JP3624569B2 - 2サイクルエンジンの排気制御装置 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、2サイクルエンジンの排気制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図21に従来の2サイクルエンジンの排気制御装置を示す。この排気制御装置は、排気通路aに対して出没する排気タイミング用の中バルブbおよび低バルブcを排気通路aの上側に上下に重ねて摺動自在に設け、この中バルブbおよび低バルブcを出没させてその先端縁で排気口dの上縁位置を昇降させるものである。低バルブcの後端部には、駆動アームeが駆動ピンfを介して接続され、中バルブbは、低バルブcに係合ボルトgを介して摺動方向に係合可能となっている。また、中バルブbの上面には、先端縁でエンジン高回転時の排気口dの上縁位置を形成する高バルブhが固定される。
【0003】
この従来の排気制御装置によれば、エンジン低回転時では、図21に示すように、低バルブcおよび中バルブbが共に突出状態にあり、排気口dの上縁位置が低バルブcの先端縁によって決定されるため、排気タイミングはエンジン低回転に応じて遅いものとなる。エンジン中回転時では、図22に示すように、駆動アームeの回転により下側の低バルブcのみが引上げられて、排気タイミングは、中バルブbの先端縁によってやや早くなる。さらに、エンジン高回転時では、図23に示すように、低バルブcをさらに後退させることで、係合ボルトgを介して中バルブbも一緒に引上げて排気口dの上縁位置を高バルブhの先端縁とし、排気タイミングを最も早くする。
【0004】
排気タイミングを可変としたこのような装置の公知例としては、実開平3−119535号公報および特開平4−183927号に記載された排気制御装置が挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の2サイクルエンジンの排気制御装置においては、次のような問題点がある。例えば実開平3−119535号公報記載の装置は、各バルブによって排気タイミングのみを制御するものであり、エンジン低回転時の出力を排気通路の断面積変化によって制御することはできない。一般にエンジン低回転時では、エンジン出力の向上およびHCの排出量の低減を図るため、排気口の開口面積を大きく絞ることが望ましい。
【0006】
なお、図24に示すように、低バルブcを排気口dの下縁近傍まで延設し、これによりエンジン低回転時に排気口dを大きく絞ることは可能である。しかし、この場合は、排気口dの上縁位置(低バルブcの下縁位置)が極端に下がってしまい、排気口dの閉じタイミングが早くなって圧縮比の上昇を招く恐れがある。
【0007】
また、前記特開平4−183927号公報記載の装置においては、左右の排気通路に突出したバルブの個数によって、排気口の開口形状を全体で左右非対称としているが、この場合、排気口の開口形状を左右で大きく異ならせることができず、排気行程において有効なスワールを生成することは難しい。また、駆動手段の細かい動作でバルブの個数を制御するため、制御が複雑である。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、既存の排気タイミング可変装置を利用した簡単かつ安価な構成で、圧縮比に影響を与えることなくエンジン低回転時に排気口の開口面積を大きく絞り、さらに排気行程において所望のスワールを生成することもできる2サイクルエンジンの排気制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため、次のような構成を有する。
すなわち、本発明は、排気タイミング用バルブをシリンダの排気通路の上側に設け、前記排気通路がシリンダ壁面に開口する排気口の上縁位置を該排気タイミング用バルブの先端縁で制御する2サイクルエンジンの排気制御装置において、前記排気タイミング用バルブを左右一対設けて、それら排気タイミング用バルブそれぞれの下側に、アイドリング時を含むエンジン低回転時に前記排気通路に突出して先端面で前記排気口の開口面積を絞る排気絞り用バルブを摺動自在に重ねて設け、前記エンジン低回転時に、前記排気絞り用バルブのうちの一方が前記排気口の下縁またはその近傍から前記排気タイミング用バルブの下縁またはその近傍にかけて閉塞させると共に、前記排気絞り用バルブのうちの他方が前記排気タイミング用バルブと同等の高さに保持されることにより、前記排気口の他方側のみを部分的に開口させるように構成し、かつ、前記一方の排気絞り用バルブに略円弧状の先端面を形成してその突出時にシリンダ壁面と略面一とし、前記排気絞り用バルブの動作をエンジン回転数、スロットル開度およびスロットル速度に応じて制御することを特徴とする2サイクルエンジンの排気制御装置である。
【0011】
本発明によれば、排気タイミング用バルブによってエンジン回転数に応じた排気タイミングが得られると同時に、エンジン低回転時には排気口を排気絞り用バルブによって大きく絞ることができる。よって、既存の排気タイミング可変装置を利用した簡単かつ安価な構成により、エンジン低回転時における出力向上およびHC排出量の低減を図ることができる。
【0012】
また、前記排気口の下縁またはその近傍から前記排気タイミング用バルブの下縁またはその近傍にかけて、排気口を部分的に開口させるように排気絞り用バルブを構成したので、エンジン低回転時における排気口の上端位置が排気タイミング用バルブの下縁またはその近傍となる。よって、エンジン低回転時に排気口を大きく絞っても閉じタイミングが早くならないので、排気絞り用バルブにより圧縮比が影響されることもない。
【0013】
また、排気絞り用バルブの構成(形状・配置等)を適宜に変更するだけで、排気口の開口形状を容易に左右非対称に形成できるので、複雑な駆動手段による制御を用いずに、排気行程で所望のスワールを生成することもできる。
【0014】
また、排気絞り用バルブの先端面をシリンダ壁面と略面一に形成したので、排気口の開口面積を正確に設定することができ、アイドリング運転等の低回転・低負荷運転時のHC排出量およびエンジン出力が安定する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態(第1〜第9実施形態)を説明する。これらの実施形態は、本発明の排気制御装置を自動二輪車の2サイクルエンジンに適用したものである。
