JP3621725B2 - 冷熱剤 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の利用分野】
本発明は冷熱剤に関し、さらに詳細には、室温近辺での温度変化に応じて結晶の溶解、析出が起こるとともに、結晶が塊状化したりすることがなく、優れた冷却性能および感触を有し、頭部や患部などの冷却に使用する場合に違和感を生じたり、袋が破れたりする恐れがなく、快適かつ安全性の高い繰り返し使用可能な冷却具を得るための冷熱剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、頭や患部を冷やす目的などで氷のう、水枕などが古くから使用されている。
また、最近では無機塩類の結晶が溶媒である水に溶ける際に生ずる吸熱を利用した清涼枕が市販されつつあり、これに用いる冷熱剤として例えば硫酸ナトリウムと水、あるいは燐酸水素2ナトリウムと水を組合せたものが知られている(実公平4−21809号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、氷のうや水枕は一般的に重量が大きくなり、また、氷や冷水を使用の度毎に準備する必要があるなど不便な点が多い。
一方、硫酸ナトリウムと水、あるいは燐酸水素2ナトリウムと水を組合せた冷熱剤は簡便さの点では氷のうや水枕よりは優れているが、一度溶解後、再結晶させると結晶の粒が大きくなり、使用時の感触が悪く、不快感を生ずるばかりでなく、そのまま放置しておくと結晶が塊状化し、冷熱剤を収納した袋が固い結晶により、衝撃などで破れてしまうなどの欠点があった。
さらに、これらの冷熱剤は室温近辺で放冷しただけでは結晶の過冷却現象などによって結晶が充分に析出しないことがあるために、状況によっては使用するに先立ち、予め冷蔵庫などで冷却して結晶を析出させなければ充分な性能が得られないなどの欠点があった。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明者らはこれらの課題に対処し、室温近辺の比較的高い温度領域で温度変化に対応して結晶の溶解、析出が起こるとともに、結晶化時に塊状化することがなく、安全で、しかも優れた感触と冷却感を備えた冷熱剤を得るべく研究を重ねた結果、無機塩類と水が混合されてなる冷熱剤組成物にアルコール類を添加することにより、これらの課題を解決しうることを見い出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、無機塩類の結晶が室温近辺での温度上昇により、溶媒である水に溶けて行く際に生ずる吸熱を利用した冷熱剤において、無機塩類および水の混合物にアルコール類が添加されてなることを特徴とする冷熱剤である。
【0005】
本発明における冷熱剤用の無機塩類としては、室温近辺の温度上昇で溶媒である水に溶解し、その際に吸熱する無機塩が用いられ、例えば硫酸塩類、燐酸塩類、炭酸塩類などが使用可能であるが、特に燐酸ナトリウム塩類と、燐酸アンモニウムナトリウムまたは燐酸アンモニウム塩類を混合したものが好適である。
【0006】
燐酸ナトリウム塩類としては、例えば燐酸水素2ナトリウム(NaHPO)、その12HO水和物など、燐酸2水素ナトリウム(NaHPO)、その2HO水和物など、燐酸3ナトリウム(NaPO)、その10HO水和物などが挙げられる。これらのうちでも燐酸水素2ナトリウムおよびその水和物を主成分とするものが好ましい。
【0007】
また、上記の燐酸ナトリウム塩類と併用される燐酸アンモニウムナトリウム塩類または燐酸アンモニウム塩類としては、例えば燐酸水素アンモニウムナトリウム(NaNHHPO)、その4HO水和物、燐酸水素2アンモニウム〔(NHHPO〕、燐酸2水素アンモニウム(NHPO)、燐酸3アンモニウム〔(NHPO〕、それらの3HO水和物などである。これらのうちでも燐酸水素アンモニウムナトリウム、燐酸水素2アンモウムおよびその水和物を主成分とするものなどが好ましい。
【0008】
本発明において、結晶の析出を容易にし、優れた冷却性能を得るなどの目的で無機塩類および水に、さらにアルコール類が添加される。
