JP3623359B2 - 耐久性に優れる防食被覆鋼矢板 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として海洋環境や河川環境で使用される防食被覆鋼矢板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
海洋環境や河川環境で使用される鋼材には、H形鋼、鋼管、鋼管矢板、鋼矢板などがあり、埋め立て地や河川の土止め壁、港湾の桟橋、橋脚などの多くの分野で利用されている。これらの鋼材は、海水や河川水にさらされるので、鋼材の腐食対策として、昨今では何らかの防食を施されるのが一般的である。この防食法としては、有機被覆防食法が多く用いられている。
【0003】
有機被覆防食法は、重防食塗装と樹脂ライニング法がありその基本構成や施工例などは、最新表面処理編集委員会編「最新表面処理技術総覧」(産業技術サービスセンター、昭和62年)に詳しく解説されているが、概説すると、鋼材の表面をブラスト処理やクロメート処理などの下地処理を施し、下塗り系の有機樹脂層を塗布し、その上に、塗料やポリエチレンなどの有機樹脂層を厚く被覆して防食する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
有機樹脂被覆鋼材は、どのように条件を規定して作製しても、長期の使用の間にその界面の密着力が低下してくるという課題を有している。この対策として、被覆鋼材の前処理であるクロメート処理を改良することが効果であることは知られている。例えば、特開平3−234527号公報に記載されるものは、シランカップリング材をクロメート処理剤に添加し、密着性が優れている有機樹脂被覆鋼材に関するものである。しかしながら、この方法でも、界面の密着力低下を遅くすることは可能であるが、有機樹脂被覆に良く用いられるポリエチレン樹脂の寿命は、水中であれば50年近くあり、これ以上に界面の密着力を維持することは現在の方法では難しい。
【0005】
特に、密着力低下した有機被覆樹脂の周辺の未防食鋼面に錆が発生する恐れのある有機樹脂被覆鋼矢板では、錆の生成による物理的な有機樹脂被覆の浮きが起こる可能性もある。
本発明は、上記問題点に鑑み、界面の密着強度が低下した場合であっても、有機被覆樹脂の浮きが抑えられ、補強によってその長期の耐久性がより確実な防食被覆鋼矢板の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、機被覆樹脂の浮きが抑えられ、長期の耐久性を有する防食被覆鋼矢板の提供するために、鋼材に被覆された有機樹脂を、押さえ材を用いて鋲またはネジ付きピンにより鋼材表面に固定することによって目的が達せられる。しかしながら、その耐久性は固定に用いる鋼製のびょうまたはネジ付きピンの耐久性に依存する。発明者らは、この押さえ材を固定するための鋲およびネジ付きピンの防食方法を種々検討し、長期にわたり有機樹脂被覆を固定、補強できる方法を見いだした。
【0007】
すなわち、本発明が、その要旨とするところは、
(1)有機被覆樹脂で表面を被覆された鋼矢板であって、有機被覆樹脂端部を、鋼製の鋲またはネジ付きピンにより鋼矢板鋼材に貫通して固定するにあたり、前記鋲またはネジ付きピンが、座金、押さえ材、有機樹脂被覆、鋼矢板鋼材をこの順に貫通していることを特徴とする耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
(2)前記押さえ材と有機樹脂被覆の間に、さらにゴム系有機樹脂緩衝材を有することを特徴とする前記(1)に記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
(3)前記ゴム系有機樹脂緩衝材の厚さが0.1〜3mmであることを特徴とする前記(2)に記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
【0008】
(4)前記鋼製の鋲またはネジ付きピンおよび座金を、有機樹脂により被覆することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
