JP3623349B2 - 木質仕上材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、床、壁、天井等の表面仕上材又は柱、キャビネット、家具等の表面材あるいは自動車の内装材、さらには各種造作の表面材等として用いられる木質仕上材に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、ダニの発生防止等の観点から木質仕上材が急速に増加してきているが、表面の耐傷性に関する改善要求が多くなってきた。一般的な木質仕上材は、台板上に化粧張り用の木の薄板である突き板(化粧材)を貼り合わせたものであり、この突き板の表面に傷がつきにくいようにWPC処理したものが開発されている。WPCとは、ウッド・プラスチック・コンビネーションの略称であり、突き板を加熱・加圧容器へ入れ、プラスチックを強制的に突き板に含浸させたものを接着剤が塗布された台板に熱プレスして貼り合わせている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
従来のWPC処理が施されたものは、価格が高くなるという欠点があった。
【0004】
そこで、この発明は、安価で耐傷性に優れた木質仕上材を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上述の目的を達成するため、この発明は、樹脂の含浸を可能とする台板上にシート基材にメタノールに溶解させたフェノール樹脂を含浸させたプリプレグ状態のシートを重ね合わせ、このシート上に樹脂の含浸を可能とする化粧材を重ね合わせて熱プレスして互いに接着した木質仕上材であって、前記シート基材として、坪量50〜250g/m2、3〜15mmの短繊維が全繊維中20〜100%となるようにガラス繊維を単独で用いたガラス不織布を用い、前記フェノール樹脂は固形分20〜80%となるように溶解され、かつシート基材に対して固形分150〜350g/m2になるように含浸されるとともに、シートのできあがり溶媒分率が5〜10%とされているものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明の好適な実施例を図面を参照にして説明する。
【0007】
図1に示す実施例では、台板1上に熱硬化性樹脂を含むシート2を貼り、このシート2上に化粧材3を貼ってある。
【0008】
台板1としては、樹脂の含浸を可能とする材質、例えば合板、木質系繊維ボード、パーティクルボード、ウエハーボード等あるいはこれらの複合板が好適に使用される。
【0009】
シート2は紙、織布、不織布等からなるシート基材20(図2参照)に熱硬化性樹脂を含浸させたものである。シート基材20として熱硬化性樹脂が含浸される紙としては、石膏ボード紙、クラフト紙、レーヨン紙等が好適に使用できる。織布としては、有機繊維の織物、ガラス繊維、炭素繊維、無機ウィスカー、ロックファイバー、ロックウール等の無機繊維の織物、アモルファス金属繊維等の織物が好適に使用できる。不織布としては、ガラス繊維、綿、レーヨン等の原料繊維を接着もしくは絡み合わせ或いはその双方を用いて機械的・化学的・加熱的もしくは溶媒を用いる方法、或いはそれらの組み合わせによって作られたシート状のものである。繊維原料としては、3〜50mmにカットされた繊維を湿式抄紙若しくは乾式不織布製造法によりマット化したものをバインダー樹脂で結合したものが使用に好適である。繊維原料としては、ガラス繊維単独、若しくはガラス繊維とアルミナ繊維、アルミナシリカ繊維、炭素繊維、金属繊維等の無機系繊維や、アラミド繊維、レーヨン繊維、ビニロン繊維、ナイロン繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維等の有機系繊維を単独もしくは複数混合して用いることができる。シート基材の強度を考慮するとともに、樹脂含浸の容易さ等を考慮したとき、ガラス繊維を用いるのが好適である。さらに、含浸性、脱泡性、シート基材強度、ハンドリング成形品の耐傷性の点から坪量は10〜1000g/m2 であることが好ましく、さらに好ましい坪量は50〜250g/m2 である。10g/m2 より少ないと、耐傷性が発現しにくく、1000g/m2 より多いと含浸が困難となる。これらの繊維は3mm以下の短繊維では補強効果が低く、一方50mmを越える長繊維では均一シート化が困難であり、結果として優れた補強効果が得られない。また、3〜15mmの短繊維が全繊維中20〜100%であることが、強度(補強性)、不織布の均一性の観点からは好ましい。短繊維が20%より少ないと均一な不織布とはならない。これら繊維材料の他に短繊維のセルロースパルプ等を混合することは差し支えない。また、ガラス繊維を用いる場合は、繊維表面をシランカップリング剤でコートしておくことにより、補強効果を高めることができる。