すなわち、アルコール類が添加された場合は、結晶の析出が容易になるとともに、室温近辺の比較的高い温度領域、例えば23〜28℃などで多量の結晶が析出することとなり、冷蔵庫などで冷却しなくても、充分な量の結晶を析出させることができる。このため人体の冷却においては、室温に放置して結晶を析出させた状態で冷却剤とて使用可能であり、大きな冷却性能が得られるとともに、繰り返し使用可能で、安定した冷却性能が得られる。
【0009】
アルコール類としては、例えばメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコールなどの飽和1価アルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリンなどの多価アルコールなどから選ばれる少なくとも1種のアルコールが用いられる。
これらの中でも、水との相溶性が高いことからメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコールなどが好ましく、また人体に対する安全性および化学的な安定性などからエチルアルコール、プロピレングリコールなどが特に好ましい。
【0010】
冷熱剤の調製方法としては、通常は、上記のような燐酸ナトリウム塩類および燐酸水素アンモニウムナトリウムまたは燐酸アンモニウム塩類自体を水およびアルコール類と混合することによって調製するが、水あるいは、水とアルコールの混合溶液中で反応してこれらを生成する酸、アルカリおよび塩類などを混合し、冷熱剤として用いることもできる。
【0011】
本発明に係る冷熱剤は、室温の比較的低い領域、例えば20〜25℃のような温度で結晶が析出し、体温により温度が上昇する領域、例えば20〜30℃のような温度で析出した結晶が吸熱を生じながら溶解しうるように塩類の濃度、混合割合が適宜定められる。
燐酸ナトリウム塩類と燐酸アンモニウムナトリウム塩類または燐酸アンモニウム塩類を合わせた塩類の重量は、溶液として存在するものと結晶として析出するものを合わせ、無水物換算で通常は、冷熱剤総重量の5〜60重量%、好ましくは15〜35重量%、より好ましくは20〜30重量%である。
塩類の組成割合が5重量%よりも小さくなると室温で再結晶化する量が少なくなり、一方、60重量%よりも大きくなると結晶の量が多くなり過ぎて冷熱剤の流動性が低下する恐れが生ずる。
【0012】
また、燐酸ナトリウム塩類に対する燐酸水素アンモニウムナトリウム、燐酸アンモニウム塩類の割合には特に制限はないが、冷熱剤中の燐酸塩全体に含まれるNaとNH基との割合(Na/NH)がモル比で、通常は1:5〜5:1、好ましくは1:1〜5:1であり、かつ、PO基1モルに対するNaとNH基の合計モル比、すなわち〔(Na+NH)/PO〕が通常は1:1.5〜2.5、好ましくは1:1.8〜1:2.2とされる。Na、NH基およびPO基の割合のバランスがこれらの範囲から外れすぎると、結晶の粒が大きくなったり、塊状化したりする恐れがあり、また、溶液のPHが10以上または4以下となって製造時の取扱いに安全上の問題を生ずる恐れがある。
【0013】
アルコール類の混合割合については、アルコールの種類および水との混合比率によっても異なるが、アルコール類の混合割合が多い場合には無機塩類結晶の溶解量が減少すること、また、その混合割合が少ない場合には結晶析出時において過冷却防止効果が低下することから、通常は、冷熱剤の全重量の0.1〜25重量%、好ましくは0.5〜20重量%である。
【0014】
本発明において、冷熱剤の結晶析出量および溶解温度を調節するなどの目的で必要に応じて上記の塩類にさらに、その他の塩類を併用することもできる。例えば炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウムカリウム、炭酸クロムナトリウム、炭酸スカンジウムナトリウム、炭酸セリウムナトリウム、硫酸ナトリウムおよびこれらの水和物などが併用できる。
【0015】
本発明において、結晶の析出を容易にするなどの目的で結晶核形成剤を添加することが好ましい。
結晶核形成剤としてはリチウム、カリウムまたはアルカリ土類金属の燐酸塩、水酸化物およびそれらの水和物などである。
燐酸塩としては、燐酸カリウム塩類、燐酸ストロンチウム塩類、燐酸リチウム塩類、燐酸カルシウム塩類、燐酸バリウム塩類、燐酸マグネシウム塩類およびそれらの水和物などである。
