JP3624183B2 - 電子機器の電源システム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、商用交流電源の交流電圧を整流平滑した直流電源やバッテリ等による直流電圧が入力されるDC−DCコンバータと、そのDC−DCコンバータから制御された直流電圧が供給される負荷回路を有する電子機器の電源システムに関し、特に負荷回路が待機状態のような軽負荷期間を有する電子機器の電源システムに関する。
【0002】
【従来の技術】
このような電子機器の電源システムとして、図9の(a)に降圧型のDC−DCコンバータと負荷回路の回路図を示し、図9の(b)及び(c)はそのDC−DCコンバータの動作波形図である。
図9の(a)に示すように、この電子機器の電源システムのDC−DCコンバータには、電圧Eiの入力直流電源11が接続されており、主スイッチ12、ダイオード13とインダクタ14と出力コンデンサ15と制御部16が設けられている。出力コンデンサ15の電圧Eoは出力直流電圧として負荷回路17に供給されている。
【0003】
制御部16は出力直流電圧Eoを検出するとともに負荷回路17への出力電流を検出し、以下の機能を有する。
出力電流が所定値以上の場合、制御部16は、主スイッチ12を所定のスイッチング周期でオンオフ動作するとともに、出力直流電圧Eoを第1の目標設定値e1となるようにオンオフ時間比を制御する。以降、このような動作を通常動作と呼ぶ。
負荷が軽くなって出力電流が所定値より小さい場合、制御部16は、出力直流電圧Eoが第2の目標設定値e2と第3の目標設定値e3の間を増減するように、主スイッチ12が所定のオン時間とオフ時間でスイッチングする動作期間と常時オフ状態となる停止期間とを繰り返すバーストモード動作を行う。
【0004】
まず、図9の(b)を用いて通常動作を説明する。図9の(b)は主スイッチ12への駆動信号Vgと、インダクタ14に流れる電流I14を示す波形図である。図9の(b)に示すように、主スイッチ12がスイッチング周期Tを有して交互にオンオフ動作を行うことにより、インダクタ14への磁気エネルギーの蓄積と放出の動作を繰り返す。このように蓄積と放出の動作を繰り返すことにより、出力直流電圧Eoが出力コンデンサ15から負荷回路17へ供給される。主スイッチ12の1スイッチング周期におけるオン時間の割合をδとすると、出力直流電圧Eoは、Eo=δ・Eiで表される。制御部16は、主スイッチ12のオンオフ時間、即ちδを調整することにより、出力直流電圧Eoを安定化する。
【0005】
次に、負荷が軽くなってバーストモード動作となった場合の動作を、図9の(c)を用いて説明する。図9の(c)は主スイッチ12への駆動信号Vgと、インダクタ14に流れる電流I14と、出力直流電圧Eoを示す波形図である。図9の(c)に示すように、主スイッチ12はオンオフ動作を行い入力直流電源11から負荷回路17に電力を供給する動作期間と、常時オフ状態の停止期間とを繰返す。動作期間において出力直流電圧Eoが第3の目標設定値e3から第2の目標設定値e2に上昇し、停止期間において第2の目標設定値e2から第3の目標設定値e3まで下降する。負荷回路17での消費電力が少ないほど、動作期間は短く、停止期間は長くなる。停止期間においてはDC−DCコンバータにおける電力損失がほとんど無い。このためバーストモード動作は、待機状態のような軽負荷時の効率を向上させている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のように構成された従来の電子機器の電源システムにおいては、DC−DCコンバータがバーストモード動作を行っている時に負荷回路17の消費電力が急に大きくなると、通常動作に復帰するまでの制御部16の遅れ時間のために、出力コンデンサ15への電力の供給が間に合わず、出力直流電圧Eoにアンダーシュートが発生するという問題があった。
本発明は、バーストモード動作に代表されるような待機動作モードを有するDC−DCコンバータを持つ電子機器の電源システムにおいて、負荷回路の消費電力の急な変動に対応してDC−DCコンバータの出力直流電圧を制御することができる電源システムを提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、DC−DCコンバータと負荷回路からなる本発明に係る電子機器の電源システムは、下記の構成を有する。
本発明に係る電子機器の電源システムは、
スイッチとインダクタと整流手段と平滑手段と制御部とを有し、入力直流電圧が入力され、前記制御部により前記スイッチをオンオフ動作させることにより前記入力直流電圧を交流電圧に変換し、当該交流電圧を前記整流手段と前記平滑手段により整流平滑して出力直流電圧を出力するDC−DCコンバータと、
前記DC−DCコンバータの出力直流電圧が入力され、動作状態に比べて消費電力が小さい待機状態を有する負荷回路と、を有する電子機器の電源システムであって、
前記制御部は、負荷回路からのモード設定信号が入力されるモード設定端子を有し、
前記負荷回路は、待機状態となった後にOFFとなり、動作状態に戻る所定時間前にONとなるモード設定信号を前記モード設定端子へ出力し、
前記DC−DCコンバータは、前記モード設定端子の受電信号がONの時、前記出力直流電圧が第1の目標設定値(E1)となるように、前記スイッチのオン時間とオフ時間とを調整して周期的にオンオフ動作させる通常動作を行うよう構成され、且つ前記モード設定端子の受電信号がOFFの時、前記出力直流電圧が前記第1の目標設定値(E1)より高い第2の目標設定値(E2)と前記第1の目標設定値(E1)より低い第3の目標設定値(E3)との間を増減するように、前記スイッチを所定のオン時間とオフ時間により周期的にオンオフ動作させる動作期間と、常時オフ状態となる停止期間とを繰返すバーストモード動作を行うよう構成されている。このように構成されたバーストモード動作に代表されるような待機動作モードを有するDC−DCコンバータを持つ電子機器の電源システムにおいて、負荷回路の消費電力の急な変動に対応してDC−DCコンバータの出力直流電圧を制御することができる。
【0008】
また、本発明に係る電子機器の電源システムは、待機状態にある前記負荷回路からのモード設定信号がONになった後から、前記負荷回路が動作状態に戻るまでの期間として設定される前記所定時間は、前記平滑手段の有する静電容量(C)と、前記第1の目標設定値(E1)と前記第2の目標設定値(E2)の電位差との積を、待機状態での負荷回路での消費電流(I)で除した時間{ C・(E2−E1)/I} 以上に設定しても良い。
【0009】
また、本発明に係る電子機器の電源システムは、前記整流手段は、整流スイッチを有する同期整流回路から構成され、
