JP3623853B2 - 大型低温ガス精製器 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、大型低温ガス精製器に関し、例えば、ヘリウムガスや水素ガス等の低沸点ガスを精製するための大型低温ガス精製器に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、ヘリウムや水素ガス等を精製するための大型低温ガス精製器は、不純物を含む被精製ガスを冷却するための冷媒液浸漬型熱交換器と、不純物を吸着除去するため吸着,再生を繰り返す吸着筒とを一組として収容したコールドボックスを複数系列設置する構成になっていた。
【0003】
図2は、従来の大型低温ガス精製器の一例を示す系統図であって、不純物として窒素や酸素等、主に空気成分を含む不純ヘリウムガスを精製するための大型ヘリウム精製器である。
【0004】
この大型ヘリウム精製器は、導入される不純ヘリウムガスと精製されて導出する高純ヘリウムガスとを熱交換させる熱交換器1a,1bと、冷却された不純ヘリウムガスを冷媒である液体窒素により更に冷却する冷媒液浸漬型熱交換器2a,2bと、内部に充填した吸着剤により不純ヘリウムガス中の不純物を吸着除去する吸着筒3a,3bとを収容した2個のコールドボックス4a,4bと、液体窒素を貯蔵する液体窒素貯槽5と、液体窒素を気化させて吸着筒3a,3bの再生用窒素ガスを得るための蒸発器6と、再生用窒素ガスを昇温するヒーター7と、吸着筒3a,3bに吸着された不純物を加温再生により脱着させて系外に吸引除去する真空ポンプ8と、これらの機器を接続する配管及び弁等とにより構成されている。
【0005】
以下、図2において、コールドボックス4a側が再生工程、コールドボックス4b側が吸着工程の場合について説明する。例えば、図示しないヘリウム液化装置における液化プロセス段階で酸素,窒素等の不純物が混入した不純ヘリウムガスは、ヘリウム液化装置等から抜き出され、乾燥器等の設備で予め低温で固化する成分、例えば水や炭酸ガス等が除去された後、この大型ヘリウム精製器に導入され、コールドボックス4b側の入口弁11b,熱交換器1b,冷媒液浸漬型熱交換器2bを経て液体窒素温度レベルに冷却された後、吸着筒3bに導入される。そして、該吸着筒3bの内部に充填された吸着剤により不純物が吸着除去されて高純ヘリウムガスとなり、熱交換器1bで前記不純ヘリウムガスと熱交換を行い、常温となって出口弁12bから導出し、ヘリウム液化装置に戻される。
【0006】
なお、吸着工程中、吸着筒3bの外側に付設されたコイル9bには、吸着筒3bでの吸着熱や外部からの侵入熱に見合う寒冷を補償するために若干量の液体窒素が、例えば、冷媒液浸漬型熱交換器2bに設けられた図示しない液面調節計で制御されて液体窒素供給弁13bから供給される。
【0007】
一方、コールドボックス4a側では,吸着筒3a内の吸着剤を再生するため、ヘリウムガス系の入口弁11a,出口弁12a及び液体窒素供給弁13aを閉じるとともに、冷媒液浸漬型熱交換器2aの液抜き弁14aを開いて内部の液体窒素を系外に放出する。次いで、弁15aを開いてヘリウムガス系内の残圧を系外に放出した後、弁16aを開き、液体窒素貯槽5からの液体窒素を蒸発器6で気化し、ヒーター7により常温以上に昇温した加熱窒素ガスを弁16a,吸着筒3a,冷媒液浸漬型熱交換器2a,弁15aを経由して流し、吸着筒3a内の吸着剤の加熱再生を行う。これが終わると、弁15a,弁16aを閉じて真空排気弁17aを開き、真空ポンプ8を起動してヘリウムガス系内の真空排気を行い、系内の窒素を主体とする不純物を系外に排出する。この操作は、不純物除去を促進するために、真空排気弁17aを一旦閉じ、不純ヘリウムガスの入口弁11aを開いて吸着筒3a内を不純ヘリウムガスで置換した後、入口弁11aを閉じ、真空排気弁17aを開いて再び真空排気するという置換真空排気操作を複数回繰り返し行う。