また、水酸化物としては、例えば、水酸化ストロンチウム、水酸化カルシウム、水酸化リチウム、水酸化バリウム、水酸化マグネシウムおよびそれらの水和物などが挙げられる。
これらのうちでも燐酸カリウム塩類、燐酸カルシウム塩類、燐酸ストロンチウム塩類、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、およびそれらの水和物などが好ましく、燐酸2水素カリウム、燐酸水素2カリウム、燐酸水素カルシウム、燐酸水素ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、およびそれらの水和物などが特に好ましい。
これらの結晶核形成剤はそれぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
【0016】
これらの結晶核形成剤を添加、混合することにより、通常は、結晶は細かく安定した析出状態となるが、水酸化物を用いる場合には、より細かい結晶を析出させるために添加後、一旦80℃程度に加熱した後、冷却し、結晶を析出させて使用することが好ましい。
結晶核形成剤の量は冷熱剤の薬剤全体の0.01〜5重量%、好ましくは0.05〜3重量%である。
【0017】
本発明において、塊状化を防止し、常に細かい結晶状態を維持させ、良好な流動性を保持するとともに、清涼枕などとして用いる場合などにおいて、万一袋が破れても人体に薬液が飛散しないよう安全性を高める目的などで高分子保水剤、増粘剤、高分子凝集剤などを添加することができる。
高分子保水剤としては、例えばポリアクリル酸、でんぷん−アクリル酸グラフト共重合物、マレイン酸共重合物、ポリビニルアルコール、イソブチレン−マレイン酸共重合物など、増粘剤としては、例えばキサンタンガム(多糖類)、カルボキシメチルセルロース、セピオライト粘土など、高分子凝集剤としては、例えばポリメタアクリル酸エステル、ポリアリルアミン、ポリアクリルアミド、キトサン、ポリアクリル酸ソーダ、アクリルアミド−アクリル酸ソーダ共重合物、ポリアクリルアミド部分加水分解物、ポリエチレンオキサイドなどが挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いてもよく、また、2種以上を併用してもよい。
これらのうちでも、高分子系保水剤および多糖類系増粘剤が好ましい。
添加量は、通常は冷熱剤全体の0.01〜3重量%であり、好ましくは0.1〜2重量%である。
【0018】
本発明の冷熱剤は通常は非透水性の袋に密封収納され、主に清涼枕として使用される他、患部などを冷やすための冷却袋などとして使用することもできる。
冷熱剤を収納する袋の材質には合成樹脂フィルムなどが用いられ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ナイロン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソシアネートなどの合成樹脂フィルムおよびこれらの複合フィルムであり、強度、柔軟性、加工のし易さおよび価格面などからポリ塩化ビニル、ナイロンおよびこれらの複合フィルムなどが好ましい。
【0019】
これらを清涼枕とする場合には、冷熱剤は偏平状の袋に収納されるが、より優れた感触をもたせ、快適に安眠でき、疲労回復効果を高める目的で、合成樹脂フィルムの袋の外面の全面または片面を脱脂綿、ガーゼ、吸水性繊維層よりなる不織布、吸水性繊維層を植毛した植毛布などで覆うか、または張り合わせたような形態としてもよい。
扁平状の袋の大きさ、形状には特に制限はなく、通常知られている種々の枕などに適用しうる大きさの面積を有するものであればよく、例えば、長方形、正方形、円形、楕円形など使用目的や好みなどに応じて任意の形状とすることができる。
冷熱剤を収納した偏平状の袋は、例えば、そのまま、またはこれをさらにソフトなカバー材などで覆うか、あるいはポケットなどの収納部が設けられた厚手の枕などに収納されて清涼枕とされる。
【0020】
このようにして得られた清涼枕や冷却袋などは、20〜25℃のような温度で細かい多量の結晶を析出させた状態で使用される。冷熱剤は頭部などを冷却しながらその熱を吸収し、温度上昇によって結晶が再度溶解してゆくが、この間は溶解による吸熱が続くので20〜28℃のような所望の温度に維持され、長時間にわたって爽快感が得られる。また、使用後は20〜25℃のような温度雰囲気下に置くことによって再度結晶が析出するので、そのまま繰り返して使用することができる。
