JP3621926B2 - 太陽光発電装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、太陽電池などの直流電源の電力を商用電力系統ヘ連系するための太陽光発電装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、太陽電池で発電した直流電力を商用電力系統に連系する太陽光発電システムが普及しはじめている。このようなシステムに用いられる太陽光発電装置としては、昇圧チョッパ(以下、チョッパという)と単相PWMインバータ(以下インバータと言う)を用いたものが一般的である。つまり、電気設備基準に基づく安全上の問題などから、太陽電池の発電電圧を低く抑えておき、チョッパによって所望の直流電圧に昇圧した後にインバータによって交流電圧に変換して商用電力系統に連系している。このような太陽光発電システムは、例えば、特開平10−97330号公報や、電気学会論文集D118巻12号(電力の電圧微分に基づく太陽光発電システムの最大電力制御法:平成10年発行)などに報告されている。
【0003】
上記公報等に記載された技術によれば、チョッパ制御においては、太陽電池の日射量や温度の変化に関わらず、常に、太陽電池から最大電力を供給する最大電力追従制御が行われている。また、インバータ制御においては、交流出力電流制御及びインバータの直流入力電圧制御が行われている。このうち、チョッパ制御で行われている最大電力追従制御は、太陽電池の出力電力の電圧微分値が最大電力点においてゼロになることに着目して行われている。つまり、太陽電池の出力電力の電圧微分値をフィードバック制御して、それをゼロにするような制御系を形成している。これによって、日射量や太陽電池の温度変化に関わらず、常に太陽電池の最大出力電力を追尾した太陽電池の電圧制御を行うことができる。
【0004】
図4は、従来の太陽光発電装置の主回路構成図である。同図において、直流電源である太陽電池1からの直流電力は、チョッパ2に供給されて所望の電圧に昇圧され、さらに、インバータ3によるPWM制御によって交流変換された後、出力フイルタ4を介して商用電力系統5に供給される。このとき、太陽電池1の出力電力最大点で動作させる制御を高速且つ安定に行うために、チョッパ制御器6が、太陽電池電流(以下、電池電流)Isと太陽電池と並列接続されたコンデンサC1の電圧(以下、電池電圧)EsとリアクトルLの電流(以下、リアクトル電流)Iiとを検出し、トランジスタTをスイッチング制御して、太陽電池1の最大出力電力を追尾した太陽電池の電圧制御を行っている。
【0005】
すなわち、電池電流Isと電池電圧Esとを検出して、太陽電池電力(以下、出力電力)Ps(=Is×Es)を電池電圧Esで微分した微分値(dPs/dEs)から最大電力追従制御を行っている。このとき、太陽電池の特性として電池電流Isが増加すると電池電圧Esが下がってしまうので、リアクトル電流Iiを検出して、トランジスタTのスイッチングデューティ比を制御することにより電池電圧Esの制御を行っている。つまり、電池電圧Esを制御することによって太陽電池の出力電力Psを制御するわけであるが、この電池電圧Esを制御するために、チョッパ2の入力のコンデンサC1に流れ込む電流(Is−Ii)を制御する必要がある。このため、電池電流Isと電池電圧Esとリアクトル電流Iiの3系統の検出を行っている。尚、インバータ3においては、インバータ制御器7が、インバータ入力電圧Edとインバータ出力電圧Voとインバータ出力電流Ioとを検出して、交流出力電流制御と直流入力電圧制御とを行っている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、従来の太陽光発電装置においては、図4から明らかなように、チョッパ2で最大電力追従制御を行うためには、チョッパ制御器6が、電池電流Isと電池電圧Esとリアクトル電流Iiとの3系統の情報を検出して制御を行わなければならない。つまり、電池電流Isと電池電圧Esとを検出して、これらの積Es・Isより電池電力Psを算出し、出力電力Psの電池電圧Esに対する微分値(dPs/dEs)がゼロになるように制御して最大電力追従制御を行いながら、リアクトル電流Iiを検出して、電池電流Isとリアクトル電流Iiとの差(Is−Ii)から、最大電力点において所定の電池電圧Esが得られるようにしてチョッパの出力電圧制御を行っている。
【0007】