【0008】
置換真空排気を行って不純物除去が終了すると、次の吸着工程に備えるために、吸着筒3aの冷却を開始する。すなわち、液体窒素供給弁13a,18aを開いて液体窒素貯槽5から液体窒素を導入し、液体窒素供給弁18a経由で冷媒液浸漬型熱交換器2a内の冷却及び液溜めを行うとともに、吸着筒3aの外側に付設されたコイル9aに液体窒素供給弁13aを経由して液体窒素を流し、吸着筒3aの冷却を行う。冷却途上でガス化した両経路の窒素ガスは、弁19aから大気に放出される。
【0009】
そして、冷媒液浸漬型熱交換器2a内の液溜めと、吸着筒3aの冷却温度が規定値になると、ヘリウムガス系統を切換える。すなわち、入口弁11a及び出口弁12aを開くとともに入口弁11b及び出口弁12bを閉じることにより、今度はコールドボックス側4a側が吸着工程,コールドボックス4b側が再生工程に入る。この工程を交互に繰返して連続的な精製運転を行うようにしている。なお、図2において、両系統の同一作用の弁には、同一数字にa,bの符号を付してある。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上述のように、従来の大型低温ガス精製器では、吸着筒3a,3bの再生に先立って冷媒液浸漬型熱交換器2a,2b内に液溜めされている多量の液体窒素が全量放出され、また、加熱再生工程時には、加熱用ガスとして液体窒素貯槽5から導入された窒素ガスが使用され、循環使用することなく系外へ排出されている。さらに、吸着筒を予冷する冷却工程時には、再び冷媒液浸漬型熱交換器2a,2b内への多量の液溜めが必要であり、冷媒液体窒素の消費量が多くなるという欠点があった。加えて、加熱用ガスとして窒素を使用しているため、再生後に行う真空排気で系外に吸引除去する系内ガスは、その殆んどが窒素成分であるため、置換真空排気回数が多くなり、置換真空排気のため系外へ逸散する被精製ガスの量が多くなるとともに、真空排気に時間がかかるという不都合があった。
【0011】
そこで本発明は、冷媒液体窒素の消費量を低減するとともに、置換真空排気で逸散する被精製ガス量が低減でき、また、真空排気時間を短縮することができる大型低温ガス精製器を提供することを目的としている。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、本発明の大型低温ガス精製器の第1は、被精製ガス中の不純物を低温吸着により除去する大型低温ガス精製器において、常温の被精製ガスを冷媒窒素により冷却する、被精製ガス導入経路に設けられた第一熱交換器と、複数個を切換え使用して被精製ガス中の不純物を吸着除去する吸着筒と、前記第一熱交換器を導出した被精製ガスを分岐して前記複数の吸着筒に導入する分岐経路と、前記吸着筒を冷媒窒素で冷却するコイルと、前記吸着筒に導入される低温被精製ガスを該吸着筒の前段で冷媒窒素により冷却する、各分岐経路に設けた第二熱交換器とを備え、前記第一熱交換器は、温熱交換部と冷熱交換部とを有し、冷熱交換部は、冷媒である液体窒素をサーモサイフォン効果で循環させて被精製ガスを冷却することを特徴としている。
【0013】
