JP3621212B2 - 垂直クランク軸式内燃機関の防振支持構造 - Google Patents

垂直クランク軸式内燃機関の防振支持構造 Download PDF

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  • Arrangement Or Mounting Of Propulsion Units For Vehicles (AREA)
  • Vibration Prevention Devices (AREA)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、例えばローントラクタ等におけるフレームに対する内燃機関の防振支持構造に適用される、垂直クランク軸式内燃機関の防振支持構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の技術を説明する。
図1は従来の水平クランク軸式内燃機関を具備するローントラクタの側面図、
図2は無端帯(ベルト)式動力伝達機構を有する水平クランク軸式内燃機関の防振支持構造において発生する力の向きを示す正面図であってクランク軸と出力軸とが同一の場合の図、
図3は同じくクランク軸と出力軸とが異なる場合の図である。
従来、内燃機関は水平クランク軸式(垂直シリンダ式)のものが一般的であって、例えば、図1図示のように、車体腹部にディスクモアMを有するローントラクタにおいては、水平クランク軸式内燃機関HEの水平状の出力軸(動力取出軸)1より、ディスクモアの垂直状の駆動軸3に対して、ユニバーサルジョイント4を介設したり、ベベルギア機構を介設したりしていた。
【0003】
また、動力伝達用無端体であるベルトまたはチェーン伝動機構を有する水平クランク軸式内燃機関HEの場合、即ち、図2または図3のように、水平クランク軸式内燃機関HEの出力軸1(図3ではクランク軸CSと別)付設の出力プーリー(または出力スプロケット)1aにベルト(またはチェーン)2を巻回した場合に、出力軸1にかかる力として、ベルト(チェーン)2の張力F2と、出力軸1(クランク軸CS)の回転トルクF1とがある。
このうち、ベルトの張力F2は一方向に一律にかかる力であり、図2及び図3の場合、張力F2は水平方向にかかる。一方、回転トルクF1は、水平クランク軸式内燃機関HEの運転、特に起動時とともに発生し、これが水平クランク軸式内燃機関HEの主な起振力となる。
この回転トルクF1にて主に発生する起振力は、垂直方向に大きく発生するので、図2或いは図3のように、水平クランク軸式内燃機関HEの支持体としてのフレームBに対し、その上面と内燃機関の底面との間に防振部材Aを介設して、内燃機関を搭載する防振支持構造を採用していた。
この場合に、垂直及び水平方向に弾性を有する防振部材Aにおいて、垂直方向のバネ定数は、回転トルクF1による垂直方向の起振力を吸収する上で、小さく、即ち、防振ゴム等の弾性体の可撓性を大きく設定する方がよく、一方、ベルト(チェーン)の張力F2を図2及び図3のように水平方向にかかるものとすれば、水平方向のバネ定数を大きく(弾性体の可撓性を小さく)設定することで、張力F2の引っ張り力に対抗でき、ベルト(チェーン)に引っ張られて出力軸1及び水平クランク軸式内燃機関HEが水平方向に変位する量が低減され、ベルト(チェーン)に無理な力がかからず、スリップしたり波動したりする事態も回避できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
前記のローントラクタ等のように、水平クランク軸式内燃機関より垂直状の駆動軸への伝動機構は、ユニバーサルジョイントやベベルギヤ等、複雑な構造のものを要する。
この垂直状駆動軸への伝動を、垂直クランク軸式内燃機関の出力軸より行うものとすれば、垂直方向の内燃機関出力軸より垂直方向の駆動軸に伝動するのであるから、後記図4に示すように、ベルトやチェーン等の動力伝達用無端帯による簡素な構造の動力伝達機構ですみ、図4では、垂直クランク軸式内燃機関、即ち垂直クランク軸式内燃機関VEの出力軸1付設の出力プーリー1aよりディスクモアMの駆動軸3付設の駆動プーリー3aにベルト2を巻回している。
低コスト化も実現でき、メンテナンスも容易化する。
従来、垂直クランク軸式内燃機関VEを用いる場合には、後記図5の如く、その支持体としてのフレームBに垂直クランク軸式内燃機関VEを直付けしていたが、この場合にはフレームBが内燃機関ごと水平の回転方向に振動する。フレームBを、例えば、図4のローントラクタの車体の一部とすれば、垂直クランク軸式内燃機関VEの振動につられて、車体の振動も大きくなる。
そこで、防振部材を介してフレームに内燃機関を防振支持すれば、フレームの防振を図れるし、更に、防振部材の配設位置によっては、動力伝達用無端帯のベルトやチェーンに無理な力がかかるのも回避できるのである。
【0005】
