JP3620974B2 - 耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、特に0.04乃至0.12重量%のPを含有する自動車用耐食性鋼板の溶接に好適であって、耐割れ性が優れたガスシールドアーク溶接方法に好適の耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車部品に使用されている鋼板には、その耐食性を高めるために、従来、亜鉛メッキ鋼板等の表面処理鋼板が使用されていたが、最近では鋼板そのものの化学組成により錆の成長を抑制する耐食性鋼板も使用されるようになってきた。
【0003】
この耐食性鋼板は従来の亜鉛メッキ鋼板と比べると、P及びCuを多量に含有させており、耐食性を向上させつつ、従来の亜鉛メッキ鋼板を溶接した場合のように亜鉛に起因して気孔欠陥等が発生するというような問題点を解消することができる。
【0004】
しかしながら、この耐食性鋼板を従来の溶接ワイヤで溶接すると、溶接部の溶接金属に割れが発生しやすいことが判明した。そこで、この耐食性鋼板の溶接時に発生する溶接割れを防止すべく、例えば特開平8−281439号公報、特開平9−52192号公報又は特開平9−122970号公報が開示されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平8−281439号公報は、溶接金属中のSi、P、S及びNb含有量による所定の数式の値が所定値以下になるようにするものであるが、Pは母材の希釈によってその含有量が大きく変動するため、数式の制限を余裕をもって満足させるためには、母材を溶け込まさないような溶接条件とすることが必要であり、また、薄板のプレス成形品で種々の開先形状、ギャップ及び溶接姿勢等の条件がある自動車部品の溶接では、溶込み不良等の溶接欠陥を招きやすい。
【0006】
また、特開平9−52192号公報は、溶接ワイヤ組成のうち、C、Si、Mn、O、P及びS等の合金成分の範囲を規定するものであるが、通常MIG又はMAG溶接に使用されるYGW・15、YCW・16等に比較して特にSi含有量を低めに抑制しており、酸素又は二酸化炭素等の酸化性ガスを多く混合するシールドガスを使用する場合には脱酸不良となり、立向下進溶接等では溶融金属の垂れ落ち又はのど厚不足などのビード外観不良を起こす場合がある。
【0007】
更に、特開平9−122970号公報では、溶接ワイヤ中のSiを最大1.0重量%としているが、このためにはMoの添加が必須である。しかし、ワイヤ中にMoを添加することは、溶接ワイヤの伸線加工性が悪いことから製造コストの増加につながり、また溶接金属が硬くなって強度が高くなりすぎ、母材との強度バランスが崩れるので好ましくない。
【0008】
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、自動車用耐食性鋼板の溶接において、溶接部に発生する溶着金属の溶接割れが防止され、更にスパッタ発生量が少なく、あらゆる姿勢の溶接でも良好なビード外観が得られる耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法は、0.04乃至0.12重量%のPを含有する板厚0.8乃至3.6mmの耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法において、化学組成が、C:0.02乃至0.06重量%、Si:0.55乃至1.0重量%、Mn:0.8乃至1.8重量%及びS:0.003乃至0.012重量%を含有し、且つワイヤ中のC含有量及びS含有量を夫々Cw及びSwとし、母材中のC含有量及びS含有量を夫々Cbm及びSbmとしたとき、
2×Cw+Cbm≦0.16
2×Sw+Sbm≦0.044
を満足し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる溶接用ソリッドワイヤを使用し、シールドガスとして、不活性ガスに、酸素及び二酸化炭素のうち少なくとも1種類の酸化性ガスを2乃至30体積%混合した混合ガスを使用することを特徴とする。
【0010】
この耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法において、前記溶接用ソリッドワイヤは、P:0.015重量%以下に規制したものでもよく、また、溶接電流として、ピーク電流:430乃至500A、ピーク期間:0.9乃至1.5msecのパルス電流を供給することもできる。
【0011】
本発明者等は、先ず、従来の市販溶接ワイヤを使用して溶接された耐食性鋼板について、その溶接金属組織の柱状晶に沿って発生した割れについて調査した。その結果、割れが発生した位置の近傍には主にS等の不純物が濃化して存在していることがEPMA(Electron Probe Micro Analyzer)観察等で確認された。このため、割れの発生原因としては、鋼よりも融点が低いS等の不純物又は化合物が溶融池の凝固過程で液相中に濃化して最終凝固部に取り残され、そして溶接金属の凝固に伴う収縮応力で強度が低い不純物濃化城が開口し、溶接金属の割れに至ったものと推察した。
【0012】
そこで、本発明者らは、後述する割れ試験方法を考案し、溶接ワイヤ組成の耐食性鋼板の溶接部の割れに及ぼす影響を調査した。
【0013】
また、溶接割れだけでなく、ビード外観を改善し、スパッタの発生を極めて低い量にする溶接ワイヤ組成及び施工条件を同時に満足させることができることを見出した。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の構成について更に詳細に説明する。また、本発明において、溶接ワイヤの各成分の組成、シールドガス組成、及び溶接条件を規定した理由について説明する。
【0015】
溶接ワイヤの組成の規定理由については以下のとおりである。
(1)C:0.02乃至0.06 重量%
Cは溶接金属の強度を確保するために必須の元素であるが、従来より高温割れ感受性を高める元素としても知られている。更に、溶融金属の凝固温度幅に大きく影響する元素でもあり、含有量が多くなると凝固温度幅も拡大する。前述したように、耐食性鋼板の溶接部に発生する割れの想定原因としてS等の不純物及び化合物が溶融池の凝固過程で液相中に濃化して最終凝固部に取り残される。而して、溶融金属の凝固温度幅が大きい場合には液相中に不純物がより濃化しやすくなるので、凝固温度幅に影響するC含有量は重要である。
【0016】
C含有量が0.06重量%を超えると、後述する耐食性鋼板溶接部の耐割れ性評価試験において割れの発生が顕著になり、また、C含有量が0.02重量%未満の場合は溶接部の強度が不足する。
【0017】
(2)Si:0.55乃至1.0重量%
Siは溶融金属中で脱酸作用を有し、溶接ビードの外観を向上させる。一方、Siは立向溶接姿勢においてビードの垂れが発生する要因になる。Si含有量が0.55重量%未満では脱酸作用が少なく、溶接ビード外観が劣化する。一方、Si含有量は1.0重量%を越えると、溶接ワイヤの伸線加工での生産性が悪化したり、スラグが多量に発生したり、ビードの垂れが発生するので、Si含有量は1.0重量%を上限とする。
【0018】
(3)Mn:0.8乃至1.8重量%
Mnは溶融金属の脱酸、溶接部の強度の確保及び溶接ビードの外観を改善するために添加される。Mnが0.8重量%未満では脱酸不足のためにビード外観が悪化する。Mnが1.8重量%を超えると溶接ワイヤの伸線加工が困難になる。このため、Mnを含有する場合は、その含有量は0.8乃至1.8重量%とする。
【0019】
(4)S:0.003乃至0.012 重量%
前述したように、Sは高温割れの原因となるので、その含有量は低い方が望ましいが、S含有量が0.003重量%未満とすると、溶融金属の流れ性が悪化し、溶接ビードと母材とのなじみが悪くなる。また、S含有量が0.012重量%を超えると高温割れの発生が顕著になる。
【0020】
(5)2×Cw+Cbm≦0.16、及び2×Sw+Sbm≦0.044
溶接ワイヤ中のC及びSが耐高温割れに対して影響を与えることは上述の通りであり、上述の如くその含有量が規制されるが、溶接金属には母材のC及びSも希釈されるので、母材のP含有量が0.04乃至0.12重量%の耐食性鋼板の溶接では母材のC含有量及びS含有量も含めた制限が必要である。
【0021】
Cの影響については、2×Cw+Cbmの値が0.16重量%を超えると、溶接ワイヤのC含有量が上記(1)に記載の範囲を満足していても、割れの発生率が高くなるので、2×Cw+Cbmの上限を0.16重量%とした。また、Sの影響については、2×Sw+Sbmの値が0.044重量%を超えると、溶接ワイヤのS含有量が上記(3)に記載の範囲を満足していても、割れの発生率が高くなるので、2×Sw+Sbmの上限を0.044重量%とした。
