JP3624237B2 - エンドヌクレアーゼ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、特定の塩基配列を認識する部位特異的エンドヌクレアーゼ、当該エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子、当該遺伝子を含有する組換えベクター、当該ベクターを含む形質転換体、及び当該エンドヌクレアーゼの製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
エンドヌクレアーゼとは、ヌクレアーゼ(核酸分解酵素)のうちでポリヌクレオチド鎖内部のホスホジエステル結合を加水分解する酵素である。エンドヌクレアーゼは、DNA分子に沿って特定のヌクレオチド配列を認識し、これと結合することによって認識配列内の分子を切断する。従って、エンドヌクレアーゼは、遺伝子工学技術が進歩した現在では遺伝子のクローニングや分析に不可欠な酵素である。
【0003】
ところで、各種微生物のうち真核生物に属する各種生物(酵母等)由来の部位特異的エンドヌクレアーゼEndo.SceI(以下「SceI」ともいう)は、75kDaと50kDaのサブユニットからなるヘテロ二量体であることが知られている。そして、上記SceIの各サブユニットともに、それぞれのサブユニットをコードする遺伝子がクローニングされ、その塩基配列も決定されている(75kDaのサブユニットについてはMorishima, N.et al., J. Biol. Chem.265, 15189−15197(1990)、50kDaのサブユニットについては特公平7−77556号公報参照)。
生化学的試薬、遺伝子の人工改変等に上記エンドヌクレアーゼを広く利用するためには、遺伝子発現系を利用した当該エンドヌクレアーゼの大量生産をすることが必要である。また、エンドヌクレアーゼは特定の塩基配列を認識することにより初めてその機能を発揮することから、認識する塩基配列に対し特異性を有することが必要である。
【0004】
上記エンドヌクレアーゼSceIのサブユニットは酵母(Saccharomyces cerevisiae)のミトコンドリアゲノムにコードされており、しかも酵母のミトコンドリアゲノムの遺伝子はタンパク質の大量発現に汎用されている生物種(大腸菌、バキュロウイルス、酵母等)の遺伝子発現系において用いられているアミノ酸暗号(普遍コドン)と異なるミトコンドリア固有のコドンを含んでいるため、ミトコンドリアゲノムの遺伝子をそのまま用いたのではタンパク質発現系を利用して本来のアミノ酸配列を持つタンパク質を生産することは困難である。例えばTGAは、普遍コドンではストップコドンであるがミトコンドリアでは別のアミノ酸(Trp)のコドンとなっている。従って、ミトコンドリア内では正常に発現することができても、大腸菌などの通常の発現系で発現させた場合は、ストップコドンによって翻訳が進まなくなり、完全なタンパク質が得られない場合がある。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、特定の塩基配列を認識する部位特異的エンドヌクレアーゼ、当該エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子、当該遺伝子を含有する組換えベクター、当該ベクターを含む形質転換体、及び当該エンドヌクレアーゼの製造方法を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、酵母由来エンドヌクレアーゼの小サブユニットのアミノ酸配列をコードする遺伝子において、ミトコンドリアに固有のコドンを普遍コドンに置換することにより、特定の塩基配列を認識及び切断することができるエンドヌクレアーゼに改変し、かつ大量に発現させることに成功し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、塩基配列「GCCCAGACATATCCCTGAATGATACC」を認識することができるエンドヌクレアーゼである。
【0007】
さらに、本発明は、以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質である。
(a) 配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号3で表わされるアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ塩基配列「GCCCAGACATATCCCTGAATGATACC」を認識することができるエンドヌクレアーゼ活性を有するタンパク質
【0008】
さらに、本発明は、以下の(a)又は(b)の組換えタンパク質をコードする遺伝子である。
(a) 配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質
(b) 配列番号3で表わされるアミノ酸配列において少なくとも1個のアミノ酸が欠失、置換若しくは付加されたアミノ酸配列からなり、かつ塩基配列「GCCCAGACATATCCCTGAATGATACC」を認識することができるエンドヌクレアーゼ活性を有するタンパク質
【0009】
さらに、本発明は、以下の(c)又は(d)のDNAを含む遺伝子である。
(c) 配列番号2で表わされる塩基配列からなるDNA
(d) 配列番号2で表わされる塩基配列からなるDNAとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつ塩基配列「GCCCAGACATATCCCTGAATGATACC」を認識することができるエンドヌクレアーゼ活性を有するタンパク質をコードするDNA
さらに、本発明は、前記遺伝子を含有する組換えベクターである。
さらに、本発明は、前記組換えベクターを含む形質転換体である。
さらに、本発明は、前記形質転換体を培養し、得られる培養物から塩基配列「GCCCAGACATATCCCTGAATGATACC」を認識することができるエンドヌクレアーゼを採取することを特徴とする前記エンドヌクレアーゼの製造方法である。
