JP3623587B2 - 真空蒸着装置およびその真空蒸着装置を用いた真空蒸着方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、真空槽内に設けられた蒸着源で蒸着材料を加熱して気化させ、基板に付着させて薄膜を形成する真空蒸着装置およびその真空蒸着装置を用いた真空蒸着方法に関する。
【0002】
【背景技術】
従来より、真空蒸着は薄膜の作製法として最も広く用いられている。
真空蒸着を行う真空蒸着装置は、真空槽内に蒸着材料を加熱して気化させる蒸着源を備え、この蒸着源の上方に対向配置された基板の下面に蒸着材料の蒸発分子を付着させて成膜を行う。
一般に、蒸着源の直上または基板の直下には、不純物の蒸発物を遮断する開閉可能な可動シャッタが設けられている。蒸着の初期には蒸着材料に含まれる不純物等の蒸発物が多く発生するが、この可動シャッタを閉状態とすることで薄膜への不純物の混入が防止されている。
【0003】
このような真空蒸着装置により形成される薄膜は、金属や有機物等の各種蒸着材料により構成されている。
蒸着材料の中でもとくに有機物は、分解しやすいうえに、沸点が低く、真空中では室温でも蒸発が見られるため、成膜中に真空槽の壁面等に付着した分解物が再蒸発して薄膜に混入することがあり、純度の高い薄膜を得るのが困難であった。
【0004】
このような不具合を解消するものとして、基板と蒸着源との間に冷却された筒状のトラップを介在させる構成(特開平5−021422号公報参照)が提案されている。これによれば、真空槽の壁面から基板に向かって斜めに入射する再蒸発分子をトラップにより捕捉できるため、不純物の再蒸発分子の基板への付着を防止できる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、前述したトラップはその全体が冷却されているため、トラップ内を通過する不純物ではない蒸発分子でも、トラップに衝突するものやトラップ近傍を飛行するものは捕捉されてしまい、基板まで到達する蒸発分子が減少し、蒸着効率が著しく低下するという問題がある。
また、蒸着材料の種類に拘わらず、蒸発分子は、その温度より低温な真空槽の壁面等に付着しやすいため、蒸着材料に対して基板に付着する蒸着物の量が少なく、蒸着効率の向上が望まれていた。
【0006】
本発明の目的は、不純物の薄膜への混入を防止するとともに蒸着効率を高められる真空蒸着装置およびその真空蒸着装置による真空蒸着方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明の真空蒸着装置は、真空槽内に設けられた蒸着源で蒸着材料を加熱してこの蒸着源と対向配置された基板に蒸着させる真空蒸着装置であって、真空槽内の基板と蒸着源との間には、少なくとも二重の筒体から構成される遮蔽部が設けられ、遮蔽部の外側の筒体は-269℃以上室温以下に維持されるとともに内側の筒体は70℃以上600℃以下に維持され、前記遮蔽部の外側の筒体と内側の筒体との間には、輻射熱を遮断する筒体が配置されていることを特徴とする。
【0008】
本発明では、少なくとも二重の筒体から構成される遮蔽部の外側の筒体を低温にするとともに内側の筒体を高温にしたので、外側の筒体で不純物を捕捉できるようになるうえに、内側の筒体への蒸発物の付着を防止できるようになる。すなわち、真空槽の壁面等に付着した不純物が再蒸発し、その再蒸発分子が基板に向かって飛行しても、-269℃以上室温以下に冷却された外側の筒体で捕捉できるようになり、不純物の薄膜への混入を確実に防止できる。ここで、外側の筒体が-269℃未満では冷却が困難になり、一方、室温より高温だと不純物を確実に捕らえることができない。
さらに、遮蔽部の外側の筒体と内側の筒体との間には、輻射熱を遮断する筒体が配置されているので、外側の筒体よりも高温な内側の筒体からの輻射熱を遮断できるようになり、外側および内側の各筒体の温度維持を一層確実かつ円滑に行うことができる。
【0009】