しかし、垂直クランク軸式内燃機関を支持体としてのフレームに対して防振支持する構造において、垂直クランク軸式の場合、クランク軸回転に伴う起振力は、水平方向に強くかかる。図2及び図3で示した防振支持構造は、垂直方向の振動に対処するものであって、このまま採用することはできない。防振部材を垂直及び水平方向に可撓性を有する弾性体とした場合に、図2及び図3の場合、起振力に対処するための垂直方向のバネ定数は小さく、張力に対処するための水平方向のバネ定数は大きくするものとしていたが、垂直クランク軸式内燃機関を防振支持する場合、回転トルクによる起振力が発生するのも、動力伝達用無端帯(ベルトやチェーン等)による張力が発生するのも水平方向であり、従って、防振部材における水平方向の要求バネ定数が相反する。特に、両方の力の方向が一致する箇所において、例えば、防振部材における両力の方向と平行方向のバネ定数を小さく設定した場合、回転トルクによる起振力は吸収されて、振動が低減するが、一方で、張力に対する対抗性がないため、出力軸及び内燃機関本体が動力伝達用無端帯に引っ張られて大きく変位するとともに、動力伝達用無端帯が無理な形状に変形(スリップや波動等)し、動力伝達用無端帯の耐久性を弱める。また、該バネ定数を大きく、即ち、弾性体の可撓性を小さく設定すれば、動力伝達用無端帯の引っ張り作用による内燃機関の変位量は低減し、動力伝達用無端帯の耐久性は増すものの、起振力を吸収できず、振動が大きくなる。このように、垂直クランク軸式内燃機関の防振支持構造においては、防振部材の取付位置とその取付方向が重要なポイントとなる。
【0006】
更に、回転トルク方向の起振力は、起動時にかなり大きくかかる。これに対して防振部材のバネ定数の小さい方向を一致させた場合、弾性体の可撓性が大きいために撓みが限界を超えてしまうおそれがある。これを防止するには、ある撓み量以上に撓んだ時に、この方向のバネ定数が大きく(即ち撓み量が小さく)なるように設定するのが望ましい。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は、以上のような課題を解決すべく、次のような手段を用いるものである。
垂直クランク軸式内燃機関の出力軸より動力伝達用無端帯を巻回し、該内燃機関の支持体に対し、複数の防振部材を介して該内燃機関を防振支持する構造において、防振部材を、バネ定数が小さい方向を回転トルクによる起振力の作用方向に一致させ、かつ、動力伝達用無端帯の張力の作用方向と回転トルクによる起振力の作用方向とが一致しない位置に配設し、該防振部材における起振力の作用方向に一致させる方向のうち、片方の向きについては、撓みが大きくなるほどその向きのバネ定数が大きくなる特性を有するものとし、かつ、互いにその向きが対向するように少なくとも一組の防振部材を配設したものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を添付の図面を基に説明する。
図4は垂直クランク軸式内燃機関(垂直クランク軸式内燃機関VE)を具備するローントラクタの側面図、図5はフレームBに垂直クランク軸式内燃機関VEを直付けする構造を示す正面図、図6は防振部材Aを介してのフレームBに対する垂直クランク軸式内燃機関VEの防振支持を示す正面図であって、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの下方に配設する場合の図、図7は同じく、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの上方に配設する場合の図である。
【0009】
図8は同じく、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの側方に配設する場合の図、図9は同じく、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの下方に配設する場合で、垂直クランク軸式内燃機関VE底部の高さが均一でない場合の図、図10は同じく、下部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの上方に配設する場合の図、図11は同じく、下部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの側方に配設する場合の図、図12は同じく、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの下方に配設する場合で、防振部材Aを多数にする場合の図、図13は同じく、更に防振部材Aを多数化する場合の図、図14は出力軸1をフレームB下方に突設する場合における、フレームBと垂直クランク軸式内燃機関VEとの間に防振部材4を介設して防振支持する構造の正面図、図15は同じく、フレームBと垂直クランク軸式内燃機関VEとの間の防振部材Aの介設スペースを削除して防振支持する構造の正面図、図16は防振部材