JP3620879B2 - 強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、寸法安定性、機械的強度、耐熱性、成形性及び成形品外観等のバランスが優れた強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物に関する。詳しくは、ポリフェニレンエーテル(以下、「PPE」という)系樹脂、芳香族アルケニル化合物、繊維状無機フィラー及び/又は板状無機フィラー、そして上記樹脂成分と不均一に混合する非晶性熱可塑性樹脂からなる異方性、寸法精度、機械的強度、耐熱性及び成形性が優れた強化PPE系樹脂組成物に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
PPEは、優れた耐熱性、非吸湿性及び電気特性等を有している。しかし、成形加工性が劣ることから、単独では射出成形が著しく困難であるという欠点を有している。このような欠点を改良するために、PPEにスチレン系樹脂をブレンドすることにより、成形加工性、耐衝撃性及び耐熱性の比較的バランスのとれた材料が開発され、エンジニアリングプラスチックの1つとして市販されている。例えば、米国特許第3383435号明細書にはPPEとハイインパクトポリスチレンとの組成物が開示されている。しかし、このものは、耐溶剤性が劣り、かつ成形性は改良されているものの、耐熱性と耐衝撃性とのバランスが十分とはいえない。
【0003】
また、特開昭51−28659号公報には、PPEにスチレン樹脂とゴム又はゴム変性スチレン樹脂をブレンドし、ゴムの平均粒径を0.5〜2μm にすることにより、耐衝撃性を改良した組成物が、また、特開昭56−460号公報には、PPEにスチレン樹脂とゴム又はゴム変性スチレン樹脂をブレンドし、そのゲル分率を規定した組成物が開示されている。しかし、これらの組成物も耐衝撃性等は改良されてはいるが、成形後の異方性が大きいため、ひけ、反り量が多く、また実用的な強度である面衝撃強度が十分であるとはいえない。
【0004】
また、高剛性が求められる分野については、ガラス繊維や炭素繊維等の繊維状無機フィラー又はタルク、マイカ等の板状無機フィラーを充填することが行われているが、組成物の流動性は低下し、成形品の寸法変化も大きく満足な結果が得られていない。特に成形品の異方性、ヒートサイクル後の寸法変化といった欠点は残されたままである。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、このような状況のもと、PPEを無機フィラーで強化し、それぞれの好ましい性質を兼ね備えた材料、すなわち、寸法安定性、成形加工性、機械的強度、耐熱性又は剛性のバランスが優れた強化PPE系樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、このため全く新しい発想をもとに鋭意検討を重ねた結果、PPE系組成物を無機フィラーで強化し、かつPPEと不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂を混合し、無機フィラーを特定の相に存在させることにより、従来の技術では達成できなかった極めて良好な寸法安定性、成形加工性、機械的強度、耐熱性及び剛性を有する樹脂組成物を見出し、本発明に到達した。
【0007】
すなわち、本発明は、下記の成分(a)〜(d)を下記の配合比で含有することを特徴とする強化PPE系樹脂組成物である。
(a)PPE 5〜95重量%
(b)芳香族アルケニル化合物重合体 95〜 5重量%
(c)繊維状無機フィラー及び/又は板状無機フィラー 1〜60重量%
(d)成分(a)及び/又は(b)と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂を成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して 0.1〜10重量部
特に、成分(c)が成分(a)及び/又は成分(b)中に選択的に存在する上記の強化PPE系樹脂組成物である。
【0008】
以下、本発明を詳細に述べる。
【0009】
(1)構成成分
(a)PPE
本発明で用いるPPE(a)は、一般式(I)
【0010】
【化1】
【0011】
(式中、R1 、R2 、R3 及びR4 は各々水素原子、ハロゲン原子及び置換若しくは非置換の炭化水素基からなる群より選ばれるものであり、互いに同一でも異なっていてもよい。nは10以上の整数を表す)
【0012】
で示される構造を有する単独重合体又は共重合体である。
【0013】