【0016】
まず、本実施形態に係るエンジンの構成について図1および図2を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る自動二輪車は、前輪2および後輪4と、この前輪2および後輪4の間に配置された2サイクルエンジン6とを備える。このエンジン6は、図2に示すように、車体フレームに固定されたクランクケース8と、このクランクケース8の前上面に設けられたシリンダ10と、このシリンダ10の上面にボルト12で締着されたシリンダヘッド14とから主に構成される。
【0017】
クランクケース8には、図2に示すように、車両後方に向けて開口した吸気通路16が形成されており、この吸気通路16内にはリードバルブ18が設置される。シリンダ10は、吸気通路16と反対側に形成された排気通路20と、この排気通路20の排気口28が開口するシリンダ壁面24とを備え、シリンダ壁面24では、ピストン26が上下に摺動する。なお、シリンダ壁面24は、シリンダ10に組み込まれたシリンダスリーブの内周面でもよい。
【0018】
図2に示すように、シリンダ10における排気通路20の上側には、後述する各バルブを収納するバルブ孔30と、このバルブ孔30に連通した機械室32とが設けられる。この機械室32は、車両前方に向けて開放するようにシリンダ10に形成された凹部をカバー34で覆うことにより形成される。また、機械室32の左右両側壁には、駆動軸36の両端部が支持されており、この駆動軸36には駆動アーム40が固定される。
【0019】
なお、以下説明する第1〜第4実施形態に係る排気制御装置は、例えば図3に示すように排気口28がリブ28aを挟んで左右に分割された構造に本発明を適用したものであり、一方、第5〜第9実施形態の排気制御装置は、例えば図10に示すようにリブの無い一つの排気口28を有する構造に本発明を採用したものである。
【0020】
まず、第1実施形態の排気制御装置を説明する。図3〜図5に示すように、バルブ孔30には、排気通路20に対して出没して左右の排気口28の上縁位置を昇降させる左右の中バルブ44が摺動自在に設けられている。また、左右の中バルブ44の上側には、バルブ孔30の上面に固定された左右一対の高バルブ46が設けられている。さらに左右の中バルブ44それぞれの下側には、低バルブ48L,48Rが摺動自在に重ねて設けられている。中バルブ44の中央部には、係合ボルト(係合ピン)50が貫通して設けられていて、この係合ボルト50の上端部には、中バルブ44を突出方向に付勢するスプリング52の前端が当接する一方、その下端部は、低バルブ48L,48Rに形成された凹部54に嵌まっている。低バルブ48L,48Rの後端部には、駆動ピン56を介して前記駆動アーム40が係合している。
【0021】
この第1実施形態においては、一方の低バルブ48L(図3で紙面に対して左側のもの)を排気絞り用バルブとして構成している。すなわち、エンジン低回転時には、図3および図4に示すように一方の排気口28については、低バルブ48Lの先端面48L1が排気口28の下縁まで塞いでおり、排気口28が三つのバルブ44,46,48Lで完全に閉塞される。他方の排気口28については、図3および図5に示すように低バルブ48Rの先端縁が中バルブ44の先端縁と略同じ高さにあり、中バルブ44の下方が排気口28の下縁にかけて大きく開口している。これにより、エンジン低回転時において、排気ガスは、大きく開口した他方の排気口28の開口部のみから排出される。また、エンジン低回転時において、他方の排気口28における開口部の上縁位置は、中バルブ44の先端縁となる。
【0022】
また、図6に示すように、排気絞り用バルブとして機能する一方の低バルブ48Lの先端面48L1は、中バルブ44および高バルブ46の先端縁と同様に、略円弧状に形成されてシリンダ壁面24と略面一に形成される(後述する第2〜第9実施形態に係る低バルブ48L,48R,48についても同様)。
【0023】
また、左右の低バルブ48L,48Rは、図4および図5に示すように、エンジン回転数の変化に応じて駆動アーム40により駆動ピン56を介して駆動される。左右の中バルブ44は、この低バルブ48L,48Rの動作に連動して出没する。その動作を簡単に説明すると、エンジン低回転時には低バルブ48L,48Rおよび左右の中バルブ44が共に突出した状態にあり、この状態からエンジンが中回転域に入ると、低バルブ48L,48Rのみが中バルブ44を残して駆動アーム40の回転により没入方向に摺動する。そして、エンジンが中回転域から高回転域に入ると、駆動アーム40がさらに回転して低バルブ48L,48Rが没入するが、このときは係合ボルト50の下端部が凹部54の前面に当接するため、低バルブ48L,48Rの動作に連動して中バルブ44もスプリング52の付勢力に抗して引上げられる。
【0024】
このように左右の低バルブ48L,48Rは、周知の排気タイミング可変装置における低バルブと略同じ動作をする。また、低バルブ48L,48Rおよび左右の中バルブ44の突出時および没入時の位置決めについても、周知の排気タイミング可変装置と同様に、バルブ孔30の後端のストッパプレート58(図4参照)に対して、低バルブ48L,48R後端に嵌着した筒体60、または、低バルブ48L,48Rの段差面48L2,48R2を当接させることにより行う。
【0025】
なお、図5に示す装置の状態では、前記他方の低バルブ48Rが没入状態であるため、中バルブ44によってエンジン低回転時の排気タイミングが決定されるが、この低バルブ48Rをシリンダ壁面24まで延没して排気タイミングをやや遅くすることもできる。
【0026】
以上のような第1実施形態の排気制御装置によれば、中バルブ44および高バルブ46によってエンジン回転数に応じた排気タイミングが得られる。それと同時に、エンジン低回転時には一方の排気口28を低バルブ48Lによって完全に閉じ、他方の排気口28のみを開口させることができる。よって、既存の排気タイミング可変装置を利用した、すなわち、同一の駆動手段により前記排気絞り用の低バルブ48Lと排気タイミング用の中バルブ44とを連動させた簡単かつ安価な構成により、エンジン低回転時の出力向上およびHCの排出量の低減を図ることができる。また、シリンダ10に排気制御装置を内蔵させているので、排気管に排気絞り装置を内蔵させているものに比べ、駆動軸36の軸受け部分が熱影響を受けにくく、該軸受け部分のシール部材等が高熱で劣化することもない。