【0021】
なお、本発明の冷熱剤は、結晶の析出時には熱を放出することから、蓄熱剤としての使用も可能であり、例えば上記清涼枕を40℃程度に加温して結晶を溶解させたのち、人体の保温などに用いることもできる。
【0022】
【実施例】
実施例1
厚さ90ミクロンで、220×240mmに裁断した無色半透明軟質塩化ビニルフィルム2枚を重ね合わせ、3辺をそれぞれ5mm幅で高周波溶着して1辺が開口した扁平状の袋を製作した。
この袋内に、無水物換算で燐酸水素2ナトリウム240g、燐酸水素2アンモニウム78g、結晶核形成材として燐酸水素カルシウム2水和物1g、燐酸2水素カリウム1g、高分子保水剤としてサンフレッシュST−500MPS(三洋化成工業(株)製、微粉末タイプ)9g、エチルアルコール10g、およびイオン交換水を加えて総重量1300gとして得た冷熱剤を収納し、開口部を高周波溶着で密封して清涼枕を製作した。
この清涼枕を40℃の恒温水浴槽内に浸漬し、結晶を溶解させてから、25℃の室内に一夜放置したところ、再度結晶が析出した。この結晶は細かく、スラリー状であり、枕全体が柔軟で優れた感触を有していた。
【0023】
次に、使い捨てかいろの温度特性試験法(JIS S4100)を応用し、上記の清涼枕の片面を30℃に保たれた恒温水浴槽の外壁に密着させ、他の片面に熱電対温度計を取付け、面全体を3枚のネルで覆った状態でテープによって固定した後、温度変化を測定した。
その結果、結晶が徐々に溶解しながら温度が上昇し、25℃から28℃に達するまでに約6時間、清涼枕としての快適な温度が維持された。
この清涼枕を再び25℃の室内に1夜放置して結晶を析出させ、その状態を観察したところ、多数の微細な結晶が析出し、全体が若干粘調性を帯びたスラリー状となり、柔軟性でソフト感のあるものが得られた。
この清涼枕について、使い捨てかいろの温度特性試験法を応用した温度測定、および25℃の室内放置による結晶析出状態の観察を10回繰り返したが、いずれの場合においても、25℃から28℃に達するまでに6時間維持されるとともに、室内放置では微細な結晶析出状態が再現された。
【0024】
実施例2
冷熱剤の組成としてエチルアルコールの量を97gに変えたほかは、実施例1と同様の方法で清涼枕を製作した。
この清涼枕について実施例1におけると同様な条件で試験をおこなったところ、結晶が徐々に溶解しながら温度が上昇し、25℃から28℃に達するまでに約6.5時間、清涼枕としての快適な温度が維持された。
次に、この清涼枕を25℃の室内に1夜放置し、その状態を観察したところ、多数の微細な結晶が析出し、全体が若干粘調性を帯びたスラリー状で、柔軟でソフト感のあるものが得られた。
さらに、この清涼枕について実施例1と同様に、温度測定試験と、25℃の室内放置による結晶析出状態の観察を10回繰り返したが、いずれの場合においても25℃から28℃に達するまでに6.5時間持続するとともに、室内放置では微細な結晶析出状態が再現された。
【0025】
実施例3
冷熱剤の組成としてエチルアルコールの量を146gに変えたほかは、実施例1と同様の方法で清涼枕を製作した。
この清涼枕について実施例1におけると同様な条件で試験をおこなったところ、結晶が徐々に溶解しながら温度が上昇し、28℃に達するまでに約7時間、清涼枕としての快適な温度が維持された。
次に、この清涼枕を25℃の室内に1夜放置し、その状態を観察したところ、多数の微細な結晶が析出し、全体が若干粘調性を帯びたスラリー状で、柔軟でソフト感のあるものが得られた。
さらに、この清涼枕について実施例1と同様に、温度測定試験と、25℃の室内放置による結晶析出状態の観察を10回繰り返したが、いずれの場合においても25℃から28℃に達するまでに7時間持続するとともに、室内放置では微細な結晶析出状態が再現された。
【0026】
実施例4
冷熱剤の組成としてエチルアルコールの量を194gに変えたほかは、実施例1と同様の方法で清涼枕を製作した。
この清涼枕について実施例1におけると同様な条件で試験をおこなったところ、結晶が徐々に溶解しながら温度が上昇し、28℃に達するまでに約7時間、清涼枕としての快適な温度が維持された。