PPE(a)の具体例としては、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジエチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2−メチル−6−イソプロピル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジメトキシ−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロロメチル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジフェニル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジニトリル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,6−ジクロル−1,4−フェニレンエーテル)、ポリ(2,5−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)などが挙げられる。これらは、複数のものを併用しても差し支えない。
【0014】
好適なPPE(a)の単独重合体としては、例えば、2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル単位からなるものである。好適な共重合体としては、上記単位と2,3,6−トリメチル−1,4−フェニレンエーテル単位との組み合わせからなるランダム共重合体である。
【0015】
ここで使用するPPE(a)はクロロホルム中で測定した30℃の固有粘度が0.2〜0.8dl/gであるものが好ましい。より好ましくは0.2〜0.5dl/gのものであり、とりわけ好ましくは0.25〜0.45dl/gのものである。
【0016】
(b)芳香族アルケニル化合物重合体
本発明で使用する芳香族アルケニル化合物重合体(b)としては、一般式(II)
【0017】
【化2】
【0018】
〔式中、R5 は水素原子、低級アルキル基(例えば、炭素数1〜4のアルキル基)又はハロゲン原子を表し、Tは各々水素原子、ビニル基、ハロゲン原子又は低級アルキル基を表し、pは0又は1〜5の整数を表す〕
【0019】
で示される芳香族アルケニル化合物を1種又は2種以上重合して得られる重合体若しくは共重合体;芳香族アルケニル化合物と無水マレイン酸、アクリロニトリル、メタクリル酸メチル、アクリル酸低級アルキルエステル又はブタジエン等との共重合体;ポリエチレン、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、ポリピロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート等の樹脂粒子を水に懸濁させ、芳香族アルケニル化合物を添加し、懸濁重合させて得られる芳香族アルケニル化合物のグラフト共重合体等が例示される。
【0020】
芳香族アルケニル化合物の具体例としては、スチレン、α−メチルスチレン、ジビニルベンゼン、エチルビニルベンゼン等が挙げられる。
【0021】
また、芳香族アルケニル化合物重合体の具体例としては、ポリスチレン、ポリクロロスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)等のホモポリマー;スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体、スチレン−N−アルキル置換フェニルマレイミド共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、スチレン−n−アルキルメタアクリレート共重合体、エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル−α−メチルスチレン3元共重合体、ABS、HIPS、スチレングラフトポリエチレン、スチレングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、(スチレン−アクリル酸)グラフトポリエチレン、スチレングラフトポリアミド等の共重合体が挙げられる。
【0022】
(c)繊維状無機フィラー及び/又は板状無機フィラー
本発明で用いる繊維状無機フィラー及び/又は板状無機フィラー(c)は、組成物の機械的強度、剛性、耐熱性及び寸法安定性を向上させるためのものであり、種々のものを用いることができる。
【0023】
本発明で用いる繊維状無機フィラーは、補強効果の観点から、繊維の直径(D)と長さ(L)の比で表されるL/Dが5以上であることが好ましく、かかる繊維状無機フィラーの具体例としては、ガラス繊維、炭素繊維、チタン酸カリウム等のウイスカー類、ワラストナイト等が挙げられ、これらは2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0024】