また、本発明の第2は、被精製ガス中の不純物を低温吸着により除去する大型低温ガス精製器において、常温の被精製ガスを冷媒窒素により冷却する、被精製ガス導入経路に設けられた第一熱交換器と、複数個を切換え使用して被精製ガス中の不純物を吸着除去する吸着筒と、前記第一熱交換器を導出した被精製ガスを分岐して前記複数の吸着筒に導入する分岐経路と、前記吸着筒を冷媒窒素で冷却するコイルと、前記吸着筒に導入される低温被精製ガスを該吸着筒の前段で冷媒窒素により冷却する、各分岐経路に設けた第二熱交換器とを備え、前記吸着筒の精製ガス出口経路から分岐し、ブロワー及びヒーターを経由して該吸着筒の被精製ガス入口経路に接続する再生ガス循環経路を設けるとともに、該再生ガス循環経路のブロワー入口側ガスとブロワー出口側ガスとを熱交換させてブロワー入口側ガスを昇温する再生用熱交換器を設けたことを特徴としている。また、第2の発目において、前記第一熱交換器が温熱交換部と冷熱交換部とを有し、冷熱交換部は、液体窒素をサーモサイフォン効果で循環させて被精製ガスを冷却することを特徴としている。さらに、これらの発明において、前記吸着筒の精製ガス出口経路から分岐し、他の吸着筒の被精製ガス入口経路に接続する予冷経路を設けたこと、前記被精製ガスが、ヘリウムガス又は水素ガスであることを特徴としている。
【0014】
上記構成によれば、吸着筒の切換え毎に、冷媒液浸漬型熱交換器に液体窒素を液溜めしたり、液溜めした液体窒素を放出する必要がないため、冷媒液体窒素の消費量を低減することができる。
【0015】
また、再生ガス循環経路を設けることにより、加熱再生用ガスとして窒素に代えて吸着筒内に残る被精製ガスを循環使用することができ、再生後の置換真空排気回数を少なくすることができるので、置換真空排気で逸散する被精製ガス量を低減できるとともに、真空排気時間を短縮することができる。さらに、予冷経路を設けたことによっても、冷媒液体窒素の消費量を低減することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を、図1を参照してさらに詳細に説明する。なお、前記従来例と同一要素のものには同一符号を付して、その詳細な説明は省略する。また、両系統の同一作用の弁及び経路には、同一数字にa,bの符号を付す。
【0017】
図1は、本発明の大型低温ガス精製器をヘリウムガスの精製に用いた一例を示す系統図であって、この大型ヘリウムガス精製器は、導入される常温の不純ヘリウムガスを、複数個を切換え使用する吸着筒3a,3bに導入する前に、液体窒素温度レベルまで冷却するための温熱交換部21と冷熱交換部22とからなる第一熱交換器23を収容した第一コールドボックス24と、吸着筒3a,3b及び該吸着筒3a,3bの前段に設けられた第二熱交換器25a,25bをそれぞれ1組として収容する複数の第二,第三コールドボックス26a,26bと、各吸着筒3a,3bの精製ガス出口経路27a,27bから分岐し、他の吸着筒3a,3bの被精製ガス入口経路28a,28bに接続する予冷経路29a,29b及び予冷弁30a,30bから形成される吸着筒予冷用の経路と、吸着筒3a,3bの残圧を各精製ガス出口経路27a,27bから経路31a,31bに分岐し、分岐したガスを昇圧するブロワー32、昇温するヒーター33及びブロワー32の入口側ガスと出口側ガスとを熱交換させて入口側ガスを昇温する再生用熱交換器34を経た後、経路35a,35bを介して各被精製ガス入口経路28a,28bに接続する再生ガス循環経路36と、従来同様の液体窒素貯槽5、蒸発器6、真空ポンプ8及びこれら機器を接続する経路や弁とにより構成されている。
【0018】
前記第一熱交換器23は、一体成形された形式でもよいが、本形態例では、温熱交換部21と冷熱交換部22とを別個に形成し、冷熱交換部22は、液体窒素溜37の液体窒素をサーモサイフォン効果で循環させることにより、導入経路38から大型低温ガス精製器の系内に導入される不純ヘリウムガスを冷却するように構成している。
【0019】