つまり、従来の太陽光発電装置におけるチョッパ側の最大出力追従制御は、検出系統が3系統となるために必然的に検出器が3個必要となる。このため、検出系統及び制御系が複雑になり、制御系の安定性を悪くする要因となると共に、検出器の個数や制御回路の部品点数が増えるなどして、太陽光発電装置全体をコストアップさせる要因となるという課題があった。
また、商用電力系統の電圧が低いのに、高い直流バス電圧をインバータに印加するとインバータを構成するスイッチング素子の損失が大きくなるという課題があった。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、太陽電池の出力電力最大点で動作させる制御を、少ない検出系統によって簡単且つ安定に行えるようにすることにある。
また、商用電力系統の電圧変化にともなって直流バス電圧すなわちインバータ入力電圧を変化させることによってインバータを構成するスイッチング素子のスイッチング損失を低減することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、本発明の太陽光発電装置は下記手段を講じている。
請求項1に記載の太陽光発電装置は、太陽電池電源の電圧を昇圧手段によって昇圧した後、直流−交流変換手段によって交流電圧に変換して商用電力系統と連系させる太陽光発電装置において、昇圧手段が、太陽電池電源の出力電流と昇圧手段の入力電圧とを検出し、且つ検出された出力電流及び入力電圧によって生成された制御信号の電圧レベルに対して、起動時にオフセット電圧を重畳することにより、太陽電池電源の出力電力最大値を追尾する最大出力追従制御を行うことを特徴とする。
【0010】
この手段により、太陽電池電源の直流電圧を昇圧して直流−交流変換手段に供給するための昇圧手段が、従来のように2系統の電流検出と1系統の電圧検出を行うのではなく、1系統の電流検出と1系統の電圧検出のみによって最大出力追従制御を行えるようにしたものである。つまり、1系統の電流検出とするために、本発明では、変化するオフセット電圧を制御信号に重畳することにより、従来の3系統検出の場合と同様に、太陽電池電源の出力電力最大値を追尾するように太陽電池の出力電圧制御を行うことができる。このように、従来方式に比べて電流検出器を1個減らしても、高速且つ安定的に、最大出力電力追従制御を行うことができるので、制御系が簡略化されて太陽光発電装置全体のコスト削減を図ることができる。
【0011】
また、請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の太陽光発電装置において、昇圧手段はチョッパ回路であり、このチョッパ回路は、太陽電池電源の出力電力最大値において出力電圧制御を行うチョッパ制御手段を備えている。そして、チョッパ制御手段が、太陽電池電源の出力電流Isと、チョッパ回路の入力に形成されたコンデンサの入力電圧Esとを検出し、且つ検出された出力電流Is及び入力電圧Esによって生成された制御信号の電圧レベルに対して、起動時にオフセット電圧を重畳することにより、最大出力追従制御を行うことを特徴とする。
【0012】
この手段により、従来のようにチョッパ回路における2系統の電流検出と1系統の電池電圧検出を行うことなく、1系統の電流検出と1系統の電池電圧検出によって太陽電池電源の最大出力追従制御を行うことができる。但し、起動時において、制御信号に対して、オフセット電圧を重畳することによって、最大出力追従制御を行うことができる。このような制御系にすることによって比較的精度の高い制御を行うことができると共に、検出器が1個削減されたことによって制御系が単純化されるので、制御の安定性が高まると共に、制御回路全体が簡略化されて太陽光発電装置全体のコストの削減化を図ることができる。
【0013】
また、請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の太陽光発電装置において、最大出力追従制御は、チョッパ制御手段が、検出された出力電流Is及び入力電圧Esに基づいて、太陽電池電源の出力電力Psを演算し、さらに、出力電力Psを入力電圧Esで微分して微分値(dPs/dEs)を演算して、この微分値(dPs/dEs)の目標値をゼロとすることにより実現されることを特徴とする。
【0014】
この手段により、太陽電池は、出力電力の電圧微分値であるdPs/dEs=0の点で出力電力Psが最大値となるので、dPs/dEsをゼロにするような制御をすれば、太陽電池の日射量や温度の変動に関係なく、常に、最大電力追従制御を行うことができる。
【0015】