(5)前記鋼製の鋲またはネジ付きピンの頭部を、内面に常温硬化型エポシキ系、または常温硬化型ウレタン系またはαシアノアクリレート系の接着剤を充填したキャップにより覆うことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
【0009】
(6)前記押さえ材が、厚み0.5mm以上7mm未満のFRP樹脂製の帯状突起を有する形状にしたものであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
(7)前記押さえ材が、厚み0.1mm以上3mm未満のステンレス鋼製の帯状突起を有する形状にしたものであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の限定理由について説明する。
本発明の有機樹脂被覆の補強方法は、図1および図2に示すように、鋼矢板鋼材1上に有機被覆樹脂3を被覆した有機樹脂被覆鋼矢板に、座金10と押さえ材4を介して鋼製の鋲6またはネジ付きピン12先端が、鋼矢板鋼材1まで食い込むように打ち込む。また、特に有機被覆樹脂3の剥離を補修する場合にあっては、有機被覆樹脂3の下層としてペトロラタム含浸防食シート2を挟み込むことで、鋼面の防食をより確実に行える。
有機被覆樹脂3は、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリ塩化ビニル系の樹脂等がよく使用されており、1mm以上の厚みで被覆されているのが普通である。
【0011】
押さえ材4を用いて有機樹脂被覆鋼矢板を補強する方法として、本発明では、鋼製の鋲6またはネジ付きピン12を、鋼矢板鋼材1まで、食い込むように打ち込む。鋲6またはネジ付きピン12は、鋼矢板鋼材1まで食い込むことが可能であればどんな形状のものでもかまわないが、ドライブイット銃で撃ち込めるようなものが最も適している。なお、ネジ付きピン12は、図2に示すように頭部雄ねじ部にボルト13をねじ込むことにより固定が完結し、鋲に比べると工程が多少複雑となるが、締め付けトルクを調節し最適な固定加重とすることができるので性能上より優れている。
押さえ材4と有機被覆樹脂3の間からの水侵入による鋲6またはネジ付きピン12の防食を確実にするために、ゴム系有機樹脂緩衝材9を、押さえ材4と有機被覆樹脂3との間に配することが好ましい。
【0012】
前記ゴム系有機樹脂緩衝材は、押さえ材と有機樹脂被覆の間にシリコンゴム、ネオプレンゴム、エチレンープロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴムなどに代表される弾性に富んだゴム系有機樹脂緩衝材を入れることで押さえ材貫通部における鋲またはネジ付きピンが浸水から免れ防食が確実となる。この有機樹脂緩衝材の厚みとしては、薄すぎると鋲6またはネジ付きピン12の打ち込みによる破断が懸念され、厚すぎると鋲6またはネジ付きピン12を打ち込む時の安定性が悪くなるため、0.1mから3mmが望ましい。
この有機樹脂緩衝材は、施工性の観点から、あらかじめ押さえ板に貼り合わせておくとより効率的である。
【0013】
また、同様な考え方から鋼製の鋲6またはネジ付きピン12頭部と押さえ材4の間に配される座金10を有機樹脂被覆11し、もしくは座金10と押さえ材4の間、および/または、座金10と鋲6頭部またはボルト13との間にゴム系有機樹脂緩衝材を挟み込んで防水性を高めたものが好ましく、座金10と押さえ材4との間からの浸水を有効に防止できる。
【0014】
座金の有機樹脂被覆としては、常温硬化型の樹脂または熱硬化型樹脂の被覆、または熱可塑樹脂を融着によって30μm以上望ましくは100μm以上であることが望ましい。また、ゴム系有機樹脂緩衝材の場合は、0.1mmから3mmのシリコンゴム、ネオプレンゴム、エチレンープロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴムなどの樹脂からなるものが好ましく、その形状はワッシャ状であってもシート状であっても良い。
【0015】
鋲6またはネジ付きピン12は鋼製なので、海水に接すると長期使用において腐食し、抜け落ちる可能性がある。そこで、常温硬化型のエポキシ系または常温硬化型ウレタン系樹脂により、表面を覆うことが好ましいが、さらに好ましくは、図1または図2に示すように、鋲6またはネジ行きピン12の表面を、有機樹脂8で充填したキャップ7で覆うことで腐食防止を完全にする。なお、符号5は押さえ材の高さを示す。