以下、本形態例の大型ヘリウムガス精製器によりヘリウムガスを精製する操作に基づいて説明する。図示しないヘリウム液化装置からの不純ヘリウムガス、例えば不純物含有量が1000ppm程度の不純ヘリウムガスは、従来と同様に低温時に固化する水分等の成分が予め除去された後、導入経路38から第一コールドボックス24内に導入される。第一コールドボックス24内に導入された不純ヘリウムガスは、吸着筒3a,3bに導入する前の不純ヘリウムガスを共通して冷却するための第一熱交換器23の温熱交換部21で、精製されて帰還する低温の高純ヘリウムガス及び液体窒素溜37から供給される低温窒素ガスと熱交換して冷却され、続いて冷熱交換部22で、液体窒素溜37からの液体窒素と熱交換を行い、液体窒素の顕熱と潜熱とにより液体窒素温度レベルまで冷却される。
【0020】
上記冷熱交換部22における液体窒素は、不純ヘリウムガスを冷却することにより自身は昇温して液体窒素の一部がガス化し、このガスが液体窒素に揚力を与えるサーモサイフォン効果を発生し、このサーモサイフォン効果の作用により、液体窒素溜37内の液体窒素が、経路37i,冷熱交換部22,経路37oを流れて液体窒素溜37に循環する。そして、この循環流れにおいて、冷熱交換部22で不純ヘリウムガスを冷却することにより、液体窒素の一部がガス化して飽和温度の窒素ガスとなり、この窒素ガスが、経路37gを介して前記温熱交換部21に供給され、該温熱交換部21に導入される常温の不純ヘリウムガスに常温までの顕熱に相当する寒冷を与えて自身は昇温し、経路39,弁40を経て系外に放出される。
【0021】
このとき、系外に放出される上記窒素ガスに相当する量の液体窒素は、液体窒素貯槽5から経路41を経て、例えば、液体窒素溜37に設けられた図示しない液面調節計で制御される液体窒素供給弁42を経由して液体窒素溜37に補給される。
【0022】
このように、第一熱交換器23の冷熱交換部22に、サーモサイフォン熱交換器を採用し、温熱交換部21を形成する熱交換器と分けて構成することにより、一体で構成した場合に発生し易い冷媒側の液体窒素の沸騰蒸発に起因する圧力変動や、温熱交換部への液滴同伴による熱交換温度の不安定を防止することができ、液体窒素の顕熱と潜熱とを効率的かつ有効に利用して安定した運転をすることができる。
【0023】
第一熱交換器23の冷熱交換部22で液体窒素温度レベルに冷却された不純ヘリウムガスは、第一コールドボックス24から低温不純ガス導入経路43に導出された後、吸着工程を行っている吸着筒に導入される。以下、吸着筒3bが吸着工程、吸着筒3aが再生工程を行っているとして説明を進める。
【0024】
不純ヘリウムガスは、低温不純ガス導入経路43から分岐経路43b側に流れ、入口弁44bから被精製ガス入口経路28bを経て第三コールドボックス26b内の第二熱交換器25bに導入され、コイル9bから経路45bに導出される少量の液体窒素と熱交換して冷却される。
【0025】
上記第二熱交換器25bで冷却された低温不純ヘリウムガスは、筒外周に付設されたコイル9bを流れる少量の液体窒素により冷却されている吸着筒3bに導入され、筒内に充填されている吸着剤により不純物が吸着除去される。これにより、例えば、不純物含有量1ppm以下の高純ヘリウムガスとなり、吸着筒3bから精製ガス出口経路27bに導出される。
【0026】
吸着筒3bが吸着工程にあるときに前記コイル9bに供給される液体窒素は、第二熱交換器25b出口の低温不純ヘリウムガスの温度を測定する温度計(図示せず)により制御される液体窒素供給弁13bで流量調節され、液体窒素貯槽5から液体窒素経路46,46bを経て所定流量で供給される。
【0027】