また、請求項4または請求項5に記載の発明は、オフセット電圧が、可変であることを特徴とする。さらに、オフセット電圧は、チョッパ制御手段の制御信号が太陽電池電源の出力電力最大値の近傍で制御を行うように、リミット値が設定されていることを特徴とする。したがって、電流検出器を1個削減しても、従来技術と同様に最大電力追従制御を行うことができる。
【0016】
また、請求項6または請求項7に記載の発明は、請求項1から請求項5の何れかに記載の太陽光発電装置において、前記チョッパ制御手段が、前記商用電力系統の電圧を検出する電圧検出部と、該電圧検出部が検出した電圧に対応する直流バス電圧指令値を規定した電圧指令テーブルとを備え、前記連系点の電圧変化にともなって前記直流バス電圧を変化させることを特徴とし、前記電圧指令テーブルは、前記連系点の電圧と前記直流バス電圧指令値とが所定の範囲内で1次増加関数であることを特徴とする。
【0017】
この手段により、商用電力系統の電圧が低かったとき、直流バス電圧を低下させる制御を行うことによってインバータを構成するスイッチング素子のスイッチング損失を低減させることができる。
【0018】
また、請求項8に記載の発明は、請求項1から請求項7の何れかに記載の太陽光発電装置において、直流−交流変換手段はPWM制御インバータであることを特徴とする。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、図面を用いて、本発明による太陽光発電装置の実施の形態について詳細に説明する。図1は、本発明の一実施の形態による太陽光発電装置の主回路構成図である。同図において、直流電源である太陽電池1からの直流電力は、チョッパ2に供給されて所望の電圧に昇圧され、さらに、インバータ3によるPWM制御によって交流変換された後、出力フィルタ4を介して商用電力系統5に供給される。このとき、太陽電池1の出力電力最大点で動作させる制御を高速且つ安定に行うために、チョッパ制御器6が、太陽電池の出力電流である電池電流Isと太陽電池と並列接続されたコンデンサC1の電圧である電池電圧Esとを検出すると共に、電池電圧を制御するための電圧指令値に対して、起動時にのみオフセット電圧を重畳してトランジスタTをスイッチング制御している。これによって、起動時から定常時まで、太陽電池1の最大出力電力を追尾しながら電池電流Is(すなわち検出電流)の大きさに応じて、電池電圧の電圧制御を行っている。
【0020】
また、インバータ3においては、インバータ制御器7が、インバータ入力電圧Edとインバータ出力電圧Voとインバータ出力電流Ioとを検出して、交流出力電流制御とインバータ入力電圧制御とを行っている。すなわち、インバータ3の出力側は絶縁トランスを介さないで商用電源側へ連系しているので、交流出力電流に直流成分が含まれないように交流出力電流制御を行っている。尚、インバータ側の動作については本発明とは直接的には関係ないので、以下の説明では省略する。
【0021】
つまり、本発明の特徴とするところは、チョッパ制御器6が、図4に示した従来技術のようなリアクトル電流Iiを検出することなく、トランジスタTをスイッチング制御して、太陽電池の最大電力追従制御を行っていることである。すなわち、太陽光発電装置の起動時においては、電池電流IsはコンデンサC1に充電されリアクトル電流Iiはゼロである。
【0022】
ところが、本発明ではリアクトル電流Iiを検出していないので、コンデンサ電流を検出することができない。したがって、起動時においては、電池電圧Esに基づく出力電力Psの算出や、出力電力の電圧微分値dPs/dEsの算出を行うことができないので、制御に必要な電圧指令値を生成ことができない。そこで、本発明では、起動時において、電池電圧の指令値にオフセット電圧を重畳することにより、最大出力追従制御を行うことができる。以下、これについて詳しく説明する。
【0023】
図2は、太陽電池の出力特性の一例である。つまり、ある日射量のときの、太陽電池の電池電圧Es−電池電流Is特性、電池電圧Es−出力電力Ps特性、及び電池電圧Es−出力電力の電圧微分値dPs/dEs特性を示している。すなわち、図2から明らかなように、出力電力の電圧微分値dPs/dEsと太陽電池の電池電圧Esとの関係は単調で、太陽電池は、dPs/dEs=0の点で出力電力Psが最大値(Psmax)となっている。つまり、太陽電池の日射量や温度の変動に関係なく、出力電力Psの最大電力点PsmaxでdPs/dEs=0が成立する。したがって、最大電力追従制御は、太陽電池のdPs/dEsを0にするような制御すればよいことが分かる。