【0016】
この充填する有機樹脂8としては、常温硬化型のエポキシ系、常温硬化型ウレタン系またはαシアノアクリレート系の接着剤が適当である。キャップ7の材質としては、異種金属接触腐食の観点から金属材料は好ましくなく、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂系材料もしくは磁器のような無機系材料からなるものが好ましい。キャップ7の形状としては、鋲6またはネジ付きピン12の頭部を覆える形で有ればかまわないが、キャップ7の内部にネジ溝のような凹凸をもうけた円筒型であると充填材が硬化することでキャップ7の脱落を防止できる。
【0017】
押さえ材4は、鋲6またはネジ付きピン12の相互の間隔を広げても補強効果が十分に確保できるような強度を確保するための断面形状が要求される。そのために、断面形状がL字型(図3)、もしくはU字型(図4)などが有効である。材質としては、FRP(繊維強化プラスチック)製のものが最も有効であり、その場合には、厚みが0.5mm以上7mm未満とするのが良い。厚さが0.5mm未満では、押さえ材が破断し易くなり、7mm以上では鋲が鋼材にしっかり固定できなくなる懸念がある。
【0018】
ステンレス(SUS)製の押さえ材は、FRP製よりは異種金属接触腐食の問題などで性能が劣るものの十分利用可能である。この場合の形状も前記FRPと同様に、L字型もしくはU字型が有効である。この場合、厚みは0.1mm以上3mm未満とするのが良い。厚さが0.1mm未満では、押さえ材が破断し易くなり、3mm以上では鋲が鋼材にしっかり固定できなくなる懸念がある。
また、L字型もしくはU字型の押さえ材の形状としては、強度の観点から、幅20mm以上100mm未満、高さ3mm以上100mm未満が良く、長さは、複数の鋲6もしくはネジ付きピン12が長手方向に連続的に配されるので、実用上15cm以上が適当である。
【0019】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
ポリエチレン被覆鋼矢板(SY30、SP IV型)を通常の製造方法で作製し、幅46mm、高さ15mm、厚み3mmのFRPに、鋲またはネジ付きピンを用い、鋲またはネジ付きピンの塗装有無、有機緩衝材の有無などの諸条件を変え、エポキシ樹脂を充填したエチレンプロピレンゴムキャップを鋲またはネジ付きピンに被せて補強を行った。鋲またはネジ付きピンの周囲10cm四方で切り出し、60℃3%食塩水に1ヶ月浸漬後、鋲またはネジ付きピンの部分の腐食状況を評価した。その結果を表1に示す。
鋲またはネジ付きピンの頭に防食用のキャップを取り付けることで、取り付け不良があると錆発生することがあるが、防水による耐久性向上に大きな効果がある。表記の結果から明らかなように、鋲の下に樹脂塗装した座金またはゴム状の有機緩衝材を設け、さらに押さえ板の下に有機緩衝材を設けることで断面方向からの水侵入が抑えられる結果として鋲またはネジ付きピンの防食が確実となることが分かる。
【0020】
【表1】
【0021】
(実施例2)
ポリエチレン被覆鋼矢板(SY30、SP IV型)のフランジ部分のポリエチレン被覆を意図的に剥がして作製した試験材を作製し、巾46mm、高さ15mm、厚み3mmのFRPと、びょうまたはネジ付きピンを用い、鋲またはネジ付きピンの塗装有無、有機緩衝材の有無等を変え、エポキシ樹脂を充填したエチレンプロピレンゴムキャップを鋲またはネジ付きピンにかぶせて補強を行った。尚、意図的に剥がした被覆の下には、ペトロラタム含浸シートを挟み込んだ。鋲またはネジ付きピンの周囲10cm四方で切り出し、60℃3%食塩水に1ヶ月浸漬後、鋲またはネジ付きピンの部分および被覆剥離鋼材面の腐食状況を評価した。その結果を表2に示す。表記から明らかなように、剥離させた被覆と鋼材面の間にペトロラタム含浸シートをはさむことで鋼材の腐食が抑制されるのが分かる。また、鋲の下に塗装した座金またはゴム状の有機緩衝材を設け、さらに押さえ板の下に有機緩衝材を設けることで断面方向からの水侵入が抑えられる結果として鋲またはネジ付きピンの防食が確実となることが分かる。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】