上記コイル9b及び第二熱交換器25bを流れる液体窒素は、前記低温不純ヘリウムガスが流れる低温不純ガス導入経路43,分岐経路43b、入口弁44b、被精製ガス入口経路28bや第三コールドボックス26bにおける侵入熱及び吸着筒3bでの吸着熱を補償している。
【0028】
精製ガス出口経路27bを流れて第三コールドボックス26bを導出した高純ヘリウムガスは、出口弁47bから分岐経路48b,高純ガス導出経路48を経て第一コールドボックス24に戻り、第一熱交換器23の温熱交換部21で、前記導入経路38から導入される常温の不純ヘリウムガスと熱交換してこれを冷却し、自身は常温まで昇温して第一コールドボックス24を導出し、常温の高純ヘリウムガスとなって戻り経路49からヘリウム液化装置に戻される。
【0029】
一方、再生工程を行っている吸着筒3a側では、まず、入口弁44a,出口弁47aが閉じられ、ヘリウムガス系統を吸着筒3b側系列から切放す。同時に、液体窒素供給弁13aも閉じ、放出弁(図示せず)を介してコイル9a内の液体窒素を系外に放出する。したがって、吸着工程から再生工程に切換える際に放出される液体窒素は、コイル9a内に残る量のみであり、この量は、従来の冷媒液浸漬式熱交換器に液溜めされて放出されていた量に比較してはるかに少なく、液体窒素の消費量を大幅に低減することができる。
【0030】
次いで、吸着筒3aの精製ガス出口経路27aから分岐した経路31aの循環弁50a、あるいは図示しない放出弁を開いて系内の低温ヘリウムガスを放出し、例えば、吸着筒3aの吸着筒入口部51aに設けた圧力計で検出した系内圧力が所定圧力になるまで系内を減圧する。このとき、放出時間と共に低下するヘリウム系内の圧力は、再生ガス循環経路36に設けられた圧力調節計(PIC)52により制御される圧力調節弁53によって所定圧力に調節,維持される。
【0031】
吸着筒3a内の残圧が規定値、例えば0.1kg/cmGまで低下したら、吸着筒加熱弁54aを開き、ブロワー32及びヒーター33を起動する。これにより、再生ガス循環経路36が確立され、吸着筒3a内に残ったヘリウムガスによる吸着筒3a内の吸着剤の加熱再生工程が開始される。すなわち、吸着筒3a内のヘリウムガスは、筒出口側の精製ガス出口経路27a,循環弁50aを経て再生ガス循環経路36内に入り、再生用熱交換器34からブロワー32,ヒーター33を経て経路35aに至り、吸着筒加熱弁54aを通って吸着筒入口部51aから吸着筒3a内に流入し、再び精製ガス出口経路27aに導出されてこの経路を循環する。
【0032】
この循環中、再生用熱交換器34では、吸着筒3aから再生ガス循環経路36に導出した低温のヘリウムガスを、ブロワー32で昇圧する際に発生する圧縮熱により昇温したヘリウムガスと熱交換させて昇温する。また、ブロワー32では、循環経路の流路抵抗分の圧力が付与され、温度調節計(TIC)55により制御されるヒーター33では、再生のための所定温度、例えば50℃に加温される。
【0033】
なお、再生工程の初期には、吸着筒3aから導出するヘリウムガスは、略液体窒素温度レベルの低温であるから、これを昇温するため、図1に破線で示すように、前記常温の不純ヘリウムガスが導入される導入経路38に循環ガス加熱経路56を接続するとともに、流路切換弁57c,57dを設け、再生工程初期、例えば吸着筒3aから導出した循環ヘリウムガスの温度が10℃程度に昇温するまでの間、この大型ヘリウムガス精製器に導入される常温の不純ヘリウムガスを、弁57cを閉じて弁57dを開くことにより循環ガス加熱経路56に流し、再生用熱交換器34に導入して低温の循環ヘリウムガスを冷却するようにしてもよい。これにより、再生用熱交換器34の低温化が防止できるとともに、導入される常温の不純ヘリウムガスが再生用熱交換器34で冷却された分、第一熱交換器23における冷媒液体窒素の消費量を低減できる。