また、蒸着源から蒸発する蒸着材料の蒸発分子は、主に内側の筒体内を飛行して基板に到達するようになるため、真空槽の壁面等に付着する蒸発分子の量を低減でき、蒸着効率を向上させることができる。
加えて、内側の筒体は70℃以上600℃以下に加温されているため、蒸発分子が内側の筒体に衝突したりその近傍を飛行する等しても、その運動エネルギを失うことがなくなる。従って、蒸発分子が内側の筒体に付着することがなくなり、内側の筒体内を飛行する蒸発分子を無駄なく基板に堆積させることができ、蒸着効率を一層高めることができる。
ここで、内側の筒体が70℃未満では低温な蒸発物が付着するおそれがある。
これらにより、前記目的が達成される。
【0010】
前述した内側の筒体の内径は、その内断面に基板の投影面または成膜する薄膜の平面形状を含むように設定することが好ましく、例えば、円状の薄膜を形成する場合には、内側の筒体の内径を薄膜の直径よりも大きくすればよい。
また、内側の筒体の高さ寸法Hは、外側の筒体の高さ寸法H以上(H≧H)とすることが好ましい。
【0011】
さらに、遮蔽部の高さ寸法H、すなわち、遮蔽部を構成する筒体の最大高さ寸法は、蒸着源と基板との距離Sに応じて設定すればよいが、遮蔽部が基板や蒸着源に達する場合も含むため、遮蔽部の高さ寸法Hは、好ましくは、0.3S<H<1.5Sである。H≦0.3Sでは、遮蔽部の高さ寸法Hが小さすぎて前述した効果を十分に発揮できず、1.5S≦Hでは、既存の真空蒸着装置に遮蔽部を設ける場合等に設置スペースを容易に確保できない。
【0012】
そして、外側の筒体を−269℃とする場合は、液体ヘリウムを用いて冷却すればよいが、液体窒素(−196℃)等の寒剤やフロン等の冷媒或いは水等を用いて冷却する方が、簡便に行えるため好ましい。
【0013】
さらに、内側の筒体と外側の筒体との間には隙間が設けられていることが望ましい。
このようにすることで、外側の筒体と内側の筒体との間に真空の空間を確保できるようになり、この空間においては、気体分子による熱の伝導および対流がほとんどないため、内側の筒体から外側の筒体への熱伝導を防止でき、断熱効果が得られる。この結果、内側および外側の筒体の温度維持を確実かつ容易に行うことができる。
【0014】
ここで、遮蔽部を構成する筒体は、それぞれ各筒体間に隙間をもって配置されることが好ましく、各筒体同士の間隔は2mm以上とすることが好ましい。とくに、遮蔽部が内側と外側の二つの筒体により構成される場合、筒体同士の間隔が2mm未満では、十分な断熱効果を発揮できない。
また、内側の筒体の外径Mは、外側の筒体の内径Dの40%以上(M/D≧4/10)とすることが好ましい。M/D≦4/10では、内側と外側の筒体間の距離が大きすぎて、その間に侵入した蒸発物を外側筒体で確実に補らえることができない。
【0015】
そして、基板と遮蔽部との間には、−269℃以上室温以下の温度に維持される基板側可動シャッタが設けられていることが望ましい。
基板側可動シャッタを−269℃とする場合は、液体ヘリウムを用いて冷却すればよいが、液体窒素(−196℃)や水を用いて冷却する方が、簡便に行えるため好ましい。
【0016】
これによれば、基板側可動シャッタは−269℃以上室温以下に維持されているため、この基板側可動シャッタを蒸着初期に閉状態としておけば、蒸着材料の表面に形成された化合物や有機物の分解物等が蒸発しても、これらの不純物を基板側可動シャッタで確実に捕捉できる。
また、基板側可動シャッタに衝突した不純物は確実に捕捉され、跳ね返って真空槽の壁面等に付着することがなくなるので、真空槽の壁面等に付着する不純物の量を低減させることができる。この結果、真空槽の壁面等から基板に向かって飛行する再蒸発分子を減少させることが可能となり、一層純度の高い薄膜を形成できる。
この際、基板側シャッタが−269℃未満では冷却が困難になり、一方、室温より高温では不純物を確実に捕捉できない。
【0017】
また、基板側可動シャッタと基板との距離が 0cm以上5cm以下とされていることが望ましい。
ここで、基板側可動シャッタと基板との距離が 0cmとは、基板側可動シャッタを基板に接触させて閉状態とする場合である。