本発明は、簡単かつ低コストにて、耐久性の非常に優れた防食被覆鋼矢板を提供できる。したがって本発明は工業的価値の極めて高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のうち、鋲で補強された防食被覆鋼矢板の一例の断面図である。
【図2】本発明のうち、ネジ付きピンで補強された防食被覆鋼矢板の一例の断面図である。
【図3】L字型断面形状の押さえ材の一例を示す図である。
【図4】U字型断面形状の押さえ材の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼材
2 防食シート
3 有機被覆樹脂
4 押さえ材
5 押さえ材の高さ
6 鋲
7 キャップ
8 有機樹脂
9 ゴム系有機樹脂緩衝材
10 座金
11 有機樹脂被覆
12 ネジ付きピン
13 ボルト
14 押さえ材の幅
【発明の属する技術分野】
本発明は、主として海洋環境や河川環境で使用される防食被覆鋼矢板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
海洋環境や河川環境で使用される鋼材には、H形鋼、鋼管、鋼管矢板、鋼矢板などがあり、埋め立て地や河川の土止め壁、港湾の桟橋、橋脚などの多くの分野で利用されている。これらの鋼材は、海水や河川水にさらされるので、鋼材の腐食対策として、昨今では何らかの防食を施されるのが一般的である。この防食法としては、有機被覆防食法が多く用いられている。
【0003】
有機被覆防食法は、重防食塗装と樹脂ライニング法がありその基本構成や施工例などは、最新表面処理編集委員会編「最新表面処理技術総覧」(産業技術サービスセンター、昭和62年)に詳しく解説されているが、概説すると、鋼材の表面をブラスト処理やクロメート処理などの下地処理を施し、下塗り系の有機樹脂層を塗布し、その上に、塗料やポリエチレンなどの有機樹脂層を厚く被覆して防食する方法である。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
有機樹脂被覆鋼材は、どのように条件を規定して作製しても、長期の使用の間にその界面の密着力が低下してくるという課題を有している。この対策として、被覆鋼材の前処理であるクロメート処理を改良することが効果であることは知られている。例えば、特開平3−234527号公報に記載されるものは、シランカップリング材をクロメート処理剤に添加し、密着性が優れている有機樹脂被覆鋼材に関するものである。しかしながら、この方法でも、界面の密着力低下を遅くすることは可能であるが、有機樹脂被覆に良く用いられるポリエチレン樹脂の寿命は、水中であれば50年近くあり、これ以上に界面の密着力を維持することは現在の方法では難しい。
【0005】
特に、密着力低下した有機被覆樹脂の周辺の未防食鋼面に錆が発生する恐れのある有機樹脂被覆鋼矢板では、錆の生成による物理的な有機樹脂被覆の浮きが起こる可能性もある。
本発明は、上記問題点に鑑み、界面の密着強度が低下した場合であっても、有機被覆樹脂の浮きが抑えられ、補強によってその長期の耐久性がより確実な防食被覆鋼矢板の提供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明では、機被覆樹脂の浮きが抑えられ、長期の耐久性を有する防食被覆鋼矢板の提供するために、鋼材に被覆された有機樹脂を、押さえ材を用いて鋲またはネジ付きピンにより鋼材表面に固定することによって目的が達せられる。しかしながら、その耐久性は固定に用いる鋼製のびょうまたはネジ付きピンの耐久性に依存する。発明者らは、この押さえ材を固定するための鋲およびネジ付きピンの防食方法を種々検討し、長期にわたり有機樹脂被覆を固定、補強できる方法を見いだした。
【0007】
すなわち、本発明が、その要旨とするところは、
(1)有機被覆樹脂で表面を被覆された鋼矢板であって、有機被覆樹脂端部を、鋼製の鋲またはネジ付きピンにより鋼矢板鋼材に貫通して固定するにあたり、前記鋲またはネジ付きピンが、座金、押さえ材、有機樹脂被覆、鋼矢板鋼材をこの順に貫通していることを特徴とする耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