【0034】
吸着筒3aにおける加熱再生工程の進行によって再生ガス循環経路36全体の温度が上昇し、これに伴って系内の圧力が上昇するが、この場合は、圧力調節計52の指示により圧力調整弁53が開いて系内のガスが系外に放出される。逆に万一、例えば操作ミス等により系内の圧力が規定値以下に下がった場合は、圧力調節計52の指示により窒素ガス供給弁58が開き、液体窒素貯槽5内の液体窒素が蒸発器6で蒸発した後に、バックアップ用窒素ガスとして再生ガス循環経路36に導入される。これにより、系内は常に所定圧力範囲に維持されることになる。
【0035】
また、ヒーター33の入口ガスは、再生用熱交換器34で低温の循環ヘリウムガスと熱交換しているため、吸着筒3a内の温度上昇、即ち循環ヘリウムガスの温度の上昇と共にヒーター33の負荷が減少し、ヒーター33の消費電力を削減することができる。
【0036】
吸着筒3aの加熱再生が、例えば、吸着筒3aの吸着筒出口部59aに設けた温度計(図示せず)が規定温度以上を検知することにより終了すると、循環弁50a及び吸着筒加熱弁54aを閉じた後、吸着筒3a内の吸着剤が吸着した不純物を系外に排出するため、真空排気弁17aを開いて真空ポンプ8を起動し、吸着筒3a内の真空排気を行って不純物を排気経路60から系外に放出する。
【0037】
この場合、本形態例では、再生ガスとして吸着筒3a内に残ったヘリウムガスを使用しており、従来のように窒素を使用しないので、加熱再生工程での窒素をゼロとすることができ、冷媒液体窒素の消費量を低減することができるだけでなく、真空排気工程では、加熱再生用として窒素ガスを使用した場合に比べ、吸着筒3a内から真空排気するガス中の不純物成分である窒素成分が少ないので、置換真空排気回数も少なくてすみ、これにより、置換真空排気によるヘリウムガスの逸散量を少なくすることができるとともに、真空排気に要する時間を短縮することができる。
【0038】
真空排気による不純物の除去工程の終了判定は、導入される不純ヘリウムガス中の不純物の含有量,吸着圧力,吸着工程時間等から、再生時に脱着する不純物の絶対量を算出し、これに基づいて再生圧力と真空排気圧力との差から、計算で求められた真空排気の回数で行うこともできるし、また、系内ガスの分析を行って不純物量を確認してもよい。
【0039】
不純物が除去された吸着筒3aは、次いで冷却工程に入る。この冷却工程では、吸着筒3aの精製ガス出口経路27aから分岐した予冷経路29aの予冷弁30aを開き、吸着筒3aの入口弁44aを僅かに開くとともに、吸着筒3bの入口弁44bを僅かに閉じ、両入口弁44a,44bの開度を調節して低温不純ガス導入経路43から導入される液体窒素温度レベルの低温不純ヘリウムガスの一部を分岐経路43aに分岐し、被精製ガス入口経路28a及び第二熱交換器25aを経由して吸着筒3aに導入し、内部の吸着剤を冷却して精製ガス出口経路27aに導出し、予冷経路29aから吸着筒3bに導入される被精製ガス入口経路28bの不純低温ヘリウムガスに合流させる。これにより、吸着筒3a内の吸着剤が、液体窒素温度レベルの低温不純ヘリウムガスにより冷却される。
【0040】
一方、同時に、液体窒素供給弁13aと吸着筒予冷用窒素出口弁61aとを開き、吸着筒3aの外側に付設されたコイル9aに、液体窒素貯槽5からの液体窒素を液体窒素経路46,液体窒素供給弁13a及び液体窒素経路46aを経由して導入し、吸着筒3aを間接的に冷却する。この冷却工程中、コイル9aを流れる液体窒素は、気化して昇温するので、コイル9aを導出した後、窒素ガス排気経路62aから吸着筒予冷用窒素出口弁61aを介して系外に放出し、第二熱交換器25aが暖まらないようにする。