【0022】
次に、シールドガス組成の限定理由については以下のとおりである。不活性ガスとしてのアルゴンに酸素又は二酸化炭素の少なくとも1種類の酸化性ガスを混合することは溶接ァークの安定化のために必須である。
【0023】
(6)酸化性ガス:2乃至30体積%
酸化性ガスが混合ガス中の2体積%未満では、溶接中の溶滴が大きく、かつ不安定になり、酸化性ガスが30体積%を超えると、スパッタの発生量が多くなる。このため、酸化性ガスは、2乃至30体積%とする。
【0024】
而して、溶接用ソリッドワイヤの組成としては、上述の成分組成に加えて、更に、Pを所定値以下に規制することができる。
【0025】
(7)P:0.015 重量%以下
PはS等の不純物元素を最終凝固部に濃化させたり、P自身が不純物元素なので濃化して高温割れの原因となるため、その含有量は少ないほど好ましい。Pが0.015重量%を超えると、耐割れ性が劣化する。このため、Pの含有量は0.015重量%以下に規制する。
【0026】
また、前記溶接ワイヤ組成及びシールドガス組成の限定理由に加えて、溶接電源の出力波形の限定理理由は以下のとおりである。パルスマグ溶接において、パルスパラメータ、即ちパルスピーク電流とパルスピーク時間は安定した溶滴移行を得るために、溶接ワイヤ組成及びシールドガス組成によって決まる溶滴の物性に応じて設定することが必要である。パルスマグ溶接での望ましい溶滴移行形態は、パルス期間中にワイヤ先端に溶滴を形成させ、ベース期間中にその溶滴を自由移行させることであり、1パルス1溶滴移行が低スパッタ化のために必須である。溶滴の物性に応じたパルスパラメータを出力しないと、複数回のパルスを供給しなければ溶滴の移行が行われなくなり、これがスパッタ発生の原因となる。
【0027】
(8)パルスピーク電流:430乃至500A
パルスピーク電流が430A未満では溶滴がワイヤ先端から離脱するまでに必要とする時間が長くなり、またワイヤ先端に形成される溶滴も大きくなるので、この溶滴が溶融池と短絡してスパッタの原因となる。パルスピーク電流が500Aを超えると、パルス電流のエネルギが強く、ワイヤ先端に形成された溶滴を吹き飛ばしてスパッタを発生させる。このため、パルスピーク電流は430乃至500Aとすることが好ましい。
【0028】
(9)パルスピーク期間:0.9乃至1.5 msec
パルスピーク期間が0.9msec未満になると、1回のパルスでワイヤ先端に十分な大きさの溶滴を形成することができないために、複数パルスで1溶滴移行となり、アーク不安定及びスパッタ発生の原因となる。また、パルスピーク帰還が1.5msecを超えると、溶滴が大きくなって溶滴が溶融池と短絡したり、パルスのエネルギでワイヤ先端から吹き飛ばされることがある。このため、パルスピーク期間は0.9乃至1.5msecとすることが好ましい。
【0029】
【実施例】
次に、本発明の効果を実証するために本発明の実施例及び本発明の範囲から外れる比較例について、溶接部の耐割れ性を評価した。なお、この評価方法は本発明者等が新たに開発したものである。従来、溶接部の耐割れ性、特に本願で解決しようとする高温割れを評価する方法としては、C形ジグ拘束突合せ溶接割れ試験方法(JIS Z3155)、T形割れ試験方法(JISZ3153)があり、また、特殊な試験方法としてバレストレイン試験等があるが、いずれも厚板を対象としたり特殊な装置を必要とする評価方法であり、自動車及び車両の溶接に使用される板厚0.8mm乃至3.6mm程度の鋼板の溶接割れ評価試験には適さない。従って、以下の評価試験においては、独自の試験方法により評価した。
【0030】
即ち、板厚2.6mmの耐食性鋼板に1.6mmギャップを設けて仮付け溶接した後にジグに固定し、約1.2秒間のアークスポット溶接後に観察されるナゲットに発生する割れの長さから、割れ発生率を算出することによって溶接部の耐割れ性を評価する方法を考案した。
【0031】