前記制御部は、モード設定信号がONの時、通常動作とする機能に加え、前記整流スイッチを前記スイッチと交互にオンオフ動作させる機能を有し、
前記モード設定信号がOFFの時、バーストモード動作とする機能に加え、前記整流スイッチを整流方向に逆流する電流を阻止または抑制する機能を有するよう構成しても良い。
【0010】
また、本発明に係る電子機器の電源システムは、前記制御部は、前記整流手段の逆流制限値を設定できる逆流制限回路を有し、
モード設定信号がONになると、前記逆流制限値を最小値から最大値へ経時的に変化させ、モード設定信号がOFFになると、前記逆流制限値を最大値から最小値へ経時的に変化させる機能を有するよう構成しても良い。
【0011】
また、本発明に係る電子機器の電源システムは、前記制御部は、モード設定信号がOFFの時、前記負荷回路の消費電力を直接あるいは間接的に検出する機能を有し、前記負荷回路の消費電力が第1の所定値(Px1)以下になると、バーストモード動作に移行する機能を有するよう構成しても良い。
【0012】
また、本発明に係る電子機器の電源システムは、前記制御部は、モード設定信号がOFFの時、前記負荷回路の消費電力が第2の所定値以下になると、前記負荷回路の消費電力が小さくなるほど前記スイッチのスイッチング周期を延長し、前記負荷回路の消費電力が第2の所定値(Px2)以下になると、バーストモード動作に移行する機能を有するよう構成しても良い。
【0013】
上記のように構成された本発明の電子機器の電源システムは、実際に負荷回路が重くなる前に通常動作に復帰しているので、負荷回路が急に重くなっても速やかに対応することができ、DC−DCコンバータの出力直流電圧のアンダーシュートを抑制することができる。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電子機器の電源システムに係る好ましい実施の形態について添付の図面を参照しつつ説明する。
【0015】
《実施の形態1》
図1は本発明に係る実施の形態1の電子機器の電源システムの構成を示す回路図である。図1に示すように、実施の形態1の電子機器の電源システムのDC−DCコンバータには電圧Eiの入力直流電源1が接続されており、主スイッチ2、ダイオードで構成された整流手段3、インダクタ4、コンデンサで構成された平滑手段5、及び制御部6が設けられている。平滑手段5の電圧Eoは出力直流電圧として負荷回路7に供給されている。制御部6は、出力直流電圧Eoを検出するとともに負荷回路7からのモード設定信号を受電するモード設定端子8が設けられている。
【0016】
負荷回路7は、通常時に比べて負荷の軽い状態を継続させる待機状態を有し、待機状態となった後にOFFとなる信号を制御部6のモード設定端子8へ出力する。また、負荷回路7は通常の負荷の状態に戻る所定時間前にONとなる信号を制御部6のモード設定端子8へ出力する。この所定時間はコンデンサで構成された平滑手段5の静電容量Cと、第1の目標設定値E1と第2の目標設定値E2との電位差の積を、待機状態での出力電流Iで除した時間 C・(E2−E1)/I以上に設定されている。
【0017】
制御部6はONのモード設定信号が入力された場合、主スイッチ2を所定のスイッチング周期でオンオフ動作させるとともに、出力直流電圧Eoを第1の目標設定値E1となるように主スイッチ2のオンオフ時間比を制御する通常動作を行う。一方、負荷回路17が待機状態で、OFFのモード設定信号がモード設定端子8に入力された場合、制御部6は出力直流電圧Eoが第2の目標設定値E2と第3の目標設定値E3(<E2)との間を増減するように主スイッチ2をオンオフ制御する。この場合、主スイッチ2は、所定のオン時間とオフ時間でスイッチングする動作期間と常時オフ状態となる停止期間とを繰り返すバーストモード動作を行う。
【0018】
次に、制御部6における主スイッチ2の駆動動作について詳細に説明する。
まず、モード設定信号がONの場合の通常動作を説明する。主スイッチ2の1スイッチング周期におけるオン時間の割合、即ち時比率をδとする。主スイッチ2がオン状態の時、インダクタ4には入力直流電圧Eiと出力直流電圧Eoの差電圧(Ei−Eo)が印加される。この印加時間はδ・Tである。この時、入力直流電源1からインダクタ4に電流が流れ、磁気エネルギーが蓄積される。主スイッチ2がオフ状態になると、ダイオードで構成された整流手段3が導通してインダクタ4には出力直流電圧Eoが印加される。この印加時間はT−δ・Tであり、インダクタ4から平滑手段5へ電流が流れ、蓄積された磁気エネルギーは放出される。このような磁気エネルギーの蓄積と放出の動作を繰り返すことにより、平滑手段5から負荷回路7へ電力が供給される。インダクタ4の磁気エネルギーの蓄積と放出が均衡する安定動作状態においては次式(1)が成り立つ。
【0019】
(Ei−Eo)×δ・T=Eo×(T−δ・T) (1)
【0020】
(1)式を整理すると、Eo=δ・Eiという変換特性が得られる。したがって、制御部6は主スイッチ2のオンオフ時間比(時比率δ)を調整することにより、出力直流電圧Eoを第1の目標設定値E1とすることができる。
【0021】
次に、負荷回路7が待機状態となり、モード設定信号がOFFの場合のバーストモード動作について説明する。
このバーストモード動作において主スイッチ2は、オンオフ動作を行い入力直流電源1から負荷回路7に電力が供給される動作期間と、常時オフ状態となる停止期間とを繰返す。動作期間において出力直流電圧Eoが第3の目標設定値E3から第2の目標設定値E2に上昇し、停止期間において第2の目標設定値E2から第3の目標設定値E3まで下降する。負荷回路7が軽いほど、動作期間は短く、停止期間は長くなる。停止期間における動作は、平滑手段5の放電、出力電流の検出、及び出力直流電圧Eoの検出のみである。したがって、停止期間におけるDC−DCコンバータの電力損失はほとんど無い。このため、バーストモード動作は待機状態のような軽負荷時における効率を向上させている。
【0022】
次に、モード設定信号がONになった場合の動作を図2を用いて説明する。図2は出力直流電圧Eoを表す波形図である。尚、なお、第1の目標設定値E1、第2の目標設定値E2、及び第3の目標設定値E3の大小関係を、E2>E1>E3とする。
まず、図2の(a)に示すように、モード設定信号がOFFからONになる時、DC−DCコンバータがバーストモード動作の動作期間中であり、且つその時の出力直流電圧Eoが第1の目標設定値E1以下であれば、制御部6は出力直流電圧Eoを第1の目標設定値E1となるように主スイッチ2のオンオフ動作を続ける。
【0023】