以下、本発明を詳細に説明する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、酵母由来のエンドヌクレアーゼの小サブユニット(50kDa)をコードするミトコンドリアゲノムDNAを、大腸菌や酵母などのタンパク質発現系で大量発現できるようにすることを目的としており、この目的達成のため、本発明は、当該小サブユニットのアミノ酸配列をコードする遺伝子においてミトコンドリア固有のコドンを普遍コドンに改変することを特徴とする。また、本発明は、26塩基対の特定の塩基配列を認識し切断することができる、上記改変された小サブユニットに関するものである。
本発明のエンドヌクレアーゼ(酵母由来のエンドヌクレアーゼのうち50kDaのサブユニット;以下「Endo.SceI 50kDa」ともいう)は、以下のようにして調製される。
【0011】
1.変異アミノ酸の設計及び変異の導入
本発明において変異を導入するための対象となるエンドヌクレアーゼは、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)由来のエンドヌクレアーゼSceIの小サブユニット又はサッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)由来のエンドヌクレアーゼSuvIの小サブユニットである。なお、SceIの小サブユニット及びSuvIの小サブユニットともに50kDaの分子量を有しているが、SuvIのアミノ酸配列はSceIのアミノ酸配列と比較して2箇所異なる点で両者は相違する(図6(a))。
SceIのサブユニット(50 kDa)をコードする遺伝子(ENS2という)はミトコンドリアゲノムにコードされているため、ミトコンドリアに固有の遺伝暗号を含む(表1)。
【0012】
【表1】
Figure 0003624237
【0013】
ENS2の塩基配列は公知であるが(特公平7−77556号公報;Nakagawa, K., Morishima, N., and Shibata, T., J. Biol. Chem. 266, 1977−1984 (1991))、ENS2を普遍コードに従って大腸菌等の通常の発現系で発現させた場合、表1から分かるように、TGAはストップコドンであるためそれ以上翻訳が進まなくなる(例えば上記公報に記載のENS2の塩基配列の97〜99番目はストップコドン「TGA」である)。また、「ATA」は普遍コードではIleのコドンであるのに対し、ミトコンドリアコードではMetのコドンである。
従って、ENS2について通常の大量発現系を構築するためには、大腸菌などの通常の発現系で発現させたときのアミノ酸配列が、ミトコンドリアの発現系で発現させたときのアミノ酸配列と同一となるようにENS2の遺伝暗号を改変する必要がある。従って、本発明においては、例えばミトコンドリアコードではTrpとなるコドン(TGA)を、普遍コードでTrpに翻訳されるコドン(TGG)に置換する(表1)。普遍コードではIleに翻訳されるコドンであるATA、及び普遍コードではLeuに翻訳されるコドンであるCTA又はCTTについても同様である(表1)。但し、普遍コードでIle又はLeuをコードする他の縮重コドンは置換する必要はない。
【0014】
以上の観点より、改変する候補となるアミノ酸は、SceIの小サブユニットのアミノ酸配列(476個)のうち、基本的に以下に示す37箇所のアミノ酸である(図1、表2)。但し、サッカロミセス・ウバラム由来のエンドヌクレアーゼ(SuvI)については、図1中217番目のGly及び346番目のAsnをそれぞれLys、Aspに置換し、合計39箇所が改変されるようにする。なお、上記アミノ酸の37箇所又は39箇所すべてを置換する必要はなく、ミトコンドリア固有のコードで翻訳されなくとも後述する26個の塩基(配列番号1)を認識することができる限り、置換箇所が36箇所であっても、35箇所以下であってもよい。
置換位置をまとめると以下の通りである(表2)。
【0015】
【表2】
Figure 0003624237
【0016】
アミノ酸の置換を行うためには、当該アミノ酸をコードする遺伝子の塩基配列を別の塩基配列に置換する方法(部位特異的突然変異誘発方法)が採用される。変異誘発法として、例えばT.クンケル(Kunkel)の部位特異的変異導入法(Kunkel, T. A. Proc. Nati. Acad. Sci. U.S.A. 82, 488−492 (1985))、Gapped duplex法等が挙げられる。また、通常のクンケル法で使用する1〜2本の改変用オリゴヌクレオチドを最高16本のオリゴヌクレオチドに増やし、これらを同時に用いて多部位での効率よい置換を行う改良法なども採用することができる。本発明では、部位特異的突然変異誘発法を利用した変異導入用キット(例えばMutant−K(宝酒造社製)やMutant−G(宝酒造社製))などを用いて、あるいは、宝酒造社製のLA PCR in vitro Mutagenesis シリーズキットを用いて変異を導入することもできる。
【0017】
オリゴヌクレオチドは、ENS2の塩基配列(1431塩基対:Nakagawa, K. et al., J. Biol. Chem. 266, 1977−1984 (1991); 特公平7−77556号公報)を鋳型として、変異を導入する少なくとも1個の塩基を中心として前後8〜30塩基程度(全体で18〜60塩基程度)の長さのものを設計し、合成する。なお、オリゴヌクレオチドは、通常の合成装置を用いた化学合成により得ることができる。
【0018】
2.変異が導入されたエンドヌクレアーゼ遺伝子の調製
前記1.のようにして得られた各オリゴヌクレオチドの5’末端をリン酸化し、ENS2を鋳型として合成及びライゲーション反応を行う。これらの反応はT4ポリヌクレオチドキナーゼ(宝酒造社製)、T4 DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)、T4 DNAリガーゼ(宝酒造社製)等を用いて行うことができる。
得られたDNAについて塩基配列の決定を行う。塩基配列の決定はマキサム−ギルバートの化学修飾法、又はM13ファージを用いるジデオキシヌクレオチド鎖終結法等の公知手法により行うことができるが、通常は自動塩基配列決定機(例えばファルマシア社製ALF、PERKIN−ELMER社製373A DNAシークエンサー等)を用いて配列決定が行われる。一旦本発明の遺伝子の塩基配列が確定すると、その後は化学合成により、あるいはPCRにより本発明の遺伝子を得ることもできる。