このようにすることで、基板側可動シャッタの周縁部から回り込んで基板に到達する不純物を減少させることが可能となり、不純物の薄膜への混入を防止できる。
【0018】
さらに、蒸着源と遮蔽部との間には、室温以上600℃以下の温度に維持される蒸着源側可動シャッタが設けられていてもよい。
ここで、蒸着源側可動シャッタの温度は、蒸発物の温度よりも高く設定することが好ましい。
【0019】
蒸着源側可動シャッタが室温以上600℃以下の温度に維持されていれば、この蒸着源側可動シャッタを蒸着の初期に閉状態としておくことで、不純物を遮断できるうえに、不純物の蒸着源側可動シャッタへの堆積を防ぐことができる。従って、堆積した蒸発物が変性して不純物となり、再蒸発して基板に付着するのを防止できるとともに、蒸着源側可動シャッタのクリーニングを迅速かつ容易に行うことができる。
この際、蒸着源側可動シャッタが室温未満では、堆積量が多くなり十分な効果が得られない。
【0020】
また、蒸着源側可動シャッタと蒸着源との距離が0cm以上10cm以下とされていることが望ましい。
ここで、蒸着源側可動シャッタと基板との距離が0cmとは、蒸着源側可動シャッタを基板に接触させて閉塞する場合である。
このようにすれば、蒸着源の蒸着材料から生じる不純物を確実に遮断することができ、薄膜への不純物の混入を防止できる。
【0022】
本発明の真空蒸着装置による真空蒸着方法は、前述した真空蒸着装置を用い、前記遮蔽部の外側の筒体を−269℃以上室温以下に維持するとともに、内側の前記筒体を70℃以上600℃以下に維持して蒸着を行うことを特徴とする。
また、前記蒸着材料として有機物を用いてもよい。
有機物の蒸発物の温度は、通常、200℃〜400℃程度であるため、内側の筒体の温度は100℃以上400℃以下の範囲内で、蒸着材料の蒸発物の温度よりも高くすることが好ましく、これによれば、無駄な加熱が必要なくなる。
【0023】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1および図2には、本実施形態の真空蒸着装置10が示されている。
真空蒸着装置10は、真空槽11と、この真空槽11内に設けられた蒸着源12と、蒸着源12と対向配置された基板13と、基板13と蒸着源12との間に設けられた遮蔽部20と、遮蔽部20と基板13との間に設けられた基板側可動シャッタ30と、遮蔽部20と蒸着源12との間に設けられた蒸着源側可動シャッタ40とを含んで構成されている。
【0024】
蒸着源12は抵抗加熱蒸着源であり、真空槽11の底面に設けられた凹部にそれぞれ設置されたるつぼ121と、るつぼ121の周囲に設けられたヒータ122とを有し、るつぼ121の内部に蒸着材料を入れてヒータ122に通電することで、発生する電熱により蒸着材料60を加熱できるようになっている。
るつぼ121は、その上部が真空槽11の底面から突出するように設置されている。
基板13は、矩形の平面形状を有し、蒸着源12の上方に略水平に配置されている。
【0025】
遮蔽部20は、図2に詳細に示されるように、外側の筒体である外側筒体21と、この外側筒体21内に配置された内側の筒体である内側筒体22と、外側筒体21と内側筒体22の間に配置された断熱筒体23とによる三重の筒体から構成されている。
これらの筒体21,22,23は、各筒体21,22,23間にそれぞれ2mm以上の隙間をもって配置されている。
外側筒体21には、冷却管211が螺旋状に内蔵されており、水や液体窒素等の冷媒を流通させて外側筒体21全体を冷却できるようになっている。
【0026】
内側筒体22にはヒータ221が内蔵されており、通電により生じる電熱により内側筒体22全体を加熱できるようになっている。この内側筒体22の内径D2は、基板13の対角線寸法Pよりも大きく(D2>P)設定され、内側筒体22の外径M2は、外側筒体21の内径D1の40%以上(D2/D1≧4/10)とされている。内側筒体22の高さ寸法H2は、外側筒体21の高さ寸法H1と略同寸法(H2= 1 )とされている。遮蔽部20の高さ寸法H、すなわち、外側筒体21および内側筒体22の高さ寸法H1,H2(H=H1=H2)は、蒸着源12と基板13との距離Sとの関係において、0.3S<H<1.5Sの範囲内とされている。