【0024】
図3は、本発明の太陽光発電装置におけるチョッパ制御系のブロック線図である。つまり、この図は、電力微分演算器11と最大電力補償器12からなる最大電力追従制御部と、積分器13とリミッタ14からなる起動用オフセット電圧重畳部と、比例積分制御部15からなるチョッパ制御部とによって構成されている。また、図中において、Esは電池電圧、Es*は電池電圧指令値、Psは電池の出力電力、dPs/dEsは出力電力の電圧微分値、(dPs/dEs)*はdPs/dEsの指令値、ΔEsは電池電圧Esの電池電圧指令値Es*に対する偏差である。また、S1はチョッパ2のトランジスタTに入力されるチョッパ制御信号であり、比例ゲインKpを有する比例制御信号と積分ゲインKIを有する積分制御信号との加算値で表される。すなわち、S1は次の式(1)で表され、前項が比例制御信号で後項が積分制御信号である。
S1=KpΔEs+KI∫ΔEs dt (1)
【0025】
先ず、理解を容易にするために定常状態における動作について説明すると、図3において、電力微分演算器11へ電池電流Isと電池電圧Esの検出信号を入力すると、出力電力Ps=Is×Esが求められ、さらに、出力電力Psを電池電圧Esで微分してdPs/dEsが得られる。そして、このdPs/dEsを(dPs/dEs)*=0の指令値と比較して偏差を求め、電力補償器12に入力すると最大電力追従制御を行うための電圧指令信号が生成される。
【0026】
ここで、太陽電池における最大電力追従制御の機能について考察する。今、トランジスタTにおけるデューティサイクルのオン比率Dを大きくすると、電池電流Isは単純に増加して電池電圧Esは単純に降下する。このとき、出力電力の電圧微分値dPs/dEsは単純に増加する。したがって、dPs/dEsの目標値(dPs/dEs)*を0としてdPs/dEsをフィードバックし、それらの偏差を増幅して電池電圧指令値Es*とし、電池電圧Esの制御を通してトランジスタTのオン比率Dを制御すれば、最大電力追従制御を行うことができる。
【0027】
このような検出方法によれば、従来技術のリアクトル電流Iiを検出して制御を行う場合より、定常時においては、若干、制御系のゲインは下がるものの、通常の使用状態では支障のないレベルのゲインで、最大電力追従制御を行うことができる。つまり、定常時においては、リアクトル電流Iiを検出しなくても、最大電力追従制御を行うための比例積分制御器15のゲインを所定のレベルに保持することができる。そこで、本発明のもう一つの解決点は、起動時において、リアクトル電流Iiを検出しなくても、最大電力追従制御が正常に行えるようにしたことである。
【0028】
さて、図3に戻って起動時の動作について説明する。先ず、電力微分演算器11が、電池電流Isと電池電圧Esの検出信号を入力して出力電力Ps=Is×Esを求め、出力電力Psを電池電圧Esで微分してdPs/dEsを生成する。そして、このdPs/dEsを(dPs/dEs)*=0の指令値と比較して偏差を求め、これを電力補償器12に入力して最大電力追従制御を行うための電圧指令信号を生成する。太陽電池の最大電力に追従するためには、起動時において前述のdPs/dEsは負にならなければならない。しかし、起動時の電池電流はほぼ零であり、さらに、量子化誤差や検出遅れ等の検出器ノイズ等の影響により電池電圧及び電池電流の検出値には誤差が存在するためdPs/dEsの値には誤差の影響が大きくなる。一方で、起動時に於いてdPs/dEsの値が、一旦正の値になると、電圧指令信号は増加するが、電池電圧は開放電圧より高くなり得なく、dPs/dEsは正の値を維持することになる。つまり、本発明では、検出器ノイズ等の影響のため起動時に於いて最大出力電力に追従することができない。そこで、起動時においては、ある一定値を積分器13に入力するとオフセット電圧が生成され、このオフセット電圧を電圧指令信号に重畳することによって、電池電圧指令値E*を生成することができる。
【0029】
つまり、積分器13に負の値の一定値aを入力すると、積分器13に予め設定されている初期値bから、入力された一定値aを時間積分した積分値cが減算されて行く。そして、b−c(つまり、初期値bから積分値cを引いた値)がリミッタ14で設定されているリミット値dになるまで減算される。このようなb−cの値は、減衰して最終的にはリミット値dになるようにしておく。これによって、起動時において、dPs/dEsの目標値に対する偏差によって生成された電圧指令信号にオフセット電圧を重畳することによって、起動時における電池電圧指令値E*を、リアクトル電流Iiを検出した場合と等価な値にすることができる。