【0019】
配列番号2に本発明の遺伝子の塩基配列を、配列番号3に本発明のエンドヌクレアーゼのアミノ酸配列を例示する。本発明のエンドヌクレアーゼは、天然のエンドヌクレアーゼの大サブユニットと結合することにより本来のエンドヌクレアーゼSceI又はSuvIとしての機能、すなわちコンセンサス配列「CANRYNNANNCYYGTTW」及びその類似配列を認識する特徴を有する。但し、本発明のエンドヌクレアーゼは、天然のエンドヌクレアーゼの小サブユニットが単独で発揮する機能を失っておらず、「GCCCAGACATATCCCTGAATGATACC」(配列番号1)で表される26塩基を特異的に認識することができるものである。
【0020】
なお、本発明のエンドヌクレアーゼが上記26塩基(配列番号1)を特異的に認識することができる限り、改変されたアミノ酸において少なくとも1個のアミノ酸に欠失、置換、付加等の変異が生じてもよい。
例えば、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が欠失してもよく、配列番号3で表わされるアミノ酸配列に少なくとも1個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が付加してもよく、あるいは、配列番号3で表わされるアミノ酸配列の少なくとも1個、好ましくは1〜10個、さらに好ましくは1〜5個のアミノ酸が他のアミノ酸に置換してもよい。また、前記37又は39箇所のアミノ酸すべてを改変しなくても、上記26塩基(配列番号1)を認識することができる限り、本発明のエンドヌクレアーゼに含まれる。
【0021】
ここで、「認識することができる」とは、本発明のエンドヌクレアーゼが遺伝子内の前記26塩基を有する部位に結合し、当該26塩基対の内部が2つの突出末端となるように遺伝子を切断する機能を有することをいう。
また、上記遺伝子(配列番号2)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズすることができるDNAも本発明の遺伝子に含まれる。ストリンジェントな条件とは、例えば、ナトリウム濃度が15〜900mMであり、温度が37〜70℃、好ましくは68℃での条件をいう。
【0022】
4.組換えベクターの調製及び形質転換
(1) 組換えベクターの作製
本発明の組換えベクターは、適当なベクターに本発明の遺伝子を連結(挿入)することにより得ることができる。本発明の遺伝子を挿入するためのベクターは、宿主中で複製可能なものであれば特に限定されず、例えば、プラスミド DNA、ファージ DNA等が挙げられる。
プラスミド DNAとしては、大腸菌由来のプラスミド(例えばpRSET、pTZ19R、pBR322, pBR325, pUC118, pUC119等)、枯草菌由来のプラスミド(例えばpUB110, pTP5等)、酵母由来のプラスミド(例えばYEp13, YEp24, YCp50等)などが挙げられ、ファージDNAとしてはλファージ等が挙げられる。さらに、レトロウイルス又はワクシニアウイルスなどの動物ウイルス、バキュロウイルスなどの昆虫ウイルスベクターを用いることもできる。
【0023】
ベクターに本発明の遺伝子を挿入するには、まず、精製されたDNAを適当な制限酵素で切断し、適当なベクター DNAの制限酵素部位又はマルチクローニングサイトに挿入してベクターに連結する方法などが採用される。
本発明の遺伝子は、その遺伝子の機能が発揮されるようにベクターに組み込まれることが必要である。そこで、本発明のベクターには、プロモーター、本発明の遺伝子のほか、所望によりエンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、選択マーカー、リボソーム結合配列(SD配列)などを連結することができる。なお、選択マーカーとしては、例えばジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子等が挙げられる。
【0024】
(2) 形質転換体の作製
本発明の形質転換体は、本発明の組換えベクターを、目的遺伝子が発現し得るように宿主中に導入することにより得ることができる。ここで、宿主としては、本発明のDNAを発現できるものであれば特に限定されるものではない。例えば、エッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)等のエッシェリヒア属、バチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)等のバチルス属、シュードモナス・プチダ(Pseudomonas putida)等のシュードモナス属、リゾビウム・メリロティ(Rhizobium meliloti)等のリゾビウム属に属する細菌が挙げられ、サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)等の酵母が挙げられ、COS細胞、CHO細胞等の動物細胞が挙げられ、あるいはSf9、Sf21等の昆虫細胞が挙げられる。
【0025】
大腸菌等の細菌を宿主とする場合は、本発明の組換えベクターが該細菌中で自律複製可能であると同時に、プロモーター、リボゾーム結合配列、本発明の遺伝子、転写終結配列により構成されていることが好ましい。また、プロモーターを制御する遺伝子が含まれていてもよい。
大腸菌としては、例えばエッシェリヒア・コリ(Escherichia coli)K12、DH1などが挙げられ、枯草菌としては、例えばバチルス・ズブチリス(Bacillus subtilis)MI 114、207−21などが挙げられる。
【0026】
プロモーターとしては、大腸菌等の宿主中で発現できるものであればいずれを用いてもよい。例えばtrpプロモーター、lacプロモーター、Pプロモーター、Pプロモーターなどの、大腸菌やファージに由来するプロモーターが用いられる。tacプロモーターなどのように、人為的に設計改変されたプロモーターを用いてもよい。
細菌への組換えベクターの導入方法としては、細菌にDNAを導入する方法であれば特に限定されるものではない。例えばカルシウムイオンを用いる方法[Cohen, S.N. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 69:2110−2114 (1972)]、エレクトロポレーション法等が挙げられる。