A(A1)の平面断面図を含む防振部材A(A1)の配設位置を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図、図17は防振部材A(A1)の配設位置を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図、図18は三個の防振部材A(A1)の配設位置の実施例を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図、図19は四個の防振部材A(A1)の配設位置の実施例を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図、図20は軸芯方向の片方の向きの撓み量を制限した特性を有する防振部材Aの配設位置の実施例を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図、図21は防振部材Aの図20中矢印N向きにおける撓み量に対するバネ定数の特性を示す図、図22は軸芯方向の片方の向きの撓み量を制限した特性を有する防振部材Aの具体的構造とその取付構造を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図、図23は同じく図22中X矢視図、図24は同じく図22中Y−Y線断面図である。
【0010】
まず、無端体式動力伝達機構であるベルト式動力伝達機構を有する垂直クランク軸式内燃機関VEを支持する対象物の実施例として、図4図示の如きローントラクタがある。
ローントラクタには腹部にディスクモアMが吊設されていて、その垂直状の駆動軸3付設の駆動プーリー3aに対し、ローントラクタのボンネット部に内設した垂直クランク軸式内燃機関VEより垂直下方に突設する出力軸1付設の出力プーリー1aよりベルト2を水平方向に巻回している。
図1の水平クランク軸式の水平クランク軸式内燃機関HEより駆動軸3に伝動する場合に比して、動力伝達機構が簡素化されている。なお、以後、ベルト2とあるのは、チェーン2と置き換えてもよく、この場合、出力プーリー1aは出力スプロケット1aと、駆動プーリー3aは駆動スプロケット3aと置き換える。
【0011】
ここで、垂直クランク軸式内燃機関VEをローントラクタ本体に支持する構造としては、従来、図5の如く、垂直クランク軸式内燃機関VEをローントラクタ本体の一部であるフレームBに直付けしていた。
垂直下方に突設される出力軸1には、前記の水平クランク軸式水平クランク軸式内燃機関HEの場合と同様に、ベルト2の張力F2とクランク軸CSの回転に伴う回転トルクF1がかかる。張力F2は水平方向に働く力であり、回転トルクF1も水平方向である。従って、図5図示の構造であると、垂直クランク軸式内燃機関VEに直付けされたフレームBは水平方向に大きく振動し、結果的にローントラクタ本体の水平方向の振動を大きくする。
【0012】
そこで、垂直クランク軸式内燃機関VEをフレームBに対して防振支持する。
まず、図6乃至図13図示の各構成について説明する。
図6乃至図9図示の各構成は、フレームBの上に防振部材Aを配設し、その上に垂直クランク軸式内燃機関VEまたは垂直クランク軸式内燃機関VE付設のブラケットを据え付ける構造(上部据付型)である。
この中で、まず、図6は、垂直クランク軸式内燃機関VEの底部とフレームBの上面との間に防振部材Aを介設するもので、防振部材Aが垂直クランク軸式内燃機関VEの下方に配設されるタイプである。
図7は、垂直クランク軸式内燃機関VE上端に付設した据付用ブラケット5の一部を、フレームB上に配設した防振部材Aの上に据えつけるもので、防振部材Aが垂直クランク軸式内燃機関VEの上方に配設されるタイプである。
図8は、垂直クランク軸式内燃機関VE側面に付設した据付用ブラケット6の一部を、フレームB上に配設した防振部材Aの上に据えつけるもので、防振部材Aが垂直クランク軸式内燃機関VEの側方に配設されるタイプである。
また、図9は、タイプとして図6のものと同じで、垂直クランク軸式内燃機関VEの底面高さが一定でないために、異なる垂直長の防振部材Aを合わせて使用するものである。
【0013】
図10は、防振部材Aが垂直クランク軸式内燃機関VEの上方に配設される点で、図7と同様であり、また、図11は、防振部材Aが垂直クランク軸式内燃機関VEの側方に配設される点で、図8と同様であるが、いずれも、フレームBより下方に垂設した防振部材Aの下端に垂直クランク軸式内燃機関VEまたは垂直クランク軸式内燃機関VE付設のブラケットを据え付けるタイプ(下部据付型)であって、図10の場合には、フレームBより垂設した防振部材Aの下端に、垂直クランク軸式内燃機関VEの上端を据え付け、図11の場合には、フレームBより垂設した防振部材Aの下端に、垂直クランク軸式内燃機関VE側面に付設した据付用ブラケット7を据え付ける。
【0014】