次に、図2の(b)に示すように、モード設定信号がOFFからONになる時、バーストモード動作の動作期間中であり、且つその時の出力直流電圧Eoが第1の目標設定値E1より高ければ、制御部6は出力直流電圧Eoを第1の目標設定値E1となるように、一旦スイッチング動作を停止して出力コンデンサである平滑手段5の電荷を負荷回路7へ放電する。そして出力直流電圧Eoが第1の目標設定値E1に達すると、その電位を維持するように主スイッチ2のオンオフ動作を開始する。
また、図2の(c)に示すように、モード設定信号がOFFからONになる時、バーストモード動作の停止期間中であり、且つその時の出力直流電圧Eoが第1の目標設定値E1以下であれば、制御部6は出力直流電圧Eoを第1の目標設定値E1となるように主スイッチ2のオンオフ動作を開始する。
さらに、図2の(d)に示すように、モード設定信号がOFFからONになる時、バーストモード動作の停止期間中であり、且つその時の出力直流電圧Eoが第1の目標設定値E1より高ければ、制御部6は出力直流電圧Eoを第1の目標設定値E1となるまで、停止期間を続けてコンデンサである平滑手段5の電荷を負荷回路7へ放電する。そして出力直流電圧Eoが第1の目標設定値E1に達すると、その電位を維持するように主スイッチ2のオンオフ動作を開始する。
【0024】
実施の形態1の電子機器の電源システムにおいて、モード設定信号がONになってから実際に負荷回路7が動作状態になるまでの時間は、負荷回路7によってC・(E2−E1)/I 以上に設定されている。この時間はバーストモード動作において出力直流電圧Eoが第2の目標設定値E2に達した後、第1の目標設定値E1に至るまでの放電時間である。即ち、この時間は、モード設定信号がONになってからバーストモード動作から脱し、主スイッチ2のオンオフ動作を再開するための最大必要時間である。従って、実際に負荷回路7が動作状態になる時には主スイッチ2は必ずオンオフ動作をしており、通常の過渡応答特性で対応できる。
以上のように、実施の形態1の電子機器の電源システムにおいては、DC−DCコンバータの応答遅れによる出力直流電圧Eoへのアンダーシュートを確実に抑制できる構成を有している。
【0025】
《実施の形態2》
次に、本発明に係る実施の形態2の電子機器の電源システムを図3を参照しつつ説明する。図3は実施の形態2の電子機器の電源システムの構成を示す回路図である。実施の形態2の電子機器の電源システムは、前述の実施の形態1の電子機器の電源システムと基本的な構成は同様であり、実質的に同じ機能、構成を有するものには同一の符号を付与して、その説明は省略する。
図3に示した実施の形態2の電子機器の電源システムが前述の実施の形態1の電子機器の電源システムと異なるところは、整流手段3が整流スイッチ30とダイオード31との並列回路からなる同期整流回路により構成されている点と、制御部6の機能の点である。
【0026】
制御部6は出力直流電圧Eoを検出するとともに負荷回路7からのモード設定信号を受電し、以下の機能を有する。
モード設定信号がONの場合、制御部6は主スイッチ2と整流スイッチ30とを所定のスイッチング周期で交互にオンオフ動作させるとともに、出力直流電圧Eoを第1の目標設定値E1となるようにオンオフ時間比を制御する通常動作を行う。
一方、モード設定信号がOFFの場合、整流スイッチ30をオフ状態にするとともに、出力直流電圧Eoが第2の目標設定値E2と第3の目標設定値E3との間を増減するように、主スイッチ2は所定のオン時間とオフ時間でスイッチング動作する動作期間と常時オフ状態となる停止期間とを繰り返すバーストモード動作を行う。
【0027】
モード設定信号がONの場合の通常動作は、実施の形態1の場合と同様である。即ち、主スイッチ2のオンオフ動作により、インダクタ4への磁気エネルギーの蓄積と放出の動作を繰り返し、出力直流電圧Eoがコンデンサで構成された平滑手段5から負荷回路7へ供給される。主スイッチ2の1スイッチング周期におけるオン時間の割合をδ(時比率)とすると、出力直流電圧Eoは、Eo=δ・Eiで表される。制御部6は、主スイッチ2のオンオフ時間、即ち時比率δを調整することにより、出力直流電圧Eoを安定化させている。
【0028】
通常動作において、実施の形態2の電子機器の電源システムのDC−DCコンバータの動作が、前述の実施の形態1の場合と異なるのは整流手段3の動作である。主スイッチ2のオフ時間には整流手段3の整流スイッチ30がオン状態となり、平滑手段5へ流れる電流はダイオード31ではなく整流スイッチ30を流れる。このためダイオード31に流れる場合に比べて、オン電圧が低く導通損失が低減されている。
【0029】
この状態において負荷回路7での消費電力が少なくなると、経時的に減少して流れる整流スイッチ30の電流はやがてゼロに至り、逆方向に流れるようになる。即ち、平滑手段5を放電する期間が生じ、負荷回路7への供給電力が低減される。平滑手段5から放電された電流はインダクタ4の磁気エネルギーとして蓄積される。この磁気エネルギーは、整流スイッチ30がOFF状態となり主スイッチ2がON状態となると、主スイッチ2から入力直流電源1へ電流が流れることにより放出される。以上のような動作は電力が出力側から入力へ戻るため、電力回生動作と呼ばれる同期整流回路特有の動作である。このようなDC−DCコンバータの電力回生動作は、DC−DCコンバータにとって出力電力が小さいにもかかわらず、動作電流の振幅が大きくなるので導通損失が大きくなり、軽負荷時における効率面では不利となる。
【0030】
しかしながら、負荷回路7での消費電力が急に減少した場合、即ち負荷急減に対しては、出力直流電圧Eoのオーバーシュートを抑制し、第1の目標設定値E1へ速やかに安定化できるという特長を有する。整流手段3が単にダイオードである場合、DC−DCコンバータの出力電流が急に少なくなると平滑手段5が充電されて出力直流電圧Eoが上昇する。制御部6は、出力直流電圧Eoの上昇を検出して主スイッチ2の時比率δを小さくすることにより、平滑手段5への電力供給を抑制する。しかし、主スイッチ2の時比率δをゼロまで絞り、主スイッチ2が常時オフ状態となって平滑手段5への電力供給を停止しても、一旦上昇した出力直流電圧Eoは、負荷回路7での消費による放電でしか低下しない。これに対し、整流手段3が電力回生動作可能な同期整流回路であると、主スイッチ2の時比率δを小さくすることにより、平滑手段5から入力側への電力回生が行われ、平滑手段5を積極的に放電する。このため、出力直流電圧Eoのオーバーシュートは抑制され、第1の目標設定値E1へ速やかに安定化できるのである。
【0031】
負荷回路7が待機状態となり、モード設定信号がOFFになると、DC−DCコンバータはバーストモード動作となる。制御部6は整流スイッチ30をOFF状態とする。この結果、バーストモード動作は前述の実施の形態1で説明したものと全く同じ動作となる。したがって、ここではバーストモード動作の説明は省略する。