【0041】
この冷却工程により、吸着筒3aが所定の温度、例えば吸着筒3aの出口部59aに設けた図示しない温度計が所定温度以下を検知して予冷が完了すると、吸着筒3a,3bの切換えを行う。すなわち、吸着筒3a側の入口弁44a,出口弁47aを開き、吸着筒3b側の入口弁44b,出口弁47bを閉じるとともに、予冷経路29aの予冷弁30a及び吸着筒予冷用窒素出口弁61aを閉じることにより、吸着筒3aが吸着工程に、吸着筒3bが再生工程に切換えられ、ヘリウムガスの精製運転が連続的に行われる。
【0042】
このように、吸着筒3aを予冷するための冷却工程においても、吸着筒3a及び内部の吸着剤の冷却を、液体窒素温度レベルの低温不純ヘリウムガスで行うようにしたから、従来のように冷媒液浸漬式熱交換器に多量の液体窒素を液溜めする必要がないので、冷媒液体窒素の消費量を大幅に減少させることができる。
【0043】
なお、上記形態例では、第一熱交換器23を、温熱交換部21を形成する熱交換器と、液体窒素溜37に組合わせて設けた冷熱交換部22を形成するサーモサイフォン熱交換器とに分割した構成の場合について説明したが、液体窒素溜37を設けずに、第一熱交換器23を一体的な構成とし、液体窒素供給弁42から供給される液体窒素を冷端側から、また、低温の高純ヘリウムガスを冷端側又は中間部から導入するようにしてもよい。
【0044】
また、液体窒素及び液体窒素温度レベルの低温のヘリウムガスが流れる経路の配管や弁は、これらをそれぞれ断熱構造として形成したり、各コールドボックス内等に収容したりするようにしてもよく、大きさの制限範囲内で各コールドボックスを一体化することもできる。
【0045】
さらに、第二熱交換器25a,25bへの液体窒素は、コイル9a,9bを介して導入することなく、液体窒素貯槽5から液体窒素経路46を経由して導入される液体窒素を、適当な分岐経路及び弁を設けて直接導入するようにしてもよい。
【0046】
また、本発明の大型低温ガス精製器は、被精製ガスとしてヘリウムや水素に限らず、液体窒素より低沸点のガス、例えばネオン等にも適用することができ、また、冷媒液体窒素は、圧力を高くすればその温度も高くなるので、冷媒液体窒素の圧力を高くし、被精製ガスの固化温度より高い温度に設定して使用すれば、アルゴンや酸素等の精製にも適用することができる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の大型低温ガス精製器によれば、吸着筒や導入ガスを冷却するための冷媒液体窒素の消費量を大幅に低減することができる。また、再生ガス循環経路を設けたことにより、工程切換え時に吸着筒内に残るヘリウムガスを再生用ガスとして循環使用することができるので、加熱ガスとしての窒素が不要となり、この点でも窒素の消費量を低減することができる。さらに、再生後の置換真空排気回数を減らすことができるので、置換真空排気工程で逸散する被精製ガスの量を低減することができるとともに、真空排気時間を短縮することもできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の大型低温ガス精製器の一形態例を示す系統図である。
【図2】従来の大型低温ガス精製器の一例を示す系統図である。
【符号の説明】