図12及び図13図示の防振支持構造は、図6図示のものと同様(上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VE下方に配設するタイプ)であるが、防振部材Aを多くしたタイプのものである。
【0015】
以上のような防振支持構造の中で、特に図6(図9、図12、及び図13も同様)の場合には、防振部材Aの下方にフレームB、上方に垂直クランク軸式内燃機関VEが配設される状態となっているが、図4のローントラクタのように、本体下方に出力プーリー1aをフレームBよりも下方に配設したい場合には、図14図示のように、本体底部としてのフレームBを貫通するように出力軸1を下方に突設しなければならない。
ここで、フレームB上面と垂直クランク軸式内燃機関VE下面との間に介設される防振部材Aの高さHの分だけ、出力軸1は長くなる。出力軸1が長いと、回転方向のモーメントも大きくなり、また、ベルト2より受ける張力に対しての撓みも強くなるので、できるだけ短くしたい。
そこで、垂直クランク軸式内燃機関VE下方に配設したフレームBの下方に出力軸1を突設する場合においは、図15の如く、フレームBに、防振部材Aを貫通させるための孔を設け、フレームBの上面と垂直クランク軸式内燃機関VE下面との隙間を縮める。これにより、前記の防振部材A介設分の高さH分だけ出力軸1を短縮できる。
なお、図15の如く、防振部材A上端と垂直クランク軸式内燃機関VE底面との間にエンジン側据付用ブラケット8を介設し(防振部材Aの上端を垂直クランク軸式内燃機関VE底面に直付けしてもよい。)、フレームBに貫通させた防振部材Aの下端は、フレームBに付設した据付用ブラケット9上に据えつける。
【0016】
以上のような垂直クランク軸式内燃機関VEのフレームBに対する防振支持の様々な様態において、水平方向の二つの力、即ち、ベルト2による張力F2と回転トルクF1とに対処するため、水平方向(平面視上)における防振部材Aの配設位置が重要となる。
ここでまず、図16及び図17より、防振部材Aの構造について説明する。
大まかな構造としては、ボルトを螺入する雌ねじ等となっている軸芯10の周囲に、ゴム等の弾性体11を環設し、その周囲に外筒12を環設して全体を円柱状にしたものである。
軸芯10の方向については、弾性体11の可撓性が大きいので、バネ定数K1が小さいが、半径方向については、弾性体11の可撓性が小さく、バネ定数K2及びK3は大きくなる(K1<K2,K1<K3)。
即ち、一方向をバネ定数の大きい方向とし、それに直交する方向をバネ定数の小さい方向とする構造となっている。
【0017】
従って、防振部材Aの平面視上における配設位置としては、回転トルクF1方向の起振力を吸収することを第一義として、図16、図18、図19の如く、小さいバネ定数K1を有する軸芯10方向が、回転トルクF1方向に一致するように配設し、かつ、少なくとも、回転トルクF1方向と張力F2方向(と平行な方向)とが一致する位置(例えば、図16中の●印位置等)には配設しないようにする。
図16、図18の中の防振部材A1に関しては、軸芯10方向と直交する半径方向を、ベルト2の張力F2方向に一致させており、回転トルクF1による起振力を吸収するとともに、張力F2への対抗性を特に強くして、ベルト2の引っ張り作用による垂直クランク軸式内燃機関VEの変位を有効に抑止することができる。
【0018】
このように、張力F2と回転トルクF1との両方向が一致しない位置にて、軸芯10方向を回転トルク(起振力)F2方向に一致させて配設する場合に、軸芯10方向は、バネ定数K1が小さく、弾性体11の軸芯10方向の可撓性は大きいが、起動時における起振力はかなり大きいので、弾性体11のこの方向の撓み量も大きくなり、限界を超えてしまうおそれもある。
そこで、撓み量を制限できるように、軸芯10方向の中の一つの向きについては、図21に示すような、撓み量Lが一定以上大きくなると、バネ定数K1が大きくなる性質を持つようにする。(後の図22乃至図24で図示するような構造上、両向きにこの性質を備えることはできない。)
図20の各防振部材Aにおける矢印Nの向きは、この向きを示す。この中で、防振部材Aa・Ab同士と、防振部材Ac・Ad同士は、互いに矢印Nの向きが対向するように配設している。
このように、矢印Nの向きが対向するように配設することで、回転トルクF1方向の両向きにて、図21に示すような、撓み量Lが一定以上大きくなると、バネ定数K1が大きくなる性質を持つようにする。
【0019】
以上のような起動時等の大きな起振力への対抗性を有する防振支持構造の具体的構造を、図22乃至図24にて説明する。
まず、防振部材Aそのものの構造についてであるが、軸芯方向における片方の向きにて、撓み量Lが大きい時にバネ定数K1が大きくなる構造を有すべく、外周形状をテーパー状にした軸芯10を用いている。
