JP3624326B2 - アルカリ可溶性変性樹脂 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、アルカリ可溶性変性樹脂に関し、特に、集積回路又は太陽電池用のウエハー研磨工程、レンズ研磨工程若しくは液晶基板用ガラスの研磨工程等に於ける被研磨材を研磨用の基板に仮接着する為に用いられる研磨用接着剤、或いは液晶カラーフィルター基板の保護膜用樹脂として使用されるアルカリ可溶性変性樹脂に関する。
【0002】
【従来の技術】
半導体集積回路又は、太陽電池の製造に使用するシリコンまたはガリウム砒素等からなるウエハーは、このウエハーの構成材料のインゴットを薄板状にスライスした後に、このスライスしたものを研磨することにより製造されている。
【0003】
また、レンズを製造する際の研磨工程及び液晶基板用のガラス等のように、平坦化処理を要するガラスもその研磨工程が必要である。このようなウエハー又は、レンズ、ガラスの研磨工程においては、ウエハー又は、レンズ、ガラスをアルミナセラミックス等の研磨用の基盤に固定するために種々の樹脂を接着剤として使用している。この場合にウエハー又はレンズ、ガラスは約110℃の温度で接着剤を介して基盤に加熱圧着される。この基盤に固定されたウエハー又はレンズ、ガラスは、アルカリ水溶液に懸濁した研磨剤を使用して不織布等によって研磨される。
【0004】
そして、研磨後のウエハー又はレンズ、ガラスは室温以下に冷却された後、剃刀等によって基盤から剥離され、ウエハー又はレンズ、ガラスに付着した接着剤は溶剤により洗浄し、除去される。
【0005】
このように、ウエハ又はレンズ、ガラスの研磨工程に使用される接着剤としては、従来、グリコールフタレート系ワックス、エポキシ系ワックス又はケトン系ワックス等の非パラフィン系ワックスがある(特開昭61−16477号及び特開昭63−27576号公報)。このような接着剤は研磨後にトリクロロエチレン等のハロゲン系有機溶媒、芳香族炭化水素等可燃性溶媒で洗浄、除去しなければならない。
これらの溶媒は大気汚染や自然環境の破壊等、環境衛生上も大きな問題があり、社会問題ともなっている。また可燃性溶媒の使用に際しては、防災上防爆設備を設けなければならず問題である。
【0006】
また液晶カラーフィルター基板の製造において、顔料等がガラス裏面に付き汚れとなり、これを完全に除去することはかなり難しく、カラーフィルター製造後に裏面を研磨して除去しなければならない。また生産効率を上げるため、大型基板にカラーフィルターを数個形成し、後で分断する方法が取られているが、ガラス切削屑がカラーフィルターに付かないように基板全面に予めポリビニルアルコール等の高分子を保護膜として使用していたが、耐水性が悪く、切削時に使用する水で徐々に溶解するため、切削加工に非常に熟練を要する等、種々の問題を抱えていた。
【0007】
このように、集積回路又は太陽電池用のウエハーを製造する際のウエハー研磨工程、レンズを製造する際の研磨工程、若しくは、液晶基板用ガラスを平坦化処理の際のガラスの研磨工程等に於いて、被研磨材であるウエハー、レンズ若しくはガラスを研磨用基板に接着して研磨し、研磨後、この接着剤を除去して被研磨材を研磨用基板から剥離して使用するに適した仮接着剤、或いは、液晶カラーフィルター基板の製造に於いては、顔料等がガラス裏面につき汚れとなるのを防ぐ為に予め保護膜を塗布し、工程終了後に容易に除去できる保護膜、又は、大型基板に所定枚数のカラーフィルターを製造した後、所定枚数のカラーフィルターに切断する工程に於いて、ガラス切削屑がカラーフィルターに付かないように基板全面に予め保護膜を塗布し、ガラス切断後に簡単にアルカリ洗浄にて除去できる保護膜について、未だ満足すべき特性を有するものはなかった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、上記の仮接着剤や保護膜を除去するため有機溶媒を使用することなく、簡単にかつ安全に洗浄、除去できる接着剤用又は保護膜用の樹脂について鋭意研究した結果、有機溶媒を使用することなくアルカリ水溶液可溶の接着剤あるいは保護膜として好適なアルカリ可溶性変性樹脂を見出し、本発明を完成するに至ったもので、本発明はウエハー等の製造時或いは液晶カラーフィルター製造時に仮接着剤もしくは保護膜として適したアルカリ可溶性変性樹脂を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、軟化点が60℃〜120℃であり酸価が80〜200mgKOH/gである下記式(1)又は式(2)で表されるアルカリ可溶性変性樹脂である。
【0010】
【化3】
【0011】
【化4】
【0012】
[式中Xは炭素数2〜15の芳香族又は脂肪族の多価カルボン酸無水物残基を示し、R1は水素原子又は炭素数1〜10の直鎖又は分枝のアルキル基を、R2は炭素数1〜10の直鎖又は分枝のアルキル基を置換基に持つフェニル基又は、炭素数1〜10の分子内にエーテル結合を有していてもよい直鎖又は分枝のアルキル基を示し、R3は炭素数2〜10の分子内にエーテル結合を有していても良い直鎖又は分枝のアルキル基を示し、nは0≦n<10である。]
【0013】
