JP3621042B2 - 浸漬溶解保持炉 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、金型や砂型鋳造の型に鋳込む金属溶湯を作るための浸漬溶解保持炉に関する。
【0002】
【従来の技術】
金型に鋳込む金属溶湯を作るための溶解保持炉には、いくつかの方式と構造が提案されており、坩堝形電気溶解炉もその一つである。
【0003】
従来の坩堝形電気溶解炉は、坩堝形溶解室の外周に誘導コイルを配置し、この溶解室内に溶解材料を入れて誘導コイルに通電すると、電磁作用によるうず電流で材料を溶解する構造になっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記した従来の坩堝形電気溶解炉は、坩堝形溶解室内で材料を溶解するため、材料に含まれた異物が溶湯に混ざると共に、湯面に発生した酸化物がそのまま給湯されることになり、このため、鋳造製品の品質を低下させるという問題がある。
【0005】
また、一つの坩堝形溶解室内で材料を溶解するため、溶湯全体を鋳造に必要な高温に加熱しなければならず、加熱コストが高くつくという問題もある。
【0006】
そこで、この発明の課題は、材料に含まれた異物や酸化物が給湯する溶湯に混入することがなく、鋳造製品の品質向上が図れると共に、給湯する溶湯の一部を鋳造に必要な高温に加熱することができることにより、加熱コストの低減が図れる浸漬溶解保持炉を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の課題を解決するために、この発明は、溶湯を収納する上面開放状の炉本体と、この炉本体の内部に対して上部から抜き差し自在となる浸漬加熱チューブとからなり、この浸漬加熱チューブの底部に設けた開口に溶湯の通過するフイルターを装着した浸漬溶解保持炉において、前記浸漬加熱チューブは、内部の溶湯を加熱するため周囲の層内に加熱手段が組み込まれ、かつ、上端部周縁に内部溶湯を炉本体内に流出させるための流出部が設けられ、この浸漬加熱チューブを、その底部が炉本体の内部底面に重なる下降位置と、底部が炉本体の内部底面から離れて前記流出部の底部が炉本体の湯面高さよりも下方にある中間位置と、前記流出部の底部が炉本体の湯面高さよりも上方にある上昇位置に位置調整自在となるよう昇降機構で支持し、前記浸漬加熱チューブを炉本体内の溶湯に浸漬する中間位置にした状態で、浸漬加熱チューブ内の溶湯を加熱することにより、浸漬加熱チューブ内の加熱された溶湯と炉本体内の溶湯の温度差によって、浸漬加熱チューブ内の加熱された溶湯が上昇流となって流出部から炉本体に流出し、炉本体の溶湯がフイルターを通って浸漬加熱チューブ内に底部開口から流入する溶湯の流れを生じさせるようにした構成を採用したものである。
【0009】
また、浸漬加熱チューブの内部に湯面検知棒を設け、この湯面検知棒で前記昇降機構を制御し、中間位置にある浸漬加熱チューブを自動的に昇降させるようにすることができる。
【0010】
更に、浸漬加熱チューブの周囲の層内に設けた加熱手段は、浸漬加熱チューブの周壁の内部に誘導コイルを埋設した誘導加熱機構で形成することができる。
【0011】
ここで、炉本体の内部に対して下降位置にある浸漬加熱チューブ内に溶解材料を入れて加熱手段で加熱溶融させ、増加した溶湯は流出部から炉本体の内部に流出し、所定の湯面高さになると浸漬加熱チューブを中間位置に上昇させると共に、内部にフイルターを挿入し、これにより、浸漬加熱チューブ内の溶湯が加熱により上昇し、流出部から炉本体の内部に流出することにより溶湯に対流が生じ、溶湯はフイルターを通過して浸漬加熱チューブ内に流入することにより、材料に含まれた異物が除去される。
【0012】
また、対流によって、浸漬加熱チューブ内から炉本体に溶湯が流れることにより、溶湯の酸化物は炉本体の湯面のみに発生し、浸漬加熱チューブ内から綺麗な溶湯を取り出すことができる。
【0013】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態を図示例と共に説明する。
【0014】
図示のように、浸漬溶解保持炉は、溶湯を収納する炉本体1と、この炉本体1の内部に対して上部から抜き差し自在となる浸漬加熱チューブ2と、炉本体1に対して浸漬加熱チューブ2を上下動させる昇降機構3と、浸漬加熱チューブ2の周壁の内部に組み込んだ加熱手段4と、浸漬加熱チューブ2に対して着脱自在となるフイルター5からなり、前記炉本体1は、外ケース6の内周面にキャスター等の耐火材層7を設けて上面が開放する容器状に形成されている。