停止期間における動作は平滑手段5の放電、出力電流の検出、及び出力直流電圧Eoの検出のみであるため、停止期間における電力損失はほとんど無く、待機状態のような軽負荷時における効率を向上させることができる。このような効果も前述の実施の形態1における効果と同様である。
【0032】
本発明に係る実施の形態2のDC−DCコンバータでは、負荷回路7が急に重負荷となる場合においても、事前にモード設定信号はONになっている。しかも実施の形態1に比べて、モード設定信号がONになってからバーストモード動作から脱し、主スイッチ2のオンオフ動作を再開するための最大必要時間ははるかに短い。モード設定信号がONになると、整流手段3の整流スイッチ30がオンオフ動作するようになるので、電力回生動作が可能となる。バーストモード動作において出力直流電圧Eoが第2の目標設定値E2に達した後、第1の目標設定値E1に至るまでの放電時間はこの電力回生動作によって短縮される。この電力回生動作により、主スイッチ2のオンオフ動作を再開するための最大必要時間は実施の形態1に比べて短くなる。
【0033】
以上のように、実施の形態2の電子機器の電源システムによれば、モード設定信号がONになると速やかに通常動作に復帰するため、負荷回路7の急な変動に対して速やかに対応することができる。
尚、実施の形態2の電子機器の電源システムでは、モード設定信号がOFFになると整流手段3の整流スイッチ30をオフ状態とし、整流手段3のダイオード31のみを整流手段とする構成である。これは、軽負荷時における整流手段3の同期整流回路において電力回生動作を行わさせず、軽負荷時における効率劣化を回避するとともに、バーストモード動作への移行をスムーズに行うためである。このような同期整流回路において整流方向に逆流する電流を流さないようにする逆流阻止動作は、上記の実施の形態2における整流手段3の構成に限定されるものではない。
【0034】
図4は逆流阻止動作を行う同期整流回路の他の例を示す回路図である。図4を用いて、その逆流阻止動作を以下に説明する。
図4において、主スイッチ2はPチャネルMOSFET、整流手段3はNチャネルMOSFETであり、ダイオード31はMOSFETのボディダイオードが兼用する。NPNトランジスタ601と602はそれぞれのベース端子が接続されて、ベース電流が抵抗603を介して入力電圧源1から供給されている。NPNトランジスタ601のエミッタ端子は整流手段3のドレイン端子に接続され、NPNトランジスタ602のエミッタ端子は整流手段3のソース端子に接続されている。NPNトランジスタ601のコレクタ端子は抵抗604を介してPNPトランジスタ605のベース端子に接続されている。PNPトランジスタ605はベース−エミッタ間に抵抗606が接続され、PNPトランジスタ605のコレクタ端子は、抵抗618を介して整流手段3のゲート端子に駆動電圧を供給する。NPNトランジスタ602のコレクタ端子はNPNトランジスタ607を介して整流手段3のゲート端子に接続されている。NPNトランジスタ607のベース端子は抵抗608を介してモード設定信号を受電する。整流手段3は、ゲート端子がダイオード609を介して主スイッチ2のゲート端子に接続されている。ダイオード609の両端にはPNPトランジスタ610が接続され、PNPトランジスタ610のベース端子は抵抗抵抗611を介してモード設定信号を受電する。モード設定信号は“L”レベルの時にONであるとする。
【0035】
まず、モード設定信号がONの通常動作の場合について説明する。ONのモード設定信号が入力された通常動作の場合、NPNトランジスタ607はオフ状態、PNPトランジスタ610はオン状態となる。また、整流手段3は主スイッチ2の駆動信号Vgを受電して、主スイッチ2と交互にオンオフ動作する。
次に、モード設定信号が“H”、即ちOFFの場合の動作を説明する。この場合、NPNトランジスタ607がオン状態、PNPトランジスタ610がオフ状態になる。まず、主スイッチ2がオン状態にある時、整流手段3には入力直流電圧Eiが印加されており、NPNトランジスタ601はオフ状態、NPNトランジスタ602はオン状態にある。整流手段3のゲート電圧はゼロ電位に落とされ、整流スイッチ30もオフ状態となる。
【0036】
次に主スイッチ2がオフ状態となると、整流手段3の印加電圧は低下してゼロ電圧以下になると、NPNトランジスタ601はオン状態、NPNトランジスタ602はオフ状態となる。NPNトランジスタ601がオン状態になるとPNPトランジスタ605がオン状態になるとともに、NPNトランジスタ602がオフ状態なので、抵抗618を介して整流手段3のゲート端子に駆動電圧が供給される。この結果、整流手段3はオン状態となり、電流が整流手段3のソース端子からドレイン端子へ流れる。この方向に電流が流れている時は、整流手段3の電圧降下によってソース端子の電位がドレイン端子より高く、NPNトランジスタ601はオン状態、NPNトランジスタ602はオフ状態が維持され、整流手段3のゲート端子への駆動電圧の供給も維持される。
【0037】
整流手段3をソース端子からドレイン端子に流れる電流が少なくなり、やがて逆流するようになると、整流手段3の電圧降下によってソース端子の電位がドレイン端子より低くなる。このため、NPNトランジスタ601はオフ状態となり、PNPトランジスタ605はオフ状態となり、整流手段3のゲート端子への駆動電圧の供給が断たれる。このとき同時に、NPNトランジスタ602はオン状態となり整流手段3のゲート端子をゼロ電圧に落とし、整流スイッチ30をオフ状態にする。
【0038】
また、整流手段3のソース端子からドレイン端子に電流が流れている場合でも、主スイッチ2をオン状態とするように主スイッチ2のゲート端子がゼロ電圧に落とされると、ダイオード609を介して整流手段3のゲート端子も低下して、整流手段3をオフ状態にする。
以上のように、図4に示した構成によって、整流手段3はモード設定信号がOFFの時に、逆流阻止機能を有する同期整流器として動作する。したがって、図4の構成によっても、軽負荷時における整流手段3の同期整流器において電力回生動作を行わさせず、軽負荷時における効率劣化を回避することができるとともに、バーストモード動作への移行をスムーズに行うことができる。
【0039】
《実施の形態3》
次に、本発明に係る実施の形態3の電子機器の電源システムについて図5を参照しつつ説明する。図5は実施の形態3の電子機器の電源システムにおけるDC−DCコンバータの一部の構成を示す回路図である。実施の形態3の電子機器の電源システムにおいて、前述の実施の形態2の電子機器の電源システムの構成と異なるところは、逆流制限回路61が設けられている点である。逆流制限回路61は、前述の図4に示した逆流阻止機能を有する同期整流回路と基本的な構成は同じであり、同様の構成要素には同一の符号を付与している。また、実施の形態3におけるその他の構成及び動作は、前述の実施の形態2の電子機器の電源システムの構成及び動作と実質的に同じであるため、以下の説明においては同様の構成要素には同一の符号を付与し、その説明は省略する。