【0027】
また、他方の排気口28については、中バルブ44の下側から排気口28の下縁にかけて開口するので、エンジン低回転時に一方の排気口28を完全に絞っても、排気口28の閉じタイミングは、他方の排気口28の中バルブ44の先端縁で決まる。よって、圧縮比が影響されることはない。
【0028】
また、一方の排気口28のみを閉塞することにより、排気口全体(二つの排気口28を併せたもの)における開口部の形状をシリンダ壁面24の中心軸に対して大きく左右非対称に(リブ28aを挟んで左右非対称に)形成できるため、排気工程で所望のスワールを容易に生成することができる。
【0029】
また、排気絞り用バルブとなる低バルブ48Lの先端面48L1がエンジン低回転時にシリンダ壁面24と略面一になるので、排気口28の絞り込み量を正確に設定することができ、アイドリング運転時等の低回転・低負荷運転時におけるHC排出量およびエンジン出力が安定する。
【0030】
次に、第2実施形態および第3実施形態の排気制御装置それぞれを図7(a)・同(b)および図8(a)・同(b)を参照して説明する。第2実施形態に係る左右の低バルブ48L,48Rは、エンジン低回転時に完全に排気口28を閉塞するバルブ形状に対し、鉛直線に沿う切欠き線L1に従ってその外側部に切欠き60aを設けたものである。第3実施形態では、反対に内側部に鉛直線に沿った切欠き線L2により切欠き60bを設けている。これらの実施形態の場合、左右の低バルブ48L,48Rは、共に排気絞り用バルブとして機能し、エンジン低回転時には、左右の排気口28の下部を大きく絞って切欠き60a,60bのみから排気ガスを排出させる。なお、第2実施形態および第3実施形態それぞれにおいて、左右の低バルブ48L,48Rのうちの一方については排気口28を完全に閉塞するバルブ形状としてもよい。
【0031】
第4実施形態は、図9に示すように、一方の低バルブ48Rの外側部に、排気口28の下縁から外側縁にかけて円弧状に延びる切欠き線L3に従い、切欠き60cを設けたものである。この場合においても、左右の低バルブ48L,48Rの両方に切欠き60cを設けてもよく、また切欠き60cを排気口28の内側寄り(リブ28a側)に形成してもよい。
【0032】
次に、分割されない一つの排気口28に本発明を適用した第5実施形態を図10〜図13を参照して説明する。この排気制御装置は、図10(a)に示すように、一つの排気口28の構成に対応して、高バルブ46、中バルブ44および低バルブ48を一つずつ備えている。低バルブ48は、排気口28における中バルブ44の下方を略閉塞する形状を呈し、低バルブ48の下部には、略コの字形状の切欠き線L4に従って幅a1、高さb1、角部の丸みrの切欠き60dが設けられている。図10(a)および同(b)では、その一例として、低バルブ48の下部中央に切欠き60dを設けた場合を示しているが、この切欠き60dの位置は、スワールを生成するために低バルブ48の中心に対して左右いずれかに偏らせてもよい。
【0033】
また、この第5実施形態では、図11および図12に示すように、低バルブ48の摺動性を考慮し、かつ、低バルブ48の没入時に切欠き60dがデッドボリュームとならないよう、切欠き60dに摺動自在に嵌まる凸部30aをバルブ孔30の下面に突設することが望ましい。
【0034】
第6実施形態の排気制御装置は、図13に示すように、低バルブ48の下部に、曲率半径rの円弧状の切欠き線L5により形成される幅a1、高さb1の切欠き60eを設けたものである。図13では、その一例として、低バルブ48の側部に排気口28の下縁から側縁にかけて切欠き線L5を形成した場合を示している。
【0035】
この第6実施形態および前記第5実施形態において、低バルブ48の幅をW、高さをHとすると、a1≦W、b1≦Hのとき、曲率半径rまたは角部の丸みrが小さい程、任意に切欠き60d,60eを左右いずかの側に偏在させることができ、rはW以下に設定することが望ましい。
【0036】
図14に示す第7実施形態の排気制御装置は、エンジン低回転時に、中バルブ44の下側における排気口28の側部のみが開口するように低バルブ48を形成したものであり、低バルブ48の左右いずれかの側部を、排気口28の下縁から中バルブ44の下縁へ鉛直方向に沿って延びる切欠き線L6で切欠いたものである。形成される切欠き60fの幅a1は、低バルブ48の幅Wよりも小さく、また切欠き60fの高さb1は、低バルブ48の高さHと一致している。
【0037】
この第7実施形態によれば、切欠き線L6が直線状であることから、低バルブ48に対して切欠き60fを形成するための機械加工が容易に行えるという効果がある。
【0038】
第8実施形態は、図15に示すように、低バルブ48あるいは中バルブ44の作動性を考慮して、中バルブ44の下面全体に低バルブ48の上面が接触するよう、略横L字形の切欠き線L7で切欠き60gを低バルブ48の側部に形成したものである。すなわち、切欠き60gの高さb1を低バルブ48の高さHよりも小さく設定している。
【0039】
さらに、第9実施形態では、図16に示すように、低バルブ48における排気口28の下縁から側縁に直線状に延びる傾斜した切欠き線L8に従って切欠き60hを形成したものである。この第9実施形態によれば、中バルブ44の下面全体に低バルブ48の上面を接触させることができると同時に直線状の切欠き線L8により低バルブ48の加工も容易になるという極めて有利な効果がある。
【0040】
なお、これら第2〜第9実施形態の排気制御装置においても、第1実施形態の効果と同様に、圧縮比の上昇防止、左右非対称の開口部(切欠き)による有効なスワールの生成、既存の排気タイミング可変装置の利用によるコスト削減、および、排気口28の開口面積の正確な制御が図れる。
【0041】