【0027】
断熱筒体23は、外側および内側筒体21,22と略同高さ寸法を有するアルミニウム製の筒体であり、その内外周面がともに鏡面加工され、内側筒体22からの輻射熱を遮断できるようになっている。
【0028】
基板側可動シャッタ30は、略水平な円板状のシャッタ板31と、シャッタ板31を支持、駆動する略L字状の支持部32を備えている。
支持部32は、その下端部にシャッタ板31の側部を支持し、この支持部32を操作してシャッタ板31を遮蔽部20と基板13との間を遮断する位置から開放する位置まで水平方向に回動させるようになっている。
シャッタ板31には、冷却管311が螺旋状或いは蛇行して内蔵されており、寒剤や冷媒等を流通させてシャッタ板31全体を冷却できるようになっている。
また、シャッタ板31を遮蔽部20と基板13との間に移動させて閉状態としたときのシャッタ板31と基板13との距離L は、0cm以上5cm以下とされている。
【0029】
蒸着源側可動シャッタ40も、基板側可動シャッタ30と略同様なシャッタ板41と支持部42とで構成され、支持部42の操作によりシャッタ板41を遮蔽部20と蒸着源12との間を遮断する位置から開放する位置まで移動できるようになっている。
シャッタ板41にはヒータ411が螺旋状或いは蛇行して内蔵されており、シャッタ板41全体を加熱できるようになっている。
また、シャッタ板41を遮蔽部20と蒸着源12との間に移動させて閉状態としたときのシャッタ板41と蒸着源12との距離L は、10cm以下とされている。
【0030】
なお、これらの内側筒体22、外側筒体21、基板側可動シャッタ30、蒸着源側可動シャッタ40には、図示しない温度制御手段がそれぞれに設けられ、各々所期の温度に維持できるようになっている。
【0031】
このように構成された本実施形態においては、次のような手順で蒸着を行う。
先ず、蒸着材料に用いる有機物をるつぼ121内に入れ、真空槽11を排気して真空にする。
冷却管211に液体窒素等の寒剤或いは冷媒等を流して外側筒体21を−269℃以上室温以下となるように冷却するとともに、ヒータ221に通電して、内側筒体22を100℃以上400℃以下の範囲内で有機物の蒸発物の温度よりも高い温度となるように加熱しておく。
【0032】
また、基板側可動シャッタ30の支持部32を操作し、シャッタ板31を基板13の直下まで移動させて閉状態とし、冷却管311に寒剤や冷媒等を流通させてシャッタ板31を−269℃以上室温以下となるように冷却しておく。
蒸着源側可動シャッタ40の支持部42を操作し、シャッタ板41を蒸着源12の直上まで移動させて開状態とし、ヒータ411に通電して、シャッタ板41を室温以上600℃以下の範囲内で有機物の蒸発物の温度よりも高い温度となるように加熱しておく。
【0033】
これらの温度が所期の状態となった後、蒸着源12のヒータ122に通電し、有機物を加熱して蒸発させる。
このとき、有機物に含まれる不純物や蒸着源12の周辺に付着していた有機物の分解物等が蒸発するが、これらの不純物は大部分が加熱された蒸着源側可動シャッタ40に衝突して遮断される。このとき、シャッタ板41は加熱されているので、蒸発物の付着は少なく抑制される。なお、シャッタ板41は外側筒体21の開口よりも大きい平面形状を有するので、これらの不純物がシャッタ板41の周縁部から外側筒体21内に回り込むことは少ない。
【0034】
この蒸着源側可動シャッタ40に遮断されて外側筒体21に衝突する蒸発分子や外側筒体21近傍を飛行する蒸発分子は、冷却された外側筒体21に捕捉される。このときに捕捉されなかった不純物は真空槽11の壁面等に付着するが、再蒸発して基板13に向かって斜めに飛行するものは外側筒体21により捕捉される。