また、外筒12もそれに合わせたテーパー形状として、軸芯10と外筒12との間に弾性体11を介装したものとなっている。このような構造上から、弾性体11は、軸芯10の外径が短い方から長い方には撓み許容量が大きい(バネ定数が小さい)ものの、外径が長い方から短い方には、撓みが増すほどバネ定数K1が大きくなり、撓みの許容量は制限される。この向きを、図20で述べた矢印Nとするものである。
【0020】
防振部材Aの垂直クランク軸式内燃機関VE及びフレームBへの具体的な取付構造について説明する。
図23及び図24にて判るように、この構造は、図15で説明した構造を採用したものである。即ち、垂直クランク軸式内燃機関VEにはエンジン側据付用ブラケット8を付設し、フレームBに設けた貫通孔Baにエンジン側据付用ブラケット8を通過させて下方に突出し、この下方突出部にボルト13にて防振部材Aの軸芯10を螺止する。軸芯10は雌ねじになっていて、ボルト13が螺入される。一方、フレームBには、フレーム側据付用ブラケット9が付設され、該フレーム側据付用ブラケット9に防振部材Aの外筒12の端部が固着されているのである。
【0021】
こうして取り付ける防振部材Aの平面視上の配設位置であるが、図22に示す防振部材Ae・Af・Agのように、軸芯10の方向を、出力プーリー1a周囲の回転トルクF1が働く方向に一致させており、かつ、防振部材Ae・Afに関しては、互いにおける弾性体11の撓み量が制限される向きNが対向する向きに配設されている。これにより、回転トルクF1方向に関して、いずれの向きについても、起動時等の大きな起振力に追随する撓み量を制限することができる。
なお、ベルト2に関しては、少なくとも、各防振部材Ae・Af・Agの軸芯10方向にベルト2の張力F2方向が平行にならないように、出力プーリー1aに巻回される。ベルト2を、図22中の一点破線2’の如く、或いは二点破線2”の如く巻回すれば、防振部材Agは、回転トルクF1と張力F2とが直交する位置に配設される図16や図18図示の防振部材A1に該当する。
【0022】
【発明の効果】
本発明は、垂直クランク軸式内燃機関の防振支持構造を以上のようなものとしたので、次のような効果を奏する。
まず、無端帯式動力伝達機構を有する垂直クランク軸式内燃機関を防振支持することで、例えば支持体をローントラクタのフレームとした場合に、従来のような内燃機関に直付けと違って、フレームの内燃機関に対する共振が少なくなり、特に起動時における振動が低減し、快適に作業を行うことができる。また、動力伝達はベルトやチェーン等の動力伝達用無端帯によるものとすることで、例えば、ローントラクタのように、車体腹部に設けるモア駆動用の垂直状の駆動軸に対して、垂直状のクランク軸より動力伝達用無端帯による伝動が可能となり、出力軸から駆動軸までの伝動機構が簡素化し、また、メンテナンスが容易化する。
【0023】
そして、防振部材はその構造上、一方向のバネ定数が小さく、それに直交する方向でバネ定数が大きく設定されている。ところで、垂直クランク軸式内燃機関の出力を動力伝達用無端帯にて伝動する場合には、内燃機関にかかる動力伝達用無端帯の張力と、クランク軸の回転に伴って発生する回転トルクとが、いずれも水平方向である。従って、位置によっては、張力と回転トルクとの方向が全く一致してしまう箇所もある。
張力吸収のためには、張力方向のバネ定数を大きくするのがよく、回転トルク吸収のためには、回転トルク方向のバネ定数を小さくとるのがよい。張力と回転トルクとの方向が一致する箇所では、一方向について、相反するバネ定数が求められるので、このような位置に防振部材を配設すると、いずれかの力の吸収効果を抑制してしまう。
【0024】
このような点から、防振部材を、バネ定数が小さい方向を起振力の作用方向に一致させるように配設することで、内燃機関の起振力は、大きなバネ定数にて吸収することができ、動力伝達用無端帯の張力に対しては、該張力の作用方向と起振力の作用方向とが一致しない位置に配設することで、張力方向にバネ定数の大きい作用をもたらすことができ動力伝達用無端帯による引っ張り作用による内燃機関の変位量を抑制することができる。このように、両力ともに一つの防振部材にて対応できて、有効な防振効果を得られるのである。
【0025】
更に、内燃機関の起動時等には大きな起振力が生じ、防振部材におけるバネ定数を小さく設定した軸芯方向は、この起振力によって撓み量が非常に大きくなり撓み量の限界を超えて、防振部材が破損したり、耐久性を弱めたりすることも考えられるが、防振部材における起振力の作用方向に一致させる方向のうち、片方の向きについては、撓みが大きくなるほどその向きのバネ定数が大きくなる特性を有するものとすることで、この向きについては、大きな起振力が生じる際の撓み量が制限され、更に、互いにその向きが対向するように少なくとも一組の防振部材を配設することで、軸芯方向の両向きについて、撓み量を制限することができ、起動時の防振効果向上、また、防振部材の耐久性向上に貢献する。
【図面の簡単な説明】
【図1】水平クランク軸式内燃機関を具備するローントラクタの側面図である。