以上の各実施形態の排気制御装置においては、図17に示すように、ワイヤ62を介して前記駆動軸36をモータ等のアクチュエータ64で回転駆動する。このアクチュエータ64は、エンジン回転数、スロットル動作(スロットル開度およびスロットル速度)に応じて制御される。エンジン回転数は、点火プラグ66に接続した点火CDIより検出され、スロットル開度・スロットル速度は、スロットルグリップ68とキャブレタ70とを繋ぐスロットルワイヤ72に設けたスロットルポジションセンサにより検出される。
【0042】
本実施形態に係る各バルブのアクチュエータ64による出没動作は、例えば、図18に示したフローチャートに従って制御される。このフローチャートの制御方法では、エンジン回転数が5000r.p.m未満である場合、スロットル開度が20%未満でかつスロットル速度が20%/(0.1秒)未満のときには、低バルブ48L,48R,48および中バルブ44を完全に突出させ、排気タイミングを最も遅くすると同時に排気口28の開口面積を大きく絞る。また、エンジン回転数が5000r.p.m未満の場合であっても、スロットル開度が20%以上またはスロットル速度が20%/(0.1秒)以上のときは、アクチュエータ64によって低バルブ48L,48R,48のみをバルブ孔30に没入させて中バルブ44の先端縁により排気タイミングをエンジン中回転に応じたものとする。
【0043】
そして、スロットル開度およびスロットル速度の大きさに拘わらず、エンジン回転数が5000〜7000r.p.mの場合は、低バルブ48L,48R,48を没入させて中バルブ44の先端縁により排気タイミングをエンジン中回転に対応させ、またエンジン回転数が7000r.p.mを越える場合には、低バルブ48L,48R,48および中バルブ44の両方を没入させ、高バルブ46の先端縁によって排気タイミングを最も早くする。
【0044】
このように各バルブの出没動作を、エンジン回転数、スロットル開度およびスロットル速度をパラメータとして制御すれば、エンジン低回転時であっても、スロットル開度またはスロットル速度の大きさによっては、エンジン中回転時と同じ排気制御を行うことができ、スロットル操作に対する排気制御の応答性を高めることができる。
【0045】
以上のような本実施形態によれば、図19および図20に示すグラフからわかるように、エンジン低回転時において、エンジン出力を従来に比して向上させることができ、しかも排出されるHC量については大幅に低減することができる。
【0046】
なお、本実施形態は本発明の好適な実施の態様であり、本発明の技術的範囲は本実施形態に限定されない。例えば、本実施形態では、2段の排気タイミング用バルブ(高バルブ46・中バルブ44)の下に排気絞り用バルブを設けたが、本発明は、これに限定されず、1段または3段以上の排気タイミング用バルブの下に排気絞り用バルブを設けた装置も含む。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明の通り、本発明によれば、既存の排気タイミング可変装置を利用した簡単かつ安価な構成により、エンジン低回転時のエンジンの出力向上およびHC排出量の低減を図ることができる。また、エンジン低回転時に排気口を大きく絞っても、閉じタイミングが早くならないので、圧縮比が影響されることもない。また、排気絞り用バルブの構成(形状・配置等)を適宜に変更するだけで、排気行程において所望のスワールを容易に生成することもできる。さらに、排気口の開口面積を正確に設定することができるので、アイドリング運転等のエンジン低回転・低負荷運転時におけるHCの排出量およびエンジン出力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
【図2】本実施形態に係るエンジン上部の断面図である。
【図3】第1実施形態に係るシリンダの断面図であって、図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図3におけるV−V断面図である。
【図6】図3におけるVI−VI断面図である。
【図7】(a)は第2実施形態に係る排気口の正面図、(b)は(a)におけるB1−B1断面図である。
【図8】(a)は第3実施形態に係る排気口の正面図、(b)は(a)におけるB2−B2断面図である。
【図9】第4実施形態に係る排気口の正面図である。
【図10】(a)は第5実施形態に係る排気口の正面図、(b)は(a)におけるB4−B4断面図である。
【図11】第5実施形態に係る断面図であって、第1実施形態に係る図3に相当する図である。
【図12】図11におけるXII−XII断面図である。
【図13】第6実施形態に係る排気口の正面図である。
【図14】第7実施形態に係る排気口の正面図である。
【図15】第8実施形態に係る排気口の正面図である。
【図16】第9実施形態に係る排気口の正面図である。
【図17】本実施形態の排気制御装置の全体を示す概略図である。
【図18】本実施形態に係る排気制御を示すフローチャートである。
【図19】本実施形態の排気制御装置および従来の排気制御装置それぞれより得られるエンジン出力を比較して示すグラフである。
【図20】本実施形態の排気制御装置および従来の排気制御装置それぞれにおける排気ガス中のHC量を比較して示すグラフである。
【図21】エンジン低回転時における従来の排気制御装置の断面図である。
【図22】エンジン中回転時における従来の排気制御装置の断面図である。
【図23】エンジン高回転時における従来の排気制御装置の断面図である。
【図24】従来の排気制御装置において低バルブを下方に延ばした例を示す排気口の正面図である。
【符号の説明】
10 シリンダ
20 排気通路
24 シリンダ壁面
28 排気口
40 駆動アーム
44 中バルブ(排気タイミング用バルブに相当)
46 高バルブ(排気タイミング用バルブに相当)
48,48L,48R 低バルブ(排気絞り用バルブに相当)
48L1 先端面
【発明の属する技術分野】
本発明は、2サイクルエンジンの排気制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
図21に従来の2サイクルエンジンの排気制御装置を示す。この排気制御装置は、排気通路aに対して出没する排気タイミング用の中バルブbおよび低バルブcを排気通路aの上側に上下に重ねて摺動自在に設け、この中バルブbおよび低バルブcを出没させてその先端縁で排気口dの上縁位置を昇降させるものである。低バルブcの後端部には、駆動アームeが駆動ピンfを介して接続され、中バルブbは、低バルブcに係合ボルトgを介して摺動方向に係合可能となっている。また、中バルブbの上面には、先端縁でエンジン高回転時の排気口dの上縁位置を形成する高バルブhが固定される。
