第2形状の巻線型を、該巻線型に巻き回された巻線と共に前記ステータの突極に嵌合することを特徴とする請求項8記載の電動モータの巻線形成方法。
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