次に、この清涼枕を25℃の室内に1夜放置し、その状態を観察したところ、多数の微細な結晶が析出し、全体が若干粘調性を帯びたスラリー状で、柔軟でソフト感のあるものが得られた。
さらに、この清涼枕について実施例1と同様に、温度測定試験と、25℃の室内放置による結晶析出状態の観察を8回繰り返したが、いずれの場合においても25℃から28℃に達するまでに7時間持続するとともに、室内放置では微細な結晶析出状態が再現された。
【0027】
実施例5
冷熱剤の組成としてエチルアルコールをプロピレングリコールにかえてその添加量を20gとしたほかは、実施例1と同様の方法で清涼枕を製作した。
この清涼枕について実施例1におけると同様な条件で試験をおこなったところ、結晶が徐々に溶解しながら温度が上昇し、28℃に達するまでに約6時間、清涼枕としての快適な温度が維持された。
次に、この清涼枕を25℃の室内に一夜放置し、その状態を観察したところ、多数の微細な結晶が析出し、全体が若干粘調性を帯びたスラリー状で、柔軟でソフト感のあるものが得られた。
さらに、この清涼枕について実施例1と同様に、温度測定試験と、25℃の室内放置による結晶析出状態の観察を10回繰り返したが、いずれの場合においても25℃から28℃に達するまでに6時間持続するとともに、室内放置では微細な結晶析出状態が再現された。
【0028】
比較例1
冷熱剤の組成として、エチルアルコールを加えなかったほかは、実施例1と同様の方法で清涼枕を製作した。
この清涼枕について、実施例1におけると同様の条件で試験をおこなったところ、約3時間後には28℃に上昇した。
また、この清涼枕を25℃の室内に1夜放置してその状態を観察したが、結晶はわずかしか析出しなかった。
【0029】
【発明の効果】
本発明は無機塩類および水が混合された冷熱剤にアルコールを添加するものであり、これによって従来技術の欠点であった過冷却状態を防止することができ、冷蔵庫で強制的に冷却すること無しに確実に結晶析出させることができるとともに、繰り返し使用においても、優れた冷却効果が得られるようになった。
従って、この冷熱剤を清涼枕などに応用することによって、優れた冷却性能を有するとともにソフトで感触がよく、快適、かつ安全で、しかも、長時間放置しても結晶が塊状化することがなく、常に安心して繰り返し使用することが可能となった。

Claims (8)

  1. 無機塩類の結晶が室温近辺での温度上昇により、溶媒である水に溶けて行く際に生ずる吸熱を利用した冷熱剤において、無機塩類および水の混合物にアルコール類が添加されてなることを特徴とする冷熱剤。
  2. アルコール類がメチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブチルアルコール、iso−ブチルアルコール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、グリセリンから選ばれる少なくとも1種である請求項1に記載の冷熱剤。
  3. アルコール類の添加量が冷熱剤全体に対して0.1〜25重量%である請求項1記載の冷熱剤。
  4. 無機塩類が燐酸ナトリウム塩類と、燐酸アンモニウムナトリウム塩類または燐酸アンモニウム塩類である請求項1に記載の冷熱剤。
  5. 燐酸ナトリウム塩類が、燐酸水素2ナトリウム、燐酸2水素ナトリウム、燐酸3ナトリウムまたはこれらの水和物から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の冷熱剤。
  6. 燐酸アンモニウムナトリウム塩類または燐酸アンモニウム塩類が、燐酸水素アンモニウムナトリウム、燐酸水素2アンモニウム、燐酸2水素アンモニウム、燐酸アンモニウムまたはこれらの水和物から選ばれる少なくとも1種である請求項4に記載の冷熱剤。
  7. 冷熱剤中に含まれる燐酸塩類の量が、無水物換算で5〜60重量%である請求項4に記載の冷熱剤。
  8. 燐酸ナトリウム塩類が、燐酸水素2ナトリウムまたはその水和物であり、燐酸アンモニウムナトリウム塩類または燐酸アンモニウム塩類が、燐酸水素アンモニウムナトリウムまたは燐酸水素2アンモニウムあるいはそれらの水和物である請求項4に記載の冷熱剤。
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