【0027】
酵母を宿主とする場合は、例えばサッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)、ピヒア・パストリス(Pichia pastoris)などが用いられる。この場合、プロモーターとしては酵母中で発現できるものであれば特に限定されず、例えばgal1プロモーター、gal10プロモーター、ヒートショックタンパク質プロモーター、MFα1プロモーター、PHO5プロモーター、PGKプロモーター、GAPプロモーター、ADHプロモーター、AOX1プロモーター等が挙げられる。
【0028】
酵母への組換えベクターの導入方法としては、酵母にDNAを導入する方法であれば特に限定されず、例えばエレクトロポレーション法[Becker, D.M. et al.:Methods. Enzymol., 194: 182−187 (1990)]、スフェロプラスト法[Hinnen, A. et al.:Proc. Natl. Acad. Sci., USA, 75: 1929−1933 (1978)]、酢酸リチウム法[Itoh, H.:J. Bacteriol., 153:163−168 (1983)]等が挙げられる。
【0029】
動物細胞を宿主とする場合は、サル細胞COS−7、Vero、チャイニーズハムスター卵巣細胞(CHO細胞)、マウスL細胞、ラットGH3、ヒトFL細胞などが用いられる。プロモーターとしてSRαプロモーター、SV40プロモーター、LTRプロモーター、CMVプロモーター等が用いられ、また、ヒトサイトメガロウイルスの初期遺伝子プロモーター等を用いてもよい。
動物細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばエレクトロポレーション法、リン酸カルシウム法、リポフェクション法等が挙げられる。
昆虫細胞を宿主とする場合は、Sf9細胞、Sf21細胞などが用いられる。
昆虫細胞への組換えベクターの導入方法としては、例えばリン酸カルシウム法、リポフェクション法、エレクトロポレーション法などが用いられる。
【0030】
5.エンドヌクレアーゼの生産
本発明のエンドヌクレアーゼは、前記形質転換体を培養し、その培養物から採取することにより得ることができる。「培養物」とは、培養上清、あるいは培養細胞若しくは培養菌体又は細胞若しくは菌体の破砕物のいずれをも意味するものである。
本発明の形質転換体を培養する方法は、宿主の培養に用いられる通常の方法に従って行われる。
大腸菌や酵母菌等の微生物を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、微生物が資化し得る炭素源、窒素源、無機塩類等を含有し、形質転換体の培養を効率的に行うことができる培地であれば、天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
【0031】
炭素源としては、グルコース、フラクトース、スクロース、デンプン等の炭水化物、酢酸、プロピオン酸等の有機酸、エタノール、プロパノール等のアルコール類が用いられる。
窒素源としては、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム、リン酸アンモニウム等の無機酸若しくは有機酸のアンモニウム塩又はその他の含窒素化合物のほか、ペプトン、肉エキス、コーンスティープリカー等が用いられる。
無機物としては、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅、炭酸カルシウム等が用いられる。
【0032】
培養は、通常、振盪培養又は通気攪拌培養などの好気的条件下、37℃で12〜18時間行う。培養期間中、pHは6.5〜7.5、好ましくは7.0に保持する。pHの調整は、無機又は有機酸、アルカリ溶液等を用いて行う。
培養中は必要に応じてアンピシリンやテトラサイクリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養する場合は、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、Lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトシド(IPTG)等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドール酢酸(IAA)等を培地に添加してもよい。
動物細胞を宿主として得られた形質転換体を培養する培地としては、一般に使用されているRPMI1640培地、DMEM培地又はこれらの培地に牛胎児血清等を添加した培地等が用いられる。
【0033】
培養は、通常、5%CO存在下、37℃で1〜3日行う。培養中は必要に応じてカナマイシン、ペニシリン等の抗生物質を培地に添加してもよい。
培養後、本発明のエンドヌクレアーゼが菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりエンドヌクレアーゼを抽出する。また、本発明のエンドヌクレアーゼが菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去する。その後、タンパク質の単離精製に用いられる一般的な生化学的方法、例えば硫酸アンモニウム沈殿、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー等を単独で又は適宜組み合わせて用いることにより、前記培養物中から本発明のエンドヌクレアーゼを単離精製することができる。
【0034】
【実施例】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明はこれら実施例にその技術的範囲が限定されるものでない。
〔実施例1〕デオキシウラシルを含む、SceIのサブユニットをコードする一本鎖鋳型DNAの調製