【0030】
そして、電池電圧Esの電池電圧指令値E*に対する偏差ΔEsを比例積分制御器15に入力することによって、前述の式(1)に示すような比例制御信号と積分制御信号とからなるチョッパ制御信号を生成して最大電力追従制御を行うことができる。尚、リミッタ14の設定値は、太陽電池の出力電力が最大電力点Psmaxの近傍に来るような値に設定しておけば、起動時から定常状態に移行した時点で、直ちに最大電力追従制御に入ることができる。また、実験によれば、起動から最大電力点に到達するまでは10秒以内であるので、従来のようにリアクトル電流Iiを検出しなくても、充分に実用可能なレベルのゲインを確保することができる。
【0031】
図1の直流バス電圧Edは、インバータ3によって逆変換された交流電圧が商用交流電力系統5の連系点電圧Voよりも低いと、電力を送出することができないので、次式(2)によって規定される電圧とするのが通例である。
Ed=α・√2・Vo (2)
ここで、αはインバータ3のスイッチング素子T1〜T4の飽和電圧によるロス、その他を含めた余裕率である。
【0032】
連系点Voの最大値を220[V]、余裕率αを1.12として(2)式に代入すると、直流バス電圧Ed≒350[V]となり、通常、直流バスがこの電圧を維持するようにチョッパ制御を行う。
ところが、連系点の電圧Voは200[V]以下にまで低下する場合があり、この場合は直流バス電圧とEdとして350[V]よりも低い電圧とすることが可能であり、チョッパ2およびインバータ3の損失を低減することができる。
【0033】
インバータ3のスイッチング素子であるIGBTのスイッチング損失Pswは、(3)式によって与えられる。
Psw=(1/6π) (Ed+2Vce) (Ton+Toff)・Ic・fsw (3)
ここで、Vce: コレクタ−エミッタ間飽和電圧、Ton,Toff: スイッチング素子のターンオン時間,ターンオフ時間、Ic: コレクタ電流、fsw: スイッチング周波数である。
スイッチング素子のターンオン時間Ton、ターンオフ時間Toffは素子によって定まり、コレクタ電流Ic、スイッチング周波数fswは動作条件によって決まるため、定数と考えることができる。
また、コレクタ−エミッタ間飽和電圧Vceは直流バス電圧Edに比較して十分小さいため、Vce=0と近似すると、スイッチング損失Pswは直流バス電圧Edに比例する。
【0034】
従って、直流バス電圧Edを必要最小限の電圧レベルになるように制御すれば、インバータ3のスイッチング損失を低減することができ、効率を向上させることができる。
そこで、図6に示した特性を持つ電圧指令テーブルをチョッパ制御部6に内蔵し、連系点電圧の変化にともなって直流バス電圧を制御するようにチョッパ2のスイッチング素子Tを駆動すれば、インバータ3のスイッチング損失を低減することができる。
【0035】
図6のテーブルは、連系点電圧Voが200[V]において直流バス電圧Edを300[V]とし、連系点電圧Voが220[V]において直流バス電圧Edを350[V]とし、連系点電圧Voが200[V]から220[V]の範囲では、1次増加関数特性とする。
また、Voが220[V]を超える範囲では、連系運転を行わないため、図に示すようにEdが一定の電圧350[V]を保つようにする。Voが200[V]以下の範囲では、170[V]まで連系を可能としなければならないが、制御の単純化を図るためEdは300[V]一定の電圧とする。
【0036】
以上述べた実施の形態は本発明を説明するための一例であり、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲で種々の変形が可能である。例えば、本発明の他の実施の形態について説明する。図5は本発明の他の実施の形態による太陽光発電装置の主回路構成図である。この図が上述の一実施の形態の図1と異なるのは、チョッパ制御部6が商用電力系統の電圧Voを検出している点のみであり、その他は図1と同一である。また、上記の実施の形態では太陽電池電圧を昇圧する手段としてチョッパ回路を用いた場合を例に挙げたが、これに限ることはなく、例えばリンギングチョーク方式のコンバータ(いわゆるRCC)などを用いてもよいし、その他どのような回路であってもよい。すなわち、オフセット電圧を生成して、起動時の制御電圧指令値に対してこのオフセット電圧を加算するような制御系を構成すれば、どのような回路であっても本発明を実現することができることは言うまでもない。