一方、蒸着源側可動シャッタ40の周囲から回り込んで、内側筒体22内または内側筒体22と断熱筒体23との間に侵入したわずかの不純物の蒸発分子は、冷却された基板側可動シャッタ30に捕捉される。また、断熱筒体23と外側筒体21との間に侵入した蒸発物は外側筒体21に付着する。
【0035】
一定時間経過後、有機物の蒸着速度等の諸条件が安定したら、基板側可動シャッタ30および蒸着源側可動シャッタ40の各支持部32,42を操作してそれぞれ開状態とし、基板13への蒸着を開始する。
有機物の蒸発分子は、内側筒体22内を飛行して基板13に到達し、薄膜を形成する。内側筒体22に衝突した蒸発分子は、内側筒体22により熱エネルギを供給されるため、運動エネルギを失うことなく飛行を継続して最終的に基板13に付着する。この際、真空槽11の壁面等に付着した分解物等が再蒸発しても、冷却された外側筒体21により捕捉される。
【0036】
このような本実施形態によれば、以下のような効果がある。
すなわち、蒸着源12と基板13との間に三重の遮蔽部20を設け、外側筒体21を−269℃以上室温以下に冷却したので、蒸着初期に閉状態とされた可動シャッタ40に遮断される不純物や、シャッタ板41の周縁部から回り込んで断熱筒体23と外側筒体21との間に侵入した不純物をこの外側筒体21で捕捉できるうえに、真空槽11の壁面等に付着した不純物の再蒸発物をも捕捉でき、不純物の薄膜への混入を確実に防止できる。
【0037】
また、各可動シャッタ30,40の開放時には、蒸着源12から蒸発する有機物の蒸発分子が、主に内側筒体22内を飛行して基板13に到達するため、真空槽11の壁面等に付着する蒸発分子の量を低減でき、蒸着効率を向上させることができる。
加えて、内側筒体22は100℃以上400℃以下の範囲で有機物の蒸発物よりも高温に維持されているため、蒸発分子が内側筒体22に衝突したりその近傍を飛行する等しても、その運動エネルギを失うことがない。従って、蒸発分子が内側筒体22に付着することがなくなり、内側筒体22内を飛行する蒸発分子を無駄なく基板13に堆積させることができ、蒸着効率を一層高めることができる。
【0038】
そして、内側筒体22の内径Dを基板13の対角線寸法Pよりも大きく(D>P)したため、基板13の被蒸着面の端部まで蒸発物を確実に付着させることができ、均一な薄膜を形成できる。
【0039】
さらに、外側筒体21と断熱筒体23の間および断熱筒体23と内側筒体22の間に2mm以上の隙間を設けてこれらの筒体21,22,23を配置したので、各筒体間に2mm以上の真空の空間を確保でき、この空間においては、気体分子による熱の伝導および対流がほとんどないため、内側筒体22から外側筒体21への熱伝導を防止でき、断熱効果が得られる。この結果、内側および外側筒体21,22の温度維持を確実かつ容易に行うことができる。
【0040】
そして、基板13と遮蔽部20との間に −269℃以上室温以下の温度に維持される基板側可動シャッタ30を設けたので、この基板側可動シャッタ30を蒸着初期に閉状態とすることで、外側筒体21に捕捉されなかった不純物を確実に捕捉でき、不純物が基板13へ到達するのを防止できる。
また、冷却された基板側可動シャッタ30に衝突した不純物は確実に捕捉され、跳ね返ったり再蒸発する等して真空槽11の壁面等に付着することがなくなるので、真空槽11の壁面等に付着する不純物の量を低減させることができる。この結果、真空槽11の壁面等から基板13に向かう再蒸発物を少なくすることができ、一層純度の高い薄膜を形成できる。
【0041】
さらに、シャッタ板31と基板13との距離を0cm以上5cm以下としたので、基板側可動シャッタ30の周縁部から回り込んで基板13に到達する不純物を減少させることが可能となり、不純物の薄膜への混入を防止できる。
【0042】
また、蒸着源12と遮蔽部20との間に、室温以上600℃以下の範囲で有機物の蒸発物よりも高温に維持される蒸着源側可動シャッタ40を設けたため、この蒸着源側可動シャッタ40を蒸着の初期に閉状態とすることで、蒸着の初期に発生する不純物を遮断できるうえに、不純物の蒸着源側可動シャッタ40への堆積を防ぐことができる。従って、堆積した不純物ではない蒸発物が変性して不純物となり、再蒸発して基板13に付着するのを防止できるとともに、シャッタ板41のクリーニングを迅速かつ容易に行うことができる。