【0003】
この従来の排気制御装置によれば、エンジン低回転時では、図21に示すように、低バルブcおよび中バルブbが共に突出状態にあり、排気口dの上縁位置が低バルブcの先端縁によって決定されるため、排気タイミングはエンジン低回転に応じて遅いものとなる。エンジン中回転時では、図22に示すように、駆動アームeの回転により下側の低バルブcのみが引上げられて、排気タイミングは、中バルブbの先端縁によってやや早くなる。さらに、エンジン高回転時では、図23に示すように、低バルブcをさらに後退させることで、係合ボルトgを介して中バルブbも一緒に引上げて排気口dの上縁位置を高バルブhの先端縁とし、排気タイミングを最も早くする。
【0004】
排気タイミングを可変としたこのような装置の公知例としては、実開平3−119535号公報および特開平4−183927号に記載された排気制御装置が挙げられる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記従来の2サイクルエンジンの排気制御装置においては、次のような問題点がある。例えば実開平3−119535号公報記載の装置は、各バルブによって排気タイミングのみを制御するものであり、エンジン低回転時の出力を排気通路の断面積変化によって制御することはできない。一般にエンジン低回転時では、エンジン出力の向上およびHCの排出量の低減を図るため、排気口の開口面積を大きく絞ることが望ましい。
【0006】
なお、図24に示すように、低バルブcを排気口dの下縁近傍まで延設し、これによりエンジン低回転時に排気口dを大きく絞ることは可能である。しかし、この場合は、排気口dの上縁位置(低バルブcの下縁位置)が極端に下がってしまい、排気口dの閉じタイミングが早くなって圧縮比の上昇を招く恐れがある。
【0007】
また、前記特開平4−183927号公報記載の装置においては、左右の排気通路に突出したバルブの個数によって、排気口の開口形状を全体で左右非対称としているが、この場合、排気口の開口形状を左右で大きく異ならせることができず、排気行程において有効なスワールを生成することは難しい。また、駆動手段の細かい動作でバルブの個数を制御するため、制御が複雑である。
【0008】
本発明は、前記従来の問題点に鑑みてなされたものであって、既存の排気タイミング可変装置を利用した簡単かつ安価な構成で、圧縮比に影響を与えることなくエンジン低回転時に排気口の開口面積を大きく絞り、さらに排気行程において所望のスワールを生成することもできる2サイクルエンジンの排気制御装置を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前記目的を達成するため、次のような構成を有する。
すなわち、本発明は、排気タイミング用バルブをシリンダの排気通路の上側に設け、前記排気通路がシリンダ壁面に開口する排気口の上縁位置を該排気タイミング用バルブの先端縁で制御する2サイクルエンジンの排気制御装置において、前記排気タイミング用バルブを左右一対設けて、それら排気タイミング用バルブそれぞれの下側に、アイドリング時を含むエンジン低回転時に前記排気通路に突出して先端面で前記排気口の開口面積を絞る排気絞り用バルブを摺動自在に重ねて設け、前記エンジン低回転時に、前記排気絞り用バルブのうちの一方が前記排気口の下縁またはその近傍から前記排気タイミング用バルブの下縁またはその近傍にかけて閉塞させると共に、前記排気絞り用バルブのうちの他方が前記排気タイミング用バルブと同等の高さに保持されることにより、前記排気口の他方側のみを部分的に開口させるように構成し、かつ、前記一方の排気絞り用バルブに略円弧状の先端面を形成してその突出時にシリンダ壁面と略面一とし、前記排気絞り用バルブの動作をエンジン回転数、スロットル開度およびスロットル速度に応じて制御することを特徴とする2サイクルエンジンの排気制御装置である。
【0011】
本発明によれば、排気タイミング用バルブによってエンジン回転数に応じた排気タイミングが得られると同時に、エンジン低回転時には排気口を排気絞り用バルブによって大きく絞ることができる。よって、既存の排気タイミング可変装置を利用した簡単かつ安価な構成により、エンジン低回転時における出力向上およびHC排出量の低減を図ることができる。
【0012】
また、前記排気口の下縁またはその近傍から前記排気タイミング用バルブの下縁またはその近傍にかけて、排気口を部分的に開口させるように排気絞り用バルブを構成したので、エンジン低回転時における排気口の上端位置が排気タイミング用バルブの下縁またはその近傍となる。よって、エンジン低回転時に排気口を大きく絞っても閉じタイミングが早くならないので、排気絞り用バルブにより圧縮比が影響されることもない。
【0013】
また、排気絞り用バルブの構成(形状・配置等)を適宜に変更するだけで、排気口の開口形状を容易に左右非対称に形成できるので、複雑な駆動手段による制御を用いずに、排気行程で所望のスワールを生成することもできる。
【0014】
また、排気絞り用バルブの先端面をシリンダ壁面と略面一に形成したので、排気口の開口面積を正確に設定することができ、アイドリング運転等の低回転・低負荷運転時のHC排出量およびエンジン出力が安定する。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して本発明の実施形態(第1〜第9実施形態)を説明する。これらの実施形態は、本発明の排気制御装置を自動二輪車の2サイクルエンジンに適用したものである。
【0016】
まず、本実施形態に係るエンジンの構成について図1および図2を参照して説明する。図1に示すように、本実施形態に係る自動二輪車は、前輪2および後輪4と、この前輪2および後輪4の間に配置された2サイクルエンジン6とを備える。このエンジン6は、図2に示すように、車体フレームに固定されたクランクケース8と、このクランクケース8の前上面に設けられたシリンダ10と、このシリンダ10の上面にボルト12で締着されたシリンダヘッド14とから主に構成される。
【0017】