【0010】
シート基材20に含浸させる熱硬化性樹脂としては、表面材としての必要な特性がある樹脂が選択されるため、フェノール類とアルデヒド類との反応により得られるフェノール樹脂を使用する。溶解度、乾燥の容易さの点から有機溶媒に溶解もしくは分散させたものを用いる。さらにこれらに各種の充填剤、例えばステアリン酸鉛、ジブチル錫ジラウレート、カーボンブラック、炭酸カルシウム、チタンホワイト、雲母、ガラス球、水酸化アルミニウム、酸化アンチモン、トリ(2,3ジプロモプロピル)ホスフェート、脂肪族スルフォン酸塩、高級アルコール酸塩エステル等、熱安定剤、強化剤、難燃剤、帯電防止剤等が配合されて使用することもできる。また、フェノール樹脂の製造に必要な触媒としては、アルキルアミン、アンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化バリウム等が好ましい。特に、アルキルアミン、アンモニアについては他の2つに比べ分子量も大きく、分子構造上、水和性が低いので貼り合わせ後の耐水性が飛躍的に向上する。この時、フェノール樹脂は、固形分20〜80%となるように有機溶媒に溶解もしくは分散されていることが含浸の容易さの点から好ましい。固形分が20%未満だと必要量含浸することが困難となり、80%より多いと粘度上昇により含浸が困難となる。
【0011】
フェノール樹脂を溶解もしくは分散させる有機溶媒としては、フェノール樹脂を溶解する能力が高いことから、メタノール,エタノール等の低級アルコール、アセトン,メチルエチルケトンなどのケトン類、トルエン,キシレン等のうち1種もしくは2種以上混合して用いられる。特に、乾燥の容易さを考慮して、沸点の低い低級アルコール類、特にメタノールが好適に用いられる。
【0012】
熱硬化性樹脂として使用するフェノール樹脂は、シート基材20に、固形分50〜500g/m2 、好ましくは150〜350g/m2 になるように含浸させる。50g/m2 未満だと充分な耐傷性を発現しにくく、500g/m2 以下でなければ硬化時間がかかり、端部からのはみだし等外観上も問題がある。含浸方法は、例えば図2に示すようにシート基材20をローラでフェノール樹脂溶液10中へディッピングし、その後一定条件下で乾燥させてプリプレグ状態のシート2を得る。
【0013】
シート2としてはガラス不織布のいずれか1つをシート基材20としてこれに熱硬化性樹脂を含浸させたものを単独で用いず、例えばこれを複数枚用いたり、これに紙を貼り合わせたものをシート2として用いることもできる。例えば、未硬化のフェノール樹脂をガラス不織布に含浸させ、これに紙を貼り合わせたものを用いれば全体の強度や寸法安定性が飛躍的に向上する。
【0014】
シート基材20に含浸させる熱硬化性樹脂は含浸後半硬化状態であることが望ましく、シート2はプリプレグ状態となり、これを台板1上に重ね、このプリプレグ状態のシート2上に化粧材3を重ね合わせ、これらを熱プレスすれば、互いに強固に接着される。プリプレグは、繊維補強剤と熱硬化性樹脂、その他必要に応じ熱可塑性樹脂、着色剤、硬化触媒等を混和してなる強化プラスチックの、接着性と成形性の能力を残した硬化終了前の半硬化状態の成形素材であり、好ましいゲルタイムは150℃の設定温度において30秒〜800秒である。
【0015】
シート基材20に含浸させる熱硬化性樹脂を、含浸後半硬化状態にするための乾燥条件として、シート2のできあがり溶媒分率の下限を0%、好ましくは3%以上、さらに好ましくは5%以上、上限を15%以下、より好ましくは10%以下とする。15%以下でない場合は、シート同士ブロッキングをおこす。また、乾燥時間と温度の関係を表1に示す。表中○はでき上がりのプリプレグシートの状態が使用可能、△は使用するにあたりあまり好ましくない、×は使用不可能を示す。
【0016】
【表1】
【0017】
表1に示すように80〜120℃の温度で乾燥時間1〜30分で好ましい半硬化状態のシートを得ることができる。