【0037】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の太陽光発電装置によれば、従来方式に比べて電流検出器を1個減らしても、高速且つ安定的に、最大出力電力追従制御とチョッパの出力電圧制御を行うことができる。このように、検出器が削減されたことによって制御系を単純化することができるので、制御の安定性が高まると共に、制御回路全体が簡略化されて太陽光発電装置全体のコストの削減化を図ることができる。
【0038】
また、連系点電圧の変化に対応して直流バス電圧を制御することによってインバータのスイッチング素子の損失を低減することができ、装置の効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態による太陽光発電装置の主回路構成図である。
【図2】太陽電池の出力特性の一例である。
【図3】本発明の太陽光発電装置におけるチョッパ制御系のブロック線図である。
【図4】従来の太陽光発電装置の主回路構成図である。
【図5】本発明の他の実施の形態による太陽光発電装置の主回路構成図である。
【図6】本発明の他の実施の形態による太陽光発電装置の電圧指令テーブルの特性図である。
【符号の説明】
1 太陽電池
2 チョッパ
3 インバータ
4 出力フィルタ
5 商用電力系統
6 チョッパ制御器
7 インバータ制御器
11 電力微分演算器
12 最大電力補償器
13 起動信号積分器
14 リミッタ
15 比例積分制御器
Claims (8)
- 太陽電池電源の電圧を昇圧手段によって昇圧した後、直流−交流変換手段によって交流電圧に変換して商用電力系統と連系させる太陽光発電装置において、
前記昇圧手段が、前記太陽電池電源の出力電流と該昇圧手段の入力電圧とを検出し、且つ検出された出力電流及び入力電圧によって生成された制御信号の電圧レベルに対して、起動時にオフセット電圧を重畳することにより、前記太陽電池電源の出力電力最大値を追尾する最大出力追従制御を行うことを特徴とする太陽光発電装置。 - 前記昇圧手段はチョッパ回路であり、
前記チョッパ回路は、前記太陽電池電源の出力電力最大値において太陽電池の電圧制御を行うチョッパ制御手段を備え、
前記チョッパ制御手段が、
前記太陽電池電源の出力電流Isと、前記チョッパ回路の入力に形成されたコンデンサの入力電圧Esとを検出し、且つ検出された出力電流Is及び入力電圧Esによって生成された制御信号の電圧レベルに対して、起動時に前記オフセット電圧を重畳することにより、前記最大出力追従制御を行うことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電装置。 - 前記最大出力追従制御は、
前記チョッパ制御手段が、検出された前記出力電流Is及び前記入力電圧Esに基づいて、前記太陽電池電源の出力電力Psを演算し、且つ、前記出力電力Psを前記入力電圧Esで微分して微分値(dPs/dEs)を演算し、前記微分値(dPs/dEs)の目標値をゼロとして、前記チョッパ回路の出力電流を制御することにより実現されることを特徴とする請求項2に記載の太陽光発電装置。 - 前記オフセット電圧は、可変であることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の太陽光発電装置。
- 前記オフセット電圧は、前記チョッパ制御手段の制御信号が前記太陽電池電源の出力電力最大値の近傍で制御を行うように、リミット値が設定されていることを特徴とする請求項4に記載の太陽光発電装置。
- 前記チョッパ制御手段は、
前記商用電力系統の連系点電圧を検出する電圧検出部と、
該電圧検出部が検出した電圧に対応する直流バス電圧指令値を規定した電圧指令テーブルと
を備え、前記連系点の電圧変化にともなって前記直流バス電圧を変化させることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の太陽光発電装置。 - 前記電圧指令テーブルは、
前記連系点の電圧と前記直流バス電圧指令値とが所定の範囲内で1次増加関数であることを特徴とする請求項6に記載の太陽光発電装置。 - 前記直流−交流変換手段はPWM制御インバータであることを特徴とする請求項1〜請求項7の何れかに記載の太陽光発電装置。
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