クランクケース8には、図2に示すように、車両後方に向けて開口した吸気通路16が形成されており、この吸気通路16内にはリードバルブ18が設置される。シリンダ10は、吸気通路16と反対側に形成された排気通路20と、この排気通路20の排気口28が開口するシリンダ壁面24とを備え、シリンダ壁面24では、ピストン26が上下に摺動する。なお、シリンダ壁面24は、シリンダ10に組み込まれたシリンダスリーブの内周面でもよい。
【0018】
図2に示すように、シリンダ10における排気通路20の上側には、後述する各バルブを収納するバルブ孔30と、このバルブ孔30に連通した機械室32とが設けられる。この機械室32は、車両前方に向けて開放するようにシリンダ10に形成された凹部をカバー34で覆うことにより形成される。また、機械室32の左右両側壁には、駆動軸36の両端部が支持されており、この駆動軸36には駆動アーム40が固定される。
【0019】
なお、以下説明する第1〜第4実施形態に係る排気制御装置は、例えば図3に示すように排気口28がリブ28aを挟んで左右に分割された構造に本発明を適用したものであり、一方、第5〜第9実施形態の排気制御装置は、例えば図10に示すようにリブの無い一つの排気口28を有する構造に本発明を採用したものである。
【0020】
まず、第1実施形態の排気制御装置を説明する。図3〜図5に示すように、バルブ孔30には、排気通路20に対して出没して左右の排気口28の上縁位置を昇降させる左右の中バルブ44が摺動自在に設けられている。また、左右の中バルブ44の上側には、バルブ孔30の上面に固定された左右一対の高バルブ46が設けられている。さらに左右の中バルブ44それぞれの下側には、低バルブ48L,48Rが摺動自在に重ねて設けられている。中バルブ44の中央部には、係合ボルト(係合ピン)50が貫通して設けられていて、この係合ボルト50の上端部には、中バルブ44を突出方向に付勢するスプリング52の前端が当接する一方、その下端部は、低バルブ48L,48Rに形成された凹部54に嵌まっている。低バルブ48L,48Rの後端部には、駆動ピン56を介して前記駆動アーム40が係合している。
【0021】
この第1実施形態においては、一方の低バルブ48L(図3で紙面に対して左側のもの)を排気絞り用バルブとして構成している。すなわち、エンジン低回転時には、図3および図4に示すように一方の排気口28については、低バルブ48Lの先端面48L1が排気口28の下縁まで塞いでおり、排気口28が三つのバルブ44,46,48Lで完全に閉塞される。他方の排気口28については、図3および図5に示すように低バルブ48Rの先端縁が中バルブ44の先端縁と略同じ高さにあり、中バルブ44の下方が排気口28の下縁にかけて大きく開口している。これにより、エンジン低回転時において、排気ガスは、大きく開口した他方の排気口28の開口部のみから排出される。また、エンジン低回転時において、他方の排気口28における開口部の上縁位置は、中バルブ44の先端縁となる。
【0022】
また、図6に示すように、排気絞り用バルブとして機能する一方の低バルブ48Lの先端面48L1は、中バルブ44および高バルブ46の先端縁と同様に、略円弧状に形成されてシリンダ壁面24と略面一に形成される(後述する第2〜第9実施形態に係る低バルブ48L,48R,48についても同様)。
【0023】
また、左右の低バルブ48L,48Rは、図4および図5に示すように、エンジン回転数の変化に応じて駆動アーム40により駆動ピン56を介して駆動される。左右の中バルブ44は、この低バルブ48L,48Rの動作に連動して出没する。その動作を簡単に説明すると、エンジン低回転時には低バルブ48L,48Rおよび左右の中バルブ44が共に突出した状態にあり、この状態からエンジンが中回転域に入ると、低バルブ48L,48Rのみが中バルブ44を残して駆動アーム40の回転により没入方向に摺動する。そして、エンジンが中回転域から高回転域に入ると、駆動アーム40がさらに回転して低バルブ48L,48Rが没入するが、このときは係合ボルト50の下端部が凹部54の前面に当接するため、低バルブ48L,48Rの動作に連動して中バルブ44もスプリング52の付勢力に抗して引上げられる。
【0024】
このように左右の低バルブ48L,48Rは、周知の排気タイミング可変装置における低バルブと略同じ動作をする。また、低バルブ48L,48Rおよび左右の中バルブ44の突出時および没入時の位置決めについても、周知の排気タイミング可変装置と同様に、バルブ孔30の後端のストッパプレート58(図4参照)に対して、低バルブ48L,48R後端に嵌着した筒体60、または、低バルブ48L,48Rの段差面48L2,48R2を当接させることにより行う。
【0025】
なお、図5に示す装置の状態では、前記他方の低バルブ48Rが没入状態であるため、中バルブ44によってエンジン低回転時の排気タイミングが決定されるが、この低バルブ48Rをシリンダ壁面24まで延没して排気タイミングをやや遅くすることもできる。
【0026】
以上のような第1実施形態の排気制御装置によれば、中バルブ44および高バルブ46によってエンジン回転数に応じた排気タイミングが得られる。それと同時に、エンジン低回転時には一方の排気口28を低バルブ48Lによって完全に閉じ、他方の排気口28のみを開口させることができる。よって、既存の排気タイミング可変装置を利用した、すなわち、同一の駆動手段により前記排気絞り用の低バルブ48Lと排気タイミング用の中バルブ44とを連動させた簡単かつ安価な構成により、エンジン低回転時の出力向上およびHCの排出量の低減を図ることができる。また、シリンダ10に排気制御装置を内蔵させているので、排気管に排気絞り装置を内蔵させているものに比べ、駆動軸36の軸受け部分が熱影響を受けにくく、該軸受け部分のシール部材等が高熱で劣化することもない。
【0027】
また、他方の排気口28については、中バルブ44の下側から排気口28の下縁にかけて開口するので、エンジン低回転時に一方の排気口28を完全に絞っても、排気口28の閉じタイミングは、他方の排気口28の中バルブ44の先端縁で決まる。よって、圧縮比が影響されることはない。
【0028】
また、一方の排気口28のみを閉塞することにより、排気口全体(二つの排気口28を併せたもの)における開口部の形状をシリンダ壁面24の中心軸に対して大きく左右非対称に(リブ28aを挟んで左右非対称に)形成できるため、排気工程で所望のスワールを容易に生成することができる。