【0040】
以下、実施の形態3における逆流制限回路61の構成と動作について説明する。
図5において、主スイッチ2はPチャネルMOSFET、整流手段3はNチャネルMOSFETであり、ダイオード31はMOSFETのボディダイオードが兼用する。NPNトランジスタ601と602はそれぞれのベース端子が接続されて、ベース電流が抵抗603を介して入力電圧源1から供給されている。NPNトランジスタ601のエミッタ端子は整流手段3のドレイン端子に接続され、NPNトランジスタ602のエミッタ端子はコンデンサ612を介して整流手段3のソース端子に接続されている。NPNトランジスタ601のコレクタ端子は抵抗604を介してPNPトランジスタ605のベース端子に接続されている。PNPトランジスタ605はベース−エミッタ間に抵抗606が接続され、PNPトランジスタ605のコレクタ端子は、抵抗618を介して整流手段3のゲート端子に駆動電圧を供給する。NPNトランジスタ602のコレクタ端子は整流手段3のゲート端子に接続されている。整流手段3のゲート端子はダイオード609を介して主スイッチ2のゲート端子に接続されている。NPNトランジスタ613はモード設定信号を抵抗614を介してベース端子に受電する。なお、実施の形態3においてモード設定信号は“L”レベルの時にONであるとする。NPNトランジスタ613は、コンデンサ612と抵抗615を介して短絡するよう接続されている。コンデンサ612は抵抗606と抵抗617によって出力直流電圧Eoの分割電圧が印加されている。
【0041】
以上のように構成された実施の形態3において、モード設定信号がONでNPNトランジスタ613がオフ状態の場合の動作について説明する。
まず、主スイッチ2がオン状態にある時、整流手段3には入力直流電圧Eiが印加されている。このとき、NPNトランジスタ601はオフ状態であり、NPNトランジスタ602はオン状態にある。このため、整流手段3のゲート電圧はゼロ電位に落とされ、整流スイッチ30もオフ状態となる。
【0042】
次に主スイッチ2がオフ状態となると、整流手段3の印加電圧が低下してコンデンサ612の電圧以下になる。このように整流手段3の印加電圧がコンデンサ612の電圧以下になると、NPNトランジスタ601はオン状態、NPNトランジスタ602はオフ状態になる。NPNトランジスタ601がオン状態になるとPNPトランジスタ605がオン状態になり、NPNトランジスタ602はオフ状態なので、抵抗618を介して整流手段3のゲート端子に駆動電圧が供給される。
【0043】
この結果、整流手段3はオン状態となり、電流が整流手段3のソース端子からドレイン端子へ流れる。この方向に電流が流れている時は、整流手段3の電圧降下によってソース端子の電位がドレイン端子より高く、NPNトランジスタ601はオン状態、NPNトランジスタ602はオフ状態が維持される。また、整流手段3のゲート端子への駆動電圧の供給も維持される。
【0044】
整流手段3のソース端子からドレイン端子に流れる電流が少なくなり、やがて逆流するようになると、整流手段3の電圧降下によってソース端子の電位がドレイン端子より低くなる。しかし、整流手段3のソース端子とドレイン端子の電位差がコンデンサ612の電圧以下であれば、NPNトランジスタ601はオン状態、NPNトランジスタ602はオフ状態が維持される。そして、整流手段3のゲート端子への駆動電圧の供給も維持される。整流手段3のドレイン端子からソース端子へ流れる逆流電流が増加して、ソース端子とドレイン端子の電位差がコンデンサ612の電圧に達すると、NPNトランジスタ601はオフ状態となり、PNPトランジスタ605がオフ状態となり、整流手段3のゲート端子への駆動電圧の供給が断たれる。またこのとき同時に、NPNトランジスタ602はオン状態となり、整流スイッチ30のゲート端子をゼロ電圧に落とし、整流スイッチ30をオフ状態にする。即ち、整流手段3の逆流電流は、整流手段3での電圧降下とコンデンサ612の電圧との比較により制限されている。
【0045】
また、整流手段3をソース端子からドレイン端子に電流が流れている場合でも、主スイッチ2をオン状態とするように主スイッチ2のゲート端子がゼロ電圧に落とされると、ダイオード609を介して整流手段3のゲート端子も電圧低下されて、整流スイッチ30をオフ状態にする。
【0046】
次に、モード設定信号がOFFになるとNPNトランジスタ613がオン状態になる。このためコンデンサ612の電圧は抵抗615を介して放電される。従って、整流手段3の逆流制限値もコンデンサ612の電圧の低下とともに経時的に減少していく。整流手段3のオン抵抗をRon、抵抗615の抵抗値をR1、抵抗616の抵抗値をR2、抵抗617の抵抗値をR3、コンデンサ612の静電容量をC2とすると、整流手段3の逆流制限値Ipは次式(2)で表される。
【0047】
【0048】
式(2)において、RはR1とR2とR3との並列抵抗(1/R=1/R1+1/R2+1/R3)であり、時定数τ=R・C2 である。
【0049】
以上のように、図5に示した構成によって、整流手段3はモード設定信号のオンオフの際に逆流制限値が経時的に変化する。この様子を図6の波形図に示す。図6において、モード設定信号(a)、コンデンサ612の電圧V12(b)、整流手段3を流れる電流I3及びその逆流制限レベルとなる−V12/Ron(c)を波形で示した。
【0050】
前述した実施の形態2の回路構成では、負荷回路7が待機状態となってモード設定信号がOFFになると、それまで電力回生動作をしていた整流手段3は急に逆流阻止動作となる。このため、実施の形態2の構成では出力直流電圧へのオーバーシュートの発生が懸念される構成である。しかし、実施の形態3の構成とすることにより、逆流制限値が経時的に減少するので出力直流電圧へのオーバーシュートの発生がなくなる構成である。逆に、モード設定信号がOFFからONになる場合でも、急に電力回生動作とならずに逆流制限値が経時的に増加するため、出力直流電圧にアンダーシュートが発生することはない。
【0051】
《実施の形態4》
次に、本発明に係る実施の形態4の電子機器の電源システムについて図7を参照しつつ説明する。図7は実施の形態4の電子機器の電源システムにおけるDC−DCコンバータの一部の構成を示す回路図である。実施の形態4の電子機器の電源システムにおいて、前述の実施の形態2の電子機器の電源システムの構成と異なるところは、制御部6をより詳細な構成で示している点と、出力状態検出機能が設けられている点である。実施の形態4におけるその他の構成及び動作は、前述の実施の形態2の電子機器の電源システムの構成及び動作と実質的に同じであるため、以下の説明においては同様の構成要素には同一の符号を付与し、その説明は省略する。