(2)前記押さえ材と有機樹脂被覆の間に、さらにゴム系有機樹脂緩衝材を有することを特徴とする前記(1)に記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
(3)前記ゴム系有機樹脂緩衝材の厚さが0.1〜3mmであることを特徴とする前記(2)に記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
【0008】
(4)前記鋼製の鋲またはネジ付きピンおよび座金を、有機樹脂により被覆することを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
(5)前記鋼製の鋲またはネジ付きピンの頭部を、内面に常温硬化型エポシキ系、または常温硬化型ウレタン系またはαシアノアクリレート系の接着剤を充填したキャップにより覆うことを特徴とする前記(1)〜(3)のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
【0009】
(6)前記押さえ材が、厚み0.5mm以上7mm未満のFRP樹脂製の帯状突起を有する形状にしたものであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
(7)前記押さえ材が、厚み0.1mm以上3mm未満のステンレス鋼製の帯状突起を有する形状にしたものであることを特徴とする前記(1)〜(5)のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板である。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の限定理由について説明する。
本発明の有機樹脂被覆の補強方法は、図1および図2に示すように、鋼矢板鋼材1上に有機被覆樹脂3を被覆した有機樹脂被覆鋼矢板に、座金10と押さえ材4を介して鋼製の鋲6またはネジ付きピン12先端が、鋼矢板鋼材1まで食い込むように打ち込む。また、特に有機被覆樹脂3の剥離を補修する場合にあっては、有機被覆樹脂3の下層としてペトロラタム含浸防食シート2を挟み込むことで、鋼面の防食をより確実に行える。
有機被覆樹脂3は、ポリオレフィン樹脂、ポリウレタン樹脂またはポリ塩化ビニル系の樹脂等がよく使用されており、1mm以上の厚みで被覆されているのが普通である。
【0011】
押さえ材4を用いて有機樹脂被覆鋼矢板を補強する方法として、本発明では、鋼製の鋲6またはネジ付きピン12を、鋼矢板鋼材1まで、食い込むように打ち込む。鋲6またはネジ付きピン12は、鋼矢板鋼材1まで食い込むことが可能であればどんな形状のものでもかまわないが、ドライブイット銃で撃ち込めるようなものが最も適している。なお、ネジ付きピン12は、図2に示すように頭部雄ねじ部にボルト13をねじ込むことにより固定が完結し、鋲に比べると工程が多少複雑となるが、締め付けトルクを調節し最適な固定加重とすることができるので性能上より優れている。
押さえ材4と有機被覆樹脂3の間からの水侵入による鋲6またはネジ付きピン12の防食を確実にするために、ゴム系有機樹脂緩衝材9を、押さえ材4と有機被覆樹脂3との間に配することが好ましい。
【0012】
前記ゴム系有機樹脂緩衝材は、押さえ材と有機樹脂被覆の間にシリコンゴム、ネオプレンゴム、エチレンープロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴムなどに代表される弾性に富んだゴム系有機樹脂緩衝材を入れることで押さえ材貫通部における鋲またはネジ付きピンが浸水から免れ防食が確実となる。この有機樹脂緩衝材の厚みとしては、薄すぎると鋲6またはネジ付きピン12の打ち込みによる破断が懸念され、厚すぎると鋲6またはネジ付きピン12を打ち込む時の安定性が悪くなるため、0.1mから3mmが望ましい。
この有機樹脂緩衝材は、施工性の観点から、あらかじめ押さえ板に貼り合わせておくとより効率的である。
【0013】
また、同様な考え方から鋼製の鋲6またはネジ付きピン12頭部と押さえ材4の間に配される座金10を有機樹脂被覆11し、もしくは座金10と押さえ材4の間、および/または、座金10と鋲6頭部またはボルト13との間にゴム系有機樹脂緩衝材を挟み込んで防水性を高めたものが好ましく、座金10と押さえ材4との間からの浸水を有効に防止できる。