本発明で用いる板状無機フィラーは、補強効果の観点から、板の平板厚み(D´)と平均長さ(L´)の比で表されるL´/D´が5以上であることが好ましく、かかる無機フィラーの具体例としては、マイカ、タルク、ガラスフレーク等が挙げられ、これらは2種類以上組み合わせて用いてもよい。
【0025】
また、これらの繊維状無機フィラー及び/又は板状無機フィラー(c)は使用する樹脂に合わせて表面処理を施したものを用いることも好ましい。
【0026】
これら繊維状無機フィラー及び/又は板状無機フィラー(c)は樹脂成分(a)及び/又は(b)中に存在していることが好ましい。目的の樹脂成分(a)及び/又は(b)中にフィラーを選択的に存在させる方法としては、フィラーと目的の樹脂を予め混練する方法や、目的の樹脂にフィラーと親和性を示す官能基を導入する方法等が挙げられる。目的の樹脂にフィラーと親和性を示す官能基を導入する方法としては各種の公知の方法を用いることができる。例えば該樹脂と同一分子内に不飽和基と官能基を併せ持つ化合物を、溶液状態又は溶融状態で、過酸化物の存在下若しくは非存在下でグラフト反応させる方法や、これら樹脂の重合の際に官能基を持つ単量体を共重合させる方法等が挙げられる。これら官能化樹脂はそれ自体単独で用いても、未官能化樹脂と混合して用いてもよいが、混合後の樹脂中の官能化化合物の割合が0.01重量%以上であることが好ましく、より好ましくは0.05重量%以上、とりわけ好ましくは0.1重量%以上である。
【0027】
(d)非晶性熱可塑性樹脂
本発明で使用する非晶性熱可塑性樹脂(d)は、成分(a)及び(b)で使用した熱可塑性樹脂と異なり、成分(a)及び/又は(b)と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂である。
【0028】
非晶性熱可塑性樹脂は、一般にガラス様の性質をもち、加熱した際にガラス転移温度のみを示すものであるが、本発明ではガラス転移温度が50℃以上の非晶性熱可塑性樹脂を使用することが好ましい。また、非晶性熱可塑性樹脂は明確な融点や測定可能な融解熱を示さないが、本発明においては、ゆっくり冷却する場合に多少の結晶性を示すものを含み、また、本発明の効果を大きく損なわない範囲で結晶性を示すものも含む。
【0029】
ガラス転移温度、融点及び融解熱は、示差走査熱量測定装置(例えば、PERKIN−ELMER社製DSC−II)を用いて測定することができる。すなわち、この装置を用いて、融解熱は、1分間当り10℃の昇温速度で、試料を予測される融点以上の温度に加熱し、次に試料を1分間当り10℃の速度で20℃まで降温し、そのまま約1分間放置した後、再び1分間当り10℃の速度で加熱昇温することにより測定することができる。融解熱は、昇温と降温のサイクルで測定した値が、実験誤差範囲内で一定値となるものを採用する。本発明における非晶性熱可塑性樹脂とは、上記方法により測定される融解熱が1cal/g 未満のものと定義する。
【0030】
以下に非晶性熱可塑性樹脂の具体例を示す。
【0031】
(d−1)非晶性ポリアミド
本発明において用いる非晶性ポリアミドとしては、ポリマー鎖に−CONH−結合を有し、ガラス転移温度が好ましくは90〜250℃、より好ましくは90〜210℃、更に好ましくは100〜180℃以下、とりわけ好ましくは110〜160℃の範囲にあるものである。非晶性ポリアミドの代表的骨格は、環状炭化水素系共重合ポリアミドであり、ポリアミドの構成単位が、主に下記の(i)〜(vi)の構造式から選ばれるものよりなり、上記のガラス転移温度及び非晶性を満足するように構成される。
【0032】
(i)−HN−W−NH−
(式中、Wは炭素数2〜12の直鎖状又は分枝状脂肪族炭化水素基を表す)
(ii)−HN−X−NH−
(式中、Xはメタキシリレン基又は炭素数5〜22の脂環式炭化水素骨格を少なくとも1個含む脂肪族炭化水素基を表す)
【0033】
(iii )
【0034】
【化3】
【0035】
(式中、R6 は各々水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表し、それぞれのR6 は同じであっても異なっていてもよい)
【0036】
(iv)
【0037】
【化4】
【0038】
(式中、R7 は各々水素原子又は炭素数1〜6の脂肪族炭化水素基を表し、それぞれのR7 は同じであっても異なっていてもよい)
【0039】
(v)−CO−Y−CO−
(式中、Yは炭素数2〜22の脂肪族炭化水素基又は脂環式炭化水素基を表す)
(vi)−CO−Z−NH−
(式中、Zは炭素数4〜14の脂肪族炭化水素基又は芳香族炭化水素基を表す)
【0040】