【0015】
上記浸漬加熱チューブ2は、キャスター等の耐火材を用い、炉本体1の耐火材層7によって形成された空間内に余裕をもって納まる外径の断面筒状に形成され、その底部に内径よりも一段小径の開口8が設けられ、周壁の内部に加熱手段4が組み込まれ、更に、上端部に同様の材料を用いた環状の上枠9がボルト10での結合によって固定化され、この上枠9の周縁に凹欠状となる溶湯の流出部11を設けた構造になっている。
【0016】
上記加熱手段4は、浸漬加熱チューブ2の周壁に上面で開放する環状の凹部12を設け、この凹部12内に誘導コイル13を螺旋状に組み込み、凹部12内空間をMGO(酸化マグネシウム)粉体等の熱伝導性のよい耐火性の絶縁物14で埋め、誘導コイル13の両端をコード15で浸漬加熱チューブ2の上枠9の上部から外部に引出し、電源と接続するようにした誘導加熱機構で形成されている。
【0017】
前記浸漬加熱チューブ2を上下動させる昇降機構3は、炉本体1上の両側に立設させた支柱16と、上枠9の上部両側に設けた突部17をシリンダ18で連結して形成され、炉本体1に対して浸漬加熱チューブ2を、その底部が炉本体1の内部で耐火材層7の底面に重なる下降位置(図1の状態)と、流出部11の底部が炉本体1の湯面高さよりも下方にあり、溶湯に対流を生じさせる中間位置(図2の状態)と、流出部11の底部が炉本体1の湯面高さよりも上方にある上昇位置(図3の状態)の三段階に位置調整自在となっている。
【0018】
上記浸漬加熱チューブ2の内部に昇降機構3のシリンダ18を制御する湯面検出棒20を配置し、浸漬加熱チューブ2内の湯面の高さをこの湯面検出棒20で検出し、浸漬加熱チューブ2が中間位置にあるとき、湯面の変動に追従して浸漬加熱チューブ2の高さ位置を変化させ、溶湯の対流が円滑に生じるようにしている。
【0019】
また、浸漬加熱チューブ2内に対して着脱自在となるフイルター5は、例えば、均一な連続通気孔のセラミックを用い、浸漬加熱チューブ2の内径に遊嵌する円板状に形成され、浸漬加熱チューブ2の上枠9に取り付けた固定ボルト19により、浸漬加熱チューブ2の内部に挿入して開口8の上部を閉鎖した状態が保持されるようになっている。
【0020】
この発明の給湯炉は、上記のような構成であり、先ず、図1のように、フイルター5を挿入していない浸漬加熱チューブ2を炉本体1の内部に対して下降位置にし、その底部が炉本体1の内部で耐火材層7の底面に重なるこの浸漬加熱チューブ2内に材料を投入し、浸漬加熱チューブ2の誘導コイル13に通電することにより誘導加熱によって材料を溶融させ、材料の所定量の投入と誘導加熱により溶融した溶湯が所定の湯面高さになると、浸漬加熱チューブ2内にフイルター5を挿入して溶湯内に浸漬させ、下端の開口8上に位置させる。
【0021】
次に、浸漬加熱チューブ2を図2のように、流出部11の底部が湯面高さよりも低くなるよう中間位置に上昇させ、加熱手段4により溶湯の加熱を続けると、チューブ炉2内で加熱された溶湯が上昇し、流出部11から炉本体1内に流出すると同時に、浸漬加熱チューブ2内の溶湯より温度の低い炉本体1内の溶湯は、開口8からフイルター5を通過して浸漬加熱チューブ2内に流入し、これにより、図2に矢印で示すように、炉本体1内と浸漬加熱チューブ2内で溶湯の対流が発生する。
【0022】
このように、溶湯を対流させることにより、溶湯がフイルター5を通過することになり、このフイルター5で材料に含まれている異物が捕捉されるので、浸漬加熱チューブ2内は清浄な溶湯になり、また、浸漬加熱チューブ2内の溶湯が流出部11から炉本体1内に流出することにより、溶湯の湯面に生じる酸化物は炉本体1の上部にのみ滞留することになる。
【0023】
溶湯を汲み出すときは、図3のように、浸漬加熱チューブ2を流出部11が湯面よりも上方にある上昇位置に保持し、浸漬加熱チューブ2内の溶湯を閉じ込めた状態にすると共に、加熱手段4により浸漬加熱チューブ2内の溶湯を鋳造温度まで昇温し、この浸漬加熱チューブ2内の溶湯を汲みだして金型に給湯すればよい。
【0024】