【0043】
さらに、シャッタ板41と蒸着源12との距離を0cm以上10cm以下としたので、不純物を確実に遮断することができ、薄膜への不純物の混入を防止できる。
【0044】
そして、外側筒体21と内側筒体22との間に内外周面を鏡面加工した断熱筒体23を配置したので、加熱された内側筒体22からの輻射熱を遮断でき、各筒体21,22の温度維持を一層確実かつ円滑に行うことができる。
【0045】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形なども本発明に含まれる。
すなわち、前記実施形態の遮蔽部20は、外側筒体21と内側筒体22とこれらの間に配置される断熱筒体23とで構成されていたが、断熱筒体23はなくてもよい。但し、この断熱筒体23を設ければ、外側筒体21と内側筒体22の各温度をそれぞれ円滑に制御できるので設けることが好ましく、二つ以上の筒体が配置されていてもよい。
【0046】
また、前記実施形態の遮蔽部20と基板13との間には基板側可動シャッタ30が設けられ、遮蔽部20と蒸着源12との間には蒸着源側可動シャッタ40が設けられていたが、これらは何れか一方であってもよく、両方とも設けなくてもよい。しかし、この可動シャッタ30,40を設ければ、前述の実施形態のような効果が得られるため、設けることが好ましい。
【0047】
前記実施形態の遮蔽部20は、蒸着源12と基板13とに挟まれるように配置されていたが、例えば、遮蔽部20の図1中上部および下部の何れか一方、或いは両方を延長し、蒸着源12や基板13まで達するように設けてもよい。例えば、図3に示すように、遮蔽部20の下端側を延長してるつぼ121の上部に達するように設けてもよい。これによれば、蒸発材料の蒸発物のほとんどが内側筒体22内を飛行するようになり、一層効率よく蒸着を行うことができる。
【0048】
また、外側筒体21と内側筒体22と断熱筒体23とは、2mm以上の隙間をもって配置されていたが、外側筒体21と断熱筒体23、または内側筒体22と断熱筒体23とが接するように配置されていてもよく、筒体21,22,23間に隙間がなくてもよい。但し、断熱効果を高めるためには隙間をもって配置することが好ましい。
【0049】
さらに、内側筒体22および蒸着源側可動シャッタ40は、内蔵されたヒータ221,411により加熱されていたが、例えば、内部に蒸気等を流通させて加熱してもよい。或いは、内側筒体22および蒸着源側可動シャッタ40の周辺に配置したヒータ等の加熱手段により加熱してもよいが、加熱手段に蒸着物の多くが付着してしまうため、内蔵させることが好ましい。
加えて、内側筒体22やシャッタ板41を複数の区分に分割して各区分毎に異なる温度となるように温度制御を行ってもよい。
【0050】
また、外側筒体21および基板側可動シャッタ30の冷却は、内蔵された冷却管211,311に寒剤や冷媒を流通させて行っていたが、ヒートパイプ等を設け、真空槽11外に放熱させて冷却してもよい。
【0051】
そして、断熱筒体23はアルミニウムにより形成されていたが、輻射熱を遮断できる材料であれば任意のものを利用でき、例えば、銀等により形成してもよく、或いは、表面に銀メッキされたガラス等により形成してもよい。
【0052】
そして、基板側および蒸着源側可動シャッタとして、温度制御をしない既存の可動シャッタを用いてもよいが、前記実施形態のような効果は発揮できない。
また、基板側可動シャッタ30および蒸着源側可動シャッタ40は、各支持部32,42を水平方向にスライドさせてシャッタ板31,41を平行移動させるものであってもよく、或いは、シャッタ板31,41を基板13や蒸着源12に密着させて閉状態とするようにしてもよく、さらには、基板13全体や蒸着源12の全体を被覆するものとしてもよい。
具体的なシャッタの開閉機構、形状寸法等は実施にあたって適宜設定すればよい。
【0053】