【0052】
図7において、破線で示す制御部6は第1の基準電圧Vr1を出力する電圧源620を有しており、出力直流電圧Eoは抵抗621と抵抗622による分割電圧として検出されている。分割電圧として検出された出力直流電圧Eoは、誤差増幅器623において電圧源620の第1の基準電圧Vr1と比較されて、誤差電圧Veが形成される。三角波発生器624は三角波電圧Vtを出力する。PWM回路625は誤差電圧Veと三角波電圧Vtとを比較し、Ve>Vtとなる期間を主スイッチ2のオン時間とし、整流スイッチ30のオフ時間とするパルス出力をOR回路626を介して駆動電圧Vgとして出力する。抵抗621と抵抗622の抵抗値をそれぞれR21とR22とすると、次式(3)のように設定することにより、出力直流電圧Eoが第1の目標設定値E1に安定化させることができる。この安定化動作のとき、誤差電圧Veが上下して主スイッチ2のオン時間が調整される。
【0053】
E1=Vr1・(R21+R22)/R22 (3)
【0054】
誤差電圧Veには三角波電圧Vtと交差する範囲内に上限値が設けられており、この上限値において主スイッチ2は最大オン時間となる。以上がモード設定信号がONの場合の通常動作である。
【0055】
次に、負荷回路7が待機状態となってモード設定信号がOFFになると、抵抗627を介してベース電流が供給されたNPNトランジスタ628がオン状態となる。この結果、抵抗622と並列に抵抗629が接続された状態となる。ここで、抵抗629の抵抗値をR29とし、抵抗622と抵抗629との並列抵抗をRp=R22・R29/(R22+R29)とする。これにより、出力直流電圧Eoは第2の目標設定値E2=Vr1・(R21+Rp)/Rpに安定化する。この第2の目標設定値E2は待機状態における出力直流電圧Eoの許容上限値よりわずかに低く設定される。一方、整流手段3は逆流阻止動作となるので電力回生は行われなくなる。この結果、上昇しようとする出力直流電圧Eoが第2の目標設定値E2に安定化するように、誤差電圧Veは低下していく。
【0056】
電圧源630は第1の設定電圧Vx1を出力する。比較器631は誤差電圧Veと第1の設定電圧Vx1とを比較し、誤差電圧Veが第1の設定電圧Vx1を下回ると“H”を出力する。AND回路632には比較器631の出力とモード設定信号とが入力され、この時、AND回路632は“H”を出力し、RSフリップフロップ633をセットする。RSフリップフロップ633から出力される“H”レベルの信号は、PWM回路625の出力に関わらず、OR回路626を介して主スイッチ2をオフ状態にする。この結果、入力直流電源1からの電力供給が無くなる停止期間が形成される。
【0057】
停止期間において低下していく出力直流電圧Eoの分割電圧は、比較器635によって電圧源634の第2の基準電圧Vr2と比較される。第3の目標設定値E3は、次式(4)で表され、待機状態における出力直流電圧Eoの許容下限値よりわずかに高く設定される。
【0058】
E3=Vr2・(Rp+R21)/Rp (4)
【0059】
出力直流電圧Eoが第3の目標設定値E3を下回ると、比較器635の出力が“L”から“H”に反転する。この時、比較器635の出力とモード設定信号をインバータ636を介して入力されるOR回路637の出力も“H”となる。OR回路637の出力はRSフリップフロップ633をリセットする。この結果、RSフリップフロップ633の出力は“L”となり、主スイッチ2へ駆動電圧VgとしてPWM回路625の出力が供給される。
PWM回路625からは、出力直流電圧Eoを第2の目標設定電圧E2にするようにパルスが出力される。従って主スイッチ2はオンオフ動作を始め動作期間となる。
【0060】
主スイッチ2の動作期間は、出力直流電圧Eoを第2の目標設定電圧E2近くに達して、誤差電圧Veが低下して第1の設定電圧Vx1を下回るまで続く。Ve<Vx1になると再び停止期間となる。
以上のように、モード設定信号がOFFになって、誤差電圧Veが低下して第1の設定電圧Vx1を下回ると、動作期間と停止期間を繰返すバーストモード動作となる。
バーストモード動作の時に、負荷回路7の消費電力が増加すると、誤差電圧Veが第1の設定電圧Vx1まで至らなくなり、出力直流電圧Eoは第2の目標設定電圧E2に安定化されるように、主スイッチ2はオンオフ動作を続けるようになる。即ち、自動的にバーストモード動作から通常動作に復帰する。
第1の設定電圧Vx1によって決まる主スイッチ2の時比率をδx1とすると、誤差電圧Veが第1の設定電圧Vx1と等しくなる時の負荷回路7の消費電力Px1(特許請求の範囲における第1の所定値)は、インダクタ4のインダクタンスをLとすると次式(5)で表される。
【0061】
Px1=(Ei−Eo)2・δx12・T/(2L) (5)
【0062】
従って、モード設定信号がOFFになって、負荷回路7の消費電力がPx1以下になるとバーストモード動作となる。
尚、第1の設定電圧Vx1を固定値とすると、δx1も固定値となり、バーストモード動作に至る負荷回路7の消費電力Px1は入力直流電圧Eiが高いほど大きくなる。この入力直流電圧Eiによる消費電力Px1の変動を抑制するには、第1の設定電圧Vx1を入力直流電圧Eiが高いほど低くなるように補正すればよい。
【0063】
モード設定信号がONに戻ると、モード設定信号が“L”になる。“L”のモード設定信号が入力されるAND回路632の出力は“L”となり、この信号はRSフリップフロップ633のセット端子に入力される。一方、“L”のモード設定信号がインバータ636を介して入力されるOR回路637の出力は“H”となり、RSフリップフロップ633のリセット端子に入力される。従って、RSフリップフロップ633の出力は“L”に固定され、主スイッチ2はPWM回路625の出力によってオンオフ動作される通常動作に戻る。
以上のように、実施の形態4の電子機器の電源システムによれば、負荷回路7が待機状態になりモード設定信号がOFFとなっても、その消費電力が第1の所定値(Px1)以下にならないとバーストモード動作とならない。したがって、実施の形態4においては、バーストモード動作に移行する消費電力を設定することができるため、負荷回路7の待機状態における消費電力に自由度ができる。
【0064】
《実施の形態5》
次に、本発明に係る実施の形態5の電子機器の電源システムについて図8を参照しつつ説明する。図8は実施の形態5の電子機器の電源システムにおけるDC−DCコンバータの一部の構成を示す回路図である。実施の形態5の電子機器の電源システムにおいて、前述の図7に示した実施の形態4の電子機器の電源システムの構成と異なるところは、制御部6の三角波発生器624の構成の点である。実施の形態5の電子機器の電源システムは、負荷回路7が待機状態において、バーストモード動作には至らないが消費電流が少ない場合に、スイッチング周波数を低くしてスイッチング損失を低減する機能が設けられている。実施の形態5におけるその他の構成及び動作は、前述の実施の形態4の電子機器の電源システムの構成及び動作と実質的に同じであるため、以下の説明においては同様の構成要素には同一の符号を付与し、その説明は省略する。