【0018】
プリプレグシートの引張強度としては、充分な耐傷性発現のためには、破断強度10kgf/ cm 2 以上であることが好ましい。10kgf/ cm 2 未満では充分な耐傷性が発現しない。破断強度の測定は、プリプレグ状態のシート2を2枚の離型紙間に挟み、150℃、5分、10kgf/cm2 の条件下で熱プレスして樹脂を硬化させた後のものについて行った。
【0019】
化粧材3は化粧張り用の木の薄板や予め模様等が印刷あるいは凹凸加工が施された紙等が好適に使用でき、厚みは1mm以下が好ましい。化粧材3の材質も樹脂の含浸を可能とするものが選ばれる。
【0020】
実施例1
台板1・・・12mm厚さの合板
化粧材3・・・0.3mm厚さの檜単板
ガラス不織布・・・繊維径10μm、短繊維と長繊維の混合繊維からなる坪量100g/m2 のガラス不織布に固形分58%のメタノール溶解系フェノール樹脂を含浸させて固形分200g/m2 のものを得、含浸後105℃で10分間乾燥させて半硬化のシート2を得た。
台板1上にシート2を重ね合わせ、シート2上に化粧材3を重ね合わせてプレス温度150℃、圧力10kgf/cm2 、プレス時間5分で木質仕上材を製造した。
【0021】
実施例2
実施例1と同様の台板1と化粧材3を使用し、実施例1と同一のガラス不織布に固形分58%のメタノール溶解系フェノール樹脂を含浸させて固形分300g/m2 のものを得、実施例1と同一条件で乾燥させて半硬化状態とした。接着時のプレス条件はプレス時間を10分とし、他の条件は実施例1と同一とした。
【0022】
比較例
実施例1で使用したフェノール樹脂の替わりにDAP樹脂を使用し、その他の条件は実施例1と同一とした。
【0023】
上述した実施例1,2、比較例について、JIS A−1408に準拠し、鋼球落下試験を行った。この試験は、2号鋼球(540g)をサンプル上に落下させたときのサンプルのくぼみ深さを測定したものである。サンプルは砂上全面支持された状態におく。その結果は、次の表2の如くになった。
【0024】
【表2】
【0025】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明によれば、樹脂の含浸を可能とする台板上にシート基材にメタノールに溶解させたフェノール樹脂を含浸させたプリプレグ状態のシートを重ね合わせ、このシート上に樹脂の含浸を可能とする化粧材を重ね合わせて熱プレスして互いに接着した木質仕上材であって、前記シート基材として、坪量50〜250g/m2、3〜15mmの短繊維が全繊維中20〜100%となるようにガラス繊維を単独で用いたガラス不織布を用い、前記フェノール樹脂は固形分20〜80%となるように溶解され、かつシート基材に対して固形分150〜350g/m2になるように含浸されるとともに、シートのできあがり溶媒分率が5〜10%とされているので、シートの熱硬化性樹脂が化粧材に含浸硬化し、化粧材の対傷性を向上させる。また、台板上に化粧材を接着するための接着剤は不要となり、熱プレスするだけで台板上にシート並びに化粧材を確実に貼り合わせることができるので、製造も容易である。さらに、温度や湿度の変化に対してもシートの存在により寸法安定性に優れ、強度面でも向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の好適な実施例を示す断面図。
【図2】シートの製造例を示す説明図。
【符号の説明】
1 台板
2 シート
3 化粧材
Claims (2)
- 樹脂の含浸を可能とする台板上にシート基材にメタノールに溶解させたフェノール樹脂を含浸させたプリプレグ状態のシートを重ね合わせ、このシート上に樹脂の含浸を可能とする化粧材を重ね合わせて熱プレスして互いに接着した木質仕上材であって、
前記シート基材として、坪量50〜250g/m2、3〜15mmの短繊維が全繊維中20〜100%となるようにガラス繊維を単独で用いたガラス不織布を用い、
前記フェノール樹脂は固形分20〜80%となるように溶解され、かつシート基材に対して固形分150〜350g/m2になるように含浸されるとともに、シートのできあがり溶媒分率が5〜10%とされていることを特徴とする木質仕上材。 - 前記ガラス繊維をシランカップリング剤でコートしたことを特徴とする請求項1に記載の木質仕上材。
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