本発明で使用する非晶性ポリアミドの相対粘度(98%濃硫酸中、濃度1g/dl及び温度25℃で測定)は、好ましくは1.0〜5.0、より好ましくは1.4〜3.5、とりわけ好ましくは1.6〜3.0の範囲である。これらの非晶性ポリアミドの製法は公知であり、例えば、特開昭58−38751号、同60−217237号及び同60−219227号各公報等に示されているものが適用可能である。
【0041】
構成単位(i)におけるWの具体例としては、ブチレン、ヘキシレン、オクチレン、デカニレン、2,2,4−トリメチルヘキシレン、2,4,4−トリメチルヘキシレン、3−メチルヘキシレン、ペンチレン等のアルキレン基が挙げられ、好ましくはブチレン基、ヘキシレン基、2,4,4−トリメチルヘキシレン基及び2,2,4−トリメチルヘキシレン基である。
【0042】
構成単位(ii)におけるXの具体例としては、メタキシリレン(Xa)、4,4´−メチレンジシクロヘキサン−1,1´−ジイル(Xb)、2,2´−ジメチル−4,4´−メチレンジシクロヘキサン−1,1´−ジイル(Xc)、1,5,5−トリメチルシクロヘキシレン−1−メチレン(Xd)、シクロヘキシレン−1,4−ジメチレン(Xe)、4−メチレンシクロヘキシレン(Xf)、3−メチレンシクロヘキシレン(Xg)、シクロヘキシレン−1,3−ジメチレン(Xh)等が挙げられる。
【0043】
各Xの具体例について、構造式を以下に示す。
【0044】
【化5】
【0045】
構成単位(iii)及び(iv)におけるR6 及びR7 の具体例としては、水素原子又はメチル、エチル、イソプロピル、t−ブチル等のアルキル基が挙げられ、好ましくは水素原子及びメチル基であり、より好ましくは水素原子である。
【0046】
構成単位(v)におけるYの具体例としては、エチレン、プロピレン、ブチレン、ヘキシレン、オクチレン、デカニレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレン等の2価の基又は構成単位(ii)における(Xa)、(Xb)、(Xc)、(Xd)、(Xe)、(Xf)、(Xg)、(Xh)等が挙げられ、好ましくはエチレン、プロピレン、ブチレン、オクチレン、1,4−シクロヘキシレン、1,3−シクロヘキシレンであり、より好ましくはエチレン、プロピレン及びブチレンである。
【0047】
構成単位(vi)におけるZの具体例としては、ブチレン、ペンチレン、ヘキシレン、デカニレン、ウンデカニレン、パラフェニレン等が挙げられ、好ましくはペンチレン、ヘキシレン及びウンデカニレンであり、より好ましくはペンチレンである。
【0048】
(d−2)ポリカーボネート(PC)
本発明において用いるポリカーボネートとしては、脂肪族ポリカーボネート、芳香族ポリカーボネート、脂肪族−芳香族ポリカーボネート等が挙げられる。そのうちでも、2,2−ビス(4−オキシフェニル)アルカン系、ビス(4−オキシフェニル)エーテル系、ビス(4−オキシフェニル)スルホン、同スルフィド又は同スルホキシド系等のビスフェノール類からなる芳香族ポリカーボネートが好ましい。また必要に応じてハロゲン原子で置換されたビスフェノール類からなるポリカーボネートも用いることができる。
【0049】
なお、ポリカーボネート(d−2)の分子量には何ら制限はないが、一般的には1万以上、好ましくは2万〜4万のものである。
【0050】
(d−3)環状オレフィン系樹脂
本発明において用いる環状オレフィン系樹脂としては、(i)エチレンと次式(III)で示される環状オレフィンとの共重合体と、(ii)次式(III)で示される環状オレフィンの単独重合体と、(iii)次式(III)で示される2種以上の環状オレフィンの開環共重合体と、(iv)上記(ii)又は(iii)の水素添加物を例示することができる。
【0051】
これらの環状オレフィン系樹脂は、単独で使用することもできるし、異なる重合体若しくは共重合体を組み合わせて使用することもできる。
【0052】
【化6】
【0053】
(式中、sは0又は1であり、好ましくは0である。rは0又は正の整数であり、好ましくは0〜3である。qは0又は1である。Q1 〜Q18並びにQa 及びQb は、各々水素原子、ハロゲン原子及び炭化水素基よりなる群から選ばれる原子若しくは基を表す。ここで、ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を挙げることができる。また、炭化水素基としては、各々炭素数1〜6のアルキル基、炭素数3〜6のシクロアルキル基を挙げることができ、アルキル基の具体例としては、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、アミルを挙げることができ、シクロアルキル基の具体的な例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等を挙げることができる)
【0054】