そして、種々の組成のソリッドワイヤを試作して各元素の耐割れ性に及ぼす影響を調査し、耐食性鋼板の溶接割れという問題を解決するための条件を求めた。以下の実施例及び比較例において、割れ発生率は図1の試験方法によって得られた数値である。図1(a)に示すように、2枚の耐食性鋼板1,2を突き合わせ溶接し、その溶接部のナゲット3において、板1,2間の距離をL、板1及び2からナゲット3内に侵入した割れ4,5の長さを夫々a,bとした場合に、割れ率を100×(a+b)/Lとして算出した。
【0032】
また、溶接ビード外観及びスパッタの評価としては、図2に示すようなフレア継手による溶接試験を行って評価した。耐割れ性評価試験ビード外観試験などの各種の溶接条件を下記表1に示す。そして、実施例及び比較例のワイヤ組成及び組成パラメータを下記表2乃至4に、また、シールドガス組成及びパルスパラメータと、得られた溶接部の割れ率、スパッタ量及びビード外観とを下記表5乃至7に示す。なお、フレア継手の溶接ビード(溶接長100mm)の両側に融着したスパッタの量の評価基準は以下のとおりである。
極少:0乃至2個
少 :3乃至5個
中 :6乃至10個
多 :10個以上
【0033】
また、表5乃至7において、パルスパラメータはIpがピーク電流、Tpがピーク期間を示す。更に、組成パラメータの欄の( )内のA,B,C及びDは組み合わせた母材を表す。
【0034】
【表1】
【0035】
【表2】
【0036】
【表3】
【0037】
【表4】
【0038】
【表5】
【0039】
【表6】
【0040】
【表7】
【0041】
No.1乃至4は溶接ワイヤ中のC含有量の影響を見たもので、すべての溶接ワイヤで割れ率が0であり、スパッタの少ないきれいな溶接ビードを得ることが少ないきれいな溶接ビードを得ることが可能である。
【0042】
No.5乃至7は溶接ワイヤ中のSi含有量の影響を見たもので、No.5のみ割れが発生しているがその比率は極めて小さい。
【0043】
No.8乃至 10は溶接ワイヤ中のS含有量の影響を見たもので、すべての溶接ワイヤにおいて、割れ率は極めて小さい。
【0044】
No.11乃至15は母材のC含有量及びS含有量の影響を見たもので、No.11及び12は市販の耐食性鋼板よりC含有量の高い母材(B、表1参照)を用いた。2×Sw+Sbm≦0.044を満足し、かつ2×Cw+Cbm≦0.16を満足するように溶接ワイヤを選択すれば母材のC含有量が高い場合でも割れの発生率は小さい。No.13及び14は市販の耐食性鋼板よりS含有量の高い母材(C、表1参照)を用いた。上記と同様に2×Cw+Cbm≦0.16を満足し、かつ2×Sw+Sbm≦0.044を満足するように溶接ワイヤを選択すれば割れの発生率は小さい。さらにNo.15は市販の耐食性鋼板よりC含有量及びS含有量の高い母材(D、表1参照)を用いた。上記と同様に2×Cw+Cbm≦0.16及び2×Sw+Sbm≦0.044を満足するように溶接ワイヤを選択すれば割れの発生率は小さい。
【0045】
No.16乃至18は溶接ワイヤ中のMn含有量の影響をみたもので、すべての溶接ワイヤで割れ率が0であり、スパッタの少ないきれいな溶接ビードを得ることが可能である。
【0046】
No.19乃至20は溶接ワイヤ中のP含有量の影響をみたもので、すべての溶接ワイヤで割れ率が0であり、スパッタの少ないきれいな溶接ビードを得ることが可能である。
【0047】
No.21乃至30は実施例の内、一つの溶接ワイヤを選び、シールドガス組成とパルスパラメータの影響をみたもので、酸化性ガスの含有量が多いNo.24、No.25ではわずかのスラグ増加が認められるが、すべての溶接ワイヤで割れ率が0であり、きれいな溶接ビードが得られる。
【0048】
No.31乃至33は比較例として溶接ワイヤ中のC含有量の影響を見たもので、No.31はC、S共に含有量が少ないので割れの発生は認められないが、溶接金属の強度低下があった。No.32及びNo.33は割れ率が高い。
【0049】
No.34乃至36は溶接ワイヤ中のSi含有量の影響を見たもので、No.34及びNo.35は脱酸不足のためにビード表面に光沢がなく、しわの発生が認められる。逆にNo.36ではSi量が多いために溶接ビード表面に多くスラグが発生する。
【0050】
No.37及びNo.38は溶接ワイヤ中のS含有量の影響を見たもので、No.37は割れは発生しないがビードの端と母材とのなじみがわるい溶接ビードになっている。No.38は割れが非常に大きい。
【0051】