【0065】
図8は実施の形態5の電源システムにおける、制御部6の三角波発振器624及びその周辺を示す回路図である。
図8において、PWM回路625に三角波電圧Vtを出力する三角波発生器624は、発振コンデンサ640と、この発振コンデンサ640を充電するPNPトランジスタ641と放電するNPNトランジスタ642とを有している。また、三角波発生器624は、第3の基準電圧Vr3を出力する電圧源643と、この電圧源643に直列に接続された抵抗644,645,646と、抵抗644と645との接続点の電圧と発振コンデンサ640の電圧とが入力される比較器647とを有している。
【0066】
三角波発生器624において、NPNトランジスタ649は比較器647の出力が抵抗648を介してベース端子に入力されて抵抗646を短絡する機能を持ち、比較器647の出力は抵抗650を介してNPNトランジスタ642のベース端子に入力される。PNPトランジスタ651は、PNPトランジスタ641とカレントミラーを構成しており、NPNトランジスタ652と抵抗653とによりPNPトランジスタ651に電流が流される。NPNトランジスタ652のベース端子にはNPNトランジスタ654のコレクタ端子が接続されており、NPNトランジスタ654のベース端子に接続された抵抗655を介してモード設定信号を受電する。NPNトランジスタ654のエミッタ端子には、PNPトランジスタ656のエミッタ端子が接続されている。電圧源657からの第4の基準電圧Vr4は、抵抗658を介してNPNトランジスタ652のベース端子に入力されている。PNPトランジスタ656のコレクタ端子は接地されており、PNPトランジスタ656のベース端子には誤差電圧Veが入力される。上記のように構成された三角波発振器624において、発振コンデンサ640の電圧が三角波電圧Vtとして出力される。
【0067】
次に、上記構成の三角波発振器624における動作を説明する。
まず、モード設定信号がONの時、NPNトランジスタ654はオフ状態である。電圧源657の第4の基準電圧Vr4で駆動されるNPNトランジスタ652のエミッタ端子には、NPNトランジスタ652のベース−エミッタ電圧をVdとすると、第2の設定電圧Vx2=Vr4−Vdが発生する。抵抗653の抵抗値をR53とすると、PNPトランジスタ641とPNPトランジスタ651のカレントミラーにはVx2/R53の電流が流れ、発振コンデンサ640を充電する。
【0068】
電圧源643の第3の基準電圧をVr3、抵抗644の抵抗値をR44、抵抗645の抵抗値をR45、抵抗646の抵抗値をR46とする。比較器647の出力が“L”の場合、NPNトランジスタ642はオフ状態にあるので、発振コンデンサ640は充電される。この時、NPNトランジスタ649もオフ状態にあるので、比較器647によって発振コンデンサ640の三角波電圧Vtと比較される電圧は、Eth=Vr3・(R45+R46)/(R44+R45+R46)となる。三角波電圧Vtが上昇して上記電圧Ethに達すると、比較器647の出力は反転して“H”となる。これにより、NPNトランジスタ642はオン状態になって発振コンデンサ640を放電する。同時に、NPNトランジスタ649もオン状態となるので、抵抗646が短絡され、比較器647によって発振コンデンサ640の三角波電圧Vtと比較される電圧は、Etl=Vr3・R45/(R44+R45)となる。三角波電圧Vtが下降してEtlに達すると、比較器647の出力は反転して“L”となる。
以上のように、発振コンデンサ640は充放電を周期的に繰り返し、三角波電圧Vtを出力する。
【0069】
モード設定信号がOFFになると、NPNトランジスタ654はオン状態になる。このため、整流手段3は電力回生動作をしなくなるので、インダクタ4を流れる電流は不連続となる。そして、主スイッチ2のオン時間が絞られるため、誤差電圧Veは低下する(小さくなる)。PNPトランジスタ656のエミッタ−ベース電圧をVdとすると、誤差電圧VeがVr4−Vd(=Vx2)、即ち誤差電圧Veが第2の設定電圧Vx2以下になると、NPNトランジスタ652のベース電圧も低下し、NPNトランジスタ652のエミッタ電圧は誤差電圧Veに等しくなる。従って、発振コンデンサ640を充電するPNPトランジスタ641とPNPトランジスタ651のカレントミラーにはVe/R53の充電電流が流れる。この充電電流は誤差電圧Veに比例し、誤差電圧Veが低いほど小さくなる。発振コンデンサ640が充放電される動作は、前述のモード設定信号がONの場合と同様である。
【0070】
モード設定信号がOFFの時、誤差電圧Veが第2の設定電圧Vx2以上の場合は、モード設定信号がONの場合と同様の周期で三角波電圧VtはEtlとEthの間を増減する。誤差電圧Veが第2の設定電圧Vx2以下の場合は、誤差電圧Veが低くなるほど発振コンデンサ640の充電時間が長くなり、三角波電圧Vtの発振周期も長くなる。即ち、オンオフ動作する主スイッチ2のスイッチング周波数は低周波化される。
実施の形態5において、誤差電圧Veが低下して、第1の設定電圧Vx1に到達してバーストモード動作に移行するのは、前述の実施の形態4と同様である。第2の設定電圧Vx2によって決まる主スイッチ2の時比率をδx2とすると、誤差電圧Veが第1の設定電圧Vx2と等しくなる時の負荷回路7の消費電力Px2(特許請求の範囲における第2の所定値)は、インダクタ4のインダクタンスをLとすると次式(6)で表される。
【0071】
Px2=(Ei−Eo)2・δx22・T/(2L) (6)
【0072】
従って、モード設定信号がOFFになって、負荷回路7の消費電力がPx2以下になると、スイッチング周波数は低周波化される。
尚、第2の設定電圧Vx2を固定値とすると、δx2も固定値となり、バーストモード動作に達する負荷回路7の消費電力Px2は、入力直流電圧Eiが高いほど大きくなる。この入力直流電圧Eiによる消費電力Px2の変動を抑制するには、第2の設定電圧Vx2を入力直流電圧Eiが高いほど低くなるように補正すればよい。
【0073】
以上のように、実施の形態5の電子機器の電源システムによれば、負荷回路7が待機状態になってモード設定信号がOFFとなっても、その消費電力が第1の所定値(Px1)以下にならないとバーストモード動作にならないといった実施の形態4の電子機器の電源システムの特徴に加え、バーストモード動作に至るまでは負荷回路7の消費電力が少ないほど主スイッチ2のスイッチング周波数が低くなるとう特徴を有する。このため、実施の形態5によれば、主スイッチ2のスイッチング損失は低減され、バーストモード動作に至るまでの電子機器全体の消費電力を低減することができるという効果が得られる。