【図2】無端帯(ベルト)式動力伝達機構を有する水平クランク軸式内燃機関の防振支持構造において発生する力の向きを示す正面図であって、クランク軸と出力軸とが同一の場合の図である。
【図3】同じくクランク軸と出力軸とが異なる場合の図である。
【図4】垂直クランク軸式内燃機関(垂直クランク軸式内燃機関VE)を具備するローントラクタの側面図である。
【図5】フレームBに垂直クランク軸式内燃機関VEを直付けする構造を示す正面図である。
【図6】防振部材Aを介してのフレームBに対する垂直クランク軸式内燃機関VEの防振支持を示す正面図であって、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの下方に配設する場合の図である。
【図7】同じく、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの上方に配設する場合の図である。
【図8】同じく、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの側方に配設する場合の図である。
【図9】同じく、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの下方に配設する場合で、垂直クランク軸式内燃機関VE底部の高さが均一でない場合の図である。
【図10】同じく、下部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの上方に配設する場合の図である。
【図11】同じく、下部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの側方に配設する場合の図である。
【図12】同じく、上部据付型で防振部材Aを垂直クランク軸式内燃機関VEの下方に配設する場合で、防振部材Aを多数にする場合の図である。
【図13】同じく、更に防振部材Aを多数化する場合の図である。
【図14】出力軸1をフレームB下方に突設する場合における、フレームBと垂直クランク軸式内燃機関VEとの間に防振部材4を介設して防振支持する構造の正面図である。
【図15】同じく、フレームBと垂直クランク軸式内燃機関VEとの間の防振部材Aの介設スペースを削除して防振支持する構造の正面図である。
【図16】防振部材A(A1)の平面断面図を含む防振部材A(A1)の配設位置を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図である。
【図17】防振部材A(A1)の配設位置を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図である。
【図18】三個の防振部材A(A1)の配設位置の実施例を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図である。
【図19】四個の防振部材A(A1)の配設位置の実施例を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図である。
【図20】軸芯方向の片方の向きの撓み量を制限した特性を有する防振部材Aの配設位置の実施例を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図である。
【図21】防振部材Aの図20中矢印N向きにおける撓み量に対するバネ定数の特性を示す図である。
【図22】軸芯方向の片方の向きの撓み量を制限した特性を有する防振部材Aの具体的構造とその取付構造を示す垂直クランク軸式内燃機関VEの平面図である。
【図23】同じく図22中X矢視図である。
【図24】同じく図22中Y−Y線断面図である。
【符号の説明】
VE エンジン(垂直クランク軸式内燃機関)
A・A1 防振部材
B フレーム(支持体)
F1 回転トルク
F2 張力
K1 バネ定数
K2 バネ定数
K3 バネ定数
1 出力軸
1a 出力プーリー(出力スプロケット)
2 ベルト(チェーン)
10 軸芯
11 弾性体
12 外筒

Claims (1)

  1. 垂直クランク軸式内燃機関の出力軸より動力伝達用無端帯を巻回し、該内燃機関の支持体に対し、複数の防振部材を介して該内燃機関を防振支持する構造において、防振部材を、バネ定数が小さい方向を回転トルクによる起振力の作用方向に一致させ、かつ、動力伝達用無端帯の張力の作用方向と回転トルクによる起振力の作用方向とが一致しない位置に配設し、該防振部材における起振力の作用方向に一致させる方向のうち、片方の向きについては、撓みが大きくなるほどその向きのバネ定数が大きくなる特性を有するものとし、かつ、互いにその向きが対向するように少なくとも一組の防振部材を配設したことを特徴とする垂直クランク軸式内燃機関の防振支持構造。
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