なお、上記式(III)において、qが0の場合は、qを用いて表される環は五員環を形成する。更に式(III)において、Q15〜Q18は互いに結合して単環又は多環の基を形成していてもよく、かつ該単環又は多環が2重結合を有していてもよい。Q15とQ16とで、又はQ17とQ18とでアルキリデン基を形成していてもよい。
【0055】
上記以外の成分(a)及び/又は(b)と不均一混合する非晶性熱可塑性樹脂(d)として、アクリロニトリル含有量が20重量%以上であるABS樹脂、芳香族ポリスルホン、芳香族ポリエーテルスルホン、ケイ素樹脂、ポリエーテルイミド、ポリ(アルキルアクリレート)等が挙げられる。
【0056】
また本発明に使用する非晶性熱可塑性樹脂は2種類以上を併用してもよい。
【0057】
(e)付加的成分
本発明の樹脂組成物には、必要に応じて他の成分を添加することができる。例えば、熱可塑性樹脂に周知の酸化防止剤、耐候性改良剤、増核剤、難燃剤、耐衝撃性改良剤、可塑剤、流動性改良剤等が使用できる。また、有機充填剤、補強剤、他の無機充填剤、例えば、炭酸カルシウム、シリカ、クレー等の添加は、剛性、耐熱性、寸法安定性等の向上に有効である。実用のために、各種着色剤及びそれらの分散剤なども周知のものが使用できる。
【0058】
(2)構成成分の組成比
本発明の強化PPE系樹脂組成物における成分(a)、(b)及び(c)の組成比は、成分(a)〜(c)の合計を100重量%とし、下記のとおりである。
成分(a):5〜95重量%、好ましくは15〜85重量%である。成分(a)が5重量%未満では耐熱性、機械的強度が不満足となり、95重量%超過では成形性及び成形品外観が好ましくない。
成分(b):95〜5重量%、好ましくは85〜15重量%である。成分(b)が5重量%未満では成形性及び成形品外観が好ましくなく、95重量%超過では耐熱性、機械的強度が不満足となる。
成分(c):1〜60重量%、好ましくは10〜50重量%である。成分(c)が1重量%未満ではフィラー補強効果が少なく、寸法安定性、機械的強度、耐熱性等が不満足であり、60重量%超過では成形性及び成形品外観に難点を生じる。
【0059】
また、成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して、
成分(d):0.1〜10重量部、好ましくは0.5〜8重量部、より好ましくは1〜5重量部である。成分(d)が0.1重量部未満では、寸法安定性(特に異方性が大きい)、成形性が好ましくなく、10重量部超過では耐熱性、成形品外観等が不満足となる。
【0060】
(3)組成物の製造及び成形法
本発明の熱可塑性樹脂組成物を得るための製造方法は特に限定されないが、各種混練機、例えば、一軸又は多軸混練機、バンバリーミキサー、ロール、ブラベンダープラストグラフ等で上記成分を混練した後、冷却固化させる方法あるいは適当な溶媒、例えば、ヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレン等の炭化水素若しくはその誘導体に上記成分を添加し、溶解する成分同志又は、溶解する成分と不溶解成分とを懸濁状態でまぜる溶液混合法等が用いられる。製造コストからは、溶融混練法が好ましいが限定されるものではない。
【0061】
本発明組成物の成形方法は、特に限定されるものでなく、熱可塑性樹脂組成物について一般に用いられている成形法、例えば、射出成形、中空成形、押出成形、シート成形、熱成形、回転成形、積層成形等の各種成形方法が適用できる。
【0062】
【実施例】
以下に本発明を実施例によって、具体的に説明するが、本発明はこれらの範囲に限定されるものではない。
【0063】
実施例1〜3及び比較例1〜5
使用した各成分は次のとおりである。
(1)PPE(a):ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)(日本ポリエーテル社製、30℃におけるクロロホルム中で測定した固有粘度:0.40dl/g)
(2)芳香族アルケニル化合物重合体(b):ポリスチレン(三菱化成社製、商品名:HF77)(PSと表記する)
(3)繊維状無機フィラー(c):直径10μm 及び長さ3mmのガラス繊維(GFと表記する)
(4)板状無機フィラー(c):平均厚み2μm 及び平均長さ90μm の板状マイカ
(5)非晶性ポリアミド(d):三菱化成社製、商品名:ノバミッドX21、ガラス転移温度125℃、JIS K 6810による相対粘度2.1(非晶性PAと表記する)
【0064】
(6)ポリカーボネート(d):三菱瓦斯化学社製、商品名:ユーピロンS2000、粘度平均分子量2.5×104(PCと表記する)
(7)環状オレフィン系樹脂(d):三井石油化学工業社製、商品名:アペルAPL6011、ガラス転移温度110℃、MFR:25g /10分(非晶性POと表記する)
(8)ABS樹脂(d):奇美社製、商品名:ポリラックPA747(汎用グレード)(ABSと表記する)