No.39乃至43は、母材のC含有量及びS含有量の影響を見たものである。No.39は市販の耐食性鋼板よりC含有量の高い母材を用いたもので、溶接ワイヤのC含有量が個々の制限範囲内であっても、母材のC含有量との関係式2×Cw+Cbmが0.16を超えていると割れの発生率が高くなる。No.40及び41は市販の耐食性鋼板よりS含有量が高い母材を用いたもので、関係式2×Sw+Sbmが0.044を超えていると割れの発生率が高い。さらに、No.42及び43は市販の耐食性鋼板よりC含有量及びS含有量が高い母材を用いたもので、溶接ワイヤのC含有量、S含有量との関係式2×Cw+Cbm及び2×Sw+Sbmのいずれも制限を超えていると、割れの発生率は非常に高い。
【0052】
No.44及びNo.45は溶接ワイヤ中のMn含有量の影響をみたもので、No.44は脱酸不足のために溶接ビード表面にしわが発生し、一方、No.45は、溶接ワイヤそのものを作る過程で、例えば伸線速度を低下させなければならないなど、加工性が劣っていた。
【0053】
No.46は溶接ワイヤ中にPを多く含有する場合であるが、割れ率が高くなった。
【0054】
No47及びNo.48はシールドガス組成の影響をみたもので、No.47はアルゴンの比率が高すぎてワイヤ先端での溶滴形成が不安定となり、大粒のスパッタとなって溶接ビード周囲に付着した。No.48はCO2が多い場合で、パルス溶接での溶滴移行が安定せず、大粒スパッタが溶接ビード周囲に付着した。
【0055】
No.49乃至52はパルスパラメータの影響を見たもので、No.49はピーク電流が低い場合で、溶滴移行現象を観察すると、1回のパルスで移行するのに十分な大きさの溶滴が形成されず、2乃至3パルス1溶滴移行となっている。このため、移行の規則性が崩れ、溶滴と溶融池との短絡が起きてスパッタが発生する。No.50はピーク電流が高すぎる場合で、ワイヤ先端に形成されている溶滴をピーク電流の高いエネルギで吹き飛ばしてスパッタとしてしまう。No.51はピーク時間が短すぎる場合で、No.49と同様に複数パルス1溶滴移行となってスパッタが発生する。また、No.52はピーク期間が長すぎる場合で、ピーク期間中に溶滴ワイヤ先端から離脱するが、ピーク電流のために吹き飛ばされてスパッタとなる。
【0056】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の溶接方法によれば、Pを0.04乃至0.12重量%含む耐食性鋼板の溶接において接部の割れを防止でき、また、スパッタの少ない溶接が可能となって溶接部の品質が向上する。
【図面の簡単な説明】
【図1】割れ評価試験方法を示す図である。
【図2】フレア継手の溶接試験方法を示す図である。
【符号の説明】
1,2:耐食性鋼板
3:ナゲット
4,5:割れ
Claims (3)
- 0.04乃至0.12重量%のPを含有する板厚0.8乃至3.6mmの耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法において、化学組成が、C:0.02乃至0.06重量%、Si:0.55乃至1.0重量%、Mn:0.8乃至1.8重量%及びS:0.003乃至0.012重量%を含有し、且つワイヤ中のC含有量及びS含有量を夫々Cw及びSwとし、母材中のC含有量及びS含有量を夫々Cbm及びSbmとしたとき、
2×Cw+Cbm≦0.16
2×Sw+Sbm≦0.044
を満足し、残部が鉄及び不可避的不純物からなる溶接用ソリッドワイヤを使用し、シールドガスとして、不活性ガスに、酸素及び二酸化炭素のうち少なくとも1種類の酸化性ガスを2乃至30体積%混合した混合ガスを使用することを特徴とする耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法。 - 前記溶接用ソリッドワイヤは、P:0.015重量%以下に規制することを特徴とする請求項1に記載の耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法。
- 溶接電流として、ピーク電流:430乃至500A、ピーク期間:0.9乃至1.5msecのパルス電流を供給することを特徴とする請求項1又は2に記載の耐食性鋼板のパルスマグ溶接方法。
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