【0014】
座金の有機樹脂被覆としては、常温硬化型の樹脂または熱硬化型樹脂の被覆、または熱可塑樹脂を融着によって30μm以上望ましくは100μm以上であることが望ましい。また、ゴム系有機樹脂緩衝材の場合は、0.1mmから3mmのシリコンゴム、ネオプレンゴム、エチレンープロピレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、クロロスルホン化ポリエチレン、アクリロニトリルブタジエンゴム、フッ素ゴムなどの樹脂からなるものが好ましく、その形状はワッシャ状であってもシート状であっても良い。
【0015】
鋲6またはネジ付きピン12は鋼製なので、海水に接すると長期使用において腐食し、抜け落ちる可能性がある。そこで、常温硬化型のエポキシ系または常温硬化型ウレタン系樹脂により、表面を覆うことが好ましいが、さらに好ましくは、図1または図2に示すように、鋲6またはネジ行きピン12の表面を、有機樹脂8で充填したキャップ7で覆うことで腐食防止を完全にする。なお、符号5は押さえ材の高さを示す。
【0016】
この充填する有機樹脂8としては、常温硬化型のエポキシ系、常温硬化型ウレタン系またはαシアノアクリレート系の接着剤が適当である。キャップ7の材質としては、異種金属接触腐食の観点から金属材料は好ましくなく、例えば、ポリエチレン、ポリ塩化ビニルなどの樹脂系材料もしくは磁器のような無機系材料からなるものが好ましい。キャップ7の形状としては、鋲6またはネジ付きピン12の頭部を覆える形で有ればかまわないが、キャップ7の内部にネジ溝のような凹凸をもうけた円筒型であると充填材が硬化することでキャップ7の脱落を防止できる。
【0017】
押さえ材4は、鋲6またはネジ付きピン12の相互の間隔を広げても補強効果が十分に確保できるような強度を確保するための断面形状が要求される。そのために、断面形状がL字型(図3)、もしくはU字型(図4)などが有効である。材質としては、FRP(繊維強化プラスチック)製のものが最も有効であり、その場合には、厚みが0.5mm以上7mm未満とするのが良い。厚さが0.5mm未満では、押さえ材が破断し易くなり、7mm以上では鋲が鋼材にしっかり固定できなくなる懸念がある。
【0018】
ステンレス(SUS)製の押さえ材は、FRP製よりは異種金属接触腐食の問題などで性能が劣るものの十分利用可能である。この場合の形状も前記FRPと同様に、L字型もしくはU字型が有効である。この場合、厚みは0.1mm以上3mm未満とするのが良い。厚さが0.1mm未満では、押さえ材が破断し易くなり、3mm以上では鋲が鋼材にしっかり固定できなくなる懸念がある。
また、L字型もしくはU字型の押さえ材の形状としては、強度の観点から、幅20mm以上100mm未満、高さ3mm以上100mm未満が良く、長さは、複数の鋲6もしくはネジ付きピン12が長手方向に連続的に配されるので、実用上15cm以上が適当である。
【0019】
【実施例】
以下に本発明を実施例により説明する。
(実施例1)
ポリエチレン被覆鋼矢板(SY30、SP IV型)を通常の製造方法で作製し、幅46mm、高さ15mm、厚み3mmのFRPに、鋲またはネジ付きピンを用い、鋲またはネジ付きピンの塗装有無、有機緩衝材の有無などの諸条件を変え、エポキシ樹脂を充填したエチレンプロピレンゴムキャップを鋲またはネジ付きピンに被せて補強を行った。鋲またはネジ付きピンの周囲10cm四方で切り出し、60℃3%食塩水に1ヶ月浸漬後、鋲またはネジ付きピンの部分の腐食状況を評価した。その結果を表1に示す。
鋲またはネジ付きピンの頭に防食用のキャップを取り付けることで、取り付け不良があると錆発生することがあるが、防水による耐久性向上に大きな効果がある。表記の結果から明らかなように、鋲の下に樹脂塗装した座金またはゴム状の有機緩衝材を設け、さらに押さえ板の下に有機緩衝材を設けることで断面方向からの水侵入が抑えられる結果として鋲またはネジ付きピンの防食が確実となることが分かる。
【0020】
【表1】
【0021】
(実施例2)