(9)結晶性ポリオレフィン:高密度ポリエチレン(三菱油化社製、商品名:三菱ポリエチ−HD EY40H)(HDPEと表記する)
(10)結晶性ポリアミド:ナイロン6(鐘紡社製、商品名:MC112L)(PA6と表記する)
(11)その他:
無水マレイン酸(市販品)
難燃剤(大八化学社製、リン系難燃剤トリフェニルフォスフェート)(TPPと表記する)
【0065】
表1に示した各樹脂成分を同表に示した配合比により、二軸押出機(日本製鋼所社製)を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数250rpm で、溶融混練しつつ、途中に設けたフィード口より繊維状無機フィラー及び板状無機フィラーを表に示した配合比で添加し、強化樹脂組成物を得た。
【0066】
次に、0.1mmHg、80℃の条件で減圧乾燥したこの強化樹脂組成物を、射出成形機(日本製鋼所社製、型締め力100T)を用い、シリンダー温度280℃、金型温度60℃の条件で、射出成形して成形品を作成し、その特性を以下の方法に従って評価し、結果を表1に示した。
【0067】
【0068】
(1)MFR測定
JIS K 7210に従い、280℃、5.0kg荷重で測定した。
(2)アイゾット衝撃試験
JIS K 7110に従い、切欠き付きアイゾット衝撃試験を行った。
(3)曲げ弾性率
JIS K 7203による曲げ試験法に従い、三点曲げ試験を行った。
(4)熱変形温度
JIS K 7207に従い、18.6kgの荷重で、荷重たわみ試験を行った。
(5)収縮率差
上記条件で射出成形した150mm角のシートを23℃、50%RH(相対湿度)中で48時間状態調節を行い、TD(樹脂の流れ方向と垂直の方向)、MD(樹脂の流れ方向)方向の収縮率を測定した。TDとMDの収縮率の差を収縮率差とした。
(6)線膨張率差とTD/MD平均線膨張率
射出成形で得た150mm角のシート(厚さ3mm)から10×80mmの試験片をMD及びTD方向にそれぞれ切出し、JIS K 6714に従い23〜100℃で測定を行った。TDとMDの線膨張率の差を線膨張率差とし、平均線膨張率はTDとMDの線膨張率値の平均とした。
【0069】
【発明の効果】
上記評価試験の結果から、本発明の強化PPE系樹脂組成物は、収縮率差が小さいことから成形後の寸法精度(異方性)が、また平均線膨張率と線膨張率差が小さいことから熱による寸法変化が改良され、その他にも、機械的強度、耐熱性、成形性及び成形品外観等のバランスが優れていることがわかる。
Claims (5)
- 下記の成分(a)〜(d)を下記配合比で含有し、且つ成分(c)が成分(a)及び/又は成分(b)中に選択的に存在する、強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
(a)ポリフェニレンエーテル 5〜95重量%
(b)芳香族アルケニル化合物重合体(ただし、ゴム質物質を除く) 95〜 5重量%
(c)繊維状無機フィラー及び/又は板状無機フィラー 1〜60重量%
(d)成分(a)及び/又は(b)と不均一混合する、非晶性ポリアミド及び/又は非晶性環状オレフィン系樹脂を成分(a)〜(c)の合計100重量部に対して 0.1〜10重量部 - 成分(b)が、ポリスチレン、ポリクロロスチレン、ポリ(α−メチルスチレン)、スチレン−アクリロニトリル共重合体、スチレン−N−フェニルマレイミド共重合体、スチレン−N−アルキル置換フェニルマレイミド共重合体、スチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−メチルメタアクリレート共重合体、スチレン−n−アルキルメタアクリレート共重合体、エチルビニルベンゼン−ジビニルベンゼン共重合体、ブタジエン−アクリロニトリル−α−メチルスチレン3共重合体、ABS、HIPS、スチレングラフトポリエチレン、スチレングラフトエチレン−酢酸ビニル共重合体、(スチレン−アクリル酸)グラフトポリエチレン及びスチレングラフトポリアミドからなる群より選ばれる請求項1記載の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
- 成分(b)が、ポリスチレンである請求項2記載の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
- 成分(d)が、非晶性ポリアミドである請求項1〜3のいずれか1項記載の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物。
- 請求項1〜4のいずれか1項記載の強化ポリフェニレンエーテル系樹脂組成物を成形してなる成形品。
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