前記実施形態の蒸着源12は、るつぼ121を用いる抵抗加熱蒸着源であったが、るつぼ121を高周波コイルの中に入れて高周波誘導加熱して蒸着材料を加熱する高周波加熱蒸着源としてもよく、蒸着材料に電子ビームを直接あてて加熱する電子ビーム蒸着源としてもよい。
また、高融点金属による線状のヒータやボート等に蒸着材料を載置し、このヒータやボートに直接通電して加熱する抵抗加熱蒸着源としてもよい。
【0054】
【発明の効果】
以上に述べたように、本発明によれば、基板と蒸着源との間に少なくとも二重の筒体から構成される遮蔽部を設け、遮蔽部の外側の筒体を−269℃以上室温以下に維持するとともに内側の筒体を70℃以上600℃以下に維持することで、真空槽の壁面等に付着した不純物の再蒸発分子が基板に向かって飛行しても、低温な外側の筒体で捕捉でき、不純物の薄膜への混入を確実に防止できる。
【0055】
また、蒸着源から蒸発する蒸着材料の蒸発分子は、主に内側の筒体内を飛行して基板に到達するようになるため、真空槽の壁面等に付着する蒸発分子の量を低減でき、蒸着効率を向上させることができる。
加えて、内側の筒体は高温にされているため、蒸発分子が内側の筒体に衝突したりその近傍を飛行する等しても、内側の筒体より熱エネルギを供給されて運動エネルギを失うことがなくなる。従って、蒸発分子が内側の筒体に付着することがなくなり、内側の筒体内を飛行する蒸発分子を無駄なく基板に堆積させることができ、蒸着効率を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態の概略構成を示す断面図。
【図2】前記実施形態の要部を示す一部を切り欠いた斜視図。
【図3】本発明の他の実施形態を示す一部を切り欠いた斜視図。
【符号の説明】
10 真空蒸着装置
11 真空槽
12 蒸着源
13 基板
20 遮蔽部
21 外側の筒体
22 内側の筒体
23 断熱筒体
30 基板側可動シャッタ
40 蒸着源側可動シャッタ

Claims (8)

  1. 真空槽内に設けられた蒸着源で蒸着材料を加熱して前記蒸着源と対向配置された基板に蒸着させる真空蒸着装置であって、前記真空槽内の前記基板と前記蒸着源との間には、少なくとも二重の筒体から構成される遮蔽部が設けられ、前記遮蔽部の外側の前記筒体は-269℃以上室温以下に維持されるとともに内側の前記筒体は70℃以上600℃以下に維持され、前記遮蔽部の外側の筒体と内側の筒体との間には、輻射熱を遮断する筒体が配置されていることを特徴とする真空蒸着装置。
  2. 請求項1に記載した真空蒸着装置において、前記内側の筒体と前記外側の筒体との間には隙間が設けられていることを特徴とする真空蒸着装置。
  3. 請求項1または請求項2に記載した真空蒸着装置において、前記基板と前記遮蔽部との間には、-269℃以上室温以下の温度に維持される基板側可動シャッタが設けられていることを特徴とする真空蒸着装置。
  4. 請求項3に記載した真空蒸着装置において、前記基板側可動シャッタと前記基板との距離が0cm以上5cm以下とされていることを特徴とする真空蒸着装置。
  5. 請求項1から請求項4までの何れかに記載した真空蒸着装置において、前記蒸着源と前記遮蔽部との間には、室温以上600℃以下の温度に維持される蒸着源側可動シャッタが設けられていることを特徴とする真空蒸着装置。
  6. 請求項5に記載した真空蒸着装置において、前記蒸着源側可動シャッタと前記蒸着源との距離が0cm以上10cm以下とされていることを特徴とする真空蒸着装置。
  7. 請求項1から請求項6までの何れかに記載した真空蒸着装置を用い、前記遮蔽部の外側の筒体を-269℃以上室温以下に維持するとともに、内側の前記筒体を70℃以上600℃以下に維持して蒸着を行うことを特徴とする真空蒸着装置を用いた真空蒸着方法。
  8. 請求項7に記載した真空蒸着装置を用いた真空蒸着方法において、前記蒸着材料として有機物を用いることを特徴とする真空蒸着装置を用いた真空蒸着方法。
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