Endo.SceI 50 kDaサブユニット遺伝子ENS2(1431塩基対; Nakagawa, K., Morishima, N., and Shibata, T. J. Biol. Chem. 266, 1977−1984 (1991))の改変は上流側1.0 キロ塩基対と下流側0.4 キロ塩基対の2領域で平行して実施した。この目的のために50 kDaサブユニット遺伝子全長(Nakagawa, K., Morishima, N., and Shibata, T. J. Biol. Chem. 266, 1977−1984 (1991))を含むEcoRI/EcoRI 断片(1671塩基対)と、50 kDaサブユニット遺伝子の下流を含んだPstI/EcoRI断片(534塩基対)をそれぞれファージミドpUC118(宝酒造社製)に別々にクローニングしてpEN1.7、pEN0.5とし(図3)、これらを大腸菌CJ236 (宝酒造社製)株に形質転換した。形質転換大腸菌株を37℃で12時間以上振とう培養して、前培養液とした。アンピシリン(100μg/ml)を含む本培養用の2xYT培地(Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. ”Molecular Cloning: a laboratory Manual”, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. (1989)) 2 ml に前培養液 20 μlを加え、37℃で1時間培養した。培地の体積の0.4%に当たるヘルパーファージ M13KO7(2.0x1012プラーク形成単位(pfu);宝酒造社製)を加え、37℃で1時間培養後、カナマイシン(100μg/ml)を加えて37℃で14時間培養した。この培養によって大腸菌から培地中に放出されたファージ粒子を次のようにして回収した。1.5 mlの培養液をマイクロ遠心機で遠心分離し(14,000 rpm, 5分)、上清を1.2 ml採取した後、同じ条件で再度遠心分離を繰り返して菌体を完全に除き、上清1.0 mlを得た。これ以降のDNA の調製はJ.サムブルックらの実験書(Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. ”Molecular Cloning: a laboratory Manual”, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. (1989))にまとめられているバクテリオファージM13ファージのDNAの精製法に従った。
【0035】
〔実施例2〕部位特異的変異導入のためのオリゴヌクレオチドの合成
(1) 一本鎖の合成
50 kDa サブユニット遺伝子ENS2はミトコンドリアゲノムにコードされているため、ミトコンドリアに固有の遺伝暗号を含む(表1)。ENS2を通常用いられている大量発現系に供するためにはこれらの固有コドンを普遍的コードに対応するように置換する必要がある。本実施例では、T.クンケル(Kunkel)の部位特異的変異導入法(Kunkel, T. A. Proc. Nati. Acad. Sci. U.S.A. 82, 488−492 (1985))を改良して塩基の置換を行った。通常のクンケル法で使用する改変用オリゴヌクレオチドは1または2本であるが、以下に述べるように最高16本のオリゴヌクレオチドを同時に使い、多部位での効率のよい置換を行った。
置換したい塩基を中心にして前後に10から15程度の塩基を持つ33本のオリゴヌクレオチドを設計した(表3)。
【0036】
【表3】
Figure 0003624237
【0037】
表3において、各配列の下に記載したカッコ書の塩基は、下線を施した配列に置換する前の塩基を表す。また、アルファベット小文字で表した塩基は、既に別のオリゴヌクレオチドで置換された塩基を表す。
オリゴヌクレオチドの長さは18から52塩基の範囲にあり、それぞれ1から最高で4残基の変異を含む。これらは 50 kDa サブユニット遺伝子の1431塩基対のうち50塩基対、37個のコドンを置換するのに用いた。後述のDNAリガーゼ反応を可能にするためにオリゴヌクレオチドの5’末端をリン酸化した。リン酸化の反応液は以下の組成である。
【0038】
──────────────────────────
100 mMトリス−塩酸塩(pH8.0)
10 mM 塩化マグネシウム
7 mMジチオスレイトール
1 mM ATP、1μM オリゴヌクレオチド
T4ポリヌクレオチドキナーゼ(15単位)
──────────────────────────
全量30μl
上記反応液について37℃で15分間リン酸化反応を行ったのち、70℃、10分で酵素を失活させた。
【0039】
(2) 相補鎖の合成
(1)で得られたオリゴヌクレオチドを以下の手法により二本鎖とした。
アニーリング用緩衝液と伸長反応用緩衝液の組成は以下の通りである。
【0040】
アニーリング用
────────────────────
200 mMトリス−塩酸塩(pH8.0)
100 mM塩化マグネシウム
500 mM塩化ナトリウム
10 mM ジチオスレイトール
────────────────────
伸長反応用
───────────────────────────
50 mMトリス−塩酸塩(pH8.0)
5 mM ジチオスレイトール
60 mM酢酸アンモニウム
0.5 mM 各dNTPs(A, C, T, G)
5 mM 塩化マグネシウム
1 mM ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド
───────────────────────────
【0041】
アニーリング緩衝液1μl と0.2 pmolの鋳型用一本鎖DNAに蒸留水を加え全量を10μl とした。このうち1μl を分注してリン酸化オリゴヌクレオチド溶液1μl と混合し、65℃で15分、次に37℃で15分静置して、オリゴヌクレオチドを一本鎖DNAにアニーリングさせた。続いて25μl 伸長用緩衝液、60単位の大腸菌DNA リガーゼ、1 単位のT4 DNAポリメラーゼを加え、25℃で2時間静置して相補鎖の合成を行った。3μl の0.2 M エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩(pH8.0)を加えて酵素反応を停止させた後、65℃、5分の処理により酵素を失活させた。この反応液をそのまま以下の形質転換に使った。
【0042】
〔実施例3〕形質転換