上記接着剤用又は保護膜用として使用される樹脂としては、強度を出す為に分子中にノボラック骨格を導入し、かつ分子内にアルコール性水酸基を含有させる為に、ノボラック型エポキシ樹脂と1官能のフェノール類又は、アルコール類を反応させ、更にこれにカルボン酸無水物を付加することによって、軟化点が60℃〜120℃で酸価が80〜200の樹脂が得られる。軟化点が60℃以下では、接着剤としては室温での剥離が難しく、また、保護膜としは耐水性に劣る欠点がある。また酸価が80以下ではアルカリ溶解性に劣る。
【0014】
[分子内アルコール性水酸基含有樹脂の合成]
酸無水物を付加させる為の、アルコール性水酸基含有樹脂の合成はノボラック型エポキシ樹脂と1官能のフェノール類、又はアルコール類とを溶媒の存在下、或いは無存在下に、塩基性触媒を用いる事により得られる。
【0015】
ノボラック型エポキシ樹脂としては、フェノールノボラックエポキシ樹脂、クレゾールノボラックエポキシ樹脂、ナフトールノボラックエポキシ樹脂及びこれらの共縮合ノボラックエポキシ樹脂等が挙げられる。
【0016】
1官能フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、ナフトール、チモール、カルバクロール等で、アルコール類としては、1官能、又は2官能のアルコールであって、メタノール、エタノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、等が挙げられる。ノボラック型エポキシ樹脂とフェノール類、又は1官能、2官能アルコールとの反応で、各成分のモル比は、ノボラック型エポキシ樹脂1エポキシ当量に対して、フェノール類、1又は2官能アルコール類が1.01〜4モル、好ましくは、1.1〜2.5モルである。
【0017】
触媒としては、塩基性触媒であれば良く、アルカリ金属水酸化物、アルカリ土類金属水酸化物、4級アンモニウム塩、イミダゾール類、フォスフィン類、フォスフォニウム塩類等が挙げられる。これらの触媒量は、ノボラック型エポキシ樹脂100重量部に対して0.001〜1.0wt%量が好ましい。
【0018】
反応方法としては、ノボラック型エポキシ樹脂とフェノール類、アルコール類等の溶融混合物に触媒を添加し、1〜10時間反応させるのが良い。
反応温度は90℃〜180℃、好ましくは90〜150℃が良い。反応時間は2〜6時間が好ましい。
なお、反応に際し、必要に応じてベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン、メチルセロソルブ等の溶媒を用いても良い。
【0019】
[アルカリ可溶性樹脂の合成]
上記の様な方法で得られた末端水酸基含有樹脂に酸無水物を付加させて、アルカリ可溶性樹脂を合成する。この場合、酸無水物であれば良く、例えば無水フタル酸、無水コハク酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が挙げられる。
酸無水物の添加量としては、酸価で80以上になる量であれば良い。
【0020】
反応に際して、溶媒を用いても良く、ベンゼン、トルエン、キシレン、クロルベンゼン等が挙げられる。又、反応を促進させる為に、塩基性触媒を用いても良い。反応温度は70℃〜150℃、好ましくは80℃〜130℃が良い。
反応時間は2〜8時間が好ましい。
【0021】
この様にして合成された樹脂は、アセトン、メチルエチルケトン、等ケトン系の溶剤、エタノール、メタノール、等のアルコール系の溶剤、ベンゼン、トルエン、キシレン、等の芳香族系の溶剤、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等エーテル系の溶媒に、それぞれ単独に、又は混合した溶媒に溶解され、樹脂溶液として使用される。
【0022】
この時の樹脂濃度は、10〜50重量%の範囲が好ましい。樹脂濃度が10重量%未満だと、充分な接着力のある接着層を形成することが、難しく又、50重量%以上だと接着力が強すぎたり、均一な接着層とならない場合が多い。上記樹脂溶液をウエハー、レンズ、ガラス等の研磨用の接着剤として使用する場合、ウエハー、レンズ、ガラス等の研磨面の裏側に塗布し乾燥後、研磨用プレート上に加熱溶融状態で圧着される。
【0023】
ウエハー、レンズ、ガラス等研磨後、ウエハー、レンズ、ガラスはプレートから剥がされ、付着している接着剤は洗浄剤によって溶解除去される。このような洗浄剤としては、水酸化アンモニウム、等アンモニウム系水溶液、アルカノールアミン水溶液等アミン系水溶液等、有機アルカリ水溶液、その他にカセイソーダー、カセイカリ等の無機アルカリの水溶液、ケイ酸塩、炭酸塩等の無機アルカリ塩の水溶液等が挙げられる。
【0024】
上記樹脂溶液を液晶カラーフィルター基板の保護膜として使用する場合、液晶カラーフィルター基板全面に塗布し乾燥する。工程終了後、付着している保護膜は洗浄剤によって溶解除去される。
このような洗浄剤としては、前記、ウエハー、レンズ、ガラス等の接着剤の洗浄剤と同様の物で良い。
【0025】
【作用】
本発明の研磨用の接着剤及び液晶カラーフィルター用保護膜剤は、分子内にカルボキシル基を有する高分子化合物であり、有機溶媒を使用することなく洗浄除去可能なアルカリ水溶液可溶型の高分子樹脂であり、環境衛生対応型の樹脂である。
以下、実施例にて本発明を具体的に説明するが、実施例に限定されるものではない。
【0026】
【実施例及び比較例】
参考例1
フェノールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成製YDPN−638、エポキシ当量178.6gr/eq)625.1重量部(以下部と記してあるのは、重量部をさす)、フェノール332.6部を2lのセパラブルフラスコに仕込み、90〜120℃にて溶融混合する。その後、n−ブチルトリフェニールホスホニウムブロマイドの10%メタノール溶液を6.5部添加する。添加後、約30分で150℃まで昇温し、反応温度140℃〜150℃で5時間反応させた後、120℃まで冷却する。
【0027】
次に、ヘキサヒドロ無水フタル酸485.2部を1〜1.5時間かけて投入する。この時、反応温度は100℃〜120℃に保たれている。その後、110℃〜130℃で4時間、反応を継続した後、排出し冷却固化させ目的とするアルカリ可溶性樹脂1143部を得た。このものは淡黄色の固体であった。得られた樹脂の物性を表1に示した。この参考例1で得られた樹脂を樹脂Iとした。
【0028】
参考例2
クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(東都化成製YDCN−701S,エポキシ当量198.5gr/eq)993部、フェノール476部、163部のトルエンを3l反応容器に仕込み、100℃にて溶解する。溶解後、n−ブチルトリフェニルホスホニウムブロマイド10%メタノール溶液を7.5部加え、反応温度100℃〜110℃で6時間反応させる。
【0029】
その後、ヘキサヒドロ無水フタル酸470部を加え、100℃〜110℃で5時間反応させる。
トルエン、イソプロピルアルコールを加え、不揮発分濃度25%に調整し、目的とするアルカリ可溶性樹脂溶液を得た。得られた樹脂の物性を表1に示した。
この参考例2で得られた樹脂を樹脂IIとした。
【0030】
参考例3
プロピレングリコール312.1部、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂(エポキシ当量198.5gr/eq)794部を2lセパラブルフラスコに仕込み80℃まで昇温した後、10%水酸化ナトリウム水溶液を0.1部加え、80℃〜120℃で5時間反応させる。
【0031】
その後、無水フタール酸474部を加え、5時間反応させる。この時、反応温度は80℃〜120℃に保たれる。その後、排出し冷却固化して目的とするアルカリ可溶性樹脂1600部を得た。このものは淡黄色の固体であった。得られた樹脂は式(2)で示されるもので、その物性を表1に示した。この参考例3で得られた樹脂を樹脂IIIとした。
【0032】
参考例4
ヘキサヒドロ無水フタル酸を185grとした以外は、参考例1と同様の操作を行い2037部の樹脂を得た。
このものは淡黄色の固体であった。得られた樹脂の物性を表1に示した。この参考例4で得られた樹脂を樹脂IVとした。
【0033】
【表1】
【0034】
実施例1
参考例1で合成した樹脂Iをトルエンとイソプロピルアルコールで不揮発分25%の樹脂溶液に調整した。その樹脂溶液の粘度は7cps(at25℃)であった。
【0035】
その樹脂溶液をステンレス鋼板に塗布し溶剤乾燥後、ステンレス鋼板同士を張り合わせその接着力を測定したところ、29kg/cm2であった(JIS K6850)
【0036】
一方、その樹脂溶液をステンレス鋼板の片面全面に塗布し、溶剤を乾燥除去後、室温で有機アルカリ15%水溶液中に浸漬し完全に樹脂が除去できるまでの時間を測定したところ48秒であった。結果は表2に示した。
【0037】
実施例2
参考例2で合成した樹脂II(樹脂溶液)を使用した以外は実施例1と同様の操作を行い試験を行った。結果は表2に示した。
【0038】
実施例3
参考例3で合成した樹脂IIIを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い試験を行った。結果は表2に示した。
【0039】
比較例1
参考例4で合成した樹脂IVを使用した以外は実施例1と同様の操作を行い試験を行った。アルカリ水溶解試験では1時間経過しても樹脂がステンレス鋼板に残存し良好な結果は得られなかった。結果は表2に示した。
【0040】
【表2】
【0041】
【発明の効果】
以上のように本発明の研磨用の接着剤及びカラーフィルター用保護膜剤は、有機溶媒を使用することなく、アルカリ水溶液で洗浄除去するのに効果がある。
Claims (1)
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Family Applications (1)
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JP22763695A Expired - Lifetime JP3624326B2 (ja) | 1995-09-05 | 1995-09-05 | アルカリ可溶性変性樹脂 |
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Families Citing this family (1)
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1995
- 1995-09-05 JP JP22763695A patent/JP3624326B2/ja not_active Expired - Lifetime
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