ポリエチレン被覆鋼矢板(SY30、SP IV型)のフランジ部分のポリエチレン被覆を意図的に剥がして作製した試験材を作製し、巾46mm、高さ15mm、厚み3mmのFRPと、びょうまたはネジ付きピンを用い、鋲またはネジ付きピンの塗装有無、有機緩衝材の有無等を変え、エポキシ樹脂を充填したエチレンプロピレンゴムキャップを鋲またはネジ付きピンにかぶせて補強を行った。尚、意図的に剥がした被覆の下には、ペトロラタム含浸シートを挟み込んだ。鋲またはネジ付きピンの周囲10cm四方で切り出し、60℃3%食塩水に1ヶ月浸漬後、鋲またはネジ付きピンの部分および被覆剥離鋼材面の腐食状況を評価した。その結果を表2に示す。表記から明らかなように、剥離させた被覆と鋼材面の間にペトロラタム含浸シートをはさむことで鋼材の腐食が抑制されるのが分かる。また、鋲の下に塗装した座金またはゴム状の有機緩衝材を設け、さらに押さえ板の下に有機緩衝材を設けることで断面方向からの水侵入が抑えられる結果として鋲またはネジ付きピンの防食が確実となることが分かる。
【0022】
【表2】
【0023】
【発明の効果】
本発明は、簡単かつ低コストにて、耐久性の非常に優れた防食被覆鋼矢板を提供できる。したがって本発明は工業的価値の極めて高い発明である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のうち、鋲で補強された防食被覆鋼矢板の一例の断面図である。
【図2】本発明のうち、ネジ付きピンで補強された防食被覆鋼矢板の一例の断面図である。
【図3】L字型断面形状の押さえ材の一例を示す図である。
【図4】U字型断面形状の押さえ材の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼材
2 防食シート
3 有機被覆樹脂
4 押さえ材
5 押さえ材の高さ
6 鋲
7 キャップ
8 有機樹脂
9 ゴム系有機樹脂緩衝材
10 座金
11 有機樹脂被覆
12 ネジ付きピン
13 ボルト
14 押さえ材の幅
Claims (7)
- 有機被覆樹脂で表面を被覆された鋼矢板であって、有機被覆樹脂端部を、鋼製の鋲またはネジ付きピンにより鋼矢板鋼材に貫通して固定するにあたり、前記鋲またはネジ付きピンが、座金、押さえ材、有機樹脂被覆、鋼矢板鋼材をこの順に貫通していることを特徴とする耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
- 前記押さえ材と有機樹脂被覆の間に、さらにゴム系有機樹脂緩衝材を有することを特徴とする請求項1に記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
- 前記ゴム系有機樹脂緩衝材の厚さが0.1〜3mmであることを特徴とする請求項2に記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
- 前記鋼製の鋲またはネジ付きピンおよび座金を、有機樹脂により被覆することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
- 前記鋼製の鋲またはネジ付きピンの頭部を、内面に常温硬化型エポシキ系、または常温硬化型ウレタン系またはαシアノアクリレート系の接着剤を充填したキャップにより覆うことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
- 前記押さえ材が、厚み0.5mm以上7mm未満のFRP樹脂製の帯状突起を有する形状にしたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
- 前記押さえ材が、厚み0.1mm以上3mm未満のステンレス鋼製の帯状突起を有する形状にしたものであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の耐久性に優れる防食被覆鋼矢板。
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JP14254398A JP3623359B2 (ja) | 1998-05-25 | 1998-05-25 | 耐久性に優れる防食被覆鋼矢板 |
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