相補鎖合成後の二重鎖プラスミドDNAに含まれる野生型のDNA鎖(CJ236で作らせた一本鎖DNA)の塩基配列を選択的に変異型に置き換えるため、大腸菌BMH71−18 mutS(宝酒造社製)を用いた。この大腸菌株の中では、CJ236で作らせた一本鎖DNAに含まれるデオキシウラシルが酵素ウラシル−DNAグリコシラーゼにより分解された後、置換塩基を含んでいる方のDNA鎖を鋳型として再合成される(Lindahl, T. Ann. Rev. Biochem. 51, 61−87 (1982) )。相補鎖合成した反応液を、BMH71−18 mutSのコンピテント細胞を含む溶液100μl に全て加えた。なお、大腸菌のコンピテント細胞はH.イノウエらの方法(Inoue, H., Nojima, H., and Okayama, H. Gene 96, 23−28 (1990))に従って調製した。
さらに培地を加え、37℃ 1時間置いてから、ヘルパーファージ(前述)を30μl 添加して更に37℃で30分間静置して感染させた。ここからヘルパーファージとプラスミドの両方を細胞内に含んだBMH71−18の培養液を40μl分取して、アンピシリン(100μg/ml)、カナマイシン(100μg/ml)を含む2xYT培地2 mlに加え、37℃で16〜20時間振とう培養してファージを産生させた。
【0043】
遠心分離(14,000 rpm, 5分)で菌体を除き、置換塩基を持つプラスミドの一本鎖DNAを取り込んだファージ粒子の上清を集めた。この上清20μlに12時間以上培養したMV1184株(宝酒造社製)の80μlを混合して37℃で10分間静置して、ファージから細胞内に一本鎖DNAを注入させた。取り込んだ一本鎖DNAを複製してプラスミドを持つようになったMV1184株を、100μg/mlのアンピシリンを含むLB寒天培地(Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. ”Molecular Cloning: a laboratory Manual”, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. (1989))にまいて選択した。いくつかのクローンについて 50 kDa サブユニット遺伝子の塩基配列を自動シークエンサーALF(ファルマシア社)で調べ、所定の置換が導入されていることを確認した。なお、塩基配列解析のための蛍光プライマーはファルマシア(Pharmacia)社(Uppsala, Sweden)より購入した。また、DNAシークエンシング反応はサンガー法(Sanger, F.,et al., Proc. Nati. Acad. Sci. 74, 5463−5467 (1977))に基づき、ファルマシア社のプロトコールに従って行った。
出発材料としたプラスミド pEN1.7に対しては 9回の操作で40箇所、pEN0.5に対しては4回の操作で10箇所の塩基置換を施した。全ての置換が確認できた時点でPstI切断部位の上流と下流をつなげて、置換の完了した50 kDaサブユニットをコードする本発明の遺伝子を得た(図4、配列番号2)。
【0044】
〔実施例4〕 50 kDa サブユニットの発現プラスミドの構築
50 kDaサブユニット改変遺伝子を発現誘導用のベクターにつなげるのを容易にするため、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により改変遺伝子の5’端と3’端それぞれに制限酵素切断配列の導入を行った。反応はTaq DNAポリメラーゼ(宝酒造社製)を用い、同社のプロトコールに従って行った。使用したプライマーの配列を以下に示す。
5’−CCGGATCCATGAAAAAAC−3’(配列番号4)
5’−GGGTCGACTTATTTAATGTATCC−3’(配列番号5)
【0045】
下線部はそれぞれ新たに導入したBamHI, SalIの認識配列である。連結反応は94℃で1分、45℃で2分、72℃で3分間の反応を1サイクルとして25サイクル行った。
PCRで増幅したDNA 断片(1447塩基対)はアガロース(0.8%)ゲル電気泳動(Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. ”Molecular Cloning: a laboratory Manual”, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. (1989))で分離後、エチジュウムブロマイド染色して確認した。この断片をアガロースゲルよりジーンクリーン(GENECLEAN)キット(BIO101社、California、 USA)を用いて回収した。
回収したDNA断片をBamHI、SalIで処理した後、プラスミドpRSET (インビトロジェン社)及びpTZ19R(ファルマシア社)にサブクローニングしそれぞれpSC50 、pTZSC50とした。pSC50 は発現誘導に用いた。pTZSC50は蛍光プライマーを用いたDNAシークエンシング(前述)を行いPCRの過程で余分な変異が入っていないことを確認した。
【0046】
〔実施例5〕 50 kDa サブユニットの発現誘導
大腸菌BL21(DE3) pLysS(インビトロジェン社)のコンピテント細胞に発現プラスミドpSC50を導入した。この形質転換細胞をアンピシリン(150 μg/ml)、クロラムフェニコール(34μg/ml)を含むLB液体培地(Sambrook, J., Fritsch, E. F., and Maniatis, T. ”Molecular Cloning: a laboratory Manual”, Second Edition, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York. (1989) )中、37℃で終夜、振とう培養して前培養を行った。本培養の体積の4%に当たる前培養液を遠心分離(2500 xg、10分)にかけて菌体を集めた。この沈澱を少量の新しい培地にけん濁させ、本培養の液体培地に加えた。600ナノメートル(nm)における濁度(OD600 )が約 0.5になるまで振とう培養(37℃)をした後、培養温度を18℃に下げて振とう培養を続けた。OD600 が約 0.8になった時点で培養液にイソプロピルチオガラクトシド(IPTG)を最終濃度0.4 mMになるように加えて50kDaサブユニットの発現誘導を開始した。18℃でさらに12時間、振とう培養を行った後、大腸菌を遠心分離で集菌し、液体窒素を用いて急速冷凍してから−80℃に保存した。