【0029】
また、排気絞り用バルブとなる低バルブ48Lの先端面48L1がエンジン低回転時にシリンダ壁面24と略面一になるので、排気口28の絞り込み量を正確に設定することができ、アイドリング運転時等の低回転・低負荷運転時におけるHC排出量およびエンジン出力が安定する。
【0030】
次に、第2実施形態および第3実施形態の排気制御装置それぞれを図7(a)・同(b)および図8(a)・同(b)を参照して説明する。第2実施形態に係る左右の低バルブ48L,48Rは、エンジン低回転時に完全に排気口28を閉塞するバルブ形状に対し、鉛直線に沿う切欠き線L1に従ってその外側部に切欠き60aを設けたものである。第3実施形態では、反対に内側部に鉛直線に沿った切欠き線L2により切欠き60bを設けている。これらの実施形態の場合、左右の低バルブ48L,48Rは、共に排気絞り用バルブとして機能し、エンジン低回転時には、左右の排気口28の下部を大きく絞って切欠き60a,60bのみから排気ガスを排出させる。なお、第2実施形態および第3実施形態それぞれにおいて、左右の低バルブ48L,48Rのうちの一方については排気口28を完全に閉塞するバルブ形状としてもよい。
【0031】
第4実施形態は、図9に示すように、一方の低バルブ48Rの外側部に、排気口28の下縁から外側縁にかけて円弧状に延びる切欠き線L3に従い、切欠き60cを設けたものである。この場合においても、左右の低バルブ48L,48Rの両方に切欠き60cを設けてもよく、また切欠き60cを排気口28の内側寄り(リブ28a側)に形成してもよい。
【0032】
次に、分割されない一つの排気口28に本発明を適用した第5実施形態を図10〜図13を参照して説明する。この排気制御装置は、図10(a)に示すように、一つの排気口28の構成に対応して、高バルブ46、中バルブ44および低バルブ48を一つずつ備えている。低バルブ48は、排気口28における中バルブ44の下方を略閉塞する形状を呈し、低バルブ48の下部には、略コの字形状の切欠き線L4に従って幅a1、高さb1、角部の丸みrの切欠き60dが設けられている。図10(a)および同(b)では、その一例として、低バルブ48の下部中央に切欠き60dを設けた場合を示しているが、この切欠き60dの位置は、スワールを生成するために低バルブ48の中心に対して左右いずれかに偏らせてもよい。
【0033】
また、この第5実施形態では、図11および図12に示すように、低バルブ48の摺動性を考慮し、かつ、低バルブ48の没入時に切欠き60dがデッドボリュームとならないよう、切欠き60dに摺動自在に嵌まる凸部30aをバルブ孔30の下面に突設することが望ましい。
【0034】
第6実施形態の排気制御装置は、図13に示すように、低バルブ48の下部に、曲率半径rの円弧状の切欠き線L5により形成される幅a1、高さb1の切欠き60eを設けたものである。図13では、その一例として、低バルブ48の側部に排気口28の下縁から側縁にかけて切欠き線L5を形成した場合を示している。
【0035】
この第6実施形態および前記第5実施形態において、低バルブ48の幅をW、高さをHとすると、a1≦W、b1≦Hのとき、曲率半径rまたは角部の丸みrが小さい程、任意に切欠き60d,60eを左右いずかの側に偏在させることができ、rはW以下に設定することが望ましい。
【0036】
図14に示す第7実施形態の排気制御装置は、エンジン低回転時に、中バルブ44の下側における排気口28の側部のみが開口するように低バルブ48を形成したものであり、低バルブ48の左右いずれかの側部を、排気口28の下縁から中バルブ44の下縁へ鉛直方向に沿って延びる切欠き線L6で切欠いたものである。形成される切欠き60fの幅a1は、低バルブ48の幅Wよりも小さく、また切欠き60fの高さb1は、低バルブ48の高さHと一致している。
【0037】
この第7実施形態によれば、切欠き線L6が直線状であることから、低バルブ48に対して切欠き60fを形成するための機械加工が容易に行えるという効果がある。
【0038】
第8実施形態は、図15に示すように、低バルブ48あるいは中バルブ44の作動性を考慮して、中バルブ44の下面全体に低バルブ48の上面が接触するよう、略横L字形の切欠き線L7で切欠き60gを低バルブ48の側部に形成したものである。すなわち、切欠き60gの高さb1を低バルブ48の高さHよりも小さく設定している。
【0039】
さらに、第9実施形態では、図16に示すように、低バルブ48における排気口28の下縁から側縁に直線状に延びる傾斜した切欠き線L8に従って切欠き60hを形成したものである。この第9実施形態によれば、中バルブ44の下面全体に低バルブ48の上面を接触させることができると同時に直線状の切欠き線L8により低バルブ48の加工も容易になるという極めて有利な効果がある。
【0040】
なお、これら第2〜第9実施形態の排気制御装置においても、第1実施形態の効果と同様に、圧縮比の上昇防止、左右非対称の開口部(切欠き)による有効なスワールの生成、既存の排気タイミング可変装置の利用によるコスト削減、および、排気口28の開口面積の正確な制御が図れる。
【0041】
以上の各実施形態の排気制御装置においては、図17に示すように、ワイヤ62を介して前記駆動軸36をモータ等のアクチュエータ64で回転駆動する。このアクチュエータ64は、エンジン回転数、スロットル動作(スロットル開度およびスロットル速度)に応じて制御される。エンジン回転数は、点火プラグ66に接続した点火CDIより検出され、スロットル開度・スロットル速度は、スロットルグリップ68とキャブレタ70とを繋ぐスロットルワイヤ72に設けたスロットルポジションセンサにより検出される。
【0042】
本実施形態に係る各バルブのアクチュエータ64による出没動作は、例えば、図18に示したフローチャートに従って制御される。このフローチャートの制御方法では、エンジン回転数が5000r.p.m未満である場合、スロットル開度が20%未満でかつスロットル速度が20%/(0.1秒)未満のときには、低バルブ48L,48R,48および中バルブ44を完全に突出させ、排気タイミングを最も遅くすると同時に排気口28の開口面積を大きく絞る。また、エンジン回転数が5000r.p.m未満の場合であっても、スロットル開度が20%以上またはスロットル速度が20%/(0.1秒)以上のときは、アクチュエータ64によって低バルブ48L,48R,48のみをバルブ孔30に没入させて中バルブ44の先端縁により排気タイミングをエンジン中回転に応じたものとする。