浸漬加熱チューブ2内の溶湯が減少すると、浸漬加熱チューブ2を中間位置に下降させ、新たな材料を炉本体内に投入して溶融させることで溶湯量を増やし、上記と同様に炉本体1内と浸漬加熱チューブ2内で溶湯の対流を発生させ、浸漬加熱チューブ2内に清浄な溶湯を確保するようにする。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、この発明によると、炉本体の内部に対して上部から抜き差し自在となる浸漬加熱チューブを、周囲に加熱手段が組み込まれ、底部に設けた開口にフイルターを装着し、上端部周縁に溶湯の流出部を設け、炉本体内の溶湯に浸漬した状態で溶湯に対流を生じさせるように形成したので、溶湯がフイルターを通過することになり、このフイルターで材料に含まれている異物が捕捉されるので、浸漬加熱チューブ内は清浄な溶湯になり、しかも、溶湯の湯面に生じる酸化物は炉本体の上部にのみ滞留することになり、従って、金型に清浄な溶湯を給湯することができ、鋳造製品の品質向上が図れることになる。
【0026】
また、浸漬加熱チューブを上昇位置にしてチューブ炉内の溶湯を鋳造温度まで昇温させることにより、溶湯の一部を鋳造に必要な高温に加熱することができ、溶湯全体を高温に加熱する必要がなくなり、加熱コストの低減が図れると共に、給湯時に浸漬加熱チューブ内の溶湯を高温に加熱するだけでよいので、安全性の面からも好ましい。
【図面の簡単な説明】
【図1】給湯炉の浸漬加熱チューブを下降位置にした状態の縦断面図
【図2】給湯炉の浸漬加熱チューブを中間位置にした状態の縦断面図
【図3】給湯炉の浸漬加熱チューブを上昇位置にした状態の縦断面図
【図4】給湯炉の平面図
【符号の説明】
1 炉本体
2 浸漬加熱チューブ
3 昇降機構
4 加熱手段
5 フイルター
6 外ケース
7 耐火材層
8 開口
9 上枠
10 ボルト
11 流出部
12 凹部
13 誘導コイル
14 絶縁物
15 コード
16 支柱
17 突部
18 シリンダ
19 固定ボルト
20 湯面検出棒
Claims (4)
- 溶湯を収納する上面開放状の炉本体と、この炉本体の内部に対して上部から抜き差し自在となる浸漬加熱チューブとからなり、この浸漬加熱チューブの底部に設けた開口に溶湯の通過するフイルターを装着した浸漬溶解保持炉において、前記浸漬加熱チューブは、内部の溶湯を加熱するため周囲の層内に加熱手段が組み込まれ、かつ、上端部周縁に内部溶湯を炉本体内に流出させるための流出部が設けられ、この浸漬加熱チューブを、その底部が炉本体の内部底面に重なる下降位置と、底部が炉本体の内部底面から離れて前記流出部の底部が炉本体の湯面高さよりも下方にある中間位置と、前記流出部の底部が炉本体の湯面高さよりも上方にある上昇位置に位置調整自在となるよう昇降機構で支持し、前記浸漬加熱チューブを炉本体内の溶湯に浸漬する中間位置にした状態で、浸漬加熱チューブ内の溶湯を加熱することにより、浸漬加熱チューブ内の加熱された溶湯と炉本体内の溶湯の温度差によって、浸漬加熱チューブ内の加熱された溶湯が上昇流となって流出部から炉本体に流出し、炉本体の溶湯がフイルターを通って浸漬加熱チューブ内に底部開口から流入する溶湯の流れを生じさせるようにしたことを特徴とする浸漬溶解保持炉。
- 上記フイルターが、浸漬加熱チューブに対して、一体の追従移動と抜き差しが自在になっている請求項1に記載の浸漬溶解保持炉。
- 前記浸漬加熱チューブの内部に湯面検知棒を設け、この湯面検知棒で前記昇降機構を制御し、中間位置にある浸漬加熱チューブを湯面の変動に追従して自動的に昇降させるようにした請求項1に記載の浸漬溶解保持炉。
- 前記浸漬加熱チューブの周囲の層内に設けた加熱手段が、浸漬加熱チューブの周壁の内部に誘導コイルを埋設した誘導加熱機構で形成されている請求項1乃至3の何れかに記載の浸漬溶解保持炉。
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JP2000359523A JP3621042B2 (ja) | 2000-11-27 | 2000-11-27 | 浸漬溶解保持炉 |
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Cited By (1)
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CN108788083A (zh) * | 2018-07-27 | 2018-11-13 | 合肥和瑞机械制造有限公司 | 一种汽车配件生产用高精度压铸模具 |
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2000
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