【0047】
〔実施例6〕大腸菌からの50 kDaサブユニットの精製
−80℃で保存した菌体を室温で融解させ、その後の操作は4℃又は氷上で行った。培養量100 ml当たり4 mlのバッファーA(20 mMトリス塩酸緩衝液(PH 8.0) 500 mM 塩化ナトリウム、5 mMイミダゾール、1 mMフェニルメチルスルフォニルフルオダイド(シグマ・アルドリッチジャパン社、東京、日本)、0.1% NP−40(ナカライテスク社、京都、日本)に菌体をけん濁させた。これを液体窒素で急速冷凍した後、流水中で融解させることによって大腸菌を破砕した。大腸菌破砕液中のDNAを断片化させるため、このけん濁液を、超音波破砕機(UR−200P、トミー精工、東京、日本)の最大出力で、30秒間、5回処理した。
【0048】
処理液を39,000 xg で 20分、4℃の条件で遠心分離し、得られた上清を0.45μmのマイレックスフィルター(ミリポア(Millipore)社、Massachusetts、USA)で濾過した。この試料を、バッファーAで平衡化したプロボンド(Probond)ニッケルキレート樹脂(インビトロジェン社)を充填したカラム(φ10 mm、 2.0 ml)に重層後、バッファーA 20 ml(樹脂の10倍の体積)で洗った。60 mMのイミダゾールを含むバッファーA 12ml(樹脂の6倍の体積)で更に洗浄後、60 mMから500 mMへのイミダゾールを含むバッファーAの濃度勾配(総量80 ml)で溶出を行った。得られた溶出画分は10%アクリルアミドゲルを用いたドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(Laemmli, U. K. Nature, 227, 680−685 (1970))に供し、クマシーブリリアントブルー染色によって 50 kDaサブユニットの存在を確認した。50 kDaサブユニットを含む画分はバッファーB(20 mMトリス塩酸緩衝液(pH 7.5)、300 mM塩化ナトリウム、1 mMエチレンジアミンテトラ四酢酸ナトリウム塩、1 mMジチオスレイトール)に対して透析した。精製タンパク質の定量はプロテインアッセイ試薬(バイオラッド(BIO−RAD)社、California、 USA)を用い、同社のマイクロアッセイ法によって行った。標準蛋白質として牛血清アルブミン溶液(シグマ・アルドリッチジャパン社)を用いた。その結果、25g(湿重量)の菌体より300μgの精製タンパク質が得られた。
【0049】
〔実施例7〕エンドヌクレアーゼ活性の測定
50 kDaサブユニットのエンドヌクレアーゼ活性測定のための基質は以下のようにした調製した。Endo.SceI が細胞内で切断することが明らかとなっているミトコンドリアDNA 上のオリ2(oli2)領域を含んだ EcoRI/EcoRI断片(1671塩基対; Nakagawa, K.et al., EMBO J. 11, 2707−2715 (1992))を、ファージミドpUC119(宝酒造社製)にサブクローニングしpY673Lとした(図2)。対照用DNA 基質としてプラスミドpBR322(宝酒造社製)を使用した。pY673LとpBR322は、これを用いて作製した形質転換大腸菌より抽出した後、キアゲンカラム(キアゲンジャパン社、東京、日本)を用いて高度に精製した。
50 kDaサブユニットのエンドヌクレアーゼ活性測定に用いた反応液の組成は次の通りである。
【0050】
────────────────────────────────────
50 mM トリス塩酸緩衝液(pH 8.0)
50 mM 塩化ナトリウム
10 mM 塩化マグネシウム
1 mMジチオスレイトール
25 ng 基質DNA(pY673LまたはpBR322を制限酵素ScaIで直鎖状にしたもの
(図2))
0.4 から 60 ngまでの50 kDaサブユニット
────────────────────────────────────
総体積 30μl
【0051】
DNA切断反応は37℃で30分行った後、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム塩とドデシル硫酸ナトリウムを最終濃度がそれぞれ、10 mMと0.3 % になるように加えて反応を停止した。切断されたDNAはそのまま、あるいはフェノール抽出、エタノール沈殿による濃縮を施した後、0.8 %アガロース電気泳動に供した。
泳動後にゲルをエチジウムブロマイド(シグマ・アルドリッチジャパン社)またはサイバーグリーン(宝酒造社製)で染色して、DNAの切断を確認した。DNA の検出にはFM BIOイメージング装置(宝酒造社製)を用い、DNAの切断を定量化した。
【0052】
〔実施例8〕配列特異的エンドヌクレアーゼ活性の検出
Endo.SceI二量体は、ミトコンドリアDNA上のオリ2(oli2)遺伝子領域内において、コンセンサス配列と類似した26塩基対を認識して細胞内及び試験管内で切断する(Nakagawa, K., Morishima, N., and Shibata, T., EMBO J. 11, 2707−2715 (1992))(図2)。精製した Endo.SceIの50 kDaサブユニットは、単独で特定配列(配列番号1)を切断した。
基質にオリ2(oli2)を含むプラスミドpY673Lを使った場合、50 kDaサブユニットによってオリ2(oli2)の特異的切断が確認された(図5a)。図5a中、レーン1〜8はそれぞれ50 kDaサブユニットを0.5、1.0、2.0、4.0、8.0、16.0、32.0、64.0ng用いた結果である。50 kDaサブユニット64 ng によって反応液中のpY673L(25 ng)の60%が37℃で30分以内に配列特異的に切断され、3.4キロベースと1.4キロベースのDNA断片が出現した。
【0053】
一方、基質にプラスミドpBR322を使った場合は、50 kDaサブユニットによるDNAの切断を受けず、切断断片は検出されなかった(図5b)。図5b中、レーン1〜7はそれぞれ50 kDaサブユニットを2.3、4.5、9.0、18.0、36.0、72.0、144ng用いた結果である。過剰量(200 ng)の 50 kDa サブユニットを用いた場合でもpBR322及びその他のDNA(オリ2(oli2)遺伝子領域内の特定配列(26塩基対)を含まない出芽酵母株のミトコンドリアDNA(80キロ塩基対)、大腸菌ファージλDNA (47キロ塩基対)、枯草菌ファージφ105DNA(38キロ塩基対))は全く切断されなかった。