3a,3b…吸着筒、5…液体窒素貯槽、6…蒸発器、8…真空ポンプ、9a,9b…コイル、13a,13b…液体窒素供給弁、17a,17b…真空排気弁、21…温熱交換部、22…冷熱交換部、23…第一熱交換器、24…第一コールドボックス、25a,25b…第二熱交換器、26a…第二コールドボックス、26b…第三コールドボックス、27a,27b…精製ガス出口経路、28a,28b…被精製ガス入口経路、29a,29b…予冷経路、30a,30b…予冷弁、31a,31b…経路、32…ブロワー、33…ヒーター、34…再生用熱交換器、35a,35b…経路、36…再生ガス循環経路、37…液体窒素溜、37g,37i,37o…経路、38…導入経路,39…経路、40…弁、41…経路、42…液体窒素供給弁、43…低温不純ガス導入経路、43a,43b…分岐経路、44a,44b…入口弁、45a,45b…経路、46,46a,46b…液体窒素経路、47a,47b…出口弁、48…高純ガス導出経路、48a,48b…分岐経路、49…戻り経路、50a,50b…循環弁、51a,51b…吸着筒入口部、52…圧力調節計(PIC)、53…圧力調節弁、54a,54b…吸着筒加熱弁、55…温度調節計(TIC)、56…循環ガス加熱経路、57c,57d…流路切換弁、58…窒素ガス供給弁、59a,59b…吸着筒出口部、60…排気経路、61a,61b…吸着筒予冷用窒素出口弁、62a,62b…窒素ガス排気経路

Claims (5)

  1. 被精製ガス中の不純物を低温吸着により除去する大型低温ガス精製器において、常温の被精製ガスを冷媒窒素により冷却する、被精製ガス導入経路に設けられた第一熱交換器と、複数個を切換え使用して被精製ガス中の不純物を吸着除去する吸着筒と、前記第一熱交換器を導出した被精製ガスを分岐して前記複数の吸着筒に導入する分岐経路と、前記吸着筒を冷媒窒素で冷却するコイルと、前記吸着筒に導入される低温被精製ガスを該吸着筒の前段で冷媒窒素により冷却する、各分岐経路に設けた第二熱交換器とを備え、前記第一熱交換器は、温熱交換部と冷熱交換部とを有し、冷熱交換部は、冷媒である液体窒素をサーモサイフォン効果で循環させて被精製ガスを冷却することを特徴とする大型低温ガス精製器。
  2. 被精製ガス中の不純物を低温吸着により除去する大型低温ガス精製器において、常温の被精製ガスを冷媒窒素により冷却する、被精製ガス導入経路に設けられた第一熱交換器と、複数個を切換え使用して被精製ガス中の不純物を吸着除去する吸着筒と、前記第一熱交換器を導出した被精製ガスを分岐して前記複数の吸着筒に導入する分岐経路と、前記吸着筒を冷媒窒素で冷却するコイルと、前記吸着筒に導入される低温被精製ガスを該吸着筒の前段で冷媒窒素により冷却する、各分岐経路に設けた第二熱交換器とを備え前記吸着筒の精製ガス出口経路から分岐し、ブロワー及びヒーターを経由して該吸着筒の被精製ガス入口経路に接続する再生ガス循環経路を設けるとともに、該再生ガス循環経路のブロワー入口側ガスとブロワー出口側ガスとを熱交換させてブロワー入口側ガスを昇温する再生用熱交換器を設けたことを特徴とする大型低温ガス精製器。
  3. 前記第一熱交換器は、温熱交換部と冷熱交換部とを有し、冷熱交換部は、冷媒である液体窒素をサーモサイフォン効果で循環させて被精製ガスを冷却することを特徴とする請求項2記載の大型低温ガス精製器。
  4. 前記吸着筒の精製ガス出口経路から分岐し、他の吸着筒の被精製ガス入口経路に接続する予冷経路を設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の大型低温ガス精製器。
  5. 前記被精製ガスが、ヘリウムガス又は水素ガスであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の大型低温ガス精製器。
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