【0043】
そして、スロットル開度およびスロットル速度の大きさに拘わらず、エンジン回転数が5000〜7000r.p.mの場合は、低バルブ48L,48R,48を没入させて中バルブ44の先端縁により排気タイミングをエンジン中回転に対応させ、またエンジン回転数が7000r.p.mを越える場合には、低バルブ48L,48R,48および中バルブ44の両方を没入させ、高バルブ46の先端縁によって排気タイミングを最も早くする。
【0044】
このように各バルブの出没動作を、エンジン回転数、スロットル開度およびスロットル速度をパラメータとして制御すれば、エンジン低回転時であっても、スロットル開度またはスロットル速度の大きさによっては、エンジン中回転時と同じ排気制御を行うことができ、スロットル操作に対する排気制御の応答性を高めることができる。
【0045】
以上のような本実施形態によれば、図19および図20に示すグラフからわかるように、エンジン低回転時において、エンジン出力を従来に比して向上させることができ、しかも排出されるHC量については大幅に低減することができる。
【0046】
なお、本実施形態は本発明の好適な実施の態様であり、本発明の技術的範囲は本実施形態に限定されない。例えば、本実施形態では、2段の排気タイミング用バルブ(高バルブ46・中バルブ44)の下に排気絞り用バルブを設けたが、本発明は、これに限定されず、1段または3段以上の排気タイミング用バルブの下に排気絞り用バルブを設けた装置も含む。
【0047】
【発明の効果】
以上の説明の通り、本発明によれば、既存の排気タイミング可変装置を利用した簡単かつ安価な構成により、エンジン低回転時のエンジンの出力向上およびHC排出量の低減を図ることができる。また、エンジン低回転時に排気口を大きく絞っても、閉じタイミングが早くならないので、圧縮比が影響されることもない。また、排気絞り用バルブの構成(形状・配置等)を適宜に変更するだけで、排気行程において所望のスワールを容易に生成することもできる。さらに、排気口の開口面積を正確に設定することができるので、アイドリング運転等のエンジン低回転・低負荷運転時におけるHCの排出量およびエンジン出力を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施形態に係る自動二輪車の側面図である。
【図2】本実施形態に係るエンジン上部の断面図である。
【図3】第1実施形態に係るシリンダの断面図であって、図2におけるIII−III断面図である。
【図4】図3におけるIV−IV断面図である。
【図5】図3におけるV−V断面図である。
【図6】図3におけるVI−VI断面図である。
【図7】(a)は第2実施形態に係る排気口の正面図、(b)は(a)におけるB1−B1断面図である。
【図8】(a)は第3実施形態に係る排気口の正面図、(b)は(a)におけるB2−B2断面図である。
【図9】第4実施形態に係る排気口の正面図である。
【図10】(a)は第5実施形態に係る排気口の正面図、(b)は(a)におけるB4−B4断面図である。
【図11】第5実施形態に係る断面図であって、第1実施形態に係る図3に相当する図である。
【図12】図11におけるXII−XII断面図である。
【図13】第6実施形態に係る排気口の正面図である。
【図14】第7実施形態に係る排気口の正面図である。
【図15】第8実施形態に係る排気口の正面図である。
【図16】第9実施形態に係る排気口の正面図である。
【図17】本実施形態の排気制御装置の全体を示す概略図である。
【図18】本実施形態に係る排気制御を示すフローチャートである。
【図19】本実施形態の排気制御装置および従来の排気制御装置それぞれより得られるエンジン出力を比較して示すグラフである。
【図20】本実施形態の排気制御装置および従来の排気制御装置それぞれにおける排気ガス中のHC量を比較して示すグラフである。
【図21】エンジン低回転時における従来の排気制御装置の断面図である。
【図22】エンジン中回転時における従来の排気制御装置の断面図である。
【図23】エンジン高回転時における従来の排気制御装置の断面図である。
【図24】従来の排気制御装置において低バルブを下方に延ばした例を示す排気口の正面図である。
【符号の説明】
10 シリンダ
20 排気通路
24 シリンダ壁面
28 排気口
40 駆動アーム
44 中バルブ(排気タイミング用バルブに相当)
46 高バルブ(排気タイミング用バルブに相当)
48,48L,48R 低バルブ(排気絞り用バルブに相当)
48L1 先端面
Claims (1)
- 排気タイミング用バルブをシリンダの排気通路の上側に設け、前記排気通路がシリンダ壁面に開口する排気口の上縁位置を該排気タイミング用バルブの先端縁で制御する2サイクルエンジンの排気制御装置において、
前記排気タイミング用バルブを左右一対設けて、それら排気タイミング用バルブそれぞれの下側に、アイドリング時を含むエンジン低回転時に前記排気通路に突出して先端面で前記排気口の開口面積を絞る排気絞り用バルブを摺動自在に重ねて設け、
前記エンジン低回転時に、前記排気絞り用バルブのうちの一方が前記排気口の下縁またはその近傍から前記排気タイミング用バルブの下縁またはその近傍にかけて閉塞させると共に、前記排気絞り用バルブのうちの他方が前記排気タイミング用バルブと同等の高さに保持されることにより、前記排気口の他方側のみを部分的に開口させるように構成し、かつ、前記一方の排気絞り用バルブに略円弧状の先端面を形成してその突出時にシリンダ壁面と略面一とし、
前記排気絞り用バルブの動作をエンジン回転数、スロットル開度およびスロットル速度に応じて制御することを特徴とする2サイクルエンジンの排気制御装置。
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JPH1077850A (ja) | 1998-03-24 |
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