【0054】
〔実施例9〕サッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)の持つ50
kDaサブユニットの大量生産とその活性の検出
サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)の持つEndo.SceI 50 kDaサブユニットの相同蛋白質Endo.SuvI 50 kDaサブユニットがサッカロミセス・ウバラム(Saccharomyces uvarum)に存在する(Nakagawa, K., Morishima, N., and Shibata, T. J. Biol. Chem. 266, 1977−1984 (1991) )。両サブユニットとも476アミノ酸残基から構成されているが、二カ所でアミノ酸が異なっている。Endo.SceIとEndo.SuvIの50kDaサブユニットのアミノ酸配列の違いを図6aに示す。
【0055】
Endo.SceI 50 kDaサブユニットの改変遺伝子をさらに二カ所改変してEndo.SuvI 50 kDaサブユニットの大量発現用遺伝子を作製した。Endo.SuvI 50 kDaサブユニットアミノ酸に置き換えるために使用したオリゴヌクレオチドを図6bに示す。なお、図6bのカッコ内の塩基は、Endo.SceI 50 kDaサブユニットの塩基配列に相当する。この目的のため新たに二種のオリゴヌクレオチドを合成し、前述の遺伝子改変法に従って変異を導入した。得られた変異はDNAシークエンシングによって確認した。改変遺伝子はpRSETベクター(インビトロジェン社)にサブクローン化した後、形質転換法により大腸菌BL21(DE3) pLysに導入した。
Endo.SuvI 50 kDaサブユニットの誘導発現とその精製は前述のEndo.SceI 50 kDaサブユニットに適用した方法に従った。これにより精製されたEndo.SuvI 50 kDaサブユニットを用いてpY673Lの特異的切断を行った。
【0056】
その結果、Endo.SuvI 50 kDaサブユニットはpY673L上のEndo.SceI 50 kDaサブユニット切断部位を同程度の効率で配列特異的に切断した(図7a)。
一方、プラスミドpBR322は全く切断を受けず(図7b)、その他のDNA(オリ2(oli2)遺伝子領域内の特定配列(26塩基対)を含まない出芽酵母ミトコンドリアDNA、枯草菌ファージφ105DNA及び大腸菌ファージλDNA)も、Endo.SuvI 50 kDaサブユニットによって切断されなかった。
なお、図7a及びbにおいて、レーン1〜7はそれぞれ50 kDaサブユニットを2.3、4.5、9.0、18.0、36.0、72.0、144ng用いた結果を表す。
【0057】
【発明の効果】
本発明により、特定の塩基配列を認識する部位特異的エンドヌクレアーゼ、当該エンドヌクレアーゼをコードする遺伝子、当該遺伝子を含有する組換えベクター、当該ベクターを含む形質転換体、及び当該エンドヌクレアーゼの製造方法が提供される。本発明のエンドヌクレアーゼは、26塩基の特定の配列を認識することができるため、遺伝子工学、生化学の分野においてプラスミドから染色体に至る広い範囲のDNAの改変やマッピングに利用できる点で有用である。
【0058】
【配列表】
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【0059】
【配列表フリーテキスト】
配列番号1:合成DNA
配列番号4:合成DNA
配列番号5:合成DNA
配列番号6:合成DNA
配列番号7:合成DNA
配列番号8:合成DNA
配列番号9:合成DNA
配列番号10:合成DNA
配列番号11:合成DNA
配列番号12:合成DNA
配列番号13:合成DNA
配列番号14:合成DNA
配列番号15:合成DNA
配列番号16:合成DNA
配列番号17:合成DNA
配列番号18:合成DNA
配列番号19:合成DNA
配列番号20:合成DNA
配列番号21:合成DNA
配列番号22:合成DNA
配列番号23:合成DNA
配列番号24:合成DNA
配列番号25:合成DNA
配列番号26:合成DNA
配列番号27:合成DNA
配列番号28:合成DNA
配列番号29:合成DNA
配列番号30:合成DNA
配列番号31:合成DNA
配列番号32:合成DNA
配列番号33:合成DNA
配列番号34:合成DNA
配列番号35:合成DNA
配列番号36:合成DNA
配列番号37:合成DNA
配列番号38:合成DNA
【図面の簡単な説明】
【図1】エンドヌクレアーゼの改変前後のアミノ酸配列を示す図である。
【図2】プラスミドpY673Lの構築図である。
【図3】プラスミドpEN1.7及びpEN0.5の構築図である。
【図4】普遍コードに改変したSceIの50kDaサブユニット遺伝子の塩基配列を示す図である。
【図5】改変したSceIの50kDaサブユニットの配列特異的エンドヌクレアーゼ活性を示す電気泳動写真である。
【図6】サッカロミセス・ウバラムの50kDaサブユニットの置換部位及び置換に使用したオリゴヌクレオチドを示す図である。
【図7】サッカロミセス・ウバラムの50kDaサブユニットの配列特異的エンドヌクレアーゼ活性を示す電気泳動写真である。

Claims (1)

  1. 塩基配列「GCCCAGACATATCCCTGAATGATACC」を含むDNAを切断する方法であって、以下の(a)又は(b)のタンパク質:
    (a) 配列番号3で表わされるアミノ酸配列からなるタンパク質;
    (b) 配列番号3で表わされるアミノ酸配列において217番目のGlyがLysに、346番目のAsnがAspに置換されたアミノ酸配列からなるタンパク質;
    を前記DNAと反応させて、前記DNAが塩基配列「GCCCAGACATATCCCTGAATGATACC」の内部で特異的に切断されるようにすることを特徴とする、前記方法。
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