尚、実施の形態4及び実施の形態5の電子機器の電源システムの説明においては、誤差電圧Veによって負荷回路の消費電力を検出する間接的な検出方法の例で説明したが、本発明は直接的な検出方法によるシステムも含まれる。直接的な検出方法によるシステムの例としては、平滑手段から負荷回路への経路に流れる電流を抵抗などによって直接検出する方法がある。しかし、待機状態のような消費電力が小さい状態では検出する電流値も小さく、直接的な検出が困難である場合が多い。従って、実施の形態4及び実施の形態5では間接的な検出を例にとって本発明の動作を説明した。
【0074】
尚、以上の実施の形態1から実施の形態5の電子機器の電源システムにおいては、DC−DCコンバータとして降圧コンバータを用いて説明してきたが、本発明はこれに限定されるものではなく、昇圧コンバータや昇降圧コンバータのような全てのスイッチングコンバータに本発明は適用できることはいうまでもない。
【0075】
【発明の効果】
以上、実施の形態において詳細に説明したところから明らかなように本発明は以下の効果を有する。
本発明は、バーストモード動作に代表されるような待機動作モードを有するDC−DCコンバータを持つ電子機器の電源システムにおいて、負荷回路の消費電力の急な変動に対応してDC−DCコンバータの出力直流電圧を制御することができる電源システムを提供することができる。
本発明の電子機器の電源システムは、バーストモード動作に代表されるような待機動作モードを有するDC−DCコンバータにおいて、負荷回路の急な消費電力の変動に伴うDC−DCコンバータの出力直流電圧の変動を確実に抑制することができる。
本発明に係る電子機器の電源システムは、実際に負荷回路が重くなる前に通常動作に復帰しているので、負荷回路が急に重くなっても速やかに対応することができ、DC−DCコンバータの出力直流電圧のアンダーシュートを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る実施の形態1における電子機器の電源システムの構成を示す回路図である。
【図2】本発明に係る実施の形態1における電子機器の電源システムの動作を示す波形図である。
【図3】本発明に係る実施の形態2における電子機器の電源システムの構成を示す回路図である。
【図4】本発明に係る実施の形態2における電子機器の電源システムの構成を示す回路図である。
【図5】本発明に係る実施の形態3における電子機器の電源システムの構成を示す回路図である。
【図6】本発明に係る実施の形態3における電子機器の電源システムの動作を示す波形図である。
【図7】本発明に係る実施の形態4における電子機器の電源システムの構成を示す回路図である。
【図8】本発明に係る実施の形態5における電子機器の電源システムの構成を示す回路図である。
【図9】従来の電子機器の電源システムの構成を示す回路図(a)及び動作波形図(b),(c)である。
【符号の説明】
1 直流入力電源
2 主スイッチ
3 整流手段
4 インダクタ
5 平滑手段
6 制御部
7 負荷
8 モード設定端子
Claims (6)
- スイッチとインダクタと整流手段と平滑手段と制御部とを有し、入力直流電圧が入力され、前記制御部により前記スイッチをオンオフ動作させることにより前記入力直流電圧を交流電圧に変換し、当該交流電圧を前記整流手段と前記平滑手段により整流平滑して出力直流電圧を出力するDC−DCコンバータと、
前記DC−DCコンバータの出力直流電圧が入力され、動作状態に比べて消費電力が小さい待機状態を有する負荷回路と、を有する電子機器の電源システムであって、
前記制御部は、負荷回路からのモード設定信号が入力されるモード設定端子を有し、
前記負荷回路は、待機状態となった後にOFFとなり、動作状態に戻る所定時間前にONとなるモード設定信号を前記モード設定端子へ出力し、
前記DC−DCコンバータは、前記モード設定端子の受電信号がONの時、前記出力直流電圧が第1の目標設定値(E1)となるように、前記スイッチのオン時間とオフ時間とを調整して周期的にオンオフ動作させる通常動作を行うよう構成され、且つ前記モード設定端子の受電信号がOFFの時、前記出力直流電圧が前記第1の目標設定値(E1)より高い第2の目標設定値(E2)と前記第1の目標設定値(E1)より低い第3の目標設定値(E3)との間を増減するように、前記スイッチを所定のオン時間とオフ時間により周期的にオンオフ動作させる動作期間と、常時オフ状態となる停止期間とを繰返すバーストモード動作を行うよう構成された電子機器の電源システム。 - 待機状態にある前記負荷回路からのモード設定信号がONになった後から、前記負荷回路が動作状態に戻るまでの期間として設定される前記所定時間は、前記平滑手段の有する静電容量(C)と、前記第1の目標設定値(E1)と前記第2の目標設定値(E2)の電位差との積を、待機状態での負荷回路での消費電流(I)で除した時間{ C・(E2−E1)/I} 以上に設定されている請求項1記載の電子機器の電源システム。
- 前記整流手段は、整流スイッチを有する同期整流回路から構成され、
前記制御部は、モード設定信号がONの時、通常動作とする機能に加え、前記整流スイッチを前記スイッチと交互にオンオフ動作させる機能を有し、
前記モード設定信号がOFFの時、バーストモード動作とする機能に加え、前記整流スイッチを整流方向に逆流する電流を阻止または抑制する機能を有する請求項1記載の電子機器の電源システム。 - 前記制御部は、前記整流手段の逆流制限値を設定できる逆流制限回路を有し、
モード設定信号がONになると、前記逆流制限値を最小値から最大値へ経時的に変化させ、モード設定信号がOFFになると、前記逆流制限値を最大値から最小値へ経時的に変化させる機能を有する請求項3記載の電子機器の電源システム。 - 前記制御部は、モード設定信号がOFFの時、前記負荷回路の消費電力を直接あるいは間接的に検出する機能を有し、前記負荷回路の消費電力が第1の所定値以下になると、バーストモード動作に移行する機能を有する請求項1記載の電子機器の電源システム。
- 前記制御部は、モード設定信号がOFFの時、前記負荷回路の消費電力が第2の所定値以下になると、前記負荷回路の消費電力が小さくなるほど前記スイッチのスイッチング周期を延長し、前記負荷回路の消費電力が第2の所定値以下になると、バーストモード動作に移行する機能を有する請求項5記